説明

ガイド波を用いた非破壊検査装置及び非破壊検査方法

【課題】
ガイド波を用いた非破壊検査において、直管部あるいは曲げ部を有する配管に生じた減肉などの欠陥箇所を、迅速に検出する装置及び手法を提供する。
【解決手段】
ガイド波探傷装置4のガイド波センサ3を配管1の外表面に装着し、配管1の検査領域にガイド波を伝播させ、欠陥箇所が存在すると、その欠陥箇所で反射したガイド波がガイド波センサ3に受信され、欠陥に由来した受信情報を含んだ受信情報がガイド波探傷装置4で取得できる。その一方で配管1と同種で同形状で、検出対象の欠陥が無い状態の配管を、配管1の検査と同じ条件でガイド波探傷装置で検査した際の受信情報を規準と成る受信情報として探傷結果記憶装置12に記憶させておく。探傷結果診断装置13は、検査対象の配管1を検査した際の受信情報と、探傷結果記憶装置12に記憶させた基準と成る受信情報とを比較して、欠陥に由来した有意な受信情報を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管などの管体において、ガイド波を用いた非破壊検査を行い、材料中に発生が想定される減肉などの欠陥を、長距離一括で評価する技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電プラントや化学プラントなどの配管では、長期間運転している間に、配管内部を流れる液体あるいは気体の影響により、内面からの腐食や侵食を受けて、配管の劣化を進行させる場合があり、ついには配管の肉厚を貫通するまでに至る場合がある。こうなると、液体や蒸気といった配管内部流体が漏洩し、プラントの正常な運転が確保できなくなるため、長時間にわたり運転停止をせざるを得ない。このため、配管の肉厚,材料の状態を、非破壊検査手法により評価し、漏洩に至る前に、配管の交換や補修などの対策を施す必要がある。
【0003】
上記非破壊検査手法の代表的なものに、JIS Z 2355に規定されている超音波厚み計による厚さ測定方法がある。超音波厚み計は、超音波探触子を用いて、対象配管の板厚方向に弾性波を励起して、配管底面で反射した弾性波を超音波探触子で受信して、配管の肉厚を測定する方法である。この超音波厚み計は、受信波に基づく超音波伝播時間を、既知である音速を用いて、肉厚を求める原理で、高い精度で配管の肉厚を測定することができるが、有効検査範囲は、探触子の配管接触面積程度である。配管口径が大きい、あるいは長さが数メートルから数十メートルに及ぶ配管のように検査対象範囲が広くなると、超音波厚み計による測定点の増加が予想され、検査に長時間を要する欠点がある。また、保温材が巻かれている配管,埋設配管,高所に伸びている垂直配管など検査員及び検査装置のアクセスが難しい配管においては、検査の準備・片付けに要する時間も長くなる。
【0004】
そこで、長距離広域を一括検査できるガイド波による検査技術が導入されつつある。図1を用いて、ガイド波の原理を簡単に説明する。超音波センサあるいは磁気歪センサを複数個、配管1の管周方向に並べる。センサを励振すると、配管の材料中を伝播するガイド波のモードを発生し、配管の材料中を伝播する。ガイド波はエネルギー減衰がしにくい特徴を持つため、長距離まで波動は伝播する。また励振時間を制御することにより、欠陥が検出しやすい波動モードを送信することができる。直管を伝播するガイド波は、伝播方向に減肉部などの板厚変化があった場合、送信波の上流側に反射波を散乱する。このため、反射波を受信することで、欠陥の検出が可能になる。
【0005】
ガイド波を用いた従来の検査方法には、特開2004−301540号公報に記載のように、ガイド波の透過法を用いて配管の減肉深さを測定し、検査結果を画像表示して評価する方法がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−301540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガイド波を用いた非破壊検査方法の利点は、長距離一括検査が可能であるため、超音波厚み計を用いた厚さ測定に比べ非常に短時間で検査が可能である。また検査の準備・片付けに要する時間が短くできるため、準備,撤去工程も含めた総作業時間の短縮が可能になる。
【0008】
