説明

カードスタッカ装置

【課題】カードのスタッカ部の構成を簡素にして小型化を可能とする。
【解決手段】スタッカ部17に積層して収容された多数のカードCを圧縮ばね15で下方に付勢して、最下方のカードCを搬送駆動ローラ20に圧接させ、その最下方のカードCの前端部の下方にカード導入部18を設け、カード導入部18の前に、搬送ニップ部35Aが最下方のカードCよりも下方にオフセットされた第2ローラユニット35を配する。第2ローラユニット35からカード導入部18に挿入されるカードCを最下方のカードCに対して斜め上方に挿入されるようにし、スタッカ部17の収容カードを上昇させることなくカードCを取り込んで収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカードを積層して収容するとともに、それらカードを発行し、さらにカードを回収して再び収容するといった動作を繰り返す機能を備えたカードスタッカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駐車場のゲートに設けられる駐車券発行/回収機はこの種のカードスタッカ装置が好適に採用されており、従来より種々のものが提供されている。例えば特許文献1に記載のカード発行回収装置は、多数のカードを水平な状態で積層して収容するスタッカ部の最下方からカードを1枚ずつ発行し、また、挿入されたカードをスタッカ部の最下方に収容するもので、カードを、1つのカード挿入/排出口から回収したり発行したりする構造となっている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−203739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の装置においては、カード搬送経路がカードの発行時と回収時で共通であり、カードの発行/回収を1つのカードの出入り口で行えることから、装置構成が簡略化できるとされている。ところがこの装置にあっては、カード回収時には、収容カードを上昇させ、その下方に空いた空間にカードを取り込んで収容させている。このような構成では、収容カードを昇降させる機構が必要であり、また、収容カードの移動分の高さが必要となってカードの収容枚数以上の高さが装置に必要となる。これらの結果、カード搬送経路の簡略化はなされたとしても、全体としては装置構成が簡素になったとは言い難く、また、装置の小型化にも不利な面がある。
【0005】
よって本発明は、多数のカードを収容し、また発行も行う機能を有するカードスタッカ装置において、カードのスタッカ部の構成を簡素にでき、これに伴って小型化も可能なカードスタッカ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のカードが積層状態で収容されるスタッカ部と、このスタッカ部に通じるカード導入部と、このカード導入部近傍に設けられ、スタッカ部に対してカードを挿入したり、スタッカ部からカードを排出したりするカード挿入/排出ローラ手段と、スタッカ部に収容される複数のカードのうちの、積層方向一端側のカードに圧接可能とされ、圧接しているカードをカード導入部に向けて送り出し、また、カード導入部から挿入されてくるカードを、積層方向一端側にあるカードと自身との間に挟みながら、スタッカ部に取り込んで収容するカード搬送ローラ手段とを備え、カード挿入/排出ローラ手段の搬送ニップ部は、スタッカ部における積層方向一端側のカードに対して、スタッカ部でのカード積層方向における一端側の方向にオフセットされており、カード挿入/排出ローラ手段から挿入されるカードは、積層方向一端側のカードに対して斜めに挿入されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、1枚のカードが、カード挿入/排出ローラ手段によってカード導入部から装置内部に導入され、そのカードは、カード搬送ローラ手段とスタッカ部に収容されているカードとの間に導かれて両者に挟まれ、該ローラ手段の駆動力によってスタッカ部に収容される。このように回収されて保管されたカードは、カード搬送ローラ手段が圧接する新たな積層方向一端側のカードとなる。次に、スタッカ部に保管されているカードは、カード搬送ローラ手段の逆動作によってカード導入部に向けて送り出され、これを受けたカード挿入/排出ローラ手段によって排出、発行される。カード搬送ローラ手段は、カードを回収して保管し、また、カードを排出して発行するという動作をともに行う。
【0008】
