カールした端部を有する缶を作製するための方法および装置、そのような缶、ならびに缶本体
発明は、ペンキ缶などの缶(61)を作製するための方法および装置であって、i)円筒体(2,36,51,65)を提供するステップと、ii)開口部の直径を規定するために円筒体の第1の開口部(20,60,75)にピストン手段(19,25,44,74)を配置するステップと、iii)第1の開口部(20,60,75)の規定された直径が実質的に周方向に寸法的に安定するように、第1の開口部(20,60,75)の自由端(8,66)を径方向外方に円筒体(2,36,51,65)に沿って軸方向にカールさせ、それによりカール(47,49,57,68,70,79)を形成するステップとを含む方法および装置、ならびに作製された缶(61)および缶本体(63)に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンキ缶などの缶を作製するための方法、缶を作製するための装置、ならびにそのような缶および缶本体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペンキ缶などの缶には、一般に、シーミング、溶接、または接着などによって缶本体に付着されたリングが設けられる。このリングは、そのような缶の蓋が明確な締付力によってリング開口部に収容されるように選択された直径の開口部を有する。この締付力は、正常な取扱い条件下で蓋が缶の上にとどまり、かつ缶の内容物が損なわれないように選択される。同時に、締付力は、特にねじ回しなどの工具が蓋を取外すために使用される場合、過度の力を加えることなくかつ缶を破損することなく、ユーザが缶から蓋を取外すことができるようなものである。蓋についてのこれらの特性は、缶本体を作製するための処理および装置とは別個に精巧な形態および形状が維持され制御されることができるように、リングが別個の処理および装置で作製されることを一般に必要とする。最終的に、別個のリングが缶本体に付着され、それにより缶を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
明らかに、1枚の金属からそのようなリングを別個に製造することによって、中央領域を切り抜きそれによりリング開口部を形成すると、比較的大量の材料が損なわれることになる。また、リングを缶本体に付着させるために付加的な動作工程が必要とされる。
【0004】
リングによる缶本体への蓋の締付けを保証することができない状況下の場合、付加的な締付力を生成するために、別個の締付バンドまたはストリップが缶の上側領域に貼付けられる。そのような締付バンドまたはストリップの使用は費用を増大させ、その取り外し後は締付力が最適ではなくなる。
【0005】
本発明は、上述の欠点を実質的に克服する缶を提供することをその目的として有し、別個の付着されたリングおよび/または締付バンドもしくはストリップを必要とすることなく、蓋が缶本体に貼付けられ適切な締付力によって維持されることができる。同時に、過度の力を加えることなく通常の方法でユーザによって蓋を取外すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題を解決するために、発明の第1の局面にしたがって提供される発明は、ペンキ缶などの缶を作製するための方法であって、i)円筒体を提供するステップと、ii)開口部の直径を規定するために円筒体の第1の開口部にピストン手段を配置するステップと、iii)第1の開口部の規定された直径が実質的に周方向に寸法的に安定するように、第1の開口部の自由端を径方向外方に円筒体に沿って軸方向にカールさせ、それによりカールを形成するステップと、を含む。
【0007】
形成されるカールと缶本体の形成中に既定の直径を要求し維持するピストン手段の開口部内に存在することとにより、蓋が必要な締付力によってその中に収容される缶本体の開口部が十分な径方向強度および周方向の寸法安定性を有することから、本発明のこれらの方法は、別個の締付リングの使用を回避することができる。カールは径方向外方にカールされ、したがって形態安定性が維持され、輪郭および壁厚の実質的な変動が回避される。
【0008】
そのような一体型の外方にカールした締付カールが設けられた缶本体の利点は、内面が滑らかかつ連続的であるため、缶本体とリングとの間の接続部の内側溝またはスロットにいずれかの材料が残留することなく缶の内容物を放出することができる点である。
【0009】
好ましい実施例によれば、ステップiii)におけるカールの形成前に、缶本体の第1の開口部の自由端にプリカールが設けられる。したがって、鋭い切断縁であることが多い円筒体の縁が保護され、ほとんど露出されることがなく、それにより、起こり得る腐食の問題を回避する。
【0010】
上記のように、カールは、径方向外方かつ円筒体に沿って軸方向に形成されることが必要とされる。これは、円筒体および最終的な缶本体の外径よりもカールの外径が大きいことを意味する。
【0011】
カールが缶本体を大きく越えて延在しないことが好まれるか、または好ましくは缶本体の範囲内に位置し、ゆえに缶本体の外径以下の外径を有する場合、カールは、缶本体の直径が小さい一部分に形成されることになる。そのような缶本体の直径が縮小された部分は、缶本体の当該部分を狭めることによって形成することはできない。なぜなら、狭める際に周方向の寸法安定性および壁厚を十分に制御することができないためである。それでもなおこの目的は、発明の好ましい実施例にしたがって、円筒体が第1の自由端まで部分的に径方向に引張られ、他のやり方で引張られた円筒体の引張られていない狭められた部分にカールが形成され、好ましくはカールが径方向に引張られた円筒体部分の外側の仮想包囲体内に位置する場合に満たされることができる。したがって、円筒体の他の部分の直径を増大させ、ゆえに、ピストン手段の存在により所望の規定された直径を有しかつ自由端が接触されないままである開口部の自由端を操作しないことによって、円筒体の狭められた部分が形成される。
【0012】
径方向に引張られた円筒体の形成は、圧延、引張り、(深)しぼり加工、およびしごき加工などのいずれかの好適な技術によって行われることができる。径方向外方への引張りによる形成が好ましい。なぜなら、これは実質的に一定の壁厚を有し、20〜25%までの引張りを可能とする引張られた缶本体となり、付加的な材料節約をもたらすからである。そのような引張り動作は、たとえば国際公開第WO2009/130034号に開示されている。制御された簡潔なやり方でこの引張り動作を実行させるためには、円筒体の第2の開口部にトロンプ開口(tromped mouth)が設けられ、径方向への引張りがトロンプ開口を介して第2の開口部の自由端まで(第2の開口部の自由端を含まず)引張り手段によって実行されることが好ましい。そうする際、開口部の規定された直径を規定しかつ維持するために必要であり、かつこの自由端へと延在するピストン手段が引張り手段に設けられ得る。
【0013】
