説明

ガス化処理システムおよびこれを用いたガス化処理方法

【課題】 安全性、操作性および安定性を確保しつつ、エネルギー効率の高いガス化処理システムを提供すること。
【解決手段】 ガス化設備1からガス利用設備2へのガス化ガス供給流路L1から制御弁V1を介して還流されるガス化ガスの還流路R1と、ガス利用設備2から供出される流路L2から制御弁V2を介して還流される消費ガスの還流路R2と、を有し、還流路R1,R2が選択的にガス化設備1と接続するように制御弁V1,V2を操作し、ガス化設備1内の流路のパージ流体および逆洗流体として、ガス化ガスと消費ガスの少なくともいずれかのガスの一部が供給されるように制御を行う制御部を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化処理システムおよびこれを用いたガス化処理方法に関し、特に、再生可能エネルギーである有機系廃棄物やバイオマス等を原料としたガス化処理システムおよびこれを用いたガス化処理方法への適用に有用である。
【背景技術】
【0002】
バイオマス等を原料とするメタノール合成プロセスやガス燃焼プロセスあるいは発電プロセスなどにおいては、原料として木屑や下水汚泥など有機系廃棄物やバイオマス等を、一酸化炭素(CO)や水素(H)等にガス化する反応プロセスが利用される。このとき、原料に含まれるばいじんや硫黄分などの有害物質、あるいはガス化処理、合成反応や燃焼反応等において発生するばいじんや有害物質を処理し、効率的にエネルギーを回収し、清浄化された排ガスや廃棄物として排出できるように、従前よりガス化処理システムの構成について、種々の工夫や提案がなされてきた。
【0003】
具体的なガス化処理システムとして、例えば、図7に示すようなガス発電システムを挙げることができる(例えば特許文献1参照)。かかるガス発電システム100は、ガス化炉161は例えばバイオマス等のガス化物162をガス化させるものであり、得られた生成ガス163をその後流側に設けた改質装置164により改質し、CO、H成分リッチとするようにしている。脱S剤供給装置115として、脱S剤供給タンク115aと、ファン115bと例えば窒素ガス等の不活性ガスタンク115cとから構成されており、フィーダ115dにより、ガス供給管120に脱S剤を供給するようにしている。なお、不活性ガスを用いる代わりに、脱S剤の供給ガスとして、浄化ガス117を用いるようにしてもよい。ここで、110はガス浄化装置、111は高温ガス、112はガス冷却装置、113は冷却ガス、114は脱S剤、116は集塵装置、118は引送風機、119は発電設備である例えばガスエンジン(G/E)等を示す。
【0004】
このとき、こうしたガス化処理システムでは、各ラインのパージに用いられるパージ流体や集塵装置のダスト払い落とし用の逆洗に用いられる逆洗流体(以下「パージガス等」という)に空気を用いると、ガス化ガスの一部が燃焼しガス化ガスの発熱量が低下するために、一般的に不活性ガスである窒素や水蒸気が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−239905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなガス化処理システムでは、以下に挙げるような問題点や課題が生じることがあった。
(i)粉粒体等の固形物の供給ラインや、原料ガス中に水蒸気と接すると粉体状の消石灰など固形物となるような物質が含まれる場合には、パージガス等として水蒸気を使用できないという問題があった。
(ii)また、ガス化ガス中にはCO、H等の可燃性ガスが含まれることから、爆発や燃焼の危険性のない低温域でしか、低濃度酸素含有流体をパージガス等として使用できない。このように、パージガス等の組成あるいは使用条件が限定されるという問題点があった。
(iii)窒素をパージガス等として使用した場合、ガス化ガスへの窒素の混入によってガス化ガスの発熱量が低下するという課題があった。また、系外から窒素を導入するために、窒素を購入する場合は、ガス化処理システムのコスト増加に繋がることとなり、これに代えて、PSA式や膜式の窒素発生装置を使用した場合には、それらを駆動するための消費電力の増加に繋がるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、従来、ガス化処理システムにおいて、当該システムの系外から供給されパージガス等として用いられる窒素等の不活性ガスに代えて、系内において供給あるいは発生されるガスを活用し、安全性、操作性および安定性を確保しつつ、エネルギー効率の高いガス化処理システムおよびこれを用いたガス化処理方法を提供することを目的とする。特に、ガス化メタノール合成システム及び発電システムにおいて、ガス化ガス発熱量低下の抑制及び窒素の使用量を削減することができるガス化処理システムおよびこれを用いたガス化処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すガス化処理システムおよびこれを用いたガス化処理方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は、ガス化設備から供出されたガス化ガスが、該ガス化ガスを原料とする、合成反応設備,ガス化発電設備あるいは燃焼設備のいずれかまたはいずれかの組合せからなるガス利用設備に供給されるガス化処理システムにおいて、
該ガス化設備が、原料導入部、ガス化剤導入部およびガス供出部を有するガス化炉と、ガス供出部からのガスが、必要に応じて、除塵処理される集塵器、冷却処理される冷却器および精製処理される精製器のいずれかを有するガス処理部と、からなり、
該ガス化設備からガス利用設備へのガス化ガス供給流路から分岐され、制御弁V1を介して該ガス化ガスの一部がガス化設備に還流される還流路R1と、前記ガス利用設備から消費ガスが供出される流路から分岐され、制御弁V2を介して該消費ガスの一部がガス化設備に還流される還流路R2と、を有し、
該還流路R1,R2が選択的に前記ガス化設備と接続するように制御弁V1,V2を操作し、前記ガス化設備内の流路のパージ流体および前記集塵器の逆洗流体として、前記ガス化ガスと消費ガスの少なくともいずれかのガスの一部が供給されるように制御を行う制御部を有することを特徴とする。
【0010】
上記のように、ガス化処理システムにおいては、有機系原料中の塵埃や不純物あるいはガス化処理過程において発生するダストやタール分等による影響を未然に防止するためにパージガス等が必要となる一方、系外から不活性ガスを導入するとエネルギー効率が悪くなる。また、ガス化処理システムにおいて、処理過程において生成あるいは発生するガス成分のうち、従前そのまま排気されていたガス成分、熱エネルギーのみを回収して排気されていたガス成分あるいはいくらかの余剰量を有して後段の処理工程に給送されるガス成分については、いずれも所定の処理がされ、清浄なガス性状を有している。本発明者は、こうしたガス成分をパージガス等として利用する方法がないかを検証した結果、ガス化設備から供出された「ガス化ガス」あるいはガス利用設備から供出された「消費ガス」は、いずれも所定の条件下において、パージガス等として有効に利用できることの知見を得た。本発明は、こうした知見を基に、これらのガスを選択的に供給できるように制御することによって、従前の窒素等の不活性ガスに代えて、系内において供給あるいは発生されるガスを活用し、安全性、操作性および安定性を確保しつつ、エネルギー効率の高いガス化処理システムを提供することが可能となった。