本発明では、カードを回収する際に、カード搬送ローラ手段と、スタッカ部の積層方向一端側のカードとの間にカードを導入し、両者の間にそのカードを挟みながらスタッカ部に収容するので、収容カードをカード搬送ローラ手段から離間させ、空いた空間にカードを導入させた後、収容カードを元の位置に戻すといった機構を必要としない。また、そのようにカードを移動させる分だけ装置を大きくする必要もない。したがって、簡素な構成および装置の小型化が可能である。
【0009】
本発明では、スタッカ部は、複数のカードを略水平な状態で積層して収容し、また、カード搬送ローラ手段は、スタッカ部の最下方に収容されているカードの下方に配設されており、これによってカード搬送ローラ手段は上方のスタッカ部の最下方のカードに圧接可能とされ、カード導入部は、スタッカ部における最下方のカードよりも下方にオフセットされている形態が、一具体的形態として挙げられる。
【0010】
また、上記形態とは逆の配置であって、複数のカードが略水平な状態で積層して収容されたスタッカ部の最上方のカードの上方にカード搬送ローラ手段が配設され、このカード搬送ローラ手段が下方のカードに圧接可能とされており、カード導入部は、スタッカ部における最上方のカードよりも上方にオフセットされている形態も一具体例として挙げられる。
【0011】
また、本発明の好ましい形態としては、カード挿入/排出ローラ手段は、カード搬送ローラ手段によってスタッカ部からカード導入部に送り込まれるカードが重送していた場合、重送カードを分離させて正規に排出されるべきカードのみを排出させる重送カード分離手段を備えている形態が挙げられる。
【0012】
また、カード発行の際には、スタッカ部から出入り口部に円滑にカードが送り込まれるために、カード導入部に、カード搬送ローラ手段によってスタッカ部から該カード導入部に送り込まれるカードをカード挿入/排出ローラ手段に案内するガイド部材を設けることが好ましい。
【0013】
本発明では、カードを搬送する手段としては、スタッカ部近傍のカード搬送ローラ手段と、カード導入部に設けられるカード挿入/排出ローラ手段とを備えている。
これらローラ手段は、カードに接触して搬送する駆動ローラを有しており、カードを搬送させるためには、これらローラ手段の間隔は、カードの搬送方向長さよりも短く設定されて少なくもいずれか一方がカードに接触しており、また、搬送を引き継ぐためには、両ローラ手段がともにカードに接触している時がある。その時に、両ローラ手段の駆動ローラの動力がカードに伝わっていると、搬送速度の差によって一方の駆動ローラが他方の駆動ローラの干渉を受け、カードには搬送歪みが生じる。そこで、この不具合を防ぎカードが円滑に搬送されるために、各駆動ローラに、カード排出またはカード収容のいずれの場合であっても、カード搬送方向の先頭側の駆動ローラのみの動力がカードに伝わるようにする動力調整機構を設けておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カード挿入/排出ローラ手段の搬送ニップ部を、スタッカ部におけるカード積層方向一端側のカードに対して、スタッカ部でのカード積層方向における一端側の方向にオフセットして、カード挿入/排出ローラ手段から挿入されるカードを積層方向一端側のカードに対して斜めに挿入されるようにしたため、収容カードを移動させることなく取り込むことができ、このため、構成を簡素化および小型化が可能であるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]カードスタッカ装置の構成
図1は一実施形態のカードスタッカ装置1の一側面の断面を示しており、符号10はベース、11はベース10上に支持された直方体状のケーシングである。ケーシング11は、天板部12と、前板部13および後板部14を有し、底部は開口している。天板部12の内面には、圧縮ばね15を介して押さえ板16が吊り下がる状態で支持されており、この押さえ板16とベース10との間が、多数のカードCが水平な状態で積層されて収容されるスタッカ部17となっている。多数のカードCは圧縮ばね15および押さえ板16によって下方に押さえ付けられ、最下方のカードCが、ベース10に支持された搬送駆動ローラ(カード搬送ローラ手段)20に圧接するようになっている。
【0016】
ベース10の上面の、最下方のカードCの前側(図1で左側)の端部に対向する部分には、前方に向かうにしたがって下り勾配となる傾斜面10aが形成され、この傾斜面10aと最下方のカードCとの間が、前方に向かうにしたがって上下方向が広がるカード導入部18となっている。このカード導入部18の前方にはカード搬送路19が形成され、このカード搬送路19には、カード挿入/排出用として、前方から順に第1ローラユニット30と第2ローラユニット(カード挿入/排出ローラ手段)35とが配設されている。