しかし、欠点としては、配管の曲げを有する部位の検査への適用は難しい点である。それは、配管を曲げることにより、配管材は若干の延びが生じ、板厚変化が生じる。また、曲げ部においては、配管部の背側と腹側部で配管実効長さは異なるため、直管部を伝播するガイド波が、曲げ部を通過する際に歪みが生じ、一部のガイド波は、反射して送信波の上流側へ散乱,伝播するため、欠陥の検出を難しく、有効性は示されていない。
【0009】
そのため、配管の曲げ部での検査は、先に記した超音波厚み計を用いた厚さ測定を行わざるを得ない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ガイド波を用いた非破壊検査において、直管部であろうと曲げ部で有ろうと、配管に生じた減肉などの欠陥箇所を迅速に検出する装置及び手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を達成するための第1手段は、管体にガイド波を伝播及び前記管体からガイド波を受信して、その受信に基づく受信情報を取得するガイド波探傷装置と、前記受信情報を記憶する探傷波形記憶装置と、前記記憶手段に記憶した受信情報と、予め用意された基準の受信情報とに基づいて前記管体の欠陥に伴う受信情報を抽出する演算処理を行う探傷結果診断装置とを備えた非破壊検査装置である。
【0012】
同じく第2手段は、管体にガイド波を伝播及び前記管体からガイド波を受信して受信情報を取得するガイド波探傷装置と、前記受信情報と、検出すべき欠陥が存在しない状態の前記管体を伝播するガイド波を受信した際に予測される予測受信情報を記憶する探傷波形記憶装置と、前記記憶手段に記憶した前記予測受信情報と前記受信情報とに基づいて欠陥に伴う受信情報を抽出する演算処理を行う探傷結果診断装置とを備えた非破壊検査装置である。
【0013】
同じく第3手段は、第2手段において、前記探傷波形記憶装置は、検出すべき欠陥が存在しない状態の前記管体中に伝播するガイド波の伝播挙動を計算して前記予測受信情報を生成する演算処理部を備えていることを特徴とする非破壊検査装置である。
【0014】
同じく第4手段は、第1手段又は第2手段又は第3手段において、前記探傷結果診断装置は、前記受信情報と、前記基準の受信情報又は前記予測受信情報の受信時間に対する差を演算して欠陥に伴う受信情報を抽出する演算処理部を備えたことを特徴とする非破壊検査装置である。
【0015】
同じく第5手段は、管体の外表面に設置し前記管体に弾性波を励起しガイド波を伝播できかつ前記管体中を伝播したガイド波を受信できる一対のガイド波探傷装置と、前記ガイド波探傷装置で受信したガイド波をデジタル信号の受信波の信号として記憶する探傷結果記憶装置と、前記探傷結果記憶装置から再生した波形を時間反転させた波形を送信信号として前記一対のガイド波探傷装置から発信するように設定する手段と、前記時間反転させた波形に基づいたガイド波を前記管体に送受信して前記一対のガイド波探傷装置を介して得られた各受信波の信号に基づいて欠陥に伴う信号の有無を識別する演算処理を行う探傷結果診断装置とを備えた非破壊検査装置である。
【0016】
同じく第6手段は、管体の検査対象範囲を挟むようにガイド波を発生及び受信できる一対の手段A及びBを設置し、一方の前記手段Aから発生したガイド波を、もう一方の前記手段Bで受信し、この受信波に基づいて時間反転による波形制御を行ったガイド波を前記管体の検査対象範囲に前記手段Bより送信し、前記手段Bで受信して得られた波形を、受信信号Iとして処理し、前記手段Bから発生したガイド波を、前記手段Aで受信し、この受信波に基づいて時間反転による波形制御を行ったガイド波を前記管体の検査対象範囲に前記手段Aより送信し、前記手段Aで受信して得られた波形を、受信信号IIとして処理し、前記受信信号I及び前記受信信号IIの受信時間に対する和及び差をとることにより、欠陥からの信号を識別することを特徴とした非破壊検査方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管の直管部はもとより超音波厚み計による厚さ測定をせざると得なかった曲げ部に対しても、ガイド波による検査で欠陥の検出が広い検査領域で迅速に可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。第1の実施形態を、図1を用いて説明する。ガイド波探傷装置4は、ガイド波を管体中へ伝播及び管体中から受信する装置であり、主な構成要素は、トリガ信号発生装置5と、複数個の送受信回路61から68と、受信波形変換器11である。
