説明

ガスセンサ及びガスセンサを有する排気系構造

【課題】
ガスセンサに関し、保護カバー内部への水の浸入を防止すると共に、コストの増大を抑制しながら、ガスを積極的に保護カバー内部に導入することができるようにする。
【解決手段】
エンジン1のガス通路2に取り付けられ、保護カバー24の内部に検出素子23が収容されたガスセンサ22において、保護カバー24は、検出素子23を取り囲むカバー本体25と、カバー本体25に形成されたガス通路2内のガスを該カバー本体25の内部に導入する穴部26,27と、カバー本体25の内側に突出した、穴部26,27から導入されたガスを検出素子23の周りに誘導する突起部28,29とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ及びガスセンサを用いる排気系構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの燃焼室から排気通路に排出された排気ガスの酸素濃度(いわゆる空燃比)をガスセンサ(例えば、リニア空燃比センサ(Linear A/F Sensor)やラムダセンサ)によって検出する技術が知られている。また、一般的に、ガスセンサには検出素子を保護するための保護カバーが設けられている。なお、このような技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−191096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、同文献の図2に示されるように、内側保護カバー21および外側保護カバー22に孔23が形成されており、内側保護カバー21の内部には、ガス中の酸素濃度を検出する検出素子20が収容されている。
しかしながら、孔23が過度に大きいと、ガスに含まれる水分が凝縮することで生成された凝縮水の水滴が内側保護カバー21および外側保護カバー22に形成された孔23を通過し、検出素子20に付着(被水)してしまう。そして、検出素子20は、ヒータによって熱せられたり、或いは、高温のガス中にさらされたりしているため、凝縮水が検出素子20に付着すると、熱衝撃を受けた検出素子20にクラックや割れが生じるおそれがある。
【0005】
他方、孔23が過度に小さいと、内側保護カバー21の内部へのガス導入量が減少することとなる。このため、特許文献1の技術では、同文献の図2に示すように、孔23を小さくしたうえで、内側保護カバー21内部を減圧してガスを積極的に内側保護カバー21内部に導入するための連通路15を設けている。
しかしながら、連通路15を有する特許文献1の技術では、ガスセンサおよび排気系の構造が大型化すると共にコストが高くなってしまう。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、保護カバー内部の検出素子が被水する事態を防止すると共に、サイズやコストの増大を抑制しながら、ガスを積極的に保護カバー内部に導入させることができるようにした、ガスセンサ及びガスセンサを有する排気系構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のガスセンサ(請求項1)は、エンジンのガス通路に取り付けられ、保護カバーの内部に検出素子が収容されたガスセンサにおいて、該保護カバーは、該検出素子を取り囲むカバー本体と、該カバー本体に形成された、該ガス通路内のガスを該カバー本体の内部に導入する穴部と、該カバー本体の内側に突出した、該穴部から導入されたガスを該検出素子の周りに誘導する突起部とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のガスセンサ(請求項2)は、該カバー本体は、筒状に形成されており、該穴部として、該カバー本体の軸方向の一方の端部寄りに形成された第1穴部、及び、他方の端部寄りに形成された第2穴部を有し、該突起部として、該第1穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第1突起部、及び、該第2穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第2突起部を有し、該第1突起部と該第2突起部とは、該カバー本体の内部に導入されたガスを該検出素子の周方向の互いに逆方向に誘導するよう構成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のガスセンサ(請求項3)は、該カバー本体は、筒状に形成されており、該穴部として、該カバー本体の一方の周面に形成された第1穴部、及び、他方の周面に形成された第2穴部を有し、該突起部として、該第1穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