説明

カードの真贋判定方法、ICカードの真贋判定方法及びICカードの認証方法

【課題】セキュリティ性をより改善し、かつ簡便に精度良いカード真贋判定方法を提供する。
【解決手段】表面側に形成された第1識別情報と、断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報とを用いてカードの真贋の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、贋造、変造防止等の安全性(セキュリティ)が要求される個人情報等を記憶するICカードの真贋判定方法及びICカードの認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、従業者証、社員証、会員証、学生証、外国人登録証及び各種免許証等には個人情報が記録されるために、容易に贋造、変造できないようにセキュリティ処理が施されている。
【0003】
例えば、ICチップのメモリ内に記録された情報と、カード所有者のサインが埋め込まれた顔写真情報とを、所定の読み出し装置を用いて読み出し、比較判定することにより、カードの真贋を判定する技術が特許文献1に開示されている。ICカードにセキュリティ性を付与し、贋造、変造を防止することが行われている。
【特許文献1】特開2001−126046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、ICチップのメモリ内に記録された情報と、カード所有者のサインが埋め込まれた顔写真情報という二つの情報を用いて真贋判定を行うことで、セキュリティ性を向上させてはいる。しかし、二つの情報を照合するだけでは、高度な技術をもつ悪意の第三者に贋造、変造されてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明では、セキュリティ性をより改善し、かつ簡便に精度良いカード真贋判定方法、及びICカードの認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0007】
(1)表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
を有するカードの真贋判定方法において、
前記カードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
前記第1識別情報と前記第2識別情報を用いて前記カードの真贋の判定を行うことを特徴とするカードの真贋判定方法。
【0008】
(2)表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
第3識別情報を記憶したICチップと、
を有するICカードの真贋判定方法において、
前記ICカードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
前記ICチップから前記第3識別情報を取得し、
前記第1識別情報、前記第2識別情報、及び前記第3識別情報を用いて前記ICカードの真贋の判定を行うことを特徴とするICカードの真贋判定方法。
【0009】
(3)表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
第3識別情報を記憶したICチップと、
を有するICカードの真贋判定方法において、
前記ICカードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
前記ICカードの表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
前記ICチップから前記第3識別情報を取得し、
前記ICカードの表面側からの光照射による透過する光を用いて、ICカード内におけるICチップ位置に関する第4識別情報を取得し、
前記第1識別情報、前記第2識別情報、前記第3識別情報、及び前記第4識別情報とを用いて前記ICカードの真贋の判定を行うことを特徴とするICカードの真贋判定方法。
【0010】
(4)断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
ICチップと、を有するICカードの認証方法において、
ICカードの表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
取得した前記第2識別情報を用いてICチップ内部の記憶情報へアクセスすることを特徴とするICカードの認証方法。
【0011】
(5)表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
ICチップと、を有するICカードの認証方法において、
前記ICカードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
ICカードの表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
取得した前記第1識別情報と前記第2識別情報を用いてICチップ内部の記憶情報へアクセスすることを特徴とするICカードの認証方法。
【発明の効果】
【0012】
ICカード表面側に形成された表面情報、ICカード内に設けたすかしの情報、ICチップ内に記憶された情報、ICカード内におけるICチップ位置情報等の多くの情報を用いて真贋判定を行うことで、セキュリティ性を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
高度な技術をもつ悪意の第三者に贋造、変造されてしまう危険を回避し、セキュリティ性を改善するには、ICカードの真贋を判定する照合情報を、より複雑にすることが効果的である。
【0014】
そこで、ICカードの真贋を判定する照合情報の基となる情報として、表面側に形成された表面情報(第1識別情報)、ICカード内に設けた「すかし」の情報(第2識別情報)、ICチップ内に記憶された情報(第3識別情報)、ICカード内におけるICチップ位置情報(第4識別情報)等の多くの情報を採用すれば、贋造を難しくでき、セキュリティ性を改善できる。
【0015】
以下、この発明のICカード真贋判定システムの実施の形態について詳細に説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されない。
【0016】
以下、第1の実施の形態について説明する。
【0017】
ICカードについて説明する。図1にICカードを一部破断した平面図、図2にICカードの層構成を説明する図を示す。ICカード1は、身分証明書カードやクレジットカード等に広く適用することができ、対向する第1の支持体10と第2の支持体20との間に、接着剤層31,32を介在してICチップC1、アンテナコイルC2を有するICモジュールCが配置されてなる。
