説明

ガスバリアフィルムおよび包装材料

【課題】透明性・物理的な強度物性に優れ、且つ高いガスバリア性を有すると共に、高温、高湿、煮沸殺菌や加熱・加圧殺菌などの厳しい状況下であっても、ガスバリア性や基材、蒸着薄膜層、接着剤層のそれぞれの層間密着性が低下しないガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも片面に積層された無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、前記蒸着薄膜層上に積層された、ポリシルセスキオキサンと、水酸基を有する高分子とを含有するガスバリア性被膜層とを有することを特徴とするガスバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や非食品および医薬品等の包装分野に用いられるガスバリアフィルムに関するもので、特に透明性・物理的強度に優れ、高いガスバリア性を有すると共に、基材であるプラスチックフィルムとのラミネート接着性、特に湿潤時の密着性が高く、煮沸殺菌や加熱・加圧殺菌を施す用途に使用しても積層部分が容易に剥離しない包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装材料には種々の機能が要求される。その中でも、内容物保護性は最も重要な機能である。内容物の劣化や変質は主に酸素、水分、光、熱などの影響により促進される。とりわけ、酸素および水分の影響が大きい。それらを遮断することが内容物保護性を考える上で重要であり、優れたガスバリアフィルムが要望される。また、今日のように嗜好性が多様化し、添加剤が規制されるなどの状況下では外部からのガス成分の遮断のみならず、内部から外部への風味成分や香気成分の透過も遮断する必要がある。しかしながら、一般にプラスチックフィルムは単層ではガスバリア性が乏しく、他のガスバリア性に優れた層を積層することによって、より優れたガスバリア性を付与している。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)成分を含むガスバリア層を基材層に積層したガスバリアフィルムがある。このフィルムは乾燥状態では樹脂が結晶性に富み、酸素バリア性に優れることが知られているが、高湿度条件下では結晶性が低下し、ガスバリア性が著しく低下する。また、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなるガスバリア層を基材層に積層したガスバリアフィルム等も実用化されているが、塩素成分を含有している為に廃棄処理時に有害なダイオキシンを発生するおそれがある。また、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア層を基材層に積層したガスバリアフィルムも考案されているが、湿度依存性があり十分であるとはいえない。また、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸の混合物を主成分とするコート剤を基材層にコートしたガスバリアフィルムも考案されているが、酸素バリア性は優れるが水蒸気バリア性が不十分である。
【0003】
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物の蒸着層を形成したガスバリアフィルムが開発されている。これらの蒸着層は透明性および酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性の両者を有する包装材料に好適とされている。
【0004】
さらに、高分子フィルム上に形成された無機酸化物の蒸着薄膜層の上に、ガスバリア性被膜層を積層したガスバリアフィルムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−164591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
提案されている前記ガスバリアフィルムは印刷等の各種加工を実施しても、ガスバリア性が劣化しないものであったが、高温、高湿、煮沸殺菌や加熱・加圧殺菌などの厳しい状況下で使用すると、ガスバリアや密着性が低下する等の欠点を有していた。
【0006】
そこで、本発明においては透明性・物理的な強度物性に優れ、且つ高いガスバリア性を有すると共に、高温、高湿、煮沸殺菌や加熱・加圧殺菌などの厳しい状況下であっても、ガスバリア性や基材、蒸着薄膜層、接着剤層のそれぞれの層間密着性が低下しないガスバリアフィルムおよびそれを用いた包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためのもので、請求項1に記載される発明は、プラスチックフィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも片面に積層された無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、前記蒸着薄膜層上に積層された、ポリシルセスキオキサンと、水酸基を有する高分子とを含有するガスバリア性被膜層とを有することを特徴とするガスバリアフィルムである。
【0008】
請求項2に記載される発明は、前記ガスバリア性被膜層が、さらにSi(ORもしくはRSi(OR(ここで、R〜Rは有機基)で表されるケイ素化合物またはその加水分解物を含有することを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルムである。
【0009】
請求項3に記載される発明は、前記水酸基を有する高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルムである。
【0010】
請求項4に記載される発明は、前記基材が、ポリエステル系フィルムおよびポリアミド系フィルムからなる群より選択されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガスバリアフィルムである。
【0011】
請求項5に記載される発明は、前記基材と前記蒸着薄膜層との間にアンカーコート層を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のガスバリアフィルムである。
【0012】
請求項6に記載される発明は、前記アンカーコート層が、アクリルポリオール、イソシアネートおよびシラン系カップリング剤を含有することを特徴とする請求項5に記載のガスバリアフィルムである。
