説明

ガス処理装置

【課題】 ガス処理用フィルターと水フィルターとでガスを確実に処理でき、しかも、水フィルターを吸着能力の高い水によって構成することができ、ガスを確実に処理することができるガス処理装置を提供すること。
【解決手段】 ガスを送気させる流路中に、ガス処理用フィルターを設け、ガスを処理するガス処理装置において、前記ガス処理用フィルターに水を供給する給水部を具備し、前記ガス処理用フィルターの表面に水フィルターを形成するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実験研究室、病院の手術室、工場、し尿保管場所等からは恒常的にガス(例えばホルムアルデヒドや、笑気ガスと呼ばれる亜酸化窒素(NO)等の有害ガス)が排出されている。このようなガスは、慢性的神経疾患や肝臓疾患、あるいは催奇形性や発癌性などの健康障害の原因となるなど、健康に悪影響を与えるばかりでなく、地球温暖化やオゾン層破壊など環境への悪影響も指摘されていることから、その処理対策が急務となっている。
【0003】
そこで、これらのガスを処理するため、ガスを吸着剤に吸着させ、次いで、触媒と接触させることによって、ガスを分解するガス処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−172171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のガス処理装置は、ガスを吸着剤に吸着させるにしたがって、吸着剤の吸着能力が次第に衰えることから、装置内に複数の吸着剤を設け、このうち一つの吸着剤の吸着能力が衰える毎に、他の吸着剤に吸着させるようにガスの流路を切り替えて処理する一方、吸着能力が衰えた吸着剤を定期的に取り替える構成となっているため、装置が大型化してしまったり、コスト高となってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、ガスを送気させる流路中に、ガス処理用フィルターを設け、ガスを処理するガス処理装置において、前記ガス処理用フィルターに水を供給する給水部を具備し、前記ガス処理用フィルターの表面に水フィルターを形成するように構成したことを特徴とするガス処理装置を提供せんとするものである。
【0006】
また、前記ガス処理用フィルターを、親水性物質によって構成したことにも特徴を有する。
【0007】
また、前記ガス処理用フィルターを光触媒材で構成するとともに、このガス処理用フィルターに紫外線を照射する照射手段を設けたことにも特徴を有する。
【0008】
また、前記ガス処理用フィルターは、アルミナ繊維をチタニアコーティングすることによって構成したことにも特徴を有する。
【0009】
また、前記給水部は、前記ガス処理用フィルターの一方に設けた第1の水タンクと、
前記ガス処理用フィルターの他方に、ガス処理用フィルターに供給された水を受けるように構成した第2の水タンクと、第2の水タンクから第1の水タンクに水を移動させる給水手段とを具備することにも特徴を有する。
【0010】
また、前記第1の水タンクと第2の水タンクの少なくともいずれか一つに、光触媒部を配設し、同光触媒部に紫外線を照射する照射手段を備えたことにも特徴を有する。
【0011】
また、前記流路に活性炭素繊維を配置し、同活性炭素繊維をガスが通過するように構成したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
(1)請求項1記載の本発明では、ガスを送気させる流路中に、ガス処理用フィルターを設け、ガスを処理するガス処理装置において、前記ガス処理用フィルターに水を供給する給水部を具備し、前記ガス処理用フィルターの表面に水フィルターを形成するように構成したので、ガス処理用フィルターと水フィルターとでガスを確実に処理でき、しかも、水フィルターを吸着能力の高い水によって構成することができ、ガスを確実に処理することができる。
【0013】
(2)請求項2記載の本発明では、前記ガス処理用フィルターを、親水性物質によって構成したので、ガス処理用フィルターの表面に、薄い膜状の水フィルターを形成することができ、ガスを確実に水フィルターに通過させ、ガスを吸着することができる。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、前記ガス処理用フィルターを光触媒材で構成するとともに、このガス処理用フィルターに紫外線を照射する照射手段を設けたので、ガス処理用フィルターでガスを分解処理することができる。
