説明

カーボンナノチューブの製造方法およびカーボンナノチューブ構造

【課題】より高密度にカーボンナノチューブが製造できるようにする。
【解決手段】基板101の上に、カーボンナノチューブ成長の核となる複数の微粒子102が凝集した凝集核層103を形成する。凝集核層103を形成した基板101を、酸化性ガスの雰囲気に導入して加熱処理を施し、微粒子102の表面を清浄化する。引き続いて、基板101を、カーボンナノチューブを成長するための炭素含有ガスの雰囲気中に導入する。加えて、基板101をカーボンナノチューブの成長温度に加熱する。これらのCVD法により、凝集核層103の上に複数のカーボンナノチューブ105が成長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法およびカーボンナノチューブ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
黒鉛を筒状に丸めた構造を持つカーボンナノチューブは,アーク放電法,レーザー蒸発法,化学気相成長法(CVD法)などにより作製(合成)されている。この中で、CVD法によるカーボンナノチューブの作製においては、気相成長時の加熱で液体状態にある金属粒子(以下,「液滴金属核」と記載)が、カーボンナノチューブ合成の核として用いられる。この液滴金属核には、主に,Fe,Co,Ni,Au,Pt,Pdなどの金属が用いられている(非特許文献1,2参照)。また、これらの液滴金属核を用いたCVD法においては、大量のカーボンナノチューブ成長、長尺なカーボンナノチューブ成長、また、位置を選択したカーボンナノチューブの成長や直径を選択してカーボンナノチューブを合成することなどが実現されている(非特許文献3〜6参照)。
【0003】
液滴金属核は、Si,Ge,SiCなどの半導体からなる基板、W,Mo,Pt,Auなどの金属基板,また、ダイヤモンド,フラーレン,グラファイト,カーボンナノチューブなどの炭素基板などと反応しやすい。このため、液滴金属核を用いてカーボンナノチューブを成長させるときに、基板と液滴金属核とが合金を形成し、カーボンナノチューブ成長作用を失う問題がある(非特許文献7参照)。この問題を回避するために、液滴金属核との反応性が低いSiO2などの絶縁体基板やAl23,ZnO,MgO,ZrO2,CaO,TiO2,Y23などの金属酸化物基板が、カーボンナノチューブ成長用基板としてこれまで用いられてきた。
【0004】
また,液滴金属核をカーボンナノチューブ成長に用いる場合、CVD法では高温状態となるため、液滴金属核を高密度に基板上に配置すると、核同士が凝集、融合し、大きな粒子になり個々の粒子サイズを保てなくなる。この結果、カーボンナノチューブ成長に対する成長反応の促進作用を失ってしまうという問題点があった。従って、液滴金属核を用いた従来のカーボンナノチューブのCVD合成においては、まず、基板と核の反応性を考慮して基板選択を行う必要があった。また、核同士が凝集・融合しない低密度で、液滴金属核を基板上へ分散させていた。
【0005】
このため、液滴金属核は高密度に配置することができず、液滴金属核や基板材料を適切に選択しても、1012cm-2を越える高密度でカーボンナノチューブを成長することが困難であった(非特許文献8参照)。
【0006】
ところで、シリコンLSIの配線金属には、銅(Cu)やタングステン(W)などが用いられているが、微細化が進み、配線ルールが45nm以降の世代では、配線に流れる電流の密度がCuの許容限界を上回ると予想されている。LSIの発熱についても、LSIの高性能化と発熱抑制という二つの要求を満たす必要がある。これらに対し、カーボンナノチューブのもつCuの1000倍の電流密度耐性と10倍の熱伝導率という性質が注目されている。例えば、LSIにおいて故障原因になることが多いビア配線にカーボンナノチューブを用いる研究が進められている(非特許文献8参照)。
【0007】
しかしながら、金属を成長核とした成長方法では、前述したように、成長核同士が凝集・融合しない条件で成長する必要があるため、成長するカーボンナノチューブの密度は1012cm-2が上限であり、CuやWを著しく上回る性能を発揮するには至っていない。CuやWよりも十分に優れた特性を得るには1012cm-2超える高密度で成長することが必要となる(非特許文献9参照)。
【0008】
最近、カーボンナノチューブ成長雰囲気下において、液相の状態でない固体核でもカーボンナノチューブの成長が可能であることが示された(非特許文献10、特許文献1参照)。成長に必要な条件としては、固体核の径が5nm以下であり、表面が清浄であること、成長温度が原料ガスを熱分解するために十分に高いことが挙げられる。しかしながら、この技術においても、CuやWを著しく上回る高密度なカーボンナノチューブが得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2007−284336号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kong, J., et. al., Chem Phys Lett. 292, 567-574 (1998).
【非特許文献2】Takagi, D., et. al., Nano Lett. 6, 2642-2645 (2006).
【非特許文献3】Hata, K., et. al., Science. 306, 1362-1364 (2004).
【非特許文献4】Zheng, L. X., et. al., Nat Mater. 3, 673-676 (2004).
【非特許文献5】Javey, A. et. al., Journal of the American Chemical Society. 127, 11942-11943 (2005).
【非特許文献6】Saito, T., et. al., Journal of Physical Chemistry B. 109, 10647-10652 (2005).
【非特許文献7】Homma, Y., et. al., Journal of Physical Chemistry B. 107, 12161-12164 (2003).
【非特許文献8】Nihei, M., et. al., Jpn. Jour. Appl. Phys. Part 2-Letters. 42, L721-L723 (2003).
【非特許文献9】粟野祐二,“カーボンナノチューブの電子デバイス応用”,応用物理 73(2004)1212-1215.
【非特許文献10】Takagi, D., et. al., Nano Letters. 7, 2272-2275 (2007).
【非特許文献11】Danilenko, V. V. et. al., Phys. Sol. Stat. 46, 595-599 (2004).
【非特許文献12】Greiner, N. R., et. al., Nature 333, 440-442 (1988).
