説明

カードコネクタ

【課題】コンタクトの変形がないカードコネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】ハウジング1と、該ハウジング1の表面13に沿って配設されるとともに、カード4が前記ハウジング1の表面13に沿って挿入されることで前記カード4の電極41と電気的に接触する少なくとも1つのコンタクト2とを備えたカードコネクタにおいて、前記コンタクト2は、前記電極41に接触する接点部21と、該接点部21から二股状に延びる一対のばね部22と、各ばね部22から延伸して設けられ、前記ハウジング1に固定されたばね固定部23を有するとともに、前記ばね部22及び接点部21が前記ばね固定部23から前記表面13に沿って前記カード4の挿入方向に延びるように前記ハウジング1に配設されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード等に用いられるカードコネクタに関し、特に携帯電話等、携帯情報端末に搭載されるSIM(Subscriber Identity Module)カード等に用いられるカードコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
SIMカード(以下、単に「カード」ともいう)を情報端末に装着する際に、SIMカードの挿入方向として、カードの短辺方向と長辺方向がある。しかし、携帯電話においては、SIMカードの占有面積は大きく、基板レイアウト上の制約から、SIMカードを横方向に(長辺方向に面して)挿抜するように配置することがある。その場合、コンタクトはカードの挿入を妨げずに、スムースに変位する必要がある。しかし、カードの挿入時にカードは上下方向、左右方向へ傾くことがあり、カードの長辺側端部がコンタクトに引っ掛り、コンタクトが変形する恐れがある。
【0003】
カードコネクタは、通常、先端に接点部を備えた片持ち梁状のばね部を有するコンタクトを使用し、接点部をカードの下面の電極に弾性接触させている。このようなカードコネクタにおいて、カードとの信頼性ある接続を果たすためには、コンタクトのばね部のばね長をある程度長くして所定のばね特性を得る必要がある。
一方、カードを長辺側から挿入するタイプのカードコネクタでは、短辺側から挿入する場合に比べてカードの挿入方向の電極間ピッチが非常に短くなる(図4(a)に参照番号4として示すカード参照)ところから、コンタクトの接点部間ピッチが小さくなり、ばね部の延伸方向をカードの挿入方向に向けてコンタクトを配設するとばね部に所定のばね長を確保することができない。
このため、従来のこの種カードコネクタでは、ばね部をカードの挿入方向と直交する方向に延在するようにしてコンタクトを配設することで、コンタクトの接点部間ピッチを小さくすると共にばね部の長さを所定長確保し、接点部を曲面状(スプーン状)にしたり、接点部側方にガイド片を設けて、コンタクトの側方から挿入されるカードを接点部上に誘導するようにしている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、このようなコンタクト配設構造の場合、SIMカードの挿入方向と直交する方向に延びるコンタクト(ばね部)に対し、コンタクトの側方からSIMカードを挿入すると、コンタクトの先端の接触部にコンタクトの延伸方向と直交する方向に挿入力が作用するため、一端のみが固定された片持ち梁状態のコンタクトにコンタクトの固定部分を支点とした曲げ応力が働き、コンタクトが変形しやすいという問題がある。特にカードが挿入方向に対し傾斜して挿入された場合は、接触部に大きな力が働くため、コンタクト変形の恐れが大きくなる。また、コンタクトの端部にカードが引っ掛り、コンタクトの変形の恐れがある。
【0005】
さらに、片持ち梁状態のコンタクト(ばね部)の延在する方向をカードの挿入方向と傾斜するように配置して、ばね部のばね長を確保すると共に接点部間ピッチを小さくしたカードコネクタも知られている(特許文献3参照)。この場合、カードの挿入方向と直交する方向に延びるコンタクトと比較してコンタクトに加わる応力は軽減され、コンタクトの変形の恐れは減少する。しかし、この場合も、コンタクト(ばね部)の側部がカードの挿入方向に面しており、依然として上記カードコネクタと同様の同じ問題が残る。また、カード側面にキズ等の凹凸があった場合、コンタクトのばね部が引っ掛り、変形する。さらに、コンタクトのばね部側面のエッジがカード側面を削りやすいため、カードの挿抜を繰り返すと、カードの削れが激しく、削りカスがコネクタ内部にたまる可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−36349号公報