第1突起部、及び、該第2穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第2突起部を有し、該第1突起部と該第2突起部とは、該カバー本体の内部に導入されたガスを該検出素子の周方向の互いに逆方向に誘導するよう構成されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の排気系構造(請求項4)は、該エンジンの排気ガスが流通するガス通路を備える排気系構造において、請求項1〜3のいずれか1項に記載の該ガスセンサと、該ガス通路内をA通路とB通路とに仕切る仕切板とを備え、該仕切板は、該排気ガスの流通方向に沿って、該ガス通路の上流側から該ガスセンサの該保護カバーの近傍まで延びていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の排気系構造(請求項5)は、該仕切板の該下流端部は、該A通路側に曲がって形成された一方の半部と、該B通路側に曲がって形成された他方の半部とを備えていることを特徴としている。
また、本発明の排気系構造(請求項6)は、該エンジンは、AシリンダおよびBシリンダを有する自動車用の多気筒エンジンであり、該ガス通路は、該エンジンの排気通路であり、該A通路は、排気通路のうち該Aシリンダに接続された通路であり、該B通路は、排気通路のうち該Bシリンダに接続された通路であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスセンサ(請求項1)によれば、保護カバー内部の検出素子が被水する事態を防止すると共に、サイズやコストの増大を抑制しながら、ガスを積極的に保護カバー内部に導入することができる。
また、本発明のガスセンサ(請求項2)によれば、第1突起部と第2突起部とは、カバー本体の内部に導入されたガスを検出素子の周方向の互いに逆方向に誘導するよう構成されているため、ガスをより積極的に保護カバー内部に導入することができると共に、ガスセンサの取り付け性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明のガスセンサ(請求項3)によれば、第1突起部と第2突起部とにより、カバー本体の内部に導入されたガスを、カバー本体の外部に沿って流れるガスの流通方向と同一方向に検出素子の周りに誘導するよう構成されているため、ガスをより積極的に保護カバー内部に導入することができる。
また、本発明の排気系構造(請求項4)によれば、A通路とB通路とを流れる各々のガスを積極的に保護カバー内部に導入することができ、ガスセンサによる計測精度を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の排気系構造(請求項5)によれば、A通路側に曲がって形成された一方の半部と、B通路側に曲がって形成された他方の半部とを備えているため、A通路とB通路とから流れる各々のガスを保護カバーを取り囲むように分流させることができる。そのため、より積極的に保護カバー内部に導入することができると共に、ガスセンサの計測精度をより向上させることができる。
【0015】
また、本発明の排気系構造(請求項6)によれば、自動車における各シリンダから排出される排気ガスを、より積極的に保護カバー内部に導入することができ、ガスセンサによる計測精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態におけるガスセンサ及びガスセンサを有する排気系構造の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるガスセンサ及びガスセンサを有する排気系構造の主要部の構成を示す模式図であって、(A)は上面、(B)は側面を示す。なお、(A)は(B)のg−g断面であり、(B)は(A)のf−f断面である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるガスセンサ及び仕切板の端部を示す、図2(B)中符号eで示す部分の拡大模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるガスセンサの第1突起部および第2突起部を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるガスセンサおよびガスセンサ周辺のA排気ガスGAの流れを示す模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるガスセンサおよびガスセンサ周辺のB排気ガスGBの流れを示す模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるガスセンサおよびガスセンサ周辺のA排気ガスGAの流れを示