【非特許文献13】Matsumoto, S. et. al., Jpn. J. Appl. Phys. 21, L183-L185 (1982).
【非特許文献14】Matsumoto, S., et. al., Appl. Phys. Lett. 51, 737-739 (1987).
【非特許文献15】Sawabe, A. et. al., Appl. Phys. Lett. 46, 146-147 (1985).
【非特許文献16】Mania, R., et. al., Cryst. Res. Technol. 16, 785-788 (1981).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようなカーボンナノチューブの成長法を用いることによって、成長核が安定に存在可能な特定の材料からなる基板上において、比較的低密度のカーボンナノチューブを成長することは既に実現されている。ここで、カーボンナノチューブをデバイス材料として使用するには、様々な材料からなる基板上での成長や1012cm-2を超える高密度での成長が必要とされている。しかしながら、上述した技術では、この要求を満たしていないという問題があった。このため、基板を構成する材料の種類に制約されず、高密度成長が可能であるような、新たなカーボンナノチューブ成長法の開発が求められている。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、より高密度にカーボンナノチューブが製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るカーボンナノチューブの製造方法は、基板の表面上に複数の微粒子が凝集した凝集核層を形成する工程と、カーボンナノチューブの成長温度に基板を加熱した状態で基板の表面上に炭素原料ガスを供給し、微粒子を起点としてカーボンナノチューブを成長させる工程とを少なくとも備え、微粒子は成長温度で固体である材料から構成されているものである。
【0014】
上記カーボンナノチューブの製造方法において、凝集核層は、複数の微粒子が基板の上に積層して形成され、カーボンナノチューブは、凝集核層の上部の微粒子から成長するようにしてもよい。
【0015】
上記カーボンナノチューブの製造方法において、凝集核層は、真空蒸着法,スパッタ法,アーク放電法,およびCVDを含む堆積法を用いて微粒子を基板の上に直接形成する、もしくは、予め作製した微粒子が分散した溶媒を基板に塗布することで形成すればよい。
【0016】
また、本発明に係るカーボンナノチューブ構造は、複数の微粒子が凝集した凝集核層と、この凝集核層より成長した複数のカーボンナノチューブとを少なくとも備える。また、複数のカーボンナノチューブより構成された配線部を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、カーボンナノチューブを、複数の微粒子が凝集した凝集核層より成長させるようにしたので、より高密度にカーボンナノチューブが製造できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の実施の形態1におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。
【図1B】本発明の実施の形態1におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。
【図1C】本発明の実施の形態1におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。
【図2A】実施の形態1におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図2B】実施の形態1におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡像である。
【図2C】図2A,図2Bに示すカーボンナノチューブからの高波数領域におけるラマン散乱スペクトルを示す特性図である。
【図2D】図2A,図2Bに示すカーボンナノチューブからの低波数領域におけるラマン散乱スペクトルを示す特性図である。
【図3A】本発明の実施の形態2におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。
【図3B】本発明の実施の形態2におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。
【図3C】本発明の実施の形態2におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。
【図4A】実施の形態2におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図4B】実施の形態2におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図4C】実施の形態2におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図4D】実施の形態2におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図4E】実施の形態2におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図4F】実施の形態2におけるナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子として用いた凝集核層より成長させたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡像である。
【図5】本発明の実施の形態3におけるカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図6A】本発明の実施の形態4におけるカーボンナノチューブ構造を模式的に示す平面図である。
【図6B】本発明の実施の形態4におけるカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図6C】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図6D】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図6E】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図7A】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す平面図である。
【図7B】本発明の実施の形態4におけるカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図7C】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図7D】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図7E】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す平面図である。
