説明

ガスタービンの信頼性評価試験方法およびその装置

【課題】過速度防止機能の動作確認試験によるガスタービンへの負担を軽減すること。
【解決手段】負荷遮断試験に過速度防止手段の動作確認試験を組み込むこととした。通常運用時におけるトリップ回転数である第1閾値よりも小さく、かつ、負荷遮断試験における許容最大回転数よりも小さい第2閾値を試験用のトリップ回転数として設定し、負荷遮断試験中において、負荷遮断が実施されることによりガスタービン回転数が上昇し、第2閾値以上となったことがトリップ制御機能50により検知されてトリップ信号が発生した場合に、該トリップ信号を所定の時間保持し、該所定の時間経過後に該トリップ信号を流量調整弁42に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの信頼性評価試験方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスタービン発電システムは、ガスタービン回転数が定格回転数よりも大きい値に設定されている所定のトリップ回転数を超えた場合に、流量調整弁を遮断して、強制的にガスタービンの運転を停止させる過速度防止機能を備えており、例えば、発電システムを新設したときや保守点検時などにおいて、過速度防止機能が正常に機能するかを確認する動作確認試験が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−111439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、過速度防止機能の動作確認試験は、ガスタービン回転数をトリップ回転数まで強制的に上昇させて、実際に過速度防止機能が作動するか否かを確認することで行われる。しかしながら、このような試験は、ガスタービンを過酷な運転状況に晒すものであり、実運用の安全のために試験回数を増やすと、ガスタービンの寿命が短くなってしまい、コストの増加、運用可能時間の短縮を誘発するといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、過速度防止機能の動作確認試験によるガスタービンへの負担を軽減できるガスタービンの信頼性評価試験方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合にトリップ動作を実行するトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験方法であって、負荷運転中に負荷遮断を強制的に発生させ、負荷遮断後のガスタービンの挙動を確認する負荷遮断試験に前記過速度防止手段の動作確認試験を組み込み、通常運用時におけるトリップ回転数である第1閾値よりも小さく、かつ、前記負荷遮断試験における許容最大回転数よりも小さい第2閾値を試験用のトリップ回転数として設定し、前記負荷遮断試験中において、負荷遮断が実施されることによりガスタービン回転数が上昇し、前記第2閾値以上となったことが前記トリップ制御手段により検知されて前記トリップ信号が発生した場合に、該トリップ信号を所定の時間保持し、該所定の時間経過後に該トリップ信号を前記トリップ実行手段に出力するガスタービンの信頼性評価試験方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、通常運転時に使用されるトリップ回転数よりも小さく、かつ、負荷遮断試験における許容最大回転数よりも小さい第2閾値を試験用のトリップ回転数として設け、負荷遮断試験中において、ガスタービン回転数が第2閾値以上になることで発生されたトリップ信号を所定時間保持することとしている。これにより、トリップ信号が出力されたとしても、トリップ動作がすぐに行われることを防止することができる。この結果、負荷遮断試験を継続して行うことができ、負荷遮断による回転数ピーク値が許容最大回転数以内であることなどの負荷遮断試験における確認を行うことができる。また、所定時間経過後にトリップ信号をトリップ実行手段に出力することにより、実際にトリップを実行させることができる。これにより、負荷遮断試験が確認された後に、過速度防止機能の動作確認も確実に行うことができる。このように、負荷遮断試験と過速度防止機能の動作確認試験とを同時に行うこととしたので、ガスタービン回転数が定格よりも上昇するという事象を1回に抑えることができる。この結果、ガスタービンへの負担が軽減され、ガスタービンの寿命を長期化させることが期待できる。
【0008】
上記ガスタービンの信頼性評価試験方法において、前記負荷遮断試験中において、ガスタービン回転数が前記第1閾値に達した場合に、前記トリップ信号を前記トリップ実行手段に出力することとしてもよい。
【0009】
このように、負荷遮断試験中であっても、ガスタービン回転数が第1閾値に達した場合には、トリップ動作を実施することで、安全性を確保することができる。
【0010】
上記ガスタービンの信頼性評価試験方法において、前記トリップ信号を保持する前記所定の時間は、前記負荷遮断試験において負荷が遮断されてからガスタービン回転数が静定するまでの期間よりも長く設定されていることが好ましい。
【0011】
これにより、負荷遮断試験が途中で中断されることを防止でき、負荷遮断試験が確実に終了した後に、過速度防止機能の動作確認を行うことができる。
【0012】
上記ガスタービンの信頼性評価試験方法において、低負荷時の負荷遮断試験中に前記過速度防止手段の動作確認試験を行うこととしてもよい。
【0013】
低負荷時の負荷遮断試験は、高負荷時の負荷遮断試験に比べて、負荷遮断によるガスタービン回転数の上昇も少なく、また、ガスタービン回転数が静定するまでの時間も短い。したがって、低負荷時の負荷遮断試験と過速度防止機能の動作確認試験とを組み合わせることにより、ガスタービンへの負担を更に軽減でき、試験時間も短縮することができる。
【0014】
上記ガスタービンの信頼性評価試験方法において、前記負荷遮断試験における負荷遮断は、前記ガスタービンを備える発電システム内の系統負荷との接続が維持されるように、発電所内の系統と発電所外部の系統とを接続する位置に設置された遮断器を遮断することにより行われることとしてもよい。
【0015】
このような構成によれば、負荷遮断を行っても、ガスタービンには発電所内の負荷が接続されている状態とすることができる。これにより、負荷遮断によるガスタービンの回転数上昇を抑制することができ、ガスタービンへの負担を軽減することができる。
