説明

ガスタービンエンジン、アクセサリギアボックスシステムおよびアクセサリギアボックスへのシールエア供給方法

【課題】ガスタービンエンジンに用いられるアクセサリギアボックスシステムを提供する。
【解決手段】ガスタービンエンジンのアクセサリギアボックスシステムは、ファンフレームに取付けられたアクセサリギアボックス50を備える。アクセサリギアボックス50は、少なくとも1つのシールエアコア52Cを画定するアクセサリギアボックスハウジング52と、少なくとも1つのシールエアコア52Cを通してシールエア流を通流させるギアボックスハウジング52に取付けられたアクセサリ圧縮機54と、を備える。アクセサリギアボックスハウジング52は、アクセサリ圧縮機54と連通する複数のシールエアコア52Cを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関し、特に、ガスタービンエンジンのアクセサリギアボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、発電機、燃料ポンプ、オイルポンプ、油圧ポンプなど(これに限定されない)のアクセサリ(付属品)システムを駆動するように機械的に駆動されるアクセサリギアボックスを有する。軍事用および民間用航空機の電力要求により、航空機内の電気システム数が増加するにつれて、アクセサリギアボックスに対する要求が増加し続けている。
【0003】
従来のガスタービンエンジン用アクセサリギアボックスは、エンジンケース部に取付けられたギアボックスハウジングを用いる。ラビリンスシールによって圧縮された空気は、通常、アクセサリギアボックスハウジング内の圧力を維持し、かつアクセサリシステムを駆動するアクセサリシャフトの周囲からオイルが漏出しないように用いられる。エンジンからの抽気(ブリードエア)は、ギアボックスハウジング内に組み込まれたパイプコアを通ってアクセサリシャフトラビリンスシールにシールエアとして導かれる。
【0004】
抽気は、シールエアが所定の温度(約350°F、177℃)以下となるように、通常、エンジンセクションから供給され、通常アルミニウム製のギアボックスハウジングおよびラビリンスシールに影響が及ばないようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような抽気によってエンジン効率が低下する場合や上記の温度で利用できない場合がある。シールコアの経路が高圧領域に位置するため、相対的に高温の抽気に対応するように要求される構造的な調整によってギアボックスハウジングの重量が増加してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な実施例によるアクセサリギアボックスシステムは、少なくとも1つのシールエアコアを画定するギアボックスハウジングと、少なくとも1つのシールエアコアを通してシールエア流を通流させるギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリ圧縮機と、を備える。
【0007】
本発明の例示的な実施例によるガスタービンエンジンは、軸を中心に画定されたエンジンフレーム部と、軸に沿って回転可能に取付けられたエンジンスプールと、フレーム部に取付けられ、エンジンスプールによって駆動されるアクセサリギアボックスと、を備え、アクセサリギアボックスは、少なくとも1つのシールエアコアを画定するギアボックスハウジングと、少なくとも1つのシールエアコアを通してシールエア流を通流させるギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリ圧縮機と、を備える。
【0008】
本発明の例示的な実施例によるアクセサリギアボックスにシールエアを供給する方法は、アクセサリギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリ圧縮機でシールエアを圧縮することと、アクセサリギアボックスハウジング内の少なくとも1つのシールエアコアを通してシールエアをアクセサリギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリシャフトシールに導くことと、を含む。
【0009】
当業者であれば、以下に記す発明を実施するための形態から本発明の種々の特徴および利点を理解することができよう。実施形態に付随する図面の簡単な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に用いられる例示的なガスタービンエンジンの概略図。
【図2A】アクセサリギアボックスシステムの概略図。
【図2B】アクセサリギアボックスハウジングの概略図。
【図2C】図2Bのアクセサリギアボックスハウジングの一部分内における複数のシールエアコアの概略図。