【0011】
具体的には、「ガス化ガス」および「消費ガス」について、各ガス成分の特性を利用することができる。つまり、「ガス化ガス」は、ガス化処理の後段において清浄化処理がされることから、非常に清浄なガス成分となっている。ガス化ガスの一部をパージガス等としてガス化設備に供給することは、ガス化処理の循環系を形成することと同様のガス成分の特性の利用方法であることから、ガス化処理中においてもパージ処理あるいは逆洗処理(以下「パージ処理等」という)を行なうことが可能である。なお、ここでいう「ガス化ガス」には、除塵処理、冷却処理、精製処理のいずれかのガス処理を行った清浄なガス(以下「処理ガス」という)あるいはいずれのガス処理を行うことなくガス化炉から供出された清浄なガスを含むものとし、直接パージガス等として使用することが可能である。なお、ガス化ガスに可燃性のガス成分が多く含まれている場合であっても、可燃性ガスの濃度が爆発範囲外であること、支燃性ガスとの混合の可能性がないあるいはその濃度範囲が低いこと、爆発や燃焼の可能性のない低温域であること等の条件が確保できる場合には、低濃度の酸素を含有した流体の使用も可能である。
【0012】
また「消費ガス」とは、後述のように、ガス利用設備が合成反応設備やガス化発電設備あるいは燃焼設備からなる場合には、合成反応設備から供出される「オフガス」およびガス化発電設備あるいは燃焼設備から供出される「排ガス」を含み、各設備内で清浄化される。つまり、オフガスは、合成反応設備において処理され、水分が少なく清浄なガス成分であり、排ガスは、通常燃焼反応によって水分の多い反応性の低いガス成分を形成すると同時に、大気放出が可能なレベルまで中和等無害化処理が行なわれる。従って、こうした消費ガスの一部を、直接パージガス等として使用することが可能である。
【0013】
本発明は、上記ガス化処理システムであって、前記ガス利用設備が、前記ガス化ガスを原料とするメタノールやDMEなどを合成する合成反応設備と、該合成反応設備から供出されたオフガスまたは前記ガス化ガスを燃料とするガス化発電設備あるいは燃焼設備からなり、
前記消費ガスのうち前記オフガスの供出流路から分岐され、制御弁V2aを介して該オフガスの一部がガス化設備に還流される還流路R2aと、前記消費ガスのうち前記ガス化発電設備あるいは燃焼設備から供出された排ガスの供出流路から分岐され、制御弁V2bを介して該排ガスの一部がガス化設備に還流される還流路R2bを有し、
前記還流路R1に昇圧手段およびヘッダを設け、前記還流路R2aに減圧手段およびヘッダを設け、前記還流路R2bに昇圧手段およびヘッダを設けるとともに、前記制御部によって、前記ガス化ガス、前記オフガス、前記排ガス、の少なくともいずれかのガスの一部を、所定の圧力に調整されたパージ流体および逆洗流体として、選択的に供給できるように制御することを特徴とする。
【0014】
上記のように、本発明に係るガス化処理システムにおいては、ガス化ガス,オフガス、排ガスのいずれもの性状がパージガス等として使用可能である一方、各設備から供出された条件そのままでは、パージガス等として使用することができない。本発明は、ガス化設備の各部のパージ・逆洗の条件に適合するようにパージガス等の供給流路にヘッダを設けるとともに、特に各ガスの供出条件において相違する圧力条件を調整する機能を設け、ガス化処理システムに導入される原料の条件やシステムの立ち上げや稼動条件により最適のパージガス等を選択的に供給するように制御することによって、安全性、操作性および安定性を確保しつつ、エネルギー効率の高いガス化処理システムを構成することが可能となった。
【0015】
本発明は、上記ガス化処理システムであって、前記合成反応設備とガス化発電設備あるいは燃焼設備が直列的に配設された前記ガス利用設備を構成し、前記ガス化設備から合成反応設備への供給流路から分岐され、制御弁V3を介してガス化設備からのガス化ガスの一部がガス化発電設備あるいは燃焼設備に供給できる供給流路が設けられるとともに、制御弁V2a,還流路R2aを介して前記オフガスの一部が、制御弁V2b,還流路R2bを介して前記排ガスの一部が、選択的にガス化設備に還流されることを特徴とする。
【0016】
ガス化処理システムに用いられる発電設備あるいは燃焼設備(以下「発電設備等」という)においては、システム全体のエネルギー効率を上げるために、適正なカロリーの燃料供給が好ましい。例えば、バイオマスを原料としたガス化処理システムにおいては、ガス化設備からCOやHを主成分とする比較的カロリーの高いガス化ガスが供給され、これを原料とする合成反応設備からCO、H、COやNを主成分とする比較的カロリーの低いオフガスが供給される。本発明は、発電設備等に対し、合成反応設備からのオフガスの供給に加え、ガス化設備からのガス化ガスの一部を添加できる供給流路を設ける構成を有するもので、発電設備等に供給されるオフガスの供給量とガス化ガスの添加量を制御することによって、最適なカロリーの燃料として発電設備等に供給することができる。このとき、パージガス等として、ガス化ガス,オフガス、排ガスのいずれか最適のパージガス等を選択的に供給するように制御することによって、発電設備等のエネルギー効率の向上と合わせ、非常に高いエネルギー効率のガス化処理システムを構成することが可能となった。
【0017】
本発明は、上記ガス化処理システムであって、前記合成反応設備とガス化発電設備あるいは燃焼設備が並列的に配設された前記ガス利用設備を構成し、前記オフガスの供出流路から分岐され、制御弁V4を介して該オフガスの一部がガス化発電設備あるいは燃焼設備に供給される供給流路を有するとともに、制御弁V2a,還流路R2aを介して該オフガスの一部が、制御弁V2b,還流路R2bを介して前記排ガスの一部が、選択的にガス化設備に還流されることを特徴とする。
【0018】
こうした構成を備えたガス化処理システムには、ガス化ガスを利用した、燃料の供給源としての機能とエネルギーの供給源としての機能を有している。つまり、1のガス化設備から供出されたガス化ガスから、一方は合成反応設備によって燃料となるオフガスが供出され、他方は発電設備等によって燃焼エネルギーが電気エネルギーや熱エネルギー等に変換されて供出され、これらを同時並行的に供給できる機能を有する1つのシステムを形成し、パージガス等の供給機能を一元的に制御することを特徴とする。また、合成反応設備から供出されるオフガスの一部を発電設備等に供給し、最適なカロリーの燃料となるように、その供給量を制御可能な機能を構成することによって、エネルギー効率の高いガス化処理システムを構成することが可能となった。と同時に、パージガス等として、ガス化ガス,オフガス、排ガスのいずれか最適のパージガス等を選択的に供給するように制御することによって、発電設備等のエネルギー効率の向上と合わせ、非常に高いエネルギー効率のガス化処理システムを構成することが可能となった。