【特許文献2】特開2002−203622号公報
【特許文献3】特開2008−108455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、コンタクトのばね部がカードの挿入方向に対して直交する方向又は斜めに交差する方向に片持ち梁状態でハウジングに支持された構成においては、カード挿入時にコンタクトの先端部が変形する不具合があり、カードとの接続信頼性が低いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明においては、コンタクトの接点部を二股に分岐したばね部で支持し、ばね部に延伸して形成された固定部を有するコンタクトが、ばね部及び接点部が固定部からハウジングの表面に沿ってカードの挿入方向に延びるようにハウジングに配設されることにより、コンタクトの変形がなく、カードとの接続信頼性が高いカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明では、ハウジングと、該ハウジングの表面に沿って配設されるとともに、カードが前記ハウジングの表面に沿って挿入されることで前記カードの電極と電気的に接触する少なくとも1つのコンタクトとを備えたカードコネクタにおいて、前記コンタクトは、前記電極に接触する接点部と、該接点部から二股状に延びる一対のばね部と、各ばね部から延伸して設けられ、前記ハウジングに固定された固定部を有するとともに、前記ばね部及び接点部が前記固定部から前記表面に沿って前記カードの挿入方向に延びるように前記ハウジングに配設されるようにした。
【0010】
さらに、前記一対のばね部は、前記接点部から末広がりになるように延びるようにした。
【0011】
さらに、コンタクトを複数有し、該複数のコンタクトは、一つの前記コンタクトの接点部が、これと前記カードの挿入方向で隣り合う前記コンタクトの一対のばね部の間に位置するようにして、前記ハウジングに配設されるようにした。
【0012】
さらに、前記コンタクトは、前記固定部に連続し、前記ハウジングの外部に突出する端子部を有するようにした。
【0013】
さらに、前記ハウジングの表面には、前記一対のばね部及び前記接点部の形状と相似で、前記一対のばね部及び前記接点部の前記ハウジング側への変位を許容する溝を設けるようにした。
【0014】
さらに、前記カードコネクタは、更に前記ハウジングの表面を覆うカバーを有し、前記ハウジングと前記カバーとの間にカード挿入部を形成するようにした。
【0015】
さらに、前記ハウジングと前記カバーは樹脂から一体成形するようにした。
【0016】
さらに、前記カバーには、前記カード挿入部から前記カードを排出するためのイジェクタが設けられるようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンタクトの変形がなく、カードとの接続信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1のカードコネクタの概観構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1のカードコネクタのコンタクトの概観斜視図である。
【図3】(a)(b)(c)本発明の実施形態1のカードコネクタの上面図、正面図及び側面図である。
【図4】(a)(b)本発明の応用形態1のカードコネクタ、カバーとカードの外観構成と、カードが収納されたカードコネクタを基板に装着した状態を示す図である。
【図5】(a)(b)(c)(d)本発明の応用形態2のカードコネクタとイジェクタを備えたカバーとの構造体のカード収納時とカード排出時の上面図、A−A断面図及びB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態1のカードコネクタの概観構成を示した斜視図であって、図2は、図1のカードコネクタのコンタクトの概観斜視図である。図1及び図2を参照して、本発明の実施形態1のカードコネクタ及びコンタクトについて以下に説明する。
【0020】
