説明

ガス・蒸気タービン設備を一次制御する方法

【課題】調整バルブの位置決めが容易になるよう制御コンセプトを単純化し、ガスタービン設備の個々の動作特性に制御コンセプトを適合させ、しかも消滅信号の利用に関して従来の作業の適用を妨げないように改良を行う。
【解決手段】ガスタービンに接続された少なくとも1つのシャフトの回転数に依存する実際周波数の目標周波数値からの偏差を測定し、測定した周波数偏差に基づいて一次制御目標電力を求め、一次制御目標電力と、一次制御ガスタービン実際電力または計算された一次制御ガスタービン実際電力のうちの一方との間の電力偏差を求め、一次制御蒸気タービン目標電力を専ら求めた電力偏差に基づいて求め、蒸気タービン実際電力が一次制御蒸気タービン目標電力に等しくなるように調整バルブを位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源動作時のガス・蒸気タービン複合設備を一次制御するための方法であって、ガス・蒸気タービン複合設備が共通のシャフトまたはそれぞれ別個のシャフトに沿って配置されており、定常的な蒸気タービン予備電力を蓄えるために、蒸気タービンの少なくとも1つの圧力段への作動蒸気供給ラインに沿って蒸気タービン調整バルブが絞られた状態で動かされ、電源周波数が低下し、電源周波数の安定化が必要になった場合には、少なくとも絞りをより少なくした状態で移動させられるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス・蒸気タービン複合設備とは、ガスタービン部分に発生した廃熱を蒸気タービン設備を稼働させるための廃熱ボイラに廃ガスの形で熱的に結合する設備である。通常、ガスタービンの廃ガス温度は広い電力範囲に亘りできるだけ一定に保たれる。しかし、それゆえに、ガスタービン設備の迅速な負荷変動には限りがある。負荷変動の能力は実質的に廃ガス温度制御の動特性によって、それゆえまたガスタービンの空気流量の変わり易さによって制限される。この設備の蒸気タービン部分はガスタービンよりもかなり遅い時間応答をもってガスタービンの電力変化に追従する。したがって、電源動作時のガス・蒸気タービン複合設備では、特に電源周波数安定化の目的で電源が電力変化を必要とする場合があるが、この電力変化は設備のその時のガスタービン部分のみに従うことが普通であり、とりわけ蒸気タービン部分は最初の数秒はこれにまったく寄与することができない。それゆえ、電源動作時の一次制御のための予備電力はすべてガスタービンによってもたらされなければならない。上記の状況の結果として、蒸気タービンによる寄与の数秒の遅れを補償できるようにするには、ガスタービン設備側で定常的に発生させられるブロック電力が予備電力を蓄えるために相応の電力分だけ減ってしまう。とりわけ、電力供給業者は、時間的に安定しているとともに要求された電力に関しても安定した一定の交流周波数、例えばヨーロッパの50Hz、を保証することを義務づけられている。電源において周波数の安定性は動的な負荷/電力補償により保証される。動的な負荷/電力補償のためには、数秒内にかなりの予備電力を使用できるようにしなければならない。
【0003】
これに関連して、特許文献1には、ガス・蒸気タービン複合設備の一次制御のための方法が記載されている。この方法では、予備電力を迅速に提供するために、蒸気部品の少なくとも1つの圧力段がバルブを絞った状態で動かされるように蒸気タービンを動作させることで、周波数安定化・電力備蓄が達成される。電源側に不足周波数が生じた場合には、調整バルブの絞りを少なくすることにより周波数安定化に利用することができる。ここで、絞りを少なくする時間の長さは、持続時間の限られた消滅信号に従って見積もられている。
【0004】
調整バルブを絞ることによって、蒸気タービン部分の各圧力段の前で動圧が発生する。この動圧は必要に応じて調整バルブを開くことにより蓄積された予備電力の形で放出することができる。なお、予備電力の大きさは絞りの程度に依存する。絞りを止めると、動圧はゆっくりと低下する。これにより、蓄積された予備電力を蒸気タービンによっていわゆる一次制御電力の形で補助的に放出することができる。蒸気タービンのこのような動作は、一方では、大きな定常ブロック電力をとりわけガスタービン設備側で発生させることを可能にし、他方では、蒸気タービンが実際的に時間遅れなしに、すなわち数秒以内に、予備電力分を提供できるようにする。