説明

カーボンナノチューブを含有する材料及びこれらの材料の製造方法並びにこれらの材料の使用

カーボンナノチューブ(CNT)を含有する粒子状又は粉末状の材料であって、この材料には、例えば、10nm乃至500,000nmの厚さの金属層と10nm乃至100,000nmの厚さのCNT層が交互に積層されている。この材料は、機械的合金化によって製造され、例えば、金属粒子とCNT粒子の変形、破砕及び溶着を繰り返すことによって実行され、好ましくは、ボールミルの内部で粉砕されることによって行われる。このボールミルは、ミリングチャンバーと、ミリング体及び高エネルギーの球体衝突を生じる回転体としての複数のミリングボールとを有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含有する材料に関するものである。本発明は、また、これらの材料の製造方法と、成形体のためのこれらの材料の使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは既知である。カーボンナノチューブの同義語は、ナノ−スケールカーボンチューブ又は略称CNTである。以下、専門分野で最も一般的に使用されている名称であるCNTを使用する。CNTはフラーレンであり、閉鎖多面構造を有するカーボン・モディフィケーションである。CNTの既知の応用範囲は、半導体分野や、従来のプラスチックの機械的特性を改良することに見出すことができる(www.de.wikipedia.orgの“カーボンナノチューブ”の項目を参照のこと)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、CNTの使用範囲を拡大し、新しい材料とこれらの材料で形成される物質を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は、少なくとも1つの金属及び/又は少なくとも1つのポリマーを含む材料であって、これらの少なくとも1つの金属及び/又は少なくとも1つのポリマーがCNTの層と交互に層状に重ね合わされた材料によって達成される。
【0005】
この材料は粒状又は粒子状であることが望ましく、粒子サイズは0.5μm乃至2000μmであり、望ましくは1μm乃至1000μmである。金属又はポリマーの個々の層は、10nm乃至500,000nmの厚さを有することが可能であり、望ましくは20nm乃至200,000nmの厚さであることができる。CNTの個々の層の厚さは、10nmから100,000nmまでであることが可能であり、望ましくは20nmから50,000nmまでであることができる。
【0006】
適当な金属は、鉄及び非鉄金属並びに貴金属である。適当な鉄金属は、鉄、コバルト及びニッケル、これらの合金、及び鋼である。非鉄金属は、アルミニウム、マグネシウム及びチタン等、及びこれらの合金を含む。金属の更に別の例は、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、錫、タンタル又はタングステン、及びこれらの合金、又は、その青銅及び黄銅合金を挙げることができる。また、ロジウム、パラジウム、白金、金及び銀を使用することができる。前述の種々の金属は、混じりけのない純粋な金属であることができるが、又は、混合されて複合された形態で用いることができる。アルミニウム及びアルミニウム合金が望ましい。純アルミニウムと同様に、アルミニウム合金が望ましい。本発明の方法では、金属は、粒状で又は粒状又は粉末状の形態で用いられる。これらの金属の典型的な粒子寸法は5μmから1,000μmまでであり、適切には15μmから1,000μmまでである。
【0007】
適当なポリマーは、熱可塑性ポリマー、弾性ポリマー、又はジュロ可塑性ポリマーが適している。例えば、ポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン類、シクロオレフィンコポリマー類、ポリアミド6、12、66、610又は612のようなポリアミド類、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル類、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー類、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー類、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル及びコポリマー類、アルキド樹脂類、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ユリア−ホルムアルデヒド樹脂等である。本発明の方法では、ポリマーは、混じりけのない純粋なポリマーで使用可能であり、又はポリマー同士で互いに混合されるか、又は金属と混合されて、それぞれの場合に、粒状又は粉末状の形態で使用可能である。これらのポリマーの典型的な粒子寸法は、5μmから1,000μmまでであり、適切には15μmから1,000μmまでである。
【0008】
