説明

ガスクロマトグラフ

本発明はガスサンプル分析用ガスクロマトグラフに関する。それは、サンプルを供給するための供給装置と、サンプルの諸成分を分離するための開管キャピラリカラムと、カラムの温度を制御するための温度制御手段と、サンプルの分離された諸成分を検出するための検出器とを有している。ポリマー膜からなるガス透過性壁を有する開管キャピラリの束のカラムを構築することにより、その効率が改良され、便利な手持ち式タイプが可能となった。本発明は、ガスサンプルを同定するための検出器と一緒にした、このようなカラムの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、サンプルを供給するための供給装置と、サンプルの諸成分を分離するための開管キャピラリカラムと、カラムの温度を制御するための温度制御手段と、サンプルの分離された諸成分を検出するための検出器とを有し、該カラムが開管キャピラリの束を備えた、サンプル分析用ガスクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
気相サンプルの化学状態は、周囲媒体、典型的には環境空気と混合された気化または気体化学種により形成されている。空気の代わりに、媒体はプロセスガスまたは真空であることもある。検出器は規定の周囲媒体中で特定の化学種を検出および同定するために用いられる。
【0003】
化学検出器の特徴は、化学状態を電気シグナルに変換して、該シグナルを更なるプロセシングのために送出する能力である。典型的には、それは規定の周囲媒体中で特定化学種の定性および定量決定を双方とも行うことに向けられている。その場合に、技術的な問題は、検出器アウトプットが完全には特異的でなく、目的とするもの以外の化学種にも感受性を有していることである。この挙動はしばしば交差感受性と称され、典型的には偽陽性の同定につながる。
【0004】
化学検出器の交差感受性問題を減らす2つの基本的な手法は、(i)より特異的なセンサの開発(該センサは、インプット変数を測定に適したシグナルに変換する、測定チェーンの第一部分と考えられている)または(ii)検出前に化学的分離を行うことである。後者の場合で典型的な解決法は、クロマトグラフィー技術または濾過または制御された吸着‐脱着技術を用いるか、あるいは例えば溶解、相分離、抽出、化学的誘導およびイオン交換を含めたサンプル調製操作を適用することである。気相化学状態を検出する場合、更に好ましくは携帯検出器で環境空気中の微量成分を検出する場合に、サンプル調製ステップは自動化しにくく、可動化しにくく、しかも時間がかかるために、それらはさほど好まれず、したがって敏速なリアルタイムモニタリングに適さないのである。
【0005】
残された可能性の中で、クロマトグラフィーは化学的分離を行う分析化学で周知の方法である。ガスクロマトグラフィー(GC)は、安定な揮発性化合物および気相サンプルの分離に最適な方法である。該方法は、移動気相と固体担体に保持された固定固相または液相との間で混合物の諸成分を分配することにより、化学的分離を行っている。固定クロマトグラフィーシステムにおいて、保持時間(サンプルが入口からカラムを経て検出器まで移動するのに要する時間)は個々の被検体毎に一定であり、したがってそれを同定するために用いることができる。そのため、クロマトグラフィーは主として分離技術であるが、複雑なサンプルの分離化合物をそれらの保持時間により同定することが可能である。該プロセスは、典型的にはサンプル供給装置、キャリアガスおよびそのフローコントローラーユニット、(典型的にはサーモスタットを備えた)チャンバー内で1以上のカラム、および1以上の上記化学検出器からなるGC機器で行われる。
【0006】
分離能、ひいては分析の分解能に関するGCで重要な技術的要素はカラムである。2種の基本的カラムに区分される:(i)充填カラムおよび(ii)開管またはいわゆるキャピラリカラム。充填カラムは、典型的には内径が1〜10mmの、例えばステンレス鋼、ニッケルまたはガラスの管から構成されている。カラムは、不活性担体粉末、通常は1〜10μmの平均内孔径および100〜200μmの粒径を有する珪藻土で充填されている。第二のカラムタイプ、開管キャピラリカラムは、10〜1000μmの狭い内径を有している。それは典型的には溶融シリカ(非常に高純度のガラス)製であるが、外壁はポリイミドのような硬質で丈夫なポリマーにより保護されている。更に、それらは特徴としてカラムの中間に無拘束流路を有する管形をとる。溶融シリカ内表面は、分離プロセスで異なる極性、ひいては選択性をいわゆる固定相に付与する、様々なタイプのコーティングまたは膜で化学的に修飾されている。固定相は、場合により異なる手法で機能化された、ポリシロキサン、シリコーンまたはポリアミドのようなポリマーから典型的に作製されている液体層または薄膜である。固定相膜の化学性、微細構造、形態および厚さのようなファクターが、カラムの総合分離能に影響を与えている。
【0007】
