説明

ガイドワイヤ保持具

【課題】カテーテルとガイドワイヤのフラッシュを同時に行うことができると共に、ガイドワイヤに対する固定位置を調整できる、ガイドワイヤ保持具を提供することにある。
【解決手段】このガイドワイヤ保持具10は、ガイドワイヤの挿通路25が形成され、基部側が把持部21をなし、先端側にチャック40が設けられた本体20と、チャック40を締め付けてガイドワイヤ1を挟持させるキャップ60と、キャップ60を本体20に螺着させてチャック40を締め付けたとき、本体20とキャップ60との隙間をシールするシール手段とを備え、キャップ60の先端部にはカテーテルに接続可能な第1接続部65が設けられ、本体20の基端部にはシリンジに接続可能な第2接続部39が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血管、尿管、胆管、気管等の人体の管状器官内に挿入されるガイドワイヤに固定され、ガイドワイヤの押し引きや回転等の各種操作を容易に行うための、ガイドワイヤ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、尿管、胆管、気管等の人体の管状器官における検査・治療のために、チューブ状のカテーテルを挿入して造影剤や制癌剤等の薬剤を投与したり、カテーテルを通して鉗子等によって組織の一部を採取したりすることが行われている。このカテーテルの挿入に際しては、管状器官内に比較的細くて柔軟なガイドワイヤを挿入し、その先端を目的箇所に到達させた後、このガイドワイヤの外周に沿ってカテーテルを挿入するようにしている。
【0003】
前記ガイドワイヤを操作する際には、ガイドワイヤの所定箇所を把持して行うが、ガイドワイヤは細いため、把持しづらく操作しにくい。そこで、ガイドワイヤよりも外径の大きい保持具を、ガイドワイヤの所定箇所に取付けて、この保持具を持ってガイドワイヤを操作することが行われている。
【0004】
また、上記カテーテルを使用する際には、その内腔に溜まった空気を排出すると共に、先端開口からの血液逆流による開口閉塞を防止するために、ヘパリン加生理食塩水や生理食塩水等の液体を、カテーテル内腔に注入する作業を行うのが一般的である。同様に、カテーテル内に挿入されるガイドワイヤについても、濡らして滑りをよくしたり、血液付着を抑制するために、上記のような液体を、その外周に付与することがある。このような作業を「フラッシュ」というが、カテーテル及びガイドワイヤのそれぞれについて行うのは、煩雑で作業性に問題がある。
【0005】
上記問題を解消するためのものとして、下記特許文献1には、カテーテル本体と、その基端部に固着された第1コネクタと、カテーテル本体内に挿通されるガイドワイヤと、このガイドワイヤの基端部に固着され、前記第1コネクタと接続可能な第2コネクタと、前記第1コネクタに接続されて、ガイドワイヤのカテーテル本体に対する長手方向位置を固定する固定具とを備える、カテーテル組立体が記載されている。前記固定具は、棒状をなすと共に軸方向に伸びるスリットを有しており、更にその先端部には、複数のスリットを介して3分割された挟持片からなるチャック部が設けられている。
【0006】
上記カテーテル組立体の使用の際には、ガイドワイヤから固定具を取外した状態で、カテーテル本体基体部の第1コネクタの基端部に第2コネクタを接続し、この第2コネクタの基端部にシリンジを接続して、シリンジから生理食塩水を注入する。これにより生理食塩水が、第2コネクタ及び第1コネクタを介して、カテーテル内腔に流入してフラッシュされると共に、カテーテル内に挿通されたガイドワイヤもフラッシュされるようになっている。
【0007】
そして、第1コネクタから第2コネクタを取外して、第2コネクタを手元側に引張り、カテーテル本体からガイドワイヤを引き出した後、ガイドワイヤを固定具のスリットに挿入して、固定具先端のチャック部を第1コネクタの基端部に嵌入することで、チャック部によりガイドワイヤが挟持され、固定具を介してガイドワイヤがカテーテル本体に固定されて、カテーテル本体先端からの、ガイドワイヤの突出長さが適宜設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−137351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載のカテーテル組立体では、固定具を介してガイドワイヤがカテーテル本体に固定されているので、ガイドワイヤとカテーテル本体とを相対的に移動させることはできない。また、前記固定具は、第1コネクタから取外した状態ではガイドワイヤに固定されていないので、この固定具を把持してガイドワイヤを操作することはできない。
