説明

ガスセル

【課題】 製造業者に依頼せずに、鏡を清掃することができるガスセルを提供する。
【解決手段】 円筒の中心軸が左右方向になるように配置された円筒状の器壁からなるボディ11と、鏡12aを一端面に有する第一フランジ12と、鏡13aを一端面に有する第二フランジ13とを備えるガスセル10であって、セルボディ11の左端側と第二フランジ13との間に配置される調整フランジ14を備え、調整フランジ14が、セルボディ11に対して相対位置を調整可能に取り付けられており、第二フランジ13が、調整フランジ14の定位置に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ガス中の微量成分濃度を測定するためのガスセルに関する。
【背景技術】
【0002】
環境汚染や大気汚染の原因となる排気ガス(試料ガス)中には、HSやSO等のイオウ化合物、NOやNH等の窒素化合物、種々の炭化水素等が含まれている。環境状態、特に住民の健康状態に対するこれらの物質の影響が指摘され、空気中におけるこれらの濃度の測定が重要視されている。
また、温室効果ガスとしての二酸化炭素やメタン等の空気中における濃度の測定も益々広く行われている。
【0003】
このようなガス分析では一般に、ガスセルの内部に試料ガスを充填し、試料ガス中を光束が透過して、透過した光束を光電検出器で検出することにより、目的成分による光吸収を測定し、その結果、目的成分の濃度を算出している。このとき、比較的少量の試料ガスを用いて、できる限り高感度で測定するために、ガスセルの内部での光路長を拡大した多重反射ガスセルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図3は、従来の多重反射セル式ガス分析システムの一例を示す図である。
多重反射セル式ガス分析システム101は、多重反射ガスセル110と、分析計20と、電源部(図示せず)と、パーソナルコンピュータ等により具現化される情報処理装置(図示せず)とを備える。
【0004】
分析計20は、略立方体形状の器壁からなる光源室21を備え、光源室21の内部には、半導体レーザ等の光源22と、光源22から出射した光束を多重反射ガスセル110に導入するように反射する光源ミラー23と、多重反射ガスセル110から戻ってきた光束を反射する検出器ミラー24と、シリコン(Si)ダイオードやインジウムガリウムヒ化物(InGaAs)ダイオード等の光電変換素子を有する光電検出器25と、プリアンプ26と、ハーメチックシール形コネクタ27とを備える。
なお、光源室21の器壁には、パージガス(窒素ガス(N)等)が所定の圧力に減圧されて光源室21の内部に供給されるパージガス導入口21aと、ガスパージされたパージガスを光源室21の内部から排出するパージガス排出口21bと、多重反射ガスセル110に光束を出射する窓21cと、多重反射ガスセル110からの光束を入射する窓21dとが形成されている。
【0005】
光電検出器25は、検出器ミラー24で反射した光束を検出し、光信号から電気信号に光電変換する。プリアンプ26は、光電検出器25で光電変換された光束の電気信号を増幅する。そして、ハーメチックシール形コネクタ27は、プリアンプ26で増幅された光束の電気信号を光源室21の外部に取り出し、取り出された電気信号は信号ケーブル等を介して、情報処理装置に送られるようになっている。
【0006】
多重反射ガスセル110は、例えば、直径8cm、高さL30cmの円筒状の器壁からなるセルボディ111と、円板状の第一フランジ112と、円板状の第二フランジ113と、セルボディ111と第一フランジ112とを連結するための複数本のボルト15と、セルボディ111と第二フランジ113とを連結するための複数本のボルト16とを備える。
セルボディ111は、円筒の中心軸が左右方向になるように配置されており、右端部となる円形状の開口部111aと、左端部となる円形状の開口部111bと、器壁を上下方向に貫通する円筒状のガス導入孔11cと、器壁を上下方向に貫通する円筒状のガス排出孔11dとを有する。なお、このようなセルボディ111は、溶接によって製造されている。
【0007】
ガス導入孔11cには、ポンプやバルブ等が接続され、ガス導入孔11cからセルボディ111の内部に試料ガスが導入されるようになっている。そして、ガス排出孔11dからセルボディ111の外部に試料ガスが排出されるようになっている。
