説明

ガスタービンエジェクタ及びその動作方法

【課題】圧縮機空気同伴効率を高めるエジェクタシステムを利用することによりタービンエンジンの冷却性能を向上させるシステムを提供すること。
【解決手段】高圧及び低圧流体流ストリーム(18)を組み合わせるためのエジェクタシステム(34)及びその動作方法が開示される。ノズルチャンバ(35)は、高圧流体流ストリームと連通し、吸込チャンバ(42)は、低圧流体流ストリーム(18)と連通する。ノズルチャンバ(35)の出口(40)は、吸込チャンバ(42)に出ていき、高圧流体流ストリームが、流れの間の層間抗力に対して複数の表面区域を有する複数流れストリームでノズルチャンバ(35)から出るように複数のノズル(48)を含む。低圧流体流ストリーム(18)は、複数のノズル(48)から出る高圧流体流ストリームにより同伴されて、中圧の流れストリームを画成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機空気同伴効率を高めるエジェクタシステムを利用することによりタービンエンジンの冷却性能を向上させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンの多段タービンを冷却するために加圧空気が圧縮機から分流される軸方向位置又は段は、当該空気によって運用されることになる特定のシステムを駆動するのに必要な圧力によって決まる。圧縮機の最も早期に利用可能な段から加圧空気を分流させると、分流空気に投入される圧縮機の仕事量が低減され、並びに分流空気すなわち分流加圧空気の温度が低くなることで、タービンの全体効率が向上することになる。従って、圧縮機の最も早期で最も低い圧力段からシステム供給圧力を得ることが望ましい。
【0003】
既知のシステムでは、多段圧縮機において複数のポートから加圧空気を分流して、冷却/シール空気を関連の多段タービンに提供している。これらのシステムは、低圧低温の圧縮機段からタービンに加圧空気を供給するために低圧抽出流路を利用し、高圧高温の圧縮機段からタービンに加圧空気を供給するために高圧抽出流路を利用する。交差流路を用いて、低圧抽出流路と高圧抽出流路を相互に接続することができる。このような交差によって、所望の圧力及び実用的な混合の空気が圧縮機から分流されるように多段タービンに分流される加圧空気の選択的制御が可能になる。
【0004】
低圧及び高圧空気は、ノズルを通る高圧空気の駆動流れの運動量を利用してノズルの周りの低圧空気の吸込流れを生成するエジェクタシステムの利用によって組み合わされる。エジェクタシステム内の高圧及び低圧空気流体ストリームの間に層間剪断力が作用し、結果として低圧空気と高圧流体ストリームの同伴(吸込流れ)を生じることになる。従って、高圧空気流内での低圧空気流の同伴を増大させて、エジェクタシステムの効率を高めることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6615574号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの実施形態において、低圧流体流ストリームと高圧流体流ストリームとを組み合わせるためのエジェクタシステムが開示される。高圧流体流ストリームと連通したノズルチャンバは、入口及び出口を有する。低圧流体流ストリームと連通した吸込チャンバは、入口及び出口を含み、ノズルチャンバの出口を受けるように構成される。ノズルチャンバの出口は、高圧流体流ストリームがノズルチャンバから出て、吸込チャンバ内に複数の高圧流体流ストリームと低圧流体流ストリームとの間の層間抗力に対して複数の表面区域を有する複数の流れストリームを画成するように、複数のノズルを含む。従って、低圧流体流ストリームは、高圧流体流ストリームによって同伴される。
【0007】
本発明の別の実施形態において、多段圧縮機からの低圧流体流ストリームを高圧流体流ストリームと組み合わせるための方法は、低圧抽出回路を通して低圧圧縮機空気を分流し、高圧抽出回路を通して高圧圧縮機空気を分流する段階を含む。低圧圧縮機空気は、エジェクタ組立体内の吸込チャンバの入口に供給される。高圧圧縮機空気は、吸込チャンバ内に配置された出口を有し、その出口に近接するノズルチャンバの入口に供給される。高圧圧縮機空気は、複数の出口ノズルを通って排出され、複数の高圧流体流ストリーム間の層間抗力に対して複数の表面区域を有し、これにより中間圧の加圧空気流れストリームにおいて吸込チャンバ内に低圧加圧空気を同伴する複数の高圧流体流ストリームを画成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の1つの例示的な実施形態によるガスタービンエンジンの部分概略軸方向断面図。
【図2】図1のエジェクタ組立体の一部の軸方向断面図。
【図3】図2のエジェクタ組立体の複数ノズルエジェクタノズルの拡大透視図。
【図4】図3の複数ノズルエジェクタノズルの性能を示す、重み付け同伴比率のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい例示的な実施形態により、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明において本発明並びにその更なる利点をより具体的に説明する。
【0010】