【0019】
送受信回路61と超音波探触子21は電線15で結線されている。ここで、送受信回路61から68は、同じ構成及び機能を有し、同じ動作を行う。超音波探触子21から28は、同じ構成及び性能を有し、同じ動作を行う。
【0020】
そのため、以降の説明では、送受信回路61及び超音波探触子21に関わる回路に関して、説明を行う。また、送受信回路61から68と、超音波探触子21から28は、一対一に対応するように結線,配置する。
【0021】
トリガ信号発生装置5から発信されるトリガ信号は、送受信回路61へ送られる。送信信号は、このトリガ信号を受けて任意波形発生器7から発信され、増幅アンプ8で信号振幅が増強された後、超音波探触子21に送られる。
【0022】
送信信号を受けた超音波探触子21は、配管内に弾性波を発信し、ガイド波を配管内に誘起して伝播させる。配管内に減肉などの不連続部がある場合、送信波であるガイド波の上流方向(伝播原点)へ向けて反射波が発生する。この反射波は、超音波探触子21で受信される。
【0023】
その受信信号は、送受信回路61の受信アンプ9で振幅が増幅された後、デジタル信号変換器10に送られ、デジタル信号化されて、受信波形変換装置11に送られ、超音波探触子21から超音波探触子28から得られた信号の重ね合わせ演算処理をして受信波形として計測される。その受信信号や演算処理後の受信波形は受信情報として扱われる。
【0024】
探傷結果診断装置13には、受信波形変換装置11と探傷波形記憶装置12と表示装置14が接続されている。探傷波形記憶装置12には、検査対象部位の供用開始前あるいは同じ工程,材料,規格に基づいて成型された配管の当該検査対象部位を、ガイド波センサ及び超音波探触子で測定したときの受信波形を基準の受信情報として記憶しておくことにより、必要時に予め記憶された受信波形31を探傷波形記憶装置12から再生取得することが可能である。
【0025】
探傷結果診断装置13では、図3に示すように、前記手段により予め記憶された受信波形31aと実際の検査での受信波形32を比較し、双方の受信波形の差を取った波形33を求める機能を有する。これにより、欠陥からの有意な信号34が検出された場合、その信号を欠陥からの信号と識別でき、欠陥の検出が可能になる。図3に示す波形は、表示装置14に表示される。
【0026】
図4を用いて、ガイド波センサ3について説明する。配管1の直管部に設置するガイド波センサ3は、半割れ状のガイド波センサリング3c及び3d、複数の超音波探触子21から28で形成され、ガイド波センサリング3c及び3dを配管外面で組み合わせて、ガイド波センサ固定具19で配管とガイド波センサリングがずれないように固定する。
【0027】
ガイド波センサ3は、配管口径に応じてガイド波センサリング3c及び3dを準備するが、基本構成は同じである。超音波探触子21から28より、配管の材料中に弾性波を送信し、欠陥及び配管内不連続部からの信号を受信する。
【0028】
また、探傷波形記憶装置12に、配管伝播ガイド波計算機能を備えることも、本発明の実施形態の一つである。ここで、配管伝播ガイド波計算では、配管の口径,板厚寸法,配管形状情報に基づき計算格子を自動作成した後、材料特性と送信超音波情報を入力条件とした有限要素法に代表される解析手法により弾性理論に基づいた支配方程式を解くことにより得られた数値解析解を求めることができ、配管を伝わるガイド波の伝播挙動を計算する機能を有し、当該配管の欠陥がない場合の受信波形である予測波形31bを予測して予測受信情報とする。
【0029】
探傷結果診断装置13では、この予測波形31bと、ガイド波検査により実測された波形32を比較し、双方の波形の差をとった波形33を計算し、有意な信号が検出された場合、その信号を欠陥からの信号と識別でき、欠陥の検出が可能になる。また、受信予測波形31bは探傷波形記憶装置12内にデータベースとして記憶しておいてもよい。
【0030】