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるガスセンサおよびガスセンサ周辺のB排気ガスGBの流れを示す模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態におけるガスセンサの第1突起部および第2突起部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、図面により、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、自動車に搭載された4気筒のエンジン1は、シリンダブロック17とシリンダヘッド18とを主に有して構成されている。
シリンダブロック17には、第1シリンダ,第2シリンダ,第3シリンダ,第4シリンダ(いずれも図示略)が形成されている。
【0018】
シリンダヘッド18には、第1シリンダに臨んで第1吸気ポート(図示略)及び第1排気ポート13が,第2シリンダに臨んで第2吸気ポート(図示略)及び第2排気ポート14が,第3シリンダに臨んで第3吸気ポート(図示略)及び第3排気ポート15が,第4シリンダに臨んで第4吸気ポート(図示略)及び第4排気ポート16が形成されている。これら各吸気ポート及び各排気ポート13,14,15,16は、それぞれ吸気バルブ(図示略)又は排気バルブ(図示略)で開閉されるようになっている。
【0019】
また、エンジン1には排気マニホールド2(ガス通路,排気通路)が接続されている。図1に示すように、排気マニホールド2には、第1排気ポート13に接続された第1排気枝管6,第2排気ポート14に接続された第2排気枝管7,第3排気ポート15に接続された第3排気枝管8,第4排気ポート16に接続された第4排気枝管9が形成されている。
【0020】
したがって、第1排気枝管6内には第1シリンダから排出された第1排気ガスGex1が流通し、第2排気枝管7内には第2シリンダから排出された第2排気ガスGex2が流通し、第3排気枝管8内には第3シリンダから排出された第3排気ガスGex3が流通し、第4排気枝管9内には第4シリンダから排出された第4排気ガスGex4が流通するようになっている。
【0021】
また、排気マニホールド2においては、第1排気枝管6と第4排気枝管9との集合管であるA集合管10(A通路)と、第2排気枝管7と第3排気枝管8との集合管であるB集合管11(B通路)とが形成されている。
ところで、このエンジン1の燃焼行程は、第1シリンダ,第3シリンダ,第4シリンダ,第2シリンダという順番で実行されるようになっている。
【0022】
このため、A集合管10内を第1排気ガスGex1が流通し、その後、B集合管11内を第3排気ガスGex3が流通し、その後、A集合管10内を第4排気ガスGex4が流通し、B集合管10内を第2排気ガスGex2が流通するようになっている。なお、このようなA集合管10内を流通する第1排気ガスGex1や第4排気ガスGex4をA排気ガスGA、B集合管11内を流通する第2排気ガスGex2や第3排気ガスGex3をB排気ガスGBという。
【0023】
図2および図3に示すように、排気マニホールド2内の一部をA集合管10とB集合管11とに仕切ることで、A排気ガスGAとB排気ガスGBとが混合しないようにしている仕切板19には、その一部が切欠かれた切欠部20が形成されている。この切欠部20にはリニア空燃比センサ(ガスセンサ,Linear A/F Sensor,以下「LAFS」という)22が配置されている。具体的には、LAFS22は、排気マニホールド2におけるA排気ガスGAおよびB排気ガスGBの流通方向に対して垂直に挿入されている。そして、LAFS22は、排気マニホールド2のボス3に形成された雌ネジ部4と、LAFS22に形成された雄ネジ部5とが螺合することで固定されている。
【0024】
このLAFS22は、排気ガス中の酸素濃度を検出する検出素子23と、検出素子23を保護するための保護カバー24とを有している。そして、LAFS22による検出のタイミングを、各シリンダの行程のタイミングに合わせて調整することで、各シリンダから排出される第1〜第4排気ガスGex1〜Gex4の空燃比をそれぞれ検出することにより、良好なエンジン制御を実施するようになっている。
【0025】
また、検出素子23は、筒状に形成された保護カバー24の内部に収容されている。
また、図3に示すように、保護カバー24は、検出素子23を取り囲むカバー本体25と、カバー本体25に形成された複数の第1穴部26(穴部、第1穴部),複数の第1突起部28(突起部,第1突起部),複数の第2穴部27(穴部,第2穴部)及び複数の第2突起部29(突起部,第2突起部)とを有している。この第1穴部26及び第2穴部27は、穴の形状が互いに対称になるように形成されている。
【0026】