図2に示すように、コンタクト2g、2hは、カード4に形成された電極41(図4参照)と接触する接点部21g、21h、接点部21g、21hから二股に分岐し末広がりに延びるように形成された1対のばね部22g、22h、ばね部22g、22hに接続されたばね固定部23g、23h、一方のばね固定部23g、23hに接続された端子部24g、24hから構成される。コンタクト2gと2hの違いは、コンタクト2gの端子部24gが図2図中左側のばね固定部23gに接続されているのに対し、コンタクト2hの端子部24hは図2図中右側のばね固定部23hに接続されている点にある。コンタクト2g、2hがハウジング1の左右部分に絶縁支持される際に、端子部24g、24hは、ハウジング1の左右の側端部11からそれぞれ突出する(図1参照)。図2に示される1対のコンタクト2g、2hは、図1に示される2列のコンタクト2a〜2fを備えたカードコネクタの、左方の列の各コンタクト2a〜2cおよび右方の列の各コンタクト2d〜2fにそれぞれ対応する。
【0021】
図1は図4に示すカード4と接続するカードコネクタである。ハウジング1の表面にはカード4の電極41の配列に合わせて左右各列に3個ずつ計6個のコンタクト2a〜2fが配設されている。
また、ハウジング1には、コンタクト2a〜2fの接点部21a〜21f及びばね部22a〜22fに対応して、コンタクト2a〜2fの接点部21a〜21f及びばね部22a〜22fの形状に相似の溝25a〜25fが形成される。さらに、各列のコンタクト2a〜2cおよび2d〜2fがカード4の挿入方向(図1、図4の矢印方向)に沿って近接して配設される場合、対応する溝25a〜25cおよび25d〜25fは連続して形成される(図1参照)。
【0022】
各コンタクト2a〜2fは、一対のばね固定部23a〜23f(図示せず)が各溝25a〜25fの内壁部に埋設固定され、該固定部23a〜23fから一対のばね部22a〜22fおよび接点部21a〜21fがカード4の挿入方向に延在するようにして、ハウジング1に配設固定されている。各コンタクト2a〜2fの一対のばね部22a〜22fは、接点部21a〜21fがハウジング1の表面から上方に突出するように、上方に曲げられている(図3参照)。また、各列のコンタクト2a〜2cおよび2d〜2fは、一つのコンタクト例えば2aの接点部21aがこれとカード4の挿入方向で隣り合うコンタクト例えば2bの一対のばね部22b間に位置するようにして、近接配置されている。
【0023】
このように構成したカードコネクタは、図1に示す矢印方向からハウジング1の表面に沿って図4(a)に示すようなカード4をその長辺側から挿入すると、カード4の長辺側挿入端が接点部21a〜21fに当接して接点部21a〜21fが下方に弾性的に押し下げられ、カード4の下面に潜り込んでカード4の各電極41に電気的に接触する。各溝25a〜25fは、このとき一対のばね部22a〜22fおよび接点部21a〜21fが下方に弾性変位するのを許容する逃げ溝となる。
ここで、コンタクト2a〜2f、接点部21a〜21f、ばね部22a〜22f、ばね固定部23a〜23f、端子部24a〜24f及び溝25a〜25fの各構成要素を、コンタクト2、接点部21、ばね部22、ばね固定部23、端子部24及び溝25ともいう。
【0024】
ばね固定部23から一対のばね部22および接点部21がカード挿入方向に延在しているので、カード挿入時、コンタクト(ばね部)の側部からほとんど力を受けることはない。また、接点部21が二股に分岐した1対のばね部22に支持されるので、カード4の挿入時にカード4が挿入方向に対して傾斜して挿入されても、変形(撓み)に対する強度が高く、耐久力にも優れている。
また、複数のコンタクト(例えば、2a、2b)は、一つのコンタクトの接点部(例えば、21a)が、隣り合うコンタクトの一対のばね部(例えば、22b)間に位置するように、ハウジングに配設される。したがって、ばね部22のばね長をある程度長く確保しながら接点部21間のピッチ間隔が小さくなるようにコンタクトを配設できる。ハウジング1内において、複数のコンタクト2(2a、2b、2c)をカード4の挿入方向に効率よく配置でき、また、カード4の挿入方向に形成されるコネクタ2の数が同じであれば、より短い挿入方向長さで配置できる。
したがって、実施形態1のカードコネクタによれば、接点部21間ピッチを小さくしても、コンタクト2の変形の恐れがなく、カード4との信頼性ある接続ができる。
【0025】