カラムタイプの中で、開管キャピラリカラムは、総分析時間でその良い分離能、良い長期安定性および再現性ある製造プロセスによる高い品質のために、分析化学上好ましい。
【0008】
様々な携帯化学検出器と組み合わせた開管GCキャピラリチューブの使用は、下記引例から結論付けられるように、当業界で周知である:米国特許第5,114,439号および米国特許第5,856,616号は携帯向けにコンパクトサイズの低電力消費GCカラムの使用について開示している。WO9941601も組合せ特別サンプリングシステムの低電力消費GCカラムの使用について開示している。更に、米国特許第4,888,295号は電気化学センサ(CPS)の列により形成される検出器と組み合わせた“市販”GCカラムの使用について開示し、米国特許第6,354,160号はSAWセンサベース検出器と並列なGCカラムの使用について開示しており、そこでの開管GCカラムはシリコンウェハー上に形成されたものでもよい。
【0009】
携帯機器、好ましくは手持ち式サイズの機器でGC法を適用するには、低電力消費、軽量コンパクトサイズで、速く検出できながら、高分離能で高分解をなお維持しうる機器を要する。これまでのところ、携帯機器の改良は、主として、高カラム温度の使用と、温度制御および加熱システム構築の改良に関するものであった。更に、従来の改良はキャリアガスフローの変更と特別なサンプリングおよび検出システムの設計に関するものであった。
【0010】
携帯向けのGC法適合性を改良する他の手法として、分析の効率および速度を高めるために、より短いカラムおよび小さな内径のカラムがあった。しかしながら、これらの改良は分離低下につながり、または一方で、それらはサンプル容量を減らし、カラムの大きな圧力低下のせいでポンプの電力需要、ひいてはコストおよび寸法を有意に増している。低サンプル容量を用いる欠点は、それが典型的には検出器による応答の弱化と、サンプル中の局所的変動に対する感受性の増加を招き、ひいては保持時間の精度低下につながることである。少量の流体に抑えることも、技術的に要求されて費用のかかる解決法である。
【0011】
これらの欠点は、開管キャピラリの束を含んでなるカラムを用いることにより克服された。例えばBaumbach et al.(1997)およびBaumbach et al.(2000)参照。
【0012】
このようなカラムは数社、即ちAlltech Associates Inc.(Deerfield,IL,USA)、ChemSpace s.r.o(Pardubice,Czech Republic)、Sibertech(Novosibirsk,Russia)で製造および/または販売されているだけである。マルチキャピラリカラムの利点は、それらが十分に高い分解および分離能力で短い保持時間、ひいては速い検出時間をもたらすことである。更に、それらは広範囲のキャリアガス流速で高い効率を保ち、ひいては従来の単キャピラリカラムと比較して、それらは注入および検出しやすい大きなサンプリング容量で操作することができる。
【0013】
こうして、請求項で記載されたマルチキャピラリカラムの特性は、ハンドポータブルガスクロマトグラフとして理想的なものにしているのである。
【0014】
しかしながら、マルチキャピラリカラムは典型的には数百の単キャピラリカラムで形成されているため、十分に大きな束について低電力消費で均一な熱分布を得ることは難しく、GC分析の精度を低下させてしまう。
【0015】
マルチキャピラリGCカラムが単開管GCカラムよりかなり高いサンプリング流速(またはキャリアガス流速)をカラムで達成したとしても、適合ガス流速は従来のマルチキャピラリカラムでなお300ml/min以下のままである。一部の検出器タイプでは、この流速がなお低すぎる。このような検出器は、例えば、WO9416320およびUtriainen et al.(2003)で記載されているような、直接フロースルー原理により環境空気中の気体化学種を検出するように設計されたハイフネーテッド(hyphenated)マルチセンサイオン移動度分光分析器である。
【0016】
該検出器は、半導体ガスセンサ、温度および湿度センサのような他のセンサと組み合わされた、吸引コンデンサータイプまたはオープンループタイプIMSと称される、特殊タイプのイオン移動度分光分析器(IMS)を用いている。該検出器は、ChemPro100,M90-D1-C(Environics Oy,Mikkeli,Finland)およびMultiIMS(Drager Safety,Lubeck,Germany)のような商標名で、手持ち式携帯化学検出器として製造されている。この検出器の別な特徴は、それが典型的には800〜3500ml/min、好ましくは1000〜2000ml/minの連続フロースルーを用いており、そのため特に空気中の毒性物質の存在について信頼しうる早期警告を発することを目的とした場合に、すべて本質的特徴である良い統計的サンプリング精度と速い応答および回復時間を示すことである。この検出器の特徴点は、速い流速ほど有利となるように、感度が流速に依存することでもある。該検出器の特徴点は、急速なフロー(および圧力)変化と急速で大きな湿度および温度変化に対する感受性である。