円形状の開口部111aの周縁部には、第一フランジ112と連結されるためにボルト15が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴が形成されている。一方、円形状の開口部111bの周縁部には、第二フランジ113と連結されるためにボルト16が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴が形成されている。
【0008】
第一フランジ112は、例えば、直径12cmの円板形状であり、一端面の中央部に例えば、直径7cmの凹面鏡12aを有するとともに、凹面鏡12aの外側になる周縁部にボルト15が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴を有する。
また、第一フランジ112および凹面鏡12aの周縁部の一部には、測定用の光束がセルボディ111の内部に入射するための例えば、直径0.6cmの入射穴12cが設けられるとともに、第一フランジ112および凹面鏡12aの周縁部の他の一部には、セルボディ111の内部から光束が出射するための例えば、直径0.6cmの出射穴12bが設けられている。なお、入射穴12cと出射穴12bとには、それぞれ光透過性の窓板が窓板押えおよびガスケットによって気密保持されている。
【0009】
第二フランジ113は、例えば、直径12cmの円板形状であり、一端面の中央部に例えば、直径7cmの凹面鏡13aを有するとともに、凹面鏡13aの外側になる周縁部にボルト16が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴を有する。
【0010】
このような多重反射ガスセル110では、第一フランジ112の凹面鏡12aがセルボディ111の右端側の開口部111aを塞ぐように、セルボディ111の右端側に第一フランジ112がボルト15を用いて取り付けられている。また、第二フランジ113の凹面鏡13aがセルボディ111の左端側の開口部111bを塞ぐように、セルボディ111の左端側に第二フランジ113がボルト16を用いて取り付けられている。
なお、セルボディ111の内部の気密性を確保するため、第一フランジ112とセルボディ111との接触部と、第二フランジ113とセルボディ111との接触部とには、円環形状の合成ゴム製のガスケットが挟持されている。なお、それぞれの凹面鏡とフランジ(12aと112、13aと113)は一体加工により一体製作してもよい。
【0011】
上記第一フランジ、第二フランジ、セルボディおよびボルトの材料としては、耐腐食性を考慮して、例えば、ステンレス(SUS)等が使用可能である。
上記ガスケットには、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、天然ゴム等によって製造される合成ゴムが使用可能である。
【0012】
このような多重反射セル式ガス分析システム101によれば、試料ガスがガス導入孔11cを通じて導入され、セルボディ111の内部に満たされる。次に、光源22から出射した光束は、入射穴12cからセルボディ111の内部に入射する。そして、入射した光束は、凹面鏡13aに達する。その後、光束は、凹面鏡12aと凹面鏡13aとの間で数回〜100回程度の反射、いわゆる多重反射を行う。続いて、多重反射後の光束は、セルボディ111の内部から出射穴12bを通過して出射する。出射した光束は、光電検出器25に送られて、測定が行われることになる。
【0013】
ここで、多重反射セル式ガス分析システム101が設計者の意図した通りに正確に動作するためには、セルボディ111の形状の加工精度や、2枚の凹面鏡12a、13aの表面形状の加工精度等がある一定の条件を満たした場合にのみ、入射穴12cから入射した光束が、2枚の凹面鏡12a、13aの間で所定の回数多重反射された後、光束が正確に出射穴12bから取り出されることになる。