【0019】
また、本発明は、上記のいずれかのガス化処理システムを用いたガス化処理方法であって、ガス化設備において、供給されたガス化剤によってバイオマス等有機系原料のガス化処理を行うガス化プロセスと、ガス化処理されたガスに対して、必要に応じて、冷却処理、除塵処理、精製処理、の少なくともいずれかのガス処理を行うガス処理プロセスと、前記ガス化処理またはさらにガス処理されたガス化ガスを原料としてメタノールやDMEなどが合成される合成反応プロセス、または/および前記ガス化ガスまたは前記合成反応プロセスにおいて発生するオフガスを燃焼・利用させるガス利用プロセスと、を有するとともに、前記ガス化ガス、前記オフガスおよび前記利用プロセスにおいて発生する排ガスのいずれかのガスの一部を選択的に供給して、前記ガス化プロセスあるいはガス処理プロセスにおいて使用される流路および設備のパージ処理あるいは逆洗処理を行う清浄処理プロセスを有することを特徴とする。
【0020】
パージガス等として、ガス化ガス,オフガス、排ガスのいずれか最適のパージガス等を選択的に供給することによって、従前の窒素等の不活性ガスに代えて、系内において供給あるいは発生されるガスを活用し、安全性、操作性および安定性を確保しつつ、エネルギー効率の高いガス化処理システムを提供することが可能となった。
【0021】
本発明は、上記ガス化処理方法であって、前記ガス化ガスの一部が所定の圧力まで昇圧され、前記合成反応プロセスにおいて供出されたオフガスの一部が所定の圧力まで減圧され、あるいは前記ガス利用プロセスにおいて供出された排ガスの一部が所定の圧力まで昇圧され、その少なくともいずれかのガスが前記パージ処理あるいは逆洗処理のためのパージ流体あるいは逆洗流体として、選択的に供給できるように制御されることを特徴とする。
【0022】
ガス化設備の各部のパージ・逆洗の条件に適合するようにパージガス等の供出条件において相違する圧力条件を調整する機能を設け、最適のパージガス等を選択的に供給するように制御することによって、安全性、操作性および安定性を確保しつつ、エネルギー効率の高いガス化処理システムを構成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るガス化処理システムの基本構成を例示する全体構成図。
【図2】本発明に係るガス化設備の構成例を示す構成図。
【図3】本発明に係るガス化炉のパージ方法の具体例を示す構成図。
【図4】本発明に係るガス化処理システムの第2構成例を示す構成図。
【図5】本発明に係るガス化処理システムの第3構成例を示す構成図。
【図6】本発明に係るガス化処理システムの第4構成例を示す構成図。
【図7】従来技術に係るガス発電システムの概略を例示する全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るガス化処理システム(以下「本システム」という)は、ガス化設備とガス利用設備からなり、ガス化設備から供出されたガス化ガスがガス利用設備に供給される。このとき、ガス化設備内の流路のパージ流体および集塵器の逆洗流体として、ガス化ガスと消費ガスの少なくともいずれかのガスの一部が供給されるように制御を行う制御部を有することを特徴とする。以下、本発明の実施の形態について、主にバイオマス等を原料とする場合を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0025】
<本システムの基本構成例>
本システムの1つの実施態様として、基本構成例(第1構成例)の概略全体構成を図1に示す。第1構成例は、原料をガス化処理するガス化設備1と、該ガス化ガスを利用するガス利用設備2とから構成される。ガス化設備1では、原料導入部1aから原料が導入され、ガス化剤導入部1bから導入されたガス化剤と高温条件でガス化処理が行われると同時に、必要に応じて、除塵処理、冷却処理および精製処理が行われる。ガス化処理あるいはさらに除塵処理等が行われたガス化ガスは、ガス化ガス供給流路L1(以下「流路L1」という)を経由してガス利用設備2に供給され、合成反応による反応生成物の生成や燃焼反応によるエネルギーへの変換等に利用されて消費され、消費に伴い発生するオフガスあるいは排ガスが、供出流路L2(以下「流路L2」という)を経由して供出される。詳細は後述する。なお、清浄化されたガス化ガスの供出が必要な場合には、流路L1を分岐して系外に供出可能な流路(図示せず)を設けることできる。原料の特性によって組成の変動はあるが、比較的カロリーの高いガスとして系外で利用することによって、本システムにおける資源の有効利用を図ることができる。
【0026】
第1構成例では、さらに、流路L1から分岐され制御弁V1を介してガス化ガスの一部がガス化設備1に還流される還流路R1と、流路L2から分岐され制御弁V2を介して消費ガスの一部がガス化設備1に還流される還流路R2を有するとともに、ガス化ガスと消費ガスの少なくともいずれかのガスの一部がガス化設備1内のパージ流体および逆洗流体として供給できるように制御する制御部(図示せず)を有する。具体的には、該制御部によって、還流路R1,R2が選択的にガス化設備1と接続するように制御弁V1,V2を操作し、ガス化設備1内の流路のパージ流体および後述する集塵器の逆洗流体として、ガス化ガスと消費ガスの少なくともいずれかのガスの一部が供給されるように制御される。このとき、還流路R1に昇圧手段P1およびヘッダH1を設け、還流路R2に減圧手段P2およびヘッダH2を設け、ガス化ガスあるいは消費ガスの一部を所定の圧力に調整されたパージガス等として供給することが好ましい。各ガスの供出条件において相違する圧力条件を調整する機能を設け、ヘッダH1,H2においてパージ処理等を行う各部に対応した条件設定を行ない、最適の条件でパージガス等を供給できるようにするとともに、ガス化ガスと消費ガスを選択的に供給するように制御することによって、高いエネルギー効率,操作性および安定性を確保することができる。
【0027】
本システムに導入される有機系原料には、木屑や下水汚泥のような有機物を含む廃棄物(有機系廃棄物)やバイオマス燃料資材など(以下「廃棄物等」ということがある)を挙げることができる。バイオマス燃料資材とは、エネルギー源または工業原料として利用することのできる生物体をいい、例えば、農業生産物または副産物、木材、植物、更に食品廃棄物等、有機系物質を含む。
【0028】
〔ガス化設備〕
ガス化設備1では、原料導入部1aから上記原料が導入され、ガス化剤導入部1bから導入されたガス化剤と高温条件(後述する)でガス化処理が行われる。「ガス化剤」とは、有機系原料を高温条件下において酸化し、COやHなどの還元性物質に分解させる機能を有する物質をいい、具体的には空気や水蒸気等を用いることができる。
【0029】
