説明

ガスハイドレート製造装置

【課題】水切り部の脱水スクリーンの穴径を可変とし、運転状況に応じた対応が可能であるガスハイドレート製造装置。
【解決手段】原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーを脱水器12によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造する装置である。前記脱水器12の水切り部19にスリット状や菱形等の任意の形状の第1開口部25を設けると共に、前記水切り部19の外側に、前記第1開口部25に対向する第2開口部26を持つ水切り部制御用外筒24を嵌合させる。該水切り部制御用外筒24の変位により前記第1開口部25の開口の度合を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、その後、このガスハイドレートを脱水器によって脱水して低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メタンなどの炭化水素を主成分とする天然ガスを貯蔵および輸送する方法として、一般に、ガス田から天然ガスを採取した後、液化温度まで冷却し、液化天然ガス(LNG)とした状態で貯蔵および輸送する方法が採られているが、上記のように、天然ガスをLNGとして貯蔵、あるいは輸送するためには、多大の費用が必要になっている。
【0003】
従って、近年、天然ガスを水と水和させて固体状態の水和物、すなわち、天然ガスハイドレート(NGH)を生成し、そのままの状態で貯蔵、あるいは輸送することが検討されている。この天然ガスハイドレートは、比較的容易に得られる温度および圧力条件下において製造可能であり、そのため、製造、貯蔵および輸送コストが少なくなり、斯界から注目されている。
【0004】
ところで、天然ガスハイドレートは、原料ガスと水とを接触させて水和物として固体化させたものであるが、通常、多量の水を含んだスラリー状となる。したがって、このスラリー状の天然ガスハイドレートを貯蔵および輸送すれば、この貯蔵および輸送にかかるコストが膨大になってしまう。
【0005】
そこで、含水率の低い天然ガスハイドレートを生成し、その貯蔵や輸送にかかるコストを低減するには、スラリー状の天然ガスハイドレートを脱水器に導入して未反応水を脱水除去する必要がある。係る脱水器としては、従来、横型スクリュープレス型脱水装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−105362号(第7−10頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このようなスクリュープレス型脱水装置は、メッシュ加工した内壁と、この内壁の外側にあって外殻を構成する筒体との二重構造になっており、内壁内に設置したスクリュー軸によってスラリー状の天然ガスハイドレートを強制的に前進させることによって内壁に加工したメッシュから水を除去するようにしている。
【0007】
このため、脱水中に天然ガスハイドレートの多くが水と一緒に内壁のメッシュ孔をすり抜け、結果的に天然ガスハイドレートの回収率が低下するという問題がある。
【0008】
また、スクリュー軸を高トルクで回転させるために、動力費がかかるという問題がある。更に、内部が高圧の状態で高トルクを発生させるため、設備全体が過重になっており、スクリュー軸を高圧から大気圧の領域でシールする必要がある。
【0009】
このような問題を解決するため、本発明者らは、従来のような機械的な強制脱水ではなく、重力を利用した塔状の脱水器について検討した。この脱水器1は、図6に示すように、ガスハイドートスラリーsを導入する導入部4と、ガスハイドレートスラリーsの水を脱水する水切り部6と、水切り部6で脱水されたガスハイドレートnを導出する導出部5からなる縦型筒状本体2と、水切り部6にてガスハイドレートnから分離した水(濾液)wを集合する脱水集合部3により形成したものである。
【0010】
ところが、この脱水器1は、水切り部6の脱水スクリーンの穴径が固定されているため、運転状況に応じた対応ができなかった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、水切り部の脱水スクリーンの穴径を可変とし、運転状況に応じた対応が可能であるガスハイドレート製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、次のように構成される。
【0013】
請求項1に記載の発明は、原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーを脱水器によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置において、前記脱水器の水切り部にスリット状や菱形等の任意の形状の第1開口部を設けると共に、前記水切り部の外側に、前記第1開口部に対向する第2開口部を持つ水切り部制御用外筒を嵌合させ、該水切り部制御用外筒の変位により前記第1開口部の開口の度合を変化させることを特徴とするガスハイドレート製造装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記水切り部制御用外筒の外周に沿って歯車を設けると共に、該歯車とかみ合うラックの前後運動によって前記水切り部制御用外筒を筒状の水切り部を軸にして回動させることを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート製造装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記水切り部制御用外筒の側面に長手方向のラックを設けると共に、該ラックとかみ合う歯車を回転させて前記水切り部制御筒を筒状の水切り部を軸にして上下方向に摺動させることを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート製造装置である。
【発明の効果】
【0016】
上記したように、請求項1に記載の発明は、原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーを脱水器によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置において、前記脱水器の水切り部にスリット状や菱形等の任意の形状の第1開口部を設けると共に、前記水切り部の外側に、前記第1開口部に対向する第2開口部を持つ水切り部制御用外筒を嵌合させ、該水切り部制御用外筒の変位により前記第1開口部の開口の度合を変化させるため、水切り部の目詰まりなどの状況に応じてきめ細かな運転が可能になった。その結果、ガスハイドレート製造装置の安定的な運転を実現することができると共に、定脱水率の運転を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0018】