【図9A】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図9B】本発明の実施の形態4におけるカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図9C】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図9D】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図10A】本発明の実施の形態4における他のカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【図10B】本発明の実施の形態4におけるカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0020】
[実施の形態1]
始めに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。まず、図1Aに示すように、基板101の上に、カーボンナノチューブ成長の核となる複数の微粒子102が凝集した凝集核層103を形成する。凝集核層103は、図1Aの(a)に示すように、基板101の上の全域にわたる微粒子102の単一層となるように形成してもよい。また、凝集核層103は、図1Aの(b)に示すように、基板101の上に、部分的に微粒子102が2次元的に凝集しているように形成してもよい。(a)は、基板101の全域にわたって、2次元的に微粒子102が凝集している状態である。また、(b)は、2次元的に微粒子102が凝集した複数の凝集島から凝集核層103が形成されている状態である。
【0021】
凝集核層103の形成方法としては、真空蒸着法,スパッタ法,アーク放電法,およびCVDなどの堆積法を用い、微粒子102を基板101の上に直接形成する方法がある。また、爆発法およびレーザーアブレーション法などを用いて予め作製した微粒子102ををエタノールや水などの溶媒に混合(分散)し、微粒子102が分散している溶媒を基板101に塗布することによっても、凝集核層103が形成できる。また、微粒子102が得られるならば、液相中で微粒子102を形成する方法を用いるようにしてもよい。ここで、微粒子102は、後述する清浄化の処理およびカーボンナノチューブ成長処理などの加熱処理で加わる温度において、固体である材料から構成されていることが重要である。
【0022】
次に、図1Bに示すように、凝集核層103を形成した基板101を、酸化性ガス104の雰囲気に導入して加熱処理を施し、微粒子102の表面を清浄化する。引き続いて、基板101を、カーボンナノチューブを成長するための炭素含有ガスの雰囲気中に導入する。加えて、基板101をカーボンナノチューブの成長温度に加熱する。これらのCVD法により、図1Cに示すように、凝集核層103の上に複数のカーボンナノチューブ105が成長する。このカーボンナノチューブ成長処理において、微粒子102は、融合することなく固体の状態を維持しており、この成長処理は、いわゆる固体核によるカーボンナノチューブ成長である。カーボンナノチューブ105は、凝集核層103を構成している各々の微粒子102より成長している。
【0023】
ここで、上述した清浄化の処理は、微粒子102を構成している材料によって必要になるものである。従って、微粒子102に用いる材料によっては、清浄化の処理を行わなくてもよい。なお、清浄化の処理を行う場合、清浄化の処理とカーボンナノチューブ成長処理とを、同一のCVD装置の処理室(炉)で行うようにしてもよい。
【0024】
次に、基板101および微粒子102の材料について説明する。基板101は、カーボンナノチューブの成長雰囲気中において安定であり、しかも、微粒子102と反応して微粒子102の形状を変化させることのない材質から構成されていることが重要である。例えば、Si、Ge、SiCなどの半導体、SiO2などの絶縁体、W、Mo、Pt、Auなどの金属、Al23、ZnO、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、Y23などの金属酸化物、GaN、AlN、InN、Si34などの窒化物、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン粒子、バッキーオニオン、フラーレン、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素材料、または上記材料を複合した材料より、基板101が構成されていればよい。
【0025】
また、微粒子102は、Si、Ge、SiCなどの半導体、SiO2などの絶縁体、W、Mo、Pt、Auなどの金属、Al23、ZnO、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、Y23などの金属酸化物、GaN、AlN、InN、Si34などの窒化物、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン粒子、バッキーオニオン、フラーレン、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素材料、または上記材料を複合した材料から構成すればよい。なお、上述したように、微粒子102は、カーボンナノチューブの成長温度で固体である材料から構成されていることが重要であるが、凝集核層103において、隣り合う微粒子102が、完全に分離されている必要はない。例えば、固相による拡散などにより、隣り合う微粒子102が部分的に接合していてもよい。後述するように、個々の微粒子がカーボンナノチューブが成長する範囲の曲率を備えた突起部を備えるようにしていればよい。
【0026】
これらの材料からなる微粒子102の中には、カーボンナノチューブ成長雰囲気に導入する前に酸化雰囲気で清浄化することにより、カーボンナノチューブ成長の割合が向上する材料もある。この清浄化(活性化)処理工程が行われる酸化性雰囲気とは、大気雰囲気や酸素雰囲気などである。例えば、酸素(O2)、オゾン(O3)、水蒸気(H2O)、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)などからなる酸化性ガス、またはこれらの2種以上の混合ガスの雰囲気であればよい。
【0027】
微粒子102は、0.2〜5nm、実用的には0.5〜5nmの範囲の曲率半径を持った粒子であればよい。また、基板101の上に形成された突起より、上記寸法の微粒子102が構成されていてもよい。微粒子102の曲率半径がこの範囲にあることにより、カーボンナノチューブ成長工程において十分に高い品質の単層のカーボンナノチューブを得ることができる。
【0028】
また、さらに高い収率で単層のカーボンナノチューブを得るためには、微粒子102の曲率半径が0.5〜2.5nmの範囲にあることがより好ましい。微粒子102はCVD雰囲気下において、融解せずに、個々の形状を保つことができる。このため、凝集核層103とすることで、微粒子102を1012cm-2以上の密度で基板101の上に形成することが可能である。
