説明

ガス処理装置

【課題】処理効率がよく、しかもコストが嵩むおそれのないガス処理装置とする。
【解決手段】ガス処理装置10は、被処理ガスGが通されるバグフィルター20と、このバグフィルター20に被処理ガスGを供給するガス供給路30と、このガス供給路30に機能性粉体Fを供給する粉体供給手段40とを有する。そして、ガス供給路30の途中には、機能性粉体Fを含む被処理ガスGを攪拌するガス攪拌手段50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤等の機能性粉体を利用して、ガスの中和、除湿、脱臭等の処理を行うガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、この種のガス処理装置・方法としては、バグフィルターの上流において、有害成分等の被処理成分を含む排ガス等の被処理ガス中に、吸着剤等の機能性粉体を供給し、被処理成分を機能性粉体に吸着させることにより、あるいは被処理成分と機能性粉体とを反応させることにより、ガスの中和、除湿、脱臭等の処理を行う装置・方法がある(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
この装置・方法によると、被処理成分と機能性粉体との接触時間が長くなり、吸着・反応効率が向上すると考えられていた。しかしながら、本発明者がバグフィルター上流のダクト内に機能性粉体を供給する試験を行ったところによると、風速条件やダクト長等を変化させても、吸着・反応効率の向上は10%以下にとどまった。この試験においては、被処理ガスと機能性粉体とが同じ速度でダクト内を流れており、両者の接触時間が長くなったことは確かである。したがって、この試験から、単に被処理ガスと機能性粉体との接触時間を長くしても、吸着・反応効率は、それほど向上しないことが分かった。
【0004】
また、この種のガス処理装置・方法としては、バグフィルターの表面に機能性粉体を付着させ、被処理成分を機能性粉体に吸着させることにより、あるいは被処理成分と機能性粉体とを反応させることにより、ガスの中和、除湿、脱臭等の処理を行う装置・方法もある(例えば、特許文献1等参照。)。
【0005】
この装置・方法においては、機能性粉体の付着層が薄いと吸着・反応効率が悪くなるため、機能性粉体の付着層を厚くする必要があり、一般的には約1mm以上の厚さが必要とされている。しかしながら、機能性粉体の付着層厚を厚くすると、通気抵抗が大きくなるため、ブロワ等による吸引圧力を大きくするか、単位面積当たりの通気量が少なくなるよう、例えば、フィルター面積を通常より150〜200%大きくする必要がある。
【0006】
また、バグフィルターに付着した機能性粉体は、吸着・反応によってすぐに劣化してしまうため、新たな機能性粉体と置き換える必要があり、例えば、パルスジェットなどの逆洗クリーニングによって劣化した機能性粉体を払い落し、新たな機能性粉体を付着させる必要がある。しかしながら、新たな機能性粉体が所定の付着層厚となるまでの間は、吸着・反応が不十分になり、総合的な吸着・反応効率も低下してしまうため、装置の性能保証等もできなくなってしまう。
【0007】
さらに、機能性粉体の付着層厚を厚くするといっても、付着した機能性粉体が重力等によって自己剥離してしまうため、約2〜3mmが限界である。そして、この付着層厚の限界が吸着・反応容量の上限でもあり、被処理成分の濃度が急上昇した場合などに大きな問題が生じる。例えば、燃焼排ガス中の塩化水素ガスの濃度は、数百ppmから2000ppmを超える高濃度に急上昇する場合があることが知られているが、この場合は、吸着・反応容量の限界を超えてしまうため、バグフィルター通過前の塩化水素ガス濃度の上昇に比例して、バグフィルター通過後の塩化水素ガス濃度も上昇してしまう。しかも、この場合は、短時間の間に機能性粉体が劣化してしまうため、逆洗クリーニングが間に合わず、高濃度の塩化水素ガスが流出し、場合によっては環境濃度の許容値をオーバーするおそれがある。
【0008】
一方、この種のガス処理装置・方法としては、機能性粉体をペレット状に固め、このペレットを充填した充填層にガスを通気させ、もって被処理成分を機能性粉体に吸着させることにより、あるいは被処理成分と機能性粉体とを反応させることにより、ガスの中和、除湿、脱臭等の処理を行う装置・方法もある(例えば、特許文献2等参照。)。
【0009】
