説明

ガスバリア性積層体およびそれを用いた太陽電池用シート

【課題】バリア性と密着性に優れたバリア性積層体を提供する。
【解決手段】有機層と、無機層とを該順に有するバリア性積層体において、有機層は水系ポリマーラテックス(A)及び水系オキサゾリン架橋剤(B)を含み、該無機層は蒸着により作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体および、該バリア性積層体を用いたガスバリアフィルムに関する。また、これらを用いた太陽電池用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池用バックシートが広く検討されている。例えば、特許文献1には、耐候性基材とプライマー層と蒸着層とを含む太陽電池用バックシートが開示されている。特許文献2にも、基材上にプライマー層と、蒸着薄膜層と、水溶性高分子を含むコーティング剤を塗布して形成された中間層と、蒸着薄膜層とを有するバリア性積層体が開示されている。
このように、基材フィルムの上に、有機層と、無機蒸着層を連続して設けた構造を有する太陽電池用保護シートが知られている。しかしながら、太陽電池用保護シートは、高温および低温が交互に繰り返される環境下で用いられるため、ガスバリア性能の劣化が深刻である。すなわち、かかる環境下でのガスバリア性能の劣化のさらなる抑制が求められている。
加えて、太陽電池は環境保護の観点から利用されるため、環境にやさしい製造工程で製造できることが強く求められる。しかしながら、従来の太陽電池用保護シートは、有機溶媒溶液を基材フィルム上に塗布することによって、透明プライマー層等の有機層を設けるケースが多く、環境にやさしいものではなかった。一方、水系溶媒溶液を基材フィルムに塗布することによって設けられる有機層は、環境にはやさしいが、バリア性が一桁程度劣ることが公知である。さらに、このような水系溶媒溶液を塗布して設けられた有機層は隣接する層との密着性が劣ることが知られている。密着性が低いと、湿熱環境下に長時間静置される間に層の剥離が起きてしまい、さらに、バリア性能が劣ってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−38236号公報
【特許文献2】特開2008−1111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、無機層を蒸着で製膜する有機無機積層型バリア性積層体において、水系溶媒溶液を用いてもバリア性が落ちないバリア性積層体を提供することを目的とする。さらに、層間の密着性に優れたバリア性積層体を提供することを目的とする。加えて、経時のバリア性および密着性に優れたバリア性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本発明者は、水系塗布溶液を用いて有機層を形成することを検討した。従来から、水系ラテックスのような水系溶媒溶液を用いて有機層を形成すると、経時により割れてしまうことが知られている。ここで、割れについては、架橋剤を添加することにより抑制することが考えられた。しかしながら、本発明者がさらに検討を行ったところ、例えば、特許文献1に記載されているようなイソシアネート系架橋剤を用いると密着性が不足し、泡が発生してしまうことが分かった。そして、架橋剤として、オキサゾリン系架橋剤を用いることにより、経時のバリア性能、密着性および外観に優れたバリア性積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下の手段により達成された。
(1)有機層と、無機層とを該順に有するバリア性積層体において、有機層は水系ポリマーラテックス(A)及び水系オキサゾリン架橋剤(B)を含み、該無機層は蒸着により作成されるバリア性積層体。
(2)前記水系ポリマーラテックス(A)のガラス転移温度(Tg)が40℃以上である、(1)に記載のバリア性積層体。
(3)前記水系ポリマーラテックス(A)の分子量が、10000以上である、(1)または(2)に記載のバリア性積層体。
(4)前記水系ポリマーラテックス(A)がポリエステルポリオールまたはポリアクリルポリオールである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(5)前記水系ポリマーラテックス(A)がナフタレン骨格を含む、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(6)前記有機層の厚みが、0.1〜5.0μmである、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(7)前記無機層が、酸化ケイ素である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(8)前記無機層の厚みが、20nm〜500nmである、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(9)基材フィルム上に、(1)〜(8)のいずれか1項に記載のバリア性積層体を有するガスバリアフィルム。
