説明

ガスケット、および、これを用いた管継手

【課題】締め付けトルクが従来よりも小さくても、気密性を確保できるガスケットおよびこれを用いた気密性の高い管継手を提供すること。
【解決手段】管継手は、第1管ピースと、第1管ピースに連通して接続される第2管ピースと、リング形状のガスケット3と、第1管ピースおよび第2管ピースを締結させる袋ナット部材とを備える。第1管ピースの第1接続面には、環状の第1突条部が形成され、第2管ピースの第2接続面には、環状の第2突条部が形成される。ガスケット3は、第1接続面および第2接続面に対向する一対の対向側面35を有するガスケット本体31と、この外周面に沿って環状に形成された収納溝34に収納されたリング形状のスプリング32とを備える。両対向側面35には、第1突条部および第2突条部に対して、内外二重の環状接触面で当接される環状当接部としてのV字溝36が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接続される管ピースの間に介在され、これら管ピースの接続面における気密性を高めるガスケット、および、これを用いた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体および液晶などの製造には、薄膜成形するための材料としてアンモニア、笑気ガス、三フッ化窒素、および、フッ素等のフッ素系ガスなどのプロセスガスが用いられている。これらのプロセスガスを、薄膜成形が行われるリアクターへ供給するガス供給装置が知られている。
プロセスガスは、不純物が含まれると反応の大きさが小さくなることから、高純度が求められている。そのため、ガス供給装置では、ガスタンクからリアクターまで、配管を通してプロセスガスを輸送しているが、この配管内に異物が混入しないように注意する必要がある。また、ガスは有害性であるので、配管からのガス漏れを防がなければならない。
特に異物が混入しやすい、および、ガス漏れが起きやすい配管の個所の1つとして、配管と配管を接続する管継手が挙げられる。
【0003】
従来の管継手の構造として、図7および図8に示す構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。管継手101は、図7に示すように、雄ねじピース110と、この雄ねじピース110が螺合される雌ねじピース140とを備えている。雄ねじピース110は、外周面に雄ねじ117が形成されるとともに、その軸方向に沿って流体の通路116が形成され、この通路116の基端は図示しない管に接続されている。雄ねじピース110には、凹部113が形成され、この凹部113の底面には、軸方向に突出する突起118が形成されている。
【0004】
雌ねじピース140は、雌ねじピース本体141と、この雌ねじピース本体141に係合される係合ピース120とを備えている。雌ねじピース本体141は、内周面に雄ねじ117に螺合される雌ねじ144が形成されるとともに、その軸方向に沿って挿通孔146が形成されている。係合ピース120の先端には、凹部123が形成され、この凹部123の底面には、突起125が形成されている。また、凹部123には、ガスケット130が嵌合されている。係合ピース120には、その軸方向に沿って流体の通路124が形成され、この通路124の先端は凹部123の底面に接続され、通路124の基端は係合ピース120に接続された図示しない管に接続されている。
【0005】
ガスケット130は、図8に示すように、環状のガスケット本体131と、このガスケット本体131の外周面に沿って取り付けられた略C字形状の押圧部材132とを備えている。ガスケット本体131は、高い耐食性を有し、シール性に優れるため、純度の高いニッケルで形成され、その両端面には、それぞれ環状の凹部134が形成され、外周面には溝133が形成されている。押圧部材132は、溝133に配置され、弾性を有する金属で形成されて、ガスケット本体131の径方向に拡縮可能とされている。
【0006】
この管継手101によれば、ガスケット130を係合ピース120と雄ねじピース110との間に介装させ、雌ねじピース本体141を回転させて雄ねじピース110に螺合させると、突起118および突起125がガスケット130の凹部134を押圧するので、これにより気密性が確保される。
【0007】
【特許文献1】特開2003−343726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような特許文献1に記載された管継手では、所定の締め付けトルクによって接合面のシール性が確保されている。そのために、締め付けトルクが大きいほど、高い気密性が得られる。これに対して、配管同士の接続作業の負担や効率等を考慮すると、小さい締め付けトルクであっても、高い気密性が得られる継手であることが望まれる。特に、配管同士の接続および分離が繰り返し行なわれる管継手の場合では、できるだけ小さい締め付けトルクで高い気密性が得られる方がよい。