コンタクト2のばね固定部23がハウジング1に絶縁保持され、端子部24がハウジング1の外側に突出して形成されるため、端子部24を容易に基板7に固定でき、また、端子部24によりコンタクト2とともにハウジング1も基板7に確実に固定できる。
さらに、図1では、ばね固定部23aないし23fは、ハウジング1に埋め込まれて、絶縁支持されるが、圧入手段あるいは係止手段等他の手段によりハウジング1に絶縁支持するようにしても構わない。
【0026】
ハウジング1は、少なくともハウジング1内に支持されたコンタクト2を相互に絶縁分離する必要があるが、ハウジング1全体を絶縁材料で形成する必要はない。例えば、ハウジング1内に補強用の導電材料の部材が埋め込まれてもよいが、補強用の導電材料の部材は、コンタクト2に接触しないように、ハウジング1内又は表面に埋め込む。
【0027】
(変形例1)
図1に示すコンタクト2をカードの挿入方向に直交する方向に1つハウジングに絶縁保持するとき、コンタクト2の端子部24は、1対のばね部22から延在するばね固定部23を介して両側に1対形成され、突出する。さらに、上記のように絶縁保持する複数のコンタクト2は、ハウジング1内でカードの挿入方向に平行に1列だけ配置される。
【0028】
(変形例2)
図1に示すコンタクト2をカードの挿入方向と直交する方向に3列以上、例えば、3列、ハウジングに絶縁保持するとき、ハウジング1の左右の側端部11に配置されるコンタクト2の端子部24は、ハウジング1の左右の側端部11から外方に突出する。しかし、カードの挿入方向に直交する方向で中央に位置するコンタクト2の端子部24は、ハウジング1の左右の側端部11のいずれの端部からも外方に突出せず、ハウジング1の裏面14から端子部24の下面が露出する。また、端子部24の下面がハウジング1の裏面14とほぼ同じ高さとなるように、ハウジング1に絶縁保持される。
【0029】
図3(a)(b)(c)は、それぞれ、本発明の実施形態1のカードコネクタの上面図、正面図及び側面図である。
図3(a)の上面図では、コンタクト2の接点部21及びばね部22をハウジング1の表面に投影した部分を含む形状で溝25が示され、ハウジング1の端部から左右に端子部24が突出している。また、図3(b)の正面図では、ハウジング1の表面13より上にばね部22の一部と接点部21が突出しており、左右に端子部24が突出している。端子部24の底面は、ハウジング1の底面とほぼ同じ高さである。また、コンタクト2のばね固定部23に接続するばね部22の一部が溝25に収容された状態で形成されるので、ハウジング1を薄く形成できる。さらに、図3(c)の側面図には、ハウジング1の表面13より上にばね部22の一部と接点部21が突出しており、ハウジング1の側端部に端子部24が示される。
【0030】
ハウジング1とカバー3との間に形成されたカード挿入部6(図4参照)にハウジング1の表面13に沿って、カード4が図1、図4の矢印方向に挿入されるときのコンタクト2の動作について説明する。
カード4が、カード挿入部6に対し、カードの長辺方向に直交する方向(図1、図4の矢印方向)に挿入される。すると、カード4の前端部42は、まずハウジング1の前端部12の最も近くに位置するコンタクト2a、2dの接点部21a、21dに接触する。このとき、カード4の挿入方向に対して、コンタクト2a、2dは山形の曲面であって端面がないので、カード4の挿入時にカード4がコンタクト2a、2dの端面に引っ掛ることなく、コンタクト2a、2dは上下方向に弾性変形する。
【0031】
カード4を更に表面13に沿って挿入すると、カード4の裏面43に接触する接点部21a、21dは下方に押し下げられ、それと共に、ばね部22a、22dも下方に撓み変形する。このとき、コンタクト2a,2dの山形の曲面の接点部21a、21dは、カード4の裏面43に接触するが、コンタクト2a、2dの他の部分、例えば、ばね部22a、22dはカード4の裏面43に接触しない。ばね部22a、22dがばね固定部23a、23dに接続される近傍では、ばね部22a、22dは、溝25a、25d内でハウジング1の表面13より下に位置している。そして、カード4が挿入される前にハウジング1の表面13より上に位置しているばね部22a、22dの一部は、接点部21a、21d及びばね部22a、22dが下方に変形すると、ハウジング1の表面13より低い位置の溝25a、25d内に収容される(図1〜図3参照)。
【0032】