【0010】
また、ガイドワイヤは第2コネクタに固着されているので、第2コネクタを介して操作することはできる。しかしながら、第2コネクタはガイドワイヤに固着されているので、ガイドワイヤに対する第2コネクタの位置を調整することはできず、管状器官内の治療箇所や治療目的等に応じて、ガイドワイヤと把持部分との長さを調整することができない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、カテーテルとガイドワイヤのフラッシュを同時に行うことができると共に、ガイドワイヤに対する固定位置を適宜調整することができる、ガイドワイヤ保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のガイドワイヤ保持具は、全体として筒状をなし、内部にガイドワイヤの挿通路が形成され、基部側が把持部をなし、先端側に別体又は一体のチャックが設けられた本体と、前記本体の先端側に螺着されて、前記ガイドワイヤを挿通させると共に、前記チャックを締め付けて、前記チャックに通されたガイドワイヤを挟持させるキャップと、前記本体と前記キャップとの間の前記チャックの挟持部よりも基部側に設けられ、前記キャップを前記本体に螺着させて前記チャックを締め付けたとき、前記本体と前記キャップとの隙間をシールするシール手段とを備え、前記キャップの先端部には、カテーテルに接続可能な第1接続部が設けられ、前記本体の基端部には、シリンジに接続可能な第2接続部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明のガイドワイヤ保持具においては、前記シール手段は、前記本体の前記キャップが螺着される部分の基端外周に形成されたフランジと、このフランジに隣接して前記本体の先端側に設けられた環状シール部材とを有し、前記キャップを締め付けたとき、前記フランジと前記キャップの基端面との間で、前記シール部材が挟着されてシールが施されるように構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明のガイドワイヤ保持具においては、前記チャックは、周方向に所定間隔でかつ軸方向に沿って形成された複数のスリットにより、先端部が複数の挟持片に分割されており、前記キャップを締め付けたとき、この挟持片が前記キャップ内面に押されて、内側に挿通された前記ガイドワイヤを挟持するように構成されており、前記挟持片にそれらの間隙を広げる切欠き部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本体の先端側にキャップを緩く螺着させた状態で、ガイドワイヤを本体、チャック及びキャップに挿通させ、ガイドワイヤを保持すべき適切な位置に本体を配置した後、キャップを更に強く螺着させることにより、チャックが締め付けられてガイドワイヤを挟持し、ガイドワイヤに保持具を固定することができる。したがって、この保持具を持って、ガイドワイヤの押し引き、回転等の操作を行うことができる。
【0016】
また、ガイドワイヤ及びカテーテルの使用の始めに、キャップの先端部の第1接続部にカテーテルの基端部を接続し、本体の基端部の第2接続部にシリンジの先端部を接続することにより、シリンジからヘパリン加生理食塩水や生理食塩水等の液体を注入して、ガイドワイヤ外周及びカテーテル内周をフラッシュすることができる。このとき、本体とキャップとの隙間がシール手段でシールされているので、液体が両者の螺着部などから漏れることなく、チャックを通ってキャップの先端からカテーテル内にスムーズに流入する。こうして、ガイドワイヤとカテーテルのフラッシュを同時に行うことができるので、作業性を著しく向上させることができる。また、フラッシュだけでなく、造影剤などの投与も、シリンジから保持具を通し、更にカテーテルを通して行うことができる。
【0017】
また、保持具をカテーテルの基端部に第1接続部を介して接続した状態で、カテーテルとガイドワイヤとを一体に動かすこともでき、第1接続部をカテーテルの基端部から切り離して、保持具を持ってガイドワイヤをカテーテルとは独立して動かすこともできる。更に、ガイドワイヤに対する保持具の位置調整は、キャップを緩めてチャックの挟持を解除させ、ガイドワイヤに対して保持具をスライドさせて適切な位置に移動した後、再びキャップを締め付けてチャックで挟持させることにより、調整することができる。
【0018】