(10)前記有機層は、基材フィルム上に、水系ポリマーラテックス100重量部に対し、水系オキサゾリン架橋剤3〜26重量部を含む組成物を造膜してなる層である、(9)に記載のガスバリアフィルム。
(11)前記基材フィルムが、耐加水分解ポリエステルである、(9)または(10)に記載のガスバリアフィルム。
(12)(9)〜(11)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム2枚を無機層側が対向するように接着層を介して貼り合わせてなる、複合フィルム。
(13)(1)〜(8)のいずれか1項に記載のバリア性積層体、(9)〜(11)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムまたは(12)に記載の複合フィルムを含む、太陽電池用シート。
(14)(13)に記載の太陽電池用シートを有する太陽電池。
(15)基材フィルム上に、水系ラテックスと水系オキサゾリン架橋剤を含む組成物を、100℃以上の温度で加熱乾燥して水系分散媒を蒸発除去して有機層を設ける工程と、該有機層の表面に真空蒸着により無機層を設ける工程とを含む、ガスバリアフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、水系溶媒を用いて有機層を形成しても、バリア性および密着性に優れたバリア性積層体を提供することが可能になった。特に、経時のバリア性および密着性にも優れる点で本発明のバリア性積層体は極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のガスバリアフィルムを貼りあわせて用いる形態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のバリア性積層体は、有機層と、無機層とを該順に有するバリア性積層体において、有機層は水系ポリマーラテックス(A)及び水系オキサゾリン架橋剤(B)を含み、該無機層は真空蒸着により作成されることを特徴とする。最初にこれらの構成について説明する。
【0010】
有機層
本発明の有機層は、水系ポリマーラテックス(A)と水系オキサゾリン架橋剤(B)を含む。ここで、水系ポリマーラテックスとは、溶媒が80%以上水であり、ポリマーが分散している状態を意味する。本発明ではこのような有機層の表面に蒸着により無機層を設けることにより、バリア性および密着性に優れたバリア性積層体を得ることができる。
【0011】
水系ポリマーラテックス(A)
本発明で用いる水系ポリマーラテックスは、その種類等特に定めるものではないが、ポリエステルポリオールまたはポリアクリルポリオールであることが好ましい。また、水系ポリマーラテックスは、ナフタレン骨格を含むものが好ましい。
ここで、水系ポリマーラテックスとは、水のみを分散媒として用いることが望ましいが、水を主たる分散媒としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば有機溶剤を含有していてもよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルセロソルブが例示され、イソプロピルアルコール、n−ブチルセロソルブが好ましい。分散媒に対する有機溶媒としては20重量%以下であることが好ましい。水系ラテックス層を形成するための組成物は、疎水性高分子材料20〜50重量%と、水系分散媒80〜50重量%からなることが好ましい。また、これ以外の成分を含んでいてもよい。
水系ポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。上限は特に定めるものではないが、好ましくは、70℃以下である。ガラス転移温度が40℃以上の水系ポリマーラテックスを用いることにより、蒸着層形成時に複写熱によるダメージを低減させることができる。
水系ポリマーラテックスの分子量は、10000以上であることが好ましく、15000以上であることがより好ましい。上限値としては、特に定めるものではないが、30000以下であることが好ましい。
【0012】
水系架橋剤(B)
本発明で用いられる水系架橋剤は、水系オキサゾリン架橋剤である。架橋剤は数多くの種類が知られているが、本発明では、水系オキサゾリン架橋剤を用いることにより、バリア性に加え、密着性にも優れたバリア性積層体が得られる。特に、経時後のバリア性および密着性に優れたバリア性積層体が得られる点で、水系オキサゾリン架橋剤は極めて有意である。
水系オキサゾリン架橋剤としては、公知の水系オキサゾリン架橋剤を広く採用でき、日本触媒のエポクロスのようなオキサゾリン系ポリマーが好ましく、エマルジョンタイプがより好ましい。
【0013】
有機層の形成方法
本発明の有機層は、通常、基材フィルムに水系ラテックス(A)と水系オキサゾリン架橋剤(B)を含む組成物をコーティングし、造膜処理を行うことによって設ける。ここで、造膜処理とは、100℃以上の温度で加熱し水系分散媒を蒸発し、ラテックス粒子を癒着させるとともに、架橋反応をすばやく進行させ、均一な膜を形成する方法が挙げられる。