これにより、据付時のガイド波検査によって予め記憶された受信波形31aの取得が不要になるため、既設機器の配管検査へのガイド波検査の供用が容易になる。また、同じ工程,材料,規格に基づいた新たな配管の成型及びそれを用いた予備検査は不要になる。
【0031】
本発明に係る第2の実施形態を、図5を用いて説明する。ガイド波探傷装置4a及びガイド波探傷装置4bは、ガイド波を管体中へ伝播及び管体中から受信する装置であり、同じ構成要素を持ち、同じ機能及び動作が可能である。
【0032】
ガイド波探傷装置4aの構成要素は、トリガ信号発生装置5aと、送受信回路61aから68aと、受信波形変換器11aである。送受信回路61aと超音波探触子21aは電線15で結線されている。ここで、送受信回路61aから68aは同じ構成及び機能を有し、同じ動作を行う。超音波探触子21aから28aは同じ構成及び性能を有し、同じ動作を行う。
【0033】
そのため、以降の説明では、送受信回路61a及び超音波探触子21aに関わる回路に関して、説明を行う。また、送受信回路61aから68aと、超音波探触子21aから28aは、一対一に対応するように結線,配置する。
【0034】
また、ガイド波探傷装置4bの構成要素は、トリガ信号発生装置5bと、送受信回路61bから68bと、受信波形変換器11bである。送受信回路61bと超音波探触子21bは電線15で結線されている。ここで、送受信回路61bから68bは同じ構成及び機能を有し、同じ動作を行う。超音波探触子21bから28bは同じ構成及び性能を有し、同じ動作を行う。そのため、以降の説明では、送受信回路61b及び超音波探触子21bに関わる回路に関して、説明を行う。また、送受信回路61bから68bと、超音波探触子21bから28bは、一対一に対応するように結線,配置する。ガイド波を発生及び受信できる一対の手段A及びBはガイド波探傷装置4a及び4bに対応する。
【0035】
ガイド波センサ3a及び3bは、検査対象部位を挟むように、配管外面に設置する。ガイド波センサ3a及び3bは、図4を用いて先に説明した構成と同じである。
【0036】
トリガ信号発生装置5aから発信されるトリガ信号は、送受信回路61aへ送られる。送信信号は、このトリガ信号を受けて任意波形発生器7から発信され、増幅アンプ8で信号振幅が増強された後、超音波探触子21aに送られる。送信信号を受けた超音波探触子21aは、配管内に弾性波を発信し、ガイド波を誘起する。配管内に減肉などの不連続部がある場合、送信波の上流方向へ反射波が発生する。
【0037】
この反射波は、超音波探触子21で受信され、受信信号は送受信回路61aの受信アンプ9で増幅された後、デジタル信号変換器10に送られ、デジタル信号化されて、受信波形変換装置11aに送られ、受信波形として計測される。探傷結果診断装置13には、受信波形変換装置11と探傷波形記憶装置12と表示装置14が接続されている。
【0038】
第2の実施形態の検査手順を、図6から図10及び図16を用いて説明する。まず始めに、図16の101のステップに関する作業を行う。図6に示すように、トリガ信号発生装置5aからのトリガ信号より、前記説明の動作により超音波探触子21aから28aから同じ波形の送信波を発信するが、この際対象範囲の検査に適したガイド波モードが励起されるように位相及び加振振幅を調整する。
【0039】
これにより、歪みのないガイド波が配管内へ発信される。ガイド波センサ3aを設置する直管部から曲げ部へガイド波が伝播すると、曲げ時に発生した若干の延びに起因した板厚変化や、曲げ部の背側と腹側部での配管実効長さの違いにより、曲げ部を通過する際にガイド波には歪みが生じる。この歪んだガイド波をガイド波センサ3bの超音波探触子21bから28bで受信する。受信信号は送受信回路61bから68bの受信アンプ9で増幅された後、デジタル信号変換器10に送られ、デジタル信号化されて、受信波形変換装置11bに送られる。
【0040】
次に、図16の102のステップに関する作業を行う。図17に示したように受信波形変換装置11bで得られた受信波形37は、受信時間が遅い信号から発信するように信号を時間反転させた波形38として任意波形発生器7に送る。この際、超音波探触子21bでの時間反転させた波形は、送受信回路61bの任意波形発生器7に入力するようにし、他の送受信回路の任意波形発生器についても、これに従い設定する。
【0041】