具体的には、第1穴部26は、筒状に形成されたカバー本体25の軸方向の一方の端部寄りに設けられた上半部25aに形成されており、第2穴部27は、カバー本体25の軸方向の他方の端部寄りに設けられた下半部25bに形成されている。また、第1穴部26及び第2穴部27はいずれも略二等辺三角形の穴であり、第1穴部26の一辺26a(第1穴部の縁)および第2穴部27の一辺27a(第2穴部の縁)は、この略二等辺三角形の穴の底辺にあたる。また、第1穴部26の一辺26aおよび第2穴部27の一辺27aは、A排気ガスGAおよびB排気ガスGBの流れに対して直交方向に延在するように形成されている。そして、第1穴部26の頂角と第2穴部27の頂角とは、互いに逆向きに形成されている。
【0027】
また、複数の第1突起部28および複数の第2突起部29は、突起の形状が互いに対称になるようにされている。
具体的には、第1突起部28および第2突起部29はいずれも略二等辺三角形の突起物である。第1突起部28は、上半部25aにおいて第1穴部26の一辺26aから検出素子23側に向かって突出している。また、第2突起部29は、下半部25bにおいて第2穴部27の一辺27aから検出素子23側に向かって突出している。即ち、第1突起部28と第2突起部29とは、カバー本体25の周方向に対して、各々逆方向へ突出するように形成されている。
【0028】
また、図4に示すように、第1突起部28は、基部33と端部34とを有している。そして、第1突起部28は、第1穴部26の一辺26aから連続するように形成されている。なお、第1突起部28のうち、第1穴部26の一辺26aと接している部分を基部33という。また、第1突起部28の端部34は、カバー本体25から所定距離h離間して形成されている。
【0029】
また、第2突起部29は、基部35と端部36とを有している。そして、第2突起部29は、第2穴部27の一辺27aから連続するように形成されている。なお、第2突起部29のうち、第2穴部27の一辺27aと接している部分を基部35という。また、第2突起部29の端部36は、カバー本体25から所定距離h離間して形成されている。
ここで、第1突起部28及び第2突起部29と、仕切板19に形成された切欠部20との位置関係について、以下説明する。
【0030】
図3に示すように、仕切板19のLAFS22側の端部21(下流端部)は、B集合管11側に曲がって形成された上端部30(一方の半部)と、A集合管10側に曲がって形成された下端部31(他方の半部)とに分割されている。これら上端部30及び下端部31は、保護カバー24の上流側(A排気ガスGAおよびB排気ガスGBの流れに対する上流側)に近接して配置されている。
【0031】
そして、図2(B)に示す側面視において、上端部30は、上半部25aと概ね同じ高さ(上下方向同位置)に配置され、下端部31は、下半部25bと概ね同じ高さ(上下方向同位置)に配置されている。
なお、仕切板19のうち上端部30と下端部31とに分割される屈曲部分を基部32という。そして、図2(A)に示すように、A排気ガスGAおよびB排気ガスGBを均等に保護カバー24内に取り込むべく、仕切板19の基部32は、保護カバー24の上面視中心軸C1の延長線上に位置するようになっている。
【0032】
本発明の第1実施形態にかかるガスセンサ及びガスセンサを有する排気系構造は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果を奏する。
図5に示すように、LAFS22の上流側のA集合管10には、A排気ガスGAの主流が図中矢印FAに示すように流れる。そして、A排気ガスGAの主流FAの一部が、B集合管11側に曲がって形成された上端部30に一次分岐流FA1としてガイドされ、B集合管11側に流れこむ。さらに、一次分岐流FA1から分岐した二次分岐流FA2が、B集合管11側からA集合管10側に向かって、保護カバー24の下流の仕切板19と保護カバー24との間の隙間S1に流れこむ。
【0033】
本実施形態では、カバー本体25の上半部25aの全周面に設けられた複数の第1突起部28の突出方向を、カバー本体25を取り囲むようにして流れるA排気ガスGAの一次分岐流FA1および二次分岐流FA2の流れに対して同一方向としているため、図5中の各点線矢印で示すように、第1突起部28が、A排気ガスGAを保護カバー24の内部に導入するガイドの役割を果たす。よって、A排気ガスGAを保護カバー24内部へ積極的に導入することができる。
【0034】
同様に、図6に示すように、LAFS22の上流側のB集合管11には、B排気ガスGBの主流が図中矢印FBに示すように流れる。そして、B排気ガスGBの主流FBの一部が、A集合管10側に曲がって形成された下端部31に一次分岐流FB1としてガイドされ、A集合管10側に流れこむ。さらに、一次分岐流FB1から分岐した二次分岐流FB2が、A集合管10側からB集合管11側に向かって、保護カバー24の下流の仕切板19と保護カバー24との間の隙間S2に流れこむ。