次に、カード4の前端部42で左右の高さ(ハウジング1の表面13からの距離)が異なる状態でカードを表面13に挿入すると、まず、例えば、山形の曲面の接点部21aに、カード4の前端部42が接触する。このとき、カード4の挿入方向に対し、コンタクト2aは端面がないので、カード4の挿入時にカード4がコンタクト2aの端面に引っ掛ることによる変形は生じない。また、接触した接点部21aは、いずれも二股に分岐した1対のばね部22aに連結して、ばね部22aは常に接点部21aより下方に位置するので、カード4の前端部42によりコンタクト2aは破損されない。
【0033】
カード4がさらに表面13に沿って挿入されると、先にカード4の前端部42に接触した接点部21aはカード4の裏面43に接触し、他方の接点部21dはカード4の前端部42に接触する。この場合も、先にカード4の前端部42に接触したコンタクト2aと同様に、カード4の挿入方向に対しては、コンタクト2dは端面がないので、接点部は下方へ撓み変形するが、コンタクトは破損されない。
【0034】
更にカード4が挿入方向に挿入されると、カード4の前端部42がハウジング1の前端部12に近接配置されたコンタクト2から、例えば、2a、2d、2b、2e、2c、2fの順に接触し、カード4の裏面43により接点部21が、例えば、21a、21d、21b、21e、21c、21fの順に下方に変形し、それに伴い、接点部21に接続する1対のばね部22も、例えば、22a、22d、22b、22e、22c、22fの順に下方に弾性変形する。最後に、カード挿入部6の最も奥まで挿入され、カード4の前端部42がカバー3の後端部32に接触すると、各コンタクト2の接点部21は対応する位置に配設された電極41にそれぞれ導電接触し、挿入動作が完了する。
【0035】
また、カード4は、カバー3の下面、コンタクト2の接点部21及びカード挿入部6の側面に沿って挿入される。さらに、各接点部21はそれぞれ対応する1対のばね部22により支持されており、カード4の挿入時のカード4による下方への応力は、1対のばね部22の弾性変形により吸収されるので、カードの挿入時の最初と最後でカードを挿入するために必要な力が余り変化せず、スムースにカード4が挿入できる。
【0036】
ハウジング1の溝25により、コンタクト2の接点部21及びばね部22が変形可能な空間を十分に確保できると共に、カード4の挿入時にコンタクト2のばね部22が変形したとき、変形したばね部22の一部は溝25に収容できるので、コンタクト2を含むハウジング1の高さ(厚さ)を溝25が形成されない場合よりも低く(薄く)できる。
【0037】
実施形態1、変形例1及び変形例2においては、ハウジング1にコンタクト2が、カード4の挿入方向に平行に配列されたカードコネクタを説明したが、コンタクト2は、カード4の挿入方向と直交する方向がカードの長辺方向であって、カードの挿入方向と平行にコンタクト2を1列又は2列以上配列したものでもよい。
また、カード4の挿入方向が、カード4の長辺方向又は短辺方向のいずれであっても、コンタクト2の配列及び数が、カード4に形成された電極の配列及び数と1対1に対応して形成されたものであればよい。ここで、コンタクト2の数は1つ以上であればよい。
【0038】
また、コンタクト2の接点部21は、実施形態1においては1本であったが、接点部21が山形の曲面に形成されていれば、接点部21の先端が複数に分岐したものでもよい。
さらに、コンタクト2の二股に分岐したばね部22は、分岐した形状であればよく、接点部21に接続した1対のばね部22のなす角度は、0度以上180度以下であればよく、90度ないし150度が望ましい。また、1対のばね部22のなす角度が90度以下の場合には、カードの挿入方向に配置できるコンタクトの数が減少し、また、1対のばね部22のなす角度が150度以上の場合には、ばね部22の弾性強度が減少する。
【0039】
これまで、ハウジング1の表面13(上側)にコンタクト2が形成され、ハウジング1の表面に沿って、カード裏面43に電極41が形成されたカード4を挿入することを前提に説明した。しかし、ハウジング1の下側にコンタクト2が露出するようにハウジング1が配置され、ハウジング1の下側の面(表面)に沿って、電極41が形成されたカード裏面43が上側になるようにカード4をカード挿入部に挿入する形態においては、ハウジング1の下側の面を表面とする。また、ハウジング1の表面13が側面となるような配置においても、ハウジング1に形成されたコンタクト2の配列された面を表面とする。