【0015】
(4)請求項4記載の本発明では、前記ガス処理用フィルターは、アルミナ繊維をチタニアコーティングすることによって構成したので、ガス処理用フィルターに高い親水性を持たせることができるとともに、前記ガス処理用フィルターに高いガス分解機能を持たせることができる。
【0016】
(5)請求項5記載の本発明では、前記給水部は、前記ガス処理用フィルターの一方に設けた第1の水タンクと、前記ガス処理用フィルターの他方に設けたガス処理用フィルターに供給された水を受けるように構成した第2の水タンクと、第2の水タンクから第1の水タンクに水を移動させる給水手段とを具備することとしたので、第1の水タンク→水フィルター→第2の水タンク→第1の水タンク・・・・と水を循環させることができ、ガス処理用フィルター上の水フィルターのガス吸着能力を常に高く維持することができる。
【0017】
さらには、水を無駄にすることなく有効利用することができる。
【0018】
(6)請求項6記載の本発明では、前記第1の水タンクと第2の水タンクの少なくともいずれか一つに、光触媒部を配設し、同光触媒部に紫外線を照射する照射手段を備えたので、タンク内の水を、光触媒作用によって浄化することができる。
【0019】
したがって、循環させる水をさらに吸着能力の高い水にすることができる。
【0020】
(7)請求項7記載の本発明では、前記流路に活性炭素繊維を配置し、同活性炭素繊維をガスが通過するように構成したので、活性炭素繊維でガス中の有害物質を吸着・還元処理することができる。したがって、より確実にガスを処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明は、ガス(例えば有機ガス)を送気させる流路中に、ガス処理用フィルターを設け、ガスを処理するガス処理装置に係るものであり、特に、前記ガス処理用フィルターに水を供給する給水部を具備し、前記ガス処理用フィルターの表面に水フィルターを形成するように構成している。
【0022】
このようにして、ガス処理用フィルターと水フィルターとでガスを確実に処理するとともに、水フィルターを吸着能力の高い水によって構成することができ、ガスを確実に処理することができるようにしている。
【0023】
ここで、前記ガス処理用フィルターは、親水性物質によって構成するとともに、光触媒材によって構成しており、例えば、アルミナ繊維をチタニアコーティングすることによって構成している。
【0024】
このようにして、前記ガス処理用フィルターを、親水性物質によって構成するとともに、光触媒材によって構成することで、このガス処理用フィルターに照射手段によって紫外線を照射する際に、ガス処理用フィルターの表面に薄い膜状の水フィルターを形成することができ、ガスを確実に水フィルターに通過させて吸着できるとともに、ガス処理用フィルターでガスを分解処理することができるようにしている。
【0025】
また、ガス処理用フィルターに水を供給する給水部は、前記ガス処理用フィルターの一方に設けた第1の水タンクと、前記ガス処理用フィルターの他方に設けたガス処理用フィルターに供給された水を受けるように構成した第2の水タンクと、第2の水タンクから第1の水タンクに水を移動させる給水手段とを具備しており、第1の水タンク→水フィルター→第2の水タンク→第1の水タンク・・・・と水を循環させることができるようにしている。
【0026】
また、前記第1の水タンクと第2の水タンクの少なくともいずれか一つには、光触媒部を配設しており、照射手段により光触媒部に紫外線を照射して、循環する水をタンク内で、光触媒作用によって浄化することができるようにしている。
【0027】
したがって、ガス処理用フィルター上の水フィルターのガス吸着能力を常に高く維持することができるとともに、水を無駄にすることなく有効利用することができる。
【0028】
そして、前記流路には、活性炭素繊維を配置し、この活性炭素繊維をガスが通過するように構成しており、活性炭素繊維でガス中の有害物質を吸着・還元処理することができるようにしている。
【0029】
このようにして、ガス処理用フィルターと水フィルターによって、ガスを確実に処理する一方、給水部によって水を循環させることで、水フィルターを形成する水を常に吸着能力の高い水にするとともに、水を無駄にすることなく有効利用することができる。
