説明

ガスセンサーのための光空洞

本発明は、非分散赤外線方式を利用したガスセンサーの光空洞に関する。本発明の光空洞は、異なる焦点距離を有する2つの2次放物線形態の鏡を互いに焦点と光軸とを共有するように対向して配置し、光軸を2次放物線の焦点と頂点とを経る直線にしてその光軸に平面鏡を配置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非分散赤外線(NDIR:Non Dispersive Infrared)方式を利用したガスセンサーの光空洞に関する。
【背景技術】
【0002】
非分散赤外線方式は、ガスの光学的吸収特性を利用してガスが特定の波長の光を吸収する程度を測定してガスの濃度で逆算する方式であって、この非分散赤外線方式を利用したガスセンサーは、通常、光源、光検出器及び光空洞を備えるガスチャンバーと、ガスチャンバーの光検出器から出る電気信号を分析してガス濃度で逆算する回路部分とから構成される。
【0003】
一般的に優秀な特性を有するNDIR方式のガスセンサーは、光空洞での光路を大きくして光が光空洞の内部を進める過程でガスにより吸収を多く起こして精密度及び正確度を向上させることが主要関鍵である。
【0004】
しかしながら、光路を大きくするために光空洞のサイズを大きくする場合、ガスセンサーの体積が大きくなり、コスト上昇の要因として作用するので、製品としての競争力を低下させる。したがって、制限されたサイズの光空洞を利用しつつ光路を大きくするためには、光空洞の内部を鏡やレンズを幾何学的に効果的に配置することが効果的な方法のうち1つである。
【0005】
このような理由により、光学シミュレーション技法を利用して多くの試行錯誤を経て適切な光空洞の鏡とレンズとの配置を見付けることが最も平凡な従来の光空洞の設計及び分析方法であるが、この方法の場合、光空洞の性能に影響を与える因子があまり多いので、光空洞の設計及び製作過程で発生する小さい誤差要因の累積によって製品の性能の偏差が大きく、したがって、このような誤差の補正に長時間及び高コストがかかる。また、シミュレーション技法による光空洞の設計では、光空洞のサイズを同一に維持しつつ光路をより大きくするか、または小さくしようとする場合、新たに光空洞を設計しなければならないので、多くの試行錯誤を経なければならず、既存のガスセンサーの回路に適用させられない非実用的な光空洞が導出されるという問題点がある。
【0006】
また、一般的に小さいサイズに大きい光路を有する効率的な光空洞を設計するためには、光空洞の内部の空間を十分に活用しなければならない。すなわち、光源から放出された光が光空洞の内部を十分に進めた後、光検出器に検出されなければならない。しかし、この場合、ガスの流出入のための換気口を配置可能な空間は相対的に減少するので、結果的に、光路は大きいが、換気口が小さいため、ガスセンサーの応答時間(すなわち、1回の測定にかかる時間)が過度に長くなるという問題点がある。すなわち、従来のガスセンサーは、含めている光空洞の光路を大きくするのに主眼点を置くことによって、ガスセンサーの正確度及び精密度は向上させたとしても、狭い換気口によりガスの流入速度が遅くて1回の測定に最大数分ほどの時間がかかり、速い応答速度(または、応答時間)が要求される測定環境に適切に対応できないという問題点がある。
【0007】
また、非分散赤外線方式でいわゆる熱赤外線に対して非常に良好な吸収特性を有するガスを測定する場合(例えば、約4.2μmの熱赤外線を吸収する二酸化炭素ガスを測定する場合)、熱赤外線は、光空洞を構成する物質の熱振動を誘発させて、結局、光空洞の温度を上昇させるが、例えば光源から放出された光のエネルギーが100とすれば、温度の上昇により100以上のエネルギーが形成されるので、これにより測定誤差が発生する。この測定誤差を最小化するために、光源から放出される光をパルス形態にするが、パルス幅が狭ければ、光エネルギーが小さくて光検出器に検出される光量が少ないので、効果的にガスを測定できず、逆にパルス幅を広くする場合、光エネルギーが多いので、効果的な測定は可能であるが、光空洞の内部の温度上昇に影響を与え、この光空洞の内部の温度上昇は、ガスセンサーの測定誤差として作用するという問題点がある。
【0008】
また、通常的に光路の長さ及びその他の光空洞の特性が非常に多様な多数の因子により影響を受けるため、光空洞を設計した後、反復実験を通じて設計値を修正するか、または新たな適用環境などに合わせて光空洞の設計を修正する必要がある場合に、光路の長さを変更するか、または光路の長さ変更による光空洞の特性変化を予測して設計に反映するのは非常に困難な問題である。
【0009】