【0016】
本発明は、ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合にトリップ動作を実行するトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験方法であって、ガスタービン回転数を前記トリップ回転数まで強制的に上昇させ、前記トリップ回転数以上となることにより、前記トリップ制御手段から前記トリップ信号が出力された場合に、該トリップ信号が出力されたことを検知して前記過速度防止手段の正常動作を確認するとともに、前記トリップ信号が前記トリップ実行手段に出力されるのを遮断し、かつ、前記ガスタービン回転数の強制上昇を解除するガスタービンの信頼性評価試験方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、トリップ信号が出力されたことをもって過速度防止機能の正常動作を確認するので、実際にトリップを発生させることがない。これにより、トリップの影響によるガスタービンの負担を防止でき、ガスタービンの長寿命化を図ることができる。またトリップ信号を受信した場合には、ガスタービン回転数の強制上昇を解除するので、ガスタービン回転数を速やかに定格回転数まで低下させることが可能となる。
【0018】
本発明は、ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合にトリップ動作を実行するトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験装置であって、前記トリップ制御手段と前記トリップ実行手段との間に設けられたトリップ検知手段を備え、前記トリップ検知手段は、前記過速度防止手段の動作確認試験において、前記トリップ制御手段から前記トリップ信号が出力された場合に、該トリップ信号を受信して正常動作を確認するとともに、該トリップ信号をキャンセルし、かつ、前記ガスタービン回転数の強制上昇を解除させるガスタービンの信頼性評価試験装置を提供する。
【0019】
本発明によれば、トリップ検知手段によりトリップ信号が受信されたことをもって過速度防止機能の正常動作を確認するので、実際にトリップを発生させることがない。これにより、トリップの影響によるガスタービンの負担を防止でき、ガスタービンの長寿命化を図ることができる。またトリップ信号を受信した場合には、ガスタービン回転数の強制上昇を解除するので、ガスタービン回転数を速やかに定格回転数まで低下させることが可能となる。
【0020】
上記ガスタービンの信頼性評価試験装置において、前記トリップ制御手段は、ガスタービン制御装置に設けられ、前記ガスタービン制御装置により前記ガスタービン回転数がトリップ回転数まで上昇制御されている間において、前記トリップ検知手段は、前記ガスタービン制御装置の内部変数を記憶し、前記トリップ信号を受信した場合に、前記トリップ信号を受信する直前における前記ガスタービン制御装置の内部変数を前記ガスタービン制御装置へ出力することとしてもよい。
【0021】
このように、トリップ検知手段が、ガスタービン制御装置の内部変数を随時記憶しておき、トリップ信号を受信した場合には、トリップ信号を受信する直前におけるガスタービン制御装置の内部変数をガスタービン制御装置に戻すので、ガスタービン制御装置の状態を、トリップが発生する前の状態に速やかに戻すことができる。これにより、ガスタービン制御装置に、トリップ回転数まで上昇したガスタービン回転数を定格回転数まで低減させる制御を速やかに行わせることができる。
【0022】
上記ガスタービンの信頼性評価試験装置において、前記トリップ制御手段は、ガスタービンを制御する第1ガスタービン制御装置に設けられ、前記第1ガスタービン制御装置に入力されるガスタービン回転数の情報が所定時間遅れて入力され、該入力情報を用いて前記第1ガスタービン制御装置と同じ処理を行う第2ガスタービン制御装置を設け、前記トリップ検知手段は、ガスタービンを制御する制御装置として、前記第1ガスタービン制御装置と前記第2ガスタービン制御装置とを切り換える手段を有し、前記トリップ検知手段は、前記トリップ制御手段からトリップ信号が出力された場合に、ガスタービンを制御する制御装置を前記第1ガスタービン制御装置から前記第2ガスタービン制御装置に切り換えることとしてもよい。
【0023】
このような構成によれば、トリップ信号を受信した場合には、第1ガスタービン制御装置から第2ガスタービン制御装置に切り換える。この場合において、第2ガスタービン制御装置には、ガスタービン回転数が第1ガスタービン制御装置よりも所定時間遅れて入力されているので、第2ガスタービン制御装置内では、トリップが検知されておらず、トリップ前のガスタービン回転数に基づいて所定の演算処理が行われていることとなる。従って、トリップが発生する前の内部変数を用いた制御を継続して行うことが可能となる。これにより、ガスタービン回転数を強制上昇させる処理からガスタービン回転数を定格回転数まで低下させる制御に速やかに移行することができる。
【0024】
本発明は、ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合に第1流量調整弁を所定開度まで絞るトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験方法であって、前記第1流量調整弁と並列に第2流量調整弁を設け、前記過速度防止手段の動作確認試験においては、前記第1流量調整弁を開状態とするとともに、前記第2流量調整弁を全閉状態とし、前記ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となることにより前記トリップ制御手段からトリップ信号が出力されて、前記第1流量調整弁が全閉状態とされた場合に、該第1流量調整弁の弁制御と略同じ制御タイミングで前記第2流量調整弁を所定の開度まで開き、その後、前記第2流量調整弁を予め設定されている所定のシーケンスに基づいて制御することにより、ガスタービン回転数を徐々に低下させるガスタービンの信頼性評価試験方法を提供する。
【0025】