【発明の要旨】
【0017】
そのため、更なる改良の必要性が存在しているのである。この必要性は、本発明では、本発明に従い用いられるマルチキャピラリカラムにおいて、ポリマー膜からなるガス透過壁を開管キャピラリが有することにより満たされる。ポリマー膜壁は流れるサンプルガスの一部を選択的に遅らせて一部成分を通過させ、こうしてカラムの分離を更に改良しているのである。カラムは短くすることができ、ガスを送るために低い圧力で済む。
【0018】
好ましい態様によると、本発明は、検出器の化学的特異性を改良するために、携帯化学検出器で化学的分離を行うマルチキャピラリGCカラムとして、このような中空繊維膜キャピラリの束を用いている。携帯化学検出器は、最も好ましくは手持ち式分析器の一部である。中空繊維膜束は、工業的ガス分離プロセス、工業的ガス乾燥機、現場ガス発生器と、液相中の諸成分を分離する透析フィルタにおいて、以前は広く用いられていた。中空繊維膜の広範囲な用途は高い製造量をもたらしているため、請求項記載の化学検出のようなニッチ用途でも、低コスト部品へのアクセスを可能にしているのである。
【0019】
膜キャピラリの純粋ポリマーベース構造は、溶融シリカの従来GCキャピラリカラムと比較して低い加工および物質コストで済み、こうして更に費用効率的な解決法ももたらしている。
【0020】
中空繊維キャピラリ膜壁は特徴として少なくとも低分子量ガスに対して透過性であるが、従来の溶融シリカベースGCカラムはそうでない。しかも、本中空繊維製造に用いられる物質は特徴上ポリマーであり、それは更に特徴として低温合成繊維紡糸プロセスにも適している。このような物質の例はポリオレフィン類、ポリアミドおよびポリエステルと、繊維紡糸でさほど一般的でない物質、例えばポリスルホンおよび酢酸セルロースである。いわゆる二成分繊維も、ポリマー物質2種の設計構造の形成を意味する、中空繊維キャピラリ膜に適している。典型例は、内および外壁が一プロセスまたは数プロセスステップで異なるポリマーから構成されている、積層キャピラリである。内壁は一態様によると膜ポリマーであり、外壁は該膜ポリマーを支える孔質ポリマーである。こうして、壁は全体として選択的に透過性である。
【0021】
中空繊維の束は典型的には弾性的であり、パッケージングプロセスで容易に取り扱われる。膜としてその一般的な使用のため、繊維の外側は分離プロセスに関与し、そのため典型的には間隙物質なしで置かれ、両側で流体を流せる。このアセンブリーは、束の恒温調整に流体を用いうる可能性があるため、均一な熱分布を得る上で有利である。簡単な低電力消費恒温調整の可能性は、検出器に及ぼす熱の影響を減らして、化学的同定の精度を改良しうる。
【0022】
本発明の別な利点は、最初は工業乾燥機に設計された中空繊維膜束を用いる場合に、サンプルから水および他の分析上興味のない小分子物質の同時で選択的な除去が行えることである。水分は一般的に化学的検出では干渉物質と考えられ、高容量フロースルー検出器およびイオン移動度分光分析器の場合で特に懸念されることもある。同様に、中空繊維キャピラリ膜のガス透過選択性束の他のタイプも、クロマトグラフィー分離で濾過ベース化学分離を同時に行う際に有用である。即ち、上記のように、濾過は、一般的に、化学検出器の化学分離能を改良する上で、代替アプローチとして考えられるのである。
【0023】
本発明に従い用いられる集束カラムを形成するキャピラリの寸法および数は様々である。典型的には、束に10〜10000本の開管膜キャピラリが存在している。各キャピラリは、典型的には10〜100cmの長さおよび10〜1000μmの内径を有している。好ましくは、束は100〜4000本の上記開管キャピラリを含んでいる。管キャピラリの内径は好ましくは50〜1000μmである。
【0024】
通常、束は本質的にまっすぐで平行なフォーメーションをとる上記の開管キャピラリからなり、それらの間に空間を有している。水のような不所望の小分子は、キャピラリから空間へ、およびそこからシステムのベントへ移動する。本発明で用いられるカラムおよび/または束を組み立てる際には、キャピラリ内からガスのみが検出器へ達するように、ホルダーまたはカップが典型的には上記キャピラリを一まとめにしている。カバーが上記の束を取り囲んでもよい。
【0025】
本発明によるガスクロマトグラフで、用いられる温度制御手段は、好ましくは上記キャピラリ間の上記空間を通過するように配置された熱媒体を含んでいる。その構造は熱交換器と似ており、小型携帯ガスクロマトグラフと通常関連した伝熱問題を非常にうまく解決している。このような熱問題については、例えば米国特許第5,114,439号参照。
【0026】