また、光源から放出された光は、光源の特性によって所定の光幅または光のサイズを有するので、光源から放出されたあらゆる光が焦点を通過する理想的な光路を有するようにするのが不可能であり、これにより、光空洞の内部で発生する多様な光路を考慮して光空洞を設計するのも容易でない。
【0010】
このような問題点は、NDIRガスセンサーが既存の他の方式のガスセンサーに比べて多くの長所を有しているにもかかわらず、実際の適用に制約を受ける要因として作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、非分散赤外線方式を利用したガスセンサーにおいて、より大きい光路及び効率的な換気特性を有する光空洞を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、非分散赤外線方式のガスセンサーの核心部分といえる光空洞を効果的に設計して光路を大きくすることによって、ガス濃度の測定の正確度及び精密度を改善すると共に、換気口の面積を十分に大きくして測定しようとするガスの流出入を容易にすることによって、ガス濃度の1回測定時間、すなわち応答時間を短縮させることを目的とする。
【0013】
また、本発明は、幾何学的に効率的な鏡の配置を通じて、大きい光路及び大きい換気口という通常的に相反する目標を同時に達成する光空洞を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、換気口を大きく形成して換気口を通じた熱発散を促進することによって、光空洞の内部の温度上昇による測定誤差を防止する光空洞を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、光空洞の設計時、光路中で不要に多くの反射を起こしつつも光検出器には検出されない光路を排除し、光空洞を構成する平面鏡の特定の部分でのみ重点的に反射が行われるようにする一方、反射が起きない平面鏡の一部に換気口を設置することによって、ガスの流出入を円滑にし、不要な光路による光空洞内部の温度上昇を抑制できる光空洞を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、光空洞を構成する鏡の図形形態を収斂系に構成し、光検出器を収斂される部分に配置することによって、効果的な光検出特性を有する光空洞を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、光空洞の設計時、可能な限り簡単かつ分析しやすい図形の鏡とレンズとを配置可能にし、最小数の光空洞設計因子のみを変更して光路を効率的に変更し、それを容易に分析することによって、新たな光空洞の設計における多くの試行錯誤とコストを低減できる光空洞を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、2つの2次放物線の焦点距離の比を異ならせることによって、光路を容易に調節できる特徴を有するので、適用ガス別の光空洞の設計が非常に容易な光空洞を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、一定な光幅または光のサイズを有して光源から放出されたが、光路上で光幅が変化したか、または最初から多様な角度偏差を有して光源から放射された光を所定の焦点を通過させることによって収斂させる光空洞を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための本発明の光空洞は、異なる焦点距離を有する2つの2次放物線形態の鏡を互いに焦点と光軸とを共有するように対向して配置し、光軸を2次放物線の焦点と頂点とを経る直線にして、その光軸に平面鏡を配置することを特徴とする。
【0021】
上記構造の光空洞の場合、焦点距離が長い2次関数放物線鏡上の任意の点から焦点に向かって放出された光は、光空洞の内部を循環していて、結局、光軸近辺で(+)と(−)方向に往復して光軸に収斂する光路を有する。これにより、光軸と平行に光検出器を配置すれば、光源から放出された光は、いずれも光検出器で検出される。
【0022】
上記構造の光空洞は、理想的な平面鏡では焦点でのみ光の反射が起きるという特徴を利用するものである。すなわち、焦点に限定された領域でのみ光の反射が起きるので、平面鏡の残りの部分(反射が起きない部分)には光路が形成されないので、自由に換気口を配置できる。また、あらゆる光が光軸に配置された光検出器に収斂するため、光軸の反対側に位置した光源近辺の領域にも光路が形成されないので、自由に換気口を配置できる。
【0023】
本発明によれば、前述したように、異なる焦点距離を有する2つの2次放物線鏡と1つの平面鏡とを利用して収斂系の十分に大きい光路を有し、かつ十分に大きい換気口を有する光空洞を設計できる。
【0024】