【0018】
ICカード1は非接触型ICカードを示しており、ICチップC1にはアンテナとして機能するアンテナコイルC2が接続されている。
【0019】
ICチップC1には、内部に電子的情報が蓄えられている。電子的情報としては例えば、文字情報、画像情報、音声情報及びその他の各種情報が記憶される。
【0020】
なお、各種情報としては例えば、読み出しの可否を管理するための管理情報、また、クレジットカード等に関する情報等がある。
【0021】
ICカード1の表面には、第1識別情報を含んだ表面情報12が掲載されている。表面情報12は、文字、図形、記号、画像情報等の意匠からなる。例えば、免許証の場合には、氏名、生年月日等の文字や数字、本人写真の画像情報等である。
【0022】
ICカード1の内部には、第2識別情報含み、真正品であることを示す印刷処理であるすかし11が設けられている。
【0023】
すかしには、文字、図形、記号、画像情報等からなる意匠を用いる。
【0024】
ICカード内部に設けたすかしは、内部に作りこむ必要があることから、すかし自体の作製技術は難易度の高い技術である。
【0025】
そのため、すかしの存在自体が真性か否かを見分ける基準となってきた。しかし、昨今の贋造技術の向上により、すかしだけでは贋造を免れない場合がある。
【0026】
図2に示すようにすかし11はICカード内部に設けられるので、すかし11をICカード外部から目視で、又は画像入力装置を用いて画像情報として読み取る場合、ICカード内部における光の吸収や散乱の状態がすかし11の像状態に影響する。
【0027】
図3は、ICカード1に設けられているすかし11に含まれている情報等を認識するためのICカード判定システム200の概略構成図である。ICカード1を挟んで画像入力装置であるCCD撮像装置D1、表面側照明装置S1、CCD撮像装置D2、裏面側照明装置S2、ICカード非接触リーダ201が配置されている。表面側照明装置S1はICカード1のICカード表面101側に配置され、裏面側照明装置S2はICカード1のICカード裏面102側に配置される。CCD撮像装置D1とCCD撮像装置D2の出力はPC(PERSONAL COMPUTER)202へ送られ、処理される。
【0028】
ICカード内部における光の吸収や散乱の状態は、すかしから観察位置までの間に位置する材料の厚みや材質に依存する。
【0029】
ICカードの材料に所定の材料を用いるとした場合、すかしから観察位置までの材料までの間に位置する材料の厚みがすかしの像状態に主な影響を与える。
【0030】
従って、ICカード内部におけるすかしの位置の違いによって、ICカード外部から観察するすかしを認識できるかどうか異なってくる。
【0031】
すかしが、ICカード断面中心線13(図2参照)の位置にない場合、ICカードの裏面側から照明して表面側から観察する場合と、ICカードの表面側から照明して裏面側から観察する場合によっても、すかしの認識状況に相違が生じることになる。
【0032】
このようなすかしの特性を生かし、表面側からの透過光によりICカードの表面側からはすかしをはっきりと認識できても、裏面側からの透過光により裏面側からは、ぼんやりとでしかすかしを認識できないようにすかしの位置を設定することは、真贋判定の一つの手法となる。またすかしを英数字等の文字情報で形成して、その文字情報を後述のOCRにより文字情報として認識する場合においては、ICカードの表面側からはすかしを文字情報として認識できるが、表面側から文字情報として認識できないようにすることができる。
【0033】
また、観察位置におけるすかしの像状態を、すかしへの照明光の位置によって、以下のように異ならせることができる。
【0034】
照明光を観察側に対して反対側に置いた場合、照明光は、すかしによって遮光され、すかしの周辺を透過して観察される。そうすると、すかしの機能は遮光する機能と同一となるので、すかしの輪郭ははっきりする。
【0035】
これに対し、照明光を観察側に置いた場合、すかしにおいて反射し、その反射光が観察される。すかしを観察した画像は、すかしを有する焦点面内において、すかし自体の表面の画像と、すかし以外の部分の画像からなる。
【0036】
すかし自体の表面の画像とすかし以外の部分の画像は、すかしと光源の間に存在する表面側の材料で表面反射または光散乱し、照明光を観察側に対して反対側に置いた場合の画像に比べて、輪郭ははっきりしない。強い光源を照射した場合においても同様にすかしの輪郭ははっきりしない。そのため、すかしの画像を2値化処理等して認識する場合には、照明光を観察側に対して反対側に置いて観察した画像のほうが認識しやすいと言える。
【0037】
よって、照明光をICカードに対して観察側に置いた場合には、すかしが見えず、照明光をICカードに対して観察側とは反対側に置いた場合に、すかしを認識できるという状態を作りだすことができる。
【0038】
従って、照明光をICカードに対して観察側に置いた場合には、すかしを認識できず、照明光を観察側と反対側に置いた場合に、すかしを認識できることを真贋判定の手法として用いることができる。
【0039】
このようにして、すかしやICカード表面を観察して真贋の判断の基準としつつ、得られた画像情報から、さらにICカードの真贋の照合に用いるための照合情報を抽出する。照合情報の抽出方法としては公知の方法を用いることができる。照合情報の抽出とは、例えば、画像が数字自体の画像情報である場合には、OCR(OPTICAL CHARACTER RECOGNITION:光学的文字認識)を用いて数字として認識できる。また、画像が図形の画像であった場合、例えば、図形の頂点の数が照合情報の場合、公知の画像処理ソフトを利用して、頂点の数を数えることができる。
【0040】
以下に、この実施の形態のICカード判定システムを用いたICカードの真贋判定方法を図3と図4を用いて説明する。
【0041】
図3のICカード判定システム200において、照明手段としては、例えば可視光を発光する白色LED照明装置が好適である。CCD撮像装置には、求められる解像度に合わせた性能の撮像レンズやCCDを用いる。PCにおいては画像処理や後述する各種処理がなされる。
【0042】
次に、図4を用いて、この実施の形態のICカード判定システム200を用いたICカードの真贋判定のフローを説明する。
【0043】
最初にステップS1において、カードの表面側に配置したCCD撮像装置D1を用いて、ICカードの表面画像をPCへ取り込む。