本発明によれば、トリップ信号により第1流量調整弁を実際に閉じさせるので、トリップ信号のみによって正常動作を判断する場合と比べて、より確実に過速度防止機能の正常動作を確認することができる。また、流量調整弁を二重に設け、第1流量調整弁が閉じられるのと略同じタイミングで第2流量調整弁を開くこととしたので、トリップ動作の前後でガスタービンへの燃料供給量を略一定に保つことが可能となる。これにより、トリップ動作によるガスタービンへの影響を低減することができ、長寿命化を図ることができる。更に、ガスタービン回転数が定格回転数に低下するまで、第2流量調整弁を所定のレートで絞っていくので、ハンチングなどを防止することができ、安定した状態でガスタービン回転数を速やかに低下させることができる。
【0026】
本発明は、ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合に、第1流量調整弁を所定開度まで絞る指示であるトリップ信号を出力する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験装置であって、前記第1流量調整弁と並列に設けられた第2流量調整弁と、前記過速度防止手段の動作確認試験においては、前記第1流量調整弁を開状態とするとともに、前記第2流量調整弁を全閉状態とし、前記ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となることにより前記トリップ制御手段からトリップ信号が出力された場合に、前記第1流量調整弁を所定開度まで絞るとともに、該第1流量調整弁の弁制御と略同じ制御タイミングで前記第2流量調整弁を所定の開度まで開き、その後、前記第2流量調整弁を予め設定されている所定のシーケンスに基づいて制御することにより、ガスタービン回転数を徐々に低下させるトリップ検知手段とを具備するガスタービンの信頼性評価試験装置を提供する。
【0027】
本発明によれば、トリップ信号により第1流量調整弁を実際に閉じさせるので、トリップ信号のみによって正常動作を判断する場合と比べて、より確実に過速度防止機能の正常動作を確認することができる。また、流量調整弁を二重に設け、第1流量調整弁が閉じられるのと略同じタイミングで第2流量調整弁を開くこととしたので、トリップ動作の前後でガスタービンへの燃料供給量を略一定に保つことが可能となる。これにより、トリップ動作によるガスタービンへの影響を低減することができ、長寿命化を図ることができる。更に、ガスタービン回転数が定格回転数に低下するまで、第2流量調整弁を所定のレートで絞っていくので、ハンチングなどを防止することができ、安定した状態でガスタービン回転数を速やかに低下させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、過速度防止機能の信頼性評価試験によるガスタービンへの負担を軽減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るGTCCプラントの全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る過速度防止機能の動作確認試験方法の概念図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法におけるガスタービン回転数と時間との関係の一例を示したグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法の手順を示したフローチャートである。
【図5】高負荷の負荷遮断試験によるガスタービン回転数の変化と低負荷の負荷遮断試験によるガスタービン回転数の変化とを比較して示した図である。
【図6】負荷遮断試験における負荷遮断の好ましい位置について説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法の概念図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法におけるガスタービン回転数と時間との関係の一例を示したグラフである。
【図9】本発明の第3実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法の概念図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法の概念図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法におけるガスタービン回転数と時間との関係の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法について図1および図2を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るGTCCプラントの全体構成図である。GTCCプラントは、ガスタービン12、蒸気タービン14、および発電機16を備えている。
【0031】
ガスタービン12は、圧縮機20、燃焼器22、タービン24、ガスタービン制御装置44、圧力調整弁40、流量調整弁42などを主な構成として備えている。圧縮機20は、回転軸26により駆動されることで、空気取込口から取り込まれた空気を圧縮して圧縮空気を生成する。燃焼器22は、圧縮機20から車室28へ導入された圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。タービン24は、燃焼器22で発生した燃焼ガスによって回転駆動する。
【0032】
車室28と燃焼器22との間にはバイパス管30が設けられており、バイパス管30は、タービン24の出力変動により燃焼器22内の空気が不足する状態になった場合に、燃焼器バイパス弁32が開かれると車室28内の空気を燃焼器22内に導入する流路となる。また、圧縮機20とタービン24との間には、圧縮機20からタービン24へ冷却用の空気を導入させるための抽気管34が設けられている。
【0033】
蒸気タービン14は、タービン24の排ガスから熱回収して蒸気を発生させ、該蒸気によって回転駆動する。タービン24、蒸気タービン14、圧縮機20、および発電機16は、回転軸26によって連結され、タービン24および蒸気タービン14に生じる回転動力は、回転軸26によって圧縮機20および発電機16に伝達される。そして、発電機16は、タービン24および蒸気タービンの回転動力によって発電する。
【0034】
