説明

ガスセンサ

【課題】ガスを効率的に検出できるガスセンサを提供する。
【解決手段】 一態様に係るガスセンサは,1500nm以上,1600nm以下の少なくとも一部を含む第1の波長域の光を掃引発振する第1のレーザ光源と,1000nm以上,1100nm以下の第2の波長域の光を発振する第2のレーザ光源と,前記第1,第2のレーザ光源からの光を混合する混合器と,前記混合された光からの差周波発生により3200nm以上,3400nm以下の第3の波長域の光を生成する波長変換素子と,検査対象ガスが封入され,かつ前記生成された光が通過する内部空間を有する容器と,前記内部空間を通過した光を受光する光検出器と,前記光検出器からの信号に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量を算出する算出器と,を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,近赤外・中赤外領域の光を使用してガスを検出できるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
油入りケーブル(OFケーブル)や油入変圧器に使用されている絶縁油は,熱による酸化劣化や高電圧放電などを原因として,使用中に水素ガスやアセチレンガスなどの可燃性ガスが発生することが知られている。
【0003】
これらの可燃性ガスは容易に絶縁油に溶解する。このため,絶縁油をサンプリングしてその中に含まれるガス成分を計測することによってケーブルや機器における絶縁劣化の診断が可能である。例えば,次のようにして,絶縁油中の可燃性ガス濃度が測定される。OFケーブルや油入変圧器等の機器が設置されている現場から多量の絶縁油を採取する。その採取油を分析可能な別の場所に運び,減圧吸引ポンプによって採取油から含有ガスを抽出し,その抽出ガスをガスクロマトグラフィー装置で分離定量する。
【0004】
しかしながら,この方法では,濃度測定に至るまでの作業が極めて煩雑である上に多量の油を必要とするため,測定に多大な時間と労力を要する。また,個々のガス量が予め定められたしきい値を越えているか否かを人間が判断することにより,油入変圧器の良否を判定していた。
【0005】
他方で1500nm帯のレーザ光を用いて可燃性ガスであるアセチレンガスを検出する方法も存在する(特許文献1,2参照)。しかし,この波長ではアセチレンの吸収強度が弱いため,低濃度での測定時には高度な解析手法が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−94611号公報
【特許文献2】特開2010−256089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように,従来の方法では絶縁劣化診断を行うための濃度測定に多大な時間と極めて煩雑な作業が必要になるという問題点があった。
上記に鑑み,本発明は,ガスを効率的に検出できるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様に係るガスセンサは,1500nm以上,1600nm以下の少なくとも一部を含む第1の波長域の光を掃引発振する第1のレーザ光源と,1000nm以上,1100nm以下の第2の波長域の光を発振する第2のレーザ光源と,前記第1,第2のレーザ光源からの光を混合する混合器と,前記混合された光からの差周波発生により3200nm以上,3400nm以下の第3の波長域の光を生成する波長変換素子と,検査対象ガスが封入され,かつ前記生成された光が通過する内部空間を有する容器と,前記内部空間を通過した光を受光する光検出器と,前記光検出器からの信号に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量を算出する算出器と,を具備する。
【0009】
一態様に係るガスセンサは,3000nm以上,3500nm以下の少なくとも一部を含む第1の波長域の光を掃引発振するレーザ光源と,前記レーザ光源からの光の二次高調波により1500nm以上,1800nm以下の第2の波長域の光を生成し,前記第1の波長域の光と共に出射する波長変換素子と,検査対象ガスが封入され,かつ前記出射された光が通過する内部空間を有する容器と,前記内部空間を通過した光を第1,第2の波長域に光に区分する光区分器と,前記光区分器により区分された第1の波長域の光を受光する第1の光検出器と,前記光区分器により区分された第2の波長域の光を受光する第2の光検出器と,前記第1,第2の光検出器からの信号に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量を算出する算出器と,を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,ガスを効率的に検出できるガスセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係るガスセンサの基本構成を示す図である。