【0013】
請求項7に記載される発明は、前記蒸着薄膜層の無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素および酸化マグネシウムならびにそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のガスバリアフィルムである。
【0014】
請求項8に記載される発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載のガスバリアフィルムを含むことを特徴とする包装材料である。
【発明の効果】
【0015】
上記のような構成にすることで、透明性・物理的な強度特性に優れ、且つ高いガスバリア性を有すると共に、高温、高湿、煮沸殺菌や加熱・加圧殺菌などの厳しい状況下であっても、ガスバリア性や蒸着薄膜層や接着剤層間との密着性が低下しないガスバリアフィルムおよびそれを用いた包装材料とすることができる。
【0016】
さらに、本発明のガスバリアフィルムは、食品用途だけでなく、より高いガスバリア性や密着性が要求される、医薬品や精密電子部品等の包装用フィルムとしても適用され、実用範囲の広い包装材料を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明のガスバリアフィルムの一実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明に係るガスバリア積層体20を説明する断面図である。プラスチックフィルム1を基材とし、アンカーコート層2、無機酸化物よりなる蒸着薄膜層3、ガスバリア性被膜層4を順次積層してガスバリアフィルム10が形成されている。本発明に係るガスバリア積層体20は、ガスバリアフィルム10のガスバリア性被膜層4上に、接着剤層5を介しヒートシール性樹脂層6が積層された構成のものである。
【0018】
本発明に使用されるプラスチックフィルム1は、蒸着薄膜層の透明性を生かすために可能であれば透明なフィルム基材であることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系フィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルムまたはポリ乳酸フィルム等の生分解フィルム等が用いられ、機械的強度や寸法安定性を有するものが良く、特に、2軸方向に延伸されたフィルムが好ましく、特に、ポリエステル系フィルムやポリアミド系フィルムが好ましい。さらに、プラスチックフィルム1は他の層が積層される側の表面が無処理のままでもよいし、接着性向上の為の表面処理、例えばコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施しておいても良く、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても構わない。厚みは用途に応じ6〜200μm程度のものが使用される。
【0019】
本発明に使用可能なポリエステル系フィルムとしては、温度−20℃〜+40℃における貯蔵弾性率が9×10〜1×1010Paの範囲であり、かつ、β転移tanδピーク温度が+10℃以下で認められる動的粘弾性を有するポリエステル系フィルムであれば特に制限されるものではない。貯蔵弾性率が9×10Pa未満であると、ポリエステル系フィルムの柔軟性が不十分であり、ポリアミド系フィルムと同等の耐衝撃性、耐ピンホール性が得られない。一方、貯蔵弾性率が1×1010Paを超えると柔軟性は十分であるが、延伸フィルムとしてのハンドリング性が劣る。さらに、ポリエステル系フィルムのβ転移に起因するピーク温度が+10℃以下で観察されない場合、低温領域での外部負荷に対する分子鎖の応答ができないため、低温領域での変形が困難となり、低温領域での屈曲ピンホール耐性が不十分となる。また、蒸着薄膜層の透明性を生かすために可能であれば透明なフィルム基材であることが好ましい。
【0020】
上記の条件のようなポリエステル系フィルムとしては、例えばポリエステルを構成するジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シュウ酸、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などが挙げられる。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のポリオキシアルキレングリコール、ビスフェノールA,ビスフェノールSなどの芳香族グリコールおよびそれらの誘導体などが挙げられる。これらポリエステルの中で、2軸延伸特性などの製膜性、湿度特性、耐熱性、耐薬品性、低コスト性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートを主体としたものが好ましい。ポリエチレンテレフタレートの優れた諸物性を保てる範囲内で、他のアルコール成分を重合段階で主鎖に取り込むように制御し共重合させることにより、分子鎖内に回転障害の小さいセグメント(ソフトセグメント)が形成され、外部からの衝撃や折り曲げによる力を分子鎖内のソフトセグメントにより吸収し、耐衝撃性、屈曲性に優れたものとなる。本発明のポリエステルのカルボン酸成分およびアルコール成分の各々の50モル%以上がテレフタル酸、エチレングリコール、およびそれらの誘導体である共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
【0021】
上記ポリエステルフィルムの延伸倍率については、逐次2軸延伸、同時2軸延伸プロセスがあるが、延伸倍率(タテ延伸倍率×ヨコ延伸倍率)は5〜20倍の範囲で行うとよい。また、上記条件にて製膜した際の120℃、30分条件での熱水加熱収縮率が、MD/TD方向ともに4%以下とするのが好ましい。4%を超えると収縮が大きいために、後加工後のガスバリア性の低下が大きくなる。
【0022】
本発明に使用可能なポリアミド系フィルムとしては、素材は特に限定はされず、ホモポリアミド、コポリアミド或いはこれらの混合物などが使用できる。
【0023】
ホモポリアミドの例としては、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエリレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)等を挙げることができる。
【0024】