また、燃焼器22には、燃料を供給する燃料供給配管36が接続されている。燃料供給配管36には、圧力調整弁40で流量調整弁42前後の差圧が調整され、流量調整弁42で流量が調整された燃料が供給される。燃焼器22は、燃料供給配管36から供給された燃料と圧縮空気とを混合させて燃焼させる。
【0035】
ガスタービン制御装置44は、ガスタービン12の運転状態および温度状態に関する状態量などを入力信号として取得し、これらの入力信号に基づいて燃焼器22に供給する燃料流量を制御する。例えば、ガスタービン制御装置44は、ガスタービン回転数を入力情報として取得し、このガスタービン回転数が目標回転数に一致するように流量調整弁42の弁開度を制御することにより、燃焼器22へ送られる燃料量を調整する。
ガスタービン制御装置44は、例えば、CPU(中央演算装置)、メモリ、補助記憶装置等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で補助記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUがメモリに読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述した燃料の流量調整などが行われる。
【0036】
また、ガスタービン12は、ガスタービン回転数が定格回転数よりも大きい値(例えば、定格の10%増し)に設定されている所定のトリップ閾値を超えた場合に、強制的にガスタービンの運転を停止させる過速度防止機能(過速度防止手段)を備えている。この過速度防止機能は、例えば、ガスタービン制御装置44に搭載されたトリップ制御機能(トリップ制御手段)50(図2参照)と、トリップ動作を実行する流量調整弁(トリップ実行手段)42とにより実現される。この場合、トリップ制御機能50は、ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力し、流量調整弁42は、このトリップ信号が入力された場合に全閉状態となり、燃焼器22への燃料供給を瞬時に遮断して、タービン24の回転を停止させる。また、上記トリップ制御機能については、ガスタービン制御装置44のCPUがトリップ制御プログラムを実行することにより実現されてもよいし、専用のハードウェアがガスタービン制御装置に搭載されることとしてもよい。
【0037】
このようなGTCCにおいては、設備新設の際や保守点検時において、例えば、ガスタービン12が備えている各種機能が正常に動作しているか否かを確認する信頼性評価試験が行われる。この信頼性評価試験では、上記過速度防止機能の動作確認試験が行われるとともに、その他の動作確認、例えば、負荷遮断試験などの各種試験が実施される。
ここで、負荷遮断試験は、例えば、負荷運転中に負荷遮断が生じた場合に、ガスタービン回転数が許容最大回転数(例えば、負荷運転時の定格回転数の110%)を超えないように調速装置が機能することを確認する試験である。
【0038】
負荷遮断試験では、突然に負荷遮断用として設けられている遮断器が開放してガスタービン12に接続されている負荷が遮断されるため、ガスタービン回転数が瞬時に上昇することになり、ガスタービンにかかる負担が大きい、回転数が定常よりも上昇するという点で過速度防止機能の動作確認試験と共通する。
【0039】
そこで、本実施形態では、負荷遮断試験と過速度防止機能の動作確認試験を同時に行うこととし、換言すると、負荷遮断試験に過速度防止機能の動作確認試験を組み込むこととし、2つの試験を効率的に行うことで、ガスタービン回転数が定格以上に上昇するという事象の発生頻度を減少させる。
【0040】
以下、本実施形態におけるガスタービンの信頼性評価試験方法について図2から図4を参照して説明する。図2は過速度防止機能の動作確認試験における概念図、図3はガスタービンの信頼性評価試験方法におけるガスタービン回転数と時間との関係の一例を示したグラフ、図4はガスタービンの信頼性評価試験方法の手順を示したフローチャートである。なお、負荷遮断試験は、例えば、高負荷時(定格負荷時)における負荷遮断試験、中負荷時(定格に対して75%)における負荷遮断試験、低負荷時(定格に対して50%)における負荷遮断試験などのように、各負荷レベルにおいてそれぞれ行われるが、以下の説明においては、高負荷時における負荷遮断試験を例示して説明する。
【0041】
まず、図2に示すように、試験の準備段階として、通常運転時のトリップ回転数である第1閾値に加えて、第1閾値よりも小さく、かつ、負荷遮断試験における許容最大回転数よりも小さい第2閾値を試験用のトリップ回転数として設定し、所定の記憶手段に記憶させる。また、トリップ制御機能50と流量調整弁42との間にオンディレイタイマ51を設置する。
【0042】
次に、信頼性評価試験実行時においては、まず、ガスタービンが定格回転数で運転している状態において、負荷遮断用として設けられている遮断器を開放することにより、負荷遮断を発生させる(図3の時刻t1、図4のステップSA1)。これにより、図3に示すようにガスタービン回転数は瞬時に上昇する。そして、ガスタービン回転数が第2閾値を超えると(図3の時刻t2)、トリップ制御機能がこれを検知し、燃料供給を遮断させるためのトリップ信号を出力する(図4のステップSA2)。出力されたトリップ信号は、オンディレイタイマ51に入力され、ここで所定時間保持される(図4のステップSA3)。ここで、オンディレイタイマ51の保持時間は、負荷遮断試験において負荷が遮断されてからガスタービン回転数が静定するまでの期間よりも長く設定されている。これにより、負荷遮断試験中にトリップが生じることを防止でき、負荷遮断によるガスタービン回転数の挙動などを確実に確認することができる。
【0043】
また、図3に示すように、上述のようにトリップ信号が出力された後においても、引き続き負荷遮断の影響によりガスタービン回転数は上昇し続け、時刻t3において、ピークに達した後、減速する。その後は、振動しながら所定時間後に静定する。
【0044】
一方、オンディレイタイマ51によって維持されていたトリップ信号は、所定時間後に、流量調整弁42に出力される(図3の時刻t4、図4のステップSA4)。これにより、流量調整弁42が全閉することで、燃焼器22への燃料供給が遮断され、タービン24が停止する。
【0045】
