説明

ガス化炉の増処理方法

【課題】設備を在来のまま及び燃焼用空気の供給量も在来のままにして酸素を富化することでガス化溶融炉の設備変更や人件費・電力費等の増大を招くことなくガス化炉における産業廃棄物の処理量を増やすことができるガス化炉の増処理方法を提供する。
【解決手段】制御対象のガス化炉4は、酸素混合空気によって流動する流動床4a上に投入されたシュレッダーダスト(原料)を530℃程度の温度雰囲気中で熱分解させて不燃物7及び金属を排出すると共に発生した不燃性ガスを後段の溶融炉へ排出する。流動用及び燃焼用空気の供給口45に供給する空気は、ブロア50による大気中の空気と別途配管51から供給される酸素との混合空気であり、その混合空気の酸素濃度を大気中の酸素濃度20.9%よりも高い21.0〜22.5%に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化溶融炉におけるガス化炉の増処理方法に関し、特に、既存の設備状態を大幅に変更することなくガス化炉に供給される空気を酸素富化になるように制御して産業廃棄物の処理量を増大できるようにしたガス化炉の増処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃自動車や廃家電製品については、それに使用されている鉄などの金属類及び銅などの有価金属類のリサイクルが行われているが、従来は、工業用シュレッダーで破砕処理した後でそれら金属類の回収を行っていた。一方、金属類を回収した後に残された破砕後のプラスチック、ゴム、ガラス等の破片はシュレッダーダストと呼ばれ、従来は埋め立てに回されていた。尚、廃自動車を破砕して鉄やその他の有価金属を回収した後に残った廃棄物はASR(Automobile Shredder Residue)という。
【0003】
しかし、近年、廃棄物処理法の改正、家電リサイクル法、自動車リサイクル法の制定、施行に伴いリサイクルを行うことが義務付けられることになった。そのため、ASRをはじめとするシュレッダーダストの処理設備としてガス化溶融炉を用いた処理が注目されている。
【0004】
ガス化溶融炉を用いた処理方法の典型的な処理プロセスは、まず処理すべきASR等のシュレッダーダストを低酸素雰囲気の炉内に入れ、500〜550℃の温度で熱分解させて熱分解ガス、未燃カーボン及び熱分解残渣を生成し、この熱分解ガスと未燃カーボンを燃焼・溶融工程に導いて1,200℃以上で高温燃焼させながら灰分の溶融・スラグ化を行うというものである。熱分解残渣からは酸化していない良質な鉄やアルミニウムを回収することができる。また、燃焼特性の良いガスを高温で安定燃焼させるためにダイオキシン類の分解に優れ、更に、空気過剰率を抑えた燃焼によって排ガス量を低減が可能となり排ガス処理設備を小型化できるという利点がある。
【0005】
このような処理方法を実施するための設備の1つとして、産業廃棄物の熱分解を行うガス化炉と、その後段に配置されて飛灰の溶融炉を行う溶融炉とを備えたガス化溶融炉がある。また、ガス化溶融炉にはキルン炉を用いるキルン方式と、流動床炉を用いる流動床方式とがある。流動床方式の一例としては、例えば、特許文献1があり、この特許文献1には廃棄物を低温でガス化する流動床ガス化炉と、ガス状物とチャーを処理する溶融炉からなり、この溶融炉において高温ガスで溶融処理をし、且つ、非ガス化物をスラグ化するガス化溶融システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−202225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年におけるASR等のシュレッダーダストの処理量の増加に対応するためにシュレッダーダストを従来よりもさらに圧縮して減容化したり、粉砕機によるシュレッダーダストの破砕をさらに細粒化して嵩比重を上げることにより、設備のハンドリングの向上を図ると共に、炉内温度の安定化を図ることによってガス化溶融炉での増処理を行っていた。
【0008】
しかし、シュレッダーダストの減容化や細粒化を行うためには、それに伴う新たな設備の導入や、それらの設備を運転するための人件費・電力費等が必要となるという問題がある。従って、現状の設備のままガス化炉へのシュレッダーダストの供給量を増やすことができれば、上記の問題を軽減することができる。その1つの方法として、ガス化炉へ供給する燃焼用空気の供給量を増やすことで酸素量を増やし、それによってガス化炉でのシュレッダーダストの処理量を増やすことができるものと考えられる。しかしながら、燃焼用空気を供給するための燃焼用ブロアは当該設備の当初の処理量を目安その空気供給能力が決定されたものであってその能力の限界近くで操業が行われているのが実情であり、燃焼用空気の供給量をそれ以上に増やしたい場合にはさらに大型の設備の導入が必要となっていた。また、空気中の酸素濃度は約20.9%であり、たとえ供給量の大きな燃焼用ブロアによって燃焼用空気を供給しても大量の空気が必要となり、炉出口の排ガス量の増大に伴う排ガス処理設備の大型化が必要である。