【0029】
ところで、微粒子102の清浄化の為の酸化雰囲気中における加熱処理の温度は、基本的には、カーボンナノチューブの成長用の基板101および微粒子102が変形せず、しかも微粒子102と基板101とが反応しない温度を上限とし、これ以下の温度で行われる。基板101と微粒子102の種類により、酸化雰囲気加熱処理の温度範囲は異なる。例えば、ダイヤモンドからなる微粒子102を用いる場合、この清浄化処理の加熱温度は、ダイヤモンドが燃焼し始める600〜700℃程度で行われる。ダイヤモンド以外の材料においても、ほとんどの材料においては、400〜1000℃での加熱が最適領域である。
【0030】
酸化雰囲気中における加熱処理時間は、微粒子102,基板101の材料および加熱温度により異なるが、例えば30秒間〜30分間程度で効果が出る。また、この加熱処理における圧力条件も広い範囲で選択可能であるが、大気圧でも可能である。
【0031】
酸化処理の工程を含む成長法においては、酸化処理後直後にカーボンナノチューブ成長用炭素含有ガス雰囲気に導入することがカーボンナノチューブの成長密度を向上させる重要な点である。具体的には、図1Bに示す、微粒子102の清浄化工程で、微粒子102の清浄化処理のために供給される酸化性ガス104を、直接、アルゴンガスやアルゴンガスと水素との混合ガスなどの不活性ガスで置換し、この後、カーボンナノチューブ成長用炭素含有ガスを導入し、カーボンナノチューブ成長処理を行う。このように、微粒子102の清浄化処理およびカーボンナノチューブ成長処理を連続して行うことが好ましい。
【0032】
なお、酸化性ガスを不活性ガスに直接置換することに限るものではなく、酸化性ガスを一度真空排気した後に、カーボンナノチューブ成長用炭素含有ガスを供給してカーボンナノチューブ成長工程に移行してもよい。この成長法においては、清浄化処理後の微粒子102が大気による汚染を受けないように、粒子清浄化処理およびカーボンナノチューブ成長工程を同一の炉で行われることが望ましい。微粒子102の清浄化法においては微粒子102が清浄化されるならば、酸化処理に限らず、水素プラズマなど、他の方法も適宜使用することができる。
【0033】
次に、炭素含有ガスについて説明する。カーボンナノチューブを成長させるための炭素含有ガスは、構成元素として炭素を含む原料ガス、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガスなどの飽和炭化水素ガス、エチレンガス、アセチレンガス、ベンゼンガスなどの不飽和炭化水素ガス、メタノールガス、エタノールガスなどのアルコールガス、一酸化炭素ガスなどの炭素系ガスであればよい。これらの炭素含有ガスは、当該炭素含有ガスを希釈する目的で、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、窒素ガス、およびこれらの混合ガスなどの不活性ガスと共に導入してもよい。炭素含有ガスの具体的な例としては、エタノール中をバブリングしてエタノール蒸気を含ませたアルゴンガスおよび水素ガスの混合ガスを挙げることができる。
【0034】
カーボンナノチューブ成長工程においては、例えば供給される炭素含有ガスがエタノールやアセチレンガスである場合、基板101を600〜900℃に加熱することが好ましく、800〜850℃に加熱することがより好ましい。また、炭素含有ガスがメタンである場合、基板101を900℃〜1100℃に加熱することが好ましい。他の炭素含有ガスを用いたカーボンナノチューブ成長温度は、用いる炭素含有ガスの熱分解温度を考慮し、適宜選択できる。また、カーボンナノチューブ成長工程においては圧力条件を、133.322〜93325.4Paとすることが好ましい。
【0035】
これらは、炭素含有ガスの熱分解を利用した微粒子102によるカーボンナノチューブ成長条件である。炭素含有ガスは、通電加熱により熱せられたフィラメント(WやTaなど)やプラズマ中に晒されることで、高温で熱せられた状態と同様の活性を示す。このような、フィラメントやプラズマをカーボンナノチューブ成長工程に組み込むことにより、微粒子102からのカーボンナノチューブ成長の温度を600℃以下に下げることも可能である。
【0036】
以上に説明した本実施の形態におけるカーボンナノチューブの成長方法によって得られるカーボンナノチューブの直径は、例えば0.4〜5nmである。得られるカーボンナノチューブの直径は、例えば使用される微粒子102の曲率半径,カーボンナノチューブ成長工程における加熱温度,および炭素含有ガスの供給圧力などを制御することによって調整することができる。カーボンナノチューブの直径は、例えばラマンスペクトルにより算出することができる。具体的には、ラジアルブリージングモード(RBM)とよばれるカーボンナノチューブの直径方向の振動に起因するピークの波数νと、カーボンナノチューブの直径d(nm)との関係式「d=248/ν」より得ることができる。
【0037】
以上に説明した本実施の形態におけるカーボンナノチューブの成長方法によれば、高品質のカーボンナノチューブを高密度に成長させることができる。微粒子102を構成する材料によっては、大気に曝されることにより、微粒子102の表面に被覆化合物層が形成され、カーボンナノチューブの成長を妨げる。しかしながら、このような微粒子102であっても、清浄化処理により、カーボンナノチューブを成長させることができる。また、清浄化処理を必要としない微粒子102であっても、清浄化処理以外の成長温度,成長ガス雰囲気、および成長圧力などの条件は同様であり、清浄化処理有り/無しにかかわらず、高密度で高品質なカーボンナノチューブを得ることが可能である。
【0038】
図2A,図2Bに、ナノサイズの曲率を持つダイヤモンドを微粒子102として用いたカーボンナノチューブの成長例を示す。ダイヤモンドは爆発法で得られた2−5nmの局率半径を持つ名のサイズのダイヤモンド粒子を用いた(非特許文献11,12参照)。爆発法で得られたダイヤモンド粒子は、エタノールや蒸留水などの液中に分散し、スピンコォータや、滴下法などにおいて基板上に塗布した。ナノサイズのダイヤモンド微粒子を得る方法は、爆発法以外にも熱CVD法および、ホットフィラメント、プラズマなどを組み込んだCVD法においても作製できる(非特許文献13〜16参照)。CVD法においては、基板上に直接ナノサイズのダイヤモンドを形成することが可能であるため、液中の分散や基板への塗布の工程は省くことが可能である。基板はシリコン酸化膜(100nm)/シリコン基板である。
【0039】
図2Aは走査型電子顕微鏡像であり、図2Bは、透過型電子顕微鏡像である。ダイヤモンド粒子が2次元的に凝集した凝集核層から、単層カーボンナノチューブが製造できることが示されている。
【0040】
