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ガス分析装置
説明

ガス分析装置

【課題】ガス中に含まれる成分を、高精度且つ高効率に分析できるガス分析装置を提供すること。
【解決手段】ガス中に含まれるHC成分を捕集して分析するガス分析装置10において、所定の容積を有し、分析対象のガスを採取する採取部11と、採取部11により採取されたガスを循環させる循環経路20と、循環経路20を循環するガスの流量を制御する第1切替部17、第2切替部18、第1ポンプ16、及び制御部と、循環経路20に設けられ、循環経路20を循環するガス中に含まれるHC成分を捕集するHC捕集部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析装置に関する。詳しくは、ガス中に含まれる成分を、高精度且つ高効率に分析できるガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分析装置として、例えば、ごみ焼却施設等の燃焼炉から排出されるガスを捕集して分析するガス分析装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このガス分析装置によれば、水分による影響を受けることなく、安定して連続的にガスを分析できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3583059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば内燃機関(以下、「エンジン」という)から排出されるガスを捕集して分析する場合には、ガス中に含まれる水分による影響の他に、炭化水素(以下、「HC」という)の損失に留意する必要がある。このHCの損失は、低沸点成分である高揮発性HCの透過、漏洩や、高沸点成分である低揮発性HCの吸着が原因と考えられている。
【0005】
これに対して、環境分析におけるHCの捕集方法として、HCを吸着剤に吸着させて捕集する方法や、HCを冷却することにより液化・凍結させて捕集する方法が知られている。特に、ガソリンエンジンから排出される高揮発性HCを分析する場合には、乾燥空気による希釈で水分の影響を避けたうえで、一旦、樹脂製のバックで採取した後、冷却・濃縮して捕集する方法が好適であるとされている。
【0006】
しかしながら、例えば軽油を使用したディーゼルエンジンから排出されるガス中には、高揮発性HCから低揮発性HCまでが混在する。このため、ディーゼルエンジンから排出されるガスの分析においては、希釈装置やバックへのHCの吸着が避けられず、上記ガソリンエンジンで採用されているHCの捕集方法は採用し得ない。
【0007】
また、吸着剤を充填した捕集管を用いる方法では、沸点領域が広範囲に亘るHC成分を捕集するためには1種類の吸着剤では困難であり、捕集管内に数種類の吸着剤を充填したり、捕集管自体を数種類併用する必要がある。加えて、数種類の吸着剤それぞれを効率良く機能させるための最適条件(例えば、ガス温度、ガス速度、時間等)を設定することが非常に困難であり、高い精度で効率良くHCを分析することは困難である。
【0008】
さらには、ガスを冷却して分析対象のHCを液化・凍結する方法では、ガス中の水分の結露・氷結が同時に発生してしまうため、HCの捕集量が制限されてしまう。ガス中の水分を分離・排出したり、固定化する除湿方法も検討されてはいるものの、いずれも分析対象のHCの損失に繋がるおそれがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス中に含まれる成分を、高精度且つ高効率に分析できるガス分析装置を提供することにある。
なお、他成分系や、微量で、変化が激しい等の複雑で高度な分析の際には、検出装置(定性や定量)と、検出装置に分析対象を導入するためのサンプリング装置とに機能を分ける場合がある。今回検討したものは、サンプリング装置(捕集及び導入)に関するものであり、検出に関しては、TCD(熱伝導度検出器)、FID(水素炎イオン化検出器)、MS(質量分析計)のいずれでも構わない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため請求項1に係る発明は、ガス中に含まれる成分を捕集して分析するガス分析装置(例えば、後述のガス分析装置10)において、所定の容積を有し、分析対象のガスを採取する採取手段(例えば、後述の採取部11)と、前記採取手段により採取されたガスを循環させる循環経路(例えば、後述の循環経路20)と、前記循環経路を循環するガスの流量を制御する循環制御手段(例えば、後述の第1切替部17、第2切替部18、第1ポンプ16、制御部)と、前記循環経路に設けられ、当該循環経路を循環するガス中に含まれる成分を捕集する捕集手段(例えば、後述のHC捕集部13)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に係るガス分析装置では、分析対象のガスを一旦、採取手段により採取する。次いで、循環制御手段により、採取手段で採取されたガスを循環経路に循環させる。これにより、循環経路に設けられた捕集手段において、循環するガス中に含まれる成分が捕集される。また、捕集手段にガスが流入した際に捕集しきれなかった成分については、従来のガス分析装置であれば損失となっていたところ、本発明では、ガスは循環して再び捕集手段に流入し、捕集手段により捕集される。即ち、本発明によれば、ガス中の各成分は、捕集手段により捕集されるまで循環経路を循環する。従って、ガス中に含まれる成分の全量が捕集手段により確実に捕集され、損失が生じないため、高精度な分析が可能である。
