説明

カードの製造方法及びカード製造装置

本発明は、射出成形によってカードを成形した後に、文字や図柄などをインク受容層に任意に印刷することが可能なカードの製造方法及びカード製造装置を提供する。カードは、成形金型(5)のキャビティー(7)内に射出成形用樹脂(10)を注入してカード基体(1)を成形する際、基材シート(4a)上に形成されたインク受容層(2)をカード基体(1)に接合し、その後基材シート(4a)を剥離することにより製造される。カードは、成形金型(5)から取り出された後に、インクジェット式プリンタ等によってインク受容層(2)に所望の印刷が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は身分証明書等に利用されるカードの製造方法及びその製造装置に関し、カードにはその基体の製造後に所望の印刷が施される。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード等の磁気カードや身分証明書等の証明書カードなど、様々なカードが使用されている。これらのカードの基体は、通常、プラスチック材料から構成される。プラスチック製のカードには、表面のデザインが同じで大量に製造されるカードがある。他方、1枚毎に異なる文字(例えば氏名等)や図柄(例えば顔写真等)が表面に印刷される多種少量生産されるカードもある。印刷文字や図柄は、小型の熱昇華型プリンタや熱転写型プリンタを用いてカード表面に印刷される。
【0003】
近年、熱昇華型プリンタや熱転写型プリンタと比較して、ランニングコストが安いインクジェット式プリンタが普及してきている。例えば、特許文献1には、インクジェット式プリンタを使用してインク受容層に文字や図柄を印刷し、その後、インク受容層を成形樹脂に接着することにより、カードを製造する方法が開示されている。より詳細には、このカード製造方法は、図8に示すように、基材シート11上に剥離層12及びインク受容層13が形成され、インク受容層13にインクジェット式プリンタで文字や図柄が印刷され、印刷されたインク受容層13上に接着剤層14を形成して、転写シートを形成する。その後、接着剤層14を成形金型15の金型ゲート16側に向けた状態で、転写シートを成形金型15のキャビティー17にインサートし、キャビティー17内に金型ゲート16より樹脂を注入して、射出成形により絵付け転写シートが成形樹脂に接合される。
【特許文献1】特開平11−28856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のカードの製造方法では、文字や図柄などは射出成形前にインク受容層に印刷され、成形材料を射出成形した後は文字や図柄などをインク受容層に任意に印刷することができなかった。
そこで、本発明の目的は、カードを成形した後に、文字や図柄などをインク受容層に任意に印刷することが可能なカードの製造方法及びカード製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るカードの製造方法は、基材シート上にインク受容層が形成された転写シートを、該インク受容層の表面を成形金型の金型ゲートに向けた状態で、成形金型のキャビティーにインサートする工程と、前記転写シートを前記キャビティーに配置した状態で、該キャビティーに射出成形用樹脂を注入してカード基体を成形すると同時に、カード基体に前記インク受容層を接合する工程と、前記インク受容層が接合されたカード基体を前記キャビティーから取り出す工程と、前記インク受容層をカード基体に残して前記転写シートから基材シートを剥離する工程とを備える。
【0006】
また、本発明に係るカード製造装置は、基材シート上にインク受容層が形成された転写シートを搬送する転写シート供給部と、前記基材シートを介してインク受容層が底面にインサートされるキャビティー、及び該キャビティーに射出成形用樹脂を注入する金型ゲートを備え、前記転写シート供給部から搬送される転写シートのインク受容層上にカード基体を成形する成形部とから構成され、前記カード基体にインク受容層が一体化されたカードを製造する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、射出成形によってカードを成形した後に、印刷面となるインク受容層に文字や図柄などを任意に印刷することができる。従って、カードの印刷の自由度が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[図1](a)〜(d)は本発明のカードの製造方法の一実施例を説明する成形金型の断面図である。