また、図2Cは、図2A,図2Bに示すカーボンナノチューブからの高波数領域におけるラマン散乱スペクトルを示している。1590cm-1付近で観測されるシグナルは、測定対象がグラファイト構造を取っていることを示すG−bandと呼ばれる振動モードに対応する。また、図2Dは、図2A,図2Bに示すカーボンナノチューブからの、100〜500cm-1の低波数領域におけるラマン散乱スペクトルを示している。低周波領域で観測される複数のシグナルは、単層のカーボンナノチューブに特徴的な振動モードに由来するものである。以上の結果は、ダイヤモンド粒子が2次元的に凝集した凝集核層からカーボンナノチューブが製造できることを明瞭に示している。
【0041】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態では、複数の微粒子を基板の上に積層することで微粒子が3次元的に凝集した凝集核層を用いるようにしたところに特徴がある。図3は、実施の形態2におけるカーボンナノチューブの製造方法を説明するための工程図である。まず、図3Aに示すように、基板301の上に、カーボンナノチューブ成長の核となる複数の微粒子302aおよび複数の微粒子302bが積層されて凝集した凝集核層303を形成する。
【0042】
凝集核層303は、図3Aの(a)に示すように、基板301の上の全域にわたる単一層となるように形成してもよい。また、凝集核層303は、図3Aの(b)に示すように、基板301の上に、部分的に凝集しているように形成してもよい。(a)は、基板301の全域にわたって、微粒子302aおよび微粒子302bが3次元的に凝集している状態である。また、(b)は、微粒子302aおよび微粒子302bが3次元的に凝集した複数の凝集島から凝集核層303が形成されている状態である。
【0043】
凝集核層303の形成方法としては、前述した実施の形態1と同様であり、真空蒸着法,スパッタ法,アーク放電法,およびCVDなどの堆積法を用い、微粒子を基板301の上に直接形成する方法がある。また、爆発法およびレーザーアブレーション法などを用いて予め作製した微粒子ををエタノールや水などの溶媒に混合(分散)し、微粒子が分散している溶媒を基板301に塗布することによっても、凝集核層303が形成できる。本実施の形態2では、前述した実施の形態1の場合に比較し、より厚く堆積させることが重要である。例えば、溶媒中の微粒子の濃度(数)を上げればよい。また、繰り返し塗布するようにしてもよい。ここで、本実施の形態においても、微粒子は、後述する清浄化の処理およびカーボンナノチューブ成長処理などの加熱処理で加わる温度において、固体である材料から構成されていることが重要である。
【0044】
次に、図3Bに示すように、凝集核層303を形成した基板301を、酸化性ガス304の雰囲気に導入して加熱処理を施し、微粒子302の表面を清浄化する。引き続いて、基板301を、カーボンナノチューブを成長するための炭素含有ガスの雰囲気中に導入する。加えて、基板301をカーボンナノチューブの成長温度に加熱する。これらのCVD法により、図3Cに示すように、凝集核層303の上層の各々の微粒子302aよりカーボンナノチューブ305が成長する。本実施の形態においても、前述した実施の形態と同様に、高密度で高品質なカーボンナノチューブ305が製造できる。このカーボンナノチューブ成長処理において、微粒子302aは、融合することなく固体の状態を維持しており、この成長処理は、いわゆる固体核によるカーボンナノチューブ成長である。
【0045】
ここで、本実施の形態におけるカーボンナノチューブの製造方法によれば、複数の微粒子302aおよび複数の微粒子302bを積層して凝集することで凝集核層303を形成している。これにより、凝集核層303の上方(例えば最上部)の微粒子302aは、基板301と接触することがない。このため、微粒子を構成する材料と基板301とが、加熱などにより化合物や合金を形成する場合であっても、凝集核層303の最上部の微粒子302aは、基板301との反応が発生しにくい状態となっている。
【0046】
例えば、FeもしくはFeの合金より基板を構成し、シリコンより微粒子を構成すると、Fe基板の上に接して配置されているシリコン微粒子は、鉄と化合物を形成する。このため、Fe基板に接しているシリコン微粒子は、CVD法によるカーボンナノチューブの成長核として作用しない。
【0047】
このような場合であっても、本実施の形態によれば、例えば、凝集核層303の最上部の微粒子302aは、基板301と接触していないので、基板301の構成材料と化合物を形成することが無い。このため、基板301を構成する材料と反応するような材料より微粒子を構成しても、本実施の形態によれば、高密度で高品質なカーボンナノチューブを製造することができる。
【0048】
なお、本実施の形態においても、前述した実施の形態1と同様であり、上述した清浄化の処理は、微粒子302a,微粒子302bを構成している材料によって必要になるものである。材料によっては、清浄化処理によりカーボンナノチューブの成長密度が向上する。従って、微粒子に用いる材料によっては、清浄化の処理を行わなくてもよい。なお、清浄化の処理を行う場合、清浄化の処理とカーボンナノチューブ成長処理とを、同一のCVD装置の処理室(炉)で行うようにしてもよい。
【0049】
次に、基板301および微粒子302a,302bの材料について説明する。基板301は、カーボンナノチューブの成長雰囲気中において安定である材質から構成されていることが重要である。例えば、Si、Ge、SiCなどの半導体、SiO2などの絶縁体、W、Mo、Pt、Auなどの金属、Al23、ZnO、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、Y23などの金属酸化物、GaN、AlN、InN、Si34などの窒化物、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン粒子、バッキーオニオン、フラーレン、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素材料、または上記材料を複合した材料より、基板301が構成されていればよい。
【0050】
また、微粒子302a,302bは、上述した基板301の材料に対する反応性などによる制限はなく、前述したように、カーボンナノチューブ成長処理の処理温度において、微粒子同士が融合して平坦な膜にならないものであればよい。例えば、微粒子302a,302bは、Si、Ge、SiCなどの半導体、SiO2などの絶縁体、W、Mo、Pt、Auなどの金属、Al23、ZnO、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、Y23などの金属酸化物、GaN、AlN、InN、Si34などの窒化物、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン粒子、バッキーオニオン、フラーレン、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素材料、または上記材料を複合した材料から構成すればよい。
【0051】