このように、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法によれば、通常運転時に使用されるトリップ回転数よりも小さく、かつ、負荷遮断試験における許容最大回転数よりも小さい第2閾値を試験用のトリップ回転数として設け、負荷遮断試験中において、ガスタービン回転数が第2閾値以上になることで発生されたトリップを所定時間保持することとしている。これにより、トリップ制御機能50からトリップ信号が出力されたとしても、トリップ動作がすぐに実行されることを防止することができる。
【0046】
この結果、負荷遮断試験を継続して行うことができ、負荷遮断による回転数ピーク値が許容最大回転数以内であること、静定までの時間が所定時間以内であることなどの負荷遮断試験における確認を確実に行うことができる。また、一連の負荷遮断による影響が薄れ、ガスタービン回転数が定格回転数で安定してきたときに、オンディレイタイマ51によって保持されていたトリップ信号が流量調整弁42に出力される。これにより、過速度防止機能の動作確認も確実に行うことができる。
【0047】
このように、負荷遮断試験と過速度防止機能の動作確認試験とを同時に行うこととしたので、ガスタービン回転数が定格よりも上昇するという事象を1回に抑制することができる。これにより、ガスタービンへの負担が軽減され、ガスタービンの寿命を長期化させることが期待できる。
【0048】
なお、本実施形態では、定格負荷における負荷遮断試験において、過速度防止機能の動作確認試験を行うこととしたが、これに限られず、中負荷時、低負荷時の負荷遮断試験において過速度防止機能の動作確認試験を行うこととしてもよい。中負荷時、低負荷時の負荷遮断試験では、図5に示すように、負荷遮断後におけるガスタービン回転数上昇が高負荷時に比べて小さく、また、静定までの時間も短いため、ガスタービンへの負担をより一層軽減できるとともに、試験を早く終了させることができる。なお、この場合にも、トリップを発生させる第2閾値は、負荷遮断によるガスタービン回転数のピーク予測値よりも小さい値に設定することが必要となる。
【0049】
また、上記負荷遮断試験において、図6に示すように、負荷の遮断は、ガスタービン12を備える発電所内の系統負荷との接続が維持されるように、発電所内の系統と発電所外部の系統とを接続する位置に上記遮断器SW1を設置するとよい。これにより、負荷遮断を行っても、タービン20には発電所内の系統負荷が接続されている状態となるので、負荷変化の落差が緩和され、ガスタービン回転数の上昇幅を抑えることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態において、負荷遮断試験中にガスタービン回転数が通常運用時に使用されるトリップ回転数である第1閾値を超えたらトリップ動作をただちに実行するようにしてもよい。これにより、安全性を確保することができる。
また、このような場合は、負荷遮断試験は失敗してしまうが、トリップする燃料投入量を把握することができる。すなわち、負荷遮断が発生した場合、負荷遮断によるガスタービン回転数の上昇を抑制するために、流量調整弁の弁開度を急激に絞る制御が行われる。しかし、全閉してしまうと、失火してしまうため、失火が起きないぎりぎりの燃料量を把握し、その燃料量まで速やかに燃料を絞ることが望まれる。そこで、上述したように、負荷遮断試験中にトリップした場合には、燃料投入量と回転数との関係をデータとして取得することにより、負荷遮断の際の制御設定値を決定する際の指標を得ることとしてもよい。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るガスタービンの信頼性評価方法およびその装置について説明する。
上述の第1実施形態では、負荷遮断試験と過速度防止機能の動作確認試験とを同時に行っていたが、本実施形態では、過速度防止機能の動作確認試験を単独で行うこととしている。以下、上記第1実施形態に係るガスタービンの信頼性評価方法と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。また、図中、同一の参照符号が付されている構成については、同一の構成として取り扱う。
【0052】
図7は、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法の概念図である。図7に示すように、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法では、ガスタービン制御装置44と流量調整弁42との間にトリップ検知部60を設け、ガスタービン制御装置44に搭載されているトリップ制御機能50(図2参照)から出力されたトリップ信号がトリップ検知部60に入力されるようになっている。
また、本実施形態における過速度防止機能の動作確認試験で用いられるトリップ回転数は、通常運転時に使用されるのと同じトリップ回転数、すなわち、第1閾値に設定されている。
【0053】
トリップ検知部60は、ガスタービン制御装置44の静定時の内部変数のうち、弁開度の変化量など経時変化を示す変数を記憶する機能を有している。また、トリップ検知部60は、トリップ信号が入力された場合には、過速度防止機能が正常に動作していると判定するとともに、ガスタービン制御装置44に静定時の経時変化を示す変数を入力することで、入力されたトリップ信号をキャンセルし、入力端61を介してガスタービン制御装置44にガスタービン回転数の強制上昇を解除する指令を出力する。
【0054】
以下、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価方法およびその装置について図7および図8を参照して説明する。図8は、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法におけるガスタービン回転数と時間との関係の一例を示したグラフである。
まず、過速度防止機能の動作確認試験においては、入力端61から入力される試験条件等に応じて、ガスタービン制御装置44が流量調整弁42に対して燃料供給を増加させる弁制御指令を出力することにより、ガスタービン回転数をトリップ回転数に達するまで強制的に上昇させる(図8の時刻t1からt2)。また、このとき、ガスタービン制御装置44の内部変数はトリップ検知部60に出力され、随時記憶される。
【0055】