また、図16の103のステップに関する作業を行う。図7に示すように、トリガ信号発生装置5bからのトリガ信号より、前記説明の動作により超音波探触子21bから28bより任意波形発生器7に入力された時間反転させた波を送信波として同位相で発信する。
【0042】
ここで、波動には可逆性があるため、歪んだ波動を時間反転させた波を送ることにより、曲げ部を通過する波は、歪みのない波となり、曲げ部における波動制御が可能になる。この制御送信波を用いて検査を行う。
【0043】
検査対象範囲からは、曲げに起因した信号や減肉などの欠陥がある場合、その部位から反射波が発生するが、反射波を超音波探触子21bから28bで受信する。受信信号は送受信回路61bから68bを通って、受信波形変換装置11bに送られ、波形重合などの演算処理をして受信波形35として、探傷結果記憶装置12に記録される。
【0044】
続いて、ガイド波センサ3a及び3bとで、送信機能と受信機能を入れ替えて測定を行うが、この切り替えは、探傷結果診断装置13からトリガ信号発生装置5bへの信号で電気的に行う。図16の104のステップに関する作業を行う。
【0045】
図8に示すように、トリガ信号発生装置5bからのトリガ信号より、前記説明の動作により超音波探触子21bから28bから同じ波形の送信波を発信するが、この際対象範囲の検査に適したガイド波モードが励起されるように位相及び加振振幅を調整する。ガイド波センサ3bを設置する直管部から曲げ部へガイド波が伝播すると、ガイド波は歪み、曲げ部を通過する。
【0046】
この歪んだガイド波をガイド波センサ3aの超音波探触子21aから28aで受信し、受信信号は送受信回路61aから68aの受信アンプ9で増幅された後、デジタル信号変換器10に送られ、デジタル信号化されて、受信波形変換装置11aに送られる。
【0047】
次に、図16の105のステップに関する作業を行う。受信波形変換装置11aで得られた受信波形は、受信時間が遅い信号から発信するように信号を時間反転させた波形として任意波形発生器7に送られる。この際、超音波探触子21aでの時間反転させた波は、送受信回路61aの任意波形発生器7に入力するようにし、他の送受信回路の任意波形発生器についても、これに従い設定する。
【0048】
そして、図16の106のステップに関する作業を行う。図9に示すように、トリガ信号発生装置5aからのトリガ信号より、前記説明の動作により超音波探触子21aから28aから任意波形発生器7に入力された時間反転させた波を送信波として同位相で発信する。図7での説明と同じように、この過程を踏むことにより、曲げ部を通過する波は、歪みのない波動制御が可能になる。
【0049】
この制御波を用いて検査を行う。検査対象範囲からは、曲げに起因した信号や減肉などの欠陥がある場合に発生する反射波は、反射波を超音波探触子21aから28aで受信する。受信信号は送受信回路61aから68aを通って、受信波形変換装置11aに送られ、波形重合などの演算処理をして受信波形36として、探傷結果記憶装置12に記録される。
【0050】
最後に、図16の107のステップに関する作業を行うが、図10を用いて欠陥の識別方法について説明する。ガイド波センサ3bでの受信波形35とガイド波センサ3aでの受信波形36は、探傷結果記憶装置12から探傷結果診断装置13に出力される。そして、探傷結果診断装置13で、下記の演算を行う。結果は表示装置14に出力される。
【0051】
本発明の実施例では、ガイド波センサ設置位置を曲げ部中央部から同距離に設置した場合を用いて説明する。なお、図10中の記号において、曲げ形状に起因した信号の往復伝播時間をt11及びt21、欠陥に起因した信号の往復伝播時間をt12及びt22、曲げ加工によって生じた信号のガイド波センサ3Aとガイド波センサ3Bの間をガイド波の往復伝播時間をTとする。
【0052】
曲げ形状に起因した信号であれば、曲げ部は中央部から対称に加工されるため、双方のセンサから同距離つまり同じ伝播時間の位置に信号が現れる。そのため、数式1の関係が成り立ち、非欠陥信号として、抽出できる。
【0053】
(数式1) t11=t21、 t11+t21≠T
