説明

ガスバリア材形成用組成物、ガスバリア材及びその製造方法並びにガスバリア性包装材

【課題】優れたガスバリア性、耐レトルト性、可撓性を有するガスバリア材を形成可能であると共に、より低温短時間での硬化を可能とし、プラスチック基体に影響を与えることがなく、生産性を向上することが可能なガスバリア材形成用組成物を提供することである。
【解決手段】ポリカルボン酸系ポリマー(A)と、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有する化合物(B)及び少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)から成ることを特徴とするガスバリア材形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボン酸系ポリマーに特定の官能基を有する化合物からなる架橋剤を用いて成るガスバリア材形成用組成物に関するものであり、より詳細には、低温短時間硬化が可能で、優れたガスバリア性、耐レトルト性及び可撓性を有するガスバリア材形成用組成物、ガスバリア材及びその製造方法並びにかかるガスバリア材を用いて成る包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスバリア性樹脂としては種々のものが使用されており、特にポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体等がガスバリア性樹脂として知られている。しかしながら、ポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリルは、環境の問題からその使用を控える傾向があり、エチレンビニルアルコール共重合体においては、ガスバリア性の湿度依存性が大きく、高湿度条件下ではガスバリア性が低下するという問題があった。
包装材料にガスバリア性を付与する方法としては、基材の表面に無機物を蒸着したフィルムも知られているが、これらのフィルムはコストが非常に高く、しかも蒸着フィルムの可撓性や基材又は他の樹脂層との接着性に劣るという問題を有している。
【0003】
このような問題を解決するために、基材に、水溶液高分子Aと水溶性または水分散性の高分子Bと、無機系層状化合物から成る被膜を形成したガスバリアフィルム(特許文献1)や、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール類との混合物から成る成形物層の表面に金属化合物を含む層を塗工して成るガスバリア性フィルム(特許文献2)、或いはポリビニルアルコールとエチレン−マレイン酸共重合体と2価以上の金属化合物を含有するガスバリア性塗料(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
またポリカルボン酸系ポリマーと、カルボキシル基と反応する官能基を2〜4個有する架橋剤及び2価以上の金属イオンとを反応させることによって、上記ポリカルボン酸系ポリマーに、架橋剤による架橋部位及び上記2価以上の金属イオンによる架橋部位を形成させ、上記のポリカルボン酸系ポリマーと架橋剤との重量比を99.9/0.1〜65/35としたガスバリア性樹脂組成物 (特許文献4)や、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面にガスバリア性の被膜層を形成してなるフィルムであって、この被膜層が1分子当たり3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む架橋剤によって架橋されたポリアクリル酸から形成され、上記ポリアクリル酸100質量部に対して上記架橋剤を1〜100質量部含有することを特徴とするガスバリア性フィルム (特許文献5)等が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−151264号公報
【特許文献2】特開2000−931号公報
【特許文献3】特開2004−115776号公報
【特許文献4】特開2003−171419号公報
【特許文献5】特開2002−210207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1乃至5に記載されたガスバリア材は、高湿度条件下におけるガスバリア性は改善されているとしても、包装材料としての多様な要求に耐え得るものではなく、未だ充分満足し得るものではない。
すなわち上記特許文献1に記載されたガスバリアフィルムにおいては、塗膜中に無機層状化合物が分散されているだけであるため、優れたガスバリア性を得るために無機層状化合物を多量に添加する必要があり、機械的強度が低下するという問題があると共に耐レトルト性にも劣っている。また上記特許文献2に記載されたガスバリア性フィルムでは、塗膜の形成に高温且つ長時間の熱処理が必要であり、また上記特許文献3に記載されたガスバリア性塗料においても、短時間で塗膜の硬化を行う場合には高温で熱処理することが必要であり、特許文献2及び3に記載されたガスバリア材においてはプラスチック基体に対して熱の影響が大きいと共に生産性の点で問題がある。
【0007】
また上記特許文献4に記載されたガスバリア性樹脂組成物においては、フィルムの形成に150℃以上の高温或いは長時間の加熱が必要であるため、プラスチック基体への影響が大きいと共に生産性の点で問題があり、また可撓性の点でも十分満足するものではない。また引用文献5記載のガスバリア性フィルムも150℃以上の高温で加熱する必要があると共に、可撓性に劣っており、また耐レトルト性の点でも充分満足するものではなかった。
【0008】
このような問題を解決するための本発明者等は、ポリカルボン酸系ポリマー(A)と、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有する化合物(B)から成り、前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と環構造(b)が反応することにより架橋構造が形成されていることを特徴とするガスバリア材を提案した(特願2005−282008)。
【0009】
かかるガスバリア材は、上記先行技術が有する問題を生じることがなく、優れたガスバリア性、耐レトルト性、可撓性を有し、更に塗膜を低温短時間で硬化することができ、生産性にも優れたものである。
本発明者等は、上記ガスバリア材について更に鋭意研究を行った結果、上記ガスバリア材において、化合物(B)に更にエポキシ基を有する化合物(C)を組み合わせて使用することにより、より低温短時間での硬化が可能になることを見出した。
また、化合物(B)による架橋構造を形成する反応が、ガスバリア材形成用組成物中に存在する水によって阻害されることを明らかにし、かかる水を架橋反応に影響を与えることなく除去できればガスバリア材形成用組成物の貯蔵安定性が向上し、エポキシ基を有する化合物を組み合わせで用いることと相俟って、安定して低温短時間で塗膜を硬化することが可能になることを見出した。
【0010】
従って本発明の目的は、優れたガスバリア性、耐レトルト性、可撓性を有するガスバリア材を形成可能であると共に、より低温短時間での硬化を可能とし、プラスチック基体に影響を与えることがなく、生産性を向上することが可能なガスバリア材形成用組成物を提供することである。
また本発明の他の目的は、上記ガスバリア材の製造方法及び上記ガスバリア材を用いてなる包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ポリカルボン酸系ポリマー(A)と、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有する化合物(B)及び少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)から成ることを特徴とするガスバリア材形成用組成物が提供される。
