説明

ガスセンサ

【構成】 Si基板の空洞を架橋するように脚により支持された架橋部に、下層の第1層パターンと上層の第2層パターンとから成るヒータパターンを設ける。第1層パターンと第2層パターンとの間に中間絶縁膜が有り、第1層パターンと第2層パターンは、中間絶縁膜が無い部分で、電気的に直列に接続されている。第1層パターンの一端と第2層パターンの一端とが、Si基板上で第1及び第2のパッドに接続されている。
【効果】 ヒータ抵抗を約2倍にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、Si基板を微細加工したガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
Si基板上にアンダーカットエッチングにより架橋部を設け、架橋部にヒータパターンを設けたガスセンサが知られている。ヒータパターンにはPt膜等が用いられるが、3V程度の駆動電圧とするためには、ヒータパターンを長くあるいは細くし、ヒータ抵抗を大きくする必要がある。そこで発明者は、架橋部のサイズを増さずにヒータ抵抗を大きくすることにより、この問題を解決することを検討した。なお特許文献1(JP2008-76260A)は、ガスセンサの配線パターンを2層にすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2008-76260A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、架橋部のサイズを増さずに、ガスセンサのヒータ抵抗を大きくすることにある。
この発明での補助的な課題は、第1のヒータパターンと第2層のヒータパターンとを確実に接続することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のガスセンサは、下地絶縁膜を備えたSi基板の空洞を架橋するように脚により支持された架橋部に、ヒータパターンを設けたガスセンサにおいて、
前記ヒータパターンが下層の第1層パターンと上層の第2層パターンとから成り、第1層パターンと第2層パターンとの間に中間絶縁膜が有り、第1層パターンと第2層パターンは、中間絶縁膜が無い部分で、電気的に直列に接続され、第1層パターンの一端と第2層パターンの一端とが、Si基板上で第1及び第2のパッドに接続されていることを特徴とする。
【0006】
この発明ではヒータパターンを上下2層にすることにより、ヒータ抵抗を約2倍にできる。従ってヒータの駆動電圧を大きくする、あるいはヒータパターンを短くしてより小さな架橋部とすることができる。
【0007】
好ましくは、第2層パターンを覆うように酸化触媒膜が設けられ、前記脚が架橋部当たり4本設けられて、1本の脚で第1層パターンの一端を引き出して第1のパッドへ接続し、他の1本の脚で第2層パターンの一端を引き出して第2のパッドへ接続し、残る2本の脚で、第1層パターンと第2層パターンをSi基板上に引き出し、Si基板上で第1層パターンと第2層パターンとを重ねることにより、電気的に直列に接続されている。このようにすると、Si基板上で大きな面積を用いて、第1層パターンと第2層パターンを接続できるので、中間絶縁膜の端部で第2層パターンが断線する可能性が小さくなる。
【0008】
好ましくは、第1のパッドと第2のパッドはPt-Auの膜からなり、第1層パターンと第2層パターンはPt膜からなり、第1層パターンと第2層パターンとの接続部がPt-Au膜からなる。ヒータパターンをPt膜とする場合、パッドもPt膜で作成するのが自然であるが、パッドへのボンディングを容易にするため、表面をAu膜で被覆することが好ましい。するとパッドはPtとAuが合金化した膜、あるいはPtとAuの2層の膜となり、これらをPt-Au膜と呼ぶ。第1層パターンと第2層パターンとの接続部もパッドと同時にAu膜で被覆すると、接続部はPt-Au膜となり、Au膜で被覆した分だけ、中間絶縁膜の端部で第2層パターンが断線する可能性が小さくなる。

【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例での第1層のヒータパターンを示す平面図
【図2】実施例での第2層のヒータパターンを示す平面図
【図3】第1層と第2層のヒータパターンの接合部を示す断面図
【図4】半導体ガスセンサに関する実施例での電極パターンを示す平面図
【図5】図4のV−V方向断面図
