説明

カード用コネクタ

【課題】イジェクト機構において付勢手段がスライダから外れにくいカード用コネクタを提供する。
【解決手段】カードを挿入自在な筐体2を有し、筐体2はカードのイジェクト機構を備え、イジェクト機構は、カードの挿入及び排出に伴いスライド移動するスライダ20と、スライダ20をカードの排出方向に付勢する付勢手段21と、カードの位置に応じてスライダ20を所定位置に保持あるいはスライド自在とするカム機構とを有し、スライダ20は、カードの排出時にカム機構によりスライド自在とされて、付勢手段21の付勢により移動すると共に、規制部15によって移動端部が規定され、スライダ20は付勢手段21を係合取付するフック部30を備え、フック部30には規制部15に当接自在な腕部33が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを挿入自在として該カードと電気的に接続可能なカード用コネクタに関し、特にカードを挿入状態で保持すると共にカードを押圧することで排出するイジェクト機構を備えたカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータや電子機器等において、記録媒体を搭載したカードや機能を拡張するためのカードを挿入自在とし、カードと電気的に接続をなすカード用コネクタが知られている。カード側には、接続のために電極が露出しており、カード用コネクタには、カードを収納する筐体内にカード側の電極と接触するコンタクトが設けられる。
【0003】
カード用コネクタには、カードを簡易に固定し、また排出するために、イジェクト機構が設けられる。イジェクト機構は、挿入されたカードを所定位置で保持し、保持されているカードを外方から押圧することにより、これを排出する機構を有している。特許文献1には、イジェクト機構を有したカード用コネクタの例を示しており、この文献に記載されているように、イジェクト機構はカードの挿入、排出に伴ってスライド移動するスライダと、このスライダを排出方向に付勢する付勢手段たるコイルばねと、スライダを所定位置で保持すると共に、カードが押圧された際にはスライダをスライド自在としてコイルばねの付勢力により排出方向にスライドさせるカム機構とを有している。
【特許文献1】特開2007−66838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のカード用コネクタにおいては、コイルばねの一端部は筐体側に固定され、他端部はスライダの端部に形成された切欠に対して引っ掛かるように係合され、これによってスライダを排出方向に付勢している。しかし、コイルばねが特にカードの排出時において、スライダの端部から外れる恐れもあった。もしコイルばねがスライダから外れると、スライダが付勢されないため、正常なカード排出動作を行うことができなくなる。
【0005】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、イジェクト機構において付勢手段がスライダから外れにくいカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るカード用コネクタは、カードを挿入自在な筐体を有し、該筐体は前記カードのイジェクト機構を備えてなるカード用コネクタにおいて、
前記イジェクト機構は、前記カードの挿入及び排出に伴いスライド移動するスライダと、該スライダを前記カードの排出方向に付勢する付勢手段と、前記カードの位置に応じて前記スライダを所定位置に保持あるいはスライド自在とするカム機構とを有し、
前記スライダは、前記カードの排出時に前記カム機構によりスライド自在とされて、前記付勢手段の付勢により移動すると共に、前記規制部によって移動端部が規定され、前記スライダは前記付勢手段を係合取付するフック部を備え、該フック部には前記規制部に当接自在な腕部が形成されることを特徴として構成されている。
【0007】
また、本発明に係るカード用コネクタは、前記腕部は前記フック部に対する前記付勢手段の係合方向と交差する方向に伸びる先端部を有することを特徴として構成されている。
【0008】
さらに、本発明に係るカード用コネクタは、前記フック部は前記筐体の側面と対向する対向面部に前記付勢手段を係合取付し、前記腕部は前記対向面部から前記筐体側に向かって略L字状に突出することで、前記付勢手段の係合方向と交差する方向に伸びることを特徴として構成されている。
【0009】
さらにまた、本発明に係るカード用コネクタは、前記規制部は前記筐体を構成する金属体に一体的に形成され、前記腕部を有するフック部は前記スライダの端部に設けられると共に、金属板を折り曲げ形成してなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るカード用コネクタによれば、イジェクト機構のスライダは、カードの排出時にカム機構によりスライド自在とされて、付勢手段の付勢により移動すると共に、筐体の規制部によって移動端部が規定され、スライダは付勢手段を係合取付するフック部を備え、フック部には規制部に当接自在な腕部が形成されることにより、腕部によってスライダの移動を規制すると共に、フック部に係合取付された付勢手段が外れにくいようにすることができる。
【0011】
また、本発明に係るカード用コネクタによれば、腕部はフック部に対する付勢手段の係合方向と交差する方向に伸びる先端部を有することにより、付勢手段が一方向に移動しただけではフック部から外れることがなく、付勢手段をより外れにくくすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係るカード用コネクタによれば、フック部は筐体の側面と対向する対向面部に付勢手段を係合取付し、腕部は対向面部から筐体側に向かって略L字状に突出することで、付勢手段の係合方向と交差する方向に伸びることにより、付勢手段が筐体側に移動することは考えにくいため、スライダに衝撃力が加わった場合であっても付勢手段を外れにくくすることができる。