有機層を形成するための組成物は、ラテックス100重量部(固形分)に対し、水系オキサゾリン架橋剤3〜26重量部を含むことが好ましく、ラテックス100重量部に対し、4〜15重量部を含むことがより好ましい。また、これら以外の成分を含んでいてもよいが好ましくは組成物の3質量%以下である。
有機層の厚さは、0.1〜5.0μmが好ましく、0.7〜2.0μmであることがさらに好ましく、0.8〜1.5μmであることがよりさらに好ましい。
【0014】
無機層
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。本発明では、無機層を蒸着法により形成する。本発明では、無機層は、真空蒸着法で形成することが好ましい。
無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Mg、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、SiまたはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物がさらに好ましく、SiまたはAlの金属酸化物が特に好ましく、酸化ケイ素が最も好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
無機酸化物の平均表面粗さ(Ra)は0.05〜10nmの範囲が好ましく、0.1〜5nmがより好ましく、0.1〜3nmが最も好ましい。
【0015】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、20nm〜500nmの範囲内であり、好ましくは40〜200nmであり、さらに好ましくは50〜150nmである。膜厚を50nm以上とすることにより、より均一な膜とすることができ、ガスバリア性層としての機能を向上させることができる。また、膜厚を500nm以下とすることにより、薄膜の柔軟性を十分に保つことができ、曲げや引張りなどの外力の要因により薄膜が破壊するのをより効果的に抑制することができる。
【0016】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層は、それぞれ1層ずつであってもよいし、少なくとも2層の有機層と少なくとも2層の無機層を交互に積層した構成であってもよい。
【0017】
(機能層)
本発明においては、バリア性積層体上、もしくはその他の位置に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、耐溶剤層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0018】
バリア性積層体の用途
本発明のバリア性積層体は、通常、支持体の上に設けるが、この支持体を選択することによって、様々な用途に用いることができる。支持体には、基材フィルムのほか、各種のデバイス、光学部材等が含まれる。具体的には、本発明のバリア性積層体はガスバリアフィルムのバリア層として用いることができる。また、本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、バリア性を要求するデバイスの封止にも用いることができる。
【0019】
<ガスバリアフィルム>
ガスバリアフィルムは、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成されたバリア性積層体とを有する。ガスバリアフィルムにおいて、本発明のバリア性積層体は、基材フィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0020】
(基材フィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。基材フィルムの好ましい範囲としては、特開2009−172993号公報の段落番号0009〜0012に記載のものを好ましく採用できる。
【0021】
本発明では、基材フィルムが耐加水分解ポリエステルフィルムであることが好ましい。耐加水分解ポリエステルフィルムの中でも、末端カルボキシル基量が5当量/ton〜40当量/tonの耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。このようなPETフィルムを用いることにより、高温高湿環境下での使用でも強度低下を引き起こすまでの時間を延ばすことができる。また、耐加水分解性PETの末端カルボキシル基量は、好ましくは10当量/ton〜30当量/tonであり、より好ましくは15当量/ton〜25当量/tonである。
このような末端カルボキシ基量を有するPETの製造方法は、公知の方法に従って製造でき、例えば、特許4320928号公報の記載を参酌できる。
耐加水分解性PETフィルムの厚さは、50〜200μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。
耐加水分解性PETフィルムの数平均分子量は13,000〜50,000であることが好ましく、15,000〜35,000であることがより好ましい。