【0009】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、ガス化溶融炉の設備及び燃焼用空気の供給量はほぼ在来のままで、大幅な設備変更や人件費・電力費等の増大を招くことなくガス化炉におけるシュレッダーダストの処理量を増加させることを可能とするガス化炉の増処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、プラスチック類及び金属類を含むシュレッダーダスト等の破砕された産業廃棄物を燃焼用空気を供給しながら所定の温度雰囲気中で産業廃棄物に含まれるプラスチック類を熱分解して熱分解ガスとし、発生した熱分解ガスを後段の溶融炉へ排出するガス化炉における処理量を増加させるガス化炉の増処理方法において、ブロアを介してガス化炉内に燃焼用空気を吹き込むための空気供給管に、酸素を供給するための酸素供給管を連結し、ブロアを介してガス化炉内に供給される燃焼用空気にさらに酸素供給管を介して酸素を富化して酸素混合空気とし、当該酸素混合空気をガス化炉内に供給することによって産業廃棄物を熱分解してガス化することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のガス化炉の増処理方法において、ガス化炉に供給する酸素混合空気の酸素濃度は、21.0−22.5%であることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のガス化炉の増処理方法において、さらに、産業廃棄物の供給量を増減することによってガス化炉内の温度を制御することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のガス化炉の増処理方法において、ガス化炉は、流動媒体によって流動床が形成される流動床式ガス化炉であり、酸素混合空気は産業廃棄物の燃焼及び流動媒体を流動させるために用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るガス化炉の増処理方法によれば、設備をほぼ在来のままで、燃焼用空気の供給量も在来のままとしながらもガス化炉内に供給する酸素の濃度を高めることで、ガス化溶融炉の設備変更や人件費・電力費等の増大を招くことなくガス化炉における産業廃棄物の処理量を増やすことができるという効果がある。
【0015】
また、本発明に係るガス化炉の増処理方法によれば、酸素を富化した酸素混合空気をガス化炉内に供給することによる炉内温度の変化(特に温度上昇)に対しては、処理すべきシュレッダーダストの供給量を増減する(温度上昇に対しては供給量を増やす)ことによって温度を一定に保持し、それによってガス化炉の炉体に対する熱損傷を防止し、ガス化炉に対する新たな耐熱性向上のための設備の付加を不要とするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るガス化炉の増処理方法が適用されるガス化溶融設備の処理フローの概要を示す図である。
【図2】本発明に係るガス化炉の増処理方法が適用されるガス化炉及びその制御系の構成を示す図である。
【図3】本発明に係るガス化炉の増処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[ガス化溶融設備の構成]
以下、本発明に係るガス化炉の増処理方法について、図面を参照しつつ好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係るガス化炉の増処理方法が適用されるガス化溶融設備の処理フローの概要を示す図である。図示されたガス化溶融設備1は、概略として、産業廃棄物の粉砕物であるシュレッダーダストを熱分解してガス化すると共に不燃物、金属類及びスラグを生成するガス化溶融炉2と、ガス化溶融炉2で発生した排ガスを処理してダストを排出する排ガス処理設備3を備えて構成されている。
【0018】
ガス化溶融炉2は、図示しない粉砕設備から砂(流動媒体)による流動床(流動層)上に投入された処理対象となる産業廃棄物の粉砕物であるシュレッダーダスト6を熱分解し、砂と共に下部から不燃物7と金属類(非鉄金属類および鉄スクラップ)8を排出するガス化炉4と、ガス化炉4で発生した熱分解ガスにさらに空気を供給しつつ燃焼させ、熱分解ガスと共に移送されてくるアルミニウム(Al)などの金属類を酸化溶融することによってスラグ9として排出する溶融炉5とを備えている。
【0019】
[ガス化炉の構成]