【0013】
さらにまた、本発明に係るカード用コネクタによれば、規制部は筐体を構成する金属体に一体的に形成され、腕部を有するフック部はスライダの端部に設けられると共に、金属板を折り曲げ形成してなることにより、金属材同士が当接してスライダの移動を規制するため、スライダの移動規制に必要な強度を確実に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるカード用コネクタの斜視図を示している。この図では、カード50を最深部まで挿入する前の状態を表している。図1に示すようにカード用コネクタ1は、カード50を保持可能な形状からなる筐体2と、筐体2の側面に設けられ挿入されたカード50を保持すると共に、カード50が押圧された際にはそれを排出するイジェクト機構3とを有して構成されている。
【0015】
筐体2は、金属板を折り曲げ形成してなる金属体11によって構成されている。金属体11は、折り曲げ形成されることで上面12と3方向に面する側面13を有している。また、金属体11のうち側面13の形成されていない一面は、開口部10とされてカード50が挿入自在となるようにしている。
【0016】
また、筐体2の内部には、カード5の挿入先端側に設けられる電極(図示しない)と接触するコンタクト(図示しない)が設けられ、カード5を開口部10から筐体2の最深部まで挿入することで、電極とコンタクトが接触して接続がなされるようにされている。
【0017】
イジェクト機構3は、筐体2を構成する金属体11の一つの側面13に設けられる。このイジェクト機構3は、カード50と連係してカード50の挿抜方向にスライド自在なスライダ20と、スライダ20をカード50の排出方向に付勢するコイルばねからなる付勢手段21と、スライダ20を所定位置で保持あるいはスライド自在とするカム機構22とからなっている。
【0018】
スライダ20は、筐体2内のカード50に対して、カード50の挿入方向に押圧されるように連係している。したがって、スライダ20はカード50が挿入されるのに伴ってスライドされ、逆に付勢手段21の付勢に伴ってスライドすることでカード50を排出する。また、筐体2を構成する金属体11の側面13には、スライダ20を案内する案内部材23が設けられる。スライダ20は、案内部材23から出没自在にスライドすることができる。
【0019】
スライダ20の付勢手段21側端部には、フック部30が設けられ、このフック部30に付勢手段21の一端部が係合し固定される。また、金属体11には、付勢手段21の他端部を係合させ保持するばね保持部14が折り曲げ形成により一体的に設けられる。付勢手段21は、一方側が金属体11に固定され、他方側がスライダ20に固定されることにより、スライダ20をカード50の排出方向に付勢した状態とする。
【0020】
図2には、カード用コネクタ1のイジェクト機構3側の側面図を示している。この図は、カード50を最深部まで挿入する前の状態であって、図1の側面図に相当する。また、案内部材23は省略して表している。図2に示すように、スライダ20には、ループ状のカム溝25が形成されており、このカム溝25に対して係合する駆動ピン24が案内部材23に設けられる。これら駆動ピン24とカム溝25によって、カム機構22が構成されている。
【0021】
駆動ピン24は、保持端24aが案内部材23に対し揺動自在に保持されると共に、スライダ20側に付勢された状態とされており、係合端24bがスライダ20のカム溝25に対して摺動自在に係合する。スライダ20がスライドすると、それに伴って駆動ピン24のカム溝25に対する係合位置が、カム溝25に沿って変化する。カム溝25は、一端部と他端部間に上下2つの経路を有し、カード50の挿入方向にスライダ20がスライドした際には、駆動ピン24の係合端24bは下側の経路を移動する。カード50を最深部まで挿入して手を離すと、スライダ20は付勢手段21の付勢によってカード50の排出側に若干移動し、それに伴って駆動ピン24の係合端24bはカム溝25に形成された保持部24cに移動する。
【0022】
図3には、カード50の保持状態におけるカード用コネクタ1のイジェクト機構3側の側面図を示している。この図に示すように、駆動ピン24の係合端24bがカム溝25の保持部24cに保持されることで、駆動ピン24は付勢手段21の付勢に対抗してスライダ20を静止状態とする。これに伴い、カード50は筐体2内で静止すると共に、この状態で電極がコンタクトと接触し、接続される。
【0023】
次に、フック部30の構成について、より詳細に説明する。図4には、フック部30付近の拡大斜視図を示している。フック部30は、スライダ20の付勢手段21側端面から突出するように設けられており、筐体2の側面13と対向する対向面部31に切欠32が形成されている。切欠32はスライダ20側の斜め下方に開口し、対向面部31の中央付近まで傾斜状に切欠かれている。このため、切欠32は開口部分から端部付近に至る傾斜面部32aを対向状に有している。
【0024】
付勢手段21の円環部21aは、フック部30の切欠32に対して、開口側から挿入され、端部において係合し固定される。このため、切欠32の傾斜面部32aは、対向する間隔を円環部21aの直径よりやや小さく形成し、切欠32の端部は円環部21aと同等の直径を有する円弧状に形成している。これにより、円環部21aに力を加えながら切欠32に挿入し、切欠32の端部に係合させることにより、円環部21aが切欠32から抜けにくいようにすることができる。
【0025】
一方で、例えばカード50を弾くなどして排出しようとした場合、フック部30と付勢手段21の間に衝撃力が加わって、円環部21aが切欠32の開口側に移動する場合がある。この場合に、円環部21aがフック部30から外れないようにするため、フック部30には腕部33が設けられている。