また、ガス化設備1は、ガス化炉10と本システムに導入される原料の条件やシステムの立ち上げや稼動条件により、必要に応じて種々の処理手段から構成される。その1つの構成例として、原料をガス化炉10、集塵器11、タール分解器12、冷却器13、精製器14に順次導入してガス処理を行い、清浄化されたガス化ガスが形成される場合を、図2に示す。原料導入部1aから導入された原料とガス化剤導入部1bから導入されたガス化剤が、ガス化炉10に供給される。本例では、精製処理として、タール分解器12による高温条件下でのタール分解処理と精製器14による低温条件下での精製処理を行う場合を挙げ、さらに原料が、予め乾燥器15を介して乾燥処理された後ガス化炉10に供給される場合を挙げる。これによってガス化炉10内でのガス化処理効率およびエネルギー効率の向上を図ることができる。ただし、本システムは、こうした処理手段の有無、数量、種類、配列について制限するものではなく、「必要に応じて」任意に構成することができることを特徴とする。
【0030】
ガス化炉10では、原料の有機成分が高温条件(500〜1000℃)で分解され、COやHを主成分とするガス成分が生成し、ガス供出部10aから供出される。また、ガス化炉10としては、流動床式、固定床式、キルン炉、回転炉など種々のタイプの炉を使用することができ、特に限定されるものではない。ガス化処理は、ガス化剤導入部1bから導入された空気等のガス化剤によって有機系原料の一部を燃焼してその熱でガス化する部分酸化燃焼方式であって、循環流動層式を用いることが好ましい。流動層(図示せず)出口に設けられたサイクロン等の気固分離手段(図示せず)あるいは集塵器11を介して、流動媒体が循環するため混合攪拌性に優れ、ガス化で発生しやすい局所的高温場を形成せずに炉内温度を均一にすることができる。特に乾燥した汚泥のガス化に最適であり、大型化も可能である。ガス化剤としては、含酸素ガスとして空気を用いることが好ましい。特別な酸素供給設備等を必要とせず、操作性にも優れている。
【0031】
ガス供出部10aからの高温のガス成分(処理ガス)は、まず集塵器11に導入され、処理ガス中に含まれる灰分等(ダスト)の除塵処理が行われる。除塵処理によって、後述するタール分解器12の触媒表面へのダストの付着による性能劣化を防止し、冷却器13の伝熱面へのダストの付着による冷却機能の低下を抑制し、流路内表面へのダストの付着を抑制し、ダストへの高温条件下で気化した有害物質(ダイオキシン等の有機化合物)の含有を抑制する等の技術的効果を得ることができる。特に、セラミックフィルタを用いた高温除塵処理によって高い除塵効率を得ることができる。
捕集されたダストは随時排出され、除塵された処理ガスは、次にタール分解器12に導入され、ガス処理により発生したタール分が分解あるいは除去処理される。低温部分で凝縮・析出し、流路の閉塞等を引き起こすため、高温条件下で分解・除去されことが好ましい。具体的には、ガス温度を1000℃以上にする方法もあるが、エネルギー損失やダストの軟化を防止する観点から、1000℃以下でタール分解処理を行うことが好ましい。
タール分が除去された処理ガスは、ガスの冷却およびエネルギーの有効利用のために冷却器13に導入され、冷却処理される。ここで、冷却器13に導入された熱媒体によって熱交換された熱エネルギーは、ガス化炉10や原料あるいはガス化剤の加熱処理等本システムの系内外の熱源として用いられる。
冷却処理されたガス成分(処理ガス)は、次に精製器14に導入され、低温条件下で精製処理される。精製器14では、残留した微量のタール分や有害物質(硫黄化合物や窒素酸化物等)が分解・除去処理され、ガス化ガス供出部1cから供給流路L1に供出される。
【0032】
また、図2はガス化設備1におけるパージガス等の供給流路の構成を例示する。還流路R1から給送されたパージガス等が、ヘッドH1に導入され、ヘッドH1においてガス化炉10〜精製器14の各部(乾燥器15を含め、これらを総称して「ガス処理部」という)のパージ・逆洗条件に合致した条件(圧力・流量等)に設定された後、ガス処理部の各部に供給される。具体的には、フィルタ式の集塵器11の場合には、比較的高圧のガスがフィルタを逆洗処理するように設定され、他の各部については、比較的低圧のガスが原料や処理ガスが流通する流路を逆流しパージ処理するように設定される。ガス化炉およびガス処理部の各部における最適条件を設定し、パージガス等を選択的に供給するように制御することによって、高い操作性,安定性およびエネルギー効率を確保することができる。
【0033】
〔ガス利用設備〕
ガス利用設備2は、合成反応設備,ガス化発電設備あるいは燃焼設備のいずれかまたはいずれかの組合せからなり、ガス化ガスを利用し、ガス化ガスの主成分であるCOやHを利用して、メタノール合成や発電あるいは熱エネルギーへの変換を図っている。第1構成例においては、ガス利用設備2が、これらの設備を単体として用いた場合、あるいは複数の設備の組合せであるが、ガス化ガスを受入れて消費ガスとして供出する場合であって本願の課題に対して1つの系として機能する場合を示している。複数の設備の組合せであり、それぞれの固有の機能を利用する実施態様については、後述する。
【0034】
(i)合成反応設備
ガス化ガス中のCOやHを原料ガスとして、メタノールやDMEなどを合成する。主としてガス導入部、触媒充填層、冷却分離部、反応生成物供出部およびオフガス供出部で構成される(図示せず)。触媒充填層には合成反応用触媒(例えば銅−亜鉛系の固形メタノール合成触媒等)が充填され、触媒充填層に導入された原料ガスは、反応して反応生成物を含む反応ガスとなり、反応生成物の一部は冷却分離部で凝縮する。冷却分離部において凝縮した反応生成物は、反応生成物供出部から抜き出され、反応ガスは、未反応の原料成分が含まれるオフガスとしてオフガス供出部から供出される。
【0035】
例えば、メタノール合成反応は、以下の反応式からなることが知られ、これらは、いずれも発熱反応である。
CO+2H→CHOH+ΔH ・・式1
CO+3H→CHOH+HO+ΔH ・・式2
CO+HO→H+CO+ΔH ・・式3
一般に、メタノール合成反応は、上式1の反応が支配的であり、式1のΔH(反応熱)は標準状態で−90.8kJmol−1であり、大きな発熱反応である。メタノール合成反応は、熱力学的制約から転化率が低く、そのため化学平衡的に有利な高圧力下(8〜12MPa)での反応が一般的である。また、未反応の原料ガスを循環させてメタノールを合成させることも好適である。反応ガスは、未反応の原料成分が含まれる「CO+2H+CO+HO」を主成分とするオフガスとしてオフガス供出部から供出される。
【0036】
(ii)ガス化発電設備