図1において、11はガスハイドレート生成器、12はガスハイドレート生成器11で生成されたスラリー状のガスハイドレートnを脱水する縦型の脱水器、13は脱水器12でほぼ脱水されたガスハイドレートnを次工程(図示せず)に横移送するガスハイドレート搬送装置である。
【0019】
ガスハイドレート生成器11は、耐圧容器14と、原料ガスである天然ガスgを気泡状に噴出するスパージャ15と、耐圧容器14内を攪拌する攪拌機16と、冷却器17により構成されている。
【0020】
脱水器12は、ガスハイドレートスラリーsを導入する導入部18と、ガスハイドレートスラリー中の水wを脱水する水切り部19と、水切り部19で脱水されたガスハイドレートnを導出する導出部20からなる縦型筒状本体21と、水切り部19によって濾過された水(濾液)を集合する脱水集合部22により形成されている。
【0021】
水切り部19は、図2及び図3から分かるように、内筒部23と外筒部24の2重構造になっている。そして、内筒部24には、縦長のスリット(第1開口部)25を等間隔に設けている。他方、外筒部24には、内筒部23のスリット25に対応する縦長のスリット(第2開口部)26を設けている。内筒部23のスリット25の幅は、例えば、5〜50mmが好ましい。他方、外筒部24のスリット26の幅は、例えば、10〜60mmが好ましい。
【0022】
開口部の形状としては、例えば、図4(a)のような菱形や、図4(b)のような楕円形などを挙げることができる。
【0023】
上記外筒部24は、その外周に沿って歯車30を備え、歯車30とかみ合うラック31の前後運動によって内筒部23を軸にして周方向に回動するようになっている。ラック31は、図3に示すように、ラック31に取り付けたねじ軸32を図示しないハンドルによって回転させることにより、前後運動する。この場合、ねじ軸32は、固定された雌ねじ部33と螺合している。
【0024】
脱水集合部22は、縦型筒状本体21と同心状になるように、水切り部19の外側に設けられている。
【0025】
更に、ガスハイドレート生成器11で生成されたガスハイドレートは、スラリー状のまま縦型の脱水器12に供給され、水切り部19によって濾過された未反応水(濾液)は、ポンプ29及び冷却器27を備えた戻しライン28を経てガスハイドレート生成器11に戻され、脱水集合部22内の原料ガスgは、戻しライン35経てガスハイドレート生成器11に戻され、ガスハイドレート生成器11内の原料ガスgは、循環ライン37経てスパージャ15に戻されるようになっている。
【0026】
その上、戻しライン28のポンプ29の手前に流量計36を設け、未反応水(濾液)の戻り量を計測するようになっている。この未反応水(濾液)の戻り量は、制御装置34に入力され、水量が基準値よりも低下した場合には、その度合に応じてモーター38を制御し、外筒部24を回転させることにより、内筒部23に設けたスリット25の開口幅を広げるようになっている。
【0027】
次に、ガスハイドレート製造方法について説明する。
【0028】
図1に示すように、ガスハイドレート生成器11にて生成されたガスハイドレートnは、ガスハイドレートの濃度が20%程度のスラリー状である。このガスハイドレートスラリーsは、スラリーポンプ30によって脱水器12の下端部にある導入部18内に供給される。
【0029】
そして、脱水器12の水切り部19で脱水され、含水率が約50%程度となったガスハイドレートnは、導出部20を経てガスハイドレート排出装置13により、次工程に移送される。
【0030】
脱水器12の水切り部19で脱水された水(濾液)wは、戻しライン28を経てガスハイドレート生成器11に戻されるが、戻しライン28を戻る未反応水(濾液)wの戻り量が設定値よりも減少した場合には、制御器34は、水切り部19が目詰まりしたと判断し、その度合に応じてモーター38を制御して外筒部24を回転させることにより、内筒部23に設けたスリット25の開口幅を広げる。
【0031】
本発明の第2の実施形態を図に示す。この例は、外筒部24を内筒部23に沿って上下に移動させるようにしている。外筒部24の移動は、ラック・ピニオン方式を採用している。
【0032】
この場合、外筒部24は、開口40の穴径の小さな小径ゾーンYと、前記開口40よりも開口41の穴径の大きな大径ゾーンXとを持っている。他方、内筒部23は、外筒部24に設けた大小の開口40及び41に対応する開口42を持っているが、その穴径は、ほぼ一定である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るガスハイドレート製造装置の概略構成図である。
【図2】水切り部の一部断面を含む側面図である。
【図3】水切り部の要部断面図である。
【図4】(a)菱形開口の正面図、(b)楕円開口の正面図である。
【図5】水切り部の他の実施形態の一部断面を含む側面図である。
【図6】従来の脱水器の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
g 原料ガス
n ガスハイドレート
s ガスハイドレートスラリー
w 水
濾液
12 脱水器
19 水切り部
22 脱水集合部
24 水切り部制御用外筒
25 第1開口部
26 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーを脱水器によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置において、前記脱水器の水切り部にスリット状や菱形等の任意の形状の第1開口部を設けると共に、前記水切り部の外側に、前記第1開口部に対向する第2開口部を持つ水切り部制御用外筒を嵌合させ、該水切り部制御用外筒の変位により前記第1開口部の開口の度合を変化させることを特徴とするガスハイドレート製造装置。
【請求項2】
前記水切り部制御用外筒の外周に沿って歯車を設けると共に、該歯車とかみ合うラックの前後運動によって前記水切り部制御用外筒を筒状の水切り部を軸にして回動させることを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート製造装置。
【請求項3】
前記水切り部制御用外筒の側面に長手方向のラックを設けると共に、該ラックとかみ合う歯車を回転させて前記水切り部制御筒を筒状の水切り部を軸にして上下方向に摺動させることを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−111785(P2006−111785A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302255(P2004−302255)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】