【実施例1】
【0030】
本発明に係るガス処理装置は、ケーシング内にガスを送気させる流路を形成し、このガスの流路中にガス処理用フィルターを設けるとともに、同ガス処理用フィルターの表面上に水フィルターを形成して、ガス処理用フィルターと水フィルターとにガスを接触させて、ガスを処理するものである。
【0031】
以下、本発明に係るガス処理装置Aを図面を用いて具体的に説明する。
【0032】
図1及び図2に示すように、本発明に係るガス処理装置Aは、ケーシング1の上部に第1の水タンク2を設けるとともに、ケーシング1内の下部に水を貯蔵し、これを第2の水タンク3としており、両タンク2,3に後述する水フィルターFを形成するための水を貯蔵するようにしている。
【0033】
また、両タンク2,3の間には、処理するガスを送気させる流路であるガス流路部4を形成している。
【0034】
ガス流路部4は、図3に示すように、送風通路5と、同送風通路5の下手側に連通した半円弧状の鏡面送風室6と、下手側に排風通路8を連通し鏡面送風室6に隣接して形成した半円弧状の鏡面排風室7と、鏡面送風室6と鏡面排風室7との境に形成したガス処理用フィルター9と、送風通路5と鏡面送風室6との境および鏡面排風室7と排風通路8との境のそれぞれに形成したガス処理用フィルター9’と、鏡面送風室6および鏡面排風室7に配設した紫外線ランプ10とを具備しており、送風通路5→鏡面送風室6→鏡面排風室7→排風通路8→後述する炭素繊維収容室101とガスが通流する流路Rが形成されている。
【0035】
このガス流路部4の構成について、図3を用いて詳説する。
【0036】
送風通路5は、図3に示すように、ケーシング1の上下方向に伸延する板状の排風通路前壁51と排風通路左壁52と、ケーシング1の上下方向に伸延する平面視略4分の1円弧状の排風通路周壁53とで平面視略4分の1円筒状に形成しており、排風通路前壁51にはガスを吸気する吸気口5aを設けるとともに、排風通路左壁52の一部を切欠して第1連結部54とし、この第1連結部54を介して鏡面送風室6と連通連結するようにしている。
【0037】
このようにして、後述するファン81を駆動させた際、ガスを吸気口5aから吸気して、送風通路5→第1連結部54→鏡面送風室6とガスを通流することができるようにしている。
【0038】
鏡面送風室6は、ケーシング1の上下方向に伸延する平面視円状の鏡面送風室周壁61の平面視略4分の1円弧状部分を切欠し、この切欠部を前記第1連結部54及び第2連結部62としている。
【0039】
すなわち、鏡面送風室周壁61と第1連結部54と第2連結部62とに囲まれた鏡面送風室6が形成されており、第2連結部62は、鏡面送風室周壁61を切欠した部分のうち、第1連結部54を除いた部分である。この第2連結部62を介して鏡面排風室7と連通連結するようにしている。
【0040】
このようにして、後述するファン81を駆動させた際、第1連結部54→鏡面送風室6→第2連結部62→鏡面排風室7とガスを通流することができるようにしている。
【0041】
鏡面排風室7は、前記鏡面送風室6と略鏡像となる形状をしている。すなわち、平面視円状の鏡面排風室周壁71のうち、平面視略4分の1円弧状部分を切欠し、この切欠部を前記第2連結部62及び第3連結部72としている。
【0042】
すなわち、鏡面排風室周壁71と第2連結部62と第3連結部72とに囲まれた鏡面排風室7が形成されており、第3連結部72は、鏡面排風室周壁71を切欠した部分のうち、第2連結部62を除いた部分である。この第3連結部72を介して排風通路8と連通連結するようにしている。
【0043】
このようにして、後述するファン81を駆動させた際、第2連結部62→鏡面排風室7→第3連結部72→排風通路8とガスを通流することができるようにしている。
【0044】
排風通路8には、ファン81を収容するとともに、ケーシング1の上下方向に伸延する板状の排風通路後壁82と排風通路左壁83と、ケーシング1の上下方向に伸延する平面視略4分の1円弧状の排風通路周壁84とで平面視略4分の1円筒状に形成しており、排風通路後壁82には排気口8aを設けるとともに、排風通路左壁83の一部を切欠して前記第3連結部72としている。
【0045】
このようにして、ファン81を駆動させた際、第3連結部72→排風通路8→排気口8aとガスを通流することができるようにしている。
【0046】
また、前記排気口8aには、図3に示すように、活性炭素繊維を収容した炭素繊維収容室101を取り付けている。