トロンプ開口が、円筒体に対するトロンプ角度(tromping angle)が5°から40°、たとえば10°から30°の範囲内にあるような寸法である場合、トロンプ開口およびプリカールを一つの同じ動作で、ゆえに同じ装置ユニットまたはステーションで形成することができる。いくつかの理由から、円筒体の一方端にカールを形成するための軸方向の力は、他方の自由端にトロンプ開口を形成するために必要な軸方向の力より小さい。しかしながら、円筒体の金属の種類、その壁厚、およびトロンプ工具の形態に依存して、まずトロンプ開口、その後でプリカールを形成することも可能である。したがって、トロンプ開口およびプリカールの両方が実質的に同時に形成され得る。
【0014】
制御された確実なやり方で円筒体を径方向に引張るためには、円筒体が締付手段によって堅く保持されることが好ましい。さらに、円筒体には締付フランジが設けられる。したがって、発明の好ましい実施例によれば、円筒体の径方向への引張り前に、径方向への引張り中に円筒体を締付手段によって締付けるための締付フランジが第2の開口部の自由端に設けられる。
【0015】
トロンプ開口から隔たった円筒体の第1の開口部が支持されていない場合、締付けられながらのこの引張りによって、引張りに対する軸方向の抵抗の結果である波形構造が円筒体に形成されることはない。これは、円筒体が載る装置支持部と締付手段の支持部との間の距離を維持することによって達成することができる。なぜなら、径方向の引張りは円筒体の長さの減少をもたらすことになるためである。締付手段によって吊下げられ締付けられると、円筒体は持ち上げられることになる。
【0016】
特に容積が大きい缶について、充填され閉じられた缶がつかみやすく運びやすいことが好ましい場合は、発明にしたがって、カール形成中にハンドル手段がカールに押込められ得る。そのようなハンドル手段は、プラスチックまたは金属からなる可撓性のストリップまたはバンドの形態を有し得る。それらは、カール形成中にカールにすっきりと組込まれる。付加的な利点は、これらのハンドル手段が実質的に缶の範囲を越えて延在せず、ゆえにつかみやすく、小さな表面積で積層し格納しやすい点である。
【0017】
缶作製中に開口部に嵌めこまれる直径決定ピストン手段の使用によって得られる缶のカールした開口部の周方向の寸法安定性は、缶の全直径について実質的に等しい。一例として、32mm〜300mm、たとえば48mm〜286mm、特に57mm〜165mmの直径の缶の寸法安定性は、誤差のマージンが±0.10mm以下である。好ましくは、寸法安定性の誤差のマージンは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである。そのような誤差のマージンを有するこの寸法安定性は、これらの直径の缶について、締付力が、締付リングおよび/または締付バンドもしくはストリップを必要とすることなく缶への蓋の確実な固定に十分なものである。
【0018】
発明の別の局面は、発明に係る缶を作製するための装置に関する。この装置は、実質的に寸法的に安定した開口部の規定された直径を維持するために円筒体の第1の開口部に配置されるピストン手段と、径方向外方に円筒体に沿って軸方向に第1の開口部の自由端をカールさせることによってカールを形成するためのカール手段とを含む。実際の実施例では、装置は、ピストン手段を開口部に配置するためのユニットと、カールを形成するためのカール手段とを含む。
【0019】
第1の開口部の自由端の強度を高めるため、かつ鋭いことが多い自由端の露出を回避するために、装置が、カールの形成前に第1の開口部の自由端をあらかじめカールさせるための手段を含むことが好ましい。
【0020】
カールした自由端を缶の狭められた部分に配置するためには、発明にしたがって、缶の別の部分が径方向に引張られることが好ましい。さらに、装置が、円筒体を第1の開口部の第1の自由端まで径方向に引張るための引張り手段を含むことが好ましく、好ましくはピストン手段は引張り手段に組込まれる。
【0021】
好ましくは装置が円筒体の第2の開口部をトロンプ化する(tromping)ための手段を含む場合、径方向の引張りは簡潔に制御される。
【0022】
第2の開口部にトロンプを形成するための径方向の力は、プリカールを形成するための径方向の力よりも大きいか、小さいか、または等しい場合があるため、一つずつまたは実質的に同時に作製される。発明によれば、トロンプ手段およびプリカールを形成するための手段は装置の同じユニットに配置され得、それにより缶を作製するためのユニット数および時間を減少させる。
【0023】
好ましいトロンプ開口における円筒体の径方向の引張りを適切に制御するために、自由端に締付フランジを設けることが推奨される。さらに、発明の装置は好ましくは、第2の開口部の自由端上に締付フランジを形成するための手段と、径方向への引張り中に円筒体を締付けるための手段とを含む。そうすれば、そのような径方向の引張りは、円筒体の遠隔の開口部が支持されない状態で行われることができ、したがって対抗する軸方向の力が実質的に回避される。これにより、本体の壁厚の均一性の向上がもたらされる。発明によれば、締付フランジを形成するための手段とカールを形成するための手段とが同じ装置ユニットに組込まれることが好ましい。
【0024】
発明に係る装置が、カールにハンドル手段を閉じ込めるための手段を含むことも好ましい。
【0025】
最後に、発明の第3の局面は、缶およびしたがって缶本体に関連する。缶は、ペンキ缶または食料品缶であり得、上記の発明の方法によって得ることが可能である。締付けられた蓋を有するこの缶は、缶本体と一体であり、蓋が収容された缶開口部を規定するカールが設けられた自由端を特徴とし、開口部は実質的に寸法的に安定し、好ましくは、誤差のマージンが±0.10mm、好ましくは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである寸法安定性を有する。発明の缶のための缶本体は、実質的に寸法的に安定した開口部を規定するカールが設けられた狭められた自由端を有する第1の開口部と、好ましくは締付フランジを有する第2の開口部とを特徴とする。
【0026】
本発明の缶および缶本体を作製するための方法および装置、ならびにそのような缶および缶本体の上記のおよび他の特徴がいくつかの実施例によってさらに例示されるが、実施例は単に参考のために示され、発明をいずれかの程度に制限することは意図されない。これらの実施例に関して、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】円筒体を作製するための金属シートの平面図である。
【図1B】図1Aの金属シートから形成された円筒体の斜視図である。
【図2A】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2B】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2C】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2D】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2E】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2F】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3A】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3B】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3C】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3D】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3E】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図4A】円筒体の締付けおよび径方向の引張りを模式的に示す図である。