【0035】
本実施形態では、カバー本体25の下半部25bの全周面に設けられた複数の第2突起部29の突出方向を、カバー本体25を取り囲むようにして流れるB排気ガスGBの一次分岐流FB1および二次分岐流FB2の流れに対して同一方向としているため、図6中の各点線矢印で示すように、第2突起部29が、B排気ガスGBを保護カバー24の内部に導入するガイドの役割を果たす。よって、B排気ガスGBを保護カバー24内部へ積極的に導入することができる。
【0036】
また、仕切板の基部32は、保護カバー24の上面視中心軸C1の延長線上に位置するようになっているため、A集合管10内を流れるA排気ガスGA及びB集合管11内を流れるB排気ガスGBの両ガスを均等にLAFS22の保護カバー24に当てることができる。
また、第1突起部28の端部34及び第2突起部29の端部35が、所定距離hだけカバー本体25から離間するように形成している(図4参照)。そのため、A集合管10内及びB集合管11内に存在する水分が水滴となってA排気ガスGA及びB排気ガスGBと共に第1穴部26及び第2穴部27を通過しようとした場合にも、第1突起部28及び第2突起部29により、水滴が保護カバー内部に浸入することを防止できる。これにより、検出素子23にクラックが入ったり、割れたりする事態を防止しながら、排気ガスを検出素子23に当てることができる。
【0037】
また、カバー本体25の上半部25aの全周面において第1突起部28の突出方向は同一に形成されており、カバー本体25の下半部25bの全周面においても第2突起部29の突出方向は同一に形成されているため、保護カバー24は周方向に対して位置決めの必要がない。それゆえ、排気マニホールド2のボス3に形成された雌ネジ部4と、LAFS22に形成された雄ネジ部5とを螺合する際の取り付け性および作業性を向上させることができる。つまり、作業者は、ボス3に対するLAFS22の取り付け角度θ(図5および図6参照)に留意することなく、LAFS22をボス3に螺合させることができるのである。
【0038】
このように、A排気ガスGA又はB排気ガスGBを保護カバー24内部に、より積極的に導入することができる。そのため、別々のタイミングで流れる第1排気ガスGex1、第2排気ガスGex2、第3排気ガスGex3、第4排気ガスGex4の各々の酸素量について、1つのLAFS22によって精度良く検出することができる。その結果、各シリンダごとにLAFS22を設けるよりも、コストを抑制しながら精密なエンジン制御を実施することができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、図7〜9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、保護カバー24における第1穴部26,第1突起部28,第2穴部27および第2突起部29の形成されている位置が第1実施形態と異なるのみであり、その他の構成は前述した第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と重複する部分については説明を省略すると共に、第1実施形態と同一の符号を付して説明する。
【0040】
本実施形態では、図7および図8に示すように、カバー本体25は、中心軸C1に対して、B集合管11側のB半周面25c(一方の周面)およびA集合管10側のA半周面25d(他方の周面)を有する。
また、B半周面25cの位置に、複数の第1穴部26および複数の第1突起部28が形成されており、A半周面25dの位置に、複数の第2穴部および複数の第2突起部29が形成されている。
【0041】
第1穴部26の頂角と第2穴部27の頂角とは、筒状に形成されたカバー本体25の周方向に対して各々逆方向になるように形成されている。また、複数の第1穴部26及び複数の第2穴部27は、カバー本体25のB半周面25c,A半周面25dの位置全体に設けられている。
同様に、第1突起部28と第2突起部29とは、筒状に形成されたカバー本体25の周方向に対して、各々逆方向へ突出するように形成されている。また、複数の第1突起部28及び複数の第2突起部29は、カバー本体25のB半周面25c,A半周面25dの位置全体に設けられている。つまり、第1突起部28および第2突起部29を、カバー本体25の上下方向(上半部25a,下半部25b)で別々に配置している第1実施形態と異なり(図4参照)、本実施形態では、カバー本体25の円周方向(B半周面25c,A半周面25d)で別々に配置している(図8参照)。
【0042】