また、ガス中の各成分を単一の捕集手段により捕集できるため、捕集した各成分を同時に分析(例えば、GC分析)に供することができ、高効率な分析が可能である。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガス分析装置において、前記捕集手段は、前記循環経路を循環するガス中に含まれる炭化水素を捕集することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係るガス分析装置では、ガス中に含まれるHCを捕集する。即ち、ガス中に含まれる成分を全量捕集できる本発明に係るガス分析装置を、多くの成分が混在することが多く、一括した捕集が困難であったHC成分の分析に適用することにより、上記の効果がより高められる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のガス分析装置において、前記採取手段、前記循環経路、前記循環制御手段、及び前記捕集手段から構成される循環系を、加熱又は冷却する加熱冷却手段(例えば、後述の加熱冷却部15)をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係るガス分析装置では、採取手段、循環経路、循環制御手段、及び捕集手段から構成される循環系を、加熱又は冷却する。即ち、本発明によれば、循環系内で温度勾配を設けることにより、高揮発性成分から低揮発性成分まで全ての成分を、単一の捕集手段により捕集できるため、分析効率の大幅な向上が可能である。特に、軽油を使用したディーゼルエンジンから排出されるガス中には、高揮発性HCから低揮発性HCまでが混在するため、このようなガスに対して本発明に係るガス分析装置を適用することによって、上記の効果がより高められる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のガス分析装置において、前記循環系の温度を検出する温度検出手段(例えば、後述の温度センサ)をさらに備え、前記循環制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記採取手段により採取されたガスを循環させることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係るガス分析装置では、温度検出手段により検出された循環系の温度に基づいて、ガスを循環経路に循環させる。これにより、分析対象成分に応じた温度勾配条件でガスの循環を開始、停止させることができるため、請求項3の効果がより高められる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1から4いずれかに記載のガス分析装置において、前記採取手段により採取されたガスの湿度を検出する湿度検出手段(例えば、後述の湿度センサ)と、前記湿度検出手段により検出された湿度に基づいて、前記循環経路を循環するガス中の水分を除去する水分除去手段(例えば、後述の水分除去部12)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係るガス分析装置では、採取手段により採取されたガスの湿度に基づいて、循環経路を循環するガス中の水分を除去する。これにより、ガス中の水分により生ずる結露等によって、圧損の増加やガスの流速低下が生じ、捕集手段における捕集量が低下してしまう事態を回避でき、より高精度且つ高効率な分析が可能となる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1から5いずれかに記載のガス分析装置において、前記採取手段により採取されたガスの湿度を検出する湿度検出手段と、前記湿度検出手段により検出された湿度に基づいて、前記循環経路を循環するガスを希釈する希釈ガスを当該循環経路に導入する希釈手段(例えば、後述の希釈部14)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、採取手段により採取されたガスの湿度に基づいて、循環経路に希釈ガスを導入して循環するガスを希釈する。これにより、ガス中の水分により生ずる結露等によって、圧損の増加やガスの流速低下が生じ、捕集手段における捕集量が低下してしまう事態を回避でき、より高精度且つ高効率な分析が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガス中に含まれる成分を、高精度且つ高効率に分析できるガス分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス分析装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るHC捕集処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】実施例1及び比較例1のHC回収率(%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るガス分析装置10の構成を示す図である。ガス分析装置10は、エンジン1から排出されるガス中に含まれる各HC成分を分析する。