【0040】
図4(a)(b)は、本発明の応用形態1のカードコネクタ、カバーとカードの外観構成と、カードが収納されたカードコネクタを基板に装着した状態を示す図である。
応用形態1のカードコネクタは、実施形態1のカードコネクタに、ハウジング1を覆うカバー3を更に設け、その間にカード挿入部6を形成するようにしたものである。
コンタクト2を絶縁保持したハウジング1と、カバー3とを、基板7上に搭載固定することで、ハウジング1とカバー3の間に、カード挿入部6が形成される(図4(b)参照)。
ハウジング1は、コンタクト2の端子部24を基板7のパッド(図示せず)に半田付けすることで、基板7に固定される。
【0041】
カバー3は、金属板製で、天板部35と左右端縁から下方に折り曲げられた側板部36と、側板部36の下端から内方に折り曲げられた突片33と、天板部35の後端から下方に折り曲げられた後板部32と、側板部36の一部が側方に切り起こされて形成された基板接続部31とを有し、天板部35と突片33の間の溝は、カード4をカード挿入部6に挿入する際に、カード4の左右両側縁部を受け入れ挿入案内するガイド溝34を形成している。
カバー3は、ハウジング1を覆うようにして基板7上に搭載し、基板接続部31を基板7のパッド(図示せず)に半田付けすることで固定される。
ここで、ハウジング1とカバー3とは、樹脂材により一体的に形成できる。ハウジング1とカバー3との一体形成により、ハウジング1とカバー3との構造体の形成が一体的な樹脂形成工程で実施できる。この一体的な工程は、ハウジング1とカバー3を別工程で形成するより、工程が簡略化できる。
【0042】
図4(b)は、ハウジング1とカバー3との構成体のカード挿入部6へ、カード4を、図4(a)に示す矢印方向に挿入した状態である。カード4の両側縁をカバー3の両側のガイド溝34に挿入して案内させつつカード4をカード挿入部6内に挿入する。カード4がカード挿入部6の最奥部まで挿入されると(図4の挿入状態)、各コンタクト2の接点部21がカード4の下面の各電極41に弾性接触し電気的に接続する。
本発明の応用形態1のカードコネクタにおいては、ハウジング1上をカバー3で覆いその間にカード挿入部6を形成するようにしたので、カード4を容易に挿入でき、確実に接続保持できる。
【0043】
図5(a)(b)は、それぞれ、本発明の応用形態2のカードコネクタとイジェクタを備えたカバーとの構造体のカード収納時とカード排出時の上面図で、(c)(d)は、それぞれ、(a)のA−A断面図及び(b)のB−B断面図である。
応用形態2のカードコネクタは、応用形態1のカードコネクタのカバー3に、更にイジェクタ5を設けたものである。
イジェクタ5は、挿入されたカード4を必要なとき自在に排出するための構成要素であって、その構成と機能について以下に説明する。
【0044】
イジェクタ5は、金属板製でカバー3の天板部35にカード4の挿入排出方向に移動可能に装着されており、一端(挿入側端部)はカード挿入部内に突出して爪部52を形成し、他端(排出側端部)は天板部35上に突出して突起部51を形成している。
イジェクタ5を備えたカバー3とハウジング1との構成体のカード挿入部6に、カード4をハウジング1の表面13に沿って挿入すると、カード4の前端部42がイジェクタ5の爪部52に係止される。そして、カード4がカード挿入部6の奥まで挿入され、カード4の前端部42に係止されたイジェクタ5の爪部52がカバー3の後板部32に接するまで挿入され、カード4の挿入とともにイジェクタ5も後方に移動すると、カード4の挿入は完了し、図5(a)の状態となる。そのとき、イジェクタ5の突起部51は、最も後方に位置している。
図5(a)のカード収納時のA−A断面図が図5(c)に示されており、基板7に固定されたハウジング1とカバー3の間のカード挿入部6にカード4が収容され、カード4の電極41がコンタクト2の接点部21に接触した状態となる。また、イジェクタ5の爪部52は、カバー3の後端部32と同じところに位置している。
【0045】
そして、カード4を排出するため、カード4の前端部42を係止する爪部52を備えたイジェクタ5の突起部51を図5(b)の矢印方向に引くと、イジェクタ5の爪部52にカード4の前端部42が係止され、イジェクタ5の前方への移動と共にカード4は矢印方向に排出される。
【0046】
