説明

ガスハイドレートの生成方法及び装置

【課題】生成装置の小型化、簡略化を図ると共に、ガスハイドレートの生成速度の改善を図る。
【解決手段】生成器1内で原料ガスgと原料水wとを反応させてガスハイドレートnを生成するガスハイドレートの生成方法である。生成器1内に氷スラリーs又は粉粒体状の氷iを供給し、原料ガスgと原料水wとが反応してガスハイドレートnとなる時に発生する反応熱を氷の冷熱によって除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、天然ガスを貯蔵及び輸送する方法としては、天然ガスを液化温度まで冷却してLNG(液化天然ガス)にした状態で貯蔵及び輸送する方法が一般的である。しかし、LNGの主成分であるメタンを液化させる場合は、極低温条件(−162℃)が必要であり、こうした条件を維持しながら、貯蔵及び輸送を行うには、専用の貯蔵装置やLNG船などの専用の輸送手段が必要となる。こうした貯蔵装置や輸送船などの製造及び維持管理は、高コストを要するため、上記の方法に代わる低コストの貯蔵及び輸送方法が研究されている。
【0003】
こうした研究の結果、天然ガスと原料水とを反応させて固体状態の水和物(ガスハイドレート)を生成し、この固体状態のまま貯蔵及び輸送する方法が見出され、有望視されている。この方法では、LNGのような極低温を必要としないため、その取り扱いも比較的容易である。このため、既存の冷凍装置、或いは既存のコンテナ船を、若干、改良したものを貯蔵装置、或いは輸送手段として利用可能となり、大幅な低コスト化が図れるものとして期待されている。
【0004】
ところで、天然ガスハイドレートを生成する場合、圧力容器内の原料水を攪拌機で攪拌しながら天然ガスを気泡状に注入する攪拌バブリング方式と、圧力容器内に充満した天然ガス内に原料水を噴霧する噴霧方式(例えば、特許文献1参照。)との2つの方式があるが、天然ガスハイドレートを生成する生成速度は、攪拌バブリング方式の方が高いと言われている。しかし、いずれの方式でも、天然ガスと原料水とが反応して天然ガスハイドレートになる時に発生する反応熱(生成熱)の除去が問題になっている。
【0005】
従来は、圧力容器の外部に熱交換器を設け、圧力容器内の原料水を外部の熱交換器によって冷却又は除熱した後、再度、圧力容器に戻しているが、この熱交換器は、液−液タイプの熱交換器であり、原料水の氷結を防ぐことから、圧力容器内の水相の温度T1 と、熱交換器に供給する冷ブラインの温度T2 との温度差ΔTを大きくすることが難しい。このため、必然的に熱交換器が大型になるという問題があると同時に、このΔTを大きくしようとして熱交換器のLNGなどの極低温の冷媒を供給すると、伝熱コイルの表面に氷が付着して伝熱コイルの熱伝導度が悪化したり、最悪の場合、管路が閉塞するなどの問題が発生する所以である。
【特許文献1】特開2003−105362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、生成装置の小型化、簡略化を図ると共に、ガスハイドレートの生成速度の改善を図ることができるガスハイドレートの生成方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係るガスハイドレートの生成方法は、生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成方法において、前記生成器内に氷スラリー又は粉粒体状の氷を供給し、原料ガスと原料水とが反応してガスハイドレートとなる時に発生する反応熱を氷の冷熱によって除去することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明に係るガスハイドレートの生成方法は、請求項1記載のガスハイドレートの生成方法において、前記生成器に供給する氷スラリー又は粉体状の氷の供給量を制御して生成器内の圧力を設定圧に維持することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明に係るガスハイドレートの生成装置は、生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成装置において、前記生成器内の原料水を循環させる循環路を前記生成器に設けると共に、前記循環路の経路中に容器状の混合器を設け、かつ、該混合器内を通過する原料水に粉体状の氷を投入して氷スラリーを形成することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明に係るガスハイドレートの生成装置は、生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成装置において、前記生成器にスクリューフィーダーを設け、該スクリューフィーダーによって粉体状の氷を前記生成器内に投入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、請求項1に記載の発明は、生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成方法において、前記生成器内に氷スラリー又は粉粒体状の氷を供給し、原料ガスと原料水とが反応してガスハイドレートとなる時に発生する反応熱を氷の冷熱によって除去するため、80kcal/kgの氷の融解熱を利用して原料ガスと原料水とが反応してガスハイドレートとなる時に発生する反応熱を、直接、除去することができる。