従って、この数式1に基づいて、受信波形35と受信波形36の差を取った波形37を求められる。次に、欠陥に起因した信号ならば、欠陥部から双方のセンサまでの距離の和は、センサ間の距離に等しい。そのため、波形37において、予め設定しておいた振幅閾値を超えた信号成分について、全ての組合せの受信時間の和をとり、数式2の関係を満たす信号は、欠陥として識別できる。
【0054】
(数式2) t12+t22=T
しかし、曲げ部中央部から発生した信号については、曲げ形状に起因した信号であっても、数式2を満たす。この場合は、送信周波数を変えたガイド波あるいは位相及び加振振幅を調整したガイド波で検査を行い、図6から図10を用いて説明した手順で、信号の再評価を行う。ここで、数式2を満たす有意な信号が得られた場合には、超音波厚み計による厚さ測定などの補助手段を用いて、健全性を評価することが望ましい。
【0055】
本発明の実施例では、双方のガイド波センサ設置位置を曲げ部中央部から同距離に設置した場合を用いて説明したが、双方のガイド波センサ設置位置を曲げ部中央部から異なる距離においた場合でも、その距離に応じて時間起点を移動すれば、本発明で実施する欠陥の識別は可能であるため、本発明の範疇である。例えば、図18のように、曲げ部中心部からガイド波センサ3aの中心までの距離を40a、曲げ部中心部からガイド波センサLbの中心までの距離をLb、配管を伝播するガイド波の音速をVとしたとき、時間起点の移動時間Tは数式3で表される。図18の位置にガイド波センサが設置された場合は、ガイド波センサ3bの受信波形の受信時間に関して、Tだけ差し引けば、図10を説明した処理が可能になる。
【0056】
T=(Lb−La)/V
時間反転させた場合の手順を示したが、送信周波数,曲げの形状によっては、波形が歪まず、時間反転による波形制御を用いなくてもよい場合がある。この場合は、時間反転波による波形制御を用いる必要がないため、時間反転波生成にかかる処理を省略することも可能である。
【0057】
また、本発明の実施例では、90度曲がった曲げ管を対象に説明図を作成したが、直管や図11から図13に示すような曲げ部、図14に示すようなT字分岐管、図15に示すような支持構造物41が設置された配管でも、検査対象範囲が対称性を持つ配管形状における配管検査も、本発明の範疇である。
【0058】
本発明の実施形態のように、ガイド波を用いた検査において、2つの受信信号を比較し、予め設定した振幅閾値を越える有意な差から欠陥を識別する方法によれば、超音波厚み計による厚さ測定をせざると得なかった曲げ部に対しても、ガイド波による検査で欠陥の検出が可能になる。これにより、従来の超音波厚み計による厚さ測定よりも、短時間で検査ができるようになる。特に、口径が大きい場合は、口径にあったガイド波センサを選択すれば、全く同じシステムで検査が可能であるが、超音波厚み計による厚さ測定点は膨大になるため、検査時間短縮効果は絶大である。
【0059】
以上の各実施例の解説で示したように、その解説の中には、以下の技術的事項が含まれている。即ち、第1の技術的事項は、管体の外表面に設置し管体に弾性波を励起しガイド波を伝播させる発生手段と、管体の外表面に設置し管体中を伝播したガイド波の受信手段と、受信手段で受信したガイド波をデジタル信号に変換して受信波とする収録手段と、収録手段で得た受信波を記憶する記憶手段と、記憶手段に既に記憶した受信波を再生した信号と受信手段で収録した受信波の信号に対して演算処理ができる診断手段を備えた非破壊検査装置である。
【0060】
第2の技術的事項は、管体の外表面に設置し管体に弾性波を励起しガイド波を伝播させる発生手段と、管体の外表面に設置し管体中を伝播したガイド波の受信手段と、受信手段で受信したガイド波をデジタル信号に変換して受信波とする収録手段と、管体の特徴と伝播手段の発信信号情報に基づき管体中を伝播するガイド波の挙動を計算する演算手段と、演算手段で得た計算波形を記憶する記憶手段と、記憶手段に既に記憶した計算波形を再生した信号と受信手段で収録した受信波の信号に対して演算処理ができる診断手段を備えた非破壊検査装置である。
【0061】
第3の技術的事項は、前記第1の技術的事項あるいは前記第2の技術的事項において、再生信号と受信信号との受信時間に対する差に基づき、管体部に発生した欠陥を検出できることを特徴とした非破壊検査装置である。
【0062】