[図2]印刷が施された本発明のカードの部分断面図である。
[図3]インクジェット式プリンタを用いてインク受容層に印刷を施すときの説明図である。
[図4]カバー層で被覆されたカードを示す。
[図5](a)はインク受容層上にアンカー層を形成した転写シートの断面図であり、(b)は(a)に示す転写シートを用いて製造される本発明の別のカードの部分断面図である。
[図6]本発明のカード製造装置の一実施例を説明する説明図であって、転写シートのインク受容層が成形金型に搬送されたときの状態を示し、成形金型部分は図1(a)と同様である。
[図7]本発明のカード製造装置の一実施例を説明するフローチャートである。
[図8]従来のカードの製造の一例を説明する転写シートと成形金型の断面図である。
【符号の説明】
【0009】
1 カード基体
2 インク受容層
3 インク
4 転写シート
4a 基材シート
5 成形金型
5a,5b 金型
6 金型ゲート
7 キャビティー
8 アンカー層
9 カバー層
10 射出成形用樹脂
21 インクジェット式プリンタ
40 剥離部(ロボット)
51 カード製造装置
53 転写シート供給部
55 成形部
59 制御部
61 プリンタ
63 ラミネート装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の一実施形態に係るカードの製造方法について、図1を参照して具体的に説明する。
基材シート4a上にインク受容層2が形成された転写シート4の供給源(例えば、ロール)から、図1(a)に示すように、転写シート4の先端部が、開放された成形金型(金型5a,5b)5に供給される。次いで、インク受容層2がキャビティー7にインサートされる。転写シート4は、図1(b)に示すように、基材シート4aが金型5aのキャビティー7の内面に接し、インク受容層2の表面上に空隙が形成されるように金型5aのキャビティー7にインサートされる。
基材シート4aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)等を素材とするフィルムから構成される。また、インク受容層2は、好ましくは、加熱硬化型のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の加熱硬化型親水性樹脂から構成される。この加熱硬化型親水性樹脂のペーストを基材シート4a上に塗工機等を使用してキャビティー7の開口面積より僅かに広く塗布した後、加熱、乾燥して、転写シート4が形成される。
【0011】
インク受容層2はインクを良好に吸収して定着できることが要求される。ただし、インク受容層2を形成する樹脂によってはカード表面に水性インクによる印刷が不可能(不定着)なものもある。しかし、インク受容層2を加熱硬化型親水性樹脂で構成することによって、カード表面に水性インクによる印刷が可能(定着)である。インク受容層2の材料は加熱硬化型親水性樹脂に限られるものではない。例えば、塗布後に自然乾燥により硬化する常温硬化型親水性樹脂を用いることもできる。
インク受容層2を構成する親水性樹脂に、顔料を配合することができる。好適な顔料としては、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、必要に応じて、顔料と共に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、界面活性剤、耐水性向上剤等の各種の添加剤が併用される。
【0012】
次いで、図1(c)に示すように、転写シート4がキャビティー7に配置された状態で、成形金型5を閉じる。その後、金型ゲート6から樹脂供給導管を介してキャビティー7内の空隙に射出成形用樹脂10を注入して、カード基体1を成形する。成形時にカード基体1にインク受容層2が接合されて、転写シート4にカード基体1が融着する。カード基体1を構成する射出成形用樹脂10は、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)が好適である。射出形成樹脂10は、ポリ塩化ビニル(PVC)、PCなど、射出成形可能なプラスチック材料であれば特に限定されるものではない。更に、製造されるカードが磁気カードである場合は、射出成形用樹脂10中に酸化鉄やニッケル等の磁性微粉末が混入される。