これらの材料からなる微粒子302a,302bの中には、前述した実施の形態1と同様であり、カーボンナノチューブ成長雰囲気に導入する前に酸化雰囲気で清浄化することにより、カーボンナノチューブ成長の割合が向上する材料もある。この清浄化(活性化)処理工程が行われる酸化性雰囲気とは、大気雰囲気や酸素雰囲気などである。例えば、酸素(O2)、オゾン(O3)、水蒸気(H2O)、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)などからなる酸化性ガス、またはこれらの2種以上の混合ガスの雰囲気であればよい。
【0052】
また、本実施の形態における微粒子302a,302bも、0.2〜5nm、実用的には0.5〜5nmの範囲の曲率半径を持った粒子であればよい。また、さらに高い収率で単層のカーボンナノチューブを得るためには、微粒子302a,302bの曲率半径が0.5〜2.5nmの範囲にあることがより好ましい。例えば、凝集核層303において、個々の微粒子が、上述したような曲率半径の突起部を備えている状態であればよい。このような形状の微粒子302a,302bにより、カーボンナノチューブ成長工程において十分に高い品質の単層のカーボンナノチューブを得ることができる。
【0053】
ところで、微粒子302a,302bの清浄化の為の酸化雰囲気中における加熱処理の温度は、基本的には、カーボンナノチューブの成長用の基板301が変形せず、しかも微粒子302a,302bと基板301とが反応しない温度を上限とし、これ以下の温度で行われる。基板301と微粒子302a,302bの種類により、酸化雰囲気加熱処理の温度範囲は異なる。例えば、ダイヤモンドからなる微粒子302a,302bを用いる場合、この清浄化処理の加熱温度は、ダイヤモンドが燃焼し始める600〜700℃程度で行われる。ダイヤモンド以外の材料においても、ほとんどの材料においては、400〜1000℃での加熱が最適領域である。
【0054】
酸化雰囲気中における加熱処理時間は、微粒子302a,302b,基板301の材料および加熱温度により異なるが、例えば30秒間〜30分間程度で効果が出る。また、この加熱処理における圧力条件も広い範囲で選択可能であるが、大気圧でも可能である。
【0055】
酸化処理の工程を含む成長法においては、酸化処理後直後にカーボンナノチューブ成長用炭素含有ガス雰囲気に導入することがカーボンナノチューブの成長密度を向上させる重要な点である。具体的には、図1Bに示す、微粒子302a,302bの清浄化工程で、微粒子302a,302bの清浄化処理のために供給される酸化性ガス104を、直接、アルゴンガスやアルゴンガスと水素との混合ガスなどの不活性ガスで置換し、この後、カーボンナノチューブ成長用炭素含有ガスを導入し、カーボンナノチューブ成長処理を行う。このように、微粒子302a,302bの清浄化処理およびカーボンナノチューブ成長処理を連続して行うことが好ましい。
【0056】
なお、酸化性ガスを不活性ガスに直接置換することに限るものではなく、酸化性ガスを一度真空排気した後に、カーボンナノチューブ成長用炭素含有ガスを供給してカーボンナノチューブ成長工程に移行してもよい。この成長法においては、清浄化処理後の微粒子が大気による汚染を受けないように、粒子清浄化処理およびカーボンナノチューブ成長工程を同一の炉で行われることが望ましい。微粒子302a,302bの清浄化法においては微粒子302a,302bが清浄化されるならば、酸化処理に限らず、水素プラズマなど、他の方法も適宜使用することができる。
【0057】
次に、炭素含有ガスについて説明する。カーボンナノチューブを成長させるための炭素含有ガスは、構成元素として炭素を含む原料ガス、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガスなどの飽和炭化水素ガス、エチレンガス、アセチレンガス、ベンゼンガスなどの不飽和炭化水素ガス、メタノールガス、エタノールガスなどのアルコールガス、一酸化炭素ガスなどの炭素系ガスであればよい。これらの炭素含有ガスは、当該炭素含有ガスを希釈する目的で、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、窒素ガス、およびこれらの混合ガスなどの不活性ガスと共に導入してもよい。炭素含有ガスの具体的な例としては、エタノール中をバブリングしてエタノール蒸気を含ませたアルゴンガスおよび水素ガスの混合ガスを挙げることができる。これらは、前述した実施の形態1と同様である。
【0058】
カーボンナノチューブ成長工程においては、例えば供給される炭素含有ガスがエタノールやアセチレンガスである場合、基板301を600〜900℃に加熱することが好ましく、800〜850℃に加熱することがより好ましい。また、炭素含有ガスがメタンである場合、基板301を900℃〜1100℃に加熱することが好ましい。他の炭素含有ガスを用いたカーボンナノチューブ成長温度は、用いる炭素含有ガスの熱分解温度を考慮し、適宜選択できる。また、カーボンナノチューブ成長工程においては圧力条件を、133.322〜93325.4Paとすることが好ましい。
【0059】
これらは、炭素含有ガスの熱分解を利用した微粒子302a,302bによるカーボンナノチューブ成長条件である。炭素含有ガスは、通電加熱により熱せられたフィラメント(WやTaなど)やプラズマ中に晒されることで、高温で熱せられた状態と同様の活性を示す。このような、フィラメントやプラズマをカーボンナノチューブ成長工程に組み込むことにより、微粒子302a,302bからのカーボンナノチューブ成長の温度を600℃以下に下げることも可能である。
【0060】
以上に説明した本実施の形態におけるカーボンナノチューブの成長方法によって得られるカーボンナノチューブの直径は、例えば0.4〜5nmである。得られるカーボンナノチューブの直径は、例えば使用される微粒子302a,302bの曲率半径や、カーボンナノチューブ成長工程における加熱温度や炭素含有ガスの供給圧力を制御することによって調整することができる。カーボンナノチューブの直径は、前述したように、ラマンスペクトルにより算出することができる。
【0061】
以上のカーボンナノチューブの成長方法によれば、高品質のカーボンナノチューブを高密度に成長させることができる。微粒子302a,302bを構成する材料によっては、大気に曝されることにより、微粒子302a,302bの表面に被覆化合物層が形成され、カーボンナノチューブの成長を妨げる。しかしながら、このような微粒子302a,302bであっても、清浄化処理により、カーボンナノチューブを成長させることができる。また、清浄化処理を必要としない微粒子302a,302bであっても、清浄化処理以外の成長温度,成長ガス雰囲気、および成長圧力などの条件は同様であり、清浄化処理有り、無しにかかわらず高密度で高品質なカーボンナノチューブを得ることが可能である。
【0062】
図4A,図4B,図4C,図4D,図4E,図4Fに、ナノサイズ(2〜5nm)の曲率半径を持つダイヤモンドを微粒子302a,302bとして用いたカーボンナノチューブの成長例を示す。ダイヤモンドは爆発法で得られた2−5nmの局率半径を持つ名のサイズのダイヤモンド粒子を用いた(非特許文献11,12参照)。爆発法で得られたダイヤモンド粒子は、エタノールや蒸留水などの液中に分散させられ、スピンコォータや、滴下法などにおいて基板上に塗布される。ナノサイズのダイヤモンド微粒子を得る方法は、爆発法以外にも熱CVD法および、ホットフィラメント、プラズマなどを組み込んだCVD法においても作製できる(非特許文献13〜16参照)。CVD法においては、基板上に直接ナノサイズのダイヤモンドを形成することが可能であるため、液中の分散や基板への塗布の工程は省くことが可能である。