次に、ガスタービン回転数がトリップ回転数に達することで(図8の時刻t2)、ガスタービン制御装置44が備えるトリップ制御機能(図2参照)が作動してトリップ信号が出力されると、このトリップ信号は、トリップ検知部60に入力される。トリップ検知部60は、トリップ信号が入力されると、このことをもって過速度防止機能が正常に動作していると判定する。また、トリップ検知部60は、このトリップ信号をキャンセルするとともに、ガスタービン制御装置44に対してガスタービン回転数の強制上昇を解除する指令および記憶していた内部変数を出力する。ここで出力される内部変数は、トリップ信号が出力される直前に記憶していた内部変数である。
【0056】
ガスタービン制御装置44は、ガスタービン回転数の強制上昇を解除する指令を受信すると、トリップ検知部60から取得した内部変数を用いて、ガスタービン回転数を定格回転数まで低下させる制御に切り換える。これにより、ガスタービン回転数は徐々に低下し、定格回転数で安定する(図8の時刻t2からt3)。
【0057】
このように、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法およびその装置によれば、ガスタービン回転数がトリップ回転数である第1閾値に達することによりガスタービン制御装置44からトリップ信号が出力された場合に、このトリップ信号が出力されたことをもって、過速度防止機能の正常動作を確認するので、実際にトリップを発生させることがない。これにより、トリップの影響によるガスタービンの負担を防止でき、ガスタービンの長寿命化を図ることができる。またトリップ信号を受信した場合には、ガスタービン回転数の強制上昇を解除するので、ガスタービン回転数を速やかに定格回転数まで低下させることが可能となる。
【0058】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係るガスタービンの信頼性評価方法およびその装置について説明する。
上記第2実施形態においては、トリップ検知部60がガスタービン制御装置44の内部変数を記憶することとしていたが、本実施形態においては、第2のガスタービン制御装置64を設け、第2のガスタービン制御装置64を用いることでガスタービン制御装置44における内部変数の問題を上手く処理している。
以下、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法およびその装置について説明する。
図9は、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法の概念図である。本実施形態では、ガスタービン制御装置44(以下「第1制御装置44」という。)と並列に第2のガスタービン制御装置64(以下「第2制御装置64」という)を設置している。第2制御装置64には、入力端61からの信号が入力されるとともに、ガスタービン回転数などの各種状態量がバッファ66を介して入力されるようになっている。すなわち、第2制御装置64には、第1制御装置44に入力されるガスタービン回転数などの各種状態量が所定時間遅れて入力されるようになっている。第2制御装置64は、第1制御装置44と同様の構成を有しており、よって、同じ入力情報に基づく流量調整弁42への弁開度指令や内部変数は同じものとなる。つまり、第1制御装置44における内部変数や流量調整弁への弁開度指令と全く同じ情報が、常に所定時間遅れて第2制御装置64内で発生したり、出力されたりする。第1制御装置44および第2制御装置64から出力される弁開度指令信号やトリップ信号は、トリップ検知部62に入力されるようになっている。なお、第2制御装置64においては、過速度防止機能を備えていなくても良い。
トリップ検知部62は、試験開始時からトリップ信号を受信するまでは、流量調整弁42を制御する制御装置として第1制御装置44を採用し、トリップ信号が入力されたときに、第1制御装置44から第2制御装置64に切り換える。
【0059】
このような構成において、過速度防止機能の動作確認試験を行う際には、入力端61から入力される試験条件の情報に基づいて、第1制御装置42および第2制御装置64から燃料量を増加させる弁開度指令が出力される。第1制御装置44からの弁開度指令は、トリップ検知部62を介して流量調整弁42に与えられる。これにより、ガスタービン回転数はトリップ回転数に達するまで強制的に上昇させられる。また、ガスタービン回転数の情報は、第1制御装置44にフィードバックされるとともに、第2制御装置64においてはバッファ66で所定時間維持された後、フィードバックされる。
【0060】
次に、ガスタービン回転数がトリップ回転数に達することで、第1制御装置44のトリップ制御機能が作動してトリップ信号が出力されると、このトリップ信号は、トリップ検知部62に入力される。トリップ検知部62は、トリップ信号が入力されると、過速度防止機能が正常に動作していると判定する。また、トリップ検知部62は、このトリップ信号をキャンセルするとともに、流量調整弁42を制御する制御装置を第1制御装置44から第2制御装置64に切り換える。これにより、以降においては、第2制御装置64から出力された弁制御指令が流量調整弁42に与えられることとなる。
ここで、第2制御装置64には、第1制御装置44と所定の時間差をもってガスタービン回転数が入力されているため、第1制御装置44においてトリップ回転数が検知された時点において、第2制御装置64ではトリップ回転数を検知しておらず、トリップ回転数に達する前の回転数による内部変数が発生しているとともに、弁制御指令が出力されている。このため、制御装置を第2制御装置64に切り換えることで、トリップが発生する前の内部変数を用いて流量調整弁42の弁開度制御を行うことが可能となる。
また、トリップ検知部62は、入力端61を介して第1制御装置44および第2制御装置64に、ガスタービン回転数の強制上昇を解除する指令を出力する。第1制御装置44および第2制御装置64は、当該指令を受信すると、燃料供給の増加指令を解除し、ガスタービン回転数を目標回転数である定格回転数に一致させる制御に切り換える。更に、トリップ検知部62は、第1制御装置44に対してトリップ信号を解除する信号を出力するとともに、第2制御装置64の内部変数を出力する。これにより、第1制御装置44の状態は、トリップ前の状態にリセットされる。第1制御装置44の状態がトリップ前の状態にリセットされると、トリップ検知部62は、流量調整弁42の弁制御に採用する制御装置を第2制御装置64から第1制御装置44に切り換える。これにより、第1制御装置44から出力される弁開度指令に基づいて流量調整弁42が制御され、ガスタービン回転数が定格回転数まで徐々に低下させられる。