【図4B】円筒体の締付けおよび径方向の引張りを模式的に示す図である。
【図4C】円筒体の締付けおよび径方向の引張りを模式的に示す図である。
【図5A】円筒体の狭められた部分におけるカールの形成を模式的に示す図である。
【図5B】円筒体の狭められた部分におけるカールの形成を模式的に示す図である。
【図5C】円筒体の狭められた部分におけるカールの形成を模式的に示す図である。
【図6A】円筒体への底部の貼付けを模式的に示す図である。
【図6B】円筒体への底部の貼付けを模式的に示す図である。
【図7A】蓋の装着および取外しを模式的に示す図である。
【図7B】蓋の装着および取外しを模式的に示す図である。
【図7C】蓋の装着および取外しを模式的に示す図である。
【図8A】蓋で閉じられた発明の缶の積層を模式的に示す図である。
【図8B】蓋で閉じられた発明の缶の積層を模式的に示す図である。
【図9A】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9B】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9C】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9D】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9E】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9F】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図10A】可撓性のハンドルが設けられた、発明に係る缶のさらに別の実施例を示す図である。
【図10B】可撓性のハンドルが設けられた、発明に係る缶のさらに別の実施例を示す図である。
【図10C】可撓性のハンドルが設けられた、発明に係る缶のさらに別の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1Aは、鋼、錫プレート、アルミニウムなどの金属のシート1を示す。シートは、金属と発明の缶を形成する動作とに依存して、約0.12〜2mmの壁厚を有する。シート1は円筒体2に形成され、溶接継目3が設けられる。
【0029】
図2A〜図2Fは、円筒体2上の第2の自由端6においてトロンプ開口5を形成するための、かつ円筒体2上の第1の自由端8上にプリカール7を形成するための、発明の装置の第1のユニット4を示す。さらに、ユニット4は、入口セクション9を有するトロンプ工具16と、約5°〜約15°の範囲の適度な分岐角度を有する第1の分岐セクション10と、約15°〜約35°の範囲のより大きな分岐角度を有する第2の分岐セクション11とを含む。
【0030】
円筒体2は、トロンプ工具16の入口セクション9上の自由端6において装着される。次に、押出し工具12が円筒体を矢印13に沿って分岐セクション10および11上に押し付け、それによりトロンプ開口5を形成する(図2B参照)。
【0031】
その後、押出し工具12を後退させ、ピストン手段14が第1の自由端8に配置され、それによりその組立て中に第1の自由端8の規定された直径を規定し制御する(図2C参照)。ピストン手段14は成形工具15上に装着される。この成形工具15は、矢印19にしたがった下方への移動によって、ピストン手段14が規定された開口部20にある状態で本体壁18にプリカール7が形成されるように設計された成形空洞17を含む(図2Dおよび図2E参照)。プリカール7を形成するための軸方向下方への力は、トロンプ開口5を形成するために必要な力より小さい。ゆえに、トロンプ工具16上に装着された円筒体2は、その当初位置に実質的に維持される。したがって、最終的にユニット4に形成されるのは、ピストン手段14とプリカール7とによって規定される第1の開口部20を第1の自由端8に、さらにトロンプ開口5を第2の自由端6に有する円筒体21である(図2F参照)。前述のように、たとえば円筒体の材料、その壁厚、およびトロンプ工具16の形態に依存して、トロンプ開口およびプリカールの形成は、異なる順序または実質的に同時であり得る。
【0032】
発明の装置のユニット23において、装置ユニット4に生成された円筒体は、支持部24に装着される(図3A参照)。成形工具26に装着されたピストン手段25は、プリカール7が設けられた規定された第1の開口部20に装着される。矢印27にしたがった移動は、成形工具26の成形空洞28におけるカール部22の形成をもたらすことになる。このカール部22はプリカール7を担持する(図3Bおよび図3C参照)。その後、成形空洞32内にあるトロンプ開口7の自由縁31に向かって成形工具29を矢印30にしたがって軸方向に移動させる。この成形空洞32は、支持部24と工具34との間に形成される。成形工具29の成形縁33は自由縁31に接触し、トロンプ開口5において締付フランジ35を形成する(図3Dおよび図3E参照)。このようにして形成されるのは、締付フランジ35が設けられたトロンプ開口5と、規定された直径でありカール部22およびプリカール7が設けられた第1の開口部20とを有する円筒体36である。
【0033】
この円筒体36は(図3Bと比較して)上下反対にされ、締付手段37によって締付配置に吊下げられる。これらの締付手段37は、締付工具38および39を含む。引張り工具40はトロンプ開口5を通過し、矢印42にしたがって締付工具40を通過する際、引張り工具40の外面に沿って円筒体36を径方向外方に引張る。これは円筒体36の長さの減少をもたらす(図4A〜図4C参照)。円筒体36の相当部分が径方向外方に引張られる。円筒体の残りの引張られていない部分は、引張り工具40上に装着されたピストン手段44によって規定される狭められた部分43を形成する(図4Aおよび図5A参照)。
【0034】
図5A〜図5Cに示されるように、成形工具45を矢印50にしたがって上方に移動させる。この成形工具45は成形空洞46を含み、成形空洞46は、狭められた部分43において円筒体に沿ってプリカール7を有する細長いカール47をまず形成する。細長いカール47は、細長いカール47が設けられた第1の開口部の直径を規定したピストン手段44に沿って形成される。最終的に、矢印50の移動にしたがって、細長いカール47の一部を包囲する成形空洞が段差48を形成する。結果は、細長く段差のあるカール49の形成である。狭められた部分43において細長く段差のあるカール49を有する円筒体51には、継目接続53を介して底部52が設けられる。これにより、発明に係る缶本体54がもたらされる(図6Aおよび図6B参照)。
【0035】