適当なCNTは、例えば、レーザーにより、又は、ガス置換により、アーク中の触媒反応で製造される材料である。このCNTは、単層(単壁)又は複層(複壁)又は2層(2壁)であることができる。このCNTは、開放チューブ又は閉鎖チューブでありうる。このCNTは、例えば0.4nm(ナノメートル)から50nmまでの直径と、5nmから50,000nmまでの長さを有することができる。このCNTは、又、海綿状の構造体、即ち、相互に橋掛け結合されたカーボンナノチューブを構成する2次元又は3次元の骨格体を有することができる。個々のチューブの直径は、上述の範囲内で変動し、例えば0.4nm乃至50nmの範囲内で変動する。前述の海綿体の広がり、即ち、CNTの骨格体の側長は、各寸法で、例えば10nm乃至50,000nmとすることができ、望ましくは1,000nm乃至50,000nmとすることができる。
【0009】
本発明による材料は、例えば、この材料に関して0.1乃至50重量パーセントのCNTを含有することができる。この材料中のCNTの適切な量は、0.3乃至40重量パーセントであり、望ましくは0.5乃至20重量パーセントであり、特に1乃至10重量パーセントである。アルミニウム又はアルミニウム合金がこの材料の金属を構成している場合は、この材料は、この材料に関して、適切には0.5乃至20重量パーセントのCNTを含有することが可能であり、この場合、3乃至17重量パーセントのCNTが望ましく、3乃至6重量パーセントのCNTが特に望ましい。
【0010】
これらの材料は、前述の種々の金属と前述のCNTによって構成可能であり、これらの材料は、前述の種々の金属、ポリマー類及びCNTによって構成可能であり、又はこれらの材料は、前述のポリマー類とCNTによって構成可能であるが、これらの材料は、又、例えば機能添加物のような添加物を含むことができる。機能添加物は、例えば炭素であり、又、すす、グラファイト及びダイヤモンドモディフィケーションの形態の炭素、ガラス、炭素繊維、プラスチック繊維、無機繊維、ガラス繊維、シリケート、セラミック材料、又は、炭化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化珪素又は窒化珪素のような、アルミニウムや珪素の炭化物又は窒化物であり、又、例えば、いわゆるホイスカーとして知られる繊維の状態にあるものである。
【0011】
本発明による材料は、それぞれの比率を有する金属とポリマーとCNTの機械的合金化によって製造することができる。機械的合金化は、金属又はポリマーとCNTの粉末状粒子に、変形、破砕及び溶着を繰り返し与えることによって、行うことができる。本発明によれば、機械的合金化に特に適しているのは、高エネルギーのボール衝突を備えたボールミルである。適当なエネルギー供給は、例えば、ミリングチャンバーが、円筒形の、特に環状円筒形の横断面を有するボールミルで達成され、このミリングチャンバーは、通常、水平に配置されている。被粉砕物とミリングボールは、その円筒軸の周りに回転するミリングチャンバーによって動かされ、そして、この円筒軸の方向に伸びて、ミリングチャンバー内に延在し、かつ、複数のカムを備えた、被動回転体によって、更に加速される。ミリングボールの速度は、望ましくは4m/s以上、適切には11m/s以上に調節される。ミリングボール速度は、11乃至14m/sであることが望ましい。また、複数のカムが全長にわたって分散して配置されている回転体が望ましい。このカムは、例えばミリングチャンバーの半径の1/10乃至9/10、望ましくは4/10乃至8/10にわたって配置することができる。また、この円筒軸方向に、ミリングチャンバーの全長にわたって延在する回転体も有利である。この回転体とミリングチャンバーは、互いに独立して駆動され、又は、同期して駆動され、外部駆動源によって運転される。このミリングチャンバーと回転体は、同方向に、又は、望ましくは逆方向に、回転することができる。ミリングチャンバーは、排気されて、粉砕工程が真空中で行われてもいいし、ミリングチャンバーに保護ガス又は不活性ガスを充填しても良い。保護ガスの例は、例えばN、COであり、不活性ガスの例は、He又はArである。ミリングチャンバーと被粉砕物は加熱又は冷却されることができる。場合によっては、極低温で粉砕をすることができる。
【0012】
典型的な粉砕時間は10時間以内である。最小の粉砕時間は、適切には15分である。15分から5時間までの間の粉砕時間が望ましい。特に、30分から3時間まで、特に30分から2時間までの粉砕時間が望ましい。
【0013】
ボールの衝突がエネルギー移動の主要な原因である。エネルギー移動は式Ekin=mvで表され、ここではmはボールの質量であり、vはボールの相対速度である。ボールミルでの機械的合金化は、通常、例えば直径2.5mm、重量約50gの鋼ボール又は同等の直径で、重量0.4gの酸化ジルコニウムボール(ZrO)を用いて実施される。
【0014】