【0063】
また、図4Aは基板としてシリコン、図4Bは基板として酸化シリコン、図4Cは基板として酸化アルミニウム、図4Dは基板としてPt、図4Eは基板としてグラファイト、
および図4Fは基板としてダイヤモンドを用いている。また、これらは、走査型電子顕微鏡像を示している。いずれにおいても、ダイヤモンド粒子が凝集した凝集核層から、単層カーボンナノチューブが製造できることが示されている。
【0064】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。以下では、上述したカーボンナノチューブの製造方法により形成したカーボンナノチューブを配線材料に適用して構成したカーボンナノチューブ構造について説明する。図5は、本実施の形態3におけるカーボンナノチューブを配線として用いたカーボンナノチューブ構造を模式的に示す断面図である。
【0065】
この素子は、シリコン基板501上に形成された絶縁層502と、絶縁層502上の所定の箇所に形成された例えば銅からなる金属配線503と、所定の形状の開口部(配線ビアホール)を有する例えばシリコン酸化物からなる層間絶縁層504と、層間絶縁層504の開口部の底面に配置された凝集核層505と、凝集核層505から成長した複数のカーボンナノチューブよりなる配線部506と、層間絶縁層504の上に形成されて配線部506に接続する金属配線507とを備えている。配線部506を構成しているカーボンナノチューブは、1012cm-2を超える高密度に配置されている。この素子は、配線ビアホールの底部に露出している金属配線503の上に接して形成した凝集核層505を用いて成長させたカーボンナノチューブにより、配線部506を構成しているところに特徴がある。
【0066】
凝集核層505および凝集核層505からのカーボンナノチューブ成長方法としては、前述した実施の形態におけるカーボンナノチューブの製造方法を用いればよい。ここで、凝集核層505を構成する微粒子に、半導体、金属酸化物、絶縁体、窒化物および一部の炭素材料を用いた場合には、金属配線503との電気的な導通を十分に得るために、微粒子を2次元的に凝集させて凝集核層505とすればよい。これは、前述した次子誌の形態1で説明した製造方法と同様である。これに対し、微粒子に、金属や導電性を有する炭素材料を用いる場合には、前述したいずれの製造方法であってもよい。
【0067】
一方、凝集核層505からのカーボンナノチューブの成長方法としては、前述した熱CVD法ではなく、ホットフィラメントCVD法やプラズマCVD法を用い、350〜500℃で低温成長することが電子素子を作製する上で好ましい。
【0068】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。以下では、上述したカーボンナノチューブの製造方法により形成したカーボンナノチューブを配線に適用した他の例について説明する。
【0069】
まず、図6Aの平面図に示すカーボンナノチューブ構造(素子)では、絶縁層601の上には、金属配線602および金属配線603が形成されている。また、金属配線603の側の金属配線602の側部の絶縁層601の上には、複数の微粒子604が凝集した凝集核層641が形成され、凝集核層641から、複数のカーボンナノチューブ605が成長している。カーボンナノチューブ605は、凝集核層641より金属配線603にかけて成長し、成長端が金属配線603に接続している。図6Bは、この状態を示す断面図である。絶縁層601は、基板600の上に形成されている。本例では、金属配線602と金属配線603とが、凝集核層641およびこれより成長させた高密度に配置されている複数のカーボンナノチューブ605を配線として接続されている。
【0070】
次に、図6Cの断面図に示すカーボンナノチューブ構造では、基板600の上の絶縁層601の上に、金属配線621および金属配線631を備える。また、金属配線621の上には、凝集核層641が形成され、凝集核層641から、複数のカーボンナノチューブ605が成長している。カーボンナノチューブ605は、金属配線621より金属配線631にかけて成長し、成長端が金属配線631に接続している。本例では、金属配線621と金属配線631とが、凝集核層641より成長させた高密度に配置されている複数のカーボンナノチューブ605を配線として接続されている。
【0071】
上述したカーボンナノチューブ構造では、予め形成されている金属配線間をカーボンナノチューブで接続したが、以下に説明するように、カーボンナノチューブを形成してから、金属配線を形成してもよい。まず、図6Dの断面図に示すように、基板600の上の絶縁層601の上に,凝集核層641を形成する。次に、凝集核層641より、基板平面方向に、高密度に複数のカーボンナノチューブ605を成長させる。
【0072】
以上のようにして、カーボンナノチューブ605を形成したら、図6Eの断面図に示すように、凝集核層641が形成されていた箇所を通る金属配線607と、カーボンナノチューブ605の成長端を通る金属配線608とを、絶縁層601の上に形成する。これにより、金属配線607と金属配線608とが、高密度に形成された複数のカーボンナノチューブ605を配線として接続されることになる。
【0073】
次に、図7Aの平面図に示すカーボンナノチューブ構造(素子)では、絶縁層601の上には、金属配線602および金属配線603が形成されている。また、金属配線603の側の金属配線602の側部の絶縁層601の上には、複数の微粒子604が凝集した凝集核層641が形成され、凝集核層641から、複数のカーボンナノチューブ605が成長している。カーボンナノチューブ605は、凝集核層641より金属配線603にかけて成長している。
【0074】
同様に、金属配線602の側の金属配線603の側部の絶縁層601の上には、複数の微粒子604が凝集した凝集核層641が形成され、凝集核層641から、複数のカーボンナノチューブ605が成長している。カーボンナノチューブ605は、凝集核層641より金属配線602にかけて成長している。
【0075】
これら、金属配線602の側より成長しているカーボンナノチューブ605と、金属配線603の側より成長しているカーボンナノチューブ605との、各々の成長端の部分が、接触または絡むことで絶縁層601の上で接続している。図7Bは、この状態を示す断面図である。絶縁層601は、基板600の上に形成されている。本例では、金属配線602と金属配線603とが、各々側に配置した凝集核層641およびこれより成長させた高密度に配置されている複数のカーボンナノチューブ605を配線として接続されている。
【0076】