缶本体54には蓋55を設けることができ、蓋の環状蓋部分56が細長いカール49上に載り、蓋カール57が細長いカール49の段差48上に径方向に延在する(図7A〜図7C参照)。これは工具58のための進入路59を形成し、それにより発明の缶61の円筒体51から蓋55を取外すことができる。細長いカール49によって規定される開口部60はピストン手段44の直径に対応し、0.03mmの誤差のマージンを有する寸法安定性を有する。蓋55は開口部60内に締付力によって締付けられ、発明の閉じられた缶は、たとえばペンキ缶として使用することができる。締付力は、細長く段差のあるカール49の形態で生成される。
【0036】
図8Aおよび図8Bは、発明の2つの積層された缶61を示す。上側の缶61の底部は、下側の缶61の蓋55の環状蓋部分56上に底部が載る。継目接続53はカール57を越えて延在し、カール57を閉じ、上側に積層された缶61が径方向の変位に対抗してロックされる。
【0037】
缶本体54は、2つの部品、すなわち一体型の細長く段差のあるカール49を有する円筒体51と、継合わされた底部52とから成る。蓋55を含めると、本発明の缶61は3つの部品から成る。
【0038】
図9A〜図9Fは、2つの部品、すなわち缶本体63と蓋64とから成る発明の別の缶62の作製を示す。一体型の底部を有する缶本体63は、円筒体65から形成される。円筒体65の自由端66には、任意に段差があり得る細長いカールが設けられる。さらに、自由端には、プリカール成形空洞17を有する成形工具15を使用して、図2Eに関連して説明したようにプリカール67が設けられる。カール68は、成形工具69を使用することによって形成される。このカール68は、成形工具71を使用して細長いカール70に変形される。任意に、細長いカール70には、成形工具72および支持工具73を使用して段差48が設けられる。成形工具71および72には、一体型のカール70の形成中に円筒体65の開口部75に配置されるピストン手段74が設けられる。これは、発明の缶62が、一体型の底部と、ピストン手段74の外径に密接に対応する規定された直径を有するカール70とを有する缶本体63を有することを意味する。
【0039】
図10A〜図10Cは、発明に係る缶76の別の実施例を示す。缶76は、一体型のカール79が設けられた開口部を狭められた部分78において閉じる蓋77を含む。この規定された開口部は、発明に係る上記の缶と同じやり方で生成される。しかしながら、一体型のカール79の形成中に、一体型の細長いカール79が形成されることになる狭められた部分78にハンドル手段80が配置される。カール79の形成後に、ハンドル手段80が缶76に閉じ込められ堅く固定される。これらのハンドル手段は、発明の缶76を運ぶ際に使用され得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンキ缶などの缶を作製するための方法、缶を作製するための装置、ならびにそのような缶および缶本体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペンキ缶などの缶には、一般に、シーミング、溶接、または接着などによって缶本体に付着されたリングが設けられる。このリングは、そのような缶の蓋が明確な締付力によってリング開口部に収容されるように選択された直径の開口部を有する。この締付力は、正常な取扱い条件下で蓋が缶の上にとどまり、かつ缶の内容物が損なわれないように選択される。同時に、締付力は、特にねじ回しなどの工具が蓋を取外すために使用される場合、過度の力を加えることなくかつ缶を破損することなく、ユーザが缶から蓋を取外すことができるようなものである。蓋についてのこれらの特性は、缶本体を作製するための処理および装置とは別個に精巧な形態および形状が維持され制御されることができるように、リングが別個の処理および装置で作製されることを一般に必要とする。最終的に、別個のリングが缶本体に付着され、それにより缶を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
明らかに、1枚の金属からそのようなリングを別個に製造することによって、中央領域を切り抜きそれによりリング開口部を形成すると、比較的大量の材料が損なわれることになる。また、リングを缶本体に付着させるために付加的な動作工程が必要とされる。
【0004】
リングによる缶本体への蓋の締付けを保証することができない状況下の場合、付加的な締付力を生成するために、別個の締付バンドまたはストリップが缶の上側領域に貼付けられる。そのような締付バンドまたはストリップの使用は費用を増大させ、その取り外し後は締付力が最適ではなくなる。
【0005】
本発明は、上述の欠点を実質的に克服する缶を提供することをその目的として有し、別個の付着されたリングおよび/または締付バンドもしくはストリップを必要とすることなく、蓋が缶本体に貼付けられ適切な締付力によって維持されることができる。同時に、過度の力を加えることなく通常の方法でユーザによって蓋を取外すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題を解決するために、発明の第1の局面にしたがって提供される発明は、ペンキ缶などの缶を作製するための方法であって、i)円筒体を提供するステップと、ii)開口部の直径を規定するために円筒体の第1の開口部にピストン手段を配置するステップと、iii)第1の開口部の規定された直径が実質的に周方向に寸法的に安定するように、第1の開口部の自由端を径方向外方に円筒体に沿って軸方向にカールさせ、それによりカールを形成するステップと、を含む。
【0007】
形成されるカールと缶本体の形成中に既定の直径を要求し維持するピストン手段の開口部内に存在することとにより、蓋が必要な締付力によってその中に収容される缶本体の開口部が十分な径方向強度および周方向の寸法安定性を有することから、本発明のこれらの方法は、別個の締付リングの使用を回避することができる。カールは径方向外方にカールされ、したがって形態安定性が維持され、輪郭および壁厚の実質的な変動が回避される。
【0008】
そのような一体型の外方にカールした締付カールが設けられた缶本体の利点は、内面が滑らかかつ連続的であるため、缶本体とリングとの間の接続部の内側溝またはスロットにいずれかの材料が残留することなく缶の内容物を放出することができる点である。
【0009】
好ましい実施例によれば、ステップiii)におけるカールの形成前に、缶本体の第1の開口部の自由端にプリカールが設けられる。したがって、鋭い切断縁であることが多い円筒体の縁が保護され、ほとんど露出されることがなく、それにより、起こり得る腐食の問題を回避する。
【0010】
上記のように、カールは、径方向外方かつ円筒体に沿って軸方向に形成されることが必要とされる。これは、円筒体および最終的な缶本体の外径よりもカールの外径が大きいことを意味する。
【0011】