【0017】
搬送駆動ローラ20は、ケーシング11に支持された駆動軸25と一体回転するように支持され、図示せぬ駆動モータによって矢印R−F方向に回転させられる。搬送駆動ローラ20は、外周面に圧接するカードCを回転方向に沿って搬送するもので、その外周面は、確実に摩擦搬送するためにゴムで構成されている。この搬送駆動ローラ20によれば、F方向に回転すると、圧接しているスタッカ部17の最下方のカードCが図1で左方の前方に送り出され、カード導入部18から排出されていく。また、R方向に回転している状態で、カード導入部18からカードCが挿入されてくると、そのカードCを自身と最下方のカードCとの間に挟み込んでスタッカ部17に取り込み、収容する。
【0018】
搬送駆動ローラ20は、駆動モータの動力がある角度の範囲に達するまで伝わらない遊び機構(動力調整機構)を具備している。図2は遊び機構を示しており、搬送駆動ローラ20の駆動軸25の一端部には、駆動軸25に直交するピン26が圧入によって固定されている。また、その一端部には、駆動モータ25に連結されるギヤ27が回転自在に装着されている。このギヤ27は、駆動軸25側に突出するボス部27aを有しており、このボス部27aには、互いに180度離れた位置に扇状の切欠き27bが形成されている。これら切欠き27b内に、駆動軸25から突出するピン26の端部が入り込んでいる。
【0019】
この遊び機構により、図2(c)に示すように切欠き27bの一方の端面から他方の端面にピン26が当たる範囲が遊び角θとなり、ピン26が切欠き27bの端面に当たっていない場合、ギヤ27は空回りして搬送駆動ローラ20に動力が伝わらず、ボス部27aがピン26に係合した時から、駆動モータの動力がピン26を介して駆動軸25ならびに搬送駆動ローラ20に伝わるようになっている。
【0020】
第2ローラユニット35は、ベース10に回転自在に支持された駆動ローラ36と、この駆動ローラ36の上方、かつやや前方に配されて駆動ローラ36に接触する分離コロ(重送カード分離手段)37とを備えている。第2ローラユニット35は、駆動ローラ36と分離コロ37との間の搬送ニップ部35AにカードCを挟み込んで搬送し、駆動ローラ36がR方向に回転するとカード収容、F方向に回転するとカード発行となる。駆動ローラ36および分離コロ37の外周面は、カードCを確実に摩擦搬送するためにゴムで構成されている。搬送ニップ部35Aの位置は、スタッカ部17の最下方のカードCよりも下方にオフセットした位置に設定されており、この第2ローラユニット35を通って収容されるカードCは、最下方のカードCの下面に向けて斜めに挿入されていくようになっている。
【0021】
第1ローラユニット30は、ベース10に回転自在に支持された駆動ローラ31と、この駆動ローラ31の上方に配されて駆動ローラ31に接触する従動ローラ32とを備えている。第1ローラユニット30は、駆動ローラ31と従動ローラ32との間の搬送ニップ部30AにカードCを挟み込んで搬送するものであり、第2ローラユニット35と同様、駆動ローラ31がR方向に回転するとカード収容、F方向に回転するとカード発行となる。駆動ローラ31および従動ローラ32の外周面は、カードCを確実に摩擦搬送するためにゴムで構成されている。第1ローラユニット30の搬送ニップ部30Aは、第2ローラユニット35の搬送ニップ部35Aよりもやや下方に位置しており、この搬送ニップ部30Aの前方には、水平なスリット状のカード挿入/排出口19Aが形成されている。
なお、上記各ローラユニット30,35の各駆動ローラ31,36には、いずれも上記搬送駆動ローラ20と同様に、動力が伝わらない遊び角が設定された遊び機構が組み込まれている。
【0022】
第2ローラユニット35の分離コロ37は、駆動ローラ36に追従して従動回転するものであり、その回転方向は、図1に示すようにカード回収時はR方向、カード発行時はF方向である。カード発行時には、カードCが重なったまま2枚あるいはそれ以上の枚数のカードCが同時に送り出される重送が起こらないことが求められる。そこで分離コロ37には、カード搬送とともに、その重送を防ぐために、図3に示すスリップトルク機構40およびワンウェイクラッチ機構50が組み込まれている。なお、図3は、(a)分離コロ37、(b)ワンウェイクラッチ機構50、(c)スリップトルク機構40、(d)分離コロ37の分解図を、それぞれ示している。
【0023】