上記の温度制御手段は好ましくは上記カバーも含んでおり、これは断熱物質から作製されて、キャピラリ間の空間に熱媒体を通過させるための入口および出口開口部を有している。キャピラリを通り抜ける熱媒体を用いる場合には、温度制御手段は上記熱媒体の温度を制御するためのサーモスタットヒータと、好ましくはポンプおよびホースまたはチューブを更に含んでいる。ポンプは、サーモスタットヒータと束の間で、更にはキャピラリ間の空間を経て、好ましくは元の該ヒータへと熱媒体を運ぶ。
【0027】
請求項で記載されたガスクロマトグラフの供給装置は、典型的には、クロマトグラフィーシステム向けクリーンエアレファレンスを発生させるための吸収フィルタを含んでなる。更に、上記の供給装置はガスサンプルを上記カラムへ入れるためのガス入口を含んでなる。直接的にまたは該フィルタ経由でサンプルをカラムへ向かわせるためのバルブと、カラム経由でまたは直接的に検出器へサンプルを向かわせるためのバルブも存在してよい。
【0028】
請求項で記載されたガスクロマトグラフにおいて、上記の検出器は典型的にはイオン移動度分光分析器IMSを含んでなる。好ましくは、IMSはサンプルの直接フロースルー用に設計されたハイフネーテッドマルチセンサIMSである。
【0029】
本発明は上記ガスクロマトグラフによりサンプルを分析するための方法にも関する。典型的には、サンプルは100〜100000ml/minの速度でカラムへ供給される。好ましくは、速度は100〜3500ml/min、最も好ましくは1000〜2000ml/minである。サンプルを検出器へ連続的に供給した方が有利である。上記のように、システムは小さなスペースに詰められ、したがって手持ち式分析器として適している。そのため、請求項で記載された方法は、ガスクロマトグラフが分析地点へおよび/またはから手で運ばれる、という特徴を有している。
【0030】
本発明の考え方は、開管キャピラリ束を検出器と組み合わせることである。束は分析されるサンプルの諸成分を効果的に分離して、検出器がそれらを検出する。このように、本発明は、ガスサンプルを分離および分析するための検出器と一緒にした、ガス透過性ポリマー膜の壁を有する開管キャピラリを含んだ束の使用にも関する。
【0031】
上記の束は透析フィルタを形成してもよく、こうすることでキャピラリ内壁が好ましいことに高い比表面積を有するようになる。束は、その元来の使用分野である、工業乾燥機を形成してもよい。その場合、キャピラリの内壁は滑らかで、低い透過性を有している。最も好ましくは、束はカラムを形成して、検出器がガスクロマトグラフの検出器を形成している。このようなガスクロマトグラフの特性は上記の通りである。その効率性のために、ガスクロマトグラフは好ましくは手持ち式ガス分析器である。
【0032】
場合により、本発明による化学検出器と組み合わされた中空繊維キャピラリ膜ベースGCユニットは、交差感受性問題を有意に解消する上で十分な化学分離能を発揮しうる。該機器は、顕著な圧力または流速の変化なしに、高い流速で操作でき、急速な湿度および温度変化を安定化させうる。更に、それはモバイル適用で用いられるほど十分に小さい、軽量で低電力消費の機器であって、商業的成功をもたらす低コスト機器である。
【発明の具体的説明】
【0033】
図1は、化学検出器(1)と組み合わされるGCカラムとして中空繊維キャピラリ膜束(2)を用いた、1つの好ましい態様について記載している。サンプリング装置は、バルブ(4)、蒸気吸着フィルタ(3)、ガス入口(5)および任意の追加バルブ(6)を含んでいる。サンプルが中空繊維束ベースマルチキャピラリGCカラム(2)へフィルタ経由で(バルブが位置4bに切り換えられている)または直接に(バルブが位置4cに切り換えられている)流れるかどうかを、バルブ(4)の位置が決めている。位置4bから4cへバルブを切り換えた時点が、保持時間としてt=0を定める。
【0034】
他の好ましい態様は、図1でも示されているが、中空繊維束ベースGCカラムが使用中(位置6bまたは6c)または不使用(位置6a)であるかを制御するために用いられる追加バルブ(6)を含んでなる。中空繊維束が用いられていないとき(位置6a)には、より速い応答時間が可能であるが、該束を用いているとき(位置6bまたは6c)には、交差感受性の少ないより特異的な同定が可能である。
【0035】
図2は、GCカラムとして中空繊維キャピラリ膜束(2)を用いた温度調節装置の1つの好ましい態様について記載している。該束は、カバー(14)が断熱物質から作製された気密パッケージに詰め込まれている。制御下で加熱および恒温調整(13)された流体(液体またはガス)がポンプ(12)によりパッケージ内で循環され、こうしてキャピラリ(16)間の間隙媒体(7)を形成している。1つの好ましい態様において、間隙媒体流体(7)はグリセロールまたは工業冷却液である。他の好ましい態様では、間隙媒体流体(7)が空気である。
【0036】