【0013】
更に、図1(d)に示すように、カード基体1が成形された後に成形金型5を開いて、カード基体1をキャビティー7から取り出す。その際、接合されたインク受容層2とこれに続く未接合のインク受容層2との中間部の基材シート4aがカッター、ナイフ等で幅方向に裁断される。この基材シート4aの裁断と同時又は裁断前もしくは後に、金型ゲート6及び樹脂供給導管内に形成されたスプルーが切断・除去される。スプルーは、スプルーが形成されたカード基体1の一辺に沿って、基材シート4aを幅方向にカッター等で切断することによって除去される。そして、インク受容層2が接合されたカード基体1から基材シート4aを剥離すると、一体化されたインク受容層2とカード基体1から構成されるカードが製造される。なお、基材シート4aの裁断、基材シート4aの剥離及びスプルーの切断は、任意の順序で実施することができる。
【0014】
図1に示す成形金型5は2つ割り金型5a、5bから構成される。金型5a,5bの一方又は双方の内面にはカード基体1及びインク受容層2に対応した平面を有するキャビティー7が凹設され、一方の金型5aに金型ゲート6が設けられている。図1に示す成形金型5には、1つのキャビティー7しか図示されていないが、通常、複数列複数行のキャビティー7がマトリックス状に設けられる。
【0015】
望ましくは、金型5a又は5bのキャビティー7内に転写シート4をインサートし、成形金型5を閉じた直後、あるいは、金型ゲート6から射出成形用樹脂10を注入している間、キャビティー7内部は真空ポンプで真空引きされる。この真空引きを行うために、転写シート4が密着する金型5aのキャビティー7の内面に真空ポンプとの接続ポートを形成し、この接続ポートからキャビティー7内の空気を吸引することにより、キャビティー7の内面に基材シート4aを密着させる。しかし、成形金型5は、カード基体1の成形時にインク受容層2がカード基体1に一体的に接合される射出成形金型であれば、上述の金型に限定されるものではない。
【0016】
以上のようにして製造されたカードは、カード基体1上にインク受容層2が接合されている。インク受容層2には、図2に示すように、インク3を用いて印刷が施され、文字、図柄等が形成される。このように、本実施の形態においては、成形金型5のキャビティー7からカード基体1を取り出した後にカードに印刷を施すので、インク受容層2の印刷面に文字、図柄等を任意に印刷することができる。
カードへの印刷は、例えば、インクジェット式プリンタによって行う。その場合、図3に示すように、インクジェット式プリンタ21のノズル22から高速で射出された水性インク3の液滴は、インク受容層2に浸透・乾燥して定着し、文字、図柄等が形成される。インクジェット式プリンタ21は、後述のカード製造装置の構成部材とすることもできる。インクジェット式プリンタ21は、熱昇華型プリンタや熱転写型プリンタと比較してランニングコストが安い。従って、多種少量のカードを低コストで製造することが可能である。
【0017】
図4に示すように、インク受容層2に印刷を施した後に、カード表面のインク受容層2をカバー層(保護層)9で被覆してもよい。カバー層9は、望ましくは、撥水性の樹脂、例えば、撥水性の常温硬化型アクリル系樹脂から構成される。その他、カバー層9の材料としては、ウレタン系樹脂、メラニン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。インク受容層2表面をカバー層9で被覆しておくと、印刷された部分の耐候性が向上するので、劣悪なカード使用環境においてもカードの使用が可能になる。
【0018】
カバー層9は、例えば、インク受容層2に印刷を施した後、ケトン、エステル、エーテル等の有機溶媒に溶解した常温硬化型アクリル系樹脂をスプレー装置等の塗布装置によりインク受容層2に塗布してインク受容層2をアクリル系樹脂で被覆し、アクリル系樹脂を硬化することにより形成される。
【0019】