【0009】
本発明の目的は、締め付けトルクが従来よりも小さい場合であっても、気密性を確保できるガスケット、および、これを用いた気密性の高い管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガスケットは、第1管ピース、および、第1管ピースに連通して接続される第2管ピースの、互いに対向する両接続面の間に介在されるリング形状のガスケットであって、両接続面に対向する各対向側面の少なくとも一方に、環状当接部が設けられ、この環状当接部は、接続面に形成された環状の突条部に対して、内外二重の環状接触面で当接されることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、ガスケットの環状当接部は、対向する接続面の突条部に対して、内外二重の環状接触面、つまり、二段階の面接触で当接するため、従来のような一重の面接触で当接するよりも、環状当接部と接続面との間に隙間が生じにくくでき、気密性が確実に向上される。従って、第1管ピースと第2管ピースとを締結する締結具の締め付けトルクが従来よりも小さくても、気密性を確保することができる。
環状当接部に内外二重の環状接触面が形成されるので、第1管ピースおよび第2管ピースの接続によって当接部分に作用する軸方向の押圧力が、それぞれの環状接触面に分散される。従って、押圧力の集中が緩和され、長期使用中に当接部分に亀裂が生じるといった劣化等が起きにくくなり、耐久性を向上させることができる。
また、ガスケットに設けられた構成、つまり、環状当接部の構成によって、第1管ピースおよび第2管ピースの両接続面における気密性を向上させることができるので、第1管ピースおよび第2管ピースに特別な表面加工処理を施す必要はなく、表面処理の手間を低減できる。
【0012】
本発明のガスケットでは、環状当接部は、互いに接近する方向に傾斜する一対の傾斜部を有し、断面V字形の凹状に形成されることが好ましい。
このような構成によれば、環状当接部がV字形に窪んだ形状であり、この環状当接部に突条部が当接することで、内外二重の環状接触面が一対の傾斜部と突条部との当接部分に形成される。従って、ガスケットと突条部とが、接続面の面内方向にずれることが防止され、安定した気密性を得られる。
また、環状当接部は断面V字形という簡単な形状であるので、ガスケットの加工がしやすい。
【0013】
本発明のガスケットでは、リング形状の外周面に沿って環状に形成された収納溝と、この収納溝に収納されたリング形状のスプリングと、を備えていることが好ましい。
このような構成によれば、例えば、第1管ピースおよび第2管ピースの接続面の一方に凹部を形成し、ガスケットが、その凹部の内周に嵌合された状態で使用される場合、凹部と、ガスケットとが嵌め合い状態になるような精度に、ガスケットの寸法を仕上げなくてもよいので、加工の手間やコストを低減させることができる。つまり、ガスケットの外径寸法を凹部の内径寸法より小さく形成しても、スプリングが凹部の内周を保持するので、ガスケットが凹部から脱落しにくく、かつ、スプリングが弾性変形するので外しやすい。また、このことは、ガスケットを凹部の内周に嵌めやすいという利点もある。従って、ガスケットの交換作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の管継手は、第1管ピースと、この第1管ピースに連通して接続される第2管ピースと、第1管ピースおよび第2管ピースの互いに対向する両接続面の間に介在されるリング形状のガスケットと、このガスケットを挟んで第1管ピースおよび第2管ピースを締結させる締結具と、を備えた管継手であって、第1管ピースおよび第2管ピースの少なくとも一方の接続面には、環状の突条部が形成され、ガスケットは、両接続面に対向する各対向側面の少なくとも一方に、環状当接部が設けられ、この環状当接部は、突条部に対して、内外二重の環状接触面で当接されることを特徴とする。
このような構成によれば、本発明の管継手は、前述した高い気密性を備えることができる。
【0015】
本発明の管継手では、突条部は、半円形断面を有し、環状当接部は、互いに接近する方向に傾斜する一対の傾斜部と、円弧状の底部とを有し、断面V字形の凹状に形成され、一対の傾斜部は、底部の両端の接線方向に連続して形成され、突条部の曲率半径は、底部の曲率半径よりも大きく設定されることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、環状当接部が断面V字形状に形成されるので、環状当接部の一対の傾斜部と、突条部の頂部を挟んだ両側2箇所の範囲とが互いに当接する。また、突条部の曲率半径は、底部の曲率半径よりも大きいので、突条部の頂部は、底部に当接せず、突条部と底部との間に隙間が形成される。従って、環状当接部に内外二重の環状接触面が確実に形成され、高い気密性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は管継手の軸方向の断面図である。