【図2】3ミクロン帯のアセチレンの吸収線強度を示す図である。
【図3】1.5ミクロン帯のアセチレンの吸収線強度を示す図である。
【図4】3ミクロン帯のHOの吸収線強度を示す図である。
【図5】3ミクロン帯のCOの吸収線強度を示す図である。
【図6】3ミクロン帯のCHの吸収線強度を示す図である。
【図7】3ミクロン帯のHFの吸収線強度を示す図である。
【図8】3ミクロン帯のCの吸収線強度を示す図である。
【図9】1.5ミクロン帯のHOの吸収線強度を示す図である。
【図10】1.5ミクロン帯のCOの吸収線強度を示す図である。
【図11】1.5ミクロン帯のCOの吸収線強度を示す図である。
【図12】1.5ミクロン帯のCHの吸収線強度を示す図である。
【図13】光源10aを波長λ1,λ2間で掃引発振したときの波長λと信号Saの強度の関係を表すグラフである。
【図14】第2実施形態に係るガスセンサの基本構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に係るガスセンサの基本構成を示す図である。
【図16】第4実施形態に係るガスセンサの基本構成を示す図である。
【図17】第5実施形態に係るガスセンサの基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下,第1の実施形態について図を参照して説明する。
図1は,第1の実施形態に係る油中ガス測定用センサ装置を表す模式図である。油中ガス測定用センサ装置は,光源10a,10b,光ファイバ13a〜13d,ビームスプリッタ11,反射鏡12,WDM14,波長変換素子15,光フィルタ16,ガスセル17,光検出器18a,18b,算出器19から成る。
【0013】
光源10aは,電源や変調器に接続され,1500nm以上,1600nm以下の少なくとも一部を含む波長域W1の光を掃引発振する。即ち,光源10aは,波長域W1内で,発振波長を掃引(変更)できる。
【0014】
光源10bは,電源や変調器に接続され,1000nm以上,1100nm以下の波長域W2(例えば,1000nm近傍)の光を発振する。なお,光源10bの発振波長は固定で良い。光源10bの一例として,略1,038nmの発光波長のファイバレーザを利用できる。
【0015】
光ファイバ13a〜13dは,光を伝送する伝送路である。光ファイバ13a,13bはそれぞれ,光源10a,10bからの光を伝送する。光ファイバ13cは,WDM14で混合された光源10a,10bからの光を伝送する。光ファイバ13dは,波長変換素子15で生成され,光フィルタ16を通過した後述の波長域W3(例えば,3000nm帯)の光を伝送する。光ファイバ13bを用いず,光源10bから発振した光をWDM14に直接導入しても良い。
【0016】
ビームスプリッタ11は,光源10aからの光を2つの光に分岐(分割)する。このとき,光検出器18a,18bに入射する光の強度が適切な比率になるよう,分割の比率に適宜の値が設定される。
【0017】
反射鏡12は,ビームスプリッタ11からの光を反射し,WDM14に入射させる。なお,反射鏡12を用いずに,ビームスプリッタ11からの光を直接WDM14に導入しても良い。
【0018】
WDM14は,反射鏡12からの反射光と光ファイバ13bからの伝送光を混合する。WDM14は,光源10a,10bそれぞれからの波長域W1,W2の光を入射して出射(合波)するWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重方式)カプラである。複数の光ファイバを多重化してWDMカプラを形成できる。
【0019】
波長変換素子15に,WDM14中で混合された波長域W1,W2の光(例えば,1500nm帯の光と1000nm帯の光)が導入され,波長域W1,W2の光からの差周波発生により,波長域W3の光(例えば,3000nm帯(特に,3200nm以上,3400nm以下)の光)が発生する。
【0020】
この波長変換素子15として,PPLN(周期分極反転ニオブ酸リチウム (periodically-poled lithium niobate) )を利用できる。周期的な分極反転構造を有した非線形光学結晶(PPLN等)を用いることで,大きな非線型光学定数を利用した,高変換効率な波長変換が可能となる。PPLNの分極反転周期を変化させることによって,様々な波長の光を生成できる。
【0021】
式(1)は,波長域W1,W2の光による差周波発生を表す。
=K−K …式(1)
:アイドラ光