なお、イジェクタ5の形状は図5(a)ないし(d)に記載したものに限定されず、カード4がカード挿入部6から挿入された状態で、イジェクタ5の突起部51をカード4の挿入方向と逆方向に操作することにより、カード4を取り出せる構造のものであればどのようなものでもよい。例えば、イジェクタ5がカバー3の天板部35でなく、側板部36に形成されてもよく、イジェクタ5の突起部51が側板部36外面に突出しているものでもよい。さらに、挿入されたカード4を排出できる構成であれば、図5(a)(b)で示したような形状構造のイジェクタ5に限らず、どのようなものでもよい。
このように、カバー3にイジェクタ5を設けると、カード4の取り出しが容易となる。
【符号の説明】
【0047】
1 ハウジング
11 ハウジング側端部
12 ハウジング前端部
13 表面
14 裏面
2、2a〜2h コンタクト
21、21a〜21h 接点部
22、22a〜22h ばね部
23、23a〜23h ばね固定部
24、24a〜24h 端子部
25、25a〜25h 溝
3 カバー
31 基板接続部
32 後板部
33 突片
34 ガイド溝
35 天板部
36 側板部
4 カード
41 電極
42 前端部
43 カード裏面
5 イジェクタ
51 突起部
52 爪部
6 カード挿入部
7 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングの表面に沿って配設されるとともに、カードが前記ハウジングの表面に沿って挿入されることで前記カードの電極と電気的に接触する少なくとも1つのコンタクトとを備えたカードコネクタにおいて、
前記コンタクトは、前記電極に接触する接点部と、該接点部から二股状に延びる一対のばね部と、各ばね部から延伸して設けられ、前記ハウジングに固定された固定部を有するとともに、前記ばね部及び接点部が前記固定部から前記表面に沿って前記カードの挿入方向に延びるように前記ハウジングに配設されることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記一対のばね部は、前記接点部から末広がりになるように延びることを特徴とする請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記コンタクトを複数有し、前記複数のコンタクトは、一つの前記コンタクトの接点部が、これと前記カードの挿入方向で隣り合う前記コンタクトの一対のばね部の間に位置するように前記ハウジングに配設されることを特徴とする請求項1又は2記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記コンタクトは、前記固定部に連続し、前記ハウジングの外部に突出する端子部を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のカードコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングの表面には、前記一対のばね部及び前記接点部の形状と相似で、前記一対のばね部及び前記接点部の前記ハウジング側への変位を許容する溝が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のカードコネクタ。
【請求項6】
前記カードコネクタは、更に前記ハウジングの表面を覆うカバーを有し、前記ハウジングと前記カバーとの間にカード挿入部を形成していることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のカードコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングと前記カバーは樹脂から一体成形されていることを特徴とする請求項6に記載のカードコネクタ。
【請求項8】
前記カバーには、前記カード挿入部から前記カードを排出するためのインジェクタが設けられていることを特徴とする請求項6又は請求項7記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−165560(P2011−165560A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28980(P2010−28980)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】