図1及び2を参照すると、多段圧縮機12の複数のポートから加圧空気を分流して、冷却及びシール空気を関連する多段タービン14に供給する抽出システム10が示されている。第1のケーシングポート16は、比較的低圧の加圧空気を抽出するための圧縮機12の低圧段に関連付けられている。低圧の第1の抽出回路20は、冷却及び/又はシールのために第1のケーシングポート16から第1のターゲットポート22まで延びる。第1のケーシングポート16の下流側に第2のケーシングポート24が設けられ、比較的高圧の加圧空気26を抽出するために圧縮機の高圧段に関連付けられる。第2のケーシングポート24からタービンの第2のターゲットポート30により高圧の加圧空気を流すために、高圧の第2の抽出回路28が設けられる。上述のタイプのガスタービンエンジンでは、多段圧縮機12の複数のポート16、24から抽出される冷却空気は、通常、多段タービンにおいて所望の冷却レベルを得るために、少なくとも16psiの圧力差を有することになる。低圧の第1の抽出回路20と高圧の第2の抽出回路28との間に、選択的空気流れを得るために交差回路32が更に設けられる。例示的な実施形態において、エジェクタシステムが交差回路32内に配置される。エジェクタシステムは、第2の抽出回路28から駆動入口36を介して高圧の加圧空気26を受けるノズルチャンバ35を含む。ノズルチャンバは、第1の抽出回路20からの低圧の加圧空気18を受ける吸込入口38を備える吸込チャンバ42内に配置される。高圧の加圧空気26は、ノズルチャンバ35から出て、図3のノズル出口40を通って吸込チャンバ42に入る。吸込入口38を通って吸込チャンバ42に入る低圧の加圧空気は、ノズル出口40に隣接する吸込チャンバに流入する。
【0011】
ノズル出口40は、入口端部44と出口端部46とを含む。ノズル40の出口端部は、複数の高圧送給空気ノズル48を含み、これを通って高圧の加圧空気がノズルチャンバ35から出て、吸込チャンバ42に入る。高圧の加圧空気の吸込チャンバ42への噴射は、空気の駆動流の運動量を利用して、吸込チャンバ42内の吸込流れを構築する。複数のノズル48を使用することにより、単一のノズルエジェクタにより画成される表面区域を超える、ノズルチャンバ35から出る高圧加圧空気26と吸込チャンバ42内の低圧加圧空気18との間の層間抗力の表面区域が増大する。従って、低圧加圧空気流れの同伴は、単一のノズルエジェクタよりも改善される。非限定的な実施形態において、ノズル40の出口端部46に配置される複数の高圧送給空気ノズル48の数は、図3に示す3つのノズルのように、奇数であるのが好ましい。奇数のノズルを使用すると、非対称的なノズル配置が画成され、これは、これらから生じる流動誘起の振動及び音響効果を低減するのに優先的作用がもたらされることが分かっている。このような音響効果は、偶数のノズル配置のような対称的状況で生じる可能性の方がより高い。
【0012】
吸込チャンバ42から出る加圧空気は、高圧加圧空気26と、複数のノズル40のノズル48から出る高圧加圧空気によって効果的に同伴される低圧加圧空気18との混合気を含む。高圧及び低圧の加圧空気混合気52は、吸込チャンバ42から出る加圧空気の中間圧力及び温度をもたらすことになる。中間加圧空気52は、混合管体54に入り、ディフューザ56を通過した後、吐出出口58を通ってタービン14の第2のターゲットポート30に供給される。吸込チャンバ42を流れる高圧及び低圧加圧空気26、18の間の層間抗力に対する表面区域が増大したことにより、同伴比率(高圧空気の駆動力により引き上げられる低圧空気の量)が増大し、更には運転条件の広範な範囲にまでわたることになる。低圧空気の同伴の改善によって、タービンシステムの効率を高めることができる。
【0013】
様々なノズル構造に対するエジェクタ性能を評価するために、数値流体力学(CFD)モデルが作成された。図4に示すように、本発明の複数ノズルエジェクタシステムの用途の1つの実施例により、同様の用途での単一のノズルエジェクタよりも優れた同伴性の改善が得られる。周囲温度範囲全体にわたる重み付け同伴比率の積分として定義される全体効率に関して、図4に示す複数ノズル設計では全体効率の5%の増大が示されている。この実施例は、単一ノズルシステムよりも優れた複数ノズルエジェクタシステムの性能の向上を示す傾向にあるが、全体効率の実際のパーセンテージ増大は、特定用途に基づいて異なることが予想される。
主として、多段圧縮機12から多段タービン14への加圧空気を分流する抽出システム10に適用することができるような、本発明の複数ノズルエジェクタシステムについて説明してきたが、複数ノズルエジェクタシステムには、2psi程度のような異なる圧力での空気に限定されない複数の流体ストリームが効率的な方法で組み合わされる、多くの用途があることが企図される。
【0014】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、更に、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0015】
10 最適抽出システム
12 多段圧縮機
14 多段タービン
16 第1のケーシングポート
18 低圧加圧空気
20 第1の抽出回路
22 第1のターゲットポート
24 第2のケーシングポート
26 高圧加圧空気
28 第2の抽出回路
30 第2のターゲットポート
32 交差回路
34 エジェクタシステム
35 ノズルチャンバ
36 駆動入口
38 吸込入口
40 複数のノズル出口
42 吸込チャンバ
44 複数のノズル入口端部
46 複数のノズル出口端部
48 複数の 高圧 供給 空気ノズル