【0047】
このようにして、前記排気口8aに炭素繊維収容室101を取り付けることで、活性炭素繊維を触媒・吸着剤として、前記ガス流路部4で処理できなかったガス中の有害物質(例えば有機ガス中の窒素化合物)を炭素繊維収容室101内で吸着・還元処理し、その後、排気するようにしており、ガスの処理効率を向上させるようにしている。
【0048】
なお、炭素繊維収容室101を吸気口5aに取り付け、前記ガス流路部4にガスを吸気する前に、ガス中の有害物質をできるだけ吸着・還元処理しておくこともできる。
【0049】
このようにして、ガス流路部4に、吸気口5a→送風通路5→鏡面送風室6→鏡面排風室7→排風通路8→排気口8a→炭素繊維収容室101とガスが移動する流路Rが形成される。
【0050】
そして、鏡面送風室6と鏡面排風室7との間には、ガスを処理するガス処理用フィルター9を介設している。
【0051】
このガス処理用フィルター9について詳説する。
【0052】
図2及び図3に示すように、前記第2連結部62、すなわち、前記鏡面送風室6と前記鏡面排風室7とが当接する位置であって、かつ前記第1の水タンク2の下方には、ガス処理用フィルター9を配設している。
【0053】
ガス処理用フィルター9は、図3に示すように、左右幅を前記第2連結部62の左右幅と同じにするとともに、図2に示すように、下部を第2の水タンク3に浸漬するように配設している
このようにして、鏡面送風室6と鏡面排風室7との間にガス処理用フィルター9を介設することで、ガスが鏡面送風室6から鏡面排風室7に流れる際、ガスをガス処理用フィルター9に確実に接触させることができる。
【0054】
ガス処理用フィルター9は、アルミナ繊維等の繊維状物質をチタニアコーティング加工することによって構成して、紫外線を照射した際に高い親水性を有するようにしている。
【0055】
また、上述したように前記鏡面送風室6及び鏡面排風室7内には、ケーシング1の上下方向に伸延する照射手段としての紫外線ランプ10をそれぞれ配設しており、前記ガス処理用フィルター9の前面9a及び後面9bに紫外線(例えば、波長が約270nm〜340nm程度)を照射し光触媒反応を励起するとともに、鏡面送風室6及び鏡面排風室7内を通過するガスを酸化させ殺菌するようにしている。
【0056】
このように、繊維状物質をチタニアコーティングすることによって構成したガス処理用フィルター9に紫外線を照射することで、ガス処理用フィルター9に高い親水性を持たせることができるとともに、酸化チタンの光触媒機能、すなわち、OH-またはO-のラジカル基等のいわゆるマイナスイオンやイオンクラスターと呼ばれる環境改善イオンを発生させることによって、例えばアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエン、スチレン、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、トリメチルアミン、イソ吉草酸、アンモニア、窒素酸化物、硫黄酸化物等のガス中の有害物質を酸化・分解処理することができるとともに、後述する水フィルターFの一部を過酸化水素水とすることができ、水フィルターFをガスが通過する際、酸化処理できるようにしている。
【0057】
また、上述したガスの流路Rを形成する各室5,6,7,8のうち、排風通路前壁51、排風通路左壁52、排風通路周壁53、鏡面送風室周壁61、鏡面排風室周壁71は、アルミパネル等の紫外線反射物質によって構成している。
【0058】
しかも、排風通路周壁53と鏡面送風室周壁61と鏡面排風室周壁71とは、上述したように略円弧状に湾曲させて形成している。
【0059】
さらには、吸気口5a及び排気口8aには、多数の送気孔を有する紫外線反射物質である紫外線反射アルミパネル90をそれぞれ覆設している。
【0060】
このように、紫外線反射物質である紫外線反射アルミパネル90は多数の送気孔を有しているので、流路Rのガスの流れを妨げることなく、前記紫外線ランプ10の紫外線を反射させることができる。
【0061】
その結果、無駄なく、しかも確実にガス処理用フィルター9に紫外線を照射することができる。
【0062】
ここで、図1及び図2に示すように、ガス処理用フィルター9と前記第1の水タンク2との間には、水供給路91,91,91,91を介設している。
【0063】