この多重反射ガスセル110の光学系が成り立つには2枚の凹面鏡12a、13aとセルボディ111との間に高い相対位置関係精度が求められる。例えば3者の中心軸がずれたり曲がってはいけない。しかしながら、直管に枝管が取り付けられた複雑な形状のセルボディ111を作製するには、通常溶接により作製する(大型多軸機械加工機等を用いて大きな材料から全て切削加工により製作すれば高精度が得られるが実用的でない)(特にセルボディ111の左右方向の長さLが30cm程度になるとき)。そのため、多重反射ガスセル110の製造業者は、セルボディ111の加工精度が多少悪くても、光束を正確に出射穴12bから取り出すために、セルボディ111の左端側に第二フランジ113を取り付ける際に、セルボディ111に対する凹面鏡13aの取り付け位置を調整手段(例えば、安全な可視レーザ光を用いて光軸が見えるようにして凹面鏡フランジ(第二フランジ113)を動かして調整を行い適切な位置で固定する等)によって微調節して取り付けることにより、設計者の意図した通りに正確に動作するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−80017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上述したような多重反射セル式ガス分析システム101において、製造業者から多重反射ガスセル110を購入した使用者が、試料ガスの定性・定量分析を行っていくと、多重反射ガスセル110の内部(凹面鏡)は、試料ガスに直接接触するので、試料ガスの気化残渣等の付着により汚れていく。よって、凹面鏡12a、13aが汚れたときに、凹面鏡12a、13aを清掃するために、多重反射セル式ガス分析システム101から多重反射ガスセル110を取り外し、さらに多重反射ガスセル110を分解する必要がある。
そして、多重反射ガスセル110の凹面鏡12a、13aを清掃した後に、セルボディ111の左端側に第二フランジ113を取り付ける際に、上述したように光束を正確に出射穴12bから取り出すために、セルボディ111に対する凹面鏡13aの取り付け位置を調整手段によって微調節しなければならない。
【0016】
しかしながら、使用者は、多重反射ガスセル110の製造業者のように、セルボディ111に対する凹面鏡13aの取り付け位置を、調整手段によって微調節する能力がなく、そのため、使用者が凹面鏡12a、13aを清掃する際には、多重反射ガスセル110の製造業者に必ず依頼しなければいけないという手間がかかっていた。
そこで、本発明は、製造業者に依頼せずに、鏡(凹面鏡)を清掃することができるガスセルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するためになされた本発明のガスセルは、円筒の中心軸が左右方向になるように配置された円筒状の器壁からなり、内部に試料ガスが導入されるセルボディと、鏡を一端面に有する第一フランジと、鏡を一端面に有する第二フランジとを備え、試料ガスが導入されるガス導入孔と、試料ガスが排出されるガス排出孔と、光束が入射する入射穴と、光束が出射する出射穴とが形成されており、前記第一フランジの鏡がセルボディの右端側の開口を塞ぐように、前記セルボディの右端側に第一フランジが配置されるとともに、前記第二フランジの鏡がセルボディの左端側の開口を塞ぐように、前記セルボディの左端側に第二フランジが配置され、前記入射穴外部から入射した光束が、上記2個の鏡で交互に反射しながら、前記セルボディと2個の鏡との間に形成された内部空間に充填された試料ガス中を透過した後、前記出射穴から出射するように構成されたガスセルであって、前記セルボディの左端側と第二フランジとの間に配置される調整フランジを備え、前記調整フランジが、前記セルボディに対して相対位置を調整可能に取り付けられており、前記第二フランジが、前記調整フランジの定位置に着脱可能に取り付けられているようにしている。
【0018】
ここで、「前記第二フランジが、前記調整フランジの定位置に着脱可能に取り付けられている」とは、定位置にしか取り付けることができず、定位置のみに取り付けることができることをいい、例えば、調整手段(例えば、安全な可視レーザ光を用いて光軸が見えるようにして調整フランジや第二フランジを動かして調整を行い適切な位置で固定する等)等のように他の装置や道具を用いて定位置に取り付けることは除き、他の装置や道具を用いなくても定位置に取り付けることができることである。
また、「前記調整フランジが、前記セルボディに対して相対位置を調整可能に取り付けられている」とは、調整手段(例えば、安全な可視レーザ光を用いて光軸が見えるようにして調整フランジやセルボディを動かして調整を行い適切な位置で固定する等)等のように他の装置や道具を用いて取り付けることをいう。
また、「円筒状の器壁からなるセルボディ」は、左右方向の中央辺りで分割されたような2分割された構造であってもよく、全く分割されていない構造であってもよい。