更に、カテーテル内にガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤの基端部をカテーテルから挿出させ、ガイドワイヤの基端部に保持具を装着した状態で、製品を収容することができるので、製品の梱包を容易かつコンパクトにすることができ、使用者においても、その状態で、直ちにシリンジを接続してヘパリン加生理食塩液等でフラッシュを行って、使用することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のガイドワイヤ保持具の一実施形態を示しており、同ガイドワイヤ保持具と、それに適用されるカテーテルとの斜視図である。
【図2】同ガイドワイヤ保持具の分解斜視図である。
【図3】同ガイドワイヤ保持具の断面図である。
【図4】同ガイドワイヤ保持具の使用方法を示しており、(a)はその第1工程を示す説明図、(b)は第2工程を示す説明図である。
【図5】同ガイドワイヤ保持具の使用方法を示しており、その第3工程を示す説明図である。
【図6】同ガイドワイヤ保持具の、基本的な使用方法を示す説明図である。
【図7】同ガイドワイヤ保持具を構成するチャックの変形例であって、(a)は第1変形例を示す説明図、(b)は第2変形例を示す説明図である。
【図8】同ガイドワイヤ保持具において、本体とチャックとが一体的に形成された、変形例を示す説明図である。
【図9】本発明のガイドワイヤ保持具の、他の実施形態を示しており、その要部拡大断面図である。
【図10】本発明のガイドワイヤ保持具の、更に他の実施形態を示しており、その要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明のガイドワイヤ保持具の一実施形態について説明する。
【0021】
図1及び図2に示すように、この実施形態におけるガイドワイヤ保持具10(以下、「保持具10」という)は、全体として筒状をなした本体20と、この本体20の先端側に配設されたチャック40と、前記本体20の先端外周に螺着されて、前記チャック40を締め付けるキャップ60と、前記本体20の先端部と前記キャップの基端部との間に狭着されるシール部材70とから構成されている。
【0022】
図3を併せて参照すると、前記本体20は、円筒状の把持部21と、この把持部21の先端部から延設され、前記キャップ60が螺着されるキャップ螺着部23とを有している。これらの把持部21とキャップ螺着部23との内部には、ガイドワイヤ1を挿通させるための挿通路25が形成されている。
【0023】
前記把持部21の先端外周からは、前記シール部材70を支持するための、環状のフランジ27が突設されている。なお、把持部21の外周面には、ローレット加工等を施して滑り止めを形成してもよい。
【0024】
前記キャップ螺着部23の基部側の外周には、軸方向に沿って所定長さで雄ネジ部29が形成されている。図3に示すように、この雄ネジ部29の基部外周からは、環状の突部31が突設されており、また、この突部31と前記フランジ27との間の、キャップ螺着部基端の外周面33は、断面円弧状の環状溝をなしている。更に、キャップ螺着部23の先端外周からは、環状の鍔部35が突設されていると共に、同キャップ螺着部23の先端内周には、前記把持部21側に向けて次第に縮径するテーパ状をなした、チャック当接面37が形成されている。
【0025】
そして、前記把持部21の基端部には、ヘパリン加生理食塩水や生理食塩水等の液体が充填されたシリンジ7(図5参照)が接続可能とされた、テーパ孔状の第2接続部39が、前記挿通路25に連通して設けられている。この第2接続部39の内周は、キャップ螺着部23に向かって次第に縮径したテーパ状をなすと共に、その最奥部は、前記シリンジ7のノズル7a(図5参照)の先端外径よりも小さい内径で形成されており、ノズル7aが圧入されて本体20にシリンジ7が接続されるようになっている。なお、第2接続部は、テーパ孔状に限定されるものではなく、シリンジ7と接続可能な構造であればよい。
【0026】
図2及び図3に示すように、上記本体20の先端側に配設されるチャック40は、ガイドワイヤ1が挿通されると共に、本体20のキャップ螺着部23内に挿入される筒状の基部41と、ガイドワイヤ1の外周に配置されて、同ガイドワイヤ1を挟持する先端部43とを有している。前記先端部43には、周方向に所定間隔でかつ軸方向に沿って複数のスリット45が形成されており、これらのスリット45を介して撓み可能とされて、前記ガイドワイヤ1を挟持する複数の挟持片47が分割して設けられている。
【0027】
この実施形態では4個のスリット45が形成されて、これによりチャック40の先端部43が四つ割りされて、4個の挟持片47が設けられている。また、前記スリット45は2個、3個、或いは、5個以上であってもよく、先端部41に複数の挟持片47を撓み可能に形成できればよい。