また、カード基体1に対するインク受容層2の密着性を高めるために、図5(a)に示すように、インク受容層2上にアンカー層8が予め形成された転写シート4を使用することができる。アンカー層8は、例えば、加熱硬化型のウレタン系接着剤等の接着剤から構成される。アンカー層8は、インク受容層2の基材シート4aとは反対側の面に、接着剤のペーストを塗工機等を使用して塗布した後、加熱、乾燥することにより形成される。アンカー層8の材料は加熱硬化型の接着剤に限られるものではなく、塗布後に自然乾燥により硬化する接着剤を用いることもできる。
インク受容層2上にアンカー層8を形成しておくと、アンカー層8の作用に基づいて、カード基体1とインク受容層2の境界面における成形時の熱収縮率の差や成形時の圧力が緩和され、カード基体1とインク受容層2との間の密着性を向上させることができる。図5(b)は、アンカー層8が被覆された転写シート4を用いて製造されるカードを示している。図5(b)に示すカードのインク受容層2に印刷を施した後に、インク受容層2をカバー層9で被覆してもよい。
【0020】
基材シート4aは、最終的にインク受容層2から分離される。従って、インク受容層2は、基材シート4aと比較的相溶性に乏しい樹脂から構成されることが好ましい。相対的に少量の離型剤を基材シート4aに配合することもできる。
また、インク3は、水性インクに限られるものではなく、顔料インクを使用してもよい。顔料インクは耐光性に優れている。このため、カバー層9でインク受容層2の印刷面を被覆する必要が少ない。更に、インクジェット式プリンタによる印刷に代えて、プロッタの水性ペンでインク受容層2に描画したり、あるいはユーザ自身がインク受容層2上に水性ペンで任意の文字や絵を手書きすることも可能である。
【0021】
また、単純なプラスチックカードの製造に限定されず、IC(Integrated Circuit)カードの製造などにも適用可能である。この場合には、例えば、基材シート4a上にインク受容層2と共にICチップを配置して、ICチップを包むように樹脂10でカード基体1を形成する。
【0022】
上述のカード製造方法を実施してカードを製造するカード製造装置51について、図6を参照して説明する。
カード製造装置51は、基材シート4a上に予めインク受容層2が形成された転写シート4を成形金型5に搬送する転写シート供給部53と、インク受容層2をキャビティー7内にインサートし、インク受容層2上にカード基体1を成形する成形部55と、全体の動作を制御する制御部59と、プリンタ61と、ラミネート装置63と、から構成される。
【0023】
転写シート供給部53は、図6に示すように、転写シート4が巻回されて、供給源として機能するリール31と、伝動機構を介してリールの回転軸31aを駆動するモータ32と、搬送される転写シート4を支持する複数の一対のローラ33a,33b及び搬送方向変更用ローラ34とを備えている。転写シート4は、モータ32の回転駆動により、図1(a)を参照して説明したように、その先端部が成形金型5に搬送される。モータ32の回転駆動と共に、ローラ33,34の少なくも1つ、特に最下流のローラ33bを搬送方向に回転させることが好ましい。転写シート4は、基材シート4aと、その幅方向及び長さ方向に所定の間隔で形成された複数のインク受容層2とから構成される。また、転写シート4が成形金型5に所定量供給されたことを検知するために、基材シート4aの所定の位置に位置合わせ用のマークが印刷されている。
【0024】
成型部55は、成形金型5を備える。成形金型5は、開閉自在であり、固定金型5a及び可動金型5bから構成され、金型ゲート6とキャビティー7とを備えている。金型5a,5bの内面には、成形金型5内に収容されるインク受容層2の数に対応して、幅方向と長さ方向にキャビティー7が複数列・複数行設けられている。可動金型5bは、油圧式の金型開閉機構35に連結ロッド35aを介して連結される。