しかしながら、機能性粉体のペレットは、粉体状の機能性粉体に比べて、単位重量当りの単価が数倍以上と高価であり、コストが嵩む。また、機能性粉体のペレットは、機能性粉体をバインダー等によって固めて得たものであるため、被処理成分との接触効率が悪く(ペレット表面での吸着・反応になる。)、充填量を多くし、あるいは通気時間を長くする必要がある。さらに、機能性粉体のペレットは、水蒸気、ダスト、共存ガス等によってマスキングされてしまい、粉体状の機能性粉体の場合と比べて、吸着・反応性能(容量)が、1/3〜1/5にまで低下してしまうため、劣化が早く、ランニングコストが嵩む。さらに、機能性粉体と被処理成分との中和反応が起こると、潮解作用によってペレットが崩れてしまい、充填層の閉塞、居付き等の問題が生じる。このほか、充填層は、通気抵抗が大きいため、ブロワの通風圧力を大きくする必要があり、動力コストが嵩む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−262842号公報
【特許文献2】特開平2−149311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする主たる課題は、処理効率がよく、しかもコストが嵩むおそれのないガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
被処理ガスが通されるバグフィルターと、このバグフィルターに前記被処理ガスを供給するガス供給路と、このガス供給路に機能性粉体を供給する粉体供給手段と、を有するガス処理装置であって、
前記ガス供給路の途中に、前記機能性粉体を含む被処理ガスを攪拌するガス攪拌手段が設けられている、
ことを特徴とするガス処理装置。
【0013】
〔請求項2記載の発明〕
前記ガス攪拌手段は、
前記機能性粉体を含む被処理ガスが供給される攪拌槽と、この攪拌槽の底部に備えられた上下方向を軸として回転する回転羽根と、この回転羽根の回転軸に沿って下方に延び前記攪拌槽内に前記機能性粉体を含む被処理ガスを供給する内管と、を有し、
この内管の先端縁よりも上方に前記機能性粉体を含む被処理ガスの排気口が形成されている、
請求項1記載のガス処理装置。
【0014】
〔請求項3記載の発明〕
前記ガス攪拌手段は、
前記機能性粉体を含む被処理ガスが供給される筒体と、この筒体内に備えられた当該筒体の軸方向を軸として回転する回転羽根と、を有し、
前記筒体の一端開口が前記機能性粉体を含む被処理ガスの供給口とされ、前記筒体の他端開口が前記機能性粉体を含む被処理ガスの排気口とされている、
請求項1記載のガス処理装置。
【0015】
〔請求項4記載の発明〕
2以上の前記攪拌手段が、前記筒体の軸方向に連接されている、
請求項3記載のガス処理装置。
【0016】
〔請求項5記載の発明〕
前記連接をされた攪拌手段は、筒体の両端部にそれぞれ前記回転羽根が備えられ、
一の回転羽根と、これに隣接する他の攪拌手段の回転羽根と、が相互に逆方向に回転する構成とされている、
請求項4記載のガス処理装置。
【0017】
〔請求項6記載の発明〕
前記筒体の内壁面から内方に突出する固定羽根が、
最も上流側に位置する回転羽根の上流側において当該最上流回転羽根と隣接するように、及び/又は、最も下流側に位置する回転羽根の下流側において当該最下流回転羽根と隣接するように、設けられている、
請求項5記載のガス処理装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、処理効率がよく、しかもコストが嵩むおそれのないガス処理装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガス処理装置の形態例である。
【図2】ガス攪拌手段の形態例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
〔用途等〕
本形態のガス処理装置は、有害成分等の被処理成分を含む燃焼排ガス等の被処理ガスに、吸着剤等の機能性粉体を供給し、被処理成分を機能性粉体に吸着させることにより、あるいは被処理成分と機能性粉体とを反応させることにより、被処理ガスの中和等の処理を行うものである。
【0021】
本形態のガス処理装置において、処理の対象となるガス(被処理ガス)は、特に限定されず、燃焼排ガスのほか、例えば、悪臭ガス、発酵ガス、化学合成ガス等のガスを例示することができる。また、このガスに含まれる被処理成分も、特に限定されず、例えば、揮発性有機化合物(VOC)、塩化水素、水分、アンモニア等の臭気成分、二酸化炭素等を例示することができる。さらに、 本形態のガス処理装置が行う処理の内容も、特に限定されず、中和処理のほか、例えば、除湿処理、脱臭処理、香り付け処理、酸化反応処理等を例示することができる。
【0022】