:ポンプ光
:シグナル光
本実施形態では,波長域W1,W2の光がそれぞれ,シグナル光,ポンプ光となり,アイドラ光たる波長域W3の光が発生する。
【0022】
波長変換素子15で発生した差周波光は,光フィルタ16に入射される。光フィルタ16は,波長域W3の光を透過し,波長域W1,W2の光を遮断する。光フィルタ16は,例えば,1500nm以下の光を遮断する,Ge(ゲルマニウム)から構成できる。
【0023】
ガスセル17は,検査対象ガスが封入され,かつビームスプリッタ11からの波長域W1の光および光フィルタ16からの波長域W3の光が通過する内部空間を有する容器である。波長域W1,W3の光がそれぞれ,ガスセル17内を通過し,対象ガスとの相互作用により,吸収される。
【0024】
検査対象ガスは,OFケーブルや油入変圧器等の機器の絶縁油から抽出されたガスを利用できる。検査対象ガスには,検出対象たる所定のガスとして,C(アセチレンガス),HO(水蒸気),CO(炭酸ガス),CH(メタンガス),HF(フッ化水素ガス),C(エチレンガス)の少なくともいずれかが含まれる。
【0025】
図2〜図12に,検出対象たる所定のガス(C(アセチレンガス),HO(水蒸気),CO(炭酸ガス),CH(メタンガス),HF(フッ化水素ガス),C(エチレンガス))の吸収線強度を示す。これらの図に示されるように,波長域W1,W3の光を用いることで,これら所定のガスを検出できる。
【0026】
光検出器18a,18bはそれぞれ,波長域W1,W3の光を受光し,信号Sa,Sbを出力する。C(アセチレンガス),HO(水蒸気),CO(炭酸ガス),CH(メタンガス)は,光検出器18a,18b(波長域W1,W3の光)の双方で検出可能である。HF(フッ化水素ガス),C(エチレンガス)は,光検出器18b(波長域W3の光)で検出可能である。
【0027】
算出器19は,光検出器18a,18bからの信号Sa,Sbの一方のみで,検査対象ガス中の所定のガスの量を算出できる。また,算出器19は,光検出器18a,18bからの信号Sa,Sbの双方に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量の算出結果を検証できる。
【0028】
図13は,光源10aを波長λ1,λ2間で掃引発振したときの波長域W1の光の波長λと信号Saの強度の関係を表すグラフGを表す。ここでは,波長λ1,λ2間に波長λpをピークとする吸収ピークP1(所定のガスいずれかの吸収ピーク)が出現するように,光源10aの掃引範囲が設定されている。なお,複数の吸収ピークが含まれるように掃引範囲を設定しても良い。
【0029】
ここで,波長λ1,λ2間を領域A0〜A2に区分できる。領域A0は,吸収ピークP1に対応する波長λpを含み,吸収ピークP1の影響を受ける領域である。領域A1,A2は,吸収ピークP1の影響を事実上受けない領域である。領域A1,A2での信号Saの強度を内挿したグラフG0は,アセチレンガス等の吸収が無いときの信号Saの強度を表すと考えられる。
【0030】
即ち,波長λpでのグラフG0,G1の値P0,P1の比が,吸収ピークP1による吸収を表すと考えられる。
P1/P0=Exp(−α*N*L) ……式(2)
α: 吸収ピークP1の吸収係数
N: 吸収ピークP1に対応するガスの濃度
L: ガスセル17内での光路長
【0031】
以上のように,領域A0でのピーク値P1と,このピーク値P1に対応する波長λpでの,領域A1,A2での内挿値P0に基づいて,ガスの濃度Nを算出できる。即ち,光源10aからの波長域W1の光の波長を掃引し,光検出器18aからの信号Saの波長−強度のグラフGを求めることで,ガスの濃度Nを算出している。
【0032】
光源10aからの波長域W1の光の波長を掃引すると,波長変換素子15から発生する波長域W3の光の波長も変化する。このため,同様に,光検出器18bからの信号Sbの波長−強度のグラフを求めることで,ガスの濃度Nを算出可能である。
【0033】
即ち,光源10aを掃引発振することで,光検出器18a,18bそれぞれで,波長域W1,W3それぞれについて,ガスの濃度N1,N2を算出できる。そして,このガスの濃度N1,N2が対応していれば,算出器19による算出結果が良好であると判定(検証)できる。一方,濃度N1,N2がある程度以上異なると,算出器19による算出が良好でないと判定できる。
【0034】
また,波長域W1,W3それぞれについて,異なるガスを検出することも可能となる。
【0035】
ここで,ガスセル17内に濃度が判った所定のガスを封入し,このガスの吸収波長λpでのグラフG0,G1の値P0,P1の比P1/P0を求めることで,比P1/P0またはその対数とガスセル17中での所定のガスの濃度との関係を表すテーブルTを作成できる。作成されたテーブルTは,算出器19内に記憶させ,所定のガスの濃度の算出に利用できる。