52 高圧及び低圧抽気組み合わせ
54 混合管体
56 ディフューザ
58 吐出出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流体流ストリーム(26)を低圧流体流ストリーム(18)と組み合わせるエジェクタシステム(34)であって、
高圧流体流ストリーム(26)と連通し、入口(36)及び出口(40)を有するノズルチャンバ(35)と、
低圧流体流ストリーム(18)と連通し、入口(38)及び出口を有し、前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)を受けるように構成された吸込チャンバ(42)と、
を備え、
前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)が複数のノズル(48)を画成す、前記高圧流体流ストリーム(26)が、前記ノズルチャンバ(35)から出て、前記吸込チャンバ(42)において前記複数の高圧流体流ストリームと前記低圧流体流ストリーム(18)との間の層間抗力に対して複数の表面区域を有する複数の流れストリームを画成す、
前記低圧流体流ストリーム(18)が前記高圧流体流ストリーム(26)によって同伴される、
エジェクタシステム(34)。
【請求項2】
前記ノズルチャンバの出口(40)が、3つのノズル(48)を含む、
請求項1記載のエジェクタシステム(34)。
【請求項3】
前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)が、奇数のノズル(48)を含む、
請求項1記載のエジェクタシステム(34)。
【請求項4】
前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)が、非対称のノズル配置を含む、
請求項1記載のエジェクタシステム(34)。
【請求項5】
タービンエンジンにおいて、
多段圧縮機(12)及び多段タービン(14)と、
前記多段圧縮機(12)から前記多段タービン(14)に加圧空気を分流するように動作可能な抽出システム(10)と、
を備え、前記抽出システムが、
低圧加圧空気(18)を前記タービン(14)に分流するための第1の抽出回路(20)及び高圧加圧空気(26)を前記タービン(14)に分流するための第2の抽出回路(28)と、
前記第1及び第2の抽出回路(20、28)の間で選択的流れを得るために延びる交差回路(32)と、
前記低圧加圧空気(18)と前記高圧加圧空気(26)とを組み合わせるために前記交差回路(32)内に配置され、前記第2の抽出回路(28)と連通したノズルチャンバ(35)を含み、前記高圧加圧空気(26)を受けるための入口(36)と、複数のノズル(48)を画成する出口(40)とを有するエジェクタ組立体(34)と、
前記第1の抽出回路(20)と連通し、前記低圧加圧空気(18)を受けるための入口(38)と出口とを有し、前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)を受けるように構成された吸込チャンバ(42)と、
前記複数のノズル(48)によって画成され、複数の高圧流体流ストリーム間の層間抗力に対して複数の表面区域を有し、これにより前記吸込チャンバ(42)内に前記低圧加圧空気(18)を同伴して中間圧の加圧空気流れストリーム(52)を画成する、複数の高圧流体流ストリームと、
を備えるタービンエンジン。
【請求項6】
前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)が、3つのノズル(48)を含む、
請求項5記載のタービンエンジン。
【請求項7】
前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)が、奇数のノズル(48)を含む、
請求項5記載のタービンエンジン。
【請求項8】
前記ノズルチャンバ(35)の出口(40)が、非対称のノズル配置を含む、
請求項5記載のタービンエンジン。
【請求項9】
タービンエンジンの多段圧縮機(12)からの高圧流体流ストリーム(26)を低圧流体流ストリーム(18)と組み合わせるための方法であって、
低圧抽出回路(20)を通して低圧圧縮機空気(18)を分流し、高圧抽出回路(28)を通して高圧圧縮機空気(26)を分流する段階と、
前記低圧圧縮機空気(18)をエジェクタ組立体(34)における吸込チャンバ(42)の入口(38)に供給する段階と、
前記吸込チャンバ(42)内に配置され且つその出口に近接する複数のノズル(48)を有するノズルチャンバ(35)の入口(36)に前記高圧圧縮機空気(26)を供給する段階と、
前記高圧圧縮機空気(26)を前記複数の出口ノズル(48)を通して排出し、前記複数のノズル(48)によって画成され、複数の高圧流体流ストリーム間の層間抗力に対して複数の表面区域を有し、これにより前記吸込チャンバ(42)内に前記低圧加圧空気(18)を同伴して中間圧の加圧空気流れストリーム(52)を画成する、複数の高圧流体流ストリームを画成する段階と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−101315(P2010−101315A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235838(P2009−235838)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】