説明

ガスタービンの燃焼器

燃焼器(1)は、少なくとも、内側ライナ(5)と、この内側ライナ(5)と共に、介在させられた冷却室(7)を形成する外側カバープレート(6)とを有する部分(4)を有する。ライナ(5)から、冷却室(7)内へ突出した複数の中空エレメント(9,9f)が延びている。それぞれの中空エレメント(9,9f)は、較正されたダクト(11)を介して燃焼器(1)の内部に接続された減衰体積(10)を形成している。運転中、中空エレメント(9)は圧力脈動を減衰し、付加的に、熱も伝導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの燃焼器に関する。
【0002】
発明の背景
ガスタービンは、燃焼器を有することが知られており、この燃焼器において、圧縮機から送られてくる圧縮空気に気体又は液体の燃料が供給されかつ混合され、燃料は次いで燃焼される。
【0003】
(例えば低エミッションが追求される場合又は部分負荷におけるような)幾つかの場合、燃焼中に、熱音響的な不安定性により燃焼器内に圧力振動が生じることがある。これらの圧力振動は、ガスタービン構成部材の構造的損傷又は過剰な摩耗、さらには騒がしい運転を生じることがある。
【0004】
許容できるガスタービン寿命を保証しかつ騒音を制御するために、ガスタービン運転中に圧力振動を減衰させなければならない。
【0005】
従来、減衰は受動的な減衰構造によって達成されている。
【0006】
これらの受動的な減衰構造の例は、ヘルムホルツ共鳴器、四分の一波長管、スクリーン又は穿孔されたスクリーチライナである。
【0007】
通常、ガスタービンが最初に設計及び最適化され、必要であれば、その後に初めて受動的な減衰構造がガスタービンに付加される。
【0008】
これにより、一方では、減衰構造の適切な冷却を提供するために、冷却空気が他のガスタービン領域から逸らされなければならず、このガスタービンの運転温度の上昇、ひいては寿命の妥協を生じる。
【0009】
さらに加えて、しばしばこの空気は燃焼器から(又は順次燃焼ガスタービンにおいて第1の燃焼器から)取り出されるので、火炎温度が上昇し、ひいてはNOxエミッションを増大させる。
【0010】
例えば、米国特許第7104065号明細書は、二重壁燃焼室と、燃焼室の内部に接続された気密体積を形成する別の外壁とを備えた燃焼器のための減衰配列を開示している。既に述べた欠点に加えて、この減衰配列は燃焼器の他の構成部材から機能的に分離されており、さらに、利用できるスペースが制限されていることにより、減衰配列を燃焼器に組み込むことが困難であることが分かった。
【0011】
発明の概要
したがって、本発明の技術的課題は、公知技術の前記問題が排除される燃焼器を提供することである。
【0012】
この技術的課題の範囲において、発明の一つの態様は、燃焼器の寿命を延長するために、あらゆる運転条件において適切な冷却を保証することができる燃焼器を提供することである。
【0013】
本発明の別の態様は、NOxエミッションが制御される燃焼器を提供することである。
【0014】
本発明の別の態様は、減衰システムが燃焼器の他の構成部材と機能的に一体化されかつこれらの構成部材に組み込まれてもいる燃焼器を提供することである。
【0015】
技術的課題は、これらの態様及びその他の態様とともに、本発明によれば、添付の請求項に係る燃焼器を提供することによって達成される。
【0016】
本発明の別の特徴及び利点は、添付の図面における非制限的な例によって例示された、本発明による燃焼器の好適な、しかし限定的ではない実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】燃焼器の概略図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った、拡大した概略的な縦断面図である。
【図3】本発明による中空エレメント配列の1つの実施の形態を示す図である。
【図4】本発明による中空エレメント配列の1つの実施の形態を示す図である。
【図5】本発明による中空エレメント配列の1つの実施の形態を示す図である。
【図6】本発明の中空エレメントの拡大した断面図である。
【図7】本発明による固定中空エレメントの1つの実施の形態を示す図である。
【図8】本発明による固定中空エレメントの1つの実施の形態を示す図である。
【図9】本発明による固定中空エレメントの1つの実施の形態を示す図である。
【図10】本発明による中空エレメント配列の別の実施の形態を示す図である。
【0018】
発明の詳細な説明
図1は、混合管2と、燃焼室3とを有する燃焼器1を示している。
【0019】
燃焼器1(つまり、混合管2及び/又は燃焼室3及び/又は前板2a)は、少なくとも、内側ライナ5と、この内側ライナ5と共に、介在させられた冷却室7を形成する外側カバープレート6とを含む部分4を有する。
【0020】
混合管2及び/又は燃焼室3及び/又は前板2aのあらゆる部分、又は混合管2及び/又は燃焼室3及び/又は前板2aの全ての壁部は、この構造を有していてよい。以下では簡潔さ及び明瞭さのために、図3に示された燃焼室3の部分4が参照される。
【0021】
ライナ5から、冷却室7内へ突出した複数の中空エレメント9が延びている。