水供給路91,91,91,91は、ガス処理用フィルター9の上方であって、かつ第1の水タンク2の底部に位置するように形成しており、第1の水タンク2に貯蔵された水を、水供給路91,91,91,91からガス処理用フィルター9に供給するようにしている。
【0064】
このようにして、水供給路91,91,91,91からガス処理用フィルター9に供給された水は、ガス処理用フィルター9上を流下する。
【0065】
ここで、上述したようにガス処理用フィルター9は、アルミナ繊維等の繊維状物質をチタニアコーティングすることによって構成するとともに、前記紫外線ランプ10,10によって前記ガス処理用フィルター9の前・後面9a,9bに紫外線を照射するように構成しているので、水供給路91,91,91,91からガス処理用フィルター9に供給された水は、ガス処理用フィルター9の前面9a及び後面9bの表面に、それぞれ平らに張り付いたような形となる。すなわち、ガス処理用フィルター9の前面9a及び後面9bの表面上には、薄い膜状の水フィルターFがそれぞれ形成される。
【0066】
このようにして、ガス処理用フィルター9の前・後面9a,9b上に水フィルターFをそれぞれ形成することで、ガスを確実に水フィルターF内を通過させ、吸着することができる。
【0067】
さらには、水フィルターFの一部は、光触媒作用によって過酸化水素水化されており、ガスを酸化処理することができる。
【0068】
このように、水フィルターFによってガスを吸着するとともに、酸化処理することで、ガスをより確実に処理することができる。
【0069】
また、図3に示すように、送風通路5と鏡面送風室6との境および鏡面排風室7と排風通路8との境のそれぞれには、ガス処理用フィルター9’を設けている。
【0070】
両ガス処理用フィルター9’,9’は、前記ガス処理用フィルター9と構成を同一の構成としており、前記紫外線ランプ10,10の紫外線によって光触媒作用を励起し、ガス処理用フィルター9の上流および下流でガスを光触媒作用によって分解処理するようにしている。
【0071】
このようにして、ガス処理用フィルター9,9’,9’によってより確実にガスを処理することができる。
【0072】
なお、本実施例では、ガス処理用フィルター9’,9’の上方に水供給路91を設けない構成としているが、ガス処理用フィルター9’,9’の上方に水供給路91をそれぞれ設けて、ガス処理用フィルター9’,9’の表面に水フィルターFを形成し、ガスをより効果的に処理するようにしてもよい。
【0073】
また、前記第1の水タンク2と前記第2の水タンク3の間には、給水手段としての給水パイプ11を設けており、第2の水タンク3内に設ける同じく給水手段としての給水ポンプ31によって、第2の水タンク3内に貯蔵された水を給水パイプ11を介して第1の水タンク2に汲み上げて移動することができるようにしている。
【0074】
このようにして、第1の水タンク2と第2の水タンク3と給水手段によってガス処理用フィルター9に水を供給する給水部が形成される。
【0075】
すなわち、上述したようにガス処理用フィルター9表面を流下することによって水フィルターFを形成した水は、第2の水タンク3に貯蔵され、その後、給水手段としての給水ポンプ31と給水パイプ11とによって第1の水タンク2に汲み上げられる。
【0076】
したがって、ガス処理装置A内の水は、第1の水タンク2→水フィルターF→第2の水タンク3→第1の水タンク2・・・・と循環することとなる。
【0077】
ここで、第1の水タンク2には、例えば焼成珊瑚や琉球石灰岩等の炭酸カルシウム(CaCO)を含む炭酸カルシウム含有材(図示しない)を配設して、第1の水タンク2内部の水を炭酸カルシウム水溶液としている。
【0078】
さらに、第1の水タンク2内の水には尿素を添加している。
【0079】
このように、第1の水タンク2内の水に尿素を添加するとともに、炭酸カルシウム水溶液とすることで、ガス中の有害物質(例えば、排ガス中の黒煙、粒子状物質(Particulate Matter)、二酸化硫黄(SOx)、窒素酸化物(NOx)、亜酸化窒素等)を硝酸カルシウム化させ、その後分解還元し、石膏化することができる。
【0080】
したがって、水フィルターFの吸着能力をより向上させながら、ガス中の有害物質を適宜石膏化させ、水フィルターFの吸着能力を維持することができる。
【0081】
なお、本実施例では、上述したように第1の水タンク2内の水に尿素と炭酸カルシウムとを添加したが、本発明はこれに限られるものではなく、第1の水タンク2には、各種ガスの処理に対応する成分を適宜添加することができる。