本発明の第2実施形態にかかるガスセンサ及びガスセンサを有する排気系構造は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果を奏する。
図7に示すように、LAFS22の上流側のA集合管10には、A排気ガスGAの主流が図中矢印FAに示すように流れる。そして、A排気ガスGAの主流FAの一部が、B集合管11側に曲がって形成された上端部30に一次分岐流FA3としてガイドされ、B集合管11側に流れこむ。そのため、一次分岐流FA3が分岐後のA排気ガスGAの主流FA(FA4)と、一次分岐流FA3とが保護カバー24の外周を取り囲むように流れる。
【0043】
本実施形態では、カバー本体25のB半周面25cに設けられた複数の第1突起部28の突出方向を、一次分岐流FA3の流れに対して同一方向としているため、図7中のB半周面25c側の各点線矢印(第1突起部28に隣接する各点線矢印)で示すように、第1突起部28が、A排気ガスGAを保護カバー24の内部に導入するガイドの役割を果たす。同様に、カバー本体25のA半周面25dに設けられた複数の第2突起部29の突出方向を、主流FA(FA4)の流れに対して同一方向としているため、図7中のA半周面25d側の各点線矢印(第2突起部29に隣接する各点線矢印)で示すように、第2突起部29が、A排気ガスGAを保護カバー24の内部に導入するガイドの役割を果たす。よって、B半周面25cにおいても、A半周面25dにおいても、A排気ガスGAを保護カバー24内部へ積極的に導入することができる。
【0044】
また、図8に示すように、LAFS22の上流側のB集合管10には、B排気ガスGBの主流が図中矢印FBに示すように流れる。そして、B排気ガスGBの主流FBの一部が、A集合管10側に曲がって形成された下端部31に一次分岐流FB3としてガイドされ、A集合管10側に流れこむ。そのため、一次分岐流FB3が分岐後のB排気ガスGBの主流FB(FB4)と、一次分岐流FB3とが保護カバー24を取り囲むように流れる。
【0045】
本実施形態では、カバー本体25のB半周面25cに設けられた複数の第1突起部28の突出方向を、一次分岐流FB3の流れに対して同一方向としているため、図8中のB半周面25c側の各点線矢印(第1突起部28に隣接する各点線矢印)で示すように、第1突起部28が、B排気ガスGBを保護カバー24の内部に導入するガイドの役割を果たす。同様に、カバー本体25のA半周面25dに設けられた複数の第2突起部29の突出方向を、主流FB(FB4)の流れに対して同一方向としているため、図8中のA半周面25d側の各点線矢印(第2突起部29に隣接する各点線矢印)で示すように、第2突起部29が、B排気ガスGBを保護カバー24の内部に導入するガイドの役割を果たす。よって、B半周面25cにおいても、A半周面25dにおいても、B排気ガスGBを保護カバー24内部へ積極的に導入することができる。
【0046】
また、仕切板の基部32は、保護カバー24の上面視中心軸C1の延長線上に位置するようになっているため、A集合管10内を流れるA排気ガスGA及びB集合管11内を流れるB排気ガスGBの両ガスを均等にLAFS22の保護カバー24内に導入することができる。
また、第1突起部28の端部34及び第2突起部29の端部35が、所定距離hだけカバー本体25から離間するように形成している(図9参照)。そのため、A集合管10内及びB集合管11内に存在する水分が水滴となってA排気ガスGA及びB排気ガスGBと共に第1穴部26及び第2穴部27を通過しようとした場合にも、第1突起部28及び第2突起部29により、水滴が保護カバー内部に浸入することを防止できる。これにより、検出素子23にクラックが入ったり、割れたりする事態を防止しながら、排気ガスを検出素子23に当てることができる。
【0047】
このように、A排気ガスGA又はB排気ガスGBを保護カバー24内部に、より積極的に導入することができる。そのため、別々のタイミングで流れる第1排気ガスGex1、第2排気ガスGex2、第3排気ガスGex3、第4排気ガスGex4の各々の酸素量について、1つのLAFS22によって精度良く検出することができる。その結果、各シリンダごとにLAFS22を設けるよりも、コストを抑制しながら精密なエンジン制御を実施することができる。
【0048】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上述の実施形態においてはエンジン1が4気筒である場合を説明したが、このような場合に限定するものではない。例えば、エンジン1が2気筒或いは3気筒であっても良いし、5気筒以上であっても良い。
【0049】
また、上述の実施形態においては、図2に示すように、仕切板19の切欠部20に、LAFS22が配置されているが、LAFS22の下流側は仕切板19を設けなくてもよい。