【図3】少なくとも1つのシールエアコアに関連するアクセサリシャフトシールの概略的な部分断面図。
【図4】図2Aの線4−4に沿ったアクセサリギアボックスシステムの断面図。
【図5】本発明に用いられるアクセサリ圧縮機の例示的な一実施例を示す概略図。
【図6】本発明に用いられるアクセサリ圧縮機の他の実施例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1にガスタービンエンジン10の概略図を示す。空気Aは、前方に配設されたファン14からガスタービンエンジン10へと流入し、その後、2つの空気流、すなわち、コア空気16およびバイパス空気18に分流する。コア空気16は、低圧圧縮機20および高圧圧縮機22によって連続的に加圧され、次いで、燃焼器24において燃料と混合されて燃焼する。コア空気16は、排気燃焼ガス26として燃焼器24から流出して、高圧タービン28および低圧タービン30において連続的に膨張し、その後、エンジン10から排出される。排気燃焼ガス26およびバイパス空気18により、前方への推力スラストが生じる。低圧タービン30は、長手方向の中心軸36を中心に回転する低ロータスプール34を介して低圧圧縮機20を駆動し、高圧タービン28は、高ロータスプール38を介して高圧圧縮機22を駆動する。図示した実施例では、2つの圧縮機20,22および2つのタービン28,30を示しているが、これに限定されず、他のエンジン構成であってもよいことを理解されたい。
【0012】
一つの実施例では、高ロータスプール38は、外部に装着されたアクセサリギアボックスシステム40を遠隔駆動する。タワーシャフト42は、軸36の近傍において、第1の傘歯車セット44Aを介して高ロータスプール38と係合して、アングルギアボックス(angle gearbox)46内の第2の傘歯車セット44Bを介して半径方向外側に動力を伝達する。次いで、動力は、レイシャフト(副軸)48を介してアクセサリギアボックス50に伝えられる。アクセサリギアボックス50は、少なくとも1つのアクセサリ62に動力を供給する歯車列51を備える。
【0013】
アクセサリギアボックス50は、エンジン重量に対する付加を最小とし、かつ複雑性を低減させるように、エンジンフレーム部分F(本実施例ではファンフレーム部分として図示する)に取り付けられる。他の実施例として、種々のギアボックスシステム、取付位置および取付形態を用いてもよいことを理解されたい。
【0014】
図2Aを参照すると、アクセサリギアボックス50は、アクセサリギアボックスハウジング52を備え、ハウジング52は、アクセサリ圧縮機(accessory compressor)54と連通する複数のシールエアコア52Cを有する。複数のシールエアコア52C(図2B、2Cにも図示)は、アクセサリギアボックスハウジング52に組み込まれている。
【0015】
図3を参照すると、アクセサリギアボックスハウジング52において、アクセサリシャフトシール56A〜56Cからオイルが漏出しないように、シールエアが用いられる。アクセサリ圧縮機54からのシールエアSは、複数のシールエアコア52Cを通流し、各、アクセサリシャフトシール56A〜56Cの外側部分58まで流れる(図3)。つまり、アクセサリ圧縮機54によって生じるシールエアSは、シールエアコア52Cを介して各アクセサリシャフトシール56A〜56Cと連通する。
【0016】
各アクセサリシャフトシール56A〜56Cにおいて、シールエアSは、外側部分58まで流れ、回転可能に支持された各アクセサリシャフト60に沿って軸方向に流れる。シールエアS1は、アクセサリシャフト60によって駆動されるアクセサリ62(概略的に示す)に向かって流れ、アクセサリギアボックスハウジング52内へのちりの流入を防ぐ。シールエアS2は、アクセサリギアボックスハウジング52の内部へと流れ、アクセサリギアボックスハウジング52内のオイルを保持する。
【0017】
図4を参照すると、アクセサリ圧縮機54は、駆動シャフト63を介し、アクセサリギアボックス50によって直接駆動される。別の実施例として、電動機などの他の駆動システムによってアクセサリ圧縮機54に動力を供給してもよい。アクセサリ圧縮機54により、アクセサリシャフトシール56A〜56Cへのエンジン抽気の必要性およびそれに伴う劣化が排除される。
【0018】