エンジン1は、各気筒の燃焼室内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンであり、エンジン1から排出されるガス中には、高揮発性HCから低揮発性HCまでが混在している。
【0026】
ここで、本実施形態では、「高揮発性HC」とは、炭素数が5以下の炭化水素を意味し、「低揮発性HC」とは、炭素数が12以上の炭化水素を意味する。炭素数6〜12の炭化水素が、中揮発性HCである。また、高揮発性HCの沸点は100℃以下、中揮発性HCの沸点が100〜150℃、低揮発性HCの沸点が150℃以上である。
【0027】
ガス分析装置10は、エンジン1から排出されたガスを採取する採取部11と、循環するガス中に含まれる水分を除去する水分除去部12と、循環するガス中に含まれるHCを捕集するHC捕集部13と、循環するガスを希釈する希釈部14と、循環系(図1の点線で囲まれた部分)を加熱又は冷却する加熱冷却部15と、経路の切替を行う第1切替部17及び第2切替部18と、ガスを循環させるための第1ポンプ16と、ガスを採取するための第2ポンプ19と、HC捕集部13により捕集されたHCを分析する分析部21と、を備える。
【0028】
採取部11は、ガスを採取可能な所定の容積を有し、エンジン1から排出されたガスを一旦、採取する。具体的には、図示しない制御部によって、第1切替部17、第2切替部8、第1ポンプ16、及び第2ポンプ19を制御して循環系を開放することにより、採取部11にガスが導入され、採取部11でガスが一旦、採取される。
【0029】
ガスを循環させるための第1ポンプ16としては、分析対象のHCの吸着が無く、循環系内の気密性が保たれ、所定温度に耐え得るポンプであれば特に制限はない。好ましくは、高耐熱性メタルベローズポンプ等が用いられる。
第1ポンプ16は、HC捕集部13よりも上流側に配置される。この配置により、第1ポンプ16より上流側の循環経路20では減圧状態となり、HCの沸点が低下して循環経路20等への吸着を抑制できる。また、第1ポンプ16より下流側の循環経路20では加圧状態となり、HCの沸点が上昇してHC捕集部13にHCが効率的に捕集される。
第1ポンプ16をHC捕集部13より下流側の循環経路に配置した場合には、上記と逆の現象が生じ、HCの捕集効率が低下するため好ましくない。
なお、循環処理時のガスの流速は、HC捕集部13の種類又は量により最適値が異なるため、適宜ポンプ流量等を変更して最適化することが好ましい。
【0030】
ガスを採取するための第2ポンプ19としては、エンジン1から排出されるガスを採取部11に導入できるものであればよく、第1ポンプ16と同様のものを用いることができる。
第1切替部17は、循環経路20とエンジン1の排気通路とを連通又は遮断するバルブと、希釈部14と循環経路20とを連通又は遮断するバルブを備える。これらのバルブは、制御部によりその開閉が制御される。
第2切替部18は、循環経路20を開放又は閉鎖するバルブを備える。このバルブは、制御部によりその開閉が制御される。
【0031】
水分除去部12は、HC捕集部13の上流側の循環経路20に設けられており、循環するガス中に含まれる水分を除去する。具体的には、シリカゲルやナフィオンドライヤー等に代表される水分除去装置が用いられる。
水分除去部12は、採取部11で採取されたガスの湿度を検出する湿度センサ(図示せず)の検出結果が、予め設定され制御部に格納された閾値を超えていたときには、制御部により、循環するガスを水分除去装置に導入して水分を除去する。これにより、循環するガス中の水分に起因する結露が抑制される。
【0032】
なお、湿度センサの検出は、循環処理前に一度実行することで水分除去処理の必要性は判断できるものの、循環処理中においても、常時検出することが好ましい。この湿度センサにより湿度をモニターし、循環するガス中の湿度が常に100未満となるように水分除去処理を実行することが好ましい。なお、湿度は、湿度センサの検出値と、下記式(1)とから求められる。
[数1]

ガスの湿度=ガス中の水蒸気量/飽和水蒸気量×100 …(1)

【0033】
HC捕集部13は、ガス中に含まれる多くの高揮発性HC及び低揮発性HCを捕集する。HC捕集部13としては、従来公知のHC捕集管が用いられる。例えば、後述する実施例で用いたGERSTEL社製「TenaxTA」(60mm/約180mg充填)が好ましく用いられる。