【0022】
それぞれの中空エレメント9は、調整されたダクト11(特にダクトの長さ及び直径が調整されている)を介して燃焼室3の内部に接続された減衰体積10を形成している。
【0023】
運転中、中空エレメント9は、圧力振動を減衰するためのヘルムホルツダンパとして働き、さらに、中空エレメント9は、ガスタービンの最も高温の部分を画成するライナ5に結合されているので、ライナ5から熱を回収してこの熱を放散し、熱を冷却空気へ伝導する。
【0024】
中空エレメント9は、冷却室7を減衰体積10に接続するパージ穴13を有していてもよい。
【0025】
特に、パージ穴13は、冷却を高めるために設けられていてよいが、他の実施の形態では、あらゆる空気損失を排除するために設けられなくてもよい。
【0026】
中空エレメント9は、熱を伝導して放散させるように配置されているので、中空エレメントの配置の様々な実施形態が可能である。
【0027】
図10は、中空エレメント9が冷却流れ方向14に沿って整合させられている第1の配置を示しており、図3から図5は、中空エレメント9が冷却流れ方向14に関して交互にずらされている別の実施形態を示している。この配置は、伝熱がより大きいので好適である。
【0028】
中空エレメント9の形状は、許容できる圧力降下にしたがって選択及び最適化される。
【0029】
これに関して、円筒形(図3)又はだ円形(図5)又は翼形(図4)又はこれらの組合せのような、中空エレメント9のための様々な形状が可能である。
【0030】
さらに、図6に示したように、中空エレメント9の上壁16はカバープレート6から分離されている。
【0031】
広範囲の圧力振動を減衰するために、様々な中空エレメントは様々な減衰体積10を形成する及び/又は中空エレメント10は減衰材料17が充填された減衰体積を有していてよく、減衰材料17は、散逸を増大し、その特定の減衰体積によって減衰される圧力振動周波数を、空の減衰体積10によって提供されるものと異なる値に切り替える。
【0032】
ライナ5を支持するために、固定中空エレメント9fがカバープレート6に結合されている(図7から図9)。
【0033】
固定カバーエレメント9fは、カバーエレメント9と同様の構造を有するが、付加的に、固定カバーエレメント9fをカバープレート6に結合させるための構成部材も有する。
【0034】
これに関して、カバープレート6には貫通孔19が設けられており、この貫通孔19に、固定中空エレメント9f(中空エレメント9よりも長い)が収容されている。
【0035】
さらに、固定中空エレメント9fは肩部20を有しており、この肩部20に対してカバープレート6が載置される。
【0036】
結合は、固定中空エレメント9fのねじ山付き端部22がボルト23を介してカバープレート9に結合されることによって達成される。もちろん、ろう付け結合又は溶接結合のような様々な結合も可能である。
【0037】
これらの特徴(図7、図8及び図9の固定中空エレメント9fに共通である)に加え、図8の固定中空エレメント9fは、調節可能な上壁24を有する。
【0038】
図8の固定中空エレメント9fの調節可能な上壁24は、固定中空エレメント9fの対応するねじ山付き部分26に固定されたねじ山付きキャップ25を有する。
【0039】
減衰体積10の調節は、減衰される圧力振動周波数を調節する。
【0040】
図9の固定中空エレメント9fには減衰材料17が設けられている。
【0041】
減衰体積10内に減衰材料17を提供することも、減衰される圧力振動周波数を調節する。
【0042】
本発明の燃焼器の運転は、説明及び図示されたものから明らかであり、実質的に以下のとおりである。
【0043】
混合管2で形成された混合物は燃焼室3において燃焼され、タービン(図示せず)において膨張させられる高温ガスGを生じる。これに関して、符号27は火炎を示している。
【0044】
燃焼中に圧力振動が発生すると、圧力振動は、高温ガスを較正されたダクト11を介して中空エレメント9,9fの減衰体積10へ流入させたり、減衰体積10から流出させたりする。これらの振動は、エネルギを散逸させ、ひいては圧力振動を減衰させる。
【0045】
さらに、冷却室7において冷却空気が循環するので(矢印Fによって示されている)、混合管2と、燃焼室3と、前板2aとは冷却される。
【0046】
有利には、中空エレメント9,9fは冷却室7内へ突出しているので、冷却空気が中空エレメントに衝突し、極めて強い冷却効果が達成される。
【0047】
中空エレメント9,9fがパージ穴13を有する場合、冷却効果はさらに高まる。なぜならば、冷却空気はパージ穴13を介して減衰体積10に進入し、減衰体積13を冷却し、次いで減衰体積10から、較正されたダクト11を通って流出する。
【0048】
この構造によって、極めて効率的な減衰効果が達成される。なぜならば、燃焼器には複数のヘルムホルツダンパが設けられており、これらのヘルムホルツダンパは、必要な場合には、燃焼器の壁部全体(すなわち、混合管2、燃焼室3及び前板2a)に沿って配置されてもよいからである。
【0049】
さらに、要求に応じて減衰体積10の様々な体積が選択されてよく、また減衰材料17を減衰体積10に導入することができるので、本発明の構造は、極めて広い範囲において圧力振動を減衰することができる。