このため、ガスハイドレートの生成条件が安定すると共に、ガスハイドレートの生成速度が改善され、粒径の揃った高い品位のガスハイドレートを生成することができるようになった。従って、後工程にある脱水器などの負担を軽減することが可能となった。
【0012】
請求項2に記載の発明に係るガスハイドレートの生成方法は、請求項1記載のガスハイドレートの生成方法において、前記生成器に供給する氷スラリー又は粉体状の氷の供給量を制御して生成器内の圧力を設定圧に維持するので、ガスハイドレートの生成条件が安定すると共に、ガスハイドレートの生成速度が改善され、粒径の揃った高い品位のガスハイドレートを生成することができるようになった。
【0013】
請求項3に記載の発明に係るガスハイドレートの生成方法は、生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成装置において、前記生成器内の原料水を循環させる循環路を前記生成器に設けると共に、前記循環路の経路中に容器状の混合器を設け、かつ、該混合器内を通過する原料水に粉体状の氷を投入して氷スラリーを形成するので、従来の液−液タイプの熱交換器が軽減され、生成器の附帯設備の簡素化、簡略化を図ることが可能となった。その上、80kcal/kgの氷の融解熱を利用して原料ガスと原料水とが反応してガスハイドレートとなる時に発生する反応熱を、直接、除去することができる。このため、ガスハイドレートの生成条件が安定すると共に、ガスハイドレートの生成速度が改善され、粒径の揃った高い品位のガスハイドレートを生成することができるようになった。従って、後工程にある脱水器などの負担を軽減することが可能となった。
【0014】
請求項4に記載の発明に係るガスハイドレートの生成方法は、生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成装置において、前記生成器にスクリューフィーダーを設け、該スクリューフィーダーによって粉体状の氷を前記生成器内に投入するので、従来の液−液タイプの熱交換器や混合器などが不要になり、より一層、生成器の附帯設備の簡素化、簡略化を図ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係るガスハイドレート生成装置の概略構成図であり、生成器1は、耐圧容器2内に無蓋の反応器3を内蔵すると共に、反応器3内の原料水wを循環させる原料水循環路4を備えている。この原料水循環路4の出口5は、原料水wの液面6下に位置している。耐圧容器2は、容器内の圧力を検出する圧力計7と、耐圧容器2内のガスハイドレート(NGH)nを排出する排出バルブ8を備えている。
【0016】
上記原料水循環路4は、原料水wの流れに沿って循環ポンプ9と、熱交換器10と、容器状の混合器11とを有している。ここで、原料水を供給する給水管12は、循環ポンプ9の上流側に位置するように原料水循環路4に接続している。また、原料ガスgを供給するガス供給管13は、反応器3内に設けたスパージャ14に接続している。更に、耐圧容器2の上部空間15は、ガス循環用の配管16を介してガス供給管13に接続しており、ブロワ17によって耐圧容器2の上部空間15に溜まった原料ガスgをガス供給管13に還流するようになっている。
【0017】
他方、混合器11の側には、製氷器18と、破砕機19と、スクリューフィーダー20とを設け、製氷器18で製造した氷片を破砕機19で細かに破砕して粉体状にし、この粉体状の氷iをスクリューフィーダー20によって混合器11に供給するようになっている。また、製氷器18に給水する第2の給水管21に流量調製弁22を設けると共に、この流量調製弁22の制御を、圧力計7の計測値を入力するコントローラ23によって行うようにしている。
【0018】
ここで、製氷器としては、氷点以下に冷却した容器の内面に水を吹き付けて薄い氷の層を形成し、この氷の層を掻取り手段によって掻き取るようにしたもの、或いは、氷点以下のガス中に水を噴霧して微細な氷を製造するようにしたものなどを挙げることができる。後者の場合は、破砕機が不要となる。また、氷の粒径としては、0.5〜3.0mmの範囲が好ましい。0.5mm未満の場合は、融け易く取り扱いが難しい。3.0mmを超えると、搬送が困難となる。