ガス化ガスや上記オフガスを燃料とするガス化発電設備としては、例えば、マイクロガスタービン、ガスエンジン等が例示される。マイクロガスタービンは、例えば、吸入空気を圧縮して加圧空気を生成する圧縮機と、加圧空気を用いて燃料を完全燃焼させる燃焼器と、この燃焼によって生成された高温・高圧のガスを用いてタービン羽根を回転させるタービン部と、このタービン部と連結された永久磁石型発電機と、を有して構成されている(図示せず)。また、マイクロガスタービンは、タービン部出口の排ガスを用いて、前記加圧空気(燃焼用圧縮空気)を昇温させる再生熱交換器(レキュペレータ。例えば、ヒートパイプ式熱交換器)をさらに備えていてもよい(図示せず)。また、マイクロガスタービンは、燃料を圧縮する圧縮装置をさらに備えていてもよい(図示せず)。ガス化発電設備に導入されたガス化ガスやオフガスは、空気等の助燃ガスと燃焼反応して「CO+N+O」を主成分とする排ガスが排出される。
【0037】
(iii)燃焼設備
ガス化ガスやオフガスを燃料とする本システムにおける燃焼設備は、発電設備の一部としての機能ではなく、内燃機関のような動力源あるいは乾燥装置や熱処理装置等への熱エネルギーの供給源として機能する燃焼設備をいい、バーナーを備えた燃焼炉や燃焼室に、上記ガス化発電設備同様ガス化ガスあるいはオフガスが燃料として供給され、場合によっては、上記合成反応設備から未精製の生成アルコールが燃料の一部として供給される(図示せず)。燃焼設備において空気等の助燃ガスと燃焼反応して「CO+N+O」を主成分とする排ガスが排出される。
【0038】
〔パージガス等〕
本システムにおいては、上記のようにガス化ガス,オフガスあるいは排ガスをパージガス等として使用することを特徴とする。ガス化ガス発熱量低下の抑制及び窒素の使用量を削減することができる。なお、ガス化ガスやオフガスのように可燃性のガス成分が多く含まれている場合であっても、可燃性ガスの濃度が爆発範囲外であること、支燃性ガスとの混合の可能性がないあるいはその濃度範囲が低いこと、爆発や燃焼の可能性のない低温域であること等の条件が確保できる場合には、低濃度の酸素を含有した流体の使用も可能である。
【0039】
(i)ガス化ガス
ガス化ガスは、木屑や下水汚泥など有機系廃棄物やバイオマス等を原料とする場合においても、必要に応じて、除塵処理、冷却処理あるいは精製処理が行われ、可燃性のガス成分が多く含まれる一方、非常に清浄なガス成分となっている。ガス化設備1を構成するガス化炉10およびガス処理部において、こうした可燃性ガス成分が反応や爆発等危険な状態を形成しない条件(流通流路の温度あるいは可燃性ガスの種類や濃度)で使用可能な場合ガス化ガスによる、ガス化設備1のパージや逆洗が可能となる。また、特定のプラスチックス等を有機性原料とする場合には、ガス化炉からは酸性ガスやタール分の含有量の少ないガス成分を得ることができる。従って、こうしたガスは、直接パージガス等として使用することが可能であるとともに、後段でのガス処理の負担を軽減することが可能となる。同様の考え方は、原料がこれと異なる場合やパージ等の内容が異なる場合にも適用することができる。例えば、単純に流路にパージガスを流通させる場合には冷却処理によって除湿されたガス成分を使用することによってドライパージが可能となる。逆に、パージガスに水分を添加して付着物を洗い流しながらパージすることも可能である。
【0040】
ガス化設備において、特定の有機性原料を用いた場合には、除塵処理、冷却処理、精製処理のいずれかあるいはいずれのガス処理を行うことなく、清浄なガス成分のガス化ガスとすることができる。つまり、除塵処理、冷却処理、精製処理の複数段のガス処理工程の中間段の処理ガスであっても、パージガス等として十分に使用可能な特性を得ることができる場合がある。従って、全てのガス処理工程を完了させるまでの後段でのガス処理を行うことなく、中間段の処理ガスの一部を、直接パージガス等として使用することが可能である。こうした処理ガスも、「ガス化ガス」と同等の特性を有することから、本願においては当該ガスも「ガス化ガス」といい、ガス利用設備2に供給することが可能となる。
【0041】
(ii)オフガス
消費ガスの1つであるオフガスは、合成反応設備が、例えばメタノール合成反応に係る設備の場合には、上式1〜3に示す反応によって発生するガス成分と、未反応の原料成分の集合体であり、主成分として「CO+H+CO+HO」が含まれる。このとき、清浄化されたガス化ガスを原料とすることから、オフガス自体も清浄化されている一方、COやHという可燃性ガスが数%〜10数%含まれることから、上記ガス化ガス同様、爆発等のおそれがないことに留意をした上で、ガス化設備1のパージや逆洗用のパージガス等としての利用が可能となる。
【0042】
(iii)排ガス
消費ガスの1つである排ガスは、ガス化発電設備あるいは燃焼設備のいずれから供出されたガス成分であっても、「CO+N+O」を主成分とする安全性の高い、不活性な安定したガスであることから、パージガス等に使用することができる。また、通常こうした排ガスは、ダストの除去処理や除害処理が行われ、清浄な状態で大気放出されることが多いことから、パージガス等に適しているといえる。
【0043】
〔パージ処理の具体的な実施態様〕
図3(A)〜(C)に、パージ処理の具体的な実施態様を、ガス化炉10におけるパージ処理により例示する。かかるパージ処理は、ガス化設備1内のガス処理部の各部にも適用できることはいうまでもない。
(i)原料供給流路のパージ
図3(A)は、原料や添加剤等の粉粒体が、供給装置1dからガス化炉10に供給される供給流路10bを主に、パージ処理を行う場合を例示する。ガス化処理されたガス成分が流れ込み、供給流路10bにおいて冷えて水分が凝縮し、そこに粉粒体が固着することによって粉粒体供給ラインが閉塞するトラブルが起こりやすい。そのため、乾燥したガスによってパージ処理することによって、こうしたトラブルを防止することができる。除湿されたガス化ガスやドライな性状のオフガスをパージガス等に使用することが好ましい。
【0044】
(ii)二流体噴霧ノズルによる冷却部内部流路のパージ
図3(B)は、ガス化炉10から供出されたガス成分を冷却する冷却部13内部の流路13aのパージ処理を行う場合を例示する。二流体噴霧ノズル13bを使用し、流路13aの中心で噴霧穴13cからガス冷却水(冷却水とパージガスの混合物)を噴霧することによって、流路13a内に均一に噴霧することができる。パージ用のガスとしては、ガス化発電設備や燃料設備からの排ガスを使用することが可能であり、非水溶性成分であるCOやHを主成分とするガス化ガスやオフガスを使用することが好ましい。
【0045】
(iii)設備立上げ時のみに使用する流体噴霧用ノズルのパージ
図3(C)は、設備を立上げる時にだけ使用する流体(立上げ用燃料。例えば、重油や都市ガス等)を噴霧するノズル10cは、流体噴霧を停止すると、ガス化炉10内に残留する砂や灰などによって、ノズル10cの噴霧穴10dが詰まることがある。そのため、立上げ用流体の噴霧を停止した後、ノズル10cに接続された供給流路L10aに設けられた切換弁V10aによりパージガスの導入ライン10eに切換えて、ノズル10cをパージすることで、噴霧穴10dの閉塞を防止することができる。
【0046】
<本システムの第2構成例>