【0082】
このようにして、ガスを吸着させる水フィルターFを形成する水を循環させることによって、ガスを吸着して吸着能力が衰えた水を、再び第1の水タンク2の炭酸カルシウム含有材と接触させて再び炭酸カルシウム水溶液とするとともに、尿素を再び添加することができる。
【0083】
また、第2の水タンク3内には、図1及び図2に示すように、照射手段としての水中紫外線ランプ10’を設けるとともに、アルミナ繊維等の繊維状物質をチタニアコーティング加工した光触媒部としての光触媒材100を水中紫外線ランプ10’に巻回させて配設している。
【0084】
このようにして、第2の水タンク3内に光触媒材100を配設するとともに、同光触媒材100に水中紫外線ランプ10’による紫外線を照射することで、OH-またはO-のラジカル基を発生させ、第2の水タンク3内の水の一部を過酸化水素水として、第2の水タンク3内の水を殺菌・浄化することができる。
【0085】
したがって、循環する水は、下部タンク3内で浄化され、さらに第1の水タンク2内で再び炭酸カルシウム水溶液とされるとともに、尿素を再び添加され、その後、再び水フィルターFを形成する。
【0086】
その結果、常にガスの吸着能力の高い水によって水フィルターFが形成される。
【0087】
したがって、水フィルターFの水を、吸着能力が衰える度に吸着能力の高い水に取り替える必要がないため、水を無駄にすることなく有効利用することができる。
【0088】
なお、図中12は、排水パイプであり、第1の水タンク2の水位が所定の水位に上昇した際に、排水パイプ12から第2の水タンク3に排水するようにして、第1の水タンク2の水がタンクから溢れないようにしている。
【0089】
また、ケーシング1の下部には、注水口(図示しない)および排水ドレン(図示しない)を設けて、第2の水タンク3の水を適宜排水し、第2の水タンク3の水を所定の水量に維持できるようにしている。
【0090】
なお、この排水ドレンを水を必要とする他の装置と接続して、炭化カルシウム及び尿素が添加されていたり、光触媒によって殺菌・浄化された水を給水するようにしてもよい。
【0091】
そして、前記第1の水タンク2、炭酸カルシウム含有材、ガス処理用フィルター9は、それぞれ着脱自在に構成して、容易に交換、メンテナンス等を行えるようにしている。
【0092】
本実施例に係るガス処理装置Aは、以上のように構成されており、以下には、ガス処理装置Aを用いて、ガスを処理する場合のガス処理工程について説明する。
【0093】
ファン81を駆動し、吸気口5aから送風通路5→鏡面送風室6→鏡面排風室7→排風通路8→炭素繊維収容室101と通流するガスの流路Rを形成する。
【0094】
ここで、ガスが送風通路5から鏡面送風室6に通流する際、ガスは、ガス処理用フィルター9’によって酸化処理される。
【0095】
次に、ガスが鏡面送風室6から第2の処理室に通流する際、ガスは、まずガス処理用フィルター9の前面9aに形成された水フィルターと接触し、ガス中の有害物質が吸着される。
【0096】
次いで、ガスは、ガス処理用フィルター9に接触し、ガス中の有害物質が酸化・分解処理される。
【0097】
さらに、ガスは、ガス処理用フィルター9の後面10aに形成された水フィルターと接触し、ガス中の有害物質が吸着される。
【0098】
ここで、両水フィルターF,Fは、第1の水タンク2と第2の水タンク3とを循環する水によって構成しているので、常時吸着能力の高い水によって構成することができ、ガスを確実に吸着することができるとともに、水を無駄にすることなく有効利用することができる。
【0099】
そして、ガスが鏡面排風室7から排風通路8に通流する際、ガスは、ガス処理用フィルター9’によって酸化処理される。
【0100】
このようにして、両水フィルターF,F及びガス処理用フィルター9,9’,9’を通過させることによって効果的に処理したガスを、排気口8aの外側に取り付けた炭素繊維収容室101内の活性炭素繊維によって、ガスをさらに吸着・還元処理した後に排気する。
【実施例2】
【0101】
実施例2に係るガス処理装置Aは、実施例1と構成を略同様にしているが、ガス処理用フィルター9の構成が異なっている。以下、実施例2におけるガス処理用フィルター9の構成について説明する。
【0102】