また、本発明による上記構造の光空洞は、2つの2次放物線の焦点距離の比を異ならせることによって、光路を調節できるという特徴を有する。すなわち、2つの焦点距離の比が1:1であれば、放物線の原理上、無限光路を形成するので、2つの焦点距離の比を1:nに設定し、n値を1と0との間で調節して、吸収度の高いガスの場合には、n値を小さくして光路を短く設計し、吸収度の低いガスの場合には、n値を1に近くすることによって、光路を十分に大きくすることができるので、適用ガス別の光空洞の設計が非常に容易である。
【0025】
上記は、光源から放出された光が正確に焦点に向かって放出された場合であって、非常に理想的な場合といえる。しかし、一般的に光源から放出された光は、一定な光幅または光のサイズを有するので、あらゆる光が焦点を通過する理想的な光路を有させられない。これにより、光源から放出された光が可能な限り焦点を通過可能にして所定の角度を有して放射されるか、または光路上で光幅が増大した光が所定の焦点近辺を通過するように光空洞を設計すれば、理想的な光路を外れる上記光が所定の位置に配置された光検出器に収斂することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非分散赤外線方式を利用したガスセンサーにおいて、より大きい光路及び効率的な換気特性を有する光空洞が提供される。
【0027】
本発明によれば、2つの放物鏡と1つの平面鏡とを利用して光路に対する収斂系を構成し、それを利用して特定の部分でのみ反射を行い、光が反射されない部分には、ガスの換気口を生成してガスの換気を円滑にすることによって、結論的に、光路が大きくて収斂系であるので、光の集束機能があり、ガスの換気特性が良好であるので、応答速度が速い光空洞が提供される。
【0028】
また、本発明によれば、非分散赤外線方式のガスセンサーの核心部分といえる光空洞を効果的に設計して光路を大きくすることによって、ガス濃度の測定の正確度及び精密度を改善すると共に、換気口の面積を十分に大きくして測定しようとするガスの流出入を容易にすることによって、ガス濃度の1回測定時間、すなわち応答時間を短縮させることができる。
【0029】
また、本発明によれば、幾何学的に効率的な鏡の配置を通じて、大きい光路及び大きい換気口という通常的に相反する目標を同時に達成する光空洞が提供される。
【0030】
また、本発明によれば、換気口を大きく形成して換気口を通じた熱発散を促進することによって、光空洞の内部の温度上昇による測定誤差を防止する光空洞が提供される。
【0031】
また、本発明によれば、光空洞の設計時、光路中で不要に多くの反射を起こしつつも光検出器には検出されない光路を排除し、光空洞を構成する平面鏡の特定の部分でのみ重点的に反射を行う一方、反射が起きない平面鏡の一部に換気口を設置することによって、ガスの流出入を円滑にし、不要な光路による光空洞の内部の温度上昇を抑制できる光空洞が提供される。
【0032】
また、本発明によれば、光空洞を構成する鏡の図形形態を収斂系で構成し、光検出器を収斂される部分に配置することによって、効果的な光検出特性を有する光空洞が提供される。
【0033】
また、本発明によれば、光空洞の設計時、可能な限り簡単かつ分析しやすい図形の鏡とレンズとを配置可能にし、最小数の光空洞の設計因子のみを変更して光路を効率的に変更し、それを容易に分析することによって、新たな光空洞の設計における多くの試行錯誤とコストを低減できる光空洞が提供される。
【0034】
また、本発明によれば、2つの2次放物線の焦点距離の比を異ならせることによって、光路を容易に調節できる特徴を有するので、適用ガス別の光空洞の設計が非常に容易な光空洞が提供される。
【0035】
また、本発明によれば、一定な光幅または光のサイズを有して光源から放出されたが、光路上で光幅が変化したか、または最初から多様な角度偏差を有して光源から放射された光を所定の焦点を通過させることによって収斂させる光空洞が提供される。
【0036】
また、本発明によれば、光空洞の構造に関する数式を導出して光空洞に関する分析方法を提供することによって、光空洞の設計において光学的模擬試験によるコストを低減し、時間を短縮させるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下では、本発明の光空洞の構造的特徴を、添付図面を参照して提示する。
【0038】
1.理想的な光源に対する光空洞の内部での光の進行
図1は、本発明による光空洞の原理に関する構造図である。
【0039】
本発明の光空洞は、図1に示したように、基本的に2つの2次放物線鏡M1,M2及び1つの平面鏡M3を備える構造である。
【0040】
2つの2次放物線鏡(すなわち、放物鏡)M1,M2は、それぞれ焦点距離がp,qであり、M1,M2は<数1>、<数2>の関数を有する。
【0041】
【数1】