【図6】接触燃焼式ガスセンサに関する実施例での、パッドを用いた第1層と第2層の接合を示す平面図
【図7】図6のVII-VII方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図7に、実施例のガスセンサ2,62を示す。図1〜図5は接触燃焼式と半導体式の双方に対応する実施例を示す。図において、2はガスセンサで、図示しないSi基板上に、酸化タンタル,シリカ,窒化ケイ素などから成る下地絶縁膜4を設け、架橋部6を脚10〜13で下地絶縁膜4に接続する。7は空洞部で、アンダーカットエッチングにより架橋部6と脚10〜13の底面まで延びている。8は架橋部6に設けたホールで、設けなくてもよい。架橋部6は、例えば4本の脚10〜13により、下地絶縁膜4により支持され、下地絶縁膜4,架橋部6,脚10〜13は同一材料から成る。架橋部6と脚10とにヒータの第1層パターン14を設け、例えば基板上でパッド20に接続する。架橋部6は例えば一辺が20〜60μm程度の正方形で、空洞部7により下地絶縁膜4で覆われたSi基板から5〜20μm程度分離されている。
【0012】
図2に示すように、第1層パターン14を被覆する中間絶縁膜16を設け、その材質は、酸化タンタル,シリカ,窒化ケイ素などである。そして中間絶縁膜16上に第2層パターン15を設け、例えば脚12を介してパッド21へ接続する。第1層パターン14の先端部と第2層パターン15の起端部とを重ねた位置で、中間絶縁膜16に孔17を設け、パターン14,15を接合し接合部18とする。第1層パターン14,第2層パターン15は例えばそれぞれPt膜などで構成し、膜厚は例えば100〜1000nm程度とする。下地絶縁膜4、中間絶縁膜16への付着性を増すため、Pt膜と絶縁膜4,16の間にTi膜などを設けても良い。
【0013】
図3に接合部18の周囲を示す。中間絶縁膜16の端部のため、第2層パターン15に段差が生じ、断線の原因となることがある。このため、例えば第2層パターン15をスパッタリングで作成し、段差を乗り越えやすくする。なお実施例では、パターン14,15を共にスパッタリングで作成する。パッド20,21等では、パターン14,15と同様のPt膜を下地膜とし、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング等を容易にするため、膜厚100nm〜1000nm程度のAu膜でパッドを被覆する。接合部18も、パッド20,21等と同時に膜厚100nm〜1000nm程度のAu膜30で被覆し、中間絶縁膜16の端部で断線する可能性を小さくする。Au膜は下地のPt膜と合金化することがあり、特に架橋部6上では加熱のために合金化が進みやすい。
【0014】
図1〜図3のようにして、第2層パターン15と接合部18を作成すると、γ-アルミナ+Ptなどから成り、膜厚100nm〜100μm程度の酸化触媒の膜で架橋部6を被覆し、接触燃焼式ガスセンサとする。なお酸化触媒の膜と第2層パターン15の間に、別の絶縁膜を設けても良い。SnO2などの膜で架橋部6を被覆し半導体ガスセンサとする場合、図4,図5のように、第3層絶縁膜24と電極25,26などを設け、膜厚100nm〜100μm程度の半導体28で被覆する。図4に示すように、酸化タンタル,シリカ,窒化ケイ素などの第3層絶縁膜24で第2層パターン15を被覆し、Ptなどの電極25,26を設け、それらの端部をパッド22,23へと引き出す。そして架橋部6を酸化第2スズ、酸化インジウム、酸化タングステン等の半導体28で被覆する。被覆後の架橋部6を図5に模式的に示す。ここでホール8を設けると、半導体28が架橋部6の裏面側にも回り込むので、雰囲気との接触面積が増す。この結果ガス感度が向上する。なおホール8の作用は、接触燃焼式ガスセンサの場合も同様である。また第2層パターン15の配置によっては、パターン15を電極に兼用し、第3層絶縁膜24を省略し、また電極25,26の一方を省略できる。
【0015】