他の好ましい態様では図2で示されたものと類似した構造を用いているが、この場合に、システムはヒータ(13)を有してもまたはそうでなくてもよい。この好ましい態様において、間隙媒体流体(7)は空気であり、その主要な役割はシステムをパージすることである。空気は入口(10a)のみから送り込まれ、パッケージは出口で開いている(即ち、熱媒体チューブ15は外されている)。
【0037】
すべての場合において、間隙媒体流体(7)はチューブ端(6、17)でストッパー構造によりサンプルガスから隔離されている。好ましい態様において、チューブ端の充填物質(9)はキャピラリ間の空間のみを満たし、しかもキャピラリを一緒に結び付けている。1つの好ましい態様において、充填物質(9)はエポキシポリマーである。
【0038】
1つの好ましい態様において、束(2)は、Drypoint(Beko)、MF-Fryer(CKD,Wilkinson)、SF-Serie(Whatman,Balston)、Sunsep(Zander,SMC)、VarioDry(Ultrafilter)およびPorous Media(Norgren)という商標名で販売されている工業乾燥機からの高選択型中空繊維キャピラリ膜束である。この場合に、キャピラリ壁の構造は図2cで示されており、孔質担体(18)として実際上中空の繊維と、内表面を覆う活性高密度層(膜)(19)から特徴上なる。
【0039】
1つの好ましい態様において、検出器(1)はChemPro100(Environics)、M90-D1-C(Environics)、Multi-IMS(Drager)という商標名で販売されているハイフネーテッドマルチセンサIMS、または他のIMSベース検出器である。
【実施例】
【0040】
下記例は本発明の基本的特徴を説明しているもので、それらに限定されない。
【0041】
装置は、図1および図2で示されているものと同様である。中空繊維膜キャピラリの束は、膜乾燥機(Drypoint Beko)からのものである。検出器は1L/min流速を用いたChemPro100(Environics)である。
【0042】
ゼロ時間(保持時間=0)は、図1で示されているように、位置4bから4cへバルブを切り換えることにより定められる。
【0043】
図3は、中空繊維膜の束から検出器への、サリチル酸メチル(MeS)およびジイソプロピルメチルホスホネート(DIMP)(1%DIMPおよび99%MeS)の供給混合物の結果を示している。
【0044】
検出器はフィルタを通して空気を吸引し、クリーンなバックグラウンドシグナルを測定する。バルブ(4)を位置4cに切り換え、サンプルをそれと同時に導入した。3秒後に、バルブ4cを位置4bに切り換えた。この操作はクリーンエア間の繊維中へサンプルボーラスを導入する。
【0045】
約40秒以内で、両化学物質はカラムから溶出し、イオンモビリティスペクトロメトリー(DIMP)および金属酸化物ガスセンサ(MeS)で選択的に検出された。サンプルが図1(a)のようにバルブ6から導入されたならば、シグナル間に時間遅れはないであろう。
【0046】
本発明は、化学検出器として、更に好ましくは化学的分離を行い何らかの化学検出器と組み合わされる追加の機器として用いられる器具に関する。本発明は化学検出器の化学的特異性を改良し、低コスト部品からなり、大まかな設計で済ませられる。本発明は、軍事、工業または個人的防衛あるいは工業または環境衛生または工業プロセスコントロールのような用途で、化学戦争剤と他の毒性および可燃性ガスおよび蒸気の存在を同定するために用いられるとき、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】
【図2】
【図3】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを供給するための供給装置(3〜6)と、サンプルの諸成分を分離するための開管キャピラリカラム(2)と、カラム(2)の温度を制御するための温度制御手段(8〜15)と、サンプルの分離された諸成分を検出するための検出器(1)とを有し、該カラム(2)が開管キャピラリの束を備えた、サンプル分析用ガスクロマトグラフであって、
上記の開管キャピラリ(16)がポリマー膜(19)を備えたガス透過壁を有することを特徴とするガスクロマトグラフ。
【請求項2】
手持ち式携帯ガスクロマトグラフである、請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項3】
壁が選択的ガス透過性ポリマー膜(19)の内層および孔質ポリマー担体(18)の外層を有している、請求項1または2に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項4】
束が10〜10000本の開管キャピラリ(16)を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項5】
開管キャピラリ(16)が10〜100cmの長さおよび10〜1000μmの内径を有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項6】