【0042】
【数2】

【0043】
<数1>、<数2>は、座標の原点を焦点として共有し、x軸が光軸となる。ここで、光軸は、光学的分析の基準となる軸であって、x軸を選択してx軸を光軸とする。
【0044】
一般的に、y/=4p(x−p)の形態を有する2次関数の放物鏡は、(p,0)に焦点が位置し、x軸に対して対称である。この場合、x軸を光軸として光が光軸(x軸)に平行に入射すれば、2次関数の放物鏡で反射されて焦点(p,0)を通過し、焦点(p,0)を通過した光は、2次関数の放物鏡で反射されて光軸(x軸)と平行に進める。これは、2次関数の放物鏡の反射特性に起因したものである。
【0045】
図1において、このような特性を利用して、焦点距離がそれぞれp,q(p>q)である異なる2つの2次放物鏡M1,M2を焦点Fと光軸(x軸)とを共有させて対向するように配置し、光軸(x軸)に平面鏡M3を配置し、光軸(x軸)の一端部に光検出器Dを配置すれば、位置Aの光源Sから焦点Fに向かって放出された光は、平面鏡の焦点Fで反射されてB→A→F→B→A…→Dの経路を有する。このとき、p>qの条件を満足しなければならず、もしp=qであれば、光は、光検出器Dに収斂せずに無限循環する。また、光が収斂するためには、光源Sは、焦点距離がp(p>q)である放物鏡M1に位置しなければならず、このとき、光源Sが放物鏡M1上の任意の点に位置しても、光は光軸(x軸)に収斂する。
【0046】
このような光の進行において、A=(α,β),A=(α,β),B=(α’,β’),B=(α’,β’)とすれば、<数1>、<数2>及びβ’=βの条件からA及びBは次のように表現される。
【0047】
【数3】

【0048】
<数3>から、n→∞であれば、α→p,α’→−q,β=β’→Oであるので、光は、光空洞の内部で循環回数が増加するほど、光軸に収斂するということが分かる。すなわち、循環した光は、光軸に位置した光検出器Dに検出されることが分かる。
【0049】
光軸に光検出器Dを位置させた場合、光源Sから放出された光は、光空洞の内部を一定な回数循環した後で光検出器Dに検出されるが、もし、光検出器Dの直径(すなわち、y軸に対するサイズ)がpに対してm(m<1)の比率であれば(すなわち、光検出器のサイズ=mp)、光源から放出された光がN回循環した後、(−q,0)に位置した光検出器Dに検出されるとする時、循環回数Nは、<数4>から求められる。
【0050】
<数3>及びB<mpの条件から、光がN回循環した後で光検出器に達する条件に関する<数4>が誘導される。
【0051】
【数4】

【0052】
例えば、p=20mm、q=16mm、光検出器のサイズ=0.2p(m=0.2)=4mm、β=20mmとすれば、<数4>によりN>6.21となるので、光源Sから放出された光は、光空洞の内部で6回循環した後、7回循環で光検出器Dに検出される。
【0053】
一方、光源Sから放出された光が光検出器Dに達するまでの総光路は、n回目の循環長さを求めて、それを一般化して求めることができる。光がn回目循環する場合、n回目の循環長さをLとすれば、図1を参照して<数3>からLが次のように求められる。
【0054】
【数5】