スリップトルク機構40は、図3(c)に示すように、軸部41aの一端にフランジ41bを有する案内軸41と、案内軸41の軸部41aの他端に固定される止めリング42と、軸部41aに装着された内側スリーブ43と、内側スリーブ43とフランジ41bとに挟まれたリング状の摩擦パッド44と、止めリング42と内側スリーブ43とに係合して内側スリーブ43を摩擦パッド44方向に付勢し、摩擦パッド44を介して内側スリーブ43を案内軸41と一体化させる圧縮ばね45とから構成され、案内軸41がホルダ31に固定されている。内側スリーブ43の外周部は、フランジ41b側から止めリング42にわたって大径部43a、中径部43b、小径部43cが形成されており、また、内周部の止めリング側には、内周大径部43dが形成されている。圧縮ばね45は、案内軸41の軸部41aと内周大径部43dとの間に形成される空間に嵌め込まれている。
【0024】
ワンウェイクラッチ機構50は、図3(b)に示すように、上記内側スリーブ43の外周小径部43cに摺動回転自在に装着される内筒部51aと、その外周側の外筒部51bとを有する外側スリーブ51と、内筒部51aと内側スリーブ43の外周中径部43bの各外周面にわたって巻回されるねじりコイルばね52とから構成されている。ねじりコイルばね52は、巻き込み方向に回転させられると、一端が内側スリーブ43に、他端が外側スリーブ51に係合するようになっている。
【0025】
スリップトルク機構40とワンウェイクラッチ機構50は内側スリーブ43を共有しており、分離コロ37は、図3(a)に示すように、各機構40,50が組み合わされ、なおかつ、外側スリーブ51の外周に、駆動ローラ36に接触するゴム製の円筒状摩擦部材60が装着されて構成されている。分離コロ37によると、案内軸41と一体の固定的な内側スリーブ43に対して外側スリーブ51は回転自在であり、その外側スリーブ51がねじりコイルばね52の巻き込み方向に回転すると、ねじりコイルばね52が外側スリーブ51の内側筒部51aと内側スリーブ43の中径部43bに巻き付き、外側スリーブ51は固定状態の内側スリーブ43に制動されて回転が停止するようになされている。
【0026】
また、外側スリーブ51がねじりコイルばね52の巻き込み方向とは反対側に回転した場合には、ねじりコイルばね52は緩んだまま外側スリーブ51とともに回転し続けるので、外側スリーブ51はねじりコイルばね52に関係なく自由に回転する。このように、分離コロ37はワンウェイクラッチ機構50によって一方向にはロックがかかり、他方向は自由回転するようになっている。ロック状態で、摩擦パッド44の摩擦力より大きなトルクが内側スリーブ43にかかると、摩擦パッド44が滑り、ねじりコイルばね52の巻き込み方向に分離コロ37は回転する。
【0027】
分離コロ37のねじりコイルばね52の巻き込み方向、すなわちロックする回転方向は、カード発行の回転方向であるF方向に一致するように設定されている。このように、分離コロ37においては、カード発行の回転方向にロックがかかることにより、後述するように発行されるカードCの重送が防がれるようになっている。
【0028】
カード導入部18の上方には、カード発行時に、スタッカ部17から送り出されるカードCを、第2ローラユニット35の搬送ニップ部35Aに円滑に導くためのガイド板(ガイド部材)70が設けられている。このガイド板70は、分離コロ37の軸方向両側に分割して配されており、発行されるカードCの前端が当接して下方に導くガイド斜面71を有している。
【0029】
なお、図1に示すように、第2ローラユニット35は、分離コロ37の軸心(すなわち案内軸41の軸心)と、搬送ニップ部35Aをそれぞれ通る水平線の間(図1で矢印Gで示す)に、スタッカ部17の最下方のカードCが位置するように上下方向の位置が設定されており、また、分離コロ37が、最下方のカードCの前端に近接する位置に前後方向の位置が設定されている。このような位置関係により、最下方のカードCが発行される際には、分離コロ37によってそのカードCは搬送ニップ部35Aに円滑に導かれる。なお、上記ガイド板70があることによって、発行されるカードCは、より確実に搬送ニップ部35Aに導かれるようになっている。
【0030】
[2]カードスタッカ装置の動作
以上が実施形態のカードスタッカ装置1の構成であり、次いでこの装置1の動作を、図4および図5を参照して説明する。なお、これら図では、カードスタッカ装置1の構成要素としては、複数のカードCが積層して収容されたスタッカ部17と、カード搬送用の第1ローラユニット30、第2ローラユニット35および搬送駆動ローラ20のみを抽出して示している。
【0031】
(i)カードの収容