【0028】
図3に示すように、各挟持片47の先端には、外径方向及び内径方向に突出する爪部49が設けられている。各爪部49の外側基端面49aは、チャック基端側に向けて次第に高さが低くなるテーパ面をなし、前記キャップ螺着部23のチャック当接面37に当接する部分となっている。一方、爪部49の外側先端面49bは、チャック先端側に向けて次第に高さが低くなるテーパ面をなし、キャップ螺着部23にキャップ60が螺着されるときに、キャップ60の内面に押圧されて、各挟持片47を撓ませる部分となっている。また、爪部49の内径方向に突出した部分によって、ガイドワイヤ1が挟持されるようになっている。
【0029】
上記実施形態では、チャック40の先端部43にスリット45を介して形成された、各挟持片47,47の間隙は一定幅でなっており、その間隙を通してシリンジ7からの液体が流通可能となっている(図5参照)。ただし、各挟持片47,47の間隙を、広げるような切欠き部を設けてもよい。図7(a),(b)には、その一例が示されている。
【0030】
図7(a)に示すチャック40aでは、同チャック40aを軸方向から見たときに、各挟持片47の周方向両側部の、ほぼ中央に円弧状の切欠き部47a,47aがそれぞれ形成されて、挟持片47,47の間隙が広げられた形状となっている。また、図7(b)に示すチャック40bでは、同チャック40bを軸方向から見たときに、各挟持片47の周方向両側部に切欠き部47b,47bがそれぞれ形成されて、各挟持片47,47の間隙が、半径方向内方から外方に向けて次第に広くなるように構成されている。
【0031】
更に本実施形態では、図2に示すように本体20とチャック40とが別体となっているが、図8に示すように、本体20とチャック40aとを一体で形成してもよい。この場合、前記キャップ螺着部23の、雄ネジ部29が形成されていない部分に、複数のスリット45が形成されて、このスリット45を介して複数の挟持片47が撓み可能に設けられており、本体20とチャック40aとが一体化した形状となっている。
【0032】
図2及び図3に示すように、前記本体20のキャップ螺着部23に螺着されて前記チャック40を締め付けて、同チャック40にガイドワイヤ1を挟持させるキャップ60は、この実施形態の場合、一端が開口した略円筒状をなし、前記キャップ螺着部23を覆うカバー筒部61と、このカバー筒部61の先端側に設けられ、カテーテル3に接続可能な筒状の第1接続部65とから構成されている。
【0033】
また、前記カバー筒部61の他端側は、第1接続部65に向かって次第に縮径した縮径部63をなしており、この縮径部63の先端から前記第1接続部65が延設されている。この第1接続部65は先細テーパ状をなし、その基端部は、カテーテル3の基端部に取付けられたハブ5(図4(b)参照)の基端開口5aの内径よりもやや大きな外径で形成され、ハブ5の基端開口5aに圧入されて、カテーテル3に第1接続部65が接続されるようになっている(図5参照)。なお、第1接続部としては、先細テーパ状の筒体に限定されるものではなく、シリンジ7と接続可能な構造であればよい。
【0034】
また、前記縮径部63の内面63aは、第1接続部65に向けて次第に縮径したテーパ状をなし、前記キャップ螺着部23にキャップ60を螺着したときに、各挟持片47の爪部49の外側先端面49bを押圧して、同挟持片47を撓ませる部分となっている。
【0035】
更に図3に示すように、前記カバー筒部61の基部側内周には、前記本体20のキャップ螺着部23の雄ネジ部29に螺着される、雌ネジ部67が形成されている。また、カバー筒部61の雌ネジ部67よりも奥方の内周からは、環状の突部69が突設されている。更にカバー筒部61の外周には、軸方向に伸びる把持用突部61a(図2参照)が、周方向に均等な間隔をあけて複数突設されており、その操作性が高められている。
【0036】
そして、この保持具10は、前記本体20と前記キャップ60との間であって、前記チャック40の挟持片47の爪部49よりも基部側に、キャップ60を前記キャップ螺着部23に螺着させて、チャック40を締め付けたときに、本体20とキャップ60との隙間をシールするシール手段を有している。
【0037】
この実施形態では、本体20の把持部21の先端外周から突設した環状のフランジ27と、キャップ螺着部23の基端外周に外装されると共に前記フランジ27に支持されて、ゴム等の弾性材料からなるOリング等からなるシール部材70とから、前記シール手段が構成されており、キャップ螺着部23にキャップ60が螺着されて、チャック40が締め付けられたときに、フランジ27とキャップ60の基端面との間でシール部材70が弾性変形して両者にそれぞれ密接し、本体20とキャップ60との隙間がシールされるようになっている。