【0055】
したがって、光源Sから放出された光が光空洞を総N回循環して光検出器Dに検出されれば、N回循環に対する総光路の長さLは次の通りである。
【0056】
【数6】

【0057】
例えば、前述した例から、p=20mm、q=16mm、光検出器のサイズ=0.2p(m=0.2)=4mm、β=20mm(α=15)とすれば、<数4>からN=7であるが、7回では循環が完全に行われず、α−αN−1’ほど少なく循環したので、<数6>から総光路は、次のように求められる。
【0058】
【数7】

【0059】
<数7>に上記の条件を代入すれば、光路Lは、約473mmが導出される。
【0060】
一方、本発明のガスセンサーの光空洞は、放物鏡M1と放物鏡M2との焦点距離p,qを調節することによって、光路を調節できる。すなわち、適用先によって必要な光路を<数7>によりp値とq値との比率を調節することによって、光路の長さを調節できる。例えば、二酸化炭素の場合、光吸収度が非常に良好であるので、光路を短く設計でき、また、一酸化炭素のように光吸収度の低いガスの場合、光路を長くp,q値を調節して設計できる。
【0061】
2.拡散特性のある光源を考慮した光空洞の設計
一般的な光源から放出された光は、直線でない拡散特性を有している。すなわち、光源は、点光源でなく、一定な光幅及び拡散を有して放射されるので、本発明で提案する光空洞に適用したとき、図1のような光の進行を見せずに図2のように進める。
【0062】
図2は、光源から広がって放射された光の進行に関する図である。
【0063】
図2のように、焦点Fを原点としたとき、光源Sから放出された光がいずれも焦点Fに集束されるものではなく、光の拡散特性により焦点Fを基準として+x方向及び−x方向の所定区間ほど光が広がる。このとき、+x方向及び−x方向に進める光路は異なり、そのうち一部は光検出器に検出されない。本発明では、このような放射された光を焦点Fに集めるために楕円鏡を利用する。
【0064】
図3は、楕円鏡での光の反射特性に関する図である。
【0065】
図3は、楕円鏡の反射特性を示す。楕円の原理によれば、楕円の1つの焦点に位置した光源から放出された光は、楕円鏡に反射されて他の焦点に収斂する。この楕円鏡を適用した本発明の一実施形態による光空洞の構造が図4に示されている。
【0066】
図4は、楕円鏡が適用された光空洞に関する図である。
【0067】
図4において、光源Sは、楕円鏡Eの1つの焦点fに位置する。また、この楕円鏡Eは、2つの放物鏡M1,M2の共通の焦点Fを他の焦点とする。この場合、楕円Eの1つの焦点fから放射されたあらゆる光は、楕円鏡Eで反射されて放物鏡M1,M2と楕円鏡Eとの共通の焦点Fに収斂し、このように収斂された光は、2次放物鏡M1、M2の反射特性によって光検出器Dに収斂する。
【0068】
3.外れた光路に対する光空洞の特性
図4の場合は、光源Sから放出されつつ広がる光源を楕円鏡Eを利用して焦点Fに集めることによって、光空洞内での光のほとんどを光検出器Dに検出可能に設計したものである。しかし、あらゆる設計で理想的なものはありえないので、たとえ楕円鏡Eを利用して光を焦点Fに集めるように設計したとしても、焦点と外れる光路がありうる。したがって、この場合にも、あらゆる光が光検出器Dに収斂する光路を有するように光空洞を設計する必要がある。
【0069】
図5は、微小に外れて焦点に入射された光の経路に関する図である。
【0070】
図5において、点線で表示された光路は、放出光が外れずに焦点Fに正確に入射される理想的な場合であり、実線で表示された光路は、放出光の全部または一部が焦点Fから外れて入射される場合を示している。
【0071】
図5の場合のように、光源Sから放出された光が焦点Fの付近に達するとき、焦点Fから外れた程度をεとし、ε/p、ε/q、ε/α、ε/β≪1であり、それぞれの自乗を0に近似する。
【0072】
理想的な光路をA→F→B→Aとし、光軸の焦点Fに対してεほど外れた光路をA→F→B’→A’とし、外れた光路でのそれぞれの座標を前述した<数3>を参照して次のように表示する。
【0073】
【数8】