本システムの別の実施態様として、図4に第2構成例の概略全体構成を示す。第1構成例において例示した1つの系として機能するガス利用設備2を構成する場合に代え、合成反応設備2aとガス化発電設備あるいは燃焼設備2b(以下「発電設備等2b」という)が直列的に配設された構成を有し、ガス化設備1からのガス化ガスの一部,合成反応設備2aからのオフガスの一部,発電設備等2bからの排ガスの一部が選択的にガス化設備1に還流されることを特徴とする。
【0047】
具体的には、ガス化設備1からのガス化ガスが流路L1を経由して合成反応設備2aに供給され、合成反応による反応生成物の生成に利用される。これに伴い発生するオフガスが、合成反応設備2aから発電設備等2bへの供給流路として設けられた流路L2aを経由して発電設備等2bに供給され、燃焼反応によるエネルギーへの変換等に利用されて消費される。これに伴い発生する排ガスが、発電設備等2bからの排出流路として設けられた流路L2bを経由して供出される。ガス化ガスの一部は、制御弁V1,還流路R1を介し、オフガスの一部は、流路L2aから分岐された還流路R2a,該還流路R2aに設けられた制御弁V2aを介し、排ガスの一部は、流路L2bから分岐された還流路R2b,該還流路R2bに設けられた制御弁V2bを介して、選択的にガス化設備に還流される。
【0048】
<本システムの第3構成例>
本システムの第3構成例として、図5に、その概略全体構成を示す。上記第2構成例と同様、合成反応設備2aと発電設備等が直列的に配設された構成を有し、さらに流路L1から分岐され、制御弁V3を介してガス化設備1からのガス化ガスの一部が発電設備等に供給できる供給流路L3(以下「流路L3」という)が設けられるとともに、ガス化設備1からのガス化ガスの一部,合成反応設備2aからのオフガスの一部,発電設備等2bからの排ガスの一部が、パージガス等として選択的にガス化設備1に還流される。ガス化設備1から順次合成反応設備2aと発電設備等が直列的に配設された構成を有するとともに、1つのガス化設備1から流路L1とL3を介して合成反応設備2aと発電設備等2bが並列的に配設された構成をも形成していることを特徴とする。オフガスは本システム内において消費され、排ガスの一部のみが系外に排出されることから、投入される物質(塵埃等不用物質を除く)と供出あるいは排出される物質のバランスにおいて、非常に効率性の高いシステムを形成することができる。
【0049】
発電設備等2bに対し、合成反応設備2aからのオフガスの供給に加え、流路L3を解してガス化設備1からのガス化ガスの一部を添加できる構成を有することによって、オフガスの供給量に制限されることなく、発電設備等2bにおける発電機能やエネルギー供給機能の能力範囲を拡大することができる。具体的には、発電設備等2bに供給されるオフガスの供給量とガス化ガスの添加量を制御することによって、最適なカロリーの燃料を発電設備等2bに供給することができる。つまり、発電設備等2bにおいては、システム全体のエネルギー効率を上げるために、適正なカロリーの燃料供給が好ましい。例えば、バイオマスを原料としたガス化処理システムにおいては、ガス化設備1からCOやHを主成分とする比較的カロリーの高いガス化ガスが供給され、これを原料とする合成反応設備2aからCO、H、COやNを主成分とする比較的カロリーの低い燃料が供給される。オフガスの供給量とガス化ガスの添加量を制御することによって、最適なカロリーの燃料を発電設備等2bに供給することができる。
【0050】
また、こうした構成において、制御弁V1,還流路R1を介してガス化ガスの一部が、制御弁V2a,還流路R2aを介してオフガスの一部が、制御弁V2b,還流路R2bを介して排ガスの一部が、選択的にガス化設備1に還流される。つまり、最適のパージガス等を選択的に供給するように制御することによって、発電設備等2bのエネルギー効率の向上と合わせ、非常に高いエネルギー効率を確保することが可能となった。
【0051】
<本システムの第4構成例>
本システムの1つの実施態様として、第4構成例の概略全体構成を、図6に示す。合成反応設備2aと発電設備等2bが並列的に配設された構成を有し、さらにオフガスの供出流路L2aから分岐され、制御弁V4を介して該オフガスの一部が発電設備等2bに供給される供給流路L4(以下「流路L4」という)を有するとともに、ガス化設備1からのガス化ガスの一部,合成反応設備2aからのオフガスの一部,発電設備等2bからの排ガスの一部が、パージガス等として選択的にガス化設備1に還流される。つまり、1つのガス化設備1から流路L1を介して合成反応設備2aと発電設備等が並列的に配設された構成であるとともに、ガス化設備1から流路L1,合成反応設備2a,流路L4,発電設備等を介して直列的に配設された構成をも形成するという特徴を有するとともに、パージガス等の供給機能を一元的に制御することを特徴とする。排ガスの一部が系外に排出されると同時に、オフガスの供出が可能であることから、比較的カロリーの低いガスとして系外で利用することができる。高い効率性を確保しつつ、系外を含むエネルギーの効率的な利用が可能なシステムを形成することができる。
【0052】
具体的には、1つのガス化設備1からのガス化ガスを利用し、同時並行的に燃料としてのオフガスの供給源としての機能と電気あるいは熱エネルギーの供給源としての機能を有する1つのシステムを形成すると同時に、合成反応設備2aから供出されるオフガスの一部を発電設備等2bに供給し、発電設備等2bのエネルギー効率にとって最適なカロリーの燃料となるように、その供給量を制御することによって、高いエネルギー効率を確保することが可能となった。また、こうした構成において、制御弁V1,還流路R1を介してガス化ガスの一部が、制御弁V2a,還流路R2aを介してオフガスの一部が、制御弁V2b,還流路R2bを介して前記排ガスの一部が、選択的にガス化設備1に還流され、パージガス等として、ガス化ガス,オフガス、排ガスのいずれか最適のパージガス等を選択的に供給するように制御することによって、上記発電設備等のエネルギー効率の向上と合わせ、システム全体として非常に高いエネルギー効率を有するガス化処理システムを構成することが可能となった。
【0053】
<本システムを用いたガス化処理方法>
次に、本システムを用いたガス化処理方法(以下「本処理方法」という)について、詳述する。本処理方法は、(1)ガス化設備において、供給されたガス化剤によってバイオマス等有機系原料のガス化処理を行うガス化プロセスと、(2)ガス化処理されたガスに対して、必要に応じて、冷却処理、除塵処理、精製処理、の少なくともいずれかのガス処理を行うガス処理プロセスと、(3)前記ガス化処理またはさらにガス処理されたガス化ガスを原料として、メタノールやDMEなどが合成される合成反応プロセス、(4)または/および前記ガス化ガスまたは前記合成反応プロセスにおいて発生するオフガスを燃焼・消費させるガス利用プロセスと、を有するとともに、(5)前記ガス化ガス、前記オフガスおよび前記利用プロセスにおいて発生する排ガスのいずれかのガスの一部を選択的に供給して、前記ガス化プロセスあるいはガス処理プロセスにおいて使用される流路および設備のパージ処理あるいは逆洗処理を行う清浄処理プロセスを有することを特徴とする。