第4の技術的事項は、管体の外表面に設置し管体に弾性波を励起しガイド波を伝播できかつ管体中を伝播したガイド波を受信できる一対の手段と、受信手段で受信したガイド波をデジタル信号に変換して受信波とする収録手段と、収録手段で得た受信波を記憶する記憶手段と、記憶手段から再生した波形を時間反転させた波形を送信信号として一対の手段から発信する手段と、記憶手段に既に記憶した受信波を再生した信号と受信手段で収録した受信波の信号に対して演算処理ができる診断手段を備えた非破壊検査装置である。
【0063】
第5の技術的事項は、管体の検査対象範囲を挟むようにガイド波を発生及び受信できる一対の手段A及びBを設置し、一方の手段Aから発生したガイド波を、もう一方の手段Bで受信し、この受信波に基づいて時間反転による波形制御を行ったガイド波を管体の検査対象範囲に手段Bより送信し、手段Bで受信して得られた波形を、受信信号Iとして処理し、手段Bから発生したガイド波を、手段Aで受信し、この受信波に基づいて時間反転による波形制御を行ったガイド波を管体の検査対象範囲に手段Aより送信し、手段Aで受信して得られた波形を、受信信号IIとして処理し、受信信号I及び受信信号IIの受信時間に対する和及び差をとることにより、欠陥からの信号を識別することを特徴とした非破壊検査方法である。
【0064】
上記のいずれの技術的事項であっても、超音波厚み計による厚さ測定をせざると得なかった曲げ部に対しても、ガイド波による検査で欠陥の検出が可能になる。これにより、従来の超音波厚み計による厚さ測定よりも、短時間で検査ができるようになる。特に、口径が大きい場合は、口径にあったガイド波センサを選択すれば、全く同じシステムで検査が可能であるが、超音波厚み計による厚さ測定点は膨大になるため、検査時間短縮効果は絶大である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ガイド波を用いて配管の減肉などの欠陥箇所の有無を検査する非破壊検査に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態による非破壊検査装置の全体図である。
【図2】一般的なガイド波検査の方法を示した説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による非破壊検査装置による欠陥識別方法の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るガイド波センサの説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による非破壊検査装置の全体図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による非破壊検査装置を用いた第1の検査工程に関する説明図である。
【図7】同じく第2の検査工程に関する説明図である。
【図8】同じく第3の検査工程に関する説明図である。
【図9】同じく第4の検査工程に関する説明図である。
【図10】同じく第5の検査工程に関する説明図である。
【図11】本発明に係る第2の実施形態が可能な配管形状の例1の説明図である。
【図12】本発明に係る第2の実施形態が可能な配管形状の例2の説明図である。
【図13】本発明に係る第2の実施形態が可能な配管形状の例3の説明図である。
【図14】本発明に係る第2の実施形態が可能な配管形状の例4の説明図である。
【図15】本発明に係る第2の実施形態が可能な配管形状の例5の説明図である。
【図16】本発明に係る第2の実施形態の作業フローに関する説明図である。
【図17】本発明に係る第2の実施形態の時間反転波に関する説明図である。
【図18】本発明に係る第2の実施形態のセンサガイド波設置位置の違いによる時間起点調整に関する説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 配管
2,21〜28,21a〜28a,21b〜28b 超音波探触子
3,3a,3b ガイド波センサ
3c,3d ガイド波センサリング
4 ガイド波探傷装置
5,5a,5b 送信トリガ発生装置
6,61〜68,61a〜68a,61b〜68b 送受信回路
7 任意波形発生器
8 増幅アンプ
9 受信アンプ
10 デジタル信号変換器
11,11a,11b 受信波形変換器