【0074】
<数8>のμ、ν、γ、δは、εと同様にpに比べて非常に小さい値であって、μ/p、ν/p、γ/p、δ/pそれぞれの自乗及び互いの積は、0に近似する。これにより、<数8>から外れた光路からAを導出し、それを一般化しようとする。Aから放出された光は、焦点から外れた点Fで反射されてB’に達する。B’は、放物鏡M2上の点であり、

の勾配は、

と符号が逆であるので、それを利用して、B’は、次の<数9>及び<数10>を利用して導出される。
【0075】
【数9】

【0076】
【数10】

【0077】
<数9>と<数10>とを連立してμ及びνに対して求めれば、次の<数11>及び<数12>が導出される。
【0078】
【数11】

【0079】
【数12】

【0080】
ここで、T=q/p,(0<T<1)と定義する。
【0081】
’の座標は、同様に光の反射法則を利用し、光の進行勾配で三角関数の引き算法則を利用する。すなわち、B’での法線を中心に入射角

と反射角

とが同じであるという条件から

の勾配

は、<数13>のように求めることができる。
【0082】
【数13】

【0083】
’の座標は、<数13>及び反射法則を利用して求めれば、<数14>の通りである。
【0084】
【数14】

【0085】
同様に、Aで反射された光は、光軸で再び合うが、合う座標をF=(ε,0)とすれば、εは、Aでの反射法則及びこれによる三角関数の引き算法則を利用すれば、<数15>で導出される。
【0086】
【数15】