【0044】
ICカード1の表面画像を撮影する場合、照明の効果を考慮して裏面側照明装置S2は点灯せずに表面側照明装置S1のみ用いて表面側からICカード1を照明し、画像入力手段であるCCD撮像装置D1により撮像する。ICカード表面画像は判定手段であるPC202へ取り込まれる。
【0045】
次に、ステップS2において、得られた表面画像から真贋判定に用いる第1識別情報であるカード表面識別情報を取得する。
【0046】
カード表面識別情報を取得には、例えば、PC202内にインストールした公知のOCRソフトを用いて、ICカード表面画像から数字情報を抽出する方法を用いる。得られた数字情報から、予め決めおいた幾つかの数字情報を組み合わせるなどすることでカード表面識別情報とする。
【0047】
次に、ステップS3において、カードの裏面側に配置したCCD撮像装置D2を用いて、表面側からの光照射による透過光によりICカード内のすかし画像を判定手段であるPC202へ取り込む。
【0048】
ICカードのすかし画像を撮影する場合、照明の効果を考慮して裏面側照明装置S1は点灯せずに表面側照明装置S2のみ用いて表面側からICカードを照明する。
【0049】
次に、ステップS4において、ステップS2においてカード表面識別情報を得た方法と同じ方法を用いて、真贋判定に用いる第2識別情報であるすかし識別情報を得る。
【0050】
次に、ステップS5において、予め設定している対応表とつきあわせカード表面識別情報とすかし識別情報が対応しているかどうかを判定手段であるPC202が判定する。
【0051】
カード表面識別情報とすかし識別情報が対応していれば、ステップS6へ進んで、このICカード1は真性品であるとPC202が判断する。カード表面識別情報とすかし識別情報が対応していなければ、ステップS7へ進んで、このICカード1は贋物とPC202が判断する。
【0052】
なお予めPCの内部メモリに記憶されている情報を用いて当該情報と第1識別情報、第2識別情報の組み合わせが対応するか否かを判断することにより、第1識別情報と第2識別情報により真贋判定するようにしてもよい。
【0053】
このように、第1識別情報としてのICカード表面画像と、第2識別情報としてのICカード内部のすかし識別情報を照合することで、確実に真正品であるか贋物であるかを判定でき、セキュリティ性を向上することができる。
【0054】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施形態においては、カード表面識別情報とすかし識別情報とともに、IC内部に記憶された照合情報(第3識別情報)をも照合することで、確実に真正品であるか、贋物であるかを判定することができ、セキュリティ性を向上することができる。以下に図5を用いて、この実施の形態のICカード判定システムを用いたICカードの真贋判定システムの実施の形態のフローを説明する。
【0055】
ICカード判定システムの概略構成は図3の構成と同じである。
【0056】
すかし画像とICカード表面画像を取り込んで、すかし識別情報とカード表面識別情報を抽出する工程は、図4に示した第1の実施形態のステップS1からステップS4までと同じである。
【0057】
次に、ステップS11において、ICカード非接触リーダ201を用いてICチップに記憶されている照合情報を取得する。
【0058】
次に、ステップS12において、すかし識別情報と照合情報が対応しているかどうかを判定手段であるPCが判定する。
【0059】
すかし識別情報と照合情報が対応していれば、ステップS13へ進む。すかし識別情報と照合情報が対応していなければ、ステップS15へ進み、このICカードは贋物とPCが判断する。
【0060】
ステップS12においてYESと判断した場合、ステップS13へ進み、カード表面識別情報と照合情報が対応しているかどうかを判定手段であるPCが判定する。
【0061】
カード表面識別情報と照合情報が対応していれば、ステップS14へ進んで、このICカードは真性品であると判断し、カード表面識別情報と照合情報が対応していなければ、ステップS15へ進み、このICカードは贋物と判断する。
【0062】
このように、ICカードのカード表面識別情報とICカード内部のすかし識別情報を照合することで、確実に真正品であるか贋物であるかを判定でき、セキュリティ性を向上することができる。
【0063】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態においては、カード表面識別情報とすかし識別情報とともにICカード内におけるICチップの位置情報をも照合することで、確実に真正品であるか贋物であるかを判定でき、セキュリティ性を向上することができる。
【0064】
以下に図6を用いて真贋判定のフローを説明する。ICカード判定システムの概略構成は図3の構成と同じである。
【0065】
最初にステップS21において、表面側照明装置S2のみ点灯させ、CCD撮像装置D2を用いて、ICチップの画像を含んだICカード全体画像を取り込む。図7は得られた画像の例である。
【0066】
次に、ステップS22において、ステップS21において取り込んだ画像からICカード内におけるICチップ位置情報を取得する。ICチップの中心位置を求める方法として画像認識技術を用いる。
【0067】
画像認識技術としては、例えば、予めICチップの画像をRAMに記憶させ、ICチップの画像をICカードの全体画像の一部に対してマッチングさせ、最もマッチング精度の高い位置をICチップの位置として出力する方法を用いる。
【0068】
画像に向かって左上の位置に、座標の原点があるとし、画面水平方向をX方向とし、画面垂直方向をY方向として、ICチップの中心位置を求める。
【0069】
例えば、ICチップの重心位置のX座標が120、Y座標が100というように出力される(図7参照)。
【0070】
次にステップS23において、ICカード非接触リーダを用いて、予めIC内に設けた照合情報を取得する。ICチップの重心位置情報、カード表面識別情報、すかし識別情報の照合情報は、予め決めおいたICチップの重心位置情報、カード表面識別情報、すかし識別情報である。
【0071】
次に、ステップS24において、得られたICチップの重心位置情報が、ICチップの重心位置情報の照合情報と対応しているかどうかをPCが判断する。
【0072】
ステップS24において、得られたICチップの重心位置情報が、照合情報と対応していないとPCが判断すれば、ステップS26へ進み、このICカードは贋物であると判断する。ステップS24において、得られたICチップの重心位置情報が、照合情報と対応しているとPCが判断すれば、ステップS25へ進む。