一方、本形態のガス処理装置において利用する機能性粉体とは、被処理ガス中の被処理成分を吸着し、あるいは被処理ガス中の被処理成分と反応する粉体であり、その種類は特に限定されない。機能性粉体としては、例えば、塩化水素等を含む酸性ガスの中和処理を行うのであれば、消石灰等の強アルカリ粉体を例示することができ、除湿処理を行うのであれば(被処理成分が水分)、シリカゲル、ゼオライト等の吸湿性粉体を例示することができ、脱臭処理を行うのであれば、活性炭、ゼオライト等の多孔質吸着粉体を例示することができる。
【0023】
〔ガス処理装置〕
図1に示すように、本形態のガス処理装置10は、被処理ガスGが通されるバグフィルター20と、このバグフィルター20に被処理ガスGを供給するガス供給路30と、このガス供給路30に機能性粉体Fを供給する粉体供給手段40と、を有し、ガス供給路30の途中に、機能性粉体Fが供給された後の被処理ガス(機能性粉体Fを含む被処理ガスであり、以下、「粉体ガス」と略す。)GFを攪拌するガス攪拌手段50が設けられている。
このように本形態のガス処理装置10においては、バグフィルター20の前段にガス攪拌手段50が設けられており、このガス攪拌手段50おいて、粉体ガスGFが攪拌されるため、被処理成分と機能性粉体Fとの吸着・反応効率が高まり、被処理ガスGの処理効率が向上する。
【0024】
この点をより詳細に説明すると、被処理成分と機能性粉体Fとの吸着・反応効率が高まるのは、粉体ガスGFの攪拌によって、機能性粉体Fの表面を覆う境界層が剥離されるためである。
すなわち、粉体ガスGFが単に流れている状態、つまり、機能性粉体Fと被処理ガスG(被処理成分)とが随伴移動している状態においては、機能性粉体Fの周りに位置する被処理ガスGが分子間引力によって当該機能性粉体Fに引き寄せられ、当該機能性粉体Fの周りを覆うように境界層を形成する。そして、この境界層によって他の被処理ガスG中の被処理成分が機能性粉体Fと接触し難くなるため(接触阻害)、例えば、前述したように風速条件やダクト長等を変化させても、吸着・反応効率が向上しないことになる。これに対し、本形態においては、粉体ガスGFの攪拌によって、機能性粉体Fと被処理ガスGとの相対速度差が高まるため、剪(せん)断応力等によって、境界層が剥離され、吸着・反応効率が著しく向上する。また、この吸着・反応効率の向上により、被処理成分と機能性粉体Fとの吸着・反応は、ほとんどがガス攪拌手段50及びバグフィルター20への移動過程で行われることになり、バグフィルター20における吸着・反応は、補助的なものとなる。結果、バグフィルター20の処理負荷が減り、例えば、バグフィルター20を小型化すること、バグフィルター20の腐食対策を軽減すること、バグフィルター20の目詰まりによる圧力損失を軽減することなどができる。また、本形態のガス処理装置10によると、吸着・反応容量がバグフィルター20に依存しなくなるため、被処理成分の濃度が急上昇した場合においても、例えば、被処理成分の検出濃度に応じて機能性粉体Fの供給量を調節することなどによって、被処理成分の流出(バグフィルター20を通り抜けること)を防止することができ、総合的な処理効率の低下を防止することができる。さらに、境界層の剥離によって機能性粉体Fの吸着・反応能力が限界まで利用されるようになるため、機能性粉体Fが短時間で使用不能になるということがなく、ランニングコストを大幅に削減することができる。しかも、被処理成分と機能性粉体Fとの吸着・反応は、ほとんどがガス攪拌手段50で行われ、バグフィルター20における吸着・反応は、補助的なものとなり、また、ガス攪拌手段50は、中和、除湿、脱臭等の処理いずれにも共通して使用することができるため、これらの各種処理を複合的に行うことができる。加えて、機能性粉体Fを粉体のまま利用し、ペレット化するものではないため、潮解作用によるトラブルが生じない。このほか、ガス攪拌手段50がバグフィルター20の前段に設けられており、バグフィルター20に対してガス攪拌手段50が押込みファンの機能を発揮するため、バグフィルター20にガスGを通気させるための通気手段を小型化することができる。
【0025】
本形態のガス処理装置10において用いることができるガス攪拌手段50の具体的な形態は、特に限定されるものではないが、図示例のガス攪拌手段50を推奨する。
本形態のガス攪拌手段50は、粉体ガスGFが供給される好ましくは円筒状の攪拌槽51と、この攪拌槽51の底部に備えられた上下方向を軸として、特に図示例では攪拌槽51の軸を軸として回転する回転羽根52と、この回転羽根52の回転軸に沿って下方に延び攪拌槽51内に粉体ガスGFを供給する内管53と、を主に有する。
【0026】