【0087】
<数15>から分かるように、εは、εと符号が同じである。
【0088】
これは、広がった光の経路が光軸の−x軸に達する場合には、以後に光が1回循環した後にも光軸の−x軸に達し、逆に広がった光の経路が光軸の+x軸に達する場合には、1回循環した後にも光軸の+x軸に達することを意味する。すなわち、広がった光は、光軸上の焦点F(0,0)を基準として(+)方向の光と(−)方向の光とに分けられるが、(−)方向の光は、図6に示したように、光軸上の各反射点が焦点Fから(−)方向に発生する光路を有し、(+)方向の光は、図7に示したように、光軸上の各反射点が焦点Fから(+)方向に発生する光路を有する。
【0089】
結局、図6に示したように(−)に外れた光は、光検出器Dに達するが、図7に示したように(+)に外れた光の場合は、光検出器Dに達しない。
【0090】
4.外れた光路の補正
図6及び図7に示すように、焦点Fに外れる入射光は、光軸に対して(+)と(−)とに分けられてそれぞれ異なる方向に光路が形成される。
【0091】
図8は、2つの光検出器を利用した光空洞に関する図である。
【0092】
図8に示したように、(−q,0),(p,0)である点にそれぞれ光検出器D1,D2を位置させれば、光源から放出された光のほとんどを検出できるので、ガスセンサーの効率を極大化することができる。すなわち、光源Sから放出された光のうち、焦点Fを中心に−x光軸に達した光は、実線で表示された光路を有し、左側の光検出器D1に検出される。逆に、焦点Fを中心に+x光軸に達した光は、点線で表示された光路を有し、右側の光検出器D2に検出される。したがって、2つの光検出器を通じて光源から放出されたほとんどの光を検出できるので、光の効率性が極大化される。
【0093】
しかしながら、図8に示した光空洞は、光の効率を極大化させることによって、ガスセンサーの正確度及び精密度を向上させるが、光軸上には換気口を配置できないので、換気口の配置に一定な制限がある。
【0094】
上記したように、あらゆる光が正確に焦点Fに向かうように光源Sから光を放出できない。すなわち、図5のように、楕円鏡Eを利用して放出された光を焦点Fに集めても、実際の場合、完壁に1つの点Fに集めるのは不可能であるので、結果的に、光は、焦点Fを中心に(+),(−)に分けられ、したがって、光検出器Dが光軸上で(−q,0)または(+q,0)のうち1つの点にのみ位置する場合には、光の半分に該当する光損失が発生する。この損失は、光源S及び/または楕円鏡Eを図9のように配置することによって最小化することができる。
【0095】
図9は、楕円鏡の焦点を−x軸に移動させた光空洞に関する図である。
【0096】
図9は、楕円鏡Eの焦点F’が2つの放物鏡M1,M2の共通の焦点Fより−x軸に若干移動した光空洞の構造を示している。
【0097】
図9のように、楕円Eの2つの焦点f,F’のうち1つは、光源Sに位置し、他の1つは、光軸上の放物鏡の共通の焦点Fに対して−x軸にεほど若干移動した点F’に位置する。放物鏡の焦点Fと楕円Eの焦点F’との間隔εは、楕円鏡Eが光をどんなに効果的に集めるかによって変わる。
【0098】
図9において、もし、光源Sから放出されたほとんどの光が平面鏡M3上の焦点Fに対して−x軸に入射されれば、このほとんどの光は、光検出器Dに検出される。すなわち、平面鏡M3上の焦点Fに対して+x軸方向の光軸では光が反射されないので、この部分を換気口として活用できる。これにより、換気口を配置した光空洞の構造は、図10の通りである。
【0099】
図10は、換気口が配置された光空洞に関する図であって、換気口が配置された光空洞の構造及び光空洞の内部での光路を示している。
【0100】
図10は、光路で光が進めない部分を換気口として配置した光空洞を示す。すなわち、光源Sから放出された光は、光軸に位置した光検出器Dが位置した方向に次第に収斂するので、光源Sと楕円鏡Eとに連接した上部平面鏡、すなわち換気口(1)V1を配置できる。また、楕円鏡Eの焦点の位置を放物鏡M1,M2の共通の焦点Fから若干離隔された位置Fに置くことによって、光源から放出された光の反射位置を共通の焦点Fに対して−x方向にのみ限定し、これにより、反射が起きない光軸の+x軸に換気口(2)V2を配置できる。
【0101】
ただし、このような効果は、楕円鏡Eの存在により発生するものではなく、光源Sから放出された光の平面鏡M3上での入射点の位置を共通の焦点Fから若干離隔された位置F’に設定することによって発生するので、楕円鏡Eのない場合にも、光源Sの光放出角が上記条件を満足するように設計されることにより同じ効果が達成される。
【0102】
一方、換気口V1,V2は、図10のように平面鏡上に穿孔された多数の換気穴で形成されることもあるが、これと異なり、平面鏡の一部領域が切開された構造で形成されることもあり、測定対象であるガスを流出入する機能を有する以上、換気口の形態には大きい制限がない。また、換気口V1,V2には、換気時に異質物、ホコリなどのフィルタリングのためのフィルタ(図示せず)が付着される。
【0103】
換気口(1)V1及び換気口(2)V2は、光が経るか、または反射されない領域であるため、換気口による光損失は発生しない。また、換気口を最大限大きくすることによって、測定しようとするガスの流出入を効果的に行うことによってガスセンサーの応答時間を短縮させることができる。すなわち、換気口の位置設定で重要なものは、換気口(1,2)V1,V2の具体的位置でなく、光反射が起きない光空洞の内部領域に換気口を設置するというものである。したがって、換気口が、光反射が起きない光空洞の上面及び下面に設置されてもよい。
【0104】
以上、本発明の望ましい実施形態によって本発明を説明したが、本発明の権利範囲は、上記実施形態や添付された図面により限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の権利範囲を逸脱しない範囲で多様な変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
非分散赤外線方式のガスセンサーは、室内空気質の制御、自動車排気ガスの測定などを含めて空気調和分野に広く利用されている。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明による光空洞の原理に関する構造図である。