本実施形態の管継手は、第1管ピース1と、第1管ピース1に連通して接続される第2管ピース2と、第1管ピース1および第2管ピース2の互いに対向する第1接続面16および第2接続面25の間に介在されるリング形状のガスケット3と、このガスケット3を挟んで第1管ピース1および第2管ピース2を締結させる締結具としての袋ナット部材4と、この袋ナット部材4および第2管ピース2の間に介在されたベアリング5とから構成される。
【0018】
第1管ピース1は、ステンレス製であり、直径約20〜30mmの円筒状の管本体11と、管本体11の基端に連続して設けられた容器部12と、これら管本体11の内部に軸方向に沿って形成された流体の第1管通路13と、から構成される。
管本体11の外周面には、先端側から形成された雄ねじ14が形成され、管本体11の先端部には、第1凹部15が形成されている。第1凹部15の底面は、第1接続面16とされる。第1管通路13の先端は第1接続面16の中央に開口され、第1管通路13の基端は容器部12の内部と連通している。第1接続面16には、中央の第1管通路13を囲んで環状の第1突条部17が形成される。この第1突条部17は半円形断面を有する。
【0019】
第2管ピース2は、ステンレス製であり、直径約20〜30mmの円筒状の管本体21と、管本体21の基端面から軸方向へ向かって延設されたパイプ部22と、これら管本体21およびパイプ部22の内部に軸方向に沿って形成された流体の第2管通路23と、から構成される。
管本体21の先端側(第1接続面16に対向する側)には、第2凹部24が形成され、この第2凹部24には、ガスケット3が嵌合されている。第2凹部24の底面は、第2接続面25とされる。第2管通路23の先端は第2接続面25の中央に開口され、第2管通路23の基端はパイプ部22の基端側に接続された図示しない管材等に接続される。
第2接続面25には、中央の第2管通路23を囲んで環状の第2突条部26が形成される。第2突条部26は、半円形断面を有し、ガスケット3を介して第1突条部17に対向する位置に設けられる。
【0020】
図2はガスケット3の軸方向の断面図である。
ガスケット3は、図2に示すように、環状のガスケット本体31と、このガスケット本体31の外周面に沿って取り付けられたスプリング32と、ガスケット本体31の中央部を貫通するガスケット口33と、を備える。
ガスケット本体31は、高い耐食性を有する純度の高いニッケルで形成され、その外周面にはスプリング32を収納する収納溝34が形成される。なお、ガスケット本体31は、ステンレス製でもよい。ニッケル、ステンレス等の高い耐食性を有する金属は、その硬度が高いため、ガスケットのシール性を十分に確保できない場合がある。そのため、ニッケル、ステンレス等の金属の硬度が第1、第2管ピース1,2よりも小さくなるように、焼きなまし等の熱処理を施すことが好ましい。
【0021】
ガスケット本体31には、第1管ピース1の第1接続面16および第2管ピース2の第2接続面25にそれぞれ対向する一対の対向側面35が設けられる。
対向側面35には、ガスケット口33を囲んで環状のV字溝36がそれぞれ形成される。本発明の環状当接部としてのV字溝36は、鋭角ではなく円弧状に形成された底部361と、この底部361に向かって互いに接近する方向に傾斜する一対の傾斜部362とを有し、略V字形の断面形状を備える。一対の傾斜部362は、対向側面35に対してそれぞれ約45度の傾斜角(図2中のα)を有し、かつ、底部361の両端からその接線方向に連続して形成される。これらのV字溝36は、第1突条部17および第2突条部26に対向する位置にそれぞれ設けられる。なお、傾斜部の傾斜角αは、20度〜70度の範囲で設定される。
【0022】
スプリング32は、C字状に歪曲させたステンレス製の線条材である。このスプリング32は、収納溝34に配置され、周方向に変形および復元する弾性を有している。
【0023】
図1において、袋ナット部材4は、軸方向に直交する断面形状が六角形に形成されたステンレス製の六角筒部材であり、外周に形成された六角部41と、先端側(容器部12側)の内壁面に、先端側から形成された雌ねじ42とを備える。
袋ナット部材4の筒内には、ベアリング5を介して、第2管ピース2が収納され、この第2管ピース2に対して袋ナット部材4が回転自在とされる。さらに、雌ねじ42が、第1管ピース1の雄ねじ14に螺合することにより、第1管ピース1と第2管ピース2とが締結される。また、ガスケット3は、第1突条部17および第2突条部26によって挟持される。
袋ナット部材4の内壁には、内周方向に沿って環状の規制部材6が係止される。規制部材6は、ベアリング5よりも先端側の位置に、管本体21の外周面と袋ナット部材4の内壁の間に介在され、ベアリング5が袋ナット部材4の筒内から抜けないように規制する。