【0036】
以上では,ガスの吸収波長λpでのグラフG0,G1の値P0,P1に基づいて,所定のガスの濃度を算出している。
これに対して,次の式(3)で示される,グラフG0,G1の積分値I0,I1に基づいて,所定のガスの濃度を算出しても良い。
【0037】
I0=∫λ=λ1λ=λ2G0(λ)dλ
I1=∫λ=λ1λ=λ2G1(λ)dλ ……式(3)
【0038】
例えば,ガスセル17内に濃度が判った所定のガスを封入し,例えば,積分値I0,I1の比(I1/I0)を求めることで,比(I1/I0)またはその対数とガスセル17中での所定のガスの濃度との関係を表すテーブルTを作成できる。作成されたテーブルTを算出器19内に記憶させ,所定のガスの濃度の算出に利用できる。
【0039】
(油中ガス測定用センサ装置の動作)
次に,油中ガス測定用センサ装置の動作を説明する。光源10aからのレーザ光が,ビームスプリッタ11によって分割される。分割された一方の光は,光ファイバ13cを介しガスセル17に導入され,ガスセル17内の対象ガスと相互作用する。その後,光のエネルギーの吸収現象が生じ,光はガスセル17を通過し光検出器18aに到達し検出される。
【0040】
もう一方の分割された光は反射鏡12を介し,WDM14に導入される。
光源10bから発振した光は光ファイバ13b中を伝播しWDM14に導入される。波長変換素子15に,WDM14中で混合された波長域W1,W2の光が導入され,差周波発生により波長域W3の光が発生する。
発生した差周波光は,光フィルタ16を通過し,波長域W1,W2の光(1500nm以下の光)を遮断した後に,ガスセル17内を通過し,光検出器18bに到達し検出される。
【0041】
本実施形態に係る油中ガス測定用センサ装置では,波長域W1(1500nm帯)の光と波長域W2(1000nm帯)の光を用いた差周波発生により波長域W3(3000nm帯)の光を生成する。生成された波長域W3の光を利用して吸収分光法を適用することで,変圧器用絶縁油内で発生したアセチレンガス等の所定のガスを検出する。
【0042】
波長域W3(3000nm帯)でのアセチレンの吸収強度は波長域W1(1500nm帯)での吸収強度に対してはるかに強く,高感度な検出が容易になる。また,2つの波長の光を用いる事ができるため,2つの検出結果を検証したり,異なる種類の測定対象を同時に計測したりすることが可能となる。
【0043】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図14を参照して説明する。図14は第2の実施形態に係る油中ガス測定用センサ装置を表す模式図である。この油中ガス測定用センサ装置は光源10a,10b,光ファイバ13a〜13c,WDM14,波長変換素子15,光フィルタ16,ガスセル17,光検出器18,算出器19を有する。
【0044】
光源10a,10bからの波長域W1,W2の光は,光ファイバ13a,13bを介して,WDM14に導入,混合される。なお,光源10a,10bから発振した光は,光ファイバ13a,13bを介さず,WDM14に直接導入しても構わない。
【0045】
波長変換素子15に,WDM14中で混合された波長域W1,W2の光(例えば,1500nm帯の光と1000nm帯の光)が導入され,波長域W1,W2の光からの差周波発生により,波長域W3の光(例えば,3000nm帯(特に,3200nm以上,3400nm以下)の光)が発生する。
【0046】
波長変換素子15で発生した差周波光を含む波長域W1〜W3の光は,光ファイバ13cを介し,光フィルタ16に入射される。なお,光ファイバ13cを省略し,波長変換素子15からの光を光フィルタ16に直接入射しても良い。
【0047】
光フィルタ16によって,波長域W1,W2の光を遮断し,波長域W3の光1をガスセル17に導入する。
光検出器18は,波長域W3の光を受光し,信号Sを出力する。光検出器18によって,ガスセル17での吸光を測定することで,C(アセチレンガス),HO(水蒸気),CO(炭酸ガス),CH(メタンガス),HF(フッ化水素ガス),C(エチレンガス)の検出が可能である。
【0048】
本実施形態では,波長域W3(3000nm帯)の光を用いて,アセチレン等の高感度な検出が容易になる。第1の実施形態と異なり,波長域W1の光は検出に用いられない。
その他の点では,本実施形態は,第1の実施形態と本質的に変わるものでないので,詳細な説明を省略する。
【0049】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図15を参照して説明する。図15は第3の実施形態に係る油中ガス測定用センサ装置を表す模式図である。この油中ガス測定用センサ装置は光源10a,10b,光ファイバ13,WDM14,波長変換素子15,ガスセル17,光検出器18a,18b,プリズム20,算出器19を有する。