カールが缶本体を大きく越えて延在しないことが好まれるか、または好ましくは缶本体の範囲内に位置し、ゆえに缶本体の外径以下の外径を有する場合、カールは、缶本体の直径が小さい一部分に形成されることになる。そのような缶本体の直径が縮小された部分は、缶本体の当該部分を狭めることによって形成することはできない。なぜなら、狭める際に周方向の寸法安定性および壁厚を十分に制御することができないためである。それでもなおこの目的は、発明の好ましい実施例にしたがって、円筒体が第1の自由端まで部分的に径方向に引張られ、他のやり方で引張られた円筒体の引張られていない狭められた部分にカールが形成され、好ましくはカールが径方向に引張られた円筒体部分の外側の仮想包囲体内に位置する場合に満たされることができる。したがって、円筒体の他の部分の直径を増大させ、ゆえに、ピストン手段の存在により所望の規定された直径を有しかつ自由端が接触されないままである開口部の自由端を操作しないことによって、円筒体の狭められた部分が形成される。
【0012】
径方向に引張られた円筒体の形成は、圧延、引張り、(深)しぼり加工、およびしごき加工などのいずれかの好適な技術によって行われることができる。径方向外方への引張りによる形成が好ましい。なぜなら、これは実質的に一定の壁厚を有し、20〜25%までの引張りを可能とする引張られた缶本体となり、付加的な材料節約をもたらすからである。そのような引張り動作は、たとえば国際公開第WO2009/130034号に開示されている。制御された簡潔なやり方でこの引張り動作を実行させるためには、円筒体の第2の開口部にトロンプ開口(tromped mouth)が設けられ、径方向への引張りがトロンプ開口を介して第2の開口部の自由端まで(第2の開口部の自由端を含まず)引張り手段によって実行されることが好ましい。そうする際、開口部の規定された直径を規定しかつ維持するために必要であり、かつこの自由端へと延在するピストン手段が引張り手段に設けられ得る。
【0013】
トロンプ開口が、円筒体に対するトロンプ角度(tromping angle)が5°から40°、たとえば10°から30°の範囲内にあるような寸法である場合、トロンプ開口およびプリカールを一つの同じ動作で、ゆえに同じ装置ユニットまたはステーションで形成することができる。いくつかの理由から、円筒体の一方端にカールを形成するための軸方向の力は、他方の自由端にトロンプ開口を形成するために必要な軸方向の力より小さい。しかしながら、円筒体の金属の種類、その壁厚、およびトロンプ工具の形態に依存して、まずトロンプ開口、その後でプリカールを形成することも可能である。したがって、トロンプ開口およびプリカールの両方が実質的に同時に形成され得る。
【0014】
制御された確実なやり方で円筒体を径方向に引張るためには、円筒体が締付手段によって堅く保持されることが好ましい。さらに、円筒体には締付フランジが設けられる。したがって、発明の好ましい実施例によれば、円筒体の径方向への引張り前に、径方向への引張り中に円筒体を締付手段によって締付けるための締付フランジが第2の開口部の自由端に設けられる。
【0015】
トロンプ開口から隔たった円筒体の第1の開口部が支持されていない場合、締付けられながらのこの引張りによって、引張りに対する軸方向の抵抗の結果である波形構造が円筒体に形成されることはない。これは、円筒体が載る装置支持部と締付手段の支持部との間の距離を維持することによって達成することができる。なぜなら、径方向の引張りは円筒体の長さの減少をもたらすことになるためである。締付手段によって吊下げられ締付けられると、円筒体は持ち上げられることになる。
【0016】
特に容積が大きい缶について、充填され閉じられた缶がつかみやすく運びやすいことが好ましい場合は、発明にしたがって、カール形成中にハンドル手段がカールに押込められ得る。そのようなハンドル手段は、プラスチックまたは金属からなる可撓性のストリップまたはバンドの形態を有し得る。それらは、カール形成中にカールにすっきりと組込まれる。付加的な利点は、これらのハンドル手段が実質的に缶の範囲を越えて延在せず、ゆえにつかみやすく、小さな表面積で積層し格納しやすい点である。
【0017】
缶作製中に開口部に嵌めこまれる直径決定ピストン手段の使用によって得られる缶のカールした開口部の周方向の寸法安定性は、缶の全直径について実質的に等しい。一例として、32mm〜300mm、たとえば48mm〜286mm、特に57mm〜165mmの直径の缶の寸法安定性は、誤差のマージンが±0.10mm以下である。好ましくは、寸法安定性の誤差のマージンは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである。そのような誤差のマージンを有するこの寸法安定性は、これらの直径の缶について、締付力が、締付リングおよび/または締付バンドもしくはストリップを必要とすることなく缶への蓋の確実な固定に十分なものである。
【0018】
発明の別の局面は、発明に係る缶を作製するための装置に関する。この装置は、実質的に寸法的に安定した開口部の規定された直径を維持するために円筒体の第1の開口部に配置されるピストン手段と、径方向外方に円筒体に沿って軸方向に第1の開口部の自由端をカールさせることによってカールを形成するためのカール手段とを含む。実際の実施例では、装置は、ピストン手段を開口部に配置するためのユニットと、カールを形成するためのカール手段とを含む。
【0019】
第1の開口部の自由端の強度を高めるため、かつ鋭いことが多い自由端の露出を回避するために、装置が、カールの形成前に第1の開口部の自由端をあらかじめカールさせるための手段を含むことが好ましい。
【0020】
カールした自由端を缶の狭められた部分に配置するためには、発明にしたがって、缶の別の部分が径方向に引張られることが好ましい。さらに、装置が、円筒体を第1の開口部の第1の自由端まで径方向に引張るための引張り手段を含むことが好ましく、好ましくはピストン手段は引張り手段に組込まれる。
【0021】
好ましくは装置が円筒体の第2の開口部をトロンプ化する(tromping)ための手段を含む場合、径方向の引張りは簡潔に制御される。
【0022】
第2の開口部にトロンプを形成するための径方向の力は、プリカールを形成するための径方向の力よりも大きいか、小さいか、または等しい場合があるため、一つずつまたは実質的に同時に作製される。発明によれば、トロンプ手段およびプリカールを形成するための手段は装置の同じユニットに配置され得、それにより缶を作製するためのユニット数および時間を減少させる。
【0023】
好ましいトロンプ開口における円筒体の径方向の引張りを適切に制御するために、自由端に締付フランジを設けることが推奨される。さらに、発明の装置は好ましくは、第2の開口部の自由端上に締付フランジを形成するための手段と、径方向への引張り中に円筒体を締付けるための手段とを含む。そうすれば、そのような径方向の引張りは、円筒体の遠隔の開口部が支持されない状態で行われることができ、したがって対抗する軸方向の力が実質的に回避される。これにより、本体の壁厚の均一性の向上がもたらされる。発明によれば、締付フランジを形成するための手段とカールを形成するための手段とが同じ装置ユニットに組込まれることが好ましい。
【0024】
発明に係る装置が、カールにハンドル手段を閉じ込めるための手段を含むことも好ましい。
【0025】