【0061】
このように、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法およびその装置によれば、ガスタービン回転数がトリップ回転数である第1閾値に達することにより第1制御装置44からトリップ信号が出力された場合に、このトリップ信号が出力されたことをもって、過速度防止機能の正常動作を確認するので、実際にトリップを発生させることがない。これにより、トリップの影響によるガスタービンの負担を防止でき、ガスタービンの長寿命化を図ることができる。
またトリップ信号を受信した場合には、第1制御装置44から第2制御装置64に切り換えるので、トリップが発生する前の内部変数を用いた流量調整弁42の弁制御を継続して行うことができる。また、トリップ信号を受信した時点で、ガスタービン回転数の強制上昇を解除するので、ガスタービン回転数を速やかに定格回転数まで低下させることが可能となる。
【0062】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係るガスタービンの信頼性評価方法およびその装置について説明する。
図10は、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法の概念図である。図10に示すように、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法では、流量調整弁42に対して並列に流量調整弁42aを設けている。また、上述した第2実施形態では、トリップ信号が流量調整弁42にたどり着く前にトリップ信号をキャンセルさせていたが、本実施形態では、図10に示すように、流量調整弁を二重に配置し、流量調整弁42がトリップにより遮断された場合に、もう一方の流量調整弁42aを開くことにより、ガスタービンへの燃料が遮断されることを防止している。これにより、トリップによるガスタービンへの影響を低減している。
【0063】
以下、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価方法について説明する。
まず、過速度防止機能の動作確認試験においては、入力端61から入力される試験条件に基づいてガスタービン制御装置44が流量調整弁42に対して燃料供給を増加させる信号を出力することにより、ガスタービン回転数をトリップ回転数に達するまで強制的に上昇させる(図11の時刻t1からt2)。このとき、流量調整弁42aは全閉状態とされており、また、ガスタービン制御装置44の内部変数はトリップ検知部68に出力され、随時記憶される。
【0064】
次に、ガスタービン回転数がトリップ回転数に達することで(図11の時刻t2)、ガスタービン制御装置44が備えるトリップ制御機能が作動してトリップ信号が出力されると、このトリップ信号は、トリップ検知部68に入力される。トリップ検知部68は、トリップ信号が入力されると、このトリップ信号を流量調整弁42に出力する。また、このトリップ信号と略同じタイミングで、流量調整弁42aに対して所定のシーケンスに基づく弁開度指令を出力する。例えば、この弁開度指令は、流量調整弁42aの弁開度をトリップ信号が出力される直前の弁開度まで開き、その弁開度から、ガスタービン回転数が定格回転数に一致するまで、所定のレートで絞る信号とされる。
【0065】
これにより、流量調整弁42がトリップ信号を受けて瞬時に遮断させられる一方で、流量調整弁42aはトリップ信号が入力される直前における流量調整弁42の開度と同じ開度まで開かれることとなる。これにより、ガスタービンにおける燃料流量の急激な変化を防止することができる。また、流量調整弁42aは、この状態から一定のレートで弁開度が閉じられるので、ハンチングを防ぎながらガスタービン回転数を定格回転数まで低下させることができる(図11の時刻t2からt3)。
【0066】
ガスタービン回転数が定格回転数に落ち着いた後は、流量調整弁42を所定のレートで開けるとともに、流量調整弁42aを同じレートで閉めることにより、流量調整弁42による燃料流量調整を再開させる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係るガスタービンの信頼性評価試験方法およびその装置によれば、トリップ信号により流量調整弁42を実際に閉じさせるので、トリップ信号のみによって正常動作を判断する第2実施形態や第3実施形態と比べて、より確実に過速度防止機能の正常動作を確認することができる。また、流量調整弁42と並列に流量調整弁42aを設け、流量調整弁42が閉じられるのと略同じタイミングで流量調整弁42aを開くこととしたので、トリップ動作の前後でガスタービンへの燃料供給量を略一定に保つことが可能となる。これにより、トリップ動作によるガスタービンへの影響を低減することができ、長寿命化を図ることができる。更に、ガスタービン回転数が定格回転数に低下するまで、流量調整弁42aを所定のレートで絞っていくので、ハンチングなどを防止することができ、安定した状態でガスタービン回転数を速やかに低下させることができる。
【符号の説明】
【0068】
12 ガスタービン
24 タービン
22 燃焼器
42,42a 流量調整弁
44 ガスタービン制御装置(第1のガスタービン制御装置)
50 トリップ制御機能
51 オンディレイタイマ
60,62,68 トリップ検知部
61 入力端
64 第2のガスタービン制御装置
66 バッファ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合にトリップ動作を実行するトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験方法であって、
負荷運転中に負荷遮断を強制的に発生させ、負荷遮断後のガスタービンの挙動を確認する負荷遮断試験に前記過速度防止手段の動作確認試験を組み込み、
通常運用時におけるトリップ回転数である第1閾値よりも小さく、かつ、前記負荷遮断試験における許容最大回転数よりも小さい第2閾値を試験用のトリップ回転数として設定し、
前記負荷遮断試験中において、負荷遮断が実施されることによりガスタービン回転数が上昇し、前記第2閾値以上となったことが前記トリップ制御手段により検知されて前記トリップ信号が発生した場合に、該トリップ信号を所定の時間保持し、該所定の時間経過後に該トリップ信号を前記トリップ実行手段に出力するガスタービンの信頼性評価試験方法。