ボールミル中のエネルギー供給に応じて、金属又はポリマーとCNTの層の望ましい配分を有する材料が製造される。エネルギー供給の増大とともに、個々の層の厚さを変化させることができる。エネルギー供給と同様に、粉砕工程に供給されるCNT構造体の厚さによって、被粉砕材中のCNT層の厚さを制御することができる。エネルギー供給の増大とともに、個々の層の厚さは減少し、各層の表面積を増加させることができる。この表面積の増大によって、例えばCNTの個々の層は、粒子中を2次元的に貫通するCNT層に、又は、貫通して2次元的に互いに接触しているCNT層に、相互に接触することができる。これにより、一方ではCNTの卓越した特性が、例えばCNTの熱伝導性及び電気伝導性が、他方では金属の延性又はポリマーの弾性が、本発明による材料に本質的に保持されている。
【0015】
本発明による材料の特性の更なる制御は、異なる出発物質から2つ又はそれ以上の材料を混合し、及び/又は、製造工程中のエネルギー供給のレベルを違えることによって、達成することができる。また、金属又はプラスチックのような、CNTを含まない素材と1つ又は複数のCNTを含有する材料が混合され、機械的合金化が行われ、すなわち粉砕が行われても良い。前述の物質に適用することができる別の材料が混合され、又は、第2回目の粉砕を施され、又は、何回かの粉砕を受けることも可能である。第2回目の粉砕又はそれに続く粉砕は、例えば粉砕時間が10時間以内である。第2回目の粉砕の最小時間は、5分であることが適当である。第2回目の粉砕時間は10分と5時間の間であることが望ましい。第2回目の粉砕時間は、15分乃至3時間であることが特に望ましく、15分乃至2時間であることが更に望ましい。
【0016】
例えば、本発明によるCNT含有量の高い材料及びCNT含有量の低い材料又はエネルギー供給度の様々に異なった材料が、第2回目の粉砕工程で処理されることができる。また、例えばアルミニウムのようなCNT含有金属のように、CNTを含有する材料を、例えば同じくアルミニウムのようなCNTを含有しない金属と共に、第2回目の粉砕工程で処理することもできる。第2回目の粉砕加工又は数回の粉砕加工は、すなわち機械的合金化は、結果物質が完全には均質化しないが、各材料や物質に本質的な特性が保持され、これらの作用が最終材料中で補完し合う状態に至るまでにしか続けられない。
【0017】
前記の工程により、金属の比重に比べて、比重が小さかったり、金属を通してのCNTの架橋性が悪いというような、それ自体、特定の目的に合わせた加工を不可能にするような、CNTに内在する特性を克服することができる。異なる密度の例として、2.7g/cm3のアルミニウムと1.3g/cm3のCNTを挙げることができる。
【0018】
例えば、本発明による材料は、噴霧圧縮成形、熱間溶射法、プラズマ溶射法、押出法、焼結法、調圧溶浸法又は加圧鋳造によって製造される、半製品及び層を有する成形体に使用される。
【0019】
従って、本発明による材料は、例えば溶射圧縮成形によって成形体に加工することができる。溶射圧縮成形において、金属溶融物、例えば鋼、マグネシウム、望ましくはアルミニウム又はアルミニウム合金の溶融物が、加熱された坩堝を通ってスプレーヘッドに供給され、そこで微細な液滴に噴霧化され、基板又は台板に噴射される。初期には未だ溶融状態にある液滴は、噴霧器から下方にある基板へと飛行する間に冷える。粒子流は、高速で当該個所に衝突し、いわゆる析出物に成長し、完全に凝固し、更に冷える。溶射圧縮成形の際、閉鎖された材料複合物へと癒合する小さな溶融粒子の、独特な、状態としてほとんど正確に定義することができない「液体から固体へ」の相移行を利用する。この場合、CNTを含有する本発明の材料は、噴霧化装置に粉末の形態で供給され、微細な金属液滴は、金属溶融液の噴霧化工程で吹付けられる。この工程は、CNTを含有する材料が溶融しないか、その表面しか溶融しないように、かつ、分解が起こらないように、制御される。材料と金属小滴の粒子流は、高速で基板に衝突し、析出物へと成長する。成形体としては、回転板、回転ロッド又は回転テーブルのような基板に応じて、ボルトのような中実体、チューブのような中空体、薄板又は形材のような細長い部材が製造される。析出物は、CNTが埋め込まれた金属と、同様に構成された所望の成分との親密且つ均質な混合である。例えば、析出物はボルトの形をとることができる。ボルトの押出しのような、次の加工工程において、非常に緊密で欠点の無い半製品(チューブ、シート等)又はラメラ構造を有する成形体を生成することができる。この半製品及び成形体は、例えば、様々な範囲の構造上の異方性と、電気伝導性、熱伝導性、剛性及び延性のような機械的及び物理的特性を有する。本発明による材料は、更に、中性子キャッチャーや放射線減速材や放射線防止用の膜の製造の分野に応用することができる。
【0020】
本発明の材料は、成形体がプラズマ溶射のような熱間溶射法又は冷間ガススプレー法によって製造されるとき、成形体又は層体として、他に使用可能である。熱間溶射法の場合、粉末状材料はエネルギー源に注入され、そこで処置方法の違いにより、単に加熱されるだけか、溶融されるか、又は、完全に溶融されて、高速で(処置法及び媒介変数選択に応じて、数m/s乃至1,500m/sで)積層すべき表面方向に加速され、そこで衝突した粒子は層として沈積する。理想的に加熱され、又は、表面だけ溶融された、粒子は、非常に高い運動エネルギーで基板に衝突し、そのCNTは、好ましくは、小液滴の平面中に存在し、即ち、放射方向及び衝突方向と交差して存在する。これは、結果として、抗張力のような材料特性の制御された異方性をもたらす。