またコポリアミドの例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体等を挙げることができる。ガスバリアフィルムの使用環境、被包装物の種類、加工性および経済性などを考慮して適宜選択すればよい。
【0025】
さらに、これらポリアミド系フィルムには、柔軟性を付与するため、芳香族スルホンアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸、エステル類の可塑剤を配合したり、低弾性率のエラストマー成分やラクタム類等を配合することも可能である。前記エラストマー成分としては、アイオノマー樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステルブロックアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、変成アクリルゴム、変成エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。
【0026】
前記プラスチックフィルム1と無機酸化物よりなる蒸着薄膜層3との密着を向上するために、アンカーコート層2を設ける。この層は、プラスチックフィルム1と無機酸化物からなる蒸着薄膜層3との密着性を高め、ガスバリア性や強度低下を防ぐことを目的とする。
【0027】
鋭意検討の結果、上記目的の達成の為にアンカーコート層は、シラン系カップリング剤或いはその加水分解物であるか、それらとポリオールおよびイソシアネート化合物との複合物であることが好ましい。
【0028】
前記シランカップリング剤としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤或いはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0029】
さらにこれらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものがある。さらにγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニル(β−メトキシエトキシ)シラン等のようなカップリング剤にアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでも良く、これら1種ないし2種以上を用いることができる。これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固なプライマー層を形成し、他端のアルコキシ基等の加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物中の金属や、無機酸化物の表面の活性の高い水酸基等と強い相互作用により無機酸化物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。よって上記シランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0030】
またポリオールとは、高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を持つもので、後に加えるイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応させるものである。中でもアクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体およびその他のモノマーを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが特に好ましい。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシルブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオール等が好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5〜300(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0031】
ポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比換算で1/1〜1000/1の範囲であることが好ましく、2/1〜100/1の範囲にあることがより好ましい。溶解および希釈溶剤は、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル・酢酸ブチル等のエステル類、メタノール・エタノール・イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン・キシレン等の芳香族炭化水素類等を単独でまたは任意に配合して用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0032】
シランカップリング剤とポリオールの配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性および重合安定性の点から塩化錫(SnCl、SnCl)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)Cl)、錫アルコキシド等の錫化合物であることが好ましい。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果が得られないため、3官能オルガノシランに対してモル比換算で1/10〜1/10000の範囲であることが好ましく、1/100〜1/2000の範囲にあることがさらに好ましい。
【0033】
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応してできるウレタン結合により基材や無機酸化物層との間の密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するためにイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などのモノマー類と、これらの重合体や誘導体等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0034】
ポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるものではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでポリオールとイソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がポリオール由来のOH基の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が等量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0035】
さらに上記混合物の調液時に液安定性を向上させるために、金属アルコキシド或いはその加水分解物を添加しても一向に構わない。この金属アルコキシドとは、テトラエトキシシラン(Si(OC)、トリプロポキシアルミニウム(Al(OC)など一般式M(OR)(M:金属元素、R:CH、Cなどの一般式C2n+1で表されるアルキル基)で表せるもの或いはその加水分解物である。なかでもテトラエトキシシランやトリプロポキシアルミニウム或いは両者の混合物が、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。この金属アルコキシドの加水分解物を得る方法は、シランカップリング剤とともに加水分解を行っても構わないし、単独に酸等を添加したのち添加しても構わない。
【0036】
複合物の被膜層は、このようなシランカップリング剤に直接或いはあらかじめ加水分解反応させたものまたは金属アルコキシドとともに加水分解したもの(このとき上述した反応触媒等を一緒に添加しても一向に構わない)を、ポリオールやイソシアネート化合物と混合して複合溶液を作製するか、またシランカップリング剤、ポリオールを溶媒中にあらかじめ混合しておき(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)加水分解反応を行ったもの、更にはシランカップリング剤とポリオールを混合しただけのもの(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)の中に、イソシアネート化合物を加え複合液を作製し基材1にコーティングして形成する。
【0037】
この複合溶液中に各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋促進剤、充填剤等を添加することも一向に構わない。
【0038】
アンカーコート層2の厚さは、均一に塗膜が形成されることができれば特に限定しないが、一般的に0.001〜2μmの範囲であることが望ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを超える場合は厚いために塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因によって塗膜に亀裂が生じるおそれがあるために好ましくない。特に好ましいのは0.03〜0.5μmの範囲内にあることである。
【0039】
アンカーコート層2の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方法や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方法を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用される条件で構わない。また、反応を促進させるために、高温のエージング室等に数日放置してもよい。
【0040】
次に無機酸化物よりなる蒸着薄膜層3は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはこれらの混合物からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。その中では、特に酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素が好ましい。ただし本発明の蒸着薄膜層3は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることができる。
【0041】
蒸着薄膜層3の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを超える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、製膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。
【0042】
蒸着薄膜層3をアンカーコート層2上に形成する方法としては種々あり、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式が好ましく、薄膜と基材の密着性および薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスを吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0043】
ガスバリア性被膜層4は、要求品質によりアルミニウム箔なみの高いガスバリア性を付与するために蒸着薄膜層3上に設けられるものである。
【0044】
本発明におけるガスバリア性被膜層4は、ポリシルセスキオキサンと、水酸基を有する高分子とを含有する。ガスバリア性被膜層4は、さらにSi(ORもしくはRSi(OR(ここで、R〜Rは有機基)で表されるケイ素化合物またはその加水分解物を含有していてもよい。
【0045】
ガスバリア性被膜層4は、ポリシルセスキオキサンおよび水酸基を有する高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒に溶解させ、必要に応じてSi(ORもしくはRSi(OR(ここで、R〜Rは有機基)で表されるケイ素化合物を直接または予め加水分解させるなどの処理を行ったその加水分解物を混合した、水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング液を蒸着薄膜層3にコーティングし、加熱乾燥して形成される。
【0046】
ガスバリア性被膜層4に含有される各成分についてさらに詳細に説明する。
水酸基を有する高分子としてはポリビニルアルコール、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAという)を含むコーティング液を用いて形成されたガスバリア性被膜層4はガスバリア性が最も優れる。PVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られ、酢酸基が数十%残存しているいわゆる部分鹸化PVAから、酢酸基が数%しか残存していない完全鹸化PVAまでを含むが特に限定されない。