【0024】
図3は、ガスケット3および第1管ピース1の接続部分を拡大して示す断面図である。
V字溝36の一対の傾斜部362には、第1突条部17の頂部18を挟んだ両側2箇所の範囲と当接する環状接触面S1,S2が形成される。環状接触面S1,S2は、ガスケット口33(図2)を囲んで内外二重に形成される。
第1突条部17の外周において、その頂部18を挟んだ2箇所の範囲には、一対の傾斜部362との当接によって弾性変形することにより、環状接触面S1,S2と面接触する平坦部が形成される。また、一対の傾斜部362は、弾性変形して当接前よりも大きい傾斜角を形成する。つまり、V字溝36の開口幅が広がって、第1突条部17との密着性が高まる。
なお、第1突条部17の半円形断面の曲率半径R1は、V字溝36の底部361の曲率半径R2よりも大きいので、頂部18と底部361との間には所定の隙間を有する。これによって、頂部18が底部361と当接して、二重の環状接触面が形成されなくなるようなことを防止できる。
ガスケット3および第2管ピース2の接続部分は、ガスケット3および第1管ピース1の接続部分と同じである。
【0025】
上述のガスケット3、および、袋ナット部材4等を用いて、第1管ピース1および第2管ピース2を締結させる管継手の組立方法を説明する。
まず、ガスケット本体31の外周面に、スプリング32を、その半径が大きくなるように変形させながら嵌め込み、収納溝34に収納する。そして、ガスケット3を第2管ピース2の第2凹部24に嵌合する。このとき、第2管ピース2側の対向側面35におけるV字溝36は、第2突条部26に当接する。次に、第2管ピース2を、袋ナット部材4の筒内へ収納する。
【0026】
第2管ピース2を第1ピース1の第1凹部15に挿入して、ガスケット3の第1管ピース1側のV字溝36を第1突条部17に当接させる。この状態で、第1管ピース1の雄ねじ14と雌ねじ42とを螺合させていく。このとき、袋ナット部材4の六角部41をレンチ等で挟み、そのレンチ等を回して、袋ナット部材4を所定の締め付けトルクで締結する。第2管ピース2および袋ナット部材4との間には、ベアリング5が介在されているため、袋ナット部材4のみが回転し、第2管ピース2が回転しない。従って、締め付けの際に第1管ピース1および第2管ピース2とガスケット3との当接部分が磨耗したりせず、保護される。
【0027】
袋ナット部材4を締め付けるにつれて、第1管ピース1および第2管ピース2の各基端側から先端側へ向かう軸方向の押圧力が、それぞれの第1接続面16および第2接続面25に働く。これによって、第1接続面16および第2接続面25が、ガスケット3を挟んで互いに強い力で押圧し合う。図3に示すように、第1突条部17の頂部18を挟んだ2箇所の範囲は、V字溝36の一対の傾斜部362と当接して、一対の傾斜部362に内外二重の環状接触面S1,S2が形成される。
【0028】
袋ナット部材4を所定の締め付けトルクとなるまで締め付けると、環状接触面S1,S2は、0.1mm〜0.4mm程度の幅寸法を有する。なお、環状接触面S1,S2の幅寸法は、管継手の寸法、または、管継手を流れる流体の流量などに合わせて適宜設定されるのがよい。
このようにして、第1管ピース1および第2管ピース2の締結が完了し、第1管通路13および第2管通路23が高い気密性で連通される。
【0029】
このような構成によれば、本実施形態の管継手は、次のような効果を期待できる。
(1)V字溝36の一対の傾斜部362は、対向する第1突条部17および第2突条部26に対して、内外二重の環状接触面、つまり、二段階の面接触で当接するため、従来のような一重の面接触で当接するよりも、ガスケット3と第1管ピース1および第2管ピース2との間に隙間が生じにくくでき、気密性が確実に向上される。従って、袋ナット部材4の締め付けトルクが小さい場合であっても、気密性を確保できる。
(2)環状接触面S1,S2が内外二重に形成されるので、第1管ピース1および第2管ピース2の接続によって当接部分に作用する軸方向の押圧力が、それぞれの環状接触面S1,S2に分散される。従って、押圧力の集中が緩和され、長期使用中に当接部分に亀裂が生じるといった劣化が起きにくくなり、耐久性が向上する。
【0030】
(3)V字溝36に形成される環状接触面S1,S2によって、第1接続面16および第2接続面25における気密性を向上させることができるので、第1管ピース1および第2管ピース2に特別な表面加工処理を施す必要はなく、表面処理の手間を低減できる。
(4)V字溝36の一対の傾斜部362と第1突条部17および第2突条部26とが互いに当接することで、第1突条部17および第2突条部26とガスケット3とがずれにくく、安定した気密性を得られる。
【0031】
(5)V字溝36が簡単な形状であるので、ガスケット3の加工がしやすい。