【0073】
ステップS25では、カード表面画像を取り込み、画像情報からカード表面識別情報を取得する。
【0074】
ステップS27では、すかし画像を取り込み、すかし画像から、すかし識別情報を取得する。
【0075】
ステップS28では、得られたカード表面識別情報とすかし識別情報が、カード表面識別情報とすかし識別情報の各照合情報と対応しているかどうかをPCが判断する。
【0076】
カード表面識別情報とすかし識別情報が各照合情報と対応していなければ、ステップS26においてこのICカードは贋物であると判断する。
【0077】
カード表面識別情報とすかし識別情報が各照合情報と対応していれば、次のステップS29においてこのICカードは真性品であると判断する。
【0078】
このように抽出したICチップ位置情報と、前述のようにして抽出したカード表面識別情報や、すかし識別情報とを組み合わせて、確実に真正品であるか贋物であるかを判定でき、セキュリティ性を向上することができる。
【0079】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、ICカードのICチップへのアクセスの許可を判断する方法である。
【0080】
悪意の第三者がICカードを贋造する際には、ICカードの内部に設けられたメモリの内部情報にアクセスして内部情報を取り出す。よって、ICカードの贋造を防止するには、メモリの内部情報にアクセスできないようにすることが重要である。一般に、ICカードへのアクセスの工程においては、使用者がアクセスをするに際し、アクセス制限を設け、アクセスしてよいかどうかを許可する工程が存在する。アクセス制限を解除するには、パスワード等の照合情報を要求することとなる。その照合情報を、個別のICカード毎に設定できれば、悪意の第三者のアクセスから、各ICカードをより有効に守ることができる。個別のICカード毎の照合情報は、PIN(PERSONAL IDENTITY NUMBER)と称される。
【0081】
PINを各個別のICカード毎に作製し、ICへ送信し、認証してアクセス制限解除の可否を決定する。
【0082】
以下、図8を用いて、この実施の形態のICカード判定システムを用いたICカードのアクセス制限を解除する方法の実施の形態を説明する。アクセス制限を解除する方法のシステムの概略は図3と同じである。最初にステップS31において、CCD撮像装置D2を用いて、ICカードのすかし画像をPCへ取り込む。
【0083】
次に、ステップS32において、得られた画像情報から前述のような方法を用いて、真贋判定に用いる識別情報であるすかし識別情報を取得する。
【0084】
次にステップS33において、PINを作成する。PIN作成方法としては、公知の方法を用いてもよい。例えば、すかし識別情報から認識した文字データそのものをPINとして用いる。
【0085】
次にステップS34において、作成したPIN情報をICチップ側へ送付する。
【0086】
次にステップS35において、送付されたPIN情報を用いてIC内部におけるCPU等の判定手段がアクセス制限を解除してアクセス許可してよいかどうかを判断する。アクセスが許可されれば、ステップS36においてPCはIC内部の記憶情報にアクセスを開始する。アクセスが許可されなければ、PCはIC内部の記憶情報にアクセスできず、フローは終了する。
【0087】
このように、すかし識別情報を基に、IC内部に記憶した情報へのアクセスの許諾を判断することができる。
【0088】
なお、第二識別情報等からICチップへアクセスするステップへの許可を行うステップを付加してもよい。例えば、前述したような真贋判定方法を用いてICカードの真贋を判定し、ICカードが真性品であると分かった時点でアクセス許可する。図8で示したフローにおいては、ステップS35とステップS36の間に、ICカードの真贋判定のステップを追加する。また、使用者がシステム中に設けられたキーボード等の入力装置を用いてPIN情報を入力し、予め使用者が決め置いたPIN情報と照合し、システムに設けられたCPU等の判定手段がアクセス許可してよいか判断するようにしてもよい。図8で示したフローにおいては、ステップS35とステップS36の間に、使用者がPIN情報を入力してシステムの判定手段が判定するステップを追加する。
【0089】
なお、PINには第2識別情報であるすかし識別情報を用いずに、第1識別情報であるカード表面識別情報を用いてもよい。
【0090】
次に、第5の実施の形態について説明する。第4の実施例において、PINの作成に用いる情報はすかし識別情報のみであった。第5の実施の形態においては、PINの作成に用いる情報としてさらにカード表面識別情報を追加して用いる。こうすることで、PINの秘匿性を高め、IC内部に記憶した情報へのアクセス制限を、より厳密にすることができる。以下、図9を用いて説明する。
【0091】
アクセス制限を解除する方法のシステムの概略は図3と同じである。
【0092】
最初に、ICカード表面画像とすかし画像を取り込み、ICカード識別情報とすかし識別情報を取得する工程は、第1の実施形態のステップS1からステップS4までと同じである。
【0093】
次にステップS41において、カード表面識別情報とすかし識別情報とを用いてPINを作成する。PINの作成方法としては、公知の方法を用いてもよい。例えば、カード表面識別情報とすかし識別情報から認識した文字データを組み合わせた文字データをPINとして用いる。
【0094】
次にステップS42において、作成したPIN情報をICチップ側へ送付する。
【0095】
次にステップS43において、送付されたPIN情報を用いてIC内部におけるCPU等の判定手段がアクセス制限を解除してアクセス許可してよいかどうかを判断する。アクセスが許可されれば、ステップS44において、PCはIC内部の記憶情報にアクセスを開始する。アクセスが許可されなければ、PCはIC内部の記憶情報にアクセスできず、フローは終了する。
【0096】
このように、すかし識別情報とカード表面識別情報とを基に、IC内部に記憶した情報へのアクセスの許諾を判断することができる。
【0097】
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態においては、表面側からの光照射下において裏面側にてICカードの観察を行ってすかし情報を認識することができても、裏面側からの光照射下において表面側にてICカードの観察を行ってすかし情報が認識することができないようにする。例として第1の実施例に追加した場合を説明する。
【0098】