【0034】
希釈部14は、循環経路20を循環するガスを希釈するために、希釈ガスを循環経路20に導入する。希釈ガスは、分析対象成分のHC成分を含まない不活性の乾燥ガスであればよく、希釈部14は、希釈ガス用タンクと、希釈ガス供給装置とから構成される。
希釈部14は、上述の水分除去部12と同様に、採取部11で採取されたガスの湿度を検出する湿度センサ(図示せず)の検出結果が、予め設定され制御部に格納された閾値を超えていたときには、制御部により第1切替部17及び第1ポンプ16を制御して、希釈ガスを循環経路20に導入する。これにより、循環するガスが希釈され、循環するガス中の水分に起因する結露が抑制される。
【0035】
なお、水分除去部12によるガス中の水分除去処理と、希釈部14によるガスの希釈処理は、いずれか一方の処理のみを実行してもよく、両処理を実行してもよい。
【0036】
加熱冷却部15は、循環系を加熱又は冷却し、循環するガスを加熱又は冷却する。具体的には、採取部11でガスを採取した後に、循環系を加熱して所定の目標温度まで昇温させる。このときの目標温度としては、例えばガス中に含まれる低揮発性HCであるエイコサンが吸着しない温度である350℃に設定される。
また、加熱冷却部15は、ガスの循環が開始された後に、循環系を冷却して所定の目標温度まで降温させる。このときの目標温度としては、例えばガス中に含まれる高揮発性HCであるペンタンを捕集可能な温度である20℃に設定される。
なお、循環系には、図示しない温度センサが設けられており、循環系の温度、即ち循環するガスの温度は、この温度センサにより検出される。
【0037】
本実施形態では、加熱冷却部15により、循環系を高温側(例えば、350℃)から低温側(例えば、20℃)に変温させることで低揮発性(高沸点)成分から高揮発性(低沸点)成分まで幅広く効率的にHC捕集部13にて捕集する。温度の変化速度が過剰な場合には、循環経路20へのHCの吸着による損失のおそれが生じるため、好ましくない。
なお、循環系の温度を低温側から高温側へと変温させた場合には、循環経路20へのHCの吸着による損失は低減するものの、高揮発性(低沸点)HCの破過が発生し、捕集効率が低下するため好ましくない。
【0038】
分析部21は、HC捕集部13で捕集されたHC成分を分析する。具体的には、加熱脱着システムを備えたガスクロマトグラフィー(GC)が好適に用いられる。これにより、捕集されたHC成分の定性、定量分析が実行される。
【0039】
次に、本実施形態に係るガス分析装置によるHC捕集処理の手順について説明する。
図2は、本実施形態に係るガス分析装置によるHC捕集処理の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係るガス分析装置によるHC捕集処理は、採取部で採取したガスを、循環系の温度に応じて循環させるとともに、循環系を加熱又は冷却することにより、捕集部にHCを捕集させる。
なお、本フローでは、希釈処理は実行せず、水分除去処理のみを実行した場合について説明する。
【0040】
ステップS1では、エンジンから排出されたガスを採取部により一旦、採取する。また、加熱冷却部により循環系の加熱を開始し、採取部で採取されたガスの温度を昇温させる。その後、ステップS2に移る。
ガスの採取は、具体的には、第1切替部のエンジン1の排気通路と循環経路とを連通又は遮断するバルブと、第2切替部のバルブを開くとともに、第2ポンプを駆動させることにより実行する。ガスの採取が完了した後は、上記の両バルブを閉じ、第2ポンプを停止させる。
【0041】
ステップS2では、循環系の温度、即ち循環するガスの温度Tが、予め設定された目標温度T1に達したか否かを判別する。この判別がYESの場合には、ステップS3に移り、NOの場合には、ステップS1に戻る。
ここで、目標温度T1は、例えば、ガス中に含まれる低揮発性HCであるエイコサンが吸着しない温度である350℃に設定され、制御部に格納されている。
【0042】
ステップS3では、採取部で採取したガスの湿度が、予め設定された閾値を上回っているか否かを判別する。この判別がYESの場合には、水分除去処理が必要であると考えられるため、ステップS4に移る。一方、NOの場合には、水分除去処理が不要であると考えられるため、ステップS5に移る。
採取部で採取したガスの湿度は、湿度センサにより検出される。また、閾値は、予め設定され、制御部に格納されている。
【0043】
ステップS4では、水分除去部による水分除去処理を実行する。実行後は、ステップS5に移る。
具体的には、水分除去処理は、水分除去部に設けられた水分除去装置に、循環するガスを導入することにより実行する。
【0044】
ステップS5では、採取部で採取したガスを、循環経路に循環させる循環処理を実行する。実行後は、ステップS6に移る。
具体的には、第1切替部の2つのバルブ及び第2切替部のバルブをいずれも閉じた状態で、第1ポンプを駆動させることにより、循環処理を実行する。
【0045】
ステップS6では、加熱冷却部により循環系の冷却を開始し、循環するガスの温度を降温させる。その後、ステップS7に移る。