【0038】
次に上記構成からなる保持具10の、使用方法の一例について説明する。
【0039】
図1に示すように、カテーテル3の基端部にはハブ5が取付けられ、このカテーテル3の内部にはガイドワイヤ1が挿通されているが、まず、ガイドワイヤ1の基端部を、ハブ5の基端開口5a(図4(b)参照)からカテーテル3の外側に引き出しておく。
【0040】
そして、保持具10を使用する際には、図2に示すように、本体20のキャップ螺着部23にチャック40の基部41を挿入して、本体20のチャック当接面37に、チャック40に形成された各挟持片47の爪部49の外側基端面49aを当接させて、本体20の先端側にチャック40を配置する。この状態で、キャップ螺着部23の突部31とフランジ27との間に、シール部材70を配置し、このシール部材70をフランジ27に支持させる。そして、キャップ螺着部23の外周にキャップ60のカバー筒部61を被せ、キャップ螺着部23外周の雄ネジ部29とカバー筒部61内周の雌ネジ部67とを螺着させて、本体20の先端側にキャップ60を緩く螺着させておく。
【0041】
この状態で、ガイドワイヤ1の基端部をキャップ60の第1接続部65内に挿入し、チャック40の複数の挟持片47の各爪部49の内周を通過させて、ガイドワイヤ1の外周に複数の挟持片47の各爪部49をそれぞれ配置すると共に、ガイドワイヤ1の基端部を、本体20の第2接続部39よりも手前に配置する。
【0042】
上記状態で本体20のキャップ螺着部23に対してチャック40のカバー筒部61を強く螺着させる。すると、カバー筒部61の縮径部63の内面63aに、各挟持片47の爪部49の外側先端面49bが押圧されて、各挟持片47が内側に撓み、爪部49がガイドワイヤ1の外周に圧接され、これにより複数の挟持片47でガイドワイヤ1が挟持されて、ガイドワイヤ1に保持具10を固定することができる(図3及び図4(a)参照)。それと共に、本体20のフランジ27に支持されたシール部材70が、カバー筒部61の基端面に押圧されて弾性変形して、フランジ27とカバー筒部61の基端面とに密接し、本体20とキャップ60との隙間をシールすることができる(図3及び図4(a)参照)。
【0043】
なお、この実施形態では、本体20のキャップ螺着部23の基端の外周面33が、断面円弧状の環状溝をなしているので、弾性変形したシール部材70が密接しやすくなり、本体20とキャップ60とのシール性をより高めることができる(図3及び図5参照)。また、本体20の雄ネジ部29の基部外周から突設した環状の突部31が、シール部材70に係合するので、シール部材70を位置ずれしないようにしっかりと位置決め保持することができる(図3及び図5参照)。
【0044】
上記状態で保持具10の第1接続部65を、ハブ5の基端開口5aに圧入することで、図4(b)に示すように、カテーテル3の基端部に、ハブ5を介して保持具10を接続することができる。
【0045】
そして、本体20のテーパ孔状の第2接続部39に、ヘパリン加生理食塩水や生理食塩水等の液体が充填されたシリンジ7のノズル7aを圧入することで、図5に示すように、保持具10の本体20の基端部にシリンジ7を接続することができる。
【0046】
この状態でシリンジ7のノズル7aから液体を注入すると、保持具10内の挿通路25内に流入した液体は、チャック40の基部41内を通り、各挟持片47,47の間隙を通過して、キャップ60の第1接続部65内へと流動し、更にこの第1接続部65の先端開口から、ハブ5の基端開口5aを介してハブ5内に流入して、カテーテル3内に流入する(図5の矢印参照)。
【0047】
このとき、この保持具10では、本体20とキャップ60との隙間が、本体20のフランジ27と、このフランジ27に支持されてキャップ60の基端面に弾性的に当接するシール部材70とでシールされているので、液体が本体20の雄ネジ部29及びキャップ60の雌ネジ部67との隙間から漏れることを防止して、シリンジ7から注入された液体を、本体20、チャック40及びキャップ60を通して、カテーテル3内にスムーズに流入させることができる。
【0048】
したがって、保持具10に保持されたガイドワイヤ1の基端部側の外周を液体で濡らすことができると共に、カテーテル3内に挿入されたガイドワイヤ1の残りの部分の外周を液体で濡らすことができ、更に、カテーテル3の内周の空気を液体と置き替えることができ、ガイドワイヤ1とカテーテル3とを同時にフラッシュすることができるので、その作業性を著しく向上させることができる。
