説明

ガイドレール切除用ニッパー

【課題】 カバー工法によるサッシ改装に際して必要とされる既設下枠のガイドレールを容易且つ確実に切除し得るようにしたエアニッパーを提供する。
【解決手段】 既設下枠20の室外側ガイドレール22を呑込んでこれをその付根のレール基板21から切除するカッター刃13をニッパー本体10に開閉自在に軸支固定するとともに既設下枠20の室内外ガイドレール22,23間でレール基板21に載置して転動するローラー18をカッター刃13を挟む両側に一対配置してニッパーAとする。一対のローラー18がニッパーAの転び止め作用を発揮してガイドレール22の斜め切りや切残しを解消でき,またローラー18によってレール基板21をスライド移動できるのでガイドレール22の順次の切除を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,サッシ改装における既設サッシ枠のガイドレールを切除するに用いるニッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鋼製サッシからのアルミサッシへのカバー工法による改装に代えて,アルミサッシからアルミサッシへの同じくカバー工法による改装が行われるようになり,この場合カバー工法の欠点である開口の狭小化を可及的に抑制するために,本発明者は,例えば既設サッシ枠,特にその既設下枠に上向きに起立配置した突出レールたる室外側ガイドレールを除去し,該室外側レールの除去跡に階段状に形成した新設サッシ,特にその新設下枠の室外側端部近傍の基板部分を載置した状態で該新設下枠の上端を既設下枠より上方に突出するのを防止する納まりを採用するものとし,このとき室外側ガイドレールの除去は,ニッパー,例えばエアニッパーを使用して該ガイドレールをその下枠基板から切除するようにこれを行うものとしてある。
【0003】
【特許文献1】特願2005−167824号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら,ニッパーによってガイドレールを切除するには,ニッパーのカッター刃によってガイドレールを上下方向に呑込んだ状態で該カッター刃を開閉して,例えばガイドレール長手方向一端側から他端側に向けて繰り返しの切除作業を行う必要があるために作業が煩雑化する傾向が強く,またニッパーのカッター刃が前後方向や左右方向,即ちガイドレールの短手方向や長手方向に転ぶことによって,ガイドレールが斜め切りされた状態となり易いとともに斜め切りによって下枠基板には各切除による傾斜切断跡が残って,場合によっては新設サッシの納まりに影響することになる可能性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に沿って本発明は,ニッパーをガイドレール長手方向にスライドするように移動しながらカッター刃を開閉することによって容易にガイドレール切除作業をなし得るようにする一方,カッター刃が常にガイドレールの付根に水平になるようにカッター刃の両側,即ちガイドレール長手方向に沿う転び止めを配置するようにしたものであって,即ち請求項1に記載の発明を,サッシ改装における既設サッシ枠のガイドレールを切除するニッパーであって,ガイドレールを上下方向に呑込んでガイドレールの下端を切除する開閉自在のカッター刃と,該カッター刃の開閉交差方向両側に配置した転び止め部材とを備えてなることを特徴とするガイドレール切除用ニッパーとしたものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記転び止め部材を既設サッシの基板を転動自在としたローラーによるものとして,ニッパーのガイドレール長手方向への移動を容易になし得るとともに常に水平の切除をなし得るものとするように,これを,上記転び止め部材を一対のローラーとしてなることを特徴とする請求項1に記載のガイドレール切除用ニッパーとしたものである。
【0007】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,ニッパーをガイドレール長手方向にスライドするように移動しながらカッター刃を開閉することによって容易にガイドレール切除作業をなし得るようにする一方,カッター刃が常にガイドレールの付根に水平になるようにカッター刃の両側,即ちガイドレール長手方向に沿う転び止めを配置するようにことにより,カッター刃によるガイドレール切除作業を容易になし得てその作業性を可及的に向上するとともにガイドレールが斜め切りされる可能性を解消し得るようにしたガイドレール切除用ニッパーを提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,上記転び止め部材を既設サッシの基板を転動自在としたローラーによるものとして,ニッパーのガイドレール長手方向への移動を容易になし得るとともに常に水平の切除をなし得るものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは,サッシ改装における既設サッシ,本例にあっては既設下枠20のガイドレールを切除するに使用するガイドレール切除用ニッパーであり,該ニッパーAは,例えば,現場でエアコンプレッサーによって作動するエアニッパーを用い,該エアニッパーは,その本体10にカッター刃13を装着したものとしてあり,該カッター刃13は,ガイドレールを上下方向に呑込んでガイドレールの下端を切除する開閉自在のカッター刃とし,またニッパーAは,該カッター刃13の開閉交差方向両側には転び止め部材を配置したものとしてある。