ICカード判定システムとしては、ICカード判定システムの概略構成は図3の構成と同じである。
【0099】
真贋判定のフローチャートについては、第1の実施例の真贋判定のフローチャート図である図4において、図10に示すようにステップS4とステップS5の間にステップS51とステップS52を追加する。
【0100】
ステップS51では、ICカード判定システム200を用いて、裏面側からの光照射下において表面側にてICカードの画像を取り込み、すかしの画像を取り込む。
【0101】
次に、ステップS52では、得られたすかしの画像から、すかし識別情報を取得できるか判断する。ICカードに形成されたすかしは、カード断面の中心位置よりも裏側に形成されているので、すかしから表面までのカードの厚みは、すかしから裏面までのカードの厚みより大きい。そのため、裏面側での観察によってすかし識別情報を取得できても表面側の観察によってはすかし識別情報を取得できないという状況を作りだすことができる。
【0102】
上記のようなICカードを用いているので、ステップS4で裏面側のすかし情報を取得でき、かつ、ステップS52で表面側の識別情報を取得できた場合(ステップS52のYES)には贋物と判定して(ステップS7)フローを終了する。一方、ステップS4で裏面側のすかし情報を取得できたが、表面ですかし識別情報を取得できなければステップS5に移り、真贋判定のフローを継続する。ステップS5以降のフローについては前述と同様である。
【0103】
なお、この実施の形態は、真贋判定だけでなく、ICカードの認証方法についても採用することができる。裏面側からの光照射下において表面側にてICカードの観察を行い、すかし情報を認識することができれば、アクセスを許可せず、すかし情報を認識することができなければ、アクセスを許可するフローを追加すればよい。
【0104】
次に、この発明のICカードについて詳細に説明する。
<支持体>
支持体としては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、又は上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体、或いはこれらを2層以上に積層した積層体が挙げられる。支持体の厚みは30〜300μm望ましくは50〜200μmである。50μm以下であると、第1の支持体と第2の支持体の貼り合わせ時に熱収縮等を起こし問題である。貼り合わせ時のカールや変形を抑えるために、第1の支持体、及び、第2の支持体は同一厚みであることが望ましい。また複数の支持体を積層してもよいが、表裏最表面の支持体、又は、表裏面における最も厚い支持体は、同一厚みであることが好ましい。
【0105】
熱収縮率を低減させるためにアニール処理を行ったりして得られた150℃/30minにおける熱収縮率が縦(MD)で1.2%以下、横(TD)で0.5%以下の支持体を用いることが好ましい。縦(MD)で1.2%以上、横(TD)で0.5%以上であると支持体の収縮により上記した後加工が困難になることが確認された。また上記支持体上に後加工上密着性向上のため易接処理を行っていても良く、チップ保護のために帯電防止処理を行っていても良い。具体的には、帝人デュポンフィルム株式会社製のU2シリーズ、U4シリーズ、ULシリーズ、東洋紡績株式会社製クリスパーGシリーズ、東レ株式会社製のE00シリーズ、E20シリーズ、E22シリーズ、X20シリーズ、E40シリーズ、E60シリーズQEシリーズを好適に用いることができる。
【0106】
第1の支持体は場合により、ICカード利用者の顔画像を形成するため受像層、クッション層を設けてもよい。個人認証ICカード基体表面には画像要素が設けられ、顔画像等の認証識別画像、属性情報画像、フォーマット印刷画像から選ばれる少なくとも一つの画像が設けられたものが好ましい。
【0107】
受像層用としては公知の樹脂を用いることができ、例えばポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと他のモノマー(例えばイソブチルエーテル、プロピオン酸ビニル等)との共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、三酢酸セルロース、ポリスチレン、スチレンと他のモノマー(例えばアクリル酸エステル、アクリロニトリル、塩化エチレン等)との共重合体、ビニルトルエンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、及びそれらの変性物等を挙げることができるが、好ましいのは、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと他のモノマーとの共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、スチレンと他のモノマーとの共重合体、エポキシ樹脂である。
<ICモジュール>
ICモジュールは、情報記録部材のことを示し、具体的にはICカードの利用者の情報を電気的に記憶するICチップ及びICチップに接続されたコイル状のアンテナ体からなる。ICチップはメモリや、マイクロコンピューター等からなる。必要に応じてICチップを保護する保護部材を設けても良い。場合によりICモジュールにコンデンサーを含んでもよい。本発明はこれに限定はされず情報記録部材に必要なICモジュールであれば特に限定はない。
【0108】
ICモジュールはアンテナコイルを有する。アンテナパターンを有する場合、アンテナパターンは、導電性ペースト印刷加工、銅箔エッチング加工、巻線溶着加工等の方法を用いて作製する。プリント基板としては、ポリエステル等の熱可塑性のフィルムが用いられ、さらに耐熱性が要求される場合はポリイミドが有利である。ICチップとアンテナパターンとの接合には、銀ペースト、銅ペースト、カーボンペースト等の導電性接着剤(日立化成工業のEN−4000シリーズ、東芝ケミカルのXAPシリーズ等)や、異方性導電フィルム(日立化成工業製アニソルム等)を用いる方法や、半田接合を行う方法が知られており、いずれの方法を用いてもよい。
<第1の支持体と、第2の支持体との接着方法>
本発明の第1の支持体と第2の支持体との間に所定のICモジュールとを設けて接着する方法としては、熱貼合法、接着剤貼合法及び射出成形法が知られているが、いずれの方法で貼り合わしてもよい。また、第1の支持体と第2の支持体には、貼り合わせる前後のいずれかにフォーマット印刷又は、情報記録を行ってもよく、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、昇華転写印刷、電子写真印刷、熱溶融印刷等のいずれの印刷方式によっても印刷することができる。