アクセサリギアボックスハウジング52の内部は、通常、局所的な周囲より高い圧力で作動する。ギアボックス内部の圧力は、離陸時において、通常、局所的な周囲より約10PSI(重量ポンド毎平方インチ、約68950Pa)高い。この圧力は、アクセサリシャフトシール56A〜56Cによってシールされる。アクセサリギアボックスハウジング52にシールを適切に付与するために、アクセサリ圧縮機54は、アクセサリギアボックスハウジング52の内部から空気を吸引し、この空気を僅かに圧縮するだけでギアボックスの内部圧力より高くなるようにしている。すなわち、アクセサリギアボックスハウジング52の内部空気は、局所的な圧力より高くなっており、したがって、アクセサリ圧縮機54がアクセサリギアボックスハウジング52内部空気を僅かに圧縮することにより効果的なシールが付与される。効果的なシールを付与するためには、通常、ギアボックス内部の圧力より約2PSI(約13790Pa)高い。別の実施例として、アクセサリ圧縮機54は、周囲と連通していてもよい。周囲は、アクセサリギアボックスハウジング52内よりも相対的に圧力が低いため、アクセサリ圧縮機54には、やや高い能力が要求される。
【0019】
図5を参照すると、アクセサリ圧縮機54は、液体リング型アクセサリ圧縮機(liquid ring accessory compressor)とすることができる。ハウジング64内でオフセットしているインペラ65は、回転して、複数のインペラフィン66とハウジング64との間の空間に空気を捕捉する。インペラ62が回転すると、空気が各フィン66の間の空間に捕捉される。捕捉された空気は、インペラ62とハウジング64との間で圧縮機され、管状のオイル68によりシールされる。空気がインペラ62により圧縮される際、アクセサリ圧縮機54の一方の側における入口ポート70が圧縮のために空気を吸引し、次いで他方の側における出口ポート72から排気するように、インペラ中心に向かう方向かつ離れる方向への流体面の動きにより、滑り接触することなく、空気が吸引および排気される。
【0020】
図6を参照すると、別の実施例として、アクセサリ圧縮機54’をスライドベーン型アクセサリ圧縮機(sliding vane accessory compressor)としてもよい。ベーン82は、ロータ84におけるスロット83内で半径方向内側および外側にスライドする。ロータ84は、ハウジング86内で中心から外れて位置している。ロータ84が回転すると、ベーン82はハウジング86に対してスライドする。ロータ84が中心から外れて位置するため、ベーン82間の空気の量が回転の半分にわたって増加し、回転の残りの半分にわたって減少するように、ベーン82がロータ84に対して移動する。入口ポート88は、最大空気量の位置にあり、出口ポート90は、最小空気量の位置にある。入口ポート88は、アクセサリ圧縮機54’の一方の側に位置して圧縮のために空気を吸引し、他方の側に位置する出口ポート90から空気が排気される。
【0021】
液体リング型アクセサリ圧縮機は、摩耗を最小限にし、スライドベーン型アクセサリ圧縮機は、熱効率が優れている。温度上昇(断熱圧縮および効率損失)およびギアボックス内部への伝熱もまた相対的に低いように、アクセサリ圧縮機の圧力上昇は相対的に低い。シールエア流は、約250°F(約121℃)(通常時)であり、高温の日は、約300°F(約147℃)を容易に維持する。そのような相対的に低いシールエアの温度によってギアボックスハウジングの材料の耐用年数が延びる。
【0022】
図示した実施例により、特定の構成要素の構成を開示したが、他の構成であってもよいことを理解されたい。
【0023】
特定のステップの順序で、図示、説明し、クレイムしているが、特に明示しない限り、ステップはどのような順序でもよく、別々であっても、また組み合わされても、本発明の利点を得ることを理解されたい。
【0024】
上記の記載は、例示的なものに過ぎず、これに限定されない。種々の変更形態および修正形態が可能である。本発明の特定の実施例を例示的に示したが、当業者であれば、修正形態が本発明の範囲に属することを理解されよう。したがって、本発明の内容および範囲を決定するために、以下の特許請求の範囲を検討されたい。
【符号の説明】
【0025】
10 ガスタービンエンジン
14 ファン
16 コア空気
18 バイパス空気
20 低圧圧縮機
22 高圧圧縮機
24 燃焼器
26 排気燃焼ガス
28 高圧タービン
30 低圧タービン
34 低ロータスプール
36 軸
38 高ロータスプール
40 アクセサリギアボックスシステム
42 タワーシャフト
44A 第1の傘歯車セット
44B 第2の傘歯車セット
46 アングルギアボックス
48 レイシャフト
50 アクセサリギアボックス
51 歯車列
52 アクセサリギアボックスハウジング
52C シールエアコア
54 アクセサリ圧縮機
56A〜56C アクセサリシャフトシール
58 外側部分
60 アクセサリシャフト
62 アクセサリ
63 駆動シャフト
65 インペラ
64 ハウジング
66 インペラフィン
68 オイル
70 入口ポート
72 出口ポート
82 ベーン
83 スロット
84 ロータ
86 ハウジング