【0011】
即ち本例にあってサッシ改装は,躯体に設置された,例えば引違いサッシの既設窓枠を残存し,該既設窓枠の内側に新設窓枠を配置するカバー工法によってこれを行うものとしてあり,特に既設下枠20にあっては,図3に示すように,そのレール基板21に内外離隔した起立配置された室内外一対のガイドレール22,23のうち,室外側のガイドレール22をその下端から切除し,該室外側のガイドレール22を切除した既設下枠20に,これを覆うように階段状に形成した新設下枠30を被覆配置し,これによって重合した既設下枠20の室内側額縁24と新設下枠30の室内側額縁34とをネジ41止めし,また同じく重合した既設下枠20の室外端部,例えば網戸レール25を備えた本例の既設窓枠にあっては該網戸レール25と新設下枠30の室外端部,本例にあっては下向きに垂下した垂下片とを同じくネジ41止めしてその固定を行うことによってその下枠改装を行うものとしてある。
【0012】
このとき新設下枠20の上記室内側額縁34及び該額縁34からレール基板31に至る垂直連結部35を厚肉化,例えば新設下枠30の標準肉厚1〜1.5mmに対して,室内側額縁34を2〜2.5mmの5割増乃至2倍程度とし,垂直連結部35を2〜4mmの2倍乃至2.5倍程度に厚肉化することによって,本例にあっては更に上記垂直連結部35の上下中間位置に更に2mm程度の肉盛を施すことによって該室内側額縁34と垂直連結部35が新設下枠30に負荷される図示省略のサッシ戸荷重を安定して支持するようにその剛性を確保したものとする一方,新設下枠30の室外側のガイドレール32位置においてそのレール基板31を,本例にあって上記既設窓枠20の網戸レール36上に樹脂製等のスペーサー40を介して載置することによって更に該レール基板31を下支え状態に支持してサッシ戸に対する耐荷重性を高度に確保するものとしてある。
【0013】
このように既設窓枠を改装する新設窓枠の納まりにあっては,上記既設下枠20の室外側のガイドレール22を切除することによって,階段状に形成した新設下枠30の室内側額縁34が窓台上面の既設下枠20の室内側額縁24に重合するとともに室内側のガイドレール23を含めて該室内側額縁34から上方突出部分がないようにし,該既設下枠20からの新設下枠30の上方突出を防止することによって,カバー工法における最大の欠点とされる開口の狭まりを,少なくとも下枠側において解消することができるようになる。
【0014】
ニッパーAは,本例にあっては上記既設下枠20の室外側のガイドレール22を切除するに用いるものとしてあり,このとき上記ニッパー本体10に装着したカッター刃13は,該ガイドレール22のレール基板21からの起立高さ,一般に1.5cm程度を呑込んで該ガイドレール22をその起立端部の下端から切除するように,例えば該起立高さ乃至それ以上の空隙を形成し,その先端に該ガイドレール22の切取用刃部を配置したものとしてある。
【0015】
カッター刃13は,ニッパー本体10の先端部に配置した装着溝に後端を挿入し,該装着溝を画する一対の対向片11に貫通し先端にネジ部を有する支軸を挿通し,該支軸の両端にナット12を締着することによって該対向片11に回動自在に軸支固定してあり,これによって該カッター刃13を一対の対向片11間で開閉自在として上記ガイドレール22の切除をなし得るようにしてある。
【0016】
またこのときニッパーAは,該カッター刃13の開閉交差方向両側に上記転び止め部材を備えており,該転び止め部材は,上記既設下枠20にあって,その室内側のガイドレール23と室外側のガイドレール22間の空間に片側のカッター刃13とともに挿入し,既設下枠20のレール基板21に対接してこれに載置されるようにその厚さを規制してあり,該転び止め部材をレール基板21に対して対接することによってカッター刃13で既設下枠20の室外側のガイドレール22を呑込んだ際に該カッター刃13のガイドレール22長手方向への転びを防止し,転びによってカッター刃13が振れてガイドレール22を斜め切りしたりすることなく,該ガイドレール22の下端からこれをレール基板21に対して平行に切取り切除し得るようにしてある。
【0017】
本例にあって該転び止め部材は,これを一対のローラー18としてあり,該転び止め部材を一対のローラー18とすることによって上記カッター刃13の転びを防止するとともにガイドレール22長手方向に転動自在とし,これによりガイドレール22の切除に際してガイドレール22間でその長手方向にスムーズにスライド移動自在としてあり,ニッパーAによるガイドレール22の切除は,例えば,これを,カッター刃13開閉用の図示省略のスイッチを押圧操作して該ガイドレール22を切除し,次いでカッター刃13の幅分をガイドレール22長手方向にスライド移動して同様にスイッチを押圧操作して上記切除部分に隣接するガイドレール22を切除し,これをガイドレール22長手方向に繰り返すようにして,容易にして確実なガイドレール22の切除をなし得るようにしてある。
【0018】