本発明のガスバリア材形成用組成物においては、
1.ポリカルボン酸系ポリマー(A)100重量部当たり、前記化合物(B)を0.01乃至60重量部及び前記化合物(C)を0.01乃至20重量部の量で含有すること、
2.ポリカルボン酸系ポリマー(A)が、ポリ(メタ)アクリル酸又はその部分中和物であること、
3.化合物(B)が、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)であること、
4.化合物(C)が1分子中に、2個のエポキシシクロヘキシル基を有する化合物であること、
5.エポキシ基を有する化合物(C)が、下記式(1)で表されるものであること、
【化1】

式中、nは、1〜10の整数である。
6.ポリカルボン酸系ポリマー(A)100重量部当たり、脱水剤(D)を1乃至100重量部の量で含有すること、
7.脱水剤(D)が、オルト蟻酸メチル及び/又はオルト酢酸メチルであること、
が好適である。
【0012】
本発明によればまた、上記ガスバリア材形成用組成物から成り、該ガスバリア材形成用組成物のポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と化合物(B)の環構造(b)及び化合物(C)のエポキシ基が反応して架橋構造が形成されていることを特徴とするガスバリア材が提供される。
本発明のガスバリア材においては、架橋構造における架橋部に、アミドエステル結合が2個又はエポシシクロヘキシル基由来のエステル結合が2個形成されていることが好適である。
本発明のガスバリア材においては更に、多価金属イオンによって、残余の未反応カルボキシル基の間に金属イオン架橋が形成されていることが好適である。
本発明によれば更にまた、上記ガスバリア材を、多価金属化合物を含有する水で処理することにより、残余の未反応カルボキシル基の間に金属イオン架橋を形成させることを特徴とするガスバリア材の製造方法が提供される。
【0013】
本発明によればまた、上記ガスバリア材から成る層を、プラスチック基体の表面或いはプラスチックの層間に備えてなることを特徴とする包装材が提供される。
本発明の包装材においては、前記ガスバリア材からなる層が、アンカー層を介してプラスチック基体の表面或いは少なくとも一方の面がアンカー層を介してプラスチックの層間に設けられていることが好適であり、特にアンカー層がウレタン系ポリマーを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガスバリア材形成用組成物によれば、化合物(B)に加えて化合物(C)を用いることより、更に低温短時間での加熱で容易に架橋構造を形成することができるため、プラスチック基体に悪影響を与えることなく且つ製造時間及びエネルギーをより低減することが可能になり、生産性よく、優れたガスバリア材を形成することが可能となる。
また本発明のガスバリア材形成用組成物によれば、脱水剤(D)を配合することにより、化合物(B)を失活させて架橋反応を阻害する水を架橋反応に影響を与えることなく除去することができ、ガスバリア材形成用組成物の硬化性低下を抑止して、貯蔵安定性も顕著に向上できる。また脱水剤(D)の中でも、オルト蟻酸メチル及び/又はオルト酢酸メチルを用いる事で、脱水剤と水との反応により生じる副生物もガスバリア材を形成する際に容易に蒸発して消失するため、本発明のガスバリア材が有する優れた性能を損なうことがない。
本発明のガスバリア材形成用組成物から得られるガスバリア材は、優れたガスバリア性、耐水性を有すると共に、レトルト殺菌のような高温湿熱条件下におかれた後も優れたガスバリア性を達成でき、耐レトルト性をも付与することが可能となる。
更にまた本発明のガスバリア材は可撓性にも優れているため、可撓性の包装材に使用しても問題になるようなガスバリア材の損傷によるガスバリア性の低下がないと共に、プラスチック基材上に形成して多層予備成形体とし、それを更に加工に付すこともできる。
更にポリカルボン酸系ポリマー及び特定の官能基を有する架橋剤による架橋形成後未反応で残存するカルボキシル基間を金属イオンで架橋することにより、高湿度条件下におけるガスバリア性を一層顕著に改善することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のガスバリア材形成用組成物は、ポリカルボン酸系ポリマー(A)と、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有する化合物(B)及び少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)から成ることが重要な特徴である。
本発明のガスバリア材形成用組成物がガスバリア材を形成する基本構造は、前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と化合物(B)の環構造(b)が反応することにより架橋構造が形成されるものによるもの、及び前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と化合物(C)のエポキシ基が反応することにより架橋構造が形成されるものによるものである。
【0016】
すなわち、下記式(2)
【化2】

に示すように、ポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と、化合物(B)の環構造(b)が反応してアミドエステルを形成し、架橋部分にアミドエステル結合が2個形成された架橋塗膜として形成されると共に、下記式(3)
【化3】

に示すように、ポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と、化合物(C)のエポキシ基が反応して、脂環式エポキシ基由来のエステル構造が2個形成された架橋構造が形成され、これらにより優れたガスバリア性を付与することが可能となるのである。
【0017】
上記ガスバリア材が優れたガスバリア性を示す理由は以下の通りであると考えられる。
i)主成分であるポリマーがポリカルボン酸系ポリマーであるため、側鎖のカルボキシル基が高い水素結合性を有し、強い凝集力が働くため、優れたガスバリア性を有する基本構造を形成することができる。
ii)ポリマー側鎖であるカルボキシル基と架橋成分である化合物(B)の環構造(b)との反応により、ガスバリア性に有効な構造であるアミドエステル結合を形成することができると共に、ポリマー側鎖であるカルボキシル基と架橋成分である化合物(C)のエポキシシクロヘキシル基との反応により、ガスバリア性に有効な構造であるエステル結合を形成するができる。
iii)化合物(B)の環構造(b)は架橋形成に必要最小限の2個であると共に化合物(C)も2官能を主とすることで、架橋点の構造が3次元的に広がり難く、ガスバリア性に優れた緻密な架橋構造を形成することができる。
iv)主成分にポリカルボン酸系ポリマーを用いているので、(B)と(C)との架橋に用いられなかった未反応のカルボキシル基は金属イオン架橋させて、高湿度条件下におけるガスバリア性を更に向上させることができ、高湿度条件下においても損なわれることのない優れたガスバリア性を付与することもできる。
【0018】
またポリカルボン酸系ポリマー(A)の化合物(B)及び化合物(C)による架橋は、低温且つ短時間での加熱により形成可能であるため、ガスバリア材を形成すべきプラスチック基体に与える影響も少なく、また生産性にも優れているという利点もある。
【0019】
ポリカルボン酸系ポリマー(A)と、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有する化合物(B)における、上記式(2)に表される架橋反応において、水が存在すると化合物(B)が失活し、架橋反応が阻害され、硬化性が低下する。
本発明のガスバリア材形成用組成物においては、上記(A)、(B)及び(C)成分に加えて脱水剤(D)を配合することにより反応系に存在する水を除去し、化合物(B)の失活を抑止することができる。これによりガスバリア材形成用組成物の貯蔵安定性を向上でき、化合物(B)をポリカルボン酸系ポリマー(A)と効率よく反応させて架橋反応を促進することが可能となる。