【0021】
本発明の根拠となるCNT含有材料は、押出法、焼結法又はダイカスト法によって更に成形加工することができる。加圧又はダイカストの際、低速で、特に層流を生じながら、連続的に、高い金型充填を達成する金属圧でなされるのが望ましい。例えば、複合材料は液化された金属による多孔性の繊維体及び粒子状体の浸透によって製造することができる。
【0022】
本加圧鋳込みにおいて、適切には、CNTを含有する金属から構成された本発明による材料は、鋳型の中で粉末状のマトリックス材として提示される。融点が材料の融点より低い金属、例えばアルミニウム含有材料の場合は、溶融温度が750℃より低い金属が、加熱された鋳型にゆっくりと押し込まれる。溶融した金属は、加えられた圧力下で、粉末状のマトリックス材に浸透する。その後、鋳型は冷却され、成形体が取出される。この工程は、連続的に実施することができる。一実施例において、アルミニウムのような金属は、チキソトロピー的振る舞いをする一次加工品に加工され、CNTと混合することができる。液化した金属の代わりに、チキソトロピー状態(一部液体/一部固体)にある金属が、CNTを含有して、鋳型の中に圧入されても良い。また、個々の粒子の中で金属がCNT層と交互に積層されている粒子状又は顆粒状の材料を、バルク製品として鋳型に注入し、鋳型を温め、そして、製造される成形体に気孔も空洞も存在しないように、加圧下で鋳型に完全な充填を行うことも可能である。最終的に、大まかに混合した金属粉末である、例えばアルミニウム粉末又はチキソトロピー特性を見せるアルミニウムと、CNTとしての、海綿状の又は例えば0.5mm以下の直径を有するクラスターとしてのCNTとが、大まかに混ぜ合わされ、金属溶融に至るまで過熱されて鋳型の中に圧入される。加圧鋳込み法によって、所望の成形体、例えば棒状成形体を連続的に又は断続的に製造することができる。チキソトロピー特性を有するアルミニウムは、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を融解し、凝固に至るまで絶え間なく攪拌しながら急速に冷却することによって得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による材料とこの材料から作られた成形体は、優れた熱伝導性と電気伝導性を示す。本発明による材料で構成された成形体の熱特性は卓越している。熱膨張はわずかである。クリープが改良されている。アルミニウムのような金属にCNTを添加することにより、例えば0.6乃至0.7μmに達する粒子構造の著しい精巧化を観察することができる。金属にCNTを添加すると、金属の再結晶化に影響を及ぼし、又は、金属の再結晶化を阻止することができる。また、金属中のCNTによって、亀裂の伝播を減少させ、又は、亀裂の伝播を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1乃至5は、顕微鏡を通して高倍率で見た出発製品と完成材料を示す。このうち、図1は、アルミニウム粒子とCNT凝集粒子の混合物の拡大図である。明度の高い(明るい)アルミニウム粒子は参照番号1で示され、明度の低い(暗い)CNT凝集体は参照番号2で示されている。
【図2】図2は、機械的合金化後に粉末状又は粒子状の形態を有する本発明の材料の拡大図を示す。遊離したCNTは見られない。全てのCNTは、変形、破砕及び溶着を繰り返し受けたアルミニウム粒子中に吸収されている。
【図3】図3は、材料の断面図である。この材料の粒子内に、層構造、即ち、複数の層を見ることができる。これらの層は、図中、灰色の陰影であるアルミニウムの層と明度が高い(明るい)/低い(暗い)線状のCNT含有物の層とが交互に位置する複数の層である。
【図4】図4は、材料の断面図である。この材料の粒子内に、層構造、即ち、複数の層を見ることができる。これらの層は、明度の高い(明るい)構造としてのアルミニウム金属3と、このアルミニウム中の明度の低い(暗い)線状含有物としてのCNT4とが交互に位置する、複数の層である。図3の材料と比較して、図4の材料は、CNTの比率がより低く、CNTは、複数のより厚いアルミニウム層によって隔てられている。これらの粒子を囲繞する灰色の領域5は樹脂を形成し、この樹脂に、前記材料が微細な吸着で埋め込まれている。
【図5】図5は、例えば本発明の材料の製造に使用することができるような、CNTの海綿状構造体を示す。かかる海綿状構造体は、例えば加圧鋳造法に使用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
11m/s以上のボール速度が達成されるボールミルで、高エネルギーの破砕を行うことによって、純アルミニウムとCNTで構成された粉末を機械的合金化することにより、粉砕時間を変更することによって異なる材料が製造される。これらの材料は、更に、粉末押出法で加工され、一連の棒状検体が製造される。これらの棒状検体は、下記の表に掲げられた試験を受ける。この表中に記載された温度は、押出法が行われている間の加工温度を示す。これらの検体は、6重量パーセントのCNTを含有する。30、60及び120分という時間を表わす数値は、材料を製造するための機械的合金化の粉砕時間を示す。実施例1は、CNTを含有しない純アルミニウムの比較試験である。