次に、ガス化炉4の構成について説明する。図2はガス化炉及びその制御系の構成を示す図である。図示されたガス化炉4は、概略として、全体が耐火構造とされた縦筒状をした炉体を備え、炉体は下側が窄まった逆円錐形状を有している。そして、炉体の中間部の側壁にはシュレッダーダスト6の投入口41、バーナ43、炉体の下部の側壁には流動用兼燃焼用空気の供給口45が設けられると共に、炉内側にはこの流動用兼燃焼用空気の供給口45と連通する多孔管46が設けられ、この多孔管46を介して流動用兼燃焼用の空気が炉内に放出されるようになっている。また、ガス化炉4は、不燃物7及び金属類8を排出するための第一の開口部47が下端に設けられ、熱分解ガスを溶融炉5へ導入するための第二の開口部48が上横端に設けられている。流動用及び燃焼用空気の供給口45には空気供給管49が連結され、空気供給管49にはガス化炉4へ大気中の空気を圧送するためのブロア50が連結されている。そして、この空気供給管49の途中には後述する酸素センサ30が設けられると共に、酸素センサ30とブロア50との間の空気供給管49に酸素を混合するためのミキサー53が連結され、酸素供給管51の途中には調整弁52が設けられ、酸素供給管51の酸素が導入される側の端部には図示しない酸素ボンベが取り付けられている。
【0020】
[制御系の構成]
次に、ガス化炉4の制御系の構成について説明する。この制御系100は、概略として、図示しない管理センターに設置されてガス化炉4の制御を含むガス化溶融設備1の全体の制御及び監視を行う中央監視装置10と、ガス化炉4の炉内温度を測定してそのデータを中央監視装置10へ出力する温度センサ20と、供給口45に供給される空気の酸素濃度を測定してそのデータを中央監視装置10へ出力する酸素センサ30とを備えている。
【0021】
中央監視装置10は、概略として、温度センサ20及び酸素センサ30の出力信号を取りこんで、例えば、図3に示すような処理を実行させる演算部11と、演算部11に付与する各種の設定値や入力値を入力するキーボードやマウスや演算結果等の表示、警報表示等を行うディスプレイ(いずれも図示せず)を備えた操作表示部12と、供給口45に供給される空気に対し演算部11による演算結果に基づいて調整弁52を駆動して所定の酸素濃度となるように調整を行う調節器13と、演算部11による演算結果に基づいてガス化炉4へ供給するシュレッダーダスト6の供給量を調節する原料供給調節器14とを備えている。演算部11は、例えば、メモリ、ハードディスク等の記憶媒体、CPU、インターフエース回路等から構成されている。
【0022】
温度センサ20として、例えば、熱電対式温度計、放射温度計等がある。また、酸素センサ30として、例えば、金属酸化物を用いた抵抗式半導体センサ、酸化物イオン導電体である安定化ジルコニアを用いたジルコニアセンサ等がある。
【0023】
[ガス化溶融設備の動作]
次に、上述した構成のガス化溶融設備の動作について、図1及び図2を参照して説明する。ガス化炉4の流動用及び燃焼用空気の供給口45には、図示しない粉砕設備で粉砕処理された産業廃棄物であるシュレッダーダスト6が投入される。また、流動用及び燃焼用空気の供給口45には、ブロア50を介して送られてくる空気に酸素供給管51から供給される酸素をミキサー53で混合した酸素混合空気が空気供給管49を介して導入される。この酸素混合空気の酸素濃度は、大気中の酸素濃度(約20.9%)より高い値(例えば21.0〜22.5%)に調整されている。この酸素濃度が調整された空気は供給口45から多孔管46に導入され、多孔管46から炉内へ放出されている。この多孔管46から導入される酸素混合空気によってガス化炉4内の流動床4aが流動し、ガス化炉4に投入されたシュレッダーダスト6は熱分解されてガス化すると共に、不燃物7及び金属類8は炉底の第一の開口部47から取り出される。そして、不燃物7及び金属類8は種類ごとに選別される。
【0024】
ガス化炉4において熱分解された粉塵を含む燃焼ガスは第二の開口部48を介して溶融炉5へ送られる。溶融炉5では、ガス化炉4で生成された熱分解ガスを利用して粉塵含有ガスを高温で溶融・スラグ化してスラグ9を生成する。さらに、溶融炉5から排出される排ガスは排ガス処理設備3へ送られ、この排ガス処理設備3によって中和処理、粉塵除去等の処理が施された後、ダスト15が分離される。一方、排ガス処理設備3から排出された排ガスは、図示しない煙突から大気中へ放出される。
【0025】
[ガス化炉の制御]