【0049】
また、この実施形態では、本体20とキャップ60との隙間をシールするシール手段は、本体20の基端外周のフランジ27と、このフランジ27に支持されたシール部材70とからなり、本体20のキャップ螺着部23に対してキャップ60を締め付けたときに、図3及び図5に示すように、フランジ27とカバー筒部61の基端面との間で、シール部材70が挟着されるようになっているので、シール部材70を弾性変形させて、フランジ27とカバー筒部61の基端面とに密接させることができ、本体20とキャップ60との隙間をより確実にシールすることができる。
【0050】
更に、図3及び図5に示すように、キャップ螺着部23にキャップ60が締め付けられた状態で、キャップ螺着部23の先端外周に突設された環状の鍔部35が、キャップ60の内周の先端側に配置されると共に、キャップ60の内周から突設した環状の突部69が、キャップ螺着部23の雄ネジ部29よりも先端側に配置されているので、各挟持片47,47の間隙を流れる液体が、雄ネジ部29及び雌ネジ部67の螺着部分まで流動しにくくなり、螺着部分から液体を漏れにくくすることができる。
【0051】
上記のようにガイドワイヤ1とカテーテル3とのフラッシュを行った後、本体20の第2接続部39からシリンジ7のノズル7aを取外すと共に、キャップ60の第1接続部65をハブ5の基端開口5aから取外し、この状態で、図6に示すように、保持具10の把持部21を把持して、カテーテル3に対してガイドワイヤ1を押し引きしたり回転したりすることにより、管状器官V内にてガイドワイヤ1を移動させたり、分岐部において所望の分岐管を選択したり、といった各種の操作を自由に行うことができる。なお、カテーテル3のハブ5から保持具10を取外さずに、ハブ5に保持具10が接続された状態で、カテーテル3とガイドワイヤ1とを一体的に操作することもできる。
【0052】
そして、ガイドワイヤ1に対する保持具10の固定位置を調整したい場合には、本体20のキャップ螺着部23からキャップ60を緩めて、カバー筒部61の縮径部63の内面63aを、チャック40の挟持片47の爪部49の外側先端面49bから離すことにより、挟持片47が弾性復帰して、爪部49がガイドワイヤ1から離れて、ガイドワイヤ1に対するチャック40の挟持状態が解除される。その状態で、ガイドワイヤ1と保持具10とを相対的にスライドさせて、ガイドワイヤ1の適切な位置に保持具10を移動させ、その後、キャップ60を本体20のキャップ螺着部23に再び強く螺着させることで、上述したように、チャック40によりガイドワイヤ1が締め付け保持されて、ガイドワイヤ1に対する保持具10の固定位置を調整することができる。
【0053】
また、この保持具10の第1接続部65を、カテーテル3のハブ5の基端開口5aに圧入することで、ハブ5に保持具10を接続した状態に保持することができるので、カテーテル3内にガイドワイヤ1が挿入された状態に維持することができ、カテーテル3とガイドワイヤ1からなる製品の梱包を容易かつコンパクトにすることができると共に、使用時においても、保持具10の第2接続部39にシリンジ7を直ちに接続して、ガイドワイヤ1とカテーテル3とのフラッシュ作業をスムーズに行うことができる。
【0054】
更に、図7(a),(b)に示すように、チャック40a,40bの、挟持片47,47どうしの間隙が、切欠き部47aや切欠き部47bにより、広げられた構造となっている場合には、チャック40aや40bによって、ガイドワイヤ1を挟持した状態で、本体20の第2接続部39の接続孔39aにシリンジ7のノズル7aを接続し、キャップ60の第1接続部65をカテーテル3のハブ5の基端開口5aに接続して、フラッシュを行ったとき、シリンジ7から注入される液体が、挟持片47,47どうしの間隙を通ってカテーテル側に流れやすくなり、フラッシュ操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0055】
また、図8に示すように、本体20とチャック40aとを一体で形成されている場合には、部品点数を減らして製造コストを低減することができる。
【0056】
図9には、本発明のガイドワイヤ保持具の、他の実施形態が示されている。前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この実施形態のガイドワイヤ保持具10a(以下、「保持具10a」という)は、前記実施形態と比べて、本体20とキャップ60との隙間をシールするシール手段の、シール部材の形状が異なっている。