接触燃焼式ガスセンサの場合、2個のパッドが必要であるが、架橋部6を安定して支持するために4本の脚10〜13を設ける。そこで余った2本の脚を用いて、第1層パターン14と第2層パターン15をSi基板上に引き出すと、基板上の大きなパッドでパターン14,15を接続できる。このような例を図6,図7に示す。62は接触燃焼式ガスセンサで、脚11から第1層パターン14を基板上へ引き出し、脚12から第2層パターン15を引き出す。64は接続用パッドで、パターン14と同時に成膜した下層パターン66と、パターン15と同時に成膜した上層パターン68とからなり、上層パターン68の底面の一部にのみ中間絶縁膜16がある。ここで中間絶縁膜16の端部に凹凸を設け、図6では端部を基板表面に平行な方向に突き出させて、パッド64内での中間絶縁膜16の周長を大きくする。中間絶縁膜16の端部のパッド64内の周長は、パッド64の短辺方向の幅よりも長くする。これによって上層パターン68が中間絶縁膜16の端部で断線する可能性をさらに小さくする。70は第2層パターン15に接続したパッドで、パッド20,70間にヒータ電圧を加える。
【0016】
図7に接続用パッド64の積層構造を示す。下層パターン66上に上層パターン68が重ねられており、間に中間絶縁膜16が有る。図6のようにして中間絶縁膜16の端部の周長を長くし、上層パターン68の断線の可能性を小さくする。また他のパッドと同様にAu膜74で被覆し、上層パターン68の断線の可能性を小さくする。なお他の点では、図1〜図3の実施例と同様である。
【0017】
接触燃焼式ガスセンサの場合、検出片と補償片のように、2個の架橋部が必要である。図6,図7のように、1基板当たり1個の架橋部6を設けても良く、あるいは1つの基板に2個の架橋部を設けても良い。
【0018】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) ヒータ抵抗を約2倍にできる。従って駆動電圧を大きくでき、あるいはヒータパターンを短くして架橋部6を小さくできる。架橋部6を小さくすると、Si基板も小さくできる。例えば膜厚500nm程度で、線幅と線間の間隙が共に3μm程度のPtヒータを、一辺が40μm程度の架橋部6に配線すると、1層の場合、室温での抵抗値が100Ω程度の場合が多いが、2層にすると200Ω程度にできる。
(2) 接続用パッド64を設けることにより、Si基板上の大きな面積を用いてパターン14,15を接続し、第2層パターン15が断線する可能性を小さくできる。
(3) Au膜30,74により、接合部18及び接続用パッド64を被覆することにより、断線の可能性をさらに小さくできる。

【符号の説明】
【0019】
2 ガスセンサ
4 下地絶縁膜
6 架橋部
7 空洞部
8 ホール
10〜13 脚
14 第1層パターン
15 第2層パターン
16 中間絶縁膜
17 孔
18 接合部
20〜23 パッド
24 第3層絶縁膜
25,26 電極
28 半導体
62 接触燃焼式ガスセンサ
64 接続用パッド
66 下層パターン
68 上層パターン
70 パッド
72 Si基板
30,74 Au膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地絶縁膜を備えたSi基板の空洞を架橋するように脚により支持された架橋部に、ヒータパターンを設けたガスセンサにおいて、
前記ヒータパターンが下層の第1層パターンと上層の第2層パターンとから成り、
第1層パターンと第2層パターンとの間に中間絶縁膜が有り、
第1層パターンと第2層パターンは、中間絶縁膜が無い部分で、電気的に直列に接続され、
第1層パターンの一端と第2層パターンの一端とが、Si基板上で第1及び第2のパッドに接続されていることを特徴とする、ガスセンサ。
【請求項2】
第2層パターンを覆うように酸化触媒膜が設けられ、
前記脚が架橋部当たり4本設けられて、1本の脚で第1層パターンの一端を引き出して第1のパッドへ接続し、他の1本の脚で第2層パターンの一端を引き出して第2のパッドへ接続し、残る2本の脚で、第1層パターンと第2層パターンをSi基板上に引き出し、Si基板上で第1層パターンと第2層パターンとを重ねることにより、電気的に直列に接続されていることを特徴とする、請求項1のガスセンサ。
【請求項3】
第1のパッドと第2のパッドはPt-Auの膜からなり、第1層パターンと第2層パターンはPt膜からなり、第1層パターンと第2層パターンとの接続部がPt-Au膜からなることを特徴とする、請求項1のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−149889(P2011−149889A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12854(P2010−12854)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000112439)フィガロ技研株式会社 (58)
【Fターム(参考)】