【0026】
腕部33は、スライダ20の移動を規制する機能も有しているため、フック部30の上下にそれぞれ同形状を有するように形成されている。図5には、フック部30のみの斜視図を示している。この図に示すように、フック部30の上側の腕部33は、フック部30の対向面部31から上方に伸びる基部33aと、基部33aから筐体2側に折り曲げられてなる先端部33bとで、略L字状をなすように形成されている。フック部30の下側の腕部33も、フック部30の対向面部31から下方に伸びる基部33aと、基部33aから筐体2側に折り曲げられてなる先端部33bとで、略L字状をなすように形成されている。
【0027】
筐体2を構成する金属体11には、側面13より外方に突出し、先端部が略L字状に折り曲げ形成されて、スライダ20のスライド方向に面する当接面部15aを有した規制部15が形成されている。カード50が排出状態にある場合、図4に示すように上下の腕部33は、それぞれ端面33cが規制部15の当接面部15aに当接している。前述のように、フック部30が設けられたスライダ20は、付勢手段21によってカード50の排出方向に付勢されており、腕部33の端面33cが規制部15の当接面部15aに当接することによって、付勢手段21の付勢に対抗してスライダ20がそれ以上スライドしないように、移動範囲を規制することができる。
【0028】
また、規制部15と腕部33は、いずれも金属板を折り曲げ形成してなり、これらが当接することによってスライダ20の移動が規制されるため、スライダ20の移動を規制するために必要な強度を確実に確保することができる。
【0029】
フック部30の下側の腕部33は、切欠32の開口端部から下方に伸びると共に、先端部33bが、付勢手段21の円環部21aが係合する方向と交差する方向である筐体2側の方向に向かって伸びている。このため、付勢手段21の円環部21aが切欠32から外れる方向、すなわち斜め下方に向かって移動したとしても、円環部21aがフック部30から外れるためには、さらに筐体2側に向きを変えて移動する必要があり、そのような移動をすることは、衝撃力が加わった場合であっても通常考えられない。
【0030】
図6には、フック部30付近の拡大斜視図であって、円環部21aが切欠32から外れた状態の図を示している。この図に示すように、円環部21aが切欠32から外れても、腕部33の位置で円環部21aはフック部30に保持された状態を保つため、付勢手段21がフック部30から外れることなく、スライダ20に対する付勢状態を維持することができる。
【0031】
このように、フック部30に筐体2側に向かう腕部33を設けたことにより、腕部33の端面33cによってスライダ20の移動を規制することができると共に、付勢手段21がフック部30から抜けにくいようにすることができ、カード用コネクタ1に確実な動作を行わせることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態におけるカード用コネクタの斜視図である。
【図2】カード用コネクタのイジェクト機構側の側面図である。
【図3】カードの保持状態におけるカード用コネクタのイジェクト機構側の側面図である。
【図4】フック部付近の拡大斜視図である。
【図5】フック部のみの拡大斜視図である。
【図6】フック部付近の拡大斜視図であって、円環部が切欠から外れた状態の図である。
【符号の説明】
【0034】
1 カード用コネクタ
2 筐体
3 イジェクト機構
10 開口部
11 金属体
14 ばね保持部
15 規制部
20 スライダ
21 付勢手段
21a 円環部
22 カム機構
23 案内部材
24 駆動ピン
25 カム溝
30 フック部
31 対向面部
32 切欠
33 腕部
50 カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを挿入自在な筐体を有し、該筐体は前記カードのイジェクト機構を備えてなるカード用コネクタにおいて、
前記イジェクト機構は、前記カードの挿入及び排出に伴いスライド移動するスライダと、該スライダを前記カードの排出方向に付勢する付勢手段と、前記カードの位置に応じて前記スライダを所定位置に保持あるいはスライド自在とするカム機構とを有し、
前記スライダは、前記カードの排出時に前記カム機構によりスライド自在とされて、前記付勢手段の付勢により移動すると共に、前記規制部によって移動端部が規定され、前記スライダは前記付勢手段を係合取付するフック部を備え、該フック部には前記規制部に当接自在な腕部が形成されることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記腕部は前記フック部に対する前記付勢手段の係合方向と交差する方向に伸びる先端部を有することを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記フック部は前記筐体の側面と対向する対向面部に前記付勢手段を係合取付し、前記腕部は前記対向面部から前記筐体側に向かって略L字状に突出することで、前記付勢手段の係合方向と交差する方向に伸びることを特徴とする請求項2記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記規制部は前記筐体を構成する金属体に一体的に形成され、前記腕部を有するフック部は前記スライダの端部に設けられると共に、金属板を折り曲げ形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−113446(P2010−113446A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284112(P2008−284112)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】