【請求項2】
前記負荷遮断試験中において、ガスタービン回転数が前記第1閾値に達した場合に、前記トリップ信号を前記トリップ実行手段に出力する請求項1に記載のガスタービンの信頼性評価試験方法。
【請求項3】
前記トリップ信号を保持する前記所定の時間は、前記負荷遮断試験において負荷が遮断されてからガスタービン回転数が静定するまでの期間よりも長く設定されている請求項1または請求項2に記載のガスタービンの信頼性評価試験方法。
【請求項4】
低負荷時の負荷遮断試験中に前記過速度防止手段の動作確認試験を行う請求項1から請求項3のいずれかに記載のガスタービンの信頼性評価試験方法。
【請求項5】
前記負荷遮断試験における負荷遮断は、前記ガスタービンを備える発電所内の系統負荷との接続が維持されるように、発電所内の系統と発電所外部の系統とを接続する位置に設置された遮断器を遮断することにより行われる請求項1から請求項4のいずれかに記載のガスタービンの信頼性評価試験方法。
【請求項6】
ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合にトリップ動作を実行するトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験方法であって、
ガスタービン回転数を前記トリップ回転数まで強制的に上昇させ、
前記トリップ回転数以上となることにより、前記トリップ制御手段から前記トリップ信号が出力された場合に、該トリップ信号が出力されたことを検知して前記過速度防止手段の正常動作を確認するとともに、前記トリップ信号が前記トリップ実行手段に出力されるのを遮断し、かつ、前記ガスタービン回転数の強制上昇を解除するガスタービンの信頼性評価試験方法。
【請求項7】
ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合にトリップ動作を実行するトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験装置であって、
前記トリップ制御手段と前記トリップ実行手段との間に設けられたトリップ検知手段を備え、
前記トリップ検知手段は、前記過速度防止手段の動作確認試験において、前記トリップ制御手段から前記トリップ信号が出力された場合に、該トリップ信号を受信して正常動作を確認するとともに、該トリップ信号をキャンセルし、かつ、前記ガスタービン回転数の強制上昇を解除させるガスタービンの信頼性評価試験装置。
【請求項8】
前記トリップ制御手段は、ガスタービン制御装置に設けられ、
前記ガスタービン制御装置により前記ガスタービン回転数がトリップ回転数まで上昇制御されている間において、前記トリップ検知手段は、前記ガスタービン制御装置の内部変数を記憶し、前記トリップ信号を受信した場合に、前記トリップ信号を受信する直前における前記ガスタービン制御装置の内部変数を前記ガスタービン制御装置へ出力する請求項7に記載のガスタービン信頼性評価試験装置。
【請求項9】
前記トリップ制御手段は、ガスタービンを制御する第1ガスタービン制御装置に設けられ、
前記第1ガスタービン制御装置に入力されるガスタービン回転数の情報が所定時間遅れて入力され、該入力情報を用いて前記第1ガスタービン制御装置と同じ処理を行う第2ガスタービン制御装置を設け、
前記トリップ検知手段は、ガスタービンを制御する制御装置として、前記第1ガスタービン制御装置と前記第2ガスタービン制御装置とを切り換える手段を有し、
前記トリップ検知手段は、前記トリップ制御手段からトリップ信号が出力された場合に、ガスタービンを制御する制御装置を前記第1ガスタービン制御装置から前記第2ガスタービン制御装置に切り換える請求項7に記載のガスタービン信頼性評価試験装置。
【請求項10】
ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合にトリップ信号を出力するトリップ制御手段と、前記トリップ信号が入力された場合に第1流量調整弁を所定開度まで絞るトリップ実行手段とを有する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験方法であって、
前記第1流量調整弁と並列に第2流量調整弁を設け、
前記過速度防止手段の動作確認試験においては、前記第1流量調整弁を開状態とするとともに、前記第2流量調整弁を全閉状態とし、
前記ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となることにより前記トリップ制御手段からトリップ信号が出力されて、前記第1流量調整弁が全閉状態とされた場合に、該第1流量調整弁の弁制御と略同じ制御タイミングで前記第2流量調整弁を所定の開度まで開き、その後、前記第2流量調整弁を予め設定されている所定のシーケンスに基づいて制御することにより、ガスタービン回転数を徐々に低下させるガスタービンの信頼性評価試験方法。
【請求項11】
ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となったことを検知した場合に、第1流量調整弁を所定開度まで絞る指示であるトリップ信号を出力する過速度防止手段を備えるガスタービンの信頼性評価試験装置であって、
前記第1流量調整弁と並列に設けられた第2流量調整弁と、
前記過速度防止手段の動作確認試験においては、前記第1流量調整弁を開状態とするとともに、前記第2流量調整弁を全閉状態とし、前記ガスタービン回転数がトリップ回転数以上となることにより前記トリップ制御手段からトリップ信号が出力された場合に、前記第1流量調整弁を所定開度まで絞るとともに、該第1流量調整弁の弁制御と略同じ制御タイミングで前記第2流量調整弁を所定の開度まで開き、その後、前記第2流量調整弁を予め設定されている所定のシーケンスに基づいて制御することにより、ガスタービン回転数を徐々に低下させるトリップ検知手段と
を具備するガスタービンの信頼性評価試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−145034(P2012−145034A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3759(P2011−3759)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】