具体的には、第2構成例に係る構成に基づいて、バイオマス等有機系原料をガス化処理し、ガス化ガスを合成反応させて反応生成物をメタノールとして回収し、合成反応に伴い発生したオフガスを燃焼反応させてエネルギーへの変換等に利用されて消費されるとともに、こうしたプロセスと関連し、従前の窒素等の不活性ガスに代えて、パージガス等として、ガス化ガス,オフガス、排ガスのいずれか最適のパージガス等を選択的に供給するガス化処理プロセスについて説明する。こうした処理方法は、上記第1,3,4構成例、およびこれらを応用した他の構成例においても同様に適用することが可能である。
【0054】
(1)ガス化処理プロセス
(1−1)原料の導入
バイオマス等有機系原料を、ガス化設備1に導入する。具体的には、原料導入部1aからガス化炉10に導入する。このとき、ガス化処理の効率向上のため、有機系原料を予め乾燥器15に導入し、加熱された乾燥空気等によって乾燥させておくことが好ましい。例えばガス化設備やガス化発電設備において熱交換された蒸気を用い、各設備の廃熱を有効に利用できる蒸気式間接加熱式の乾燥機等を用いることができる。また、加熱され乾燥された有機系原料のガス化炉10への供給は、炉内の温度を安定させることができる。ガス化剤導入部1bから導入するガス化剤についても同様に予め乾燥させておくことが好ましく、加熱しておくことが好ましい。本処理方法においては、さらに、上記図3(A)に例示したような乾燥したパージガス等による原料供給流路のパージ処理を行うことを特徴とする。
【0055】
(1−2)ガス化処理
有機系原料およびガス化剤が所定量導入され、高温条件下のガス化炉10内において、以下の反応式4〜7等によりHおよびCOを主成分とするガス成分を作製する。
CmHn+m/2O→mCO+n/2H ・・式4
CmHn+mO→mCO+n/2H ・・式5
CmHn+(m+x)/2O→mCO+(n/2−x)H+xHO ・・式6
CmHnOy+(m−y)/2O→mCO+n/2H ・・式7
ガス化手段としては、循環流動層式を用い、有機系原料の一部を燃焼してその熱でガス化する部分酸化燃焼方式を採る。このとき、必要に応じて不活性な排ガスやこれが混合されたパージガス等を用い、ガス化処理を行いながら炉内のパージを行うことができるとともに、上記図3(C)に例示したような設備立上げ時のみに使用する立ち上げ用流体を用いて、流体噴霧用ノズル10cのパージを行うことも可能である。
【0056】
(2)ガス処理プロセス
ガス化処理されたガス成分に対して、必要に応じて、除塵処理、冷却処理、精製処理の少なくともいずれかを行い、ガス化ガスを作製する。
(2−1)除塵処理
バイオマス等有機系原料に含まれるダストやガス化処理に伴い発生する粉塵や微粒子は、後段の処理において大きな妨害成分となることから、フィルタや篩あるいはサイクロン等によって除塵処理され、定期的あるいは随時、集塵器11に捕集されたダスト等を逆洗することが必要となる。本処理方法においては、本システムの系内において発生したガスを逆洗用ガスとして用いることから、ガス化処理を行いながら、除塵処理を行うことができるという特徴を有する。
(2−2)冷却処理
除塵処理や高温でのタール分解処理等のガス化処理された処理ガスは、冷却器13によって冷却され、精製器14において低温条件下で精製処理される。精製器14での処理能力の向上を図ることができ、耐熱材料の選択やコスト増等の影響を減らす観点からも、処理ガスの低温化を行うことが好ましい。通常図2に例示するように、水等の熱媒体が冷却器13に導入され、熱交換された熱エネルギーは、ガス化炉10や原料あるいはガス化剤の加熱処理等本システムの系内外の熱源として用いられる。このとき、本処理方法においては、ガス成分の冷却に伴い冷却部13内部に付着する高沸点物や粉塵等を、上記図3(B)に例示したような方法によって流路13aのパージ処理を行うことを特徴とする。
(2−3)精製処理
上記のように、精製処理は、高温条件下におけるタール分解処理と低温条件下における精製処理を施すことが好ましい。つまり、ガス処理により発生したタール分が高温条件下で処理され、有害物質(硫黄化合物や窒素酸化物等)が低温条件下で分解・除去処理されることによって、こうした物質の高い除去効率を確保し、高度に精製されたガス化ガスを得ることができる。具体的には、処理ガス中のタール成分は、例えばタール分解器12内部に充填されたタール分解触媒によって分解される。タール分解触媒としては、金属系触媒、特にニッケル系の金属触媒が好ましい。また、有害物質は、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物等による除害処理が好ましい。このとき、本処理方法においては、前段での処理においても残留する低沸点物や微量成分等のパージ処理を、本システムの系内において発生したガスをパージガスとして用いることから、精製処理等のガス化処理中であっても、パージ処理を行うことができるという特徴を有する。
【0057】
(3)合成反応プロセス
およびCOあるいはCOを主成分とするガス化ガスが、流路L1を介して合成反応設備2aに導入される。触媒充填層に導入されたガス化ガスは、例えば、メタノール合成反応においては、既述の反応式1〜3により反応し、メタノールを含む反応ガスとなる。反応ガスは、冷却部(図示せず)によって冷却され、反応ガス中のメタノールが冷却部において凝縮し、回収される。冷却部において凝縮したメタノール成分を分離した反応ガスは、オフガスとして流路L2に供出される。供出されたオフガスは、発電あるいは燃料利用するするガス化および再度メタノール製造システムに用いることができる。と同時に、本処理方法におけるオフガスは、「CO+H+CO+HO」を主成分とし、オフガス自体も清浄化されていることから、ガス化設備1のパージや逆洗用のパージガス等としての利用が可能となる。また、COやHという可燃性ガスが数%〜10数%含まれるが、合成反応温度も低いことから爆発等のおそれはない。
【0058】
(4)ガス利用プロセス
流路L2aを介して、「H,CO,CO,HO」を主成分とするオフガスが発電設備等2bに導入される。ガス化発電処理においては電気エネルギーに変換され、燃焼処理においては熱エネルギーに変換される。本処理方法においては、いずれの場合にも、燃焼反応により「CO+N+O」を主成分とし、除塵処理や除害処理が行われ、清浄な状態の排ガスが排出されることから、こうした排ガスはパージガス等に適しているといえる。
【0059】
(5)清浄処理プロセス