【0109】
貼り合わせ時には、基材の表面平滑性や、第1の支持体と第2の支持体との間に所定のICモジュールの密着性をあげるために加熱及び加圧を行うことが好ましく、上下プレス方式、ラミネート方式等で製造することが好ましい。
【0110】
さらにはIC部品の割れを考慮して、貼り合わせ時の樹脂、接着剤の粘度は10万cps以下と低いことが好ましい。加熱は、10〜120℃が好ましく、より好ましくは30〜100℃である。加圧は、0.1〜300kgf/cm2が好ましく、より好ましくは0.1〜100kgf/cm2である。これより圧力が高いとICチップは破損する。加熱時間及び加圧時間は好ましくは、0.1〜180secより好ましくは0.1〜120secである。
<接着剤>
接着剤を用いて貼り合わせを行う接着剤貼合法の場合に、採用する接着剤としては、特に制限がない。ホットメルト接着剤としては、一般に使用されているものを用いることができる。ホットメルト接着剤の主成分としては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系、ポリエステル系、ポリアミド系、熱可塑性エラストマー系、ポリオレフィン系等が挙げられる。但し本発明においては、ICカード基体がそりやすい場合や、ICカード表面に感熱転写による画像形成のための受像層等の高温加工に弱い層が設けられている場合に、層がダメージを受ける。また、高温で貼り合わせるために基材が熱収縮等を起こし、寸法及び貼り合わせ時の位置精度が劣化する等の問題点がある。この問題点を解決するために、接着剤を介して貼り合わせる場合には、80℃以下で貼り合わせることが好ましく、さらには10〜80℃、さらに好ましくは20〜80℃の温度下で貼り合わせを行う。
【0111】
接着剤の膜厚は、本発明の範囲であればICモジュールと含めた厚さで10〜600μmが好ましく、より好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは10〜450μmである。
【0112】
貼りあわせ後のカードの透過濃度については、透過光により識別可能で反射光では識別できないすかし情報を設けるために、JISのX6301−1(2001)で規定されるカードの透過濃度は、1.3以上2.0以下が好ましく、1.5以上1.8以下がさらに好ましい。1.8以上では隠蔽性が高すぎ、情報の識別が難しくなり、また、1.5以下では、ICカード内に設けるすかし情報や、ICチップ位置が見えやすくなり、セキュリティ性が低下する。
【0113】
接着剤の透過濃度に特に制限はないが、表裏の支持体を貼りあわせた後のカードの透過濃度が上記のとおりとなるように選択することが好ましい。接着剤に顔料を分散して用い透過濃度や光散乱度を調整することができる。
<情報記録>
ICカード表面画像、及びすかし画像の形成方法については、特に制限なく一般の画像形成方法が適宜用いることができる。
【0114】
ICカード表面画像としては、反射光にて識別可能な情報として、顔画像、指紋、氏名、住所、年齢、会社名、所属、印鑑、認証番号等の、意匠、記号、文字情報が選択され記録される。
【0115】
顔画像は通常の場合、階調を有するフルカラー画像で、例えば昇華型感熱転写記録方式、ハロゲン化銀カラー写真方式等により作製される。また、文字情報画像は2値画像よりなり、例えば溶融型感熱転写記録方式、昇華型感熱転写記録方式、ハロゲン化銀カラー写真方式、電子写真方式、インクジェット方式等により作製されている。本発明においては、昇華型感熱転写記録方式により顔画像等の個人情報画像を記録することが好ましい。
【0116】
文字情報としては氏名、住所、生年月日、資格、識別番号等であり、溶融型感熱転写記録方法を用いた印刷が一般的である。シンボルマークや印章や印鑑等の意匠の印刷については、いずれの方法も適用できる。オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、昇華転写印刷、電子写真印刷、熱溶融印刷等のいずれの印刷方式によっても形成することができる。
【0117】
ICチップには、情報として照合に用いる照合情報の他、ICチップの製造番号や製造ロット、検査情報、製造者、個人識別情報として顔画像、指紋、氏名、住所、年齢、会社名、所属、印鑑、認証番号等から選ばれ記憶される。情報は暗号化されていることがセキュリティ上好ましい。また、ハッシュ関数や暗号鍵等の公知の照合方法を組み込んでおくことが好ましい。
【0118】
次に、ICカードの作製例と作製したICカードを用いた真贋判定実験等を行ったので詳述する。
【0119】
図2に示すように、二つの支持体間の間に、ICチップとアンテナコイルからなるICモジュール、接着剤等を配したICカードを作製した。
(第1の支持体について)
白色顔料を混入した188μmPETを支持体材料に用いた。表面側に予め受像層を塗布乾燥し形成し、予め凸版印刷にてフォーマット印刷を施した。
(第2の支持体について)
白色顔料を混入した188μm厚のPETを支持体材料に用いた。裏面側に予め筆記可能な筆記層を塗布乾燥し形成した。
(すかし画像の記録について)
次に、第2の支持体のICカード内側に相当する面に、すかしとして黒色顔料インクを用いてインクジェット印刷にて意匠の記号を設けた。
(ICモジュールについて)
エッチングによりアンテナコイルの形成された厚み38μmの支持体上に、厚み65μm、3×3mm角のICチップを厚み20μmの導電性接着剤を介して接合し、その上にSUS301からなる厚み120μmの4×4mm角板状の補強板を回路面と反対側にエポキシ系樹脂を10μmの厚さで接着させ、ICモジュールを作製した。
(接着剤について)
反応型ホットメルト接着材(Henkel社製Macroplast QR3460(湿気硬化型接着剤))を使用した。
(ICカードの貼り合わせについて)
ICカード製造装置を使用し、第1の支持体及び第2の支持体を接着剤貼合法を用いて作製した。
【0120】
受像層を有する第1の支持体に反応型ホットメルト接着剤をTダイを使用して、厚みが40μmになるように塗工し、第2の支持体に反応型ホットメルト接着剤をTダイを使用して厚みが300μmになるように塗工した。
【0121】
接着剤が付いた第1の支持体に図2に示す構成のICモジュールCを回路面が第2の支持体側になるように載置し、上下のシートで挟み込み、70℃で1分間ラミネートして作製した。このように作製されたICカード用シートの厚みは760μmであった。作製後は25℃、50%RHの環境化で7日間保存した。
【0122】