なお、循環系の冷却は、ある一定の冷却速度で実行する。即ち、冷却速度は、上述の目標温度T1と後述の目標温度T2との差を循環処理時間tで割った値(T1−T2)/tである。
【0046】
ステップS7では、循環系の温度が予め設定された目標温度T2にまで降下したか否かを判別する。この判別がYESの場合には、HC捕集処理を終了し、NOの場合には、ステップS5に戻る。
ここで、目標温度T2は、例えば、ガス中に含まれる高揮発性HCであるペンタンが捕集可能な温度である20℃に設定され、制御部に格納されている。
【0047】
HC捕集処理が終了した後は、HC捕集部で捕集されたHC成分を分析部に導入し、分析を実行する。また、第1ポンプを停止させたうえで、第2切替部のバルブを開くとともに第2ポンプを駆動させて、循環経路を循環していたガスを排出する。これにより、次回の分析が可能となる。
【0048】
本実施形態に係るガス分析装置によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、分析対象のガスを一旦、採取部11により採取する。次いで、採取部11で採取されたガスを循環経路20に循環させる。これにより、循環経路20に設けられたHC捕集部13において、循環するガス中に含まれるHC成分が捕集される。また、HC捕集部13にガスが流入した際に捕集しきれなかった成分については、従来のガス分析装置であれば損失となっていたところ、本実施形態では、ガスは循環して再びHC捕集部13に流入し、HC捕集部13により捕集される。即ち、本実施形態によれば、ガス中のHC成分は、HC捕集部13により捕集されるまで循環経路20を循環する。従って、ガス中に含まれるHC成分の全量がHC捕集部13により確実に捕集され、損失が生じないため、高精度な分析が可能である。
また、ガス中のHC成分を単一のHC捕集部13により捕集できるため、捕集した各HC成分を同時に分析(例えば、GC分析)に供することができ、高効率な分析が可能である。
【0049】
また、本実施形態では、循環系を加熱又は冷却する。即ち、本実施形態によれば、循環系内で温度勾配を設けることにより、高揮発性HC成分から低揮発性HC成分まで全てのHC成分を、単一のHC捕集部13により捕集できるため、分析効率の大幅な向上が可能である。特に、軽油を使用したディーゼルエンジンから排出されるガス中には、高揮発性HCから低揮発性HCまでが混在するため、このようなガスに対して本実施形態に係るガス分析装置10を適用することによって、上記の効果がより高められる。
【0050】
また、本実施形態では、循環系の温度に基づいてガスを循環経路20に循環させる。これにより、分析対象HC成分に応じた温度勾配条件でガスの循環を開始、停止させることができるため、上記3の効果がより高められる。
【0051】
また、本実施形態では、採取部11により採取されたガスの湿度に基づいて、循環経路20を循環するガス中の水分を除去する。また、採取部11により採取されたガスの湿度に基づいて、循環経路20に希釈ガスを導入して循環するガスを希釈する。これにより、ガス中の水分により生ずる結露等によって、圧損の増加やガスの流速低下が生じ、HC捕集部13のHC捕集量が低下してしまう事態を回避でき、より高精度且つ高効率な分析が可能となる。
【0052】
本実施形態では、HC捕集部13が捕集手段に相当し、第1切替部17、第2切替部18、第1ポンプ16、及び制御部が循環制御手段に相当する。また、図2のステップS1(ガス採取処理)の実行に係る手段が採取手段に相当し、ステップS2、S5、S7の実行に係る手段が循環制御手段に相当し、ステップS3〜S4の実行に係る手段が水分除去手段に相当し、ステップS1(加熱処理)、S6の実行に係る手段が加熱冷却手段に相当する。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0054】
例えば、上記実施形態では、ディーゼルエンジンから排出されるガス中に含まれるHC成分の分析に適用したが、これに限定されず、大気中に含まれる成分の分析にも適用できる。また、HC以外の高揮発性成分から低揮発性成分までが混在するガス中の各成分を分析する場合にも適用できる。この場合には、HC捕集管に代えて、分析対象成分に適した捕集管を用いる。
また、ガス中のHC成分をHC捕集部にて捕集した後、循環系内への分析対象HC成分の残留を防止するために、加熱パージ手段を設けてもよい。
さらには、循環経路内の圧力を調整及び計測する機能を有し、必要に応じて加圧及び減圧制御等を加える圧力調整部を設けてもよい。これにより、分析精度の向上、循環経路の破損のおそれを回避できる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
モデルガスとして、n−C14、n−C1226、及びn−C1838それぞれ0.1μlを、室温下で乾燥窒素10L中に分散させたものを用いた。ガス分析装置としては、図1に示したガス分析装置を用い、上記のモデルガスを採取部に導入した。モデルガスを採取部に導入した後、循環系の温度が350℃になるまで加熱した。循環系の温度が350℃まで達したのを確認した後、5℃/分の冷却速度で20℃まで循環系を冷却しながら、捕集部にてHCの捕集を行った。