【0058】
すなわち、この保持具10aを構成する本体20のフランジ27には、キャップ60側の面から環状に突出し、フランジ27と一体形成された薄肉のシール部材70aが設けられている。そして、本体20のキャップ螺着部23にキャップ60が螺着されて、チャック40が締め付けられたときに、キャップ60のカバー筒部61の基端面に、薄肉環状のシール部材70aが押圧されて撓み変形して、シール部材70aの先端部がカバー筒部61の基端面に密接し、本体20とキャップ60との隙間がシールされるようになっている。このシール部材70aと前記フランジ27とが、この実施形態におけるシール手段となっている。
【0059】
図10には、本発明のガイドワイヤ保持具の、更に他の実施形態が示されている。前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この実施形態のガイドワイヤ保持具10b(以下、「保持具10b」という)は、前記実施形態と比べて、本体20とキャップ60との隙間をシールするシール手段の、フランジの位置が異なっている。
【0061】
すなわち、この保持具10bを構成する本体20のキャップ螺着部23の、雄ネジ部29よりも先端側の外周から、環状のフランジ27aが突設されており、このフランジ27aに、Oリング等からなる環状のシール部材70が支持されている。また、フランジ27aの外径は、キャップ60の内径に適合した寸法となっている。そして、本体20のキャップ螺着部23にキャップ60が螺着されて、チャック40が締め付けられると、キャップ60の内周にシール部材70が押圧されて弾性変形し、キャップ60の内周と本体20のキャップ螺着部23の外周とに密接して、本体20とキャップ60との隙間がシールされるようになっている。すなわち、このシール部材70とフランジ27aとが、この実施形態におけるシール手段をなしている。
【符号の説明】
【0062】
1 ガイドワイヤ
3 カテーテル
7 シリンジ
10,10a,10b ガイドワイヤ保持具(保持具)
20 本体
25 挿通路
27,27a フランジ
30 本体
39 第2接続部
45 スリット
47 挟持片
60 キャップ
65 第1接続部
70,70a シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として筒状をなし、内部にガイドワイヤの挿通路が形成され、基部側が把持部をなし、先端側に別体又は一体のチャックが設けられた本体と、
前記本体の先端側に螺着されて、前記ガイドワイヤを挿通させると共に、前記チャックを締め付けて、前記チャックに通されたガイドワイヤを挟持させるキャップと、
前記本体と前記キャップとの間の前記チャックの挟持部よりも基部側に設けられ、前記キャップを前記本体に螺着させて前記チャックを締め付けたとき、前記本体と前記キャップとの隙間をシールするシール手段とを備え、
前記キャップの先端部には、カテーテルに接続可能な第1接続部が設けられ、
前記本体の基端部には、シリンジに接続可能な第2接続部が設けられていることを特徴とするガイドワイヤ保持具。
【請求項2】
前記シール手段は、前記本体の前記キャップが螺着される部分の基端外周に形成されたフランジと、このフランジに隣接して前記本体の先端側に設けられた環状シール部材とを有し、前記キャップを締め付けたとき、前記フランジと前記キャップの基端面との間で、前記シール部材が挟着されてシールが施されるように構成されている請求項1記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項3】
前記チャックは、周方向に所定間隔でかつ軸方向に沿って形成された複数のスリットにより、先端部が複数の挟持片に分割されており、前記キャップを締め付けたとき、この挟持片が前記キャップ内面に押されて、内側に挿通された前記ガイドワイヤを挟持するように構成されており、前記挟持片にそれらの間隙を広げる切欠き部が設けられている請求項1又は2記載のガイドワイヤ保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−102845(P2013−102845A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247230(P2011−247230)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(599140507)株式会社パイオラックスメディカルデバイス (37)
【Fターム(参考)】