実施例2におけるガス処理用フィルター9は、吸水性および通気性を有する繊維状物質(例えば、不織布やフェルト等)によって構成するとともに、無端のリング状に形成している。
【0103】
このガス処理用フィルター9を、鏡面送風室6と鏡面排風室7との境である連結部62の上端近傍と、第2の水タンク3内とのそれぞれに設けた2本のローラ間に懸架し、さらに、下部が第2の水タンク3に浸漬させた状態で保持するようにしている。
【0104】
このようにして、ガス処理用フィルター9を鏡面送風室6と鏡面排風室7との境に介設することで、例えば駆動モータ等の駆動源によってローラを駆動させて無端状のガス処理用フィルター9を回転作動させた際、吸水性を有するガス処理用フィルター9は、第2の水タンク3内の水を吸収し、ガス処理用フィルター9の表面に水フィルターFが形成される。
【0105】
このように構成することで、第1の水タンク2の水を水供給路91から流下させる必要なく、第2の水タンク3の水のみでガス処理用フィルター9上に水フィルターFを形成することができる。
【0106】
また、ガス処理用フィルター9は、親水性を有する光触媒物質(例えば、繊維状の酸化チタン)で構成して、ガス処理用フィルター9の表面上に水フィルターFを薄い水膜状に形成することができる。
【0107】
したがって、水フィルターFとガス処理用フィルター9とでガスをより確実に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係るガス処理装置の全体斜視図である。
【図2】本発明に係るガス処理装置の正面図である。
【図3】図2のI−I線における断面図である。
【符号の説明】
【0109】
A ガス処理装置
F 水フィルター
R 流路
2 第1の水タンク
3 第2の水タンク
9、9’ ガス処理用フィルター
9a,9b ガス処理用フィルターの前・後面
10 紫外線ランプ
10’ 水中紫外線ランプ
11 給水パイプ
31 給水ポンプ
100 光触媒材
101 炭素繊維収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを送気させる流路中に、ガス処理用フィルターを設け、ガスを処理するガス処理装置において、
前記ガス処理用フィルターに水を供給する給水部を具備し、前記ガス処理用フィルターの表面に水フィルターを形成するように構成したことを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
前記ガス処理用フィルターを、親水性物質によって構成したことを特徴とする請求項1記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記ガス処理用フィルターを光触媒材で構成するとともに、このガス処理用フィルターに紫外線を照射する照射手段を設けたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のガス処理装置。
【請求項4】
前記ガス処理用フィルターは、アルミナ繊維をチタニアコーティングすることによって構成したことを特徴とする請求項2記載のガス処理装置。
【請求項5】
前記給水部は、前記ガス処理用フィルターの一方に設けた第1の水タンクと、
前記ガス処理用フィルターの他方に設けたガス処理用フィルターに供給された水を受けるように構成した第2の水タンクと、
第2の水タンクから第1の水タンクに水を移動させる給水手段と、
を具備することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス処理装置。
【請求項6】
前記第1の水タンクと第2の水タンクの少なくともいずれか一つに、光触媒部を配設し、同光触媒部に紫外線を照射する照射手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス処理装置。
【請求項7】
前記流路に活性炭素繊維を配置し、同活性炭素繊維をガスが通過するように構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−35143(P2006−35143A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220792(P2004−220792)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(504246694)有限会社K2R (6)
【Fターム(参考)】