この内管53の形状は、特に限定されるものではないが、図示例では、攪拌槽51の天面から回転羽根52に向かって一直線に延びる、攪拌槽51と同軸の円筒とされている。そして、この内管53の先端縁53aよりも上方に粉体ガスGFの排気口54が形成されている。
【0027】
このようにしてなるガス攪拌手段50においては、内管53の先端縁53a開口から粉体ガスGFが回転羽根52向かって噴出され、この噴出された粉体ガスGFが回転羽根52によって攪拌される。この攪拌は、内管53の先端縁53aよりも上方に粉体ガスGFの排気口54が形成されているため、少なくとも当該先端縁53aから排気口54に至るまでの間、継続して行われる。しかも、本形態においては、内管53が回転羽根52の回転軸に沿って下方に延びているため、粉体ガスGFは、内管53を中心に旋回上昇しながら排気口54に至ることになり、攪拌時間が長くなる。
【0028】
この粉体ガスGFの攪拌時間(滞留時間)は、もちろん先端縁53aから排気口54までの距離や、攪拌槽51の径、内管53の径、排気口54の径等を変化させて、適宜調整することもできる。この攪拌時間は、通常0.1〜2秒、好ましくは0.5〜1秒である。攪拌時間が短過ぎると、機能性粉体Fから境界層を確実に剥離することができないおそれがあり、他方、攪拌時間を必要以上に長くしても、途中で吸着・反応が限界に達し、また、処理時間の長期化や攪拌槽51の大型化につながるため、設備・処理コストが増加する。
【0029】
本形態において、攪拌槽51の内壁面は、フッ素樹脂等をコーティングしておくのが好ましい。このコーティングによって、機能性粉体Fが潮解作用によって攪拌槽51の内壁面に付着したとしても、この付着物は回転羽根52による攪拌作用(風圧等)によって剥離される。また、回転羽根52の駆動源たるモーター52Mは、潮解作用によって機能性粉体Fが付着しないよう、図示例のように、攪拌槽51外に配置するのが好ましい。
【0030】
一方、本形態においては、前述したように粉体供給手段40によってガス供給路30に機能性粉体Fが供給されるが、この機能性粉体Fを供給する粉体供給手段40の形態は、特に限定されない。図示例の粉体供給手段40は、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた粉体タンク41と、この粉体タンク41の下端部開口に接続されたロータリーフィーダ、テーブルフィーダー等からなる定量フィーダ42と、この定量フィーダ42から切り出された機能性粉体Fを、粉体供給路43を通してガス供給路30に向けて空気圧送するブロワ44と、を主に有する。
【0031】
この粉体供給手段40を用いて、機能性粉体Fをガス供給路30に向けて供給するにあたっては、例えば、濃度計91によって、ガス供給路30内を通る被処理ガスG中の被処理成分の濃度を測定すると好適である。この測定値は、調節計92等を介して、インバーター93を制御するのに利用する。このインバーター93は、定量フィーダ42の駆動源であるモーター42Mを制御するものであり、したがって、本形態によると、被処理成分の濃度に基づいて、機能性粉体Fの切出し量、つまりガス供給路30に供給する機能性粉体Fの量を調節することができる。なお、本形態においては、内管53がガス供給路30を兼ねており、粉体供給路43の先端縁開口は、内管53(兼ガス供給路30)の途中において、内管53内と連通している。
【0032】
一方、ガス攪拌手段50の排気口54から排気された粉体ガスGFは、ガス供給路30を通してバグフィルター20に空気圧送される。このバグフィルター20の形態は、特に限定されるものではないが、図示例では、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた収容槽21と、この収容槽21内に配置された適宜の数の、図示例では2つのフィルター22と、収容槽21の下端部に接続された粉体回収ボックス23と、各フィルター22の上方に配置されたパルスジェット24と、を主に有する。
【0033】
本形態のガス処理装置10において、粉体ガスGFは、収容槽21内に供給された後、例えば、円筒状とされたフィルター22の外周面に付着する等して、更に吸着・反応が進む。もっとも、この吸着・反応は、補助的なものに過ぎず、従来のバグフィルター等におけるように、フィルター22の外周面に機能性粉体Fを積極的に付着させる必要はなく、また、この付着層を厚いものとする必要もない。したがって、フィルター22の通気抵抗が大きなものとはらならず、ブロワ等による吸引圧力を大きくする必要や、フィルター22の面積を通常より大きくする必要がない。
【0034】