【0019】
次に、このガスハイドレート生成装置の作用について説明する。
図1に示すように、反応器3内の原料水wにスパージャ14から原料ガスgを気泡状に噴出すると、反応器3内で原料ガスgと原料水wとが反応してガスハイドレートとなる。このガスハイドレートnは、反応器3の上端から溢れて耐圧容器2内に貯蔵される。その際、リボンスクリューなどによってガスハイドレートを積極的に払い出すようにしても差し支えがない。
【0020】
他方、ブロワ17を運転することにより、耐圧容器2の上部区間15に溜まった原料ガスgは、配管16を通ってガス供給管13に還流される。また、循環ポンプ9を運転することにより、反応器3内の原料水wが原料水循環路4に沿って流れ、熱交換器10および混合器11を通過する。そこで、製氷器18で製造した氷片(図示せず)を破砕機19で破砕して粉体状の氷とし、この粉体状の氷iをスクリューフィーダー20によって原料水循環路4に供給すると、原料水循環路4内を流れている原料水w内に粉体状の氷iが混入し、氷スラリーsとなって反応器3内に供給される。そして、原料ガスgと原料水wとが反応してガスハイドレートnとなる時に発生する反応熱が氷iの冷熱によって除去される。
【0021】
ところで、反応器3内の水温が設定値より低下して原料ガスgと原料水wとの反応速度が上昇すると、耐圧容器2内の圧力が設定値より低下するので、コントローラ23によって第2の供給管21に設けた流量調製弁22が絞られ、通水量、強いては、氷スラリーsの供給量が低下する。逆に、反応器3内の水温が設定値より上昇して原料ガスgと原料水wとの反応速度が低下すると、耐圧容器2内の圧力が設定値より上昇するので、コントローラ23によって第2の供給管21に設けた流量調製弁22が弛められ、通水量、強いては、氷スラリーiの供給量が上昇する。
【0022】
以上の説明では、原料水循環路4の経路に設けた混合器11に粉粒体状の氷iを供給する場合について説明したが、例えば、原料水循環路4に、直接、粉粒体状の氷iを供給するようにしても支障がない。また、反応器3に粉粒体状の氷iを、直接、投入するようにしても支障がない。また、氷の代わりに過冷却水を使用することにも考えられるが、その場合には、過冷却水の供給量が氷の40倍になるという問題がある。すなわち、仮に、原料水の温度を5℃、過冷却水の温度を3℃とすると、その差が2℃となることから、水の顕熱は、2kcal/kgとなる。他方、氷の融解熱は、80kcal/kgであるから、過冷却水の供給量は、80/2=40倍となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るガスハイドレートの生成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 生成器
g 原料ガス
i 粉粒体状の氷
n ガスハイドレート
s 氷スラリー
w 原料水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成方法において、前記生成器内に氷スラリー又は粉粒体状の氷を供給し、原料ガスと原料水とが反応してガスハイドレートとなる時に発生する反応熱を氷の冷熱によって除去することを特徴とするガスハイドレートの生成方法。
【請求項2】
前記生成器に供給する氷スラリー又は粉体状の氷の供給量を制御して生成器内の圧力を設定圧に維持することを特徴とする請求項1記載のガスハイドレートの生成方法。
【請求項3】
生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成装置において、前記生成器内の原料水を循環させる循環路を前記生成器に設けると共に、前記循環路の経路中に容器状の混合器を設け、かつ、該混合器内を通過する原料水に粉体状の氷を投入して氷スラリーを形成することを特徴とするガスハイドレートの生成装置。
【請求項4】
生成器内で原料ガスと原料水とを反応させてガスハイドレートを生成するガスハイドレートの生成装置において、前記生成器にスクリューフィーダーを設け、該スクリューフィーダーによって粉体状の氷を前記生成器内に投入することを特徴とするガスハイドレートの生成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−238826(P2007−238826A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64998(P2006−64998)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】