次に、図7Cの断面図に示すカーボンナノチューブ構造では、基板600の上の絶縁層601の上に、金属配線621および金属配線631を備える。また、金属配線621の上には、所定の距離離間する2箇所に凝集核層641が形成され、各々の凝集核層641から、対向する方向に複数のカーボンナノチューブ605が成長している。カーボンナノチューブ605は、金属配線621および金属配線631より対向する方向に成長し、各々の成長端の部分が接触または絡むことで絶縁像601の上で接続している。本例では、金属配線621と金属配線631とが、各々に配置した凝集核層641より成長させた高密度に配置されている複数のカーボンナノチューブ605を配線として接続されている。
【0077】
上述したカーボンナノチューブ構造では、予め形成されている金属配線間をカーボンナノチューブで接続したが、以下に説明するように、カーボンナノチューブを形成してから、金属配線を形成してもよい。まず、図7Dの断面図に示すように、基板600の上の絶縁層601の上の2箇所に凝集核層641を形成する。次に、各々の凝集核層641より、基板平面方向に、高密度に複数のカーボンナノチューブ605を成長させる。
【0078】
以上のようにして、各々の側よりカーボンナノチューブ605を形成したら、図7Eの断面図に示すように、一方の凝集核層641が形成されていた箇所を通る金属配線607と、他方の凝集核層641が形成されていた箇所を通る金属配線608とを、絶縁層601の上に形成する。これにより、金属配線607と金属配線608とが、高密度に形成された複数のカーボンナノチューブ605を配線として接続されることになる。
【0079】
次に、図8の平面図に示すカーボンナノチューブ構造では、絶縁層601の上には、金属配線602および金属配線603が形成されている。また、金属配線602と金属配線603との間の絶縁層601の上には、複数の微粒子604が凝集した凝集核層641が形成され、凝集核層641から、複数のカーボンナノチューブ605が成長している。カーボンナノチューブ605は、凝集核層641より基板平面方向に成長している。
【0080】
これら、凝集核層641より高密度に成長している複数のカーボンナノチューブ605を配線とし、金属配線602と金属配線603とが接続されている。
【0081】
次に、図9Aの断面図に示すカーボンナノチューブ構造では、基板600の上に直接形成した多層構造の凝集核層641の最上層の微粒子604より、高密度にカーボンナノチューブ605を成長させている。カーボンナノチューブ605は、基板平面方向に成長している。このように、凝集核層641の上にカーボンナノチューブ605を成長させた状態で、図9Bに示すように、凝集核層641を挟むように金属配線607および金属配線608を形成すれば、金属配線607と金属配線608とが、高密度に成長しているカーボンナノチューブ605を配線として接続された状態が得られる。また、多層構造の凝集核層641としているので、微粒子604と基板600とが反応する場合であっても、高品質なカーボンナノチューブ605を安定して高密度に成長させることができる。
【0082】
また、微粒子604と基板600とが反応する場合、図9Cの断面図に示すように、基板600の上に酸化シリコンなどの絶縁材料より構成された絶縁層601を形成し、この上に凝集核層641を形成し、上述同様にカーボンナノチューブ605を成長させてもよい。この場合、凝集核層641は、多層構造にする必要はなく、絶縁層601の上に1層の凝集核層641を形成してもよい。このように、凝集核層641の上にカーボンナノチューブ605を成長させた状態で、図9Dに示すように、凝集核層641を挟むように金属配線607および金属配線608を形成すれば、金属配線607と金属配線608とが、高密度に成長しているカーボンナノチューブ605を配線として接続された状態が得られる。
【0083】
一方、微粒子604と基板600とが反応しない場合、図10Aの断面図に示すように、基板600の上に、1層の凝集核層641を形成してもよい。このように、凝集核層641の上にカーボンナノチューブ605を成長させた状態で、図10Bに示すように、凝集核層641を挟むように金属配線607および金属配線608を形成すれば、金属配線607と金属配線608とが、高密度に成長しているカーボンナノチューブ605を配線として接続された状態が得られる。
【0084】
なお、上述では、複数の微粒子が凝集した凝集核層より成長した複数のカーボンナノチューブによるカーボンナノチューブ構造を、配線に適用した場合について説明したが、これに限るものではない。カーボンナノチューブ構造は、例えば、熱伝導体として用いることも可能であり、配線に限るものではない。また、本実施の形態の構造によれば、電界効果による電子放出をより高密度に得ることができ、例えば、高輝度の蛍光表示が可能となる。
【符号の説明】
【0085】
101…基板、102…微粒子、103…凝集核層、104…酸化性ガス、105…カーボンナノチューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に複数の微粒子が凝集した凝集核層を形成する工程と、
カーボンナノチューブの成長温度に前記基板を加熱した状態で前記基板の表面上に炭素原料ガスを供給し、前記微粒子を起点としてカーボンナノチューブを成長させる工程と
を少なくとも備え、
前記微粒子は前記成長温度で固体である材料から構成されていることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法において、
前記凝集核層は、複数の前記微粒子が前記基板の上に積層して形成され、
前記カーボンナノチューブは、前記凝集核層の上部の微粒子から成長する
ことを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のカーボンナノチューブの製造方法において、
前記凝集核層は、
真空蒸着法,スパッタ法,アーク放電法,およびCVDを含む堆積法を用いて前記微粒子を前記基板の上に直接形成する、もしくは、予め作製した前記微粒子が分散した溶媒を前記基板に塗布することで形成する
ことを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
複数の微粒子が凝集した凝集核層と、
この凝集核層より成長した複数のカーボンナノチューブと
を少なくとも備えることを特徴とするカーボンナノチューブ構造。
【請求項5】
請求項4記載のカーボンナノチューブ構造において、
複数の前記カーボンナノチューブより構成された配線部を備えることを特徴とするカーボンナノチューブ構造。

【図1A】
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【図1C】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3C】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2010−228970(P2010−228970A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78576(P2009−78576)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】