【0047】
ポリシルセスキオキサンとは、分子形状が籠型のケイ素酸化物オリゴマーやはしご型(ラダー型)ケイ素酸化物ポリマーを意味する。シルセスオキサンとは、[RSiO3/2]で表される化合物である。シルセスキオキサンは、通常、RSiX(R=水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラアルキル基等、X=ハロゲン、アルコキシ基等)型化合物の加水分解−重縮合で合成されるポリシロキサンであり、分子配列の形状として代表的には無定形構造、ラダー状構造、籠型構造、或いはその部分開裂構造体(籠型構造からケイ素原子が1原子欠けた構造や籠型構造の一部のケイ素−酸素結合が切断された構造)等が知られている。
【0048】
Si(ORもしくはRSi(OR(ここで、R〜Rは有機基)で表されるケイ素化合物は、加水分解、縮合して、金属酸化物ポリマーを得ることができるものであれば特に限定されない。Si(ORもしくはRSi(OR(ここで、R〜Rは有機基)で表されるケイ素化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン等のアリールアルキルジアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;ジフェニルメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジフェニルエチルメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルエチルエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン等のジアリールアルキルアルコキシシランまたはアリールジアルキルアルコキシシラン;トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等のトリアリールアルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。上述した各成分を単独でまたはいくつか組み合わせてガスバリア性被膜層に加えることができる。
【0049】
さらにガスバリア性被膜層のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を加えることができる。
【0050】
ガスバリア性被膜層に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(以下、TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(以下、TTI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(以下、TMXDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体などがある。
【0051】
ガスバリア性被膜層のコーティング液の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法などの従来公知の手段を用いることができる。被膜層の厚さはコーティング液の種類や加工条件によって異なり、乾燥後の厚さが0.01μm以上あればよいが、厚さが50μm以上では膜にクラックが生じやすくなるため、0.01〜50μmの範囲が好ましい。
【0052】
さらに蒸着薄膜層3やガスバリア性被膜層4上に他の層を積層することも可能である。例えば印刷層、中間層、ヒートシール層等である。印刷層は包装袋などとして実用的に用いるために形成される。印刷層は、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料および可塑剤、乾燥剤、安定化剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成され、文字、絵柄等が形成されている。印刷層の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方法や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の周知の塗布方法を用いることができる。印刷層の厚さは0.1〜2.0μmで良い。
【0053】
上述した構成よりなるガスバリアフィルム10のガスバリア性被膜層4面に接着剤層5を介して、ヒートシール性樹脂層6を積層することにより、ガスバリア積層体20を得ることができる。
【0054】
本発明における接着剤層5としては、汎用的なラミネート用接着剤を使用できる。例えば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン−(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶解型の接着剤を使用することができる。上記接着剤層5は、例えばダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法、その他の方法で塗布することができ、そのコーティング厚みは0.1〜8g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0055】
本発明で用いられるヒートシール性樹脂層6は、袋状包装体などを形成する際のシール層として設けられるものであり、熱によって溶融し、相互に融着可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、その他のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびその鹸化物、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ニトロセルロース、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリルエステル酸エステル共重合体およびそれらの金属架橋物、ポリ乳酸系樹脂等の生分解性樹脂、その他の公知の樹脂を任意に使用することができる。その厚さは、目的に応じて決定すればよく、一般には10〜200μmの範囲である。
【0056】