また、耐加水分解性PETフィルムは添加剤を含んでいてもよく、耐加水分解改質剤、固相重合促進剤、酸化防止材、着色剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、難燃材等が挙げられる。
【0022】
本発明の太陽電池用保護シートを太陽電池用バックシートとして用いる場合、白色化剤を含めることができる。具体的には、白色化剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム(白色化剤を含有するPETフィルム)を用いることができ、PET樹脂に白色顔料を練り混んだ後製膜したものや、白色顔料を分散したバインダーをPETフィルム上に塗工したものが使用される。具体的には、特開2002−26354号公報や特開2006−210557号公報に記載の技術を採用できる。
白色化剤を含有するPETフィルムの厚みは50μm〜200μmが好ましく、100μm〜200μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、入射光を反射させて太陽電池素子に戻すことにより、太陽電池素子の電力変換効率を向上させることができる。また、同時に入射光を反射することにより、太陽電池モジュール内の加温を下げたり、入射側と反対側への太陽光の浸入を防いだりすることで、バックシートの部材の劣化を低減することができる。
白色化剤としては、酸化チタンや酸化ケイ素等の無機白色材料、有機白色顔料、有機白色染料などを適用することができ、無機白色材料が好ましく、酸化ケイ素がさらに好ましい。本発明では、白色化剤の含量は、0.5〜60.0g/m2であることが好ましく、1.0〜50.0g/m2であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、太陽電池素子に入射されなかった入射光成分を十分に太陽電池素子側に反射させることができる。
白色化剤は、粒子状であることが好ましく、平均粒子径が100nm〜30μmであることが好ましい。
白色化剤を含有するPETフィルムの数平均分子量は13,000〜50,000であることが望ましい。
【0023】
本発明のガスバリアフィルムは2枚を貼り合わせて用いることもできる。図1は、本発明のガスバリアフィルムを2枚貼り合せた複合フィルムの一例を示したものであって、基材フィルム1と、有機層2と、無機層3とからなるガスバリアフィルム4を、ガスバリアフィルムの無機層同士が対向するように接着層5で貼り合せられている。本発明のガスバリアフィルムは、2枚を貼り合わせることにより、バリア性が相乗的に向上する。尚、図1では示していないが、複合フィルムは他の構成層を有していてもよい。
【0024】
接着層
接着層は、接着剤を主成分とする層であり、通常、接着層の70重量%以上が、接着剤であることをいい、接着層の80重量%以上が接着剤であることが好ましい。接着剤の種類は特に定めるものではないが、ウェットラミネーション用接着剤、ホットメルトラミネーション用接着剤、ドライラミネーション用接着剤、ノンソルベント接着剤などが好ましく、ウェットラミネーション用接着剤、ドライラミネーション用接着剤が好ましい接着層の厚みを得る観点から好ましく、フィルム中の残留溶媒量を低くする観点から、ドライラミネーション用接着剤が好ましい。
ドライラミネーション用接着剤としては、酢酸ビニル系、アクリル樹脂系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリビニルアセタール系、非晶性ポリエステル系などの熱可塑性樹脂を用いるもの、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴム・エラストマーを用いるもの、ポリウレタン系のように架橋反応を用いるものなどがある。材料の入手性、使いやすさ、接着性能の観点からポリウレタン系接着剤が好ましい。
ポリウレタン系接着剤には一液反応型と二液反応型があるが、接着強度の安定性やポットライフの観点、ならびに炭酸ガスなどの発泡による影響の少なさから二液混合型が好ましい。二液ポリウレタン型接着剤は、ポリエステルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプ、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートの硬化タイプを例示することができ、いずれも好ましい。
太陽電池は屋外で用いられるため、接着剤は耐候性材料であることが好ましい。接着剤は初期接着力だけでなく環境試験後の接着力を保持できることが望ましい。太陽電池用バックシートは通常促進評価として85℃、85%相対湿度(RH)の環境で2000時間以上の保存が必要とされるが、105℃、100%RH、168時間の保存の物性値に相当することが知られている。
接着層の厚さは、2μm以上10μm未満が好ましく、3μm〜8μmがより好ましく、4〜6μmがさらに好ましい。
【0025】
水蒸気透過率