最後に、発明の第3の局面は、缶およびしたがって缶本体に関連する。缶は、ペンキ缶または食料品缶であり得、上記の発明の方法によって得ることが可能である。締付けられた蓋を有するこの缶は、缶本体と一体であり、蓋が収容された缶開口部を規定するカールが設けられた自由端を特徴とし、開口部は実質的に寸法的に安定し、好ましくは、誤差のマージンが±0.10mm、好ましくは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである寸法安定性を有する。発明の缶のための缶本体は、実質的に寸法的に安定した開口部を規定するカールが設けられた狭められた自由端を有する第1の開口部と、好ましくは締付フランジを有する第2の開口部とを特徴とする。
【0026】
本発明の缶および缶本体を作製するための方法および装置、ならびにそのような缶および缶本体の上記のおよび他の特徴がいくつかの実施例によってさらに例示されるが、実施例は単に参考のために示され、発明をいずれかの程度に制限することは意図されない。これらの実施例に関して、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】円筒体を作製するための金属シートの平面図である。
【図1B】図1Aの金属シートから形成された円筒体の斜視図である。
【図2A】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2B】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2C】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2D】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2E】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図2F】トロンプ開口およびプリカールを形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3A】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3B】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3C】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3D】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図3E】カールのおよび締付フランジの一部を形成するための様々な段階を模式的に示す図である。
【図4A】円筒体の締付けおよび径方向の引張りを模式的に示す図である。
【図4B】円筒体の締付けおよび径方向の引張りを模式的に示す図である。
【図4C】円筒体の締付けおよび径方向の引張りを模式的に示す図である。
【図5A】円筒体の狭められた部分におけるカールの形成を模式的に示す図である。
【図5B】円筒体の狭められた部分におけるカールの形成を模式的に示す図である。
【図5C】円筒体の狭められた部分におけるカールの形成を模式的に示す図である。
【図6A】円筒体への底部の貼付けを模式的に示す図である。
【図6B】円筒体への底部の貼付けを模式的に示す図である。
【図7A】蓋の装着および取外しを模式的に示す図である。
【図7B】蓋の装着および取外しを模式的に示す図である。
【図7C】蓋の装着および取外しを模式的に示す図である。
【図8A】蓋で閉じられた発明の缶の積層を模式的に示す図である。
【図8B】蓋で閉じられた発明の缶の積層を模式的に示す図である。
【図9A】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9B】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9C】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9D】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9E】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図9F】一体型の底部を有する発明の缶の別の実施例を示す図である。
【図10A】可撓性のハンドルが設けられた、発明に係る缶のさらに別の実施例を示す図である。
【図10B】可撓性のハンドルが設けられた、発明に係る缶のさらに別の実施例を示す図である。
【図10C】可撓性のハンドルが設けられた、発明に係る缶のさらに別の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1Aは、鋼、錫プレート、アルミニウムなどの金属のシート1を示す。シートは、金属と発明の缶を形成する動作とに依存して、約0.12〜2mmの壁厚を有する。シート1は円筒体2に形成され、溶接継目3が設けられる。
【0029】
図2A〜図2Fは、円筒体2上の第2の自由端6においてトロンプ開口5を形成するための、かつ円筒体2上の第1の自由端8上にプリカール7を形成するための、発明の装置の第1のユニット4を示す。さらに、ユニット4は、入口セクション9を有するトロンプ工具16と、約5°〜約15°の範囲の適度な分岐角度を有する第1の分岐セクション10と、約15°〜約35°の範囲のより大きな分岐角度を有する第2の分岐セクション11とを含む。
【0030】
円筒体2は、トロンプ工具16の入口セクション9上の自由端6において装着される。次に、押出し工具12が円筒体を矢印13に沿って分岐セクション10および11上に押し付け、それによりトロンプ開口5を形成する(図2B参照)。
【0031】
その後、押出し工具12を後退させ、ピストン手段14が第1の自由端8に配置され、それによりその組立て中に第1の自由端8の規定された直径を規定し制御する(図2C参照)。ピストン手段14は成形工具15上に装着される。この成形工具15は、矢印19にしたがった下方への移動によって、ピストン手段14が規定された開口部20にある状態で本体壁18にプリカール7が形成されるように設計された成形空洞17を含む(図2Dおよび図2E参照)。プリカール7を形成するための軸方向下方への力は、トロンプ開口5を形成するために必要な力より小さい。ゆえに、トロンプ工具16上に装着された円筒体2は、その当初位置に実質的に維持される。したがって、最終的にユニット4に形成されるのは、ピストン手段14とプリカール7とによって規定される第1の開口部20を第1の自由端8に、さらにトロンプ開口5を第2の自由端6に有する円筒体21である(図2F参照)。前述のように、たとえば円筒体の材料、その壁厚、およびトロンプ工具16の形態に依存して、トロンプ開口およびプリカールの形成は、異なる順序または実質的に同時であり得る。
【0032】
発明の装置のユニット23において、装置ユニット4に生成された円筒体は、支持部24に装着される(図3A参照)。成形工具26に装着されたピストン手段25は、プリカール7が設けられた規定された第1の開口部20に装着される。矢印27にしたがった移動は、成形工具26の成形空洞28におけるカール部22の形成をもたらすことになる。このカール部22はプリカール7を担持する(図3Bおよび図3C参照)。その後、成形空洞32内にあるトロンプ開口7の自由縁31に向かって成形工具29を矢印30にしたがって軸方向に移動させる。この成形空洞32は、支持部24と工具34との間に形成される。成形工具29の成形縁33は自由縁31に接触し、トロンプ開口5において締付フランジ35を形成する(図3Dおよび図3E参照)。このようにして形成されるのは、締付フランジ35が設けられたトロンプ開口5と、規定された直径でありカール部22およびプリカール7が設けられた第1の開口部20とを有する円筒体36である。