【0050】
冷却効果も極めて効率的である。なぜならば、冷却室10内に突出した中空エレメント9,9fは、熱交換フィンのように働くからである。冷却効果を、中空エレメント9及び/又は9fにおいてパージ穴13を介して高めることもできる。
【0051】
もちろん、説明された特徴は互いに独立して提供されてよい。
【0052】
実際には、使用される材料、及び寸法を、要求及び従来技術にしたがって任意に選択することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 燃焼器
2 混合管
2a 前板
3 燃焼室
4 2及び/又は3及び/又は2aの部分
5 ライナ
6 カバープレート
7 冷却室
9 中空エレメント
9f 固定中空エレメント
10 減衰体積
11 較正されたダクト
13 パージ穴
14 冷却流れ方向
16 9の上壁
17 減衰材料
19 6の貫通孔
20 9fの肩部
22 9fのねじ山付き端部
23 ボルト
24 9fの調節可能な上壁
25 ねじ山付きカップ
26 9fのねじ山付き部分
27 火炎
F 冷却空気
G 高温ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、内側ライナ(5)と、該内側ライナ(5)と共に、介在させられた冷却室(7)を形成する外側カバープレート(6)とを含む部分(4)を有する燃焼器(1)において、前記内側ライナ(5)から、冷却室(7)内へ突出した複数の中空エレメント(9,9f)が延びており、それぞれの中空エレメント(9,9f)が、調整されたダクト(11)を介して燃焼器(1)の内部に接続された減衰体積(10)を有しており、運転中に、前記中空エレメント(9)が、圧力脈動を減衰し、付加的に、熱も伝導することを特徴とする、燃焼器(1)。
【請求項2】
中空エレメント(9,9f)が、冷却室(7)を減衰体積(10)に接続するパージ穴(13)を有する、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項3】
中空エレメント(9,9f)が、冷却流れ方向(14)に沿って整合させられている、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項4】
中空エレメント(9,9f)が、冷却流れ方向(14)に関して交互にずらされている、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項5】
中空エレメント(9,9f)が、円筒形、だ円形、翼形又はこれらの組合せである、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項6】
様々な中空エレメント(9,9f)が、様々な減衰体積(10)を形成する、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項7】
少なくとも幾つかの中空エレメント(9,9f)が、減衰材料(17)が充填された減衰体積(10)を有する、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項8】
中空エレメント(9)の上壁(16)が、カバープレート(6)から分離されている、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項9】
内側ライナ(5)を支持するために、少なくとも幾つかの中空エレメントが、カバープレート(6)に結合される固定中空エレメント(9f)を形成している、請求項1記載の燃焼器(1)。
【請求項10】
カバープレート(6)に貫通孔(19)が設けられており、該貫通孔に、固定中空エレメント(9f)が収容されている、請求項9記載の燃焼器(1)。
【請求項11】
固定中空エレメント(9f)が肩部(20)を有しており、該肩部に対してカバープレート(6)が載置されている、請求項10記載の燃焼器(1)。
【請求項12】
固定中空エレメント(9f)が、ボルト(23)を介してカバープレート(6)に結合されるねじ山付き端部(22)を有する、請求項11記載の燃焼器。
【請求項13】
固定中空エレメント(9f)が、調節可能な上壁(24)を有する、請求項9記載の燃焼器(1)。
【請求項14】
固定中空エレメント(9f)の調節可能な上壁(24)が、固定中空エレメント(9f)の対応するねじ山付き部分(26)に固定されたねじ山付きキャップ(25)を有する、請求項13記載の燃焼器(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−505427(P2013−505427A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530216(P2012−530216)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063513
【国際公開番号】WO2011/032959
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】