【0026】
【表1】

【0027】
この表から、これらの抗張力と硬度が、それぞれ、約400パーセント程度まで増加することが明らかである。これらの値は、その材料中のCNTの含有量と、その材料を製造するための粉砕時間のような粉砕工程とによって、制御可能である。これらの弾性係数は、80パーセントまで増加可能である。これらの弾性係数は、その材料の製造するに際して機械的合金化を行う間の粉砕時間と、その押出法における加工温度とによって、制御することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(CNT)を含有する材料において、前記材料の内部で、少なくとも1つの金属及び/又は少なくとも1つのプラスチックが、複数のCNT層と交互に層を成して積層されていることを特徴とする、カーボンナノチューブ(CNT)を含有する材料。
【請求項2】
請求項1に記載の材料において、前記材料は粒子の形態で存在していることをと特徴とする、前記材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の材料において、前記材料の粒子寸法は、0.5μm乃至2000μmであり、望ましくは1μm乃至1000μmであることを特徴とする、前記材料。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の材料において、金属又はプラスチックから成る個々の層の厚さは、10nm乃至500,000nmであり、望ましくは20nm乃至200,000nmであることを特徴とする、前記材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の材料において、CNTから成る個々の層の厚さは、10nm乃至100,000nmであり、望ましくは20nm乃至50,000nmであることを特徴とする、前記材料。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記材料の粒子の内部で、少なくとも1つの金属又はプラスチックが、CNTから成る複数の層と交互に層を成して、一様な層厚で積層されていることを特徴とする、前記材料。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記材料の粒子の内部で、少なくとも1つの金属又はプラスチックが、CNTから成る複数の層と交互に層をなして積層され、前記粒子の内部に、CNT層がより高度に集合し、金属層又はプラスチック層がより低度に集合する、複数の領域が存在することを特徴とする、前記材料。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記材料の粒子を通って、幾つかのCNT層は、複数の領域に部分的に接触可能であり、途切れることなく前記複数の粒子を貫通したCNTを形成することを特徴とする、前記材料。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記金属として、鉄及び非鉄金属、貴金属、鉄、コバルト及びニッケル系の鉄金属、これらの合金、及び鋼、非鉄金属、アルミニウム、マグネシウム及びチタン並びにこれらの合金、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、タンタル又はタングステン系の金属及びこれらの合金、又は黄銅及び青銅系の合金、又はロジウム、パラジウム、白金、金及び銀系の金属が、純粋に又は互いに混合されて含有されていることを特徴とする、前記材料。
【請求項10】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記ポリマーとして、熱可塑性ポリマー、弾性ポリマー又はジュロ可塑性ポリマー、好ましくは、ポリオレフィン類、シクロオレフィンコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエンコポリマー類、アクリルニトリルブタジエンコポリマー類、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル及びコポリマー類、アルキド樹脂類、エポキシド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ユリアホルムアルデヒド樹脂が、純粋に又は互いに混合されて含有されていることを特徴とする、前記材料。
【請求項11】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記金属として、アルミニウム又はアルミニウム合金が使用されることを特徴とする、前記材料。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記CNTは、0.4nm乃至50nmの直径と、5nm乃至50,000nmの長さを有することを特徴とする、前記材料。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記CNTは、カーボンナノチューブから成る2次元又は3次元の骨格体を有し、好ましくは、10nm乃至50,000nmの側長を有する骨格体を有することを特徴とする、前記材料。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記材料は、前記材料に対して0.1乃至50重量パーセントの量のCNTを含有し、相応には0.3乃至40重量パーセントの量のCNTを含有し、好ましくは0.5乃至20重量パーセントの量のCNTを含有し、特に1乃至6重量パーセントの量のCNTを含有することを特徴とする、前記材料。