これによって最終的に、ガス・蒸気タービン複合設備の一次制御電力は全体的に遅延がなく、より大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 1301 690 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、電源動作時のガス・蒸気タービン複合設備を一次制御するための方法であって、ガス・蒸気タービン複合設備が共通のシャフトまたはそれぞれ別個のシャフトに沿って配置されており、定常的な蒸気タービン予備電力を蓄えるために、蒸気タービンの少なくとも1つの圧力段への作動蒸気供給ラインに沿って蒸気タービン調整バルブが絞られた状態で動かされ、電源周波数が低下し、電源周波数の安定化が必要になった場合には、少なくとも絞りをより少なくした状態で移動させられるようにした方法において、一方では調整バルブの位置決めが容易になるよう制御コンセプトを単純化し、他方ではガスタービン設備の個々の動作特性に制御コンセプトを適合させ、しかも消滅信号の利用に関して従来の作業の適用を妨げないように改良を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に従い、ガスタービンに接続された少なくとも1つのシャフトの回転数に依存する実際周波数の目標周波数値からの偏差を測定するステップ、測定した周波数偏差に基づいて一次制御目標電力を求めるステップ、前記一次制御目標電力と、ガスタービンから供給される電力、すなわち、いわゆる一次制御ガスタービン実際電力または計算された一次制御ガスタービン実際電力のうちの一方との間の電力偏差を求めるステップ、一次制御蒸気タービン目標電力を専ら求めた電力偏差に基づいて求めるステップ、および蒸気タービンから供給される電力、すなわち、いわゆる蒸気タービン実際電力が、前記一次制御蒸気タービン目標電力に等しくなるように、調整バルブを位置決めするステップを有することを特徴とする制御方法により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ガス・蒸気タービン複合設備のための制御コンセプトをグラフで表示したものである。
【図2】単シャフトガス・蒸気タービン複合設備の制御コンセプトのブロック回路図を示す。
【図3】一次制御ガスタービン実際電力を計算するためのガスタービンモデルなしの多シャフトガス・蒸気タービン複合設備の制御コンセプトのブロック回路図を示す。
【図4】一次制御ガスタービン実際電力を計算するためのガスタービンモデル有りの多シャフトガス・蒸気タービン複合設備の制御コンセプトのブロック回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の解決手段によれば、請求項1の上位概念に従う電源動作時のガス・蒸気タービン複合設備を一次制御する方法は以下のステップを有している。
【0010】
まず、ガスタービンに接続されているシャフトの回転数を監視し、生じうる実際周波数の目標周波数値からの偏差を測定することにより、電源周波数が目標電源周波数から誤って偏差するという形で電源障害が発生していることを認識しなければならない。所望の安定した電源周波数を得るために、ガスタービン設備側で発生させるべきいわゆる一次制御目標電力が測定された周波数偏差に基づいて求められる。さらに、一次制御目標電力とガスタービンが実際に発生させる電力、すなわち、いわゆるガスタービン実際電力との間の電力偏差を求めなければならない。ここで、有利には、最終的にガスタービンが一次制御目標電力に比べて大きすぎる電力を供給しているのか、小さすぎる電力を供給しているのか、またどのくらいの電力を供給すればよいのかに関する情報を得るために、両方の電力値は互いから差し引かれる。
【0011】
最終的に、前記した障害のときに、とりわけ、ガスタービン実際電力が必要とされる一次制御目標電力よりも小さい場合に電源周波数安定化のために蒸気タービン部分から短期的に調達される電力寄与分が、この電力偏差に基づいて求められる。この場合、蒸気タービン側で絞られた動作状態の下で蓄えられた予備電力が短期的に放出されなければならない。その際、求められた電力偏差は調整バルブの操作量として使用されるので、蒸気タービンが発生させる電力は要求された一次制御蒸気タービン目標電力に一致する。
【0012】
それゆえ、本発明の解決手段に従った方法では、補助的に蒸気タービン部分に要求される電力寄与分は、少なくとも1つの圧力段の調整バルブの絞りを少なくするように制御することにより専らガスタービン部分の動作特性に依存する、それも、一次制御目標電力と実際にガスタービンによってもたらされる実際電力との間の差が蒸気タービン側で補助的に使用可能でなければならないエネルギー寄与分に正確に一致するような形で依存する。このことは、自然発生的に不足周波数が生じたときに、蒸気タービンから予備電力を要求することにより電源周波数を安定化させる上記の場合だけでなく、電源動作時に過周波数が生じて、実際にガスタービン側で発生させられた実際電力が求められた一次制御目標電力を超えている場合にも当てはまる。この場合、蒸気タービン側で発生させられる電力寄与分は、正確にガスタービン実際電力が一次制御目標電力を超えた分だけ低減させられる。