なお、調整フランジは、セルボディの左端側と第二フランジとの間に配置されているが、左右をひっくり返すと、セルボディの右端側と第二フランジとの間に配置されることになる。つまり、調整フランジの位置はセルボディの左端側に限らないことになる。
【0019】
本発明のガスセルによれば、ガスセルの製造業者は、まず、セルボディの右端側に第一フランジを取り付ける。次に、調整フランジの定位置に第二フランジを取り付ける。次に、セルボディの左端側と調整フランジとは、調整手段によって位置合わせして、セルボディの左端側に調整フランジを取り付ける。つまり、光束を正確に出射穴から取り出すために、調整フランジの取り付け位置が調整手段によって微調節されて取り付けられている。
【0020】
その後、製造業者からガスセルを購入した使用者が、鏡を清掃するときには、調整フランジから第二フランジを取り外す。このとき、セルボディの右端側から第一フランジを取り外さず、かつ、セルボディの左端側から調整フランジを取り外さない。
そして、使用者が鏡を清掃した後には、調整フランジと第二フランジとを位置合わせして、調整フランジの定位置に第二フランジを取り付ける。これにより、セルボディに対する鏡の取り付け位置を正確に元の取り付け位置に戻すことができる。つまり、セルボディに対する鏡の取り付け位置を調整手段によって微調節せずに、光束を正確に出射穴から取り出すことができる取り付け位置に戻す。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のガスセルによれば、製造業者に依頼せずに、鏡を清掃することができる。
【0022】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明のガスセルは、前記調整フランジには第二雄部が形成されるとともに、前記第二フランジには第二雌部が形成されており、前記第二雄部と第二雌部とによって位置合わせされて、前記調整フランジに第二フランジが取り付けられているようにしてもよい。
また、本発明のガスセルは、前記調整フランジに形成された第二雄部は、凸部又は凹部であるとともに、前記第二フランジに形成された第二雌部は、前記第二雄部に対応する凹部又は凸部であるようにしてもよい。
【0023】
また、本発明のガスセルは、前記セルボディの右端側には第一雄部が形成されるとともに、前記第一フランジには第一雌部が形成されており、前記第一雄部と第一雌部とによって位置合わせされて、前記セルボディの右端側に第一フランジが取り付けられているようにしてもよい。
本発明のガスセルによれば、ガスセルの製造業者は、まず、セルボディの右端側に形成された第一雄部と、第一フランジに形成された第一雌部とによって位置合わせして、セルボディの右端側に第一フランジを取り付ける。次に、調整フランジに形成された第二雄部と、第二フランジに形成された第二雌部とによって位置合わせして、調整フランジに第二フランジを取り付ける。次に、セルボディの左端側と調整フランジとは、調整手段によって位置合わせして、セルボディの左端側に調整フランジを取り付ける。つまり、光束を正確に出射穴から取り出すために、調整フランジの取り付け位置が調整手段によって微調節されて取り付けられている。
【0024】
その後、製造業者からガスセルを購入した使用者が、鏡を清掃するときには、セルボディの右端側から第一フランジを取り外すとともに、調整フランジから第二フランジを取り外す。このとき、セルボディの左端側から調整フランジを取り外さない。
そして、使用者が鏡を清掃した後には、セルボディの右端側に形成された第一雄部と、第一フランジに形成された第一雌部とによって位置合わせして、セルボディの右端側に第一フランジを取り付ける。次に、調整フランジに形成された第二雄部と、第二フランジに形成された第二雌部とによって位置合わせして、調整フランジに第二フランジを取り付ける。これにより、セルボディに対する鏡の取り付け位置を正確に元の取り付け位置に戻すことができる。つまり、セルボディに対する鏡の取り付け位置を調整手段によって微調節せずに、光束を正確に出射穴から取り出すことができる取り付け位置に戻す。
以上のように、本発明のガスセルによれば、製造業者に依頼せずに、鏡を清掃することができる。
【0025】
そして、本発明のガスセルは、前記調整フランジに形成された第二雄部は、凸部又は凹部であるとともに、前記第二フランジに形成された第二雌部は、前記第二雄部に対応する凹部又は凸部であるようにしてもよい。