金型ゲート6の入口は、粉末又はペレット状の射出成形用樹脂10を貯蔵する樹脂貯蔵槽36、及び樹脂10を加熱溶融してポンプ(例えば、シリンジポンプ)で送り出す樹脂溶融槽37に管を介して接続されている。金型ゲート6は、転写シート4の搬送方向に関して、最下流の列のキャビティー7に樹脂供給導管を介して接続される。また、転写シート4の長さ方向に隣接するキャビティー7は樹脂供給導管で接続されており、転写シート4の幅方向に隣接するキャビティー7間も相互に樹脂供給導管で接続させておくことが好ましい。キャビティー7の底面には、真空ポンプ38に接続される空気吸引口39が形成されている。吸引口39から空気を吸引することにより、転写シート供給部53から搬送されてくる転写シート4のインク受容層2がキャビティー7内にインサートされる。
【0025】
成形金型5の近傍には、ロボット40と位置合わせ装置57とが設置されている。ロボット40は伸縮かつ折曲自在のアーム41a,41b,41cを有し、アーム41a〜41cの先端部にそれぞれ把持部材42、カッター43及び押圧部材44が取り付けられている。把持部材42を有するロボットアーム41aは、転写シート4の基材シート4aを把持(吸引などでもよい)して、カード基体1の成形後に転写シート4をキャビティー7から取り出す。また、把持部材42と押圧部材44とは、協同して形成されたカードから基材シート4aを剥離する。位置合わせ装置57は、撮像装置等を備え、転写シート4の成型金型5に対する位置を判別する。
制御部59は、マイクロプロセッサ等から構成され、動作プログラムに従って、この製造装置51内の各部に制御信号を送って、その動作を制御する。
プリンタ61は、例えば、図3に示すインクジェット式プリンタ21から構成され、任意の文字・画像をインク受容層2に印刷する。
ラミネート装置63は、インク受容層2上にカバー層9を形成する。
【0026】
次に、カード製造装置51の作用を説明する。
位置合わせ装置57は、成形金型5の固定金型5aに対する転写シート4の位置を検出し、位置情報を制御部59に通知する。制御部59の制御に従って、ロボット40は、基材シート4aを把持部材42で把持する。更に、制御部59は、位置合わせ装置57からの信号に従って、モータ32とロボット40を制御して、インク受容層2のキャビティー7に対する位置を制御する(位置合わせを行う)。
位置合わせが完了すると、真空ポンプ38を作動させて、インク受容層2をキャビティー7に吸引することにより、基材シート4aがキャビティー7の底面に密着するように、各インク受容層2をキャビティー7にインサートする。
【0027】
真空ポンプ38を作動させた状態で、金型開閉機構35を作動させ、可動金型5bを固定金型5aに向けて移動させて成形金型5を閉じる。
続いて、樹脂溶融槽37に接続するポンプを駆動して、溶融された樹脂を、金型ゲート6から樹脂供給導管を介してキャビティー7内のインク受容層2側の空隙に注入する。なお、ポンプの駆動時には、樹脂貯蔵槽36から樹脂溶融槽37に供給された射出成形用樹脂10は加熱溶融されている。
樹脂の注入後、成形金型5の温度を温度センサで検出しながらキャビティー7周囲を所定の温度に制御して、注入された樹脂10を所定時間保持すると、カード基体1が成形される。この成形時に、転写シート4のインク受容層2がカード基体1に接合される。
その後、金型開閉機構35を作動させることにより、可動金型5bを元の位置に移動させて成形金型5を開く。
次いで、アーム41bを駆動し、基材シート4aの処理済みの部分と未処理の部分との間をカッター43で幅方向に裁断する。裁断後、アーム41aを操作して、インク受容層2を接合したカード基体1を含む転写シート4をキャビティー7から取り出す。
【0028】
ロボット40は、裁断された転写シート4を、基材シート4aを上面に向けた状態でテーブルに置く。続いて、ロボット40は、押圧部材44でカード基体1部分をテーブルに押圧しながら、把持部材42で基材シート4aの端縁部分を把持してインク受容層2から引き離す。把持部材42及び押圧部材44を有する上記ロボット40は、カード製造装置51の剥離部を構成する。
【0029】
基材シート4aを剥離したカード基体1には、金型ゲート6及び樹脂供給導管内に形成されたスプルーが残存している。ロボット40は、カッター43で、スプルーの切断・除去、バリ取りなどを行う。
このようにして、カード基体1にインク受容層2が一体化したカードが製造される。
【0030】