【0013】
それゆえ、本発明の解決手段に従った方法は、例えば前記特許文献1で使用されている消滅信号のような既定の制御量にはまったく依存せず、実質的に電源周波数条件が変化する中でのガスタービンのその時その時の電力特性に基づいている。
【実施例】
【0014】
調整バルブを蒸気タービンの少なくとも1つの圧力段への作動蒸気供給ラインに沿って位置調整する上記解決手段による制御コンセプトは、図1に基づいて詳細に説明される。
【0015】
時間軸t上に、ガスタービン部分の電力寄与の関数グラフ(下側の関数グラフを参照せよ)と、蒸気タービン部分の電力寄与の関数グラフ(上側の関数グラフを参照せよ)が記載されている。電源周波数は開始時点に障害を受け、例えば低下する、すなわち、電源に不足周波数が生じるものと仮定する。安定した電源目標周波数を得るためにガス・蒸気タービン複合設備が要求するいわゆる定常ブロック電力に基づいて、複合設備は一次制御目標電力に対して急速に上昇する一次制御ガスタービン実際電力で反応する。しかしながら、一次制御ガスタービン実際電力はシステムに内在する慣性のためガスタービンによって同時に供給されることはできない。それゆえ、求められた一次制御目標電力と実際にガスタービン設備側で発生する一次制御ガスタービン実際電力の間に差ΔPが生じる。ガスタービンの目標電力と実際電力の間のこの求められた電力差に基づいて、蒸気タービン部分において調整バルブの自然な開弁をもたらす制御信号が発生される。このため、蒸気タービンは、調整バルブを絞った動作状態における予備電力の自然な低下により、短期間なためガスタービン側では使用できない電力分に正確に一致する電力分を使用することができる。図1のグラフからは、そのつど蒸気タービン側で余分に発生する電力寄与分ΔPはガスタービン電力寄与分の目標値/実際値の差に正確に一致する。一次制御目標電力がガスタービンの最大予備電力を超えている場合でも、蒸気タービンは電源周波数安定化のために必要な超過電力を賄うことが出来る。
【0016】
一次制御目標電力と一次制御ガスタービン実際電力が一致すれば−これは両方の関数グラフの各交点で起こる−、蒸気タービン側ではさらなる電力寄与分を必要としない。したがって、その位置で蒸気タービンの電力特性曲線は上のグラフに記入されている横軸と交差する、すなわち、調整バルブは定常的な絞り位置にあり、この絞り位置において、作動蒸気の圧力は、蒸気タービン設備内の廃熱ボイラの出口において廃熱ボイラ供給水量と蒸気流量との間の平衡が生じるまで調整バルブの方に向かって上昇する。
【0017】
これに対して、一次制御目標電力がガスタービン側で実際に生じる一次制御ガスタービン実際電力を下回っている場合には、調整バルブの絞りが増大させられるので、蒸気タービン側ではより小さな電力が発生する。それも、ガスタービンの電力寄与分が要求された一次制御目標電力を超える程度に小さな電力が発生する。このことはガスタービン電力の関数グラフの下降部分に示されている。
【0018】
本発明の解決手段による方法を技術的に実現するためには、ガスタービン部分と蒸気タービン部分とが共通のシャフトを駆動し、ただ1つの発電機によって電気エネルギーが得られるガス・蒸気タービン複合設備のケースと、ガスタービンと蒸気タービンがそれぞれ別個の発電機ユニットに接続された2つの別個のシャフトを駆動するケースの2つのケースを区別することが重要である。図2に示されているブロック回路図には、上記前者のケースが示されている。このケースでは、参照記号7で表されたガスタービン部分は、共通のシャフト5を介して、高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2および低圧蒸気タービン3から成る蒸気タービン部分8と接続されていると同時に、電気エネルギーを得るために発電機6にも接続されている。ガスタービン7から流出する高温の廃ガスは、高圧蒸気タービン、中圧蒸気タービンおよび低圧蒸気タービン1,2,3を駆動する蒸気としてさらに使用される作動媒体との熱交換のために、廃熱ボイラ18に供給される。
【0019】
図2に示されているガス・蒸気タービン複合設備は、上に述べた意味で、少なくとも高圧および中圧タービンへの作動蒸気供給ラインに沿って設けられた調整バルブを蒸気タービン側での予備電力の備蓄のためにバルブを絞った状態で動かすように、稼働される。ガス・蒸気タービン複合設備の電力生成に影響を与えるために、一方では、燃料と給気の点で電力制御に直接的な影響を与えるガスタービン制御部31が設けられており、他方では、各圧力段への作動蒸気供給ラインに沿って調整バルブのバルブ位置を制御する蒸気タービン制御部13が設けられている。図2に灰色の領域には、本発明の解決手段による方法に従った一次制御のための制御装置4が含まれている。