88 入口ポート
90 出口ポート
F エンジンフレーム部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシールエアコアを画定するギアボックスハウジングと、
前記少なくとも1つのシールエアコアを通してシールエアを通流させる前記ギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリ圧縮機と、
を備えることを特徴とするガスタービンエンジンのアクセサリギアボックスシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのシールエアコアが、アクセサリシャフトシールにおいて終端をなすことを特徴とする請求項1に記載のアクセサリギアボックスシステム。
【請求項3】
前記アクセサリシャフトシールを通して配設されたアクセサリシャフトをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のアクセサリギアボックスシステム。
【請求項4】
前記アクセサリギアボックスハウジングが、少なくとも1つのアクセサリに動力を供給する歯車列を有することを特徴とする請求項1に記載のアクセサリギアボックスシステム。
【請求項5】
前記アクセサリ圧縮機が、前記歯車列により駆動されることを特徴とする請求項4に記載のアクセサリギアボックスシステム。
【請求項6】
軸を中心に画定されたエンジンフレーム部と、
前記軸に沿って回転可能に取付けられたエンジンスプールと、
前記フレーム部に取付けられ、前記エンジンスプールによって駆動されるアクセサリギアボックスと、
を備え、
前記アクセサリギアボックスは、
少なくとも1つのシールエアコアを画定するギアボックスハウジングと、
前記少なくとも1つのシールエアコアを通してシールエアを通流させる前記ギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリ圧縮機と、
を備えることを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシールエアコアが、アクセサリシャフトシールにおいて終端をなすことを特徴とする請求項6に記載のガスタービンエンジン。
【請求項8】
前記アクセサリシャフトシールを通して配設されたアクセサリシャフトをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載のガスタービンエンジン。
【請求項9】
前記ギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリ構成部品をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のガスタービンエンジン。
【請求項10】
前記アクセサリ構成部品が、前記アクセサリシャフトによって駆動されることを特徴とする請求項9に記載のガスタービンエンジン。
【請求項11】
前記エンジンフレーム部が、ファンケースからなることを特徴とする請求項6に記載のガスタービンエンジン。
【請求項12】
アクセサリギアボックスにシールエアを供給する方法であって、
アクセサリギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリ圧縮機でシールエアを圧縮することと、
前記アクセサリギアボックスハウジング内の少なくとも1つのシールエアコアを通して前記シールエアを、前記アクセサリギアボックスハウジングに取付けられたアクセサリシャフトシールに導くことと、
を含むことを特徴とするシールエア供給方法。
【請求項13】
前記アクセサリギアボックスハウジング内の空気からシールエアを圧縮することを特徴とする請求項12に記載のシールエア供給方法。
【請求項14】
環境空気からシールエアを圧縮することを特徴とする請求項12に記載のシールエア供給方法。
【請求項15】
前記アクセサリギアボックスハウジング内に設けられた歯車列で前記アクセサリ圧縮機を駆動することをさらに含む請求項12に記載のシールエア供給方法。
【請求項16】
電動機で前記アクセサリ圧縮機を駆動することをさらに含む請求項12に記載のシールエア供給方法。
【請求項17】
ガスタービンエンジンで前記歯車列を駆動することをさらに含む請求項12に記載のシールエア供給方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−264371(P2009−264371A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65358(P2009−65358)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】