前記ヒートシール性樹脂層6をガスバリアフィルム10に積層する方法としては、例えば、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、押出ラミネート法等、公知のラミネート方法が利用できる。また、ガスバリア積層体20では、用途・要求に応じて、ガスバリア性透明フィルム10のガスバリア性被膜層4の上に印刷層や他の基材フィルム等を積層させた後に、ヒートシール性樹脂層6を積層して、所望の包装材料に供することも可能である。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明の実施例をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
<アンカーコート層のコーティング液の調製>
希釈溶媒(酢酸エチル)中、アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートを、OH基に対してNCO基が等量となるように混合し、全固形分が5w%になるようにする。ついでβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを全固形分に対して5w%添加して混合し、アンカーコート層のコーティング液を調製する。
【0059】
<ガスバリア性被膜層のコーティング液の調製>
(A)希釈溶媒中、ポリシルセスキオキサン(R=C、重量平均分子量1700)6.84gに塩酸(0.02N)22.4gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分5%(重量比SiO換算)の加水分解溶液。
【0060】
(B)希釈溶媒中、ポリシルセスキオキサン(R=C、重量平均分子量5600)9.14gに塩酸(0.02N)22.4gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分5%(重量比SiO換算)の加水分解溶液。
【0061】
(C)希釈溶媒中、テトラエトキシシラン(Si(OC;以下、TEOSという)17.9gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分5%(重量比SiO換算)の加水分解溶液。
【0062】
(D)ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノール=95/5(重量比)水溶液。
【0063】
(E)希釈溶媒中、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに塩酸(1N)を徐々に加え、30分間攪拌し加水分解させた後、固形分5%(重量比RSi(OH)換算)に調整した加水分解溶液。
【0064】
<ガスバリア性被膜コーティング液の配合比>
A;ポリシルセスキオキサン(R=C、重量平均分子量1700)のSiO固形分(換算値)
B;ポリシルセスキオキサン(R=C、重量平均分子量5600)のSiO固形分(換算値)
C;TEOSのSiO固形分(換算値)
D;PVA固形分
E;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのRSi(OH)換算
配合比は全て固形分重量比率である。
【0065】
ガスバリア性被膜コーティング液Ia A/D=70/30
ガスバリア性被膜コーティング液IIa B/D=70/30
ガスバリア性被膜コーティング液IIIa A/C/D=35/35/30
ガスバリア性被膜コーティング液IVa A/C/D=60/10/30
ガスバリア性被膜コーティング液Va B/C/D=35/35/30
ガスバリア性被膜コーティング液VIa B/C/D=60/10/30
ガスバリア性被膜コーティング液VIIa C/D=70/30
ガスバリア性被膜コーティング液VIIIa C/D=50/50
ガスバリア性被膜コーティング液Ib A/D/E=70/20/10
ガスバリア性被膜コーティング液IIb B/D/E=70/20/10
ガスバリア性被膜コーティング液IIIb A/C/D/E=35/35/20/10
ガスバリア性被膜コーティング液IVb A/C/D/E=60/10/20/10
ガスバリア性被膜コーティング液Vb B/C/D/E=35/35/20/10
ガスバリア性被膜コーティング液VIb B/C/D/E=60/10/20/10
ガスバリア性被膜コーティング液VIIb C/D/E=70/20/10
ガスバリア性被膜コーティング液VIIIb C/D/E=45/45/10
<実施例1>
基材1として、片面がコロナ処理された厚さ15μmポリエステル系樹脂フィルムを使用し、グラビアコート機を用いてコロナ処理面にアンカーコート層のコーティング液を塗布し乾燥して厚さ0.1μmの乾燥被膜からなるアンカーコート層2を積層した。次に、真空蒸着装置で厚さ15nmの酸化アルミニウムからなる蒸着薄膜層3を蒸着した。次に、蒸着薄膜層3の上にガスバリア性被膜層のコーティング液Iaを塗布し乾燥して厚さ0.2μmの乾燥被膜からなるガスバリア性被膜層4を積層して、ガスバリアフィルムを得た。
【0066】
さらに、上記ガスバリアフィルムのガスバリア性被膜層4上に、ドライラミネーション法により、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン製 A525)を使用して塗布量3.5g/mで接着剤層を形成し、その上に厚さ15μmのポリアミドフィルムを、さらにその上に、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを積層した後、50℃にて4日間養生を行い、本発明のガスバリア積層体を得た。
【0067】
<実施例2>
ガスバリア性被膜層のコーティング液IIaを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0068】
<実施例3>
ガスバリア性被膜層のコーティング液IIIaを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0069】
<実施例4>
ガスバリア性被膜層のコーティング液IVaを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0070】
<実施例5>
ガスバリア性被膜層のコーティング液Vaを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0071】
<実施例6>
ガスバリア性被膜層のコーティング液VIaを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0072】
<比較例1>