12 探傷結果記憶装置
13 探傷結果診断装置
14 表示装置
15 電線
16 ガイド波
17 減肉部
18 反射波
19 ガイド波センサ固定具
31a 予め記憶された受信信号
31b 配管伝播ガイド波計算機能による受信予測信号
32 実際の検査での受信信号
33 受信信号31と受信信号32の差をとった波形
34 欠陥からの有意な信号
35 ガイド波センサ3Bでの受信波形
36 ガイド波センサ3Aでの受信波形
37 受信波形35と受信波形36の差をとった波形
38 受信波形の一例
39 受信波形38の時間反転波
La,Lb 曲げ部中心部からガイド波センサ中心までの距離
41 支持構造物
100 検査対象範囲の配管軸
101〜107 本発明に係る第2の実施形態の作業内容

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体にガイド波を伝播及び前記管体からガイド波を受信して、その受信に基づく受信情報を取得するガイド波探傷装置と、
前記受信情報を記憶する探傷波形記憶装置と、
前記記憶手段に記憶した受信情報と、予め用意された基準の受信情報とに基づいて前記管体の欠陥に伴う受信情報を抽出する演算処理を行う探傷結果診断装置とを備えた非破壊検査装置。
【請求項2】
管体にガイド波を伝播及び前記管体からガイド波を受信して受信情報を取得するガイド波探傷装置と、
前記受信情報と、検出すべき欠陥が存在しない状態の前記管体を伝播するガイド波を受信した際に予測される予測受信情報を記憶する探傷波形記憶装置と、
前記記憶手段に記憶した前記予測受信情報と前記受信情報とに基づいて欠陥に伴う受信情報を抽出する演算処理を行う探傷結果診断装置とを備えた非破壊検査装置。
【請求項3】
請求項2において、前記探傷波形記憶装置は、検出すべき欠陥が存在しない状態の前記管体中に伝播するガイド波の伝播挙動を計算して前記予測受信情報を生成する演算処理部を備えていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2又は請求項3において、前記探傷結果診断装置は、前記受信情報と、前記基準の受信情報又は前記予測受信情報の受信時間に対する差を演算して欠陥に伴う受信情報を抽出する演算処理部を備えたことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項5】
管体の外表面に設置し前記管体に弾性波を励起しガイド波を伝播できかつ前記管体中を伝播したガイド波を受信できる一対のガイド波探傷装置と、
前記ガイド波探傷装置で受信したガイド波をデジタル信号の受信波の信号として記憶する探傷結果記憶装置と、
前記探傷結果記憶装置から再生した波形を時間反転させた波形を送信信号として前記一対のガイド波探傷装置から発信するように設定する手段と、
前記時間反転させた波形に基づいたガイド波を前記管体に送受信して前記一対のガイド波探傷装置を介して得られた各受信波の信号に基づいて欠陥に伴う信号の有無を識別する演算処理を行う探傷結果診断装置とを備えた非破壊検査装置。
【請求項6】
管体の検査対象範囲を挟むようにガイド波を発生及び受信できる一対の手段A及びBを設置し、
一方の前記手段Aから発生したガイド波を、もう一方の前記手段Bで受信し、この受信波に基づいて時間反転による波形制御を行ったガイド波を前記管体の検査対象範囲に前記手段Bより送信し、前記手段Bで受信して得られた波形を、受信信号Iとして処理し、
前記手段Bから発生したガイド波を、前記手段Aで受信し、この受信波に基づいて時間反転による波形制御を行ったガイド波を前記管体の検査対象範囲に前記手段Aより送信し、前記手段Aで受信して得られた波形を、受信信号IIとして処理し、
前記受信信号I及び前記受信信号IIの受信時間に対する和及び差をとることにより、欠陥からの信号を識別することを特徴とした非破壊検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−36516(P2009−36516A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198283(P2007−198283)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】