本発明におけるガスバリアフィルムは、MOCON社製AQUATRANを用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した水蒸気透過率が、0.01g/m2・day以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の保護フィルムは、種々の用途に広く用いることができるが、電子ペーパーや、太陽電池用のシートの保護部材、特に、フロントシートの保護部材として好ましく用いることができる。
【0027】
(電子ペーパー)
本発明におけるガスバリアフィルムは、電子ペーパーにも用いることができる。例えば、電子ペーパーの詳細は特に定めるものではないが、特開2010−030295号公報の段落番号0051および0052の記載を参酌できる。
【0028】
(太陽電池)
本発明の保護フィルムは、太陽電池用のシートの保護部材として用いることができる。太陽電池素子は通常、一対の基板の間に、太陽電池として働く活性層が設けられた構成をしているが、この一対の基板の一方または両方の保護部材として本発明の保護フィルムを用いることができ、フロントシートとして用いることがより好ましい。さらには、本発明の保護フィルム自身を太陽電子用シートそのものとして用いることも可能である。
本発明の保護フィルムが部材として好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、特開2010−030295号公報の段落番号0050の記載を参酌できる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0030】
<有機層の作成>
クラス1000クリーンルーム内で、下記に示す水系ラテックス及び下記に示す水系架橋剤を固形分濃度が10重量%となるように調整した。該組成物を、あらかじめコロナ処理しておいたポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製、テオネックスQ65FA、厚さ100μm)上にワイヤーバーで塗布し、クリーンオーブン165℃で2分間乾燥させ、有機層を作成した。有機層の厚さは、1μmとした。
【0031】
<無機層の作成>
前記有機層の表面に、酸化ケイ素または酸化アルミニウム層を真空蒸着法により100nmの厚さとなるように設けた。
【0032】
<水蒸気透過率の測定(バリア性能評価)>
水蒸気透過率測定装置として、イリノイ社製水蒸気透過装置(model7001)を用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した。以下のとおり評価した。
◎:0.01g/m2・day以下
○:0.01g/m2・dayより高く0.04g/m2・day以下
△:0.04g/m2・dayより高く0.1g/m2・day以下
×:0.1g/m2・dayより高い
【0033】
<密着性評価>
バリア性積層体の密着性を評価する目的で、JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行なった。ガスバリアフィルムの表面にそれぞれカッターナイフで膜面に対して90°の切込みを1mm間隔で入れ、1mm間隔の碁盤目を100個作製した。この上に2cm幅のマイラーテープ[日東電工製、ポリエステルテープ(No.31B)]を貼り付け、テープ剥離試験機を使用して貼り付けたテープをはがした。ガスバリアフィルム上の100個の碁盤目のうち剥離せずに残存したマスの数(n)をカウントした。結果は、以下のとおり示した。
◎:n=91〜100
○:n=51〜90
△:n=11〜50
×:n=0〜10
【0034】
<経時外観、経時バリア性能、経時密着性>
85℃、85%相対湿度下に1000時間放置した後の、外観、バリア性能、密着性を上記と同様に評価した。
【0035】
結果を下記表に示す。尚、A:Bの質量比は、固形分の比である。
【0036】
【表1】

【0037】
上記表における水系ラテックスおよび水系架橋剤の種類は下記のとおりである。
Z−687:互応化学工業製、プラスコート Z−687、Tg=110℃、分子量26000、ナフタレン骨格含有ポリエステルポリオール
ET−410:東亜合成製、ジュリマーET−410、Tg=44℃、ポリアクリルポリオール
MD−1500:東洋紡績製、バイロナールMD−1500、Tg=77℃、ポリエステルポリオール
MD−1480:東洋紡績製、バイロナールMD−1480、Tg=20℃、ポリエステルポリオール
W100:三井化学性ケミパールW−100、ポリエチレン
K−2030E:日本触媒製、エポクロスK−2030E、オキサゾリン系架橋剤
K−2020E:日本触媒製、エポクロスK−2020E、オキサゾリン系架橋剤
WD725:三井化学製、タケネート WD−725、イソシアネート系架橋剤
V−01:日清紡製、カルボジライトV−10、カルボジイミド系架橋剤
【0038】