ガスバリア性被膜層のコーティング液VIIaを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0073】
<比較例2>
ガスバリア性被膜層のコーティング液VIIIaを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0074】
<実施例7>
ガスバリア性被膜層のコーティング液Ibを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0075】
<実施例8>
ガスバリア性被膜層のコーティング液IIbを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0076】
<実施例9>
ガスバリア性被膜層のコーティング液IIIbを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0077】
<実施例10>
ガスバリア性被膜層のコーティング液IVbを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0078】
<実施例11>
ガスバリア性被膜層のコーティング液Vbを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0079】
<実施例12>
ガスバリア性被膜層のコーティング液VIbを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0080】
<比較例3>
ガスバリア性被膜層のコーティング液VIIbを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0081】
<比較例4>
ガスバリア性被膜層のコーティング液VIIIbを使用してガスバリア性被膜層4を形成した以外は、実施例1と同様にして本発明のガスバリア積層体を得た。
【0082】
実施例1〜12および比較例1〜4で得られたガスバリア積層体について、121℃で30分のレトルト処理前後の酸素透過度・水蒸気透過度測定、同様に121℃で30分のレトルト処理前後のラミネート強度測定を行った。その評価結果を表1に示す。
【0083】
<酸素透過度の測定>
実施例1〜12および比較例1〜4で得られたガスバリア積層体について、121℃で30分のレトルト処理の前後に、JIS K−7129B法に準拠して、Modern Control社製のOxtran2/20により、30℃、70%RH環境の条件で酸素透過度の測定を行った。
【0084】
<水蒸気透過度の測定>
実施例1〜12および比較例1〜4で得られたガスバリア積層体について、121℃で30分のレトルト処理の前後において、JIS K−7129B法に準拠して、Modern Control社製のOxtran3/31により、40℃、90%RH環境の条件で水蒸気透過度の測定を行った。
【0085】
<ラミネート強度の測定>
実施例1〜12および比較例1〜4で得られたガスバリア積層体のガスバリア性被膜層とポリアミドフィルムとの間の密着強度を、121℃で30分のレトルト処理の前後において、JIS Z-1707に準拠して測定した。測定条件は、試験幅15mm、剥離速度300mm/minとした。
【表1】

【0086】
表1から、本発明に係る実施例1〜12のガスバリア積層体は、ラミネート強度に優れ、酸素および水蒸気透過度に優れていた。比較例1〜4の積層体でも一般用途向けでは実用範囲内といえるが、高温・高圧殺菌処理を施す用途や医療・医薬用途など、より厳しい要求品質向けには実施例1〜12の積層体のほうが優れている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のガスバリア積層体の断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1…プラスチックフィルム、2…アンカーコート層、3…蒸着薄膜層、4…ガスバリア性被膜層、5…接着剤層、6…ヒートシール性樹脂層、10…ガスバリアフィルム、20…ガスバリア積層体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムからなる基材と、
前記基材の少なくとも片面に積層された無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、
前記蒸着薄膜層上に積層された、ポリシルセスキオキサンと、水酸基を有する高分子とを含有するガスバリア性被膜層と
を有することを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記ガスバリア性被膜層が、さらにSi(ORもしくはRSi(OR(ここで、R〜Rは有機基)で表されるケイ素化合物またはその加水分解物を含有することを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記水酸基を有する高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記基材が、ポリエステル系フィルムおよびポリアミド系フィルムからなる群より選択されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記基材と前記蒸着薄膜層との間にアンカーコート層を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
前記アンカーコート層が、アクリルポリオール、イソシアネートおよびシラン系カップリング剤を含有することを特徴とする請求項5に記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記蒸着薄膜層の無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素および酸化マグネシウムならびにそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のガスバリアフィルムを含むことを特徴とする包装材料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−220530(P2009−220530A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70348(P2008−70348)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】