ここで、脱水剤(D)としてオルト蟻酸メチルを用いた場合の脱水反応を示す。下記式(4)において、脱水剤との反応により生じる生成物はメタノールと蟻酸メチルであり、これらは共に架橋反応の反応条件下では容易に蒸発して、形成されるガスバリア材中に残留することがないため、本発明のガスバリア材形成用組成物においては、形成されるガスバリア材は脱水剤(D)を配合していないものと同様でありながら、架橋構造をより低温短時間で形成することが可能になるのである。
【0020】
【化4】

【0021】
このことは後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、脱水剤(D)を配合して成る本発明のガスバリア材形成用組成物から成るガスバリア材(実施例3)と、同一条件で硬化させた脱水剤を配合していないガスバリア材形成用組成物から成るガスバリア材(実施例1)は、両者とも塗膜の硬化状態を示すメタノール抽出率(%)の値はかなり低いが、両者を比較すると実施例3の方がより優れた硬化性が得られていることが明らかである。
さらに、実施例2と実施例5を比較すると、ほぼ同等のメタノール抽出率であるが、実施例5は、脱水剤を配合したガスバリア材形成用組成物であって、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)(化合物(B))の配合量が30重量%である。
一方、実施例2は、脱水剤を配合していないガスバリア材形成用組成物であって、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)(化合物(B))の配合量が60重量%である。実施例5は、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)(化合物(B))、脱水剤を配合することによって、実施例2よりも少ない2,2’−ビス(2−オキサゾリン)量でほぼ同等のメタノール抽出率を得ることができる。
その結果、実施例5のように化合物(B)の配合量を少なくしても、ポリカルボン酸系ポリマー(A)の分子間に形成される有効な架橋点の数は実施例2と同等となり、上記ポリカルボン酸系ポリマー(A)が有するカルボキシル基間の水素結合による凝集力がより有効に働くか、或いは残余のカルボキシル基間に形成される金属イオン架橋の数が増加してより耐湿性が向上するため、温度25℃、相対湿度80%という高湿度な環境下で測定された酸素透過量の値は減少しているのが分かる。
【0022】
(ガスバリア材形成用組成物)
[ポリカルボン酸系ポリマー(A)]
本発明のガスバリア材形成用組成物に用いるポリカルボン酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体、及びこれらの部分中和物を挙げることができ、好適には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸を用いることが好ましい。
上記ポリカルボン酸系ポリマーの部分中和物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化金属塩、アンモニア等により部分中和することができる。
上記部分中和物の中和度は、特に限定されないが、カルボキシル基に対するモル比で30%以下であることが好ましい。上記範囲よりも多いとカルボキシル基の水素結合性が低下してガスバリア性が低下する。
ポリカルボン酸系ポリマーの「重量平均分子量」は、特に限定されないが、2000乃至5,000,000、特に10,000乃至1,000,000の範囲にあることが好ましい。
上記「重量平均分子量」の測定は、分離カラムとして「TSK G4000PWXL」、「TSK G3000PWXL」(東ソー株式会社製)の2本を用いて、溶離液として50mmolリン酸水溶液を用い40℃及び流速1.0ml/分において、クロマトグラムと標準ポリカルボン酸系ポリマーの検量線から求めた。
【0023】
またポリカルボン酸系ポリマーは、含水率が15%以下であることが特に好適である。これにより、脱水剤(D)の配合と相俟って、本発明のガスバリア材をより一層低温短時間で製造することが可能となる。
含水率を15%以下とするには、ポリカルボン酸系ポリマーに対し、加熱や減圧などの脱水処理を行う方法が挙げられる。
脱水処理は例えば、電気オーブンで140乃至180℃の温度で5乃至20分程度の加熱処理で充分であり、他の加熱手段でも良く、他に減圧や加熱と減圧を組合わせた処理を用いても構わない。
ポリカルボン酸系ポリマーの含水率は、カール・フィッシャー法により求められる。カール・フィッシャー法によって求められる含水率は、水分気化のためのポリカルボン酸系ポリマーの加熱条件に依存する。加熱条件を200℃未満に設定してしまうと、ポリカルボン酸系ポリマーへの吸着水量(自由水量)は把握できるものの、高水素結合性ポリマーであるポリカルボン酸系ポリマーが、構造水として持つ水分量も含めて含水率として求めることは難しいと考えられる。一方、250℃を超えると、ポリカルボン酸系ポリマーが著しく分解してしまう危険性があるため、好ましくない。従って自由水及び構造水の両方を加味した含水率を求めるには、加熱条件として200乃至250℃が好適範囲と考えられる。本発明における含水率は、水分気化のための加熱条件を230℃とした。
【0024】
[化合物(B)]
本発明のガスバリア材形成用組成物において、ポリカルボン酸系ポリマーを架橋するための架橋剤として用いられる化合物(B)は、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)、すなわち−N=C−O−基、或いは=C−O−部分を環内に持つオキソイミノ基を有する環構造を2個含有するものであり、かかる環構造(b)としては、これに限定されないが下記の環構造を例示することができる。
【0025】
【化5】

【0026】
一方、下記式
【化6】

に示されるような複素環であっても、環中にエーテル結合の酸素を含まない構造ではポリカルボン酸系ポリマーとアミドエステル結合を生成する架橋反応が起こらない。また、環構造が1個では架橋することができない。3個以上では架橋点の構造が3次元的に広がり、ガスバリア性に優れた緻密な架橋構造が形成できないため好ましくない。これらのことより、窒素と炭素が二重結合を形成していること、炭素がエーテル結合を形成していること、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成されていること、それらの条件が単独で存在するだけではなく、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有することが重要である。
【0027】
本発明のガスバリア材形成用組成物に用いる化合物(B)は、上述したような環構造(b)を2個含有するものであり、かかる環構造は同一の環構造が2個でもよいし、異なる環構造の組み合わせであってもよいが、少なくとも1個がオキサゾリン基又はその誘導体であることが好適である。
【0028】
かかる環構造(b)を2個有する化合物(B)としては、これに限定されないが、例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(5,5′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4,4′,4′−テトラメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−3,3′−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等のビスオキサゾリン類:2,2′−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−プロピレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ブチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−p・p′−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等のビスオキサジン類を例示することができる。