上記表から明らかなとおり、水系ポリマーラテックスを用いた場合、架橋剤を添加しなければ、経時により、ガスバリアフィルムに割れが発生することがわかった。一方、架橋剤を添加しても、水系オキサゾリン系架橋剤以外の架橋剤を用いた場合、泡が発生してしまうことが分かった。これに対し、有機層に水系ポリマーラテックスと水系オキサゾリン架橋剤を併用することにより、フレッシュ時および経時のバリア性、密着性、外観のいずれにも優れたガスバリアフィルムが得られることが確認された。
【0039】
上記実施例において、ガスバリアフィルム同士を無機層側が対向するようにドライラミネーションを行った。接着剤として大日精化製セイカボンドE−372(主剤)とC−76−2.0(硬化剤)を用いた。両者を配合比(質量)で17:2となるよう秤量し、酢酸エチルで10倍希釈した均一塗布液をスピンコーターで塗布した。90℃5分で溶剤を乾燥したのち、70℃のニップロールを通過させラミネートし、40℃、48時間のエイジングを行った。得られた複合フィルムは相乗的にバリア性が向上していることが分かった。
【0040】
太陽電池の作成
上記で作成したガスバリアフィルムを用いて、太陽電池モジュールを作成した。具体的には、太陽電池モジュールよう充填剤として、スタンダードキュアタイプのエチレンー酢酸ビニル共重合体を用いた。10cm角の強化ガラス上に厚さ450μmのエチレンー酢酸ビニル共重合体でアモルファス系のシリコン太陽電池セルを挟み込み充填し、さらにその上のガスバリアフィルムを設置することで太陽電池モジュールを作成した。設置条件は、150℃にて真空引き3分行ったあと、9分間圧着を行った。本方法で作成した太陽電池モジュールは、良好に作動し、85℃、85%相対湿度の環境下でも良好な電気出力特性を示した。
【符号の説明】
【0041】
1 基材フィルム
2 有機層
3 無機層
4 ガスバリアフィルム
5 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機層と、無機層とを該順に有するバリア性積層体において、有機層は水系ポリマーラテックス(A)及び水系オキサゾリン架橋剤(B)を含み、該無機層は蒸着により作成されるバリア性積層体。
【請求項2】
前記水系ポリマーラテックス(A)のガラス転移温度(Tg)が40℃以上である、請求項1に記載のバリア性積層体。
【請求項3】
前記水系ポリマーラテックス(A)の分子量が、10000以上である、請求項1または2に記載のバリア性積層体。
【請求項4】
前記水系ポリマーラテックス(A)がポリエステルポリオールまたはポリアクリルポリオールである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項5】
前記水系ポリマーラテックス(A)がナフタレン骨格を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項6】
前記有機層の厚みが、0.1〜5.0μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項7】
前記無機層が、酸化ケイ素である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項8】
前記無機層の厚みが、20nm〜500nmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項9】
基材フィルム上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のバリア性積層体を有するガスバリアフィルム。
【請求項10】
前記有機層は、基材フィルム上に、水系ポリマーラテックス100重量部に対し、水系オキサゾリン架橋剤3〜26重量部を含む組成物を造膜してなる層である、請求項9に記載のガスバリアフィルム。
【請求項11】
前記基材フィルムが、耐加水分解ポリエステルである、請求項9または10に記載のガスバリアフィルム。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム2枚を無機層側が対向するように接着層を介して貼り合わせてなる、複合フィルム。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のバリア性積層体、請求項9〜11のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムまたは請求項12に記載の複合フィルムを含む、太陽電池用シート。
【請求項14】
請求項13に記載の太陽電池用シートを有する太陽電池。
【請求項15】
基材フィルム上に、水系ラテックスと水系オキサゾリン架橋剤を含む組成物を、100℃以上の温度で加熱乾燥して水系分散媒を蒸発除去して有機層を設ける工程と、該有機層の表面に真空蒸着により無機層を設ける工程とを含む、ガスバリアフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−178115(P2011−178115A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46667(P2010−46667)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】