カード製造装置51において、最下流の列のキャビティー7ではなく中央部の列のキャビティー7に金型ゲート6を接続してもよい。また、金型ゲート6の位置は任意であり、例えば、金型ゲート6を固定金型5aの中心部に設けてもよい。また、図6には金型5a,5bの双方にキャビティー7を設けた例が示されているが、固定金型5aのみにキャビティー7を設けることができる。
カード製造の動作順序として、スプルーの除去やバリ取りを基材シート4aの剥離より部分的に先行することができる。具体的には、金型ゲート6及びこれと連続する樹脂供給導管内のスプルーが形成されている各カード基体1の側辺に沿って、ロボットアーム41bを折曲(回動)させ、スプルーと一緒に基材シート4aをカッター43によって切断する。また、剥離操作を自動化する必要はない。例えば、カードの生産が少量の製造装置などでは、基材シート4aをカード基体1から手動で剥離してもよい。
ロボット40は、インク受容層2を接合したカード基体1をプリンタ(例えば、図3に示すようなインクジェット式プリンタ)61に搬送してもよく、プリンタ61により任意の印刷が施される。印刷が完了すると、ロボット40は、プリンタ61からカードを取り出し、ラミネート装置63に搬送する。ラミネート装置63は、インク受容層2表面にカバー層9を被覆する。
なお、プリンタ61とラミネート装置63とをカード製造装置51の別装置としてもよい。
【0031】
図6に示すカード製造装置51の制御部59が実行する制御処理を図7に掲げるフローチャートを参照して説明する。
まず、制御部59は、モータ32を回転させて、リール31に巻回された転写シート4を成形金型5に搬送・供給する(ステップS1)。転写シート4が所定量繰り出されると、制御部59は、ロボット40に指令を出し、転写シート4の基材シート4aを把持部材42に把持させると共に、位置合わせ装置57からの位置信号に従ってモータ32及びロボット40(把持部材42)を制御して、各インク受容層2の対応するキャビティー7に対する位置を調整させる。
続いて、制御部59は、真空ポンプ38を作動させて、各インク受容層2を対応するキャビティー7にインサートさせる(ステップS2)。
インク受容層2がキャビティー7にインサートされると、制御部59は、金型開閉機構35に指令を出して、可動金型5bを移動させて成形金型5を閉塞させる(ステップS3)。次に、制御部59は、樹脂溶融槽37に接続するポンプを駆動し、樹脂溶融槽37内の液状の射出成形用樹脂10をキャビティー7に注入させる(ステップS4)。
制御部59は、成形金型5内の温度を図示せぬセンサにより監視する。キャビティー7周囲が所定の温度に冷却して注入した樹脂10が固化すると、カード基体1が成形される(ステップS5)。
カード基体1の成形後、制御部59は、金型開閉機構35の可動金型5bを元の位置に後退させて成形金型5を開放させる(ステップS6)。次いで、制御部59は、ロボット40に指令を出し、カッター43を作動させて基材シート4aを裁断させ(ステップS7)、インク受容層2が接合されたカード基体1をキャビティー7から取り出し、テーブル上に載置する(ステップS8)。
続いて、制御部59は、ロボット40を制御して、把持部材42と押圧部材44により、インク受容層2から基材シート4aを剥離させる(ステップS9)。制御部59は、更に、カッター43でカード基体1の側辺に形成されたスプルーやバリを切断する。以上のようにして、カード基体1にインク受容層2が一体化されたカードを製造する。
続いて、制御部59はカードの製造を終了するか否かを判断する。終了しない(No)と判断すれば、ステップS1に戻り、上記ステップS1〜S9を繰り返す。また、目標とする数のカードが製造された場合など、製造動作を終了する(Yes)と判断すれば、カードの製造が終了する。
【0032】
制御部59は、また、ロボット40,プリンタ61,ラミネート装置63を制御して、製造されたカードのインク受容層2への印刷、カバー層9の形成などを行う。
【0033】
なお、転写シート供給部53から供給する転写シート4にインク受容層2と共にICチップを配置し、成形部55が、ICチップを包むように樹脂10でカード基体1を成形してもよい。また、樹脂貯蔵槽36に収容される樹脂に磁性粉を添加して、磁気カードを製造するようにしてもよい。
【0034】