さらに、本発明のガスセルは、前記セルボディの左端側と調整フランジとは、調整手段によって位置合わせされて、前記セルボディの左端側に調整フランジが取り付けられているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態である多重反射セル式ガス分析システムの一例を示す図である。
【図2】図1に示す多重反射セル式ガス分析システムにおけるA部分の拡大断面図である。
【図3】従来の多重反射セル式ガス分析システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態である多重反射セル式ガス分析システムの一例を示す図であり、図2は、図1に示す多重反射セル式ガス分析システムにおけるA部分の拡大断面図である。なお、上述した多重反射セル式ガス分析システム101と同様のものについては、同じ符号を付している。
多重反射セル式ガス分析システム1は、多重反射ガスセル10と、分析計20と、電源部(図示せず)と、パーソナルコンピュータにより具現化される情報処理装置(図示せず)とを備える。
【0029】
多重反射ガスセル10は、例えば、直径8cm、高さ300cmの円筒状の器壁からなるセルボディ11と、円板状の第一フランジ12と、円板状の第二フランジ13と、円環形状の調整フランジ14と、セルボディ11と第一フランジ12とを連結するための複数本のボルト15と、セルボディ11と調整フランジ14とを連結するための複数本のボルト17と、調整フランジ14と第二フランジ13とを連結するための複数本のボルト16とを備える。
セルボディ11は、円筒の中心軸が左右方向になるように配置されており、右端部となる円形状の開口部11aと、左端部となる円形状の開口部11bと、器壁を上下方向に貫通する円筒状のガス導入孔11cと、器壁を上下方向に貫通する円筒状のガス排出孔11dとを有する。なお、このようなセルボディ11は、溶接によって製造されている。
【0030】
円形状の開口部11aの周縁部には、第一フランジ12と連結されるためにボルト15が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴が形成されている。
さらに、開口部11aの周縁部の左側面には、第一フランジ12に形成された円環形状の凹部(第一雌部)12dによって位置合わせされて第一フランジ12が取り付けられるための円環形状の凸部(第二雄部)11eが形成されている。凸部(雄部)11eは、例えば、高さ0.3cm、外径7.6cmとなり、一方、凹部(雌部)12dは、凸部(雄部)11eに対応するように、例えば、深さ0.4cm、内径7.6cmとなっている。
一方、円形状の開口部11bの周縁部には、調整フランジ14と連結されるためにボルト17が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴が形成されている。
【0031】
第一フランジ12は、例えば、直径12cmの円板形状であり、左側面(一端面)の中央部に例えば、直径7cmの凹面鏡12aを有し、かつ、左側面の凹面鏡12aの外側になる周縁部にセルボディ11の凸部11eが挿入される凹部12dを有するとともに、凹面鏡12aの外側になる周縁部にボルト15が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴を有する。これにより、凹部12dと凸部11eとによって位置合わせすると、第一フランジ12をセルボディ11の決まった位置(定位置)に取り付けることができるようになっている。つまり、第一フランジ12をセルボディ11から取り外しても、第一フランジ12をセルボディ11の元の取り付け位置に容易に戻すことができる。
また、第一フランジ12および凹面鏡12aの周縁部の一部には、測定用の光束がセルボディ11の内部に入射するための例えば、直径0.6cmの入射穴12cが設けられるとともに、第一フランジ12および凹面鏡12aの周縁部の他の一部には、セルボディ11の内部から光束が出射するための例えば、直径0.6cmの出射穴12bが設けられている。なお、入射穴12cと出射穴12bとには、それぞれ光透過性の窓板が窓板押えおよびガスケットによって気密保持されている。
【0032】
調整フランジ14は、例えば、内径7.2cm、外形12cmの円環形状であり、円環の中心軸が左右方向になるように配置される。円環状形の調整フランジ14には、ボルト17が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴と、第二フランジ12と連結されるためにボルト16が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴とが形成されている。
さらに、調整フランジ14の左端面には、第二フランジ13に形成された円環形状の凹部(第二雌部)13bによって位置合わせされて第二フランジ13が取り付けられるための円環形状の凸部(第二雄部)14aが形成されている。凸部(第二雄部)14aは、例えば、高さ0.3cm、外径7.6cmとなり、一方、凹部(第二雌部)13bは、凸部(第二雄部)14aに対応するように、例えば、深さ0.4cm、内径7.6cmとなっている。
【0033】
第二フランジ13は、例えば、直径12cmの円板形状であり、右側面(一端面)の中央部に例えば、直径7cmの凹面鏡13aを有し、かつ、右側面の凹面鏡13aの外側になる周縁部に調整フランジ14の凸部14aが挿入される凹部13bを有するとともに、凹面鏡13aの外側になる周縁部にボルト16が挿入される複数個(例えば、6個)のボルト穴を有する。これにより、凹部13bと凸部14aとによって位置合わせすると、第二フランジ12を調整フランジ14の決まった位置(定位置)に取り付けることができるようになっている。つまり、第二フランジ13を調整フランジ14から取り外しても、第二フランジ13を調整フランジ14の元の取り付け位置に容易に戻すことができる。
【0034】
このような多重反射ガスセル10では、製造業者によって、第一フランジ12の凹面鏡12aがセルボディ11の右端側の開口部11aを塞ぎ、かつ、凹部12dと凸部11eとによって位置合わせされて、セルボディ11の右端側に第一フランジ12がボルト15を用いて取り付けられている。このとき、セルボディ11の右端側の決まった位置に第一フランジ12が取り付けられることになる。
また、第二フランジ13の凹面鏡13aが調整フランジ14の左端側の開口部を塞ぎ、かつ、凹部13bと凸部14aとによって位置合わせされて、調整フランジ14の左端側に第二フランジ13がボルト16を用いて取り付けられている。このとき、調整フランジ14の左端側の決まった位置に第二フランジ13が取り付けられることになる。
【0035】
さらに、セルボディ11の左端側に調整フランジ14がボルト17を用いて取り付けられている。このとき、セルボディ11の左端側と調整フランジ14とは、調整手段(例えば、安全な可視レーザ光を用いて光軸が見えるようにして凹面鏡フランジ(調整フランジ14)を動かして調整を行い適切な位置で固定する等)によって位置合わせされて、セルボディ11の左端側に調整フランジ14が取り付けられている。つまり、光束を正確に出射窓12bから取り出すために、調整手段によって微調節されて取り付けられている。
なお、セルボディ11の内部の気密性を確保するため、第一フランジ12とセルボディ11との接触部と、第二フランジ13と調整フランジ14との接触部と、調整フランジ14とセルボディ11との接触部とには、円環形状の合成ゴム製のガスケットが挟持されている。
【0036】
このような多重反射セル式ガス分析システム1によれば、製造業者から多重反射ガスセル10を購入した使用者によって、試料ガスがガス導入孔11cを通じて導入され、セルボディ11の内部に満たされる。次に、光源22から出射した光束は、入射穴12cからセルボディ11の内部に入射する。そして、入射した光束は、凹面鏡13aに達する。その後、光束は、凹面鏡12aと凹面鏡13aとの間で数回〜100回程度の反射、いわゆる多重反射を行う。続いて、多重反射後の光束は、セルボディ11の内部から出射穴12bを通過して出射する。出射した光束は、光電検出器25に送られて、測定が行われることになる。
【0037】
その後、製造業者から多重反射ガスセル10を購入した使用者が、凹面鏡12a、13aを清掃するときには、セルボディ11の右端側から第一フランジ12を取り外すとともに、調整フランジ14から第二フランジ13を取り外す。このとき、調整フランジ14はセルボディ11の左端側から取り外さない。
そして、使用者が凹面鏡12a、13aを清掃した後には、凹部12dと凸部11eとによって位置合わせして、セルボディ11の右端側に第一フランジ12を取り付ける。次に、凹部13bと凸部14aとによって位置合わせして、調整フランジ14に第二フランジ13を取り付ける。このとき、セルボディ11に対する凹面鏡12a、13aの取り付け位置を正確に元の取り付け位置に戻すことができる。つまり、セルボディ11に対する凹面鏡12a、13aの取り付け位置を、調整手段によって微調節せずに、光束を正確に出射窓12bから取り出すことができる取り付け位置に戻す。