【0020】
原則的に電源周波数が変化したときにそもそも蒸気タービン電力寄与分で反応できるようにするには、蒸気タービン側で予備電力を前もって蓄えなければならない。蒸気タービンの一次制御の準備は入出力信号9によって活動化される。その際、蓄えられるべき必要な定常予備電力20を求めるために、関数12を考慮しつつ、ガスタービン7の側から提供される実際ガスタービン電力41も、廃熱ボイラ11の熱慣性も考慮される。なお、実際ガスタービン電力41は、直接的な電力タップによって必要ならばシャフト5において直に測定によって求められるのではなく、数学的モデルによって計算される。関数12は、数学的な式またはテーブルの形で、瞬時ガスタービン実際電力41に依存して蒸気タービン調整バルブの許容される最大の定常的な絞り位置を決定する。
【0021】
このようにして求められた蒸気タービン調整バルブの定常絞り位置は、蒸気タービン制御部13の内部で、そのときの圧力段において圧力を絞るためにそれぞれ調整バルブの位置に変換される。調整バルブの絞りの程度が個々の圧力段において所定の予備電力20に必要な動圧に正確に一致する圧力の上昇をもたらす。
【0022】
本発明の解決手段によるガス・蒸気タービン複合設備の一次制御は別の入出力信号10を介してスイッチオンまたはオフされる。
【0023】
現在の蒸気・ガスタービン回転数14はシャフト5に沿って連続的に測定され、周波数へ変換された後、周波数目標値15と比較される。発生した周波数偏差は最終的に所定の静特性16を用いて一次制御目標電力22に変換される。なお、この静特性16は不感帯を含んでいる。この不感帯は弁別器と見なすことでき、重度の障害の際に短時間だけ生じる障害振動を判別する。この障害振動は通常動作時ならばガス・蒸気タービン複合設備側で制することができるものである。例えば検出された周波数偏差が前記した不感帯内にあるならば、障害は取るに足らないものであり、一次制御目標電力はゼロに等しい。
【0024】
制御装置がスイッチ10の作動によりアクティブ状態にある場合には、瞬時ガスタービン予備電力40とガスタービンモデル17によって得られた一次制御ガスタービン実際電力43とを考慮して、求められた一次制御目標電力22から一次制御蒸気タービン目標電力19が得られる。ここで最も重要なことは、数学的にモデル化された一次制御ガスタービン実際電力44と一次制御蒸気タービン目標電力19に相当する一次制御目標電力22との間の差が求められるということである。
【0025】
ガスタービン電力の考えられるモデル化は次の数学的関係から得られる。
【0026】
【数1】

ここで、T、T1、T2はガスタービン慣性と制御コンセプトとに依存する時定数であり、sはラプラス演算子であり、Nはモデルの次数であり、KDFは一次調整目標電力(22)であり、f_は関数である。
【0027】
次数と時定数はガスタービン慣性と制御コンセプトに依存しており、時定数Tは0〜4秒の間である。
【0028】
差計算部に前置された制限部39はガスタービン側で蓄えられる予備電力40を考慮してできる限り大きな一次制御ガスタービン目標電力44を求めるための最小値選択にのみ使用される。予備電力40はガスタービン予備電力を使い果たしてしまっても超過電力を供給できるようにするために必要とされる。
【0029】
実質的に一次制御目標電力と一次制御ガスタービン実際電力の間の差から求められる上で得られた一次制御ガスタービン目標電力19は、蒸気タービン設備が使用できる瞬時予備電力24を考慮した制限23の後、蒸気タービン制御部13の電力制御器25に転送され、最終的に電力制御器25が蒸気タービンの高圧圧力段と中圧圧力段への個々の作動蒸気供給ラインに沿って調整バルブを作動させる。ここで、蒸気タービンの瞬時予備電力24は、それぞれの作動蒸気供給ラインに沿ったその時点での調整バルブの絞り位置と、それに関連した蒸気タービン動作状態(蒸気の圧力、温度および質量流量)とから計算される。すべての調整バルブの蓄えられたすべての瞬時予備電力の合計24が蒸気タービンの許される実行可能な電力変化の限界を定め、最終的にこの限界が一次制御蒸気タービン目標電力19の電力制限23となる。
【0030】
最後に、蒸気タービン調整バルブは、合計して一次制御蒸気タービン目標電力19に相当する必要な電力応答または電力変化21を生じるように、許容される種々の可能性を考慮して位置調整される。