束が100〜4000本の開管キャピラリ(16)を含んでいる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項7】
管キャピラリ(16)の内径が50〜1000μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項8】
開管キャピラリ(16)が、それらの間に空間を有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項9】
カラム(2)が、束を取囲むカバー(10、14)を有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項10】
温度制御手段(8〜15)が、キャピラリ(16)間の空間を通過する流れ(11)に対して配置された熱媒体(9)を備えた、請求項8または9に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項11】
温度制御手段(8〜15)が、キャピラリ(16)間の空間に熱媒体(9)を通過させるための入口および出口開口部(8)を有した、断熱物質製のカバー(14)を備えた、請求項10に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項12】
温度制御手段(8〜15)が、熱媒体(9)の温度を制御するためのサーモスタットヒータ(13)を備えた、請求項1〜11のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項13】
温度制御手段(8〜15)が、サーモスタットヒータ(13)とキャピラリ(16)間の空間との間で熱媒体(9)を導入および運搬するための、ポンプ(12)およびホースまたはチューブ(15)を備えた、請求項12に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項14】
供給装置(3〜6)が、サンプルからの蒸気がカラム(2)へ入る前に該サンプルからの蒸気を吸収するためのフィルタ(3)を備えた、請求項1〜13のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項15】
供給装置(3〜6)が、サンプルをカラム(2)へ入れるためのガス入口(5)を備えた、請求項1〜14のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項16】
供給装置(3〜6)が、直接的にまたはフィルタ(3)経由でサンプルをカラム(2)へ向かわせるためのバルブ(4)を備えた、請求項14または15に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項17】
供給装置(3〜6)が、カラム(2)経由でまたは直接的にサンプルを検出器(1)へ向かわせるためのバルブ(6)を備えた、請求項1〜16のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項18】
検出器(1)がイオン移動度分光分析器IMSである、請求項1〜17のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項19】
IMSが、サンプルの直接フロースルー用に設計されたハイフネーテッドマルチセンサIMSである、請求項18に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項20】
検出器(1)が、半導体センサ、電気音響式ガスセンサまたはそれらのセンサ配列、または湿度および温度センサ、あるいは少なくとも1つのセンサがIMSであるそれらの組合せを用いている、請求項19に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項21】
開管キャピラリの束が、工業膜乾燥機で用いられているタイプのものである、請求項1〜20のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項22】
ガスクロマトグラフが携帯および/または手持ち式ガス分析器である、請求項1〜21のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−518997(P2007−518997A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550209(P2006−550209)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000045
【国際公開番号】WO2005/071395
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506252978)
【氏名又は名称原語表記】ENVIRONICS OY