すかし識別情報の取り込みを試みた。CCD撮像装置をICカード表面側に配置し、観察者側に照明装置を配して点灯させ、画像を取り込み、OCRで文字情報の認識を試みたが、認識できなかった。次に、観察者とは反対側にCCD撮像装置を配して点灯させ、画像を取り込み、OCRで文字情報の認識を試みたところ、認識することができた。
【0123】
透過光で識別可能な情報以外の場所のJISのX6301−1(2001)で規定される最低透過濃度は1.6であった。透過光にて認識可能な情報部の最大透過濃度は、2.0であった。
(打ち抜き加工について)
このように作製されたICカードに対して、打ち抜き金型装置を用いて、打ち抜き加工を施した。
(ICカード表面への情報の記録)
次に、以下のようにフォーマット印刷により、顔画像、会社印章意匠の画像、識別番号、発行年月日、氏名、所属の文字情報を設けたICカードの作製を行った。
(画像情報の形成)
受像層と昇華型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせ、インクシート側からサーマルヘッドを用いて、出力0.23W/ドット、パルス幅0.3〜4.5m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で受像層に印刷することにより、階調性のある人物画像を形成した。
(文字情報の形成)
溶融型感熱転写記録用のインクシートのインク側をICカード表面側に重ね合わせ、インクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.5W/ドット、パルス幅1.0m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で印刷することにより、黒色文字情報をICカード表面側に形成した。
(表面保護層の形成)
表面保護として、ICカード表面に、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに厚み8μmの透明なUV硬化型樹脂を設けた転写箔を、表面温度200℃に加熱したヒートローラーを用いて押圧することで転写をおこない、透明表面保護層を形成した。
(ICチップへの情報の記録)
ICカード表面に記載した情報と同一の情報をICチップ内に非接触にてリーダライタで記録し、アクセス用のPINを設けた。
【0124】
次に真贋判定の実施例について説明する。
(真贋判定例1)
第1の実施形態に相当する真贋判定例を以下に示す。作製したICカードの表面には、予め決めおいた識別番号を付与し、ICカードの内部には、すかしとして予め決めおいた意匠を作製した。意匠には2ヶの星形状の線図を採用した。
【0125】
ICカード判定システムとしては図3に示した装置を用いた。作製したICカードの表面より可視光を透過させ、ICカード裏側に配した高解像度のCCD撮像装置D2で透過画像を撮像し、図11(a)に示すような画像を得た。この画像から透過濃度分布の情報を図11(b)のようなグラフ(AB断面内透過濃度)として得、意匠の画像の輪郭をはっきりと認識できた。さらに、この透過濃度分布の情報を基に、画像識別処理を施し、星形状の頂点位置、及び、星形状の大きさを特徴点として認識できた。特徴点の数や大きさを基に、予め決めおいた規則により、識別番号を抽出した。
【0126】
具体的には、星形状の数が2ヶ、1ヶの星形状が有する頂点の数が10ヶ、星形状自体を示す数字が100とした場合、それらを直列に並べることで、210100なる識別番号を得た。
【0127】
次に、観察者側に配した照明装置を点灯させ、反射光による画像を表側に設置したCCD撮像装置D1で撮像し、同じく画像処理を施し、識別番号を抽出した。
【0128】
具体的には、ICカード表面に予め定めた位置に、001012なる数字を書き込むとし、識別番号はその数字を逆から読むものとすると210100なる識別番号を得ることができる。このように読み取られた識別番号をPCが比較し、同一であることが判定できた。これにより、このICカードは真性品であると判定できた。
(真贋判定例2)
次に、第2の実施形態に相当する真贋判定例を以下に示す。真贋判定例1で用いた識別情報と、IC内に記憶されたPINを比較し、真贋判定を行うである。
【0129】
前述のように、作製したICカードの表面には、予め決めおいた識別番号を付与し、ICカードの内部には、すかしとして予め決めおいた2ヶの星形状の意匠を作製し、IC内部にはPINを設けた。
【0130】
ICカード判定システムとして前述と同様に図3に示した装置を用い、すかしを撮像し、画像識別処理を施し、識別番号を抽出した。
【0131】
次に、反射光によりICカード表面の画像を撮像し、画像処理を施して識別番号を抽出した。
【0132】
具体的には、すかしから得られた識別番号が310100、ICカード表面の画像から得られた識別番号を310100であった。
【0133】
次にIC内部に記憶された識別番号を抽出したところ、310100なる識別番号が得られた。
【0134】
このように読み取られた識別番号をPCが比較し、すかしから得られた識別番号と、ICカード表面の画像から得られた識別番号ともにIC内部に記憶された識別番号と同一であることが判定できた。これにより、このICカードは真性品であると判定できた。
(真贋判定例3)
次に、第6の実施形態に相当する真贋判定例を以下に示す。前述の真贋判定例1は、ICカードの裏面から照明し、ICカードの表面側において、観察される透過画像からすかしの識別情報を得る方法である。これに加えて、ICカードの表面から照明し、ICカードの裏面側において、観察される透過画像からすかしの識別情報を得られないことを真贋判定の基準に用いる。
【0135】
ICカード判定システムとしては図3に示した装置を用いた。前述の真贋判定例1において示した判定方法はそのまま実施する。さらに、観察の位置を異ならせてすかしの観察を行うため、裏面側照明装置S1のみを点灯させ、CCD撮像装置D1を用いてICカードの画像を撮像した。得られた画像を図12(a)に示す。
【0136】
この画像からAB断面内透過濃度のグラフを図12(b)のように得たが、真贋判定例1の場合等に撮像した画像に比べて輪郭のぼやけた透過濃度の分布となった。得られた画像に画像識別処理を施したが、すかし識別情報を取得できなかった。このように認識が可能でないことが判明したので、このICカードは真性品であると判断できた。
【0137】
以上のように、本実施の形態によれば、ICカードの裏面側において観察される透過画像からすかしの識別情報を得られないことを真贋判定の基準に用いるので、確実に真正品であるか贋物であるかを判定でき、セキュリティ性を向上することができる。
(ICカード認証例)