【0029】
本発明においては、機械的特性及び着色等の点から、ポリアクリル酸ポリマー(A)と化合物(B)により形成される架橋部分が、脂肪族鎖により形成されていることが好適であることから、上記化合物(B)の中でも芳香環を有しないものを好適に使用することができ、中でも2,2′−ビス(2−オキサゾリン)を特に好適に用いることができる。
【0030】
[少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)]
本発明のガスバリア材形成用組成物において、化合物(B)と共にポリカルボン酸系ポリマーを架橋するための架橋剤として、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)が用いられる。
本発明においては、架橋剤として使用される化合物(C)がとしては、脂環式のエポキシ樹脂であることが好ましく、これにより優れたガスバリア性と、かかるガスバリア材を低温短時間で形成することが可能であり、しかも可撓性にも優れている。
また脂環式のエポキシ樹脂の中でも、エポキシシクロヘキシル基を1分子中に2個有するものが特に好適で、優れた可撓性を維持することが可能となるのである。
すなわち、エポキシシクロヘキシル基が1分子中に1個のものでは、そもそも十分な可撓性を得ることができず、一方エポキシシクロヘキシル基を1分子中に3個以上有する場合には、3個以上では架橋点の構造が3次元的に広がり、ガスバリア性に優れた緻密な架橋構造が形成できず、また形成される膜が硬く脆くなるため、可撓性に劣り、満足する耐レトルト性を得ることができないことがある。
【0031】
本発明に特に好適に用いることができる、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)としては、これらに限定されないが、前記式(1)で表される脂環式エポキシ化合物の他、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロへキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロへキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロへキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート等を例示することができる。
【0032】
本発明においては、機械的特性及び着色等の点から、ポリアクリル酸ポリマー(A)と化合物(C)により形成される架橋部分が、脂肪族鎖により形成されていることが好適であることから、上記化合物(C)の中でも芳香環を有しないものを好適に使用することができ、中でも3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートを特に好適に用いることができる。
なおエポキシシクロヘキシル基含有化合物の市販品としては、サイラキュアUVR−6100、サイラキュアUVR−6105、サイラキュアUVR−6110、サイラキュアUVR−6128、サイラキュアUVR−6200、サイラキュアUVR−6216(以上、ダウ・ケミカル社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2100、KRM−2110、KRM−2199(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。
上記脂環式エポキシ化合物以外には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2,5,6-ジエポキシオクタノール、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を用いることができる。
【0033】
[脱水剤(D)]
本発明のガスバリア材形成用組成物に用いる脱水剤としては、それ自体公知の脱水剤を使用することができ、これに限定されないが以下の脱水剤を挙げることができる。
(i)粉末状で多孔性に富んだ金属酸化物又は炭化物質;例えば、合成シリカ、活性アルミナ、ゼオライト、活性炭等、
(ii)CaSO 、CaSO ・1/2HO、CaOなどの組成を有するカルシウム化合物類;例えば、焼き石膏、可溶性石膏、生石灰等、
(iii)金属アルコキシド類;例えば、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウム sec−ブチレート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ジルコニウム2−プロピレート、ジルコニウムn−ブチレート、エチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン等
(iv)単官能イソシアネート類;例えば、アディティブTI(住化バイエルウレタン(株)製、商品名)等、
(v)有機アルコキシ化合物類;例えば、下記式(5)で表される有機アルコキシ化合物、が挙げられる。
【化7】

(式(5)中、Rは水素原子又は−CHを表し、Rは同一又は相異なってもよい−CH3、−Cを表す。)
これらの脱水剤は、単独で又は2種以上併用して使用することができる。
式(5)で表される有機アルコキシ化合物として、特に加熱乾燥時に揮散し易いことから、オルト蟻酸メチル及び/又はオルト酢酸メチルを好適に使用することができる。
【0034】
[ガスバリア材形成用組成物の調製]
本発明のガスバリア材形成用組成物は、上述したポリカルボン酸系ポリマー(A)100重量部当たり、前記化合物(B)を0.01乃至60重量部、特に0.1乃至20重量部、及び前記化合物(C)を0.01至20重量部、特に0.02乃至5重量部の量で含有して成ることが好適である。
本発明のガスバリア材形成用組成物においては、使用する化合物(B)及び化合物(C)の種類にも依るが、ガスバリア材形成用組成物の調製に、水或いはアルコール等の溶媒、水/アルコール等の混合溶媒を用いることができる。前述したように化合物(B)の失活を防ぐため、特に脱水剤(D)を配合することが好ましいことから、ガスバリア材形成用組成物の調製に用いる溶媒は水以外の溶媒が主成分であることが好ましく、揮発させるために必要な熱量が水より少ない溶媒が好ましい。かかる溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、特にメタノールが好ましい。前記アルコールを含む混合溶媒で、ポリカルボン酸系ポリマー(A)の溶液を調製し、その溶媒組成で、化合物(B)、(C)及び(D)も可溶であればそのまま加えても良い。
また、前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)の溶液に添加後、溶液状態が保持できる溶媒組成で、(B)、(C)及び(D)を別に溶かしてから、前記ポリカルボン酸系ポリマーの溶液に加えても良い。或いは(B)及び(C)成分を含有する溶液を先に前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)の溶液に添加した後、(D)成分を配合すること等によっても調製することができる。
【0035】
また本発明のガスバリア材形成用組成物においては、ポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と、化合物(B)の環構造(b)の反応及び化合物(C)の反応を促進するために酸性又は塩基性触媒を加えてもよい。