本形態のバグフィルター20において、被処理成分が吸着された、あるいは被処理成分と反応した機能性粉体Fは、重力等によって収容槽21の底部に落下し、粉体回収ボックス23内に回収される。この粉体回収ボックス23内に回収された機能性粉体Fは、適宜の再生処理を施す等した後、粉体タンク41内に投入する機能性粉体Fなどとして、再利用することができる。また、フィルター22に付着した機能性粉体Fは、パルスジェット24から適宜の間隔をおいてエアを噴出し、円筒状とされたフィルター22の中心側から外方に向かってエアを吹き出すことにより、払い落すことができる。この点、本形態において、バグフィルター20における吸着・反応は、補助的なものに過ぎず、機能性粉体Fの付着層を厚く形成するものではないため、新たな機能性粉体Fが所定の付着層厚となるまでの吸着・反応効率の低下等は問題とならない。
【0035】
他方、フィルター22によって機能性粉体Fが取り除かれた後の清浄ガスGCは、そのまま排風ファン70によって吸引され、例えば、大気中に放風することができる。
【0036】
〔他の形態〕
図2に、ガス攪拌手段50の別の形態を示した。
本形態のガス攪拌手段50は、2以上の単位ガス攪拌手段60が、次いで説明する筒体61の軸方向に連接されて構成されている。単位ガス攪拌手段60は、粉体ガスGFが供給される、例えば円筒状の筒体61と、この筒体61内に配置された筒体61の軸方向を軸として回転する回転羽根62A,62Bと、この回転羽根62A,62Bを回転駆動するモーター60Mとを有し、筒体61の一端開口が、粉体ガスGFの供給口61Aとされ、筒体61の他端開口が、粉体ガスGFの排気口61Bとされている。
【0037】
この単位ガス攪拌手段60においては、ガス供給口61Aから筒体61内に供給された粉体ガスGFが、回転羽根62A,62Bによって攪拌され、そのままガス排出口61Bから排出される。このように本形態の単位ガス攪拌手段60においては、粉体ガスGFが滞留せず、単に筒体61内を通り抜ける構成とされているため、ガス処理装置10を小型化することができる(なお、筒体61の直径は、例えば、40〜120cmとすることができる。)。また、粉体ガスGFを滞留させないとすると、攪拌時間は短くなるが、本形態のように単位ガス攪拌手段60を直列的に連接することによって、攪拌時間を長くすることができる。
【0038】
もっとも、単位ガス攪拌手段60の連接数を変えるのみであると、必要になる攪拌時間によっては、単位ガス攪拌手段60の連接数が多くなり過ぎる可能性がある。そこで、図示例のように、単位ガス攪拌手段60を2以上連接する場合においては、筒体61の両端部(ガス供給口61A側端部及びガス排出口61B側端部)にそれぞれ回転羽根62A,62Bが備えられ、しかも一の回転羽根62Bと、これに隣接する他の単位ガス攪拌手段60の回転羽根62Aとが、好ましくは一の回転羽根62Bと、これに隣接する同一の単位ガス攪拌手段60の回転羽根62Aとも、相互に逆方向に回転する構成とされているのが好ましい。この形態によると、相互に隣接する回転羽根62A,62Bが逆方向に回転するため、各回転羽根62A,62Bの相対的な回転速度が増し、機能性粉体Fが有する境界層の剥離性能が向上する。結果、機能性粉体Fと被処理成分との吸着・反応効率が向上する。
【0039】
また、図示例のように、筒体61の内壁面から内方に突出する固定羽根63が、最も上流側に位置する回転羽根62Xの上流側において当該最上流回転羽根62Xと隣接するように、及び/又は、最も下流側に位置する回転羽根62Yの下流側において当該最下流回転羽根62Yと隣接するように、設けられていると、より好ましいものとなる。この形態によると、最上流回転羽根62Xや最下流回転羽根62Yの相対的な回転速度も増すため、機能性粉体Fと被処理成分との吸着・反応効率が向上する。
【実施例】
【0040】
次に、試験例について説明する。
〔試験例1〕
ソルベントを加熱して発生させた被処理ガスに、機能性粉体としてチャコール(三菱カルゴン社製 ダイアホープpxo(粉末チャコール))を供給し、得られた粉体ガスをガス攪拌手段及びバグフィルター(CF−60)に、この順に通して、アンモニアの除去率(ガス除去率)を調べる試験を行った。ガス攪拌装置としては、前述した粉体ガスが供給される攪拌槽(容量0.6m3)と、この攪拌槽内に配置された回転羽根とが備わる形態の装置を使用した。結果を表1に示した。なお、試験時の気温は12℃、湿度は90%であった。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、30分経過後にバグフィルターに付着したチャコールを払い落すパルス打ちを行ったが、その後のガス除去率に影響がなかった。このことから、主としてガス攪拌装置(攪拌槽内)において吸着脱臭が行われていることが分かる。