次に、次に、第3の実施形態に相当するICカード認証例の例を示す。
【0138】
前述のように、作製したICカードの表面には、予め決めおいた識別番号を付与し、ICカードの内部には、すかしとして予め決めおいた2ヶの星形状の意匠を作製し、ICチップにPINを記憶させた。
【0139】
ICカード判定システムとして前述と同様に、図3に示した装置を用い、すかしを撮像し、画像識別処理を施し、識別番号を抽出した。
【0140】
また、反射光によりICカード表面の画像を撮像し、画像処理を施して識別番号を抽出した。
【0141】
具体的には、すかしから得られる識別番号が310100であり、ICカード表面の画像から得られる識別番号を200であるとする。そして、PINは両者を合わせた数字である310100201と定める。
【0142】
このPINを用いて認証を行ったところ、ICチップに記憶されたPINと同じであったことから、ICチップ内部情報へアクセスでき、内部情報を読むことができた。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】ICカードを一部破断した平面を示す図である。
【図2】ICカードの層構成を示す図である。
【図3】ICカードの判定システムを示す図である。
【図4】ICカードの真贋判定に係るフロー図である。
【図5】ICカードの真贋判定に係るフロー図である。
【図6】ICカードの真贋判定に係るフロー図である。
【図7】ICカードのすかしを示す図である。
【図8】ICカードの認証に係るフロー図である。
【図9】ICカードの認証に係るフロー図である。
【図10】ICカードの真贋判定に係るフロー図である。
【図11】ICカードのすかしを示す図である。
【図12】ICカードのすかしを示す図である。
【符号の説明】
【0144】
1 ICカード
11 すかし
12 表面情報
C1 ICチップ
D1、D2 CCD撮像装置
S1 表面側照明装置
S2 裏面側照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
を有するカードの真贋判定方法において、
前記カードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
前記第1識別情報と前記第2識別情報を用いて前記カードの真贋の判定を行うことを特徴とするカードの真贋判定方法。
【請求項2】
表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
第3識別情報を記憶したICチップと、
を有するICカードの真贋判定方法において、
前記ICカードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
前記ICチップから前記第3識別情報を取得し、
前記第1識別情報、前記第2識別情報、及び前記第3識別情報を用いて前記ICカードの真贋の判定を行うことを特徴とするICカードの真贋判定方法。
【請求項3】
表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
第3識別情報を記憶したICチップと、
を有するICカードの真贋判定方法において、
前記ICカードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
前記ICカードの表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
前記ICチップから前記第3識別情報を取得し、
前記ICカードの表面側からの光照射による透過する光を用いて、ICカード内におけるICチップ位置に関する第4識別情報を取得し、
前記第1識別情報、前記第2識別情報、前記第3識別情報、及び前記第4識別情報とを用いて前記ICカードの真贋の判定を行うことを特徴とするICカードの真贋判定方法。
【請求項4】
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
ICチップと、を有するICカードの認証方法において、
ICカードの表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
取得した前記第2識別情報を用いてICチップ内部の記憶情報へアクセスすることを特徴とするICカードの認証方法。
【請求項5】
表面側に形成された第1識別情報と、
断面の中心位置よりも裏側であって裏面以外に形成される意匠からなる第2識別情報であって、表面側からの光照射による透過光により裏面側において認識可能な第2識別情報と、
ICチップと、を有するICカードの認証方法において、
前記ICカードの表面側からの光照射による反射光により前記第1識別情報を取得し、
ICカードの表面側からの光照射による透過光により前記第2識別情報を取得し、
取得した前記第1識別情報と前記第2識別情報を用いてICチップ内部の記憶情報へアクセスすることを特徴とするICカードの認証方法。
【請求項6】
前記第2識別情報は、裏面側からの光照射による透過光によって、表面側からは認識することができない識別情報であることを特徴とする請求項1記載のカードの真贋判定方法。
【請求項7】
前記第2識別情報は、裏面側からの光照射による透過光によって、表面側からは認識することができない識別情報であることを特徴とする請求項2又は3記載のICカードの真贋判定方法。
【請求項8】
前記第2識別情報は、裏面側からの光照射による透過光によって、表面側からは認識することができない識別情報であることを特徴とする請求項4又は5に記載のICカードの認証方法。
【請求項9】
前記第2識別情報は、表面側からの光照射による反射光によって、表面側からは認識することができない識別情報であることを特徴とする請求項6記載のカードの真贋判定方法。
【請求項10】
前記第2識別情報は、表面側からの光照射による反射光によって、表面側からは認識することができない識別情報であることを特徴とする請求項7記載のICカードの真贋判定方法。
【請求項11】
前記第2識別情報は、表面側からの光照射による反射光によって、表面側からは認識することができない識別情報であることを特徴とする請求項8記載のICカードの認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−193112(P2009−193112A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30206(P2008−30206)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】