【請求項15】
請求項1乃至14のうちのいずれか一項に記載の材料において、前記アルミニウム又はアルミニウム合金が前記材料の前記金属を構成し、前記材料は、0.5乃至10重量パーセントのCNTを包含し、好ましくは3乃至6重量パーセントのCNTを含有することを特徴とする、前記材料。
【請求項16】
請求項1に記載された材料の製造方法において、CNT内の金属又はプラスチックの比率が、機械的合金化によって、顆粒、粒子又は粉体の形態で加工されることを特徴とする、前記材料の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載された材料の製造方法において、前記機械的合金化は、金属又はプラスチックの粒子とCNTの粒子の変形、破砕及び溶着を繰り返すことによって実行され、好ましくは、ミリングチャンバーと、高エネルギーの球体衝突を行うミリング体としての複数のミリングボールとを含む、ボールミル内で、機械的合金化が行われることを特徴とする、前記材料の製造方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載された材料の製造方法において、前記ボールミルは、円筒形の、好ましくは円柱形の断面を有する、ミリングチャンバーを有し、前記複数のミリングボールは、前記円柱軸の周りに回転する前記ミリングチャンバーによって動かされ、そして、前記円柱軸の方向に伸びて前記ミリングチャンバーの内部に延在し、かつ、複数のカムを備えた、被動回転体によって、加速されることを特徴とする、前記材料の製造方法。
【請求項19】
請求項16乃至18のうちのいずれか一項に記載に記載された材料の製造方法において、前記ミリングボールの速度は、少なくとも11m/sであり、前記ミリングボールの速度は、望ましくは、11乃至14m/sであることを特徴とする、前記材料の製造方法。
【請求項20】
請求項16乃至19のうちのいずれか一項に記載された材料の製造方法において、前記粉砕時間は10時間以下であり、最短粉砕時間は5分であり、前記粉砕時間は、好ましくは15分から5時間までであり、特に好ましくは30分から
3時間までであり、特に30分から2時間までであることを特徴とする、前記材料の製造方法。
【請求項21】
請求項16乃至20のうちのいずれか一項に記載された材料の製造方法において、前記回転体は、その全長にわたって配置された複数のカムを有し、望ましくは前記ミリングチャンバーの範囲全体にわたって、前記円筒軸の方向に延びていることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項22】
請求項16乃至21のうちのいずれか一項に記載された材料の製造方法において、同一の又は異なる出発物質の及び/又はエネルギー供給レベルの2つ又はそれ以上の異なる材料が、混合され、又は、第2回目の粉砕又は何回かの粉砕を受けることを特徴とする、前記材料の製造方法。
【請求項23】
請求項16乃至21のうちのいずれか一項に記載された材料の製造方法において、CNTを含有しない金属又はプラスチックが使用され、1つの材料又は同一の又は異なる出発物質の及び/又はエネルギー供給レベルの幾つかの異なる材料が、混合され、又は、第2回目の粉砕又は何回かの粉砕を受けることを特徴とする、前記材料の製造方法。
【請求項24】
溶射圧縮成形、熱間溶射法、プラズマ溶射法、押出し法、焼結法、調圧侵潤法又は加圧鋳造によって製造される成形体のための請求項1に記載された材料の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−508432(P2010−508432A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533688(P2009−533688)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008807
【国際公開番号】WO2008/052642
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(504313044)アルカン テヒノロギー ウント メーニッジメント リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】ALCAN TECHNOLOGY & MANAGEMENT LTD.
【住所又は居所原語表記】Badische Bahnhofstrasse 16, CH−8212 Neuhausen am Rheinfall, Switzerland
【Fターム(参考)】