【0043】
〔試験例2〕
アンモニア水を加熱して発生させた被処理ガスに機能性粉体としてゼオライト(日東ゼオライト工業用 SP♯600)を供給し、得られた粉体ガスをガス攪拌手段及びバグフィルター(CF−60)に、この順に通して、アンモニアの除去率(ガス除去率)を調べる試験を行った。ガス攪拌装置としては、試験例1と同様のものを使用した。結果を表2に示した。なお、試験時の気温は14℃、湿度は30%であった。
【0044】
【表2】

【0045】
表2から、吸込濃度が大きく変化しても十分なガス除去率となることが分かる。また、40分経過後から10分間隔でパルス打ちを行ったが、ガス除去率に影響がなく、この試験からも、主としてガス攪拌装置(攪拌槽内)において吸着脱臭が行われていることが分かる。なお、経過時間50分の排出濃度及びガス除去率は、「パルス前/パルス後」を示している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、吸着剤等の機能性粉体を利用して、ガスの中和、除湿、脱臭等の処理を行う装置として、適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…ガス処理装置、20…バグフィルター、21…収容槽、22…フィルター、23…粉体回収ボックス、24…パルスジェット、30…ガス供給路、40…粉体供給手段、41…粉体タンク、42…定量フィーダ、42M…モーター、43…粉体供給路、44…ブロワ、50…ガス攪拌手段、51…攪拌槽、52…回転羽根、52M…モーター、53…ガス供給管、54…排気口、60…単位ガス攪拌手段、60M…モーター、61…筒体、62A,62B,62X,62Y…回転羽根、63…固定羽根、70…排風ファン、91…濃度計、92…調節計、93…インバーター、F…機能性粉体、G…ガス、GF…粉体ガス、GC…清浄ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスが通されるバグフィルターと、このバグフィルターに前記被処理ガスを供給するガス供給路と、このガス供給路に機能性粉体を供給する粉体供給手段と、を有するガス処理装置であって、
前記ガス供給路の途中に、前記機能性粉体を含む被処理ガスを攪拌するガス攪拌手段が設けられている、
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
前記ガス攪拌手段は、
前記機能性粉体を含む被処理ガスが供給される攪拌槽と、この攪拌槽の底部に備えられた上下方向を軸として回転する回転羽根と、この回転羽根の回転軸に沿って下方に延び前記攪拌槽内に前記機能性粉体を含む被処理ガスを供給する内管と、を有し、
この内管の先端縁よりも上方に前記機能性粉体を含む被処理ガスの排気口が形成されている、
請求項1記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記ガス攪拌手段は、
前記機能性粉体を含む被処理ガスが供給される筒体と、この筒体内に備えられた当該筒体の軸方向を軸として回転する回転羽根と、を有し、
前記筒体の一端開口が前記機能性粉体を含む被処理ガスの供給口とされ、前記筒体の他端開口が前記機能性粉体を含む被処理ガスの排気口とされている、
請求項1記載のガス処理装置。
【請求項4】
2以上の前記攪拌手段が、前記筒体の軸方向に連接されている、
請求項3記載のガス処理装置。
【請求項5】
前記連接をされた攪拌手段は、筒体の両端部にそれぞれ前記回転羽根が備えられ、
一の回転羽根と、これに隣接する他の攪拌手段の回転羽根と、が相互に逆方向に回転する構成とされている、
請求項4記載のガス処理装置。
【請求項6】
前記筒体の内壁面から内方に突出する固定羽根が、
最も上流側に位置する回転羽根の上流側において当該最上流回転羽根と隣接するように、及び/又は、最も下流側に位置する回転羽根の下流側において当該最下流回転羽根と隣接するように、設けられている、
請求項5記載のガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−247096(P2010−247096A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100239(P2009−100239)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(391061646)株式会社流機エンジニアリング (20)
【Fターム(参考)】