図4を参照して、スタッカ部17にカードCを収容する動作を説明する。まず(a)に示すように、図1で示したカード挿入/排出口19Aから1枚のカードCが挿入されると、第1ローラユニット30および第2ローラユニット35の各駆動ローラ31,36がカード挿入方向に回転し、カードCは各ローラユニット30,35に引き込まれていく。カードCは第1ローラユニット30から第2ローラユニット35に向かう時、搬送方向先端が第2ローラユニット35の駆動ローラ36に当たり、その駆動ローラ36の回転にしたがって上側に曲がり、駆動ローラ36と分離コロ37との間に導かれる。カード収容時には、分離コロ37はカードCの挿入に追従して従動回転する。さらにカードCは、カード導入部18を通りながらスタッカ部17の最下方のカードCに向かって斜め上方に進んでいき、その最下方のカードCの下面に当接し、摺動しながら後方に送り込まれる。
【0032】
続いて、(b)に示すようにカードCの搬送方向先端が搬送駆動ローラ20とスタッカ部17の最下方のカードCとの間に入り込んだら、搬送駆動ローラ20が回収方向に回転する。これによりカードは(c)〜(e)に示すように最下方のカードCの下面に摺動しながら後方に搬送され、スタッカ部17の最下方に収容される。
【0033】
(ii)カードの発行
次に、図5を参照してスタッカ部17内に収容されているカードCをカード導入部18から排出して発行する動作を説明する。(a)の収容状態から、搬送駆動ローラ20、および第1ローラユニット30と第2ローラユニット35の各駆動ローラ、36を、カード発行方向に回転させる。これにより、スタッカ部17の最下方のカードCが、搬送駆動ローラ20により、接触している上方のカードCに摺動しながら前方に送り出され、(b)に示すように第2ローラユニット35の駆動ローラ36と分離コロ37との間に導かれる。この時、カードCの前端はガイド板70のガイド斜面71に当接し、下方に曲がりながらカード導入部18を通って第2ローラユニット35に進んでいく。引き続きカードCは前方に送り込まれ、接触する各駆動ローラ20,36,31によって順次前方に送り出され、カード挿入/排出口19Aから排出される。
【0034】
カード発行の際には、スタッカ部17の最下方のカードCが、1枚ずつ送り出される必要がある。ところが、2枚あるいはそれ以上の枚数が重なった状態で送り出される重送が起こる場合がある。しかしながら、本実施形態では、分離コロ37は、カード発行時には図3(b)で示したワンウェイクラッチ機構50によってロックがかかり回転しないので、重送が起こりかかった時、発行されるべきカードCに重なる2枚目のカードCは、第2ローラユニット35のロックしている分離コロ37に突き当たり、駆動ローラ36と分離コロ37との間に進入していく発行カードCと分離され、重送が防止される。なお、カード回収時には、分離コロ37は回収方向に自由回転するので、接触するカードCに追従して回転し、カード回収動作を妨げない。
【0035】
以上が、カード回収および発行の動作である。ここで、カードCが搬送駆動力を受ける駆動ローラは、搬送駆動ローラ20、および第1ローラユニット30と第2ローラユニット35の各駆動ローラ31,36であるが、これら駆動ローラにおいては、カードCを搬送させる速度が、カードCの搬送方向の先端側が最も速く、後端側に向かって順に遅くなるように設定される。この設定は、カード回収時およびカード発行時のいずれの場合にも適用され、すなわち、カード回収時の搬送速度は、搬送駆動ローラ20、第2ローラユニット35の駆動ローラ36、第1ローラユニット30の駆動ローラ31の順に速く、カード発行時の回転速度は、第1ローラユニット30の駆動ローラ31、第2ローラユニット35の駆動ローラ36、搬送駆動ローラ20の順に速くされる。
【0036】
このような速度差設定がなされることに加えて、上記のように、これら駆動ローラ20,31,36には図2に示した遊び機構が設けられていることの組み合わせにより、複数の駆動ローラがカードCに接触して搬送している場合には、常に、それら接触しているうちの搬送先端側の1つの駆動ローラによってのみ、カードCが搬送され、搬送後方側の駆動ローラは、接触してはいるものの遊び機構によってカードCに動力は伝わっていない状態になる。つまり、その後方側の駆動ローラにおいては、図2に示したボス部27aの切欠き27b内にピン26が存在し、そのピン26がボス部27aの端面には当接していない空回り状態になっている。その結果、複数の駆動ローラから動力が伝わることによる搬送歪みをカードCは受けることがなく、搬送先端側の1つの駆動ローラによってカードCが円滑に搬送される。
【0037】