(6)第2凹部24とガスケット3との嵌め合い精度が不要となるので、加工の手間やコストを低減させることができる。つまり、ガスケット3の外径寸法を第2凹部24の内径寸法より小さく形成しても、スプリング32が第2凹部24の内周を保持するので、ガスケット3が第2凹部24から脱落しにくく、かつ、スプリング32が弾性変形するので外しやすい。また、このことは、ガスケット3を第2凹部24の内周に嵌めやすいという利点もある。従って、ガスケット3の交換作業を容易に行うことができる。
【0032】
(7)第1突条部17の曲率半径R1は、底部361の曲率半径R2よりも大きいので、第1突条部17の頂部18は、底部361に当接せず、第1突条部17と底部361との間に隙間が形成される。従って、V字溝36の一対の傾斜部362に内外二重の環状接触面S1,S2が確実に形成され、高い気密性を得ることができる。
(8)ガスケット3は金属製部材から加工されているため、つまり、周囲の熱や水分等を吸収し膨潤する部材が用いられていないため、形態が変形しにくく、第1接続面16および第2接続面25における気密性を長期に亘って保つことができる。
【0033】
(9)スプリング32は、C字形状であり、周方向へ変形および復元する弾性を備えているため、ガスケット3の収納溝34に収納する際に、その径寸法が大きくなるように変形させることで、ガスケット3の外径寸法よりも径寸法を容易に大きくすることができるため、収納溝34に入れやすくなる。また、同様の作用により、収納溝34から外しやすい。これより、ガスケット3の交換作業がしやすくなる。
【0034】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、第1接続面16および第2接続面25に半円形断面の第1突条部17および第2突条部26が形成されているとしたが、これに限られず、本発明の突条部としては、少なくとも第1接続面16および第2接続面25から突出するものであればよく、例えば、一つの突条部に2以上の凸部を有したものでもよい。
【0035】
また、ガスケット3の対向側面35には、環状当接部としてのV字溝36が形成されているとしたが、これに限られない。すなわち、本発明の環状当接部は、第1接続面16の第1突条部17および第2接続面25の第2突条部26に対して、それぞれ内外二重の環状接触面で当接されるような形状であればよい。図4に示す例などが考えられる。
図4に示すガスケット3Aの対向側面35には、本発明の環状当接部としての半楕円形断面のU字溝36Aが形成される。U字溝36Aの底部を挟んだ両側2箇所の曲率半径は、第1突条部17および第2突条部26の曲率半径より大きく設定される。一方、U字溝36Aの底部の曲率半径は、第1突条部17および第2突条部26の曲率半径より小さく設定される。このようにすれば、U字溝36Aの底部を挟んだ両側2箇所の範囲と、第1突条部17および第2突条部26の頂部を挟んだ両側2箇所の範囲とが当接し、U字溝36Aに内外二重の環状接触面が形成され、高い気密性を得ることができる。
【0036】
図4に示すガスケット本体31の一対の対向側面35において、少なくとも一方の対向側面35に本発明の環状当接部が形成されればよく、他方の対向側面35には、本発明の環状当接部とは異なる当接部が形成されるようにしてもよい。また、一方の対向側面35には、例えば、図2に示すV字溝36が形成され、他方の対向側面35には、図4のU字溝36Aが形成されるという組み合わせでもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、前記実施形態で述べた構成と略同様の構成であるガスケットおよび管継手においてリーク(漏れ)試験を実施し、以下の評価を行う。
【0038】
〔1.評価項目〕
リークが生じない締め付けトルクの条件出しを行う。
〔2.測定条件〕
締め付けトルク、試験用ガスおよびリーク検出の下限値については、次のような測定条件とする。
(1)試験体数 5個
(2)締め付けトルク 5、6.5、8、10、15、20、25、30N・m
(3)試験用ガス ヘリウムガス
(4)リーク検出の下限値 6.55×10−9Pa/s (5×10−11torr/s)
【0039】
〔3.測定方法〕
(1)管継手の一方の管ピースを閉塞し、他方の管ピースにコックを介して真空ポンプを接続する。
(2)管継手の内部を真空にして、コックを閉じ、真空ポンプを外す。
(3)ヘリウムガスを充填させた容器内に管継手を入れ、所定時間だけ維持する。
(4)管継手を取り出し、リーク検出装置でリーク量を測定する。
(5)管継手の締め付けトルクを変更して、(1)〜(4)の手順でそれぞれのリーク量を測定する。
【0040】
〔4.結果・考察〕
本実施例の測定結果を図5に示す。また、比較例として従来の管継手(図7,8)を用いて同様のリーク試験を行なった結果を図6に示す。各図とも、縦軸にリーク量(Pa/s)を示し、横軸に締め付けトルク値(N・m)を示す。