また、上述の実施形態においては、第1穴部26及び第2穴部27は三角形として説明したが、このような形状に限定するものではない。例えば、円形であっても良いし、三角形以外の多角形であってもよい。
【0050】
また、上述の実施形態においては、第1突起部28及び第2突起部29も三角形として説明したが、このような形状に限定するものではない。例えば、円形であっても良いし、三角形以外の多角形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジン
2 排気マニホールド(ガス通路,排気通路)
10 A集合管(A通路)
11 B集合管(B通路)
19 仕切板
21 仕切板の端部(下流端部)
22 LAFS(ガスセンサ)
23 検出素子
24 保護カバー
25 カバー本体
25a 上半部
25b 下半部
25c 半周面(一方の周面)
25d 半周面(他方の周面)
26 第1穴部(穴部,第1穴部)
26a 第1穴部の一辺(第1穴部の縁)
27 第2穴部(穴部,第2穴部)
27a 第2穴部の一辺(第2穴部の縁)
28 第1突起部(突起部,第1突起部)
29 第2突起部(突起部,第2突起部)
30 上端部(一方の半部)
31 下端部(他方の半部)
ex1 第1排気ガス
ex2 第2排気ガス
ex3 第3排気ガス
ex4 第4排気ガス
A A排気ガス
B B排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのガス通路に取り付けられ、保護カバーの内部に検出素子が収容されたガスセンサにおいて、
該保護カバーは、
該検出素子を取り囲むカバー本体と、
該カバー本体に形成された、該ガス通路内のガスを該カバー本体の内部に導入する穴部と、
該カバー本体の内側に突出した、該穴部から導入されたガスを該検出素子の周りに誘導する突起部とを備える
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
該カバー本体は、筒状に形成されており、
該穴部として、該カバー本体の軸方向の一方の端部寄りに形成された第1穴部、及び、他方の端部寄りに形成された第2穴部を有し、
該突起部として、該第1穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第1突起部、及び、該第2穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第2突起部を有し、
該第1突起部と該第2突起部とは、該カバー本体の内部に導入されたガスを該検出素子の周方向の互いに逆方向に誘導するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項3】
該カバー本体は、筒状に形成されており、
該穴部として、該カバー本体の一方の周面に形成された第1穴部、及び、他方の周面に形成された第2穴部を有し、
該突起部として、該第1穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第1突起部、及び、該第2穴部の縁より該検出素子側に向かって突出した第2突起部を有し、
該第1突起部と該第2突起部とは、該カバー本体の内部に導入されたガスを該検出素子の周方向の互いに逆方向に誘導するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項4】
該エンジンの排気ガスが流通するガス通路を備える排気系構造において、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の該ガスセンサと、
該ガス通路内をA通路とB通路とに仕切る仕切板とを備え、
該仕切板は、該排気ガスの流通方向に沿って、該ガス通路の上流側から該ガスセンサの該保護カバーの近傍まで延びている
ことを特徴とする排気系構造。
【請求項5】
該仕切板の該下流端部は、
該A通路側に曲がって形成された一方の半部と、
該B通路側に曲がって形成された他方の半部とを備えている
ことを特徴とする請求項4記載の排気系構造。
【請求項6】
該エンジンは、AシリンダおよびBシリンダを有する自動車用の多気筒エンジンであり、
該ガス通路は、該エンジンの排気通路であり、
該A通路は、排気通路のうち該Aシリンダに接続された通路であり、
該B通路は、排気通路のうち該Bシリンダに接続された通路である
ことを特徴とする請求項4または5に記載の排気系構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−17594(P2011−17594A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161901(P2009−161901)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】