【0038】
以上のように、多重反射セル式ガス分析システム1によれば、使用者は、製造業者に依頼せずに、凹面鏡12a、13aを清掃することができる。
【0039】
<他の実施形態>
上述した多重反射セル式ガス分析システム1において、セルボディ11の左端側と第二フランジ13との間に配置される調整フランジ14を備えるような構成を示したが、セルボディの右端側と第一フランジとの間に配置される調整フランジを備えるような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、試料ガス中の微量成分濃度を測定する多重反射セル式ガス分析システム等に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 ガスセル
11 セルボディ
11c ガス導入孔
11d ガス排出孔
11e、14a 凸部(雄部)
12 第一フランジ
12a、13a 凹面鏡
12b 出射穴
12c 入射穴
12d、13b 凹部(雌部)
13 第二フランジ
14 調整フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒の中心軸が左右方向になるように配置された円筒状の器壁からなり、内部に試料ガスが導入されるセルボディと、
鏡を一端面に有する第一フランジと、
鏡を一端面に有する第二フランジとを備え、
試料ガスが導入されるガス導入孔と、試料ガスが排出されるガス排出孔と、光束が入射する入射穴と、光束が出射する出射穴とが形成されており、
前記第一フランジの鏡がセルボディの右端側の開口を塞ぐように、前記セルボディの右端側に第一フランジが配置されるとともに、
前記第二フランジの鏡がセルボディの左端側の開口を塞ぐように、前記セルボディの左端側に第二フランジが配置され、
前記入射穴外部から入射した光束が、上記2個の鏡で交互に反射しながら、前記セルボディと2個の鏡との間に形成された内部空間に充填された試料ガス中を透過した後、前記出射穴から出射するように構成されたガスセルであって、
前記セルボディの左端側と第二フランジとの間に配置される調整フランジを備え、
前記調整フランジが、前記セルボディに対して相対位置を調整可能に取り付けられており、
前記第二フランジが、前記調整フランジの定位置に着脱可能に取り付けられていることを特徴とするガスセル。
【請求項2】
前記調整フランジには第二雄部が形成されるとともに、前記第二フランジには第二雌部が形成されており、
前記第二雄部と第二雌部とによって位置合わせされて、前記調整フランジに第二フランジが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスセル。
【請求項3】
前記調整フランジに形成された第二雄部は、凸部又は凹部であるとともに、前記第二フランジに形成された第二雌部は、前記第二雄部に対応する凹部又は凸部であることを特徴とする請求項2に記載のガスセル。
【請求項4】
前記セルボディの右端側には第一雄部が形成されるとともに、前記第一フランジには第一雌部が形成されており、
前記第一雄部と第一雌部とによって位置合わせされて、前記セルボディの右端側に第一フランジが取り付けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載のガスセル。
【請求項5】
前記調整フランジに形成された第二雄部は、凸部又は凹部であるとともに、前記第二フランジに形成された第二雌部は、前記第二雄部に対応する凹部又は凸部であることを特徴とする請求項4に記載のガスセル。
【請求項6】
前記セルボディの左端側と調整フランジとは、調整手段によって位置合わせされて、前記セルボディの左端側に調整フランジが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のガスセル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−242281(P2011−242281A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115376(P2010−115376)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】