【0031】
電源周波数安定化のために、相応する作動蒸気供給ライン内で例えば調整バルブの絞りを小さくすれば、蒸気タービンのその時点における効率にも、使用できる予備電力の低下にもその影響が及ぶ。蒸気タービン設備のすべての変更可能性が考慮され、すべての制御措置がその場で利用可能である。
【0032】
さらに、ガスタービン制御部31には現時点のガスタービン目標電力44に関する情報が通知されるので、ガスタービン7の電力分も同様に調整することができる。蒸気タービン設備とガスタービン設備に対して共通の発電機をもつ図2に示されている単シャフト設備では、蒸気タービンが迅速に反応するようにガスタービンは反応しないか、または非常にゆっくりと反応する。
【0033】
むしろ、ガスタービン制御部31は一次制御ガスタービン目標電力44に基づいて発電機における電力増大に反応する。ガスタービンの反応は蒸気タービン電力寄与分が完全に使い果たされるまで相応して遅延される。
【0034】
本発明の解決手段によれば、ガスタービンと蒸気タービンを同時に反応させるために、制限された一次制御蒸気タービン目標電力21がいわゆる全ブロック目標電力28、すなわち、一次制御ガスタービン目標電力44を含めたブロック目標電力26に加算されるか(29参照)−ここで、ブロック目標電力とは、ガスタービン設備と蒸気タービン設備とにより発電機6において生成される全電力を意味し、このブロック目標電力において目標電源周波数が発生させられる−、または一次制御蒸気タービン目標電力19がブロック目標電力27から減算される(30参照)−ここで、ブロック目標電力とは、発電機Gでタップされる実際の電力を意味し、全体としてガスタービンと蒸気タービンとによって生成される。
【0035】
本発明の解決手段による制御コンセプトは図3に概略的に示されている多シャフト設備にもほぼ適用可能である。このケースでは、ガスタービン7は独立したシャフト5を介して発電機38と接続されており、一方、蒸気タービン8は別の独立したシャフト42を介して蒸気タービン8に割り当てられた発電機36を駆動する。
【0036】
本発明の解決手段による一次制御の方法は基本的に図2の単シャフト設備を制御するための方法に比較しうるものである。図2の実施例との唯一の違いは、ガスタービンの実際電力34が発電機38においてタップされ、求められること、さらには一次制御ガスタービン実際電力33がガスタービン目標電力32をガスタービン実際電力34から減算することにより求められることにある。一次制御ガスタービン目標電力19は一次制御目標電力22を一次制御ガスタービン実際電力33から減算することにより直接(ガスタービンモデル17なしに)求めることができる。蒸気タービン発電機での周波数偏差に対する蒸気タービン8の反応は蒸気タービン寄与とは別個に行われる。ガスタービン制御部31はガスタービン寄与29または30の補償なしに(図2参照)ガスタービン目標電力44に反応する。
【0037】
図4には、一次制御ガスタービン実際電力を計算するガスタービンモデル17を考慮した本発明の解決手段による多シャフト設備の一次制御のための方法が示されている。一次制御ガスタービン実際電力33(図3)とは対照的に、ガスタービンモデル17はガスタービン制御部31の時として不安定な一次制御特性が一次制御蒸気タービン目標電力19の計算に伝わってしまうのを防止する。
【0038】
本明細書で使用される電力概念を手軽に概観するには、下記の概念テーブルを使用されたい。
【0039】
【表1】

【符号の説明】
【0040】
1 高圧蒸気タービン段
2 中圧蒸気タービン段
3 低圧蒸気タービン段
4 制御機構
5 シャフト
6 発電機
7 ガスタービン
8 蒸気タービン
9 オン/オフスイッチ
10 オン/オフスイッチ
11 廃熱ボイラの熱慣性
12 補正関数
13 蒸気タービン制御部
14 ガス・蒸気タービン回転数
15 周波数目標値
16 不感帯をもつ静特性
17 ガスタービンの数学的モデル
18 廃熱ボイラ
19 一次制御蒸気タービン目標電力
20 蒸気タービンの定常予備電力
21 制限された一次制御蒸気タービン目標電力、蒸気タービンの電力変化
22 一次制御目標電力
23 制限
24 蒸気タービンの瞬時予備電力
25 蒸気タービンの電力制御器
26 ブロック目標電力
27 ブロック実際電力
28 一次制御ガスタービン目標電力を含めたブロック目標電力
29 加算
30 減算
31 ガスタービン制御部
32 ガスタービン目標電力
33 一次制御ガスタービン実際電力
34 ガスタービン実際電力
35 一次制御ガスタービン目標電力を含めたガスタービン目標電力
36 発電機
37 多シャフト構成のための制御装置
38 発電機
39 制限