酸触媒としては、酢酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、安息香酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等の一価の酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ポリカルボン酸等の二価以上の酸を挙げることができる。
塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミントリエチルアミンなどが挙げられる。
【0036】
本発明のガスバリア材形成用組成物には、上記成分以外にも、無機分散体を含有することもできる。このような無機分散体は、外部からの水分をブロックし、ガスバリア材を保護する機能を有し、ガスバリア性や耐水性を更に向上させることができる。
かかる無機分散体は、球状、針状、層状等、形状は問わないが、ポリカルボン酸ポリマー(A)、化合物(B)及び(C)に対して濡れ性を有し、ガスバリア材形成用組成物中において、良好に分散するものが使用される。特に水分をブロックし得るという見地から、層状結晶構造を有するケイ酸塩化合物、例えば、水膨潤性雲母、クレイ等が好適に使用される。これらの無機分散体は、アスペクト比が30以上5000以下であることが層状に分散させ、水分をブロックするという点で好適である。
無機分散体の含有量はポリカルボン酸ポリマー(A)、化合物(B)及び化合物(C)の合計100重量部に対し、5乃至100重量部の量で含有していることが好ましい。
【0037】
(ガスバリア材)
本発明のガスバリア材は、上述したガスバリア材形成用組成物を、用いるポリカルボン酸系ポリマー(A)や化合物(B)及び(C)の種類や、或いはガスバリア材形成用組成物の塗工量にもよるが、60乃至140℃の温度で、1秒乃至5分間加熱することにより製造することができる。
本発明のガスバリア材は、上記ガスバリア材形成用組成物を直接シート状やフィルム状等にしてこれを加熱して架橋構造を形成してガスバリア材とすることもできるし、或いは上記ガスバリア材形成用組成物を基体上に塗布したものを加熱して架橋構造を形成した後、基体から取外して単層のガスバリア材とすることもできる。また、プラスチック基体上にガスバリア層を形成して多層のガスバリア材とすることもできる。
【0038】
架橋構造が形成されたガスバリア材においては、架橋構造の形成に使用されなかった未反応のカルボキシル基が残存していることから、本発明においては更に、未反応で残存するカルボキシル基間に金属イオン架橋を形成させることが特に好ましく、これにより、未反応のカルボキシル基が低減して耐水性が顕著に向上すると共に、ポリカルボン酸系ポリマーの架橋構造に更にイオン架橋構造が導入されるため、より緻密な架橋構造が付与され、特に高湿度条件下におけるガスバリア性を顕著に向上させることが可能となるのである。
金属イオン架橋は、ガスバリア材中の少なくとも酸価100mg/gKOH以上の量に相当するカルボキシル基を金属イオンにより架橋することが好ましく、330mg/gKOH以上であることがより好ましい。
【0039】
架橋構造が形成されたガスバリア材中の残余の未反応のカルボキシル基の間に金属イオン架橋を形成するには、ガスバリア材を多価金属化合物を含有する水で処理することにより容易に金属イオン架橋構造を形成することができる。
多価金属化合物を含有する水による処理としては、(i)多価金属化合物を含有する水中へのガスバリア材の浸漬処理、(ii)多価金属化合物を含有する水のガスバリア材へのスプレー処理,(iii)(i)乃至(ii)の処理後に高湿度下にガスバリア材を置く雰囲気処理、(iv)多価金属化合物を含有する水でレトルト処理(好ましくは、包材と熱水が直接接触する方法)、等を挙げることができる。
【0040】
上記処理(iii)は、上記処理(i)〜(ii)後のエージング効果をもたらす処理であり、(i)〜(ii)処理の短時間化を可能にする。上記処理(i)〜(iii)の何れの場合も使用する処理水は冷水でも構わないが、多価金属化合物を含有する水がガスバリア材に作用しやすいように、多価金属化合物を含有する水の温度を20℃以上、特に40乃至100℃の温度とする。処理時間は、(i)〜(ii)の場合は、1秒以上、特に3秒乃至4日程度処理を行うことが好ましく、(iii)の場合は、(i)〜(ii)処理を0.5秒以上、特に1秒乃至1時間程度処理した後、高湿度下にガスバリア材を置く雰囲気処理を1時間以上、特に2時間乃至14日程度処理することが好ましい。上記処理(iv)の場合は、処理温度は101℃以上、特に120乃至140℃の温度であり、1秒以上、特に3秒乃至120分程度処理を行う。
また、多価金属化合物を予め溶解乃至分散させておいたコーティング液から形成したガスバリア材を、水乃至多価金属化合物を含有する水で同様に処理してもよい。
【0041】
多価金属イオンとしては、前記樹脂が有するカルボキシル基を架橋可能である限り特に制限されず、2価以上、特に2〜3価であることが好ましく、好適にはマグネシウムイオンMg2+、カルシウムイオンCa2+等2価の金属イオンが使用できる。
上記金属イオンとしては、アルカリ土類金属(マグネシウムMg,カルシウムCa、ストロンチウムSr,バリウムBa等)、周期表8族金属(鉄Fe,ルテニウムRu等)、周期表11族金属(銅Cu等)、周期表12族金属(亜鉛Zn等)、周期表13族金属(アルミニウムAl等)等の金属イオンが例示できる。これらの中で2価金属イオンとしては、マグネシウムイオンMg2+,カルシウムイオンCa2+,ストロンチウムイオンSr2+,バリウムイオンBa2+,銅イオンCu2+,亜鉛イオンZn2+等が例示でき、3価金属イオンとしては、アルミニウムイオンAl3+,鉄イオンFe3+等のイオンが例示できる。上記金属イオンは一種又は二種以上組み合わせて使用できる。上記多価金属イオンのイオン源である水解離性金属化合物としては、上記金属イオンを構成する金属の塩、例えば、ハロゲン化物(例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の塩化物)、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等)、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、無機酸塩、例えば、過ハロゲン酸塩(例えば、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム等の過塩素酸塩等)、硫酸塩、亜硫酸塩(例えば、マグネシウムスルホネート、カルシウムスルホネート等)、硝酸塩(例えば、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム等)、次亜リン酸塩、亜リン酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム等)、有機酸塩、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩等)等が挙げられる。
これらの金属化合物は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。またこれらの化合物のうち、上記金属のハロゲン化物、水酸化物等が好ましい。
【0042】
多価金属化合物は、水中に金属原子換算で0.125mmol/L以上であることが好ましく、0.5mmol/L以上であることがより好ましく、2.5mmol/L以上であることが更に好ましい。
また何れの処理の場合も、多価金属化合物を含有する水は、中性乃至アルカリ性であることが、ガスバリア材中の架橋構造形成に使用されなかった未反応のカルボキシル基が、水の浸透により解離され、金属イオン架橋が形成され易くなるために好ましい。
【0043】