【0050】
プリズム20は,ガスセル17と光検出器18a,18bの間に配置され,ガスセル17からの光を分光し,波長域W1,W3の光を光検出器18a,18bに受光させる分光器である。
【0051】
光源10a,10bからの波長域W1,W2の光は,光ファイバ13a,13bを介して,WDM14に導入,混合される。なお,光源10a,10bから発振した光は,光ファイバ13a,13bを介さず,WDM14に直接導入しても構わない。
【0052】
波長変換素子15に,WDM14中で混合された波長域W1,W2の光(例えば,1500nm帯の光と1000nm帯の光)が導入され,波長域W1,W2の光からの差周波発生により,波長域W3の光(例えば,3000nm帯(特に,3200nm以上,3400nm以下)の光)が発生する。
【0053】
本実施形態では,波長変換素子15で発生した差周波光は,光ファイバ13cを介し,ガスセル17に導入される。光フィルタ16を介さないことから,ガスセル17に導入される光は波長域W1〜W3の光を含む。
【0054】
ガスセル17を通過した光は,プリズム20により分光され,各波長域W1〜W3の光に分散される。分散された波長域W1,W3の光(1500nm帯の光,3000nm帯の光)はそれぞれ,光検出器18a,18bに受光される。なお,波長域W2(1000nm帯)の光は,分散によって光検出器18a,18bには導入されない。但し,波長域W2(1000nm帯)の光を除去するフィルタをプリズム20と光検出器18a,18bの間に配置しても良い。
【0055】
本実施形態での算出器19での処理内容は,第1の実施形態と実質的な相違がないため,記載を省略する。
【0056】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について図16を参照して説明する。図16は第4の実施形態に係る油中ガス測定用センサ装置を表す模式図である。この油中ガス測定用センサ装置は,光源10a,10c,WDM14,ガスセル17,プリズム20,光検出器18a,18b,算出器19を有する。
【0057】
光源10cは,電源や変調器に接続され,波長域W4(例えば,3000nm以上,3500nm以下)の少なくとも一部を含む光を掃引発振する。即ち,光源10cは,波長域W4内で,発振波長を掃引(変更)できる。
【0058】
光源10a,10cからの波長域W1,W4の光は,光ファイバ13a,13bを介して,WDM14に導入,混合される。なお,光源10a,10bから発振した光は,光ファイバ13a,13bを介さず,WDM14に直接導入しても構わない。
【0059】
WDM14中で混合された波長域W1,W4の光(1500nm帯の光と3000nm帯の光)は,ガスセル17に導入される。即ち,ガスセル17に導入される光は波長域W1,W4の光を含む。
【0060】
ガスセル17を通過した光は,プリズム20により分光され,各波長帯の光を分散される。分散した波長域W1,W4の光(1500nm帯の光,3000nm帯の光)はそれぞれ,光検出器18a,18bに受光される。
【0061】
本実施形態での算出器19での処理内容は,第1の実施形態と実質的な相違がないため,記載を省略する。
【0062】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について図17を参照して説明する。図17は第5の実施形態に係る油中ガス測定用センサ装置を表す模式図である。この油中ガス測定用センサ装置は,光源10c,光ファイバ13a,13b,波長変換素子15a,ガスセル17,光検出器18a,18b,プリズム20,算出器19を有する。
【0063】
既述のように,光源10cは,電源や変調器に接続され,波長域W4(例えば,3000nm〜3500nm)の少なくとも一部を含む光を掃引発振する。即ち,光源10cは,波長域W4内で,発振波長を掃引(変更)できる。
【0064】
波長変換素子15aに,光源10aから掃引発振された波長域W4のレーザ光が導入され,波長域W4の光からの第二次高調波発生により,波長域W5の光(例えば,1500nm帯(特に,1500nm以上,1800nm以下)の光)が発生する。
【0065】
この波長変換素子15aとして,PPLN(周期分極反転ニオブ酸リチウム (periodically-poled lithium niobate) )を利用できる。
【0066】
式(5)は,波長域W4の光による第二次高調波発生を表す。
=2*K …式(5)
:ポンプ光
:アイドラ光
本実施形態では,波長域W4の光が,ポンプ光となり,アイドラ光たる波長域W5の光が発生する。