従来の管継手では、締め付けトルク値10N・mの場合、全試験体でリーク量が検出された。締め付けトルク値15N・mの場合、2つの試験体でリーク量が下限値以下となったが、3つの試験体でリーク量が検出された。締め付けトルク値30N・mの場合、全試験体でリーク量が下限値以下となった。
本実施例の管継手では、締め付けトルク値5N・mの場合、1つの試験体でリーク量が下限値以下となった。締め付けトルク値6.5N・mの場合、4つの試験体でリーク量が下限値以下となった。締め付けトルク値8N・mの場合、全試験体でリーク量が下限値以下となった。
このように、従来の管継手の場合には、締め付けトルクが30N・m以上必要であるのに対して、本実施例の管継手の場合には、締め付けトルクが8N・m以上であれば、従来の管継手と同程度の気密性が得られることになる。
すなわち、本実施例の管継手は、従来の管継手に比べて小さい締め付けトルクで同程度の気密性が得られるとともに、従来と同程度の締め付けトルクとすれば、より高い気密性が得られることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、2つの管ピースを締結する管継手に利用できる他、ある2つの部材を、隙間無く接続するための接続具にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態にかかる管継手の軸方向断面図。
【図2】同上の実施形態の管継手に用いられるガスケットの厚み方向断面図。
【図3】同上の実施形態の管継手の接続部分を示す拡大断面図。
【図4】本発明の変形例にかかるガスケットの厚み方向断面図。
【図5】本発明の実施例にかかる測定結果を示すグラフ。
【図6】本発明の比較例にかかる測定結果を示すグラフ。
【図7】従来の管継手を示す軸方向断面図。
【図8】同上の管継手のガスケットの厚み方向断面図。
【符号の説明】
【0043】
1…第1管ピース、2…第2管ピース、3,3A…ガスケット、4…袋ナット部材(締結具)、16,25…接続面、17,26…突条部、32…スプリング、34…収納溝、35…対向側面、36…V字溝(環状当接部)、36A…U字溝(環状当接部)、361…底部、362…傾斜部、S1,S2…環状接触面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管ピース、および、第1管ピースに連通して接続される第2管ピースの、互いに対向する両接続面の間に介在されるリング形状のガスケットであって、
前記両接続面に対向する各対向側面の少なくとも一方に、環状当接部が設けられ、
この環状当接部は、前記接続面に形成された環状の突条部に対して、内外二重の環状接触面で当接されることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記環状当接部は、互いに接近する方向に傾斜する一対の傾斜部を有し、断面V字形の凹状に形成されることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガスケットにおいて、
リング形状の外周面に沿って環状に形成された収納溝と、
この収納溝に収納されたリング形状のスプリングと、を備えていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
第1管ピースと、この第1管ピースに連通して接続される第2管ピースと、前記第1管ピースおよび第2管ピースの互いに対向する両接続面の間に介在されるリング形状のガスケットと、このガスケットを挟んで前記第1管ピースおよび第2管ピースを締結させる締結具と、を備えた管継手であって、
前記第1管ピースおよび第2管ピースの少なくとも一方の前記接続面には、環状の突条部が形成され、
前記ガスケットは、前記両接続面に対向する各対向側面の少なくとも一方に、環状当接部が設けられ、この環状当接部は、前記突条部に対して、内外二重の環状接触面で当接されることを特徴とする管継手。
【請求項5】
請求項4に記載の管継手において、
前記突条部は、半円形断面を有し、
前記環状当接部は、互いに接近する方向に傾斜する一対の傾斜部と、円弧状の底部とを有し、断面V字形の凹状に形成され、
前記一対の傾斜部は、底部の両端の接線方向に連続して形成され、
前記突条部の曲率半径は、前記底部の曲率半径よりも大きく設定されることを特徴とする管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−115160(P2009−115160A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287444(P2007−287444)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000175711)三興工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】