なお、このカードスタッカ装置1においては、カードCの搬送位置を検出するカードセンサが設けられており、このカードセンサによるカード検出位置に応じて各駆動ローラ20,31,36は駆動制御される。カードCの発行時および回収時には、カードCに接触する駆動ローラのみが回転し、それ以外の駆動ローラは停止していてもよく、また、3つの駆動ローラ24,32,34bの全てが、カード搬送を終えるまで回転していてもよい。さらに、このカードスタッカ装置1においては、カードCに書き込まれた磁気データ等のデータを読み込んだり、あるいはデータをカードCに書き込んだりする機能を有し、そのようなデータの読み書きは、例えばスタッカ部17に設けた磁気ヘッド等で行われる。
【0038】
[3]カードスタッカ装置の作用効果
以上説明した本実施形態のカードスタッカ装置1によれば、カードCを回収する際には、搬送駆動ローラ20と、スタッカ部17の最下方のカードCとの間にカードCを挿入し、両者の間にそのカードCを挟みながらスタッカ部17に収容する。このため、スタッカ部17の収容カードを上昇させて搬送駆動ローラ20から離間させ、空いた空間にカードCを挿入させた後、収容カードを元の位置に戻すといった収容カード昇降機構を必要としない。また、そのように収容カードを昇降させる分だけ装置を大きくする必要もない。したがって、簡素な構成および装置の小型化が可能である。
【0039】
また、カード発行の際には、ガイド板70に沿ってカードCが下方に曲げられることにより、カード導入部18から第2ローラユニット35に向けて円滑にカードCが送り込まれる。上述したように、第2ローラユニット35の分離コロ37の軸心(すなわち案内軸41の軸心)と、第2ローラユニット35の搬送ニップ部35Aをそれぞれ通る水平線の間に、スタッカ部17の最下方のカードCが位置することにより、発行されるカードCは、分離コロ37によって搬送ニップ部35Aに円滑に導かれ、ガイド板70は、そのカードCの搬送をより円滑にするものである。例えば、スタッカ部17の最下方のカードCが分離コロ37の軸心よりも上方にある場合、カードCが前方に送り出されると、分離コロ37の上側にカードCが進んでしまい、下方のカード導入部18には導かれないといったことが起こる。本発明に係るガイド(上記実施形態ではガイド板70)は、そのような配置関係の場合であっても発行されるカードCがカード導入部18に円滑に進んでいくように案内するように構成されるものである。
【0040】
さらに、カード発行の際には、上記のように第2ローラユニット35の分離コロ37の作用によって重送が防止される、なお、重送を防止し得る構造としては、上記構成の第2ローラユニット35の他に、例えば、駆動ローラ36と分離コロ37との間の隙間が、カードCが1枚は通るものの2枚は通らない程度に調整されており、分離コロ37は、カード回収方向には自由回転し、カード発行方向には回転しないように構成されたものが挙げられる。さらに他の例としては、これと同様の構成でありながら、カード発行時には分離コロ37が回収方向(図1でR方向)に回転駆動される形態もあり、この形態では、重送されるカードCが分離コロ37によって後方に押され、確実に分離される。
【0041】
また、上記のように、カードCに搬送力を与える3つの駆動ローラ20,31,36による搬送速度を、搬送先端側から順に速くすることと、図2に示した遊び機構との組み合わせによって、常に搬送先頭側の1つの駆動ローラでカードCを搬送するので、搬送歪みをカードCは受けることがなく、カードCが円滑に搬送される。しかも、各駆動ローラ20,31,36もカードCからは負荷がかからないので、ゴムの摩耗が少なくなり、駆動ローラ20,31,36からカードCに汚れが移るといったことが起こりにくい。
【0042】
なお、上記カードスタッカ装置1は、スタッカ部17の下方に搬送駆動ローラ20を配し、回収するカードCを、最下方のカードCの下面に向けてカード導入部18から斜め上方に送り込んでいく構成であるが、この構成の上下逆の配置、すなわち図1を上下反転させたような構成でも同様の作用が得られる。すなわちその構成は、複数のカードCを水平な状態で積層して収容するスタッカ部17の上方に搬送駆動ローラ20を配し、スタッカ部17の下方に配した圧縮ばね15の力で最上方のカードCを搬送駆動ローラ20に圧接させる。そして、回収するカードCを、スタッカ部17の最上方のカードCの上面に向けてカード導入部18から斜め下方に送り込んでいくといったものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るカードスタッカ装置の側断面図である。
【図2】カードスタッカ装置の搬送駆動ローラに組み込まれる遊び機構を示す図であって、(a)は(b)のA−A線矢視図、(b)は側面図、(c)は動作説明図である。