本発明のガスバリア材はレトルト用包材として充分なガスバリア性能を有しており、レトルト前の酸素透過量(JIS K 7126−1に準拠)が1cm/m・day・atm(25℃−80%RHの環境下)以下、レトルト後においても酸素透過量が10cm/m・day・atm(25℃−80%RHの環境下)以下、好ましくは5cm/m・day・atm(25℃−80%RHの環境下)以下という優れたガスバリア性及び耐レトルト性を有している。
【0044】
(包装材)
本発明の包装材は、上記ガスバリア材がプラスチック基体表面或いは、プラスチックの層間に形成されて成るものである。
プラスチック基体としては、熱成形可能な熱可塑性樹脂から、押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形或いはプレス成形等の手段で製造された、フィルム、シート、或いはボトル状、カップ状、トレイ状、缶形状等の任意の包装材を挙げることができる
【0045】
プラスチック基体を構成する樹脂の適当な例は、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系共重合体;ポリカーボネート等である。
【0046】
これらの熱可塑性樹脂は単独で使用しても或いは2種以上のブレンド物の形で存在していてもよい、またプラスチック基体は、単層の構成でも、或いは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによる2層以上の積層構成であってもよい。
勿論、前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001部乃至5.0部の範囲内で添加することもできる。
また、例えば、この容器を補強するために、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
さらに、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない
【0047】
本発明によれば、最終フィルム、シート、或いは容器の表面に前述したガスバリア材を設けることもできるし、容器に成形するための予備成形物にこの被覆を予め設けることもできる。このような予備成形体としては、二軸延伸ブロー成形のための有底又は無底の筒状パリソン、プラスチック罐成形のためのパイプ、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形のためのシート、或いはヒートシール蓋、製袋のためのフィルム等を挙げることができる。
【0048】
本発明の包装材において、ガスバリア材は一般に0.1乃至10μm、特に0.5乃至5μmの厚みを有することが好ましい。この厚みが前記範囲を下回ると酸素バリア性が不十分となる場合があり、一方この厚みが前記範囲を上回っても、格別の利点がなく、包装材のコストの点では不利となる傾向がある。勿論、このガスバリア材は単一の層として、容器の内面、容器の外面、及び積層体の中間層として設けることができ、また複数の層として、容器の内外面、或いは容器の内外面の少なくとも一方と積層体の中間層として設けることができる。
【0049】
被覆予備成形体から最終容器への成形は、二軸延伸ブロー成形、プラグアシスト成形等のそれ自体公知の条件により行うことができる。また、コーティング層を設けたフィルム乃至シートを他のフィルム乃至シートと貼り合わせて、積層体を形成し、この積層体をヒートシール蓋、パウチや、容器成形用の予備成形体として用いることもできる。
【0050】
本発明のガスバリア材を包装材として用いる場合に、ガスバリア材から成る層の少なくとも片面に、アンカー層を設けることが好ましく、これにより層間の密着性を更に高めることができ、容器の機械的強度や積層体の可撓性をより高めることが可能となる。ガスバリア材から成る層を容器の内外面、或いは積層体の最表層に用いる場合は、アンカー層を介してガスバリア材から成る層を形成すれば良く、積層体の中間層に用いる場合は、ガスバリア材から成る層の少なくとも片面にアンカー層を形成すれば良い。
本発明の包装材において、アンカー材は、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系等種々のポリマーから形成され得る。特にウレタン系ポリマーを含有することが好ましい。
また、アンカー材は主剤と硬化剤から構成されていても良く、硬化反応が完了していない状態の前駆体であっても、或いは硬化剤が過剰に存在している状態であっても良い。例えばウレタン系の場合、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等のポリオール成分とポリイソシアネート成分から主に構成されており、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基数がポリオール成分中の水酸基数よりも過剰になるようにポリイソシアネート成分が存在していても良い。
【0051】
ウレタン系ポリマー形成に使用されるポリオール成分としては、ポリエステルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールのガラス転移温度は、−50℃乃至100℃が好ましく、−20℃乃至80℃がより好ましい。また、これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000乃至10万が好ましく、3000乃至8万がより好ましい。
【0052】
ウレタン系ポリマー形成に使用されるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0053】
本発明の包装材において、アンカー層はこれに限定されないが、例えば、上述したポリエステルポリオール100重量部に対してポリイソシアネートを、1乃至100重量部、特に5乃至80重量部の量で含有して成る塗料組成物を、用いるポリエステルポリオールやポリイソシアネートの種類や、或いは塗料組成物の塗工量にもよるが、60乃至170℃の温度で、2秒乃至5分間加熱することにより製造することができる。
上記塗料組成物の調製は、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネートの各成分を、トルエン、MEK、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶剤の単独或いは混合液に溶解させてもよいし、或いは各成分の溶液を混合することによっても調製できる。上記成分の外に、公知である硬化促進触媒,充填剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使用時間延長剤等を使用することもできる。
【0054】
アンカー層の厚みは、0.01乃至10μmであることが好ましく、0.05乃至5μmであることがより好ましく、0.1乃至3μmであることが更に好ましい。この厚みが前記範囲を下回ると、密着性におけるアンカー層の効果が発現しなくなる場合があり、一方この厚みが前記範囲を上回っても、格別の利点がなく、包装材のコストの点では不利となる傾向がある。
本発明の包装材において、アンカー層を設けて層間の密着性を高めると、積層体の可撓性がより高まり、積層体に対して屈曲を繰返した後の酸素透過量の増加を抑制することができる。
【実施例】
【0055】
本発明を次の実施例により更に説明するが、本発明は次の例により何らかの制限を受けるものではない。
【0056】
(メタノール抽出率)
下記の手順に従って、メタノール抽出率を求めた。
試験板の重量を測定した。・・・(1)
試験板に塗料を乾燥膜厚2μmとなるように塗装し、コンベヤ式連続乾燥炉を用い、設定温度100℃で処理時間5秒熱処理して試験板の重量を測定するか、又は設定温度140℃で処理時間20秒熱処理して試験板の重量を測定した。・・・(2)
1000mlのメタノールに浸漬して加熱して還流下で60分間抽出処理を行った試験板を乾燥し、重量を測定した。・・・(3)