本出願は、2003年8月13日にされた、日本国特許出願特願2003−292828に基づく。本明細書中に、その明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により製造されるカードは、キャッシュカード、クレジットカード、テレホンカード、プリペイドカード等のプラスチックカード、磁気カード、ICカードや、身分証明書、社員証、会員証等の証明書カードなどの製造に利用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート(4a)上にインク受容層(2)が形成された転写シート(4)を、該インク受容層(2)の表面を成形金型(5)の金型ゲート(6)に向けた状態で、成形金型(5)のキャビティー(7)にインサートする工程と、
前記転写シート(4)を前記キャビティー(7)に配置した状態で、該キャビティー(7)に射出成形用樹脂(10)を注入してカード基体(1)を成形すると同時に、カード基体(1)に前記インク受容層(2)を接合する工程と、
前記インク受容層(2)が接合されたカード基体(1)を前記キャビティー(7)から取り出す工程と、
前記インク受容層(2)をカード基体(1)に残して前記転写シート(4)から基材シート(4a)を剥離する工程と
を備えることを特徴とするカードの製造方法。
【請求項2】
前記インク受容層(2)が加熱硬化型親水性樹脂から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のカードの製造方法。
【請求項3】
前記インク受容層(2)上に、前記カード基体(1)に対するインク受容層(2)の密着性を高めるアンカー層(8)が予め形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のカードの製造方法。
【請求項4】
前記カード基体(1)を前記キャビティー(7)から取り出した後に、前記インク受容層(2)に印刷を施すことを特徴とする請求項1に記載のカードの製造方法。
【請求項5】
前記印刷をインクジェット式プリンタ(21)によって行うことを特徴とする請求項4に記載のカードの製造方法。
【請求項6】
前記インク受容層(2)に印刷を施した後に、前記インク受容層(2)表面をカバー層(9)で被覆する工程を備えることを特徴とする請求項4に記載のカードの製造方法。
【請求項7】
基材シート(4a)上にインク受容層(2)が形成された転写シート(4)を搬送する転写シート供給部(53)と、
前記基材シート(4a)を介してインク受容層(2)が底面にインサートされるキャビティー(7)、及び該キャビティー(7)に射出成形用樹脂(10)を注入する金型ゲート(6)を備え、前記転写シート供給部(53)から搬送される転写シート(4)のインク受容層(2)上にカード基体(1)を成形する成形部(55)と、
から構成され、前記カード基体(1)にインク受容層(2)が一体化されたカードを製造することを特徴とするカード製造装置。
【請求項8】
前記カード基体(1)と一体化されたインク受容層(2)から前記基材シート(4a)を剥離する剥離部(40)を備えることを特徴とする請求項7に記載のカード製造装置。
【請求項9】
前記インク受容層(2)上にアンカー層(8)が予め形成されていることを特徴とする請求項7に記載のカード製造装置。
【請求項10】
前記基材シート(4a)が剥離されたインク受容層(2)面に印刷を施すプリンタ(61)を更に備える、ことを特徴とする請求項7に記載のカード製造装置。
【請求項11】
前記プリンタ(61)がインクジェット式プリンタ(21)であり、該インクジェット式プリンタ(21)から射出されるインク(3)が、水性インクであることを特徴とする請求項10に記載のカード製造装置。
【請求項12】
印刷が施された前記インク受容層(2)表面にカバー層(9)を被覆するラミネート装置(63)を更に備える、ことを特徴とする請求項10に記載のカード製造装置。

【国際公開番号】WO2005/016659
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513166(P2005−513166)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011548
【国際出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】