【図3】カードスタッカ装置が具備する分離コロの詳細機構を示す側断面図であって、(a)は全体図、(b)はワンウェイクラッチ機構、(c)はスリップトルク機構、(d)は分解した状態を示している。
【図4】カード収容動作を(a)〜(e)の順に示す側面図である。
【図5】カード発行動作を(a)〜(e)の順に示す側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…カードスタッカ装置
17…スタッカ部
18…カード導入部
20…搬送駆動ローラ(カード搬送ローラ手段)
35…第2ローラユニット(カード挿入/排出ローラ手段)
36…第2ローラユニットの駆動ローラ
37…分離コロ(重送カード分離手段)
70…ガイド板(ガイド部材)
C…カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカードが積層状態で収容されるスタッカ部と、
このスタッカ部に通じるカード導入部と、
このカード導入部近傍に設けられ、前記スタッカ部に対してカードを挿入したり、スタッカ部からカードを排出したりするカード挿入/排出ローラ手段と、
前記スタッカ部に収容される複数のカードのうちの、積層方向一端側のカードに圧接可能とされ、圧接しているカードを前記カード導入部に向けて送り出し、また、前記カード導入部から挿入されてくるカードを、積層方向一端側にあるカードと自身との間に挟みながら、前記スタッカ部に取り込んで収容するカード搬送ローラ手段とを備え、
前記カード挿入/排出ローラ手段の搬送ニップ部は、前記スタッカ部における前記積層方向一端側のカードに対して、前記スタッカ部でのカード積層方向における前記一端側の方向にオフセットされており、
前記カード挿入/排出ローラ手段から挿入されるカードは、前記積層方向一端側のカードに対して斜めに挿入されることを特徴とするカードスタッカ装置。
【請求項2】
前記スタッカ部は、複数のカードを略水平な状態で積層して収容し、
前記カード搬送ローラ手段は、スタッカ部の最下方に収容されているカードの下方に配設されて、上方のカードに圧接可能とされており、
前記カード導入部は、前記スタッカ部における最下方のカードよりも下方にオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載のカードスタッカ装置。
【請求項3】
前記スタッカ部は、複数のカードを略水平な状態で積層して収容し、
前記カード搬送ローラ手段は、スタッカ部の最上方に収容されているカードの上方に配設されて、下方のカードに圧接可能とされており、
前記カード導入部は、前記スタッカ部における最上方のカードよりも上方にオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載のカードスタッカ装置。
【請求項4】
前記カード挿入/排出ローラ手段は、前記カード搬送ローラ手段によって前記スタッカ部から前記カード導入部に送り込まれるカードが重送していた場合、重送カードを分離させて正規に排出されるべきカードのみを排出させる重送カード分離手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカードスタッカ装置。
【請求項5】
前記カード導入部には、前記カード搬送ローラ手段によって前記スタッカ部から該カード導入部に送り込まれるカードを前記カード挿入/排出ローラ手段に案内するガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカードスタッカ装置。
【請求項6】
前記カード搬送ローラ手段と前記カード挿入/排出ローラ手段との間隔は、前記カードの搬送方向長さよりも短く設定され、かつ、これらカード搬送ローラ手段とカード挿入/排出ローラ手段は、いずれもカードに接触する駆動ローラを備えており、これら駆動ローラには、カード排出またはカード収容のいずれの場合であっても、カード搬送方向の先頭側の駆動ローラのみの動力がカードに伝わるようにする動力調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカードスタッカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−24431(P2008−24431A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198541(P2006−198541)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】