【0033】
この円筒体36は(図3Bと比較して)上下反対にされ、締付手段37によって締付配置に吊下げられる。これらの締付手段37は、締付工具38および39を含む。引張り工具40はトロンプ開口5を通過し、矢印42にしたがって締付工具40を通過する際、引張り工具40の外面に沿って円筒体36を径方向外方に引張る。これは円筒体36の長さの減少をもたらす(図4A〜図4C参照)。円筒体36の相当部分が径方向外方に引張られる。円筒体の残りの引張られていない部分は、引張り工具40上に装着されたピストン手段44によって規定される狭められた部分43を形成する(図4Aおよび図5A参照)。
【0034】
図5A〜図5Cに示されるように、成形工具45を矢印50にしたがって上方に移動させる。この成形工具45は成形空洞46を含み、成形空洞46は、狭められた部分43において円筒体に沿ってプリカール7を有する細長いカール47をまず形成する。細長いカール47は、細長いカール47が設けられた第1の開口部の直径を規定したピストン手段44に沿って形成される。最終的に、矢印50の移動にしたがって、細長いカール47の一部を包囲する成形空洞が段差48を形成する。結果は、細長く段差のあるカール49の形成である。狭められた部分43において細長く段差のあるカール49を有する円筒体51には、継目接続53を介して底部52が設けられる。これにより、発明に係る缶本体54がもたらされる(図6Aおよび図6B参照)。
【0035】
缶本体54には蓋55を設けることができ、蓋の環状蓋部分56が細長いカール49上に載り、蓋カール57が細長いカール49の段差48上に径方向に延在する(図7A〜図7C参照)。これは工具58のための進入路59を形成し、それにより発明の缶61の円筒体51から蓋55を取外すことができる。細長いカール49によって規定される開口部60はピストン手段44の直径に対応し、0.03mmの誤差のマージンを有する寸法安定性を有する。蓋55は開口部60内に締付力によって締付けられ、発明の閉じられた缶は、たとえばペンキ缶として使用することができる。締付力は、細長く段差のあるカール49の形態で生成される。
【0036】
図8Aおよび図8Bは、発明の2つの積層された缶61を示す。上側の缶61の底部は、下側の缶61の蓋55の環状蓋部分56上に底部が載る。継目接続53はカール57を越えて延在し、カール57を閉じ、上側に積層された缶61が径方向の変位に対抗してロックされる。
【0037】
缶本体54は、2つの部品、すなわち一体型の細長く段差のあるカール49を有する円筒体51と、継合わされた底部52とから成る。蓋55を含めると、本発明の缶61は3つの部品から成る。
【0038】
図9A〜図9Fは、2つの部品、すなわち缶本体63と蓋64とから成る発明の別の缶62の作製を示す。一体型の底部を有する缶本体63は、円筒体65から形成される。円筒体65の自由端66には、任意に段差があり得る細長いカールが設けられる。さらに、自由端には、プリカール成形空洞17を有する成形工具15を使用して、図2Eに関連して説明したようにプリカール67が設けられる。カール68は、成形工具69を使用することによって形成される。このカール68は、成形工具71を使用して細長いカール70に変形される。任意に、細長いカール70には、成形工具72および支持工具73を使用して段差48が設けられる。成形工具71および72には、一体型のカール70の形成中に円筒体65の開口部75に配置されるピストン手段74が設けられる。これは、発明の缶62が、一体型の底部と、ピストン手段74の外径に密接に対応する規定された直径を有するカール70とを有する缶本体63を有することを意味する。
【0039】
図10A〜図10Cは、発明に係る缶76の別の実施例を示す。缶76は、一体型のカール79が設けられた開口部を狭められた部分78において閉じる蓋77を含む。この規定された開口部は、発明に係る上記の缶と同じやり方で生成される。しかしながら、一体型のカール79の形成中に、一体型の細長いカール79が形成されることになる狭められた部分78にハンドル手段80が配置される。カール79の形成後に、ハンドル手段80が缶76に閉じ込められ堅く固定される。これらのハンドル手段は、発明の缶76を運ぶ際に使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンキ缶または食料品缶などの缶を作製するための方法であって、
i)円筒体を提供するステップと、
ii)開口部の直径を規定するために前記円筒体の第1の開口部にピストン手段を配置するステップと、
iii)前記第1の開口部の規定された直径が実質的に周方向に寸法的に安定するように、前記第1の開口部の自由端を径方向外方に前記円筒体に沿って軸方向にカールさせ、それによりカールを形成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
ステップiii)における前記カールの形成前に、前記第1の開口部の自由端にプリカールが設けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記円筒体が第1の自由端まで部分的に径方向に引張られ、引張られた円筒体の狭められた部分に前記カールが形成され、好ましくは前記カールは径方向に引張られた円筒体部分の外側の仮想包囲体内に位置する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記円筒体の第2の開口部にトロンプ開口が設けられ、径方向への引張りは、前記トロンプ開口を介して前記第2の開口部の自由端まで引張り手段によって行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記円筒体の径方向への引張り前に、径方向への引張り中に前記円筒体を締付手段によって締付けるための締付フランジが前記第2の開口部の自由端に設けられる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
カール形成中にハンドル手段が前記カールに閉じ込められる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
開口部の規定された直径は、誤差のマージンが±0.10mm、好ましくは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである寸法安定性を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の缶を作製するための装置であって、寸法的に安定した開口部の規定された直径を維持するために円筒体の第1の開口部に配置されるピストン手段と、径方向外方に円筒体に沿って軸方向に前記第1の開口部の自由端をカールさせることによってカールを形成するためのカール手段とを備える、装置。
【請求項9】