本処理方法においては、清浄化用ガスとして本システムの系内において生成したガスを用いることを特徴とする。ガス化処理プロセスにおいて発生するガス化ガス、合成反応プロセスにおいて発生するオフガスおよびガス利用プロセスにおいて発生する排ガスのいずれかのガスの一部を選択的に供給して、ガス化プロセスあるいはガス処理プロセスにおいて使用される流路および設備のパージ処理あるいは逆洗処理を行う。従前の窒素等の不活性ガスに代えて、ガス化ガスの一部が所定の圧力まで昇圧され、合成反応プロセスにおいて供出されたオフガスの一部が所定の圧力まで減圧され、あるいはガス利用プロセスにおいて供出された排ガスの一部が所定の圧力まで昇圧され、最適な条件でパージガス等として、選択的に供給できるように制御されることによって、系内において供給あるいは発生されるガスを活用し、安全性、操作性および安定性を確保しつつ、エネルギー効率の高いガス化処理方法が可能となった。具体的には、ガス化ガス発熱量低下の抑制及び窒素の使用量を削減することができる。なお、ガス化ガスやオフガスのように可燃性のガス成分が多く含まれている場合であっても、可燃性ガスの濃度が爆発範囲外であること、支燃性ガスとの混合の可能性がないあるいはその濃度範囲が低いこと、爆発や燃焼の可能性のない低温域であること等の条件が確保できる場合には、低濃度の酸素を含有した流体の使用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明の実施態様を、バイオマス等を原料とするメタノール合成プロセスを挙げて説明したが、本発明を適用することが可能な対象物はこれらに限定されるものではなく、例えばDME合成プラント、LPG合成プラントなどに用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ガス化設備
1a 原料導入部
1b ガス化剤導入部
1c ガス化ガス供出部
2 ガス利用設備
2a 合成反応設備
2b ガス化発電設備あるいは燃焼設備(発電設備等)
10 ガス化炉
10a ガス供出部
11 集塵器
12 タール分解器
13 冷却器
14 精製器
15 乾燥器
H1,H2 ヘッダ
L1,L2,L2a,L2b,L3,L4 流路
P1 昇圧手段
P2 減圧手段
R1,R2,R2a,R2b,R3 還流路
V1,V2,V2a,V2b,V3,V4 制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化設備から供出されたガス化ガスが、該ガス化ガスを原料とする、合成反応設備,ガス化発電設備あるいは燃焼設備のいずれかまたはいずれかの組合せからなるガス利用設備に供給されるガス化処理システムにおいて、
該ガス化設備が、原料導入部、ガス化剤導入部およびガス供出部を有するガス化炉と、ガス供出部からのガスが、必要に応じて、除塵処理される集塵器、冷却処理される冷却器および精製処理される精製器のいずれかを有するガス処理部と、からなり、
該ガス化設備からガス利用設備へのガス化ガス供給流路から分岐され、制御弁V1を介して該ガス化ガスの一部がガス化設備に還流される還流路R1と、前記ガス利用設備から消費ガスが供出される流路から分岐され、制御弁V2を介して該消費ガスの一部がガス化設備に還流される還流路R2と、を有し、
該還流路R1,R2が選択的に前記ガス化設備と接続するように制御弁V1,V2を操作し、前記ガス化設備内の流路のパージ流体および前記集塵器の逆洗流体として、前記ガス化ガスと消費ガスの少なくともいずれかのガスの一部が供給されるように制御を行う制御部を有することを特徴とするガス化処理システム。
【請求項2】
前記ガス利用設備が、前記ガス化ガスを原料とするメタノールやDMEなどを合成する合成反応設備と、該合成反応設備から供出されたオフガスまたは前記ガス化ガスを燃料とするガス化発電設備あるいは燃焼設備からなり、
前記消費ガスのうち前記オフガスの供出流路から分岐され、制御弁V2aを介して該オフガスの一部がガス化設備に還流される還流路R2aと、前記消費ガスのうち前記ガス化発電設備あるいは燃焼設備から供出された排ガスの供出流路から分岐され、制御弁V2bを介して該排ガスの一部がガス化設備に還流される還流路R2bを有し、
前記還流路R1に昇圧手段およびヘッダを設け、前記還流路R2aに減圧手段およびヘッダを設け、前記還流路R2bに昇圧手段およびヘッダを設けるとともに、前記制御部によって、前記ガス化ガス、前記オフガス、前記排ガス、の少なくともいずれかのガスの一部を、所定の圧力に調整されたパージ流体および逆洗流体として、選択的に供給できるように制御することを特徴とする請求項1記載のガス化処理システム。
【請求項3】
前記合成反応設備とガス化発電設備あるいは燃焼設備が直列的に配設された前記ガス利用設備を構成し、前記ガス化設備から合成反応設備への供給流路から分岐され、制御弁V3を介してガス化設備からのガス化ガスの一部がガス化発電設備あるいは燃焼設備に供給できる供給流路が設けられるとともに、制御弁V2a,還流路R2aを介して前記オフガスの一部が、制御弁V2b,還流路R2bを介して前記排ガスの一部が、選択的にガス化設備に還流されることを特徴とする請求項2記載のガス化処理システム。
【請求項4】
前記合成反応設備とガス化発電設備あるいは燃焼設備が並列的に配設された前記ガス利用設備を構成し、前記オフガスの供出流路から分岐され、制御弁V4を介して該オフガスの一部がガス化発電設備あるいは燃焼設備に供給される供給流路を有するとともに、制御弁V2a,還流路R2aを介して該オフガスの一部が、制御弁V2b,還流路R2bを介して前記排ガスの一部が、選択的にガス化設備に還流されることを特徴とする請求項2記載のガス化処理システム。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかのガス化処理システムを用いたガス化処理方法であって、ガス化設備において、供給されたガス化剤によってバイオマス等有機系原料のガス化処理を行うガス化プロセスと、ガス化処理されたガスに対して、必要に応じて、冷却処理、除塵処理、精製処理、の少なくともいずれかのガス処理を行うガス処理プロセスと、前記ガス化処理またはさらにガス処理されたガス化ガスを原料としてメタノールやDMEなどが合成される合成反応プロセス、または/および前記ガス化ガスまたは前記合成反応プロセスにおいて発生するオフガスを燃焼・利用させるガス利用プロセスと、を有するとともに、前記ガス化ガス、前記オフガスおよび前記利用プロセスにおいて発生する排ガスのいずれかのガスの一部を選択的に供給して、前記ガス化プロセスあるいはガス処理プロセスにおいて使用される流路および設備のパージ処理あるいは逆洗処理を行う清浄処理プロセスを有することを特徴とするガス化処理方法。
【請求項6】
前記ガス化ガスの一部が所定の圧力まで昇圧され、前記合成反応プロセスにおいて供出されたオフガスの一部が所定の圧力まで減圧され、あるいは前記ガス利用プロセスにおいて供出された排ガスの一部が所定の圧力まで昇圧され、その少なくともいずれかのガスが前記パージ処理あるいは逆洗処理のためのパージ流体あるいは逆洗流体として、選択的に供給できるように制御されることを特徴とする請求項5記載のガス化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−246525(P2011−246525A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118521(P2010−118521)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】