塗膜のメタノール浸漬前後における重量減少量(%)を下記式に従って測定した。
メタノール抽出率(%)=[(2)−(3)/(2)−(1)]×100
(酸素透過量)
得られたプラスチックフィルムのラミネート積層体の酸素透過量を、酸素透過量測定装置(Modern Control社製、OX−TRAN2/20)を用いて測定した。また120℃−30分のレトルト殺菌処理を行った後の酸素透過量も測定した。測定条件は、測定ガス酸素(100%)、環境温度25℃、相対湿度80%である。
【0057】
(実施例1)
ポリエステルポリオール(東洋紡績製、バイロン200)を酢酸エチル/MEK混合溶媒(重量比で60/40)に溶解し、20重量%とした。この溶液中にポリイソシアネート(住化バイエルンウレタン製、スミジュールN3300)及びジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ(和光純薬製)を、それぞれポリエステルポリオールに対して60重量%、0.5重量%になるよう加え、全固形分が14重量%になるよう前記混合溶媒にて希釈し、アンカー層形成用コーティング液とした。
上記コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム2に塗布した後、コンベア型の電気オーブンにより、設定温度80℃、処理時間5秒の条件で熱処理し、厚み0.3μmのアンカー層3を有するポリエチレンテレフタレートフィルムとした。
ポリカルボン酸系ポリマー(A)としてポリアクリル酸(日本純薬製、AC−10LHP)を用い、メタノール/メチルエチルケトン混合溶媒(重量比で50/50)に固形分12重量%になるように添加して溶解させて溶液(I)を得た。
窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有する化合物(B)として、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)(東京化成製)を用い、メタノールに溶かして固形分10重量%の溶液(II)とした。
少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)として、サイラキュアUVR−6110(ダウ・ケミカル社製、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)を用い、メタノール/メチルエチルケトン混合溶媒(重量比で50/50)に溶かして固形分10重量%の溶液(III)とした。
ポリカルボン酸系ポリマー(A)に対して、化合物(B)が5重量%、並びにポリカルボン酸系ポリマー(A)に対して化合物(C)が0.2質量%となるように溶液(I)と溶液(II)および溶液(III)を混合して固形分が8重量%になるようにメタノール/メチルエチルケトン混合溶媒(重量比で50/50)で希釈して、バリア層形成用のコーティング液No.1とした。
上記コーティング液No.1をバーコーターにより、アンカー層3を有する上記ポリエチレンテレフタレートフィルムのアンカー層上に塗布した。塗布後の上記フィルムをコンベア型の電気オーブンにより、設定温度100℃で処理時間5秒、又は140℃で処理時間20秒の条件で熱処理し、アンカー層3上に、厚み2μmのバリア層4を有するポリエチレンテレフタレートフィルムとした。
水道水1Lに対して塩化カルシウムを金属換算で360mmol(40g)添加し、次いで水酸化カルシウムを水道水1Lに対して11g添加することによりpHを12.0(水温24℃での値)に調整した後、40℃に暖めて撹拌しながら上記フィルムを3秒間浸漬処理した。湯中から取り出し、表面に付着した処理液を洗浄、乾燥後、コーティング層を下層にして、厚み2μmのウレタン系接着剤5、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム6、厚み2μmのウレタン系接着剤7及び厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム8を順次ラミネートし、図1に示すような層構成の積層体1を得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1において、ポリアクリル酸に対する2,2’−ビス(2−オキサゾリン)の添加量を60重量%、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートの添加量を0.05重量%とする以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0059】
(実施例3)
実施例1において、脱水剤(D)としてオルト蟻酸メチル(和光純薬製)を、ポリアクリル酸に対して30重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0060】
(実施例4)
実施例1において、ポリアクリル酸に対する2,2’−ビス(2−オキサゾリン)の添加量を0.01重量%、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートの添加量を0.5重量%とし、脱水剤(D)としてオルト蟻酸メチル(和光純薬製)を、ポリアクリル酸に対して2重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1において、ポリアクリル酸に対する2,2’−ビス(2−オキサゾリン)の添加量を30重量%、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートの添加量を0.05重量%とし、脱水剤(D)としてオルト蟻酸メチル(和光純薬製)を、ポリアクリル酸に対して10重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1において、ポリアクリル酸に対する2,2’−ビス(2−オキサゾリン)の添加量を1重量%、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートの添加量を1重量%とし、脱水剤(D)としてオルト酢酸メチル(和光純薬製)を、ポリアクリル酸に対して5重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0063】
(実施例7)
実施例1において、ポリアクリル酸に対する2,2’−ビス(2−オキサゾリン)の添加量を10重量%、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートの添加量を0.01重量%とし、脱水剤(D)としてオルト蟻酸メチル(和光純薬製)を、ポリアクリル酸に対して20重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0064】
(実施例8)
実施例1において、化合物(C)として下記式の多官能脂環式エポキシ樹脂(エポリードGT−301、ダイセル化学工業社製)を用いて、ポリアクリル酸に対する添加量を0.2重量%とし、脱水剤(D)としてオルト蟻酸メチル(和光純薬製)を、ポリアクリル酸に対して30重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【化8】

【0065】
(実施例9)
実施例1において、化合物(C)としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(キシダ化学製)を用いて、ポリアクリル酸に対する添加量を5重量%とし、脱水剤(D)としてオルト酢酸メチル(和光純薬製)を、ポリアクリル酸に対して30重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0066】
(実施例10)
実施例1において、ポリアクリル酸に対する2,2’−ビス(2−オキサゾリン)の添加量を0.5重量%、化合物(C)として1,2,5,6-ジエポキシオクタノールを用いて、ポリアクリル酸に対する添加量を5重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0067】