【0067】
本実施形態では,波長変換素子15aで発生した第二次高調波は,光ファイバ13bを介し,ガスセル17に導入される。ガスセル17に導入される光は波長域W4,W5の光を含む。
【0068】
ガスセル17を通過した光は,プリズム20により分光され,各波長帯の光を分散される。分散した波長域W5,W4の光(1500nm帯の光,3000nm帯の光)はそれぞれ,光検出器18a,18bに受光される。
【0069】
本実施形態での算出器19での処理内容は,第1の実施形態と実質的な相違がないため,記載を省略する。
【0070】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10a,10b,10c 光源
11 ビームスプリッタ
12 反射鏡
13a〜13d 光ファイバ
14 WDM
15 波長変換素子
15a 波長変換素子
16 光フィルタ
17 ガスセル
18,18a,18b 光検出器
19 算出器
20 プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1500nm以上,1600nm以下の少なくとも一部を含む第1の波長域の光を掃引発振する第1のレーザ光源と,
1000nm以上,1100nm以下の第2の波長域の光を発振する第2のレーザ光源と,
前記第1,第2のレーザ光源からの光を混合する混合器と,
前記混合された光からの差周波発生により3200nm以上,3400nm以下の第3の波長域の光を生成する波長変換素子と,
検査対象ガスが封入され,かつ前記生成された光が通過する内部空間を有する容器と,
前記内部空間を通過した光を受光する光検出器と,
前記光検出器からの信号に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量を算出する算出器と,
を具備することを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記第1のレーザ光源を第1,第2の光に分岐する分岐器をさらに具備し,
前記混合器が,前記第2の光と前記第2のレーザ光源からの光を混合し,
前記容器が,前記検査対象ガスが封入され,かつ前記第1の光が通過する第2の内部空間を有し,
前記第2の内部空間を通過した光を受光する第2の光検出器をさらに具備し,
前記算出器が,前記光検出器および前記第2の光検出器からの信号に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記容器と前記光検出器の間に配置され,前記第1,第3の波長域の光を分光し,前記分光された第1の波長域の光を前記光検出器に受光させる分光器と,
前記分光された第2の波長域の光を受光する第2の光検出器と,をさらに具備し,
前記算出器が,前記光検出器および前記第2の光検出器からの信号に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記容器と前記光検出器の間に配置され,前記第3の波長域の光を透過し,前記第1,第2の波長域の光を遮断するフィルタをさらに具備する,
ことを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項5】
3000nm以上,3500nm以下の少なくとも一部を含む第1の波長域の光を掃引発振するレーザ光源と,
前記レーザ光源からの光の二次高調波により1500nm以上,1800nm以下の第2の波長域の光を生成し,前記第1の波長域の光と共に出射する波長変換素子と,
検査対象ガスが封入され,かつ前記出射された光が通過する内部空間を有する容器と,
前記内部空間を通過した光を第1,第2の波長域に光に区分する光区分器と,
前記光区分器により区分された第1の波長域の光を受光する第1の光検出器と,
前記光区分器により区分された第2の波長域の光を受光する第2の光検出器と,
前記第1,第2の光検出器からの信号に基づき,前記検査対象ガス中の所定のガスの量を算出する算出器と,
を具備することを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
所定のガスが,C(アセチレンガス),HO(水蒸気),CO(炭酸ガス),CH(メタンガス),HF(フッ化水素ガス),C(エチレンガス)の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−15409(P2013−15409A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148458(P2011−148458)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】