40 瞬時ガスタービン予備電力
41 計算された瞬時ガスタービン電力
42 シャフト
43 計算された一次制御ガスタービン実際電力
44 一次制御ガスタービン目標電力
45 多シャフト構成のための制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源動作時のガス・蒸気タービン複合設備(7,8)を一次制御するための方法であって、前記ガス・蒸気タービン複合設備は共通のシャフトまたはそれぞれ別個のシャフトに沿って配置されており、定常的な蒸気タービン予備電力(20)を蓄えるために、蒸気タービン(8)の少なくとも1つの圧力段への作動蒸気供給ラインに沿って蒸気タービン調整バルブが絞られた状態で動かされ、電源周波数が低下し、電源周波数の安定化が必要になった場合には、少なくとも絞りをより少なくした状態で移動させられるようにした方法において、
ガスタービン(7)に接続された少なくとも1つのシャフト(5)の回転数に依存する実際周波数(14)の目標周波数値(15)からの偏差を測定するステップ、
測定した周波数偏差に基づいて一次制御目標電力(22)を求めるステップ、
前記一次制御目標電力(22)と、ガスタービンから供給される電力、すなわち、いわゆる一次制御ガスタービン実際電力(33)または計算された一次制御ガスタービン実際電力(43)のうちの一方との間の電力偏差を求めるステップ、
一次制御蒸気タービン目標電力(19)を専ら求めた電力偏差に基づいて求めるステップ、および
蒸気タービンから供給される電力、すなわち、いわゆる蒸気タービン実際電力が、前記一次制御蒸気タービン目標電力(19)に等しくなるように、調整バルブを位置決めするステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
ガスタービン目標電力(32)または計算した瞬時ガスタービン電力(41)に基づいて前記少なくとも1つの調整バルブの固定絞り位置を計算し、定常蒸気タービン予備電力(20)に変換する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
計算される一次ガスタービン実際電力(43)P計算された一次ガスタービン実際を下記の関係に従って求める、
【数1】

ここで、T、T1、T2はガスタービン慣性と制御コンセプトとに依存する時定数であり、sはラプラス演算子であり、Nはモデルの次数であり、KDFは一次制御目標電力(22)であり、f_は関数である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
電力偏差を求める前記ステップを、一次制御目標電力(22)から一次制御ガスタービン実際電力(33)を減算することにより、または一次制御目標電力(22)から計算した一次制御ガスタービン実際電力(43)を減算することにより行い、電力偏差を直に一次制御蒸気タービン目標電力(19)として使用する、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
蒸気タービン設備で使用できる瞬時予備電力(24)を考慮して制限(23)した後の一次制御蒸気タービン目標電力(19)を使用する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ガスタービンと蒸気タービンが共通のシャフト(5)で接続されている単シャフト構成の場合には、エネルギー生成のためにただ1つの発電機(6)だけを駆動し、電源動作のための目標電源周波数を生じさせる一次制御ガスタービン目標電力を含めたブロック目標電力(28)を定め、ガスタービン(7)の電力制御のために、前記シャフト(5)を介して現在前記発電機(6)において発生している電力に相当するブロック実際電力(27)を前記ブロック目標電力(28)に基づいて制御し、前記ブロック目標電力(28)に前記一次制御蒸気タービン目標電力(19)を加算するか、または前記ブロック実際電力(27)から前記一次制御蒸気タービン目標電力(19)を減算する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
一次制御ガスタービン目標電力(44)を使用可能なガスタービン予備電力(40)に基づいて求める、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−7665(P2010−7665A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152523(P2009−152523)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】