(実施例11)
実施例1において、化合物(B)として2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)を用いて、ポリアクリル酸に対する添加量を0.1重量%とし、化合物(C)としてビスフェノールAグリシジルエーテルを用いて、ポリアクリル酸に対する添加量を20重量%になるようにバリア層形成用コーティング液に添加する以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0068】
(実施例12)
実施例1において、アンカー層、バリア層塗布後のポリエチレンテレフタレートフィルムに対して浸漬処理を行わない以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0069】
(実施例13)
実施例1において、アンカー層を塗布せず、厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム2上に直接バリア層4を塗布する以外は実施例1と同様の方法で図2に示すような積層体9を得た。
【0070】
(実施例14)
実施例1において、アンカー層、バリア層塗布後に、バリア層4を表層にして、厚み2μmのウレタン系接着剤5、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム6、厚み2μmのウレタン系接着剤7及び厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム8を順次ラミネートする以外は実施例1と同様の方法で図3に示すような積層体10を得た。
【0071】
(比較例1)
実施例1において、化合物(C)の3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートを添加しない以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0072】
(比較例2)
実施例1において、化合物(C)の3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートを添加せず、化合物(B)の2,2’−ビス(2−オキサゾリン)の添加量を50重量%とする以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0073】
(比較例3)
実施例1において、化合物(B)の2,2’−ビス(2−オキサゾリン)を添加しない以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0074】
上記実施例及び比較例で得られた積層体のレトルト処理前後の酸素透過量の測定結果を表2に示す。実施例1乃至14の何れにおいても、レトルト前後とも良好なバリア性能を示した。
【0075】
【表1】

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1で作成した積層体の断面構造を示す図である。
【図2】実施例13で作成した積層体の断面構造を示す図である。
【図3】実施例14で作成した積層体の断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1、9、10:積層体
2 :厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
3 :厚み0.3μmのアンカー層
4 :厚み2μmのバリア層
5、7 :厚み2μmのウレタン系接着剤
6 :厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム
8 :厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系ポリマー(A)と、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造(b)を2個含有する化合物(B)及び少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(C)から成ることを特徴とするガスバリア材形成用組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)100重量部当たり、前記化合物(B)を0.01乃至60重量部及び前記化合物(C)を0.01乃至20重量部の量で含有する請求項1記載のガスバリア材形成用組成物。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)が、ポリ(メタ)アクリル酸又はその部分中和物である請求項1又は2記載のガスバリア材形成用組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)が、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)である請求項1乃至3の何れかに記載のガスバリア材形成用組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基を有する化合物(C)が1分子中に、2個のエポキシシクロヘキシル基を有する化合物である請求項1乃至4の何れかに記載のガスバリア材形成用組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基を有する化合物(C)が、下記式(1)で表されるものである請求項1乃至5の何れかに記載のガスバリア材形成用組成物。
【化1】

式中、nは、1〜10の整数である。
【請求項7】
前記ポリカルボン酸系ポリマー(A)100重量部当たり、脱水剤(D)を1乃至100重量部の量で含有する請求項1乃至6の何れかに記載のガスバリア材形成用組成物。
【請求項8】
前記脱水剤(D)が、オルト蟻酸メチル及び/又はオルト酢酸メチルである請求項7記載のガスバリア材形成用組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載のガスバリア材形成用組成物から成り、該ガスバリア材形成用組成物のポリカルボン酸系ポリマー(A)のカルボキシル基と化合物(B)の環構造(b)及び化合物(C)のエポキシ基が反応して架橋構造が形成されていることを特徴とするガスバリア材。
【請求項10】
前記架橋構造における架橋部に、アミドエステル結合が2個又はエポシシクロヘキシル基由来のエステル結合が2個形成されている請求項9記載のガスバリア材。
【請求項11】
多価金属イオンによって、残余の未反応カルボキシル基の間に金属イオン架橋が形成されている請求項9又は10記載のガスバリア材。
【請求項12】
請求項9又は10記載のガスバリア材を、多価金属化合物を含有する水で処理することにより、残余の未反応カルボキシル基の間に金属イオン架橋を形成させることを特徴とするガスバリア材の製造方法。
【請求項13】
請求項9乃至11の何れかに記載のガスバリア材から成る層を、プラスチック基体の表面或いはプラスチックの層間に備えてなることを特徴とする包装材。
【請求項14】
前記ガスバリア材からなる層が、アンカー層を介してプラスチック基体の表面或いは少なくとも一方の面がアンカー層を介してプラスチックの層間に設けられている請求項13記載の包装材。
【請求項15】
前記アンカー層がウレタン系ポリマーを含有する請求項14記載の包装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−280452(P2008−280452A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126899(P2007−126899)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】