なお、捕集部のHC捕集管としては、GERSTEL社製「TenaxTA」(60mm/約180mg充填)を用いた。
【0057】
捕集部にて捕集したHCの分析には、加熱脱着システムを備えたガスクロマトグラフィー(GC)を用いた。具体的には、GCにて各成分を分離して検出し、回収率を求めた。GC測定は、以下の分析条件に従って実施した。なお、回収率は、モデルガスとして用いた上記3種のHC成分を、HC捕集管に直接導入したときの検出値を回収率100%として算出した。結果を図3に示した。
[GC分析条件]
装置:GERSTEL社製GC
カラム:DB−1(長さ30m、内径0.25mm、液膜0.24μm)
カラム温度:30℃→300℃(3℃/分昇温)
検出器:FID
【0058】
<比較例1>
実施例1と同様に、採取部に上記モデルガスを導入した後、循環系の温度が350℃になるまで加熱した。循環系の温度が350℃まで達したのを確認した後、捕集部の下流側を大気開放とし、この状態で、5℃/分の冷却速度で20℃まで循環系を冷却しながら、捕集部にてHCの捕集を行った。捕集部のHC捕集管は、実施例1と同様のものを用いた。
また、実施例1と同様に捕集部にて捕集したHCの分析を実施した。結果を図3に示した。
【0059】
図3は、実施例1及び比較例1のHC回収率(%)を示す図である。図3に示すように、今回モデルガスとして用いたn−C14、n−C1226、及びn−C1838いずれのHC成分も、比較例1に比して実施例1の方がHCの回収率が高いことが判った。この結果から、本発明に係るガス分析装置によれば、ガス中に含まれるHC等の各成分を、高精度且つ高効率に分析できることが確認された。
なお、比較例1では、HCの沸点が低下するに従い回収率が低下していた。これは、比較例1では捕集部の下流側を大気開放としたためにガス温度が十分に低下せず、沸点が低いHCの捕集効率が低下して破過が生じ、大気に放出されたものと推測された。
【符号の説明】
【0060】
10 ガス分析装置
11 採取部(採取手段)
12 水分除去部(水分除去手段)
13 HC捕集部(捕集手段)
14 希釈部(希釈手段)
15 加熱冷却部(加熱冷却手段)
16 第1ポンプ(循環制御手段)
17 第1切替部(循環制御手段)
18 第2切替部(循環制御手段)
19 第2ポンプ
20 循環経路
21 分析部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中に含まれる成分を捕集して分析するガス分析装置において、
所定の容積を有し、分析対象のガスを採取する採取手段と、
前記採取手段により採取されたガスを循環させる循環経路と、
前記循環経路を循環するガスの流量を制御する循環制御手段と、
前記循環経路に設けられ、当該循環経路を循環するガス中に含まれる成分を捕集する捕集手段と、を備えることを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記捕集手段は、前記循環経路を循環するガス中に含まれる炭化水素を捕集することを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記採取手段、前記循環経路、前記循環制御手段、及び前記捕集手段から構成される循環系を、加熱又は冷却する加熱冷却手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記循環系の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記循環制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記採取手段により採取されたガスを循環させることを特徴とする請求項3に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記採取手段により採取されたガスの湿度を検出する湿度検出手段と、
前記湿度検出手段により検出された湿度に基づいて、前記循環経路を循環するガス中の水分を除去する水分除去手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記採取手段により採取されたガスの湿度を検出する湿度検出手段と、
前記湿度検出手段により検出された湿度に基づいて、前記循環経路を循環するガスを希釈する希釈ガスを当該循環経路に導入する希釈手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載のガス分析装置。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−38994(P2011−38994A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189261(P2009−189261)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】