前記カールの形成前に前記第1の開口部の自由端をあらかじめカールさせるための手段を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記円筒体を前記第1の開口部の第1の自由端まで径方向に引張るための引張り手段を備え、好ましくは前記ピストン手段は前記引張り手段に組込まれる、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記円筒体の第2の開口部をトロンプ化するための手段を備える、請求項8〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
第2の開口部の自由端上に締付フランジを形成するための手段と、径方向への引張り中に前記円筒体を締付けるための手段とを備える、請求項8〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記カールにハンドル手段を閉じ込めるための手段を備える、請求項8〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得ることが可能なペンキ缶などの缶であって、缶本体と一体であり、実質的に寸法的に安定し、好ましくは誤差のマージンが±0.10mm、好ましくは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである寸法安定性を有する缶開口部を規定するカールが設けられた自由端を備える、缶。
【請求項15】
缶本体であって、実質的に寸法的に安定した開口部を規定するカールが設けられた狭められた自由端を有する第1の開口部と、好ましくは締付フランジを有する第2の開口部とを備える、缶本体。
【請求項1】
ペンキ缶または食料品缶などの缶を作製するための方法であって、
i)円筒体を提供するステップと、
ii)開口部の直径を規定するために前記円筒体の第1の開口部にピストン手段を配置するステップと、
iii)前記第1の開口部の規定された直径が実質的に周方向に寸法的に安定するように、前記第1の開口部の自由端を径方向外方に前記円筒体に沿って軸方向にカールさせ、それによりカールを形成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
ステップiii)における前記カールの形成前に、前記第1の開口部の自由端にプリカールが設けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記円筒体が第1の自由端まで部分的に径方向に引張られ、引張られた円筒体の狭められた部分に前記カールが形成され、好ましくは前記カールは径方向に引張られた円筒体部分の外側の仮想包囲体内に位置する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記円筒体の第2の開口部にトロンプ開口が設けられ、径方向への引張りは、前記トロンプ開口を介して前記第2の開口部の自由端まで引張り手段によって行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記円筒体の径方向への引張り前に、径方向への引張り中に前記円筒体を締付手段によって締付けるための締付フランジが前記第2の開口部の自由端に設けられる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
カール形成中にハンドル手段が前記カールに閉じ込められる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
開口部の規定された直径は、誤差のマージンが±0.10mm、好ましくは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである寸法安定性を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の缶を作製するための装置であって、寸法的に安定した開口部の規定された直径を維持するために円筒体の第1の開口部に配置されるピストン手段と、径方向外方に円筒体に沿って軸方向に前記第1の開口部の自由端をカールさせることによってカールを形成するためのカール手段とを備える、装置。
【請求項9】
前記カールの形成前に前記第1の開口部の自由端をあらかじめカールさせるための手段を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記円筒体を前記第1の開口部の第1の自由端まで径方向に引張るための引張り手段を備え、好ましくは前記ピストン手段は前記引張り手段に組込まれる、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記円筒体の第2の開口部をトロンプ化するための手段を備える、請求項8〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
第2の開口部の自由端上に締付フランジを形成するための手段と、径方向への引張り中に前記円筒体を締付けるための手段とを備える、請求項8〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記カールにハンドル手段を閉じ込めるための手段を備える、請求項8〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得ることが可能なペンキ缶などの缶であって、缶本体と一体であり、実質的に寸法的に安定し、好ましくは誤差のマージンが±0.10mm、好ましくは±0.05mm、より好ましくは±0.03mmである寸法安定性を有する缶開口部を規定するカールが設けられた自由端を備える、缶。
【請求項15】
缶本体であって、実質的に寸法的に安定した開口部を規定するカールが設けられた狭められた自由端を有する第1の開口部と、好ましくは締付フランジを有する第2の開口部とを備える、缶本体。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【公表番号】特表2013−517139(P2013−517139A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548433(P2012−548433)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050391
【国際公開番号】WO2011/086123
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(504236330)インプレス・グループ・ベスローテン・フエンノートシャップ (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050391
【国際公開番号】WO2011/086123
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(504236330)インプレス・グループ・ベスローテン・フエンノートシャップ (20)
【Fターム(参考)】
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