【図2】光源から広がって放射された光の進行に関する図である。
【図3】楕円鏡での光の反射特性に関する図である。
【図4】楕円鏡が適用された光空洞に関する図である。
【図5】微小に外れて焦点に入射された光の経路に関する図である。
【図6】焦点に対して−方向に外れて入射された光の経路に関する図である。
【図7】焦点に対して+方向に外れて入射された光の経路に関する図である。
【図8】2つの光検出器を利用した光空洞に関する図である。
【図9】楕円鏡の焦点を−x軸に移動させた光空洞に関する図である。
【図10】換気口が配置された光空洞に関する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサーのための光空洞において、
第1焦点距離を有する第1放物鏡と、
前記第1焦点距離より長い第2焦点距離を有し、前記第1放物鏡と対向するように配置される第2放物鏡と、
前記第1放物鏡の一端部と前記第2放物鏡の一端部との間に配置される平面鏡と、を備え、
前記第1放物鏡と前記第2放物鏡とは、同じ光軸及び同じ焦点を有し、
前記平面鏡は、前記光軸上に配置され、前記同じ焦点は、前記平面鏡上に形成されることを特徴とするガスセンサーのための光空洞。
【請求項2】
前記光軸上に置かれた平面鏡に光を入射させるために、前記第2放物鏡側に配置される光源と、
前記光空洞の内部で前記第1放物鏡、第2放物鏡及び平面鏡に順次に少なくとも1回以上反射された光を検出するために、前記第1放物鏡と前記平面鏡との連結部に配置される光検出器と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項3】
前記光源からの光が前記焦点と前記光検出器との間の前記平面鏡部分に入射されるように、前記光源の光放出角が設定されることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項4】
前記光源の光放出角の設定によって前記光の入射点の位置が前記焦点と前記光検出器との間で調節されて、前記光空洞内での光路の長さが調節されることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項5】
前記光の反射が起きない前記光空洞の領域に形成される換気口をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項6】
前記換気口は、前記第1放物鏡の他端部と前記第2放物鏡の他端部との間に形成されることを特徴とする請求項5に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項7】
前記換気口は、前記焦点と前記第2放物鏡の前記一端部との間に形成されることを特徴とする請求項5に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項8】
ガスセンサーのための光空洞において、
前記光空洞は、上面、下面及び時計回り方向に第1,2,3,4側面を含み、第1焦点距離を有する第1放物鏡が前記第1側面を形成し、
前記第1焦点距離より長い第2焦点距離を有し、前記第1放物鏡と対向するように配置される第2放物鏡が前記第3側面を形成し、
前記第1放物鏡の下端部と前記第2放物鏡の下端部との間に連接して配置される第1平面鏡が前記第4側面を形成し、
前記第1放物鏡の上端部に連接して配置される第2平面鏡、及び前記第2平面鏡と前記第2放物鏡の上端部との間に連接して配置される楕円鏡が前記第2側面を形成することを特徴とするガスセンサーのための光空洞。
【請求項9】
前記第1放物鏡と前記第2放物鏡とは、同じ光軸及び同じ焦点を有し、
前記第1平面鏡は、前記光軸上に配置され、前記同じ焦点は、前記第1平面鏡上に形成されることを特徴とする請求項8に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項10】
前記光軸上に置かれた前記平面鏡に光を入射させるために、前記第2放物鏡側に配置される光源と、
前記光空洞の内部で前記第1放物鏡、第2放物鏡及び平面鏡に順次に少なくとも1回以上反射された光を検出するために、前記第1放物鏡と前記平面鏡との連結部に配置される光検出器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項11】
前記第1放物鏡、第2放物鏡及び前記第1平面鏡の配置は、前記光空洞内の光路が収斂系を構成するようになされ、
前記光検出器は、前記収斂系の光収斂点に配置されることを特徴とする請求項9に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項12】
前記楕円鏡の焦点は、前記同じ焦点の近辺に形成されることを特徴とする請求項9ないし11のうちいずれか一項に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項13】
前記光空洞内で前記光の反射が起きない位置にガス換気口が形成されることを特徴とする請求項9ないし11のうちいずれか一項に記載のガスセンサーのための光空洞。
【請求項14】
前記光空洞の上面または下面に前記ガス換気口が形成されることを特徴とする請求項13に記載のガスセンサーのための光空洞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−544247(P2008−544247A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516758(P2008−516758)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002315
【国際公開番号】WO2006/135212
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507409036)イーエルティー インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ELT INC.
【住所又は居所原語表記】A−601,Woorim Lions Valley, 371−28,Gasan−dong,Geumchon−gu,Seoul 153−786,KOREA
【Fターム(参考)】