一対のローラー18とした,本例の転び止め部材は,例えばカッター刃13の開閉交差方向両側,即ち既設下枠20の長手方向に一対を備え,該一対のローラー18は,これをローラー支持金具14によってニッパー本体10に設置してあり,該ローラー支持金具14は,その正面形状を逆T字状とし,該逆T字状の下端の横方向,即ちガイドレール22長手方向にニッパー本体10より突出するように配置したローラー固定片15の両側に上記一対のローラー18を回転自在に軸支する一方,該ローラー固定片15から垂直に立ち上げた逆T字状の上方垂直の垂直片16を介してニッパー本体10に固定してあり,該垂直片16を介したニッパー本体10への固定は,該垂直片16からコ字状をなすようにニッパー本体10側に突出した対向固定片17を,上記ニッパー本体10のカッター刃13の支軸に挿通し,上記ナット12の締着を該対向固定片17の外側から行うことによって上記カッター刃13とともにその軸支固定用の支軸を共用して行ってある。
【0019】
因みに本例にあってニッパー本体10の直径,即ちニッパーAの使用状態で手持ち握りするグリップ部分の直径を約4.5cmとするに対して,上記カッター刃13の幅(ガイドレール長手方向の幅)約2.5cm,カッター刃13の横幅(奥行)を下端で同じく約2.5cm,一対のローラー18における軸支位置間の間隔を約9cm,ローラー18の直径を約3cm,ローラー18の厚さを約1cmとしてある。
【0020】
このように形成したニッパーA,本例にあってエアニッパーは,例えば改装現場で既設下枠20の長手方向端部の,例えば排水用切欠部分のレール基板21にその転び止め,本例にあってはローラー18を対接するように載置するとともに上記のとおりカッター刃13で室外側のガイドレール22を呑込み,スイッチを押圧操作することによって該ガイドレール22を上記カッター刃13の幅分を切取切除し,その後にカッター刃13の幅分に応じてニッパーAをローラー18載置状態のままガイドレール22長手方向に移動して同様に該カッター刃13の幅分を切取切除し,順次これを繰り返すようにし,長手方向他端で必要に応じてカッター刃13で上下方向にガイドレール22を切断し,ガイドレール22を既設下枠20から取り外すように撤去すればよく,その後に上記新設窓枠の新設下枠30によって該既設下枠20を覆うように載置固定してその下枠の改装を行うようにすればよい。
【0021】
これによってレール基板21にローラー18を対接して載置したニッパーAは,ローラー18の転び止め作用によってカッター刃13のガイドレール22呑込みを定位置において確実に行うとともに該呑込み状態でスイッチ操作によるカッター刃13の開閉によって該ガイドレール22をその下端で切残しや斜め切りをすることなく簡易且つ確実に切除することができ,またニッパーAをずらすようにスライド移動すれば同様にカッター刃13の呑込みを定位置でなし得て直ちにそのスイッチ操作による切除をなし得て,該移動に際して位置合せ等の煩雑な作業を解消し,ガイドレール22切除作業を効率的に行うことができる。
【0022】
図中36は新設下枠30の網戸レール,37は新設下枠30に設置し,既設下枠20の垂直連結部 に対接する気密材,38は新設下枠30のサッシ戸との気密材を装着する気密材受溝を示す。
【0023】
図示した例は以上のとおりとしたが,転び止めを既設下枠のガイドレール間スペースに挿入自在にしてレール基板に対接するようにニッパー本体に設置したブロックによるものとすること,ニッパーを上記エアコンプレッサー以外の動力源で作動するものとし,また手動のものとすること,ニッパーによる切除対象を,必要に応じて既設下枠以外の上枠,無目等のガイドレールとすること等を含めて,本発明の実施に当って,ニッパー,そのカッター刃,転び止め部材,切除対象のガイドレール,必要に応じて用いるローラー等の各具体的形状,構造,材質,これらの関係,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既設下枠とカッター刃及びローラーとの関係を示すニッパーの側面図である。
【図2】既設下枠とカッター刃及びローラーとの関係を示すニッパーの正面図である。
【図3】サッシ改装の下枠部分の縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
A ニッパー
10 ニッパー本体
13 カッター刃
18 ローラー
20 既設下枠
22 室外側ガイドレール
30 新設下枠
41 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシ改装における既設サッシ枠のガイドレールを切除するに使用するニッパーであって,ガイドレールを上下方向に呑込んでガイドレールの下端を切除する開閉自在のカッター刃と,該カッター刃の開閉交差方向両側に配置した転び止め部材とを備えてなることを特徴とするガイドレール切除用ニッパー。
【請求項2】
上記転び止め部材を一対のローラーとしてなることを特徴とする請求項1に記載のガイドレール切除用ニッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−390(P2007−390A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184330(P2005−184330)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(504271984)INAXトステム・ビルリモデリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】