ガス化炉4の炉内は還元雰囲気下であるため、原料供給を増やすと排ガス中の一酸化炭素が増加(C+O→CO:発熱量約2,500kcal/kg)することによって炉内温度が低下する。また、原料供給を減らすと排ガス中の二酸化炭素(CO)が増加して炉内温度が上昇(CO+O→CO:発熱量約8,000kcal/kg)する。そこで、炉床温度が基準値である530℃以上であれば原料の供給量を増やし、530℃以下であれば原料供給量を減らせばよい。また、大気の酸素濃度が20.9%であるのに対し、空気供給管49からガス化炉4へ供給する空気の酸素濃度を例えば22.5%に富化すれば、ガス化炉4内に供給される酸素量が増え、その結果、炉内の二酸化炭素が増加して炉床温度が上昇し、ブロア50の送風能力を増やすことなく原料供給を増大できるようになる。ここで、酸素濃度を22.5%とするのは高温に対する炉内の耐火物や多孔管46の保護のためである。尚、酸素濃度は22.5%に限定されるものではなく、21.0〜22.5%の範囲で適宜設定することは可能である。また、ここでいう「酸素濃度22.5%」とは、その許容範囲(±0.1%)を含む意である。
【0026】
そこで、ガス化炉の制御について図3のフローチャートを参照しながら説明する。ガス化炉4が稼働しているときに演算部11は温度センサ20からガス化炉4の炉内温度データを取得し(S101)、その温度値が530℃以下か以上かを判定する(S102)。尚、処理の開始時においては原料であるシュレッダーダスト6を多めに投入して温度がなるべく530℃以下になるようにする。温度値が530℃未満であれば(S102:未満)、調整弁52が開くように酸素濃度調整器13を駆動して酸素供給管51に供給する酸素量を増やし(S103)、温度が530℃以上であれば(S102:以上)調整弁52が閉じるように酸素濃度調整器13を駆動し(S104)、酸素供給管51に流れる空気の酸素量を調節する。
次に空気供給管49を通過する空気の酸素濃度を酸素センサ30によって測定し、測定データを制御系100の中央監視装置10に取り込む(S105)。中央監視装置10では、酸素センサ30の測定データに基づいて演算部11によって酸素濃度が演算され、その濃度値が22.5%(その許容範囲(±0.1%)を含む。以下同じ。)か否か、つまり、22.5%か、それ以外かを判定する(S106)。
【0027】
酸素濃度が22.5%であれば(S106;Yes)、演算部11は温度センサ20からガス化炉4の炉内温度データを取得し(S107)、その温度値が530℃以下か以上かを判定する(S108)。530℃以上であれば(S108:以上)、投入口41からガス化炉4へ投入する原料の供給量すなわちシュレッダーダスト6の供給量を多くする(S109)。また、温度値が530℃未満であれば(S108:以下)、投入口41からガス化炉4へ投入するシュレッダーダスト6の供給量を少なくする(S110)。原料供給量は、演算部11によってシュレッダーダスト供給量調節器14を駆動することにより行われる。一方、酸素濃度が22.5%以外の場合には上記ステップS101へ戻り上記ステップを繰り返し、酸素濃度が22.5%となるように調節を行う。
【0028】
上記ステップS109,110の処理が終了すると、予め定めた時間まで待機する。(S111)。そして、S106において酸素濃度は22.5%に調節されているので所定時間経過後、処理は上記ステップS107へ戻り、以降の処理を繰り返し実行する。
【0029】
[実施形態の効果]
本実施形態に係るガス化炉の増処理方法によれば、ガス化溶融炉の設備構成を大幅に変更することなく、空気供給管49から流動用及び燃焼用空気の供給口45に供給される空気に酸素を富化することによって酸素濃度を大気の酸素濃度より高くなるように空気供給管49に酸素を供給することで、ガス化溶融炉の設備変更や人件費・電力費等の増大を招くことなくガス化炉への原料供給量を増やすこができるという効果がある。
【0030】
また、本実施形態に係るガス化炉の増処理方法によれば、酸素を富化することによる炉内温度の上昇に対しては処理すべきシュレッダーダストの供給量を増やすことでガス化炉内の温度を上昇させることなく一定に保たれるようにすることで耐熱性の乏しい在来のガス化炉でもシュレッダーダストの増処理を図ることができるという効果がある。
【実施例】
【0031】
本発明者らは、ガス化炉4に対して酸素富化を行うことで、どの程度の原料供給量が可能かを試算した。まず、空気供給管49から流動用及び燃焼用空気の供給口45に導入する空気の酸素量を20.9%、すなわちブロア50による大気のみを供給口45に導入した場合について試算したところ、原料の1日当たりの処理量は53.65t(トン)であった。これに対し、供給口45に導入する空気の酸素濃度が22%になるように酸素を富化した酸素混合空気を供給する本発明の場合、原料の1日当たりの処理量は57.5tであった。このことから、本発明によれば、空気に酸素を富化することによって約4t(57.5−53.65=3.85t)の処理量の増加を見込めることが分かった。以上より明らかなように、供給口45に導入する空気の酸素濃度は、21%以上にすることで好ましい結果を得ることができる。
【0032】
以上のように、好ましい実施形態について説明したが、本発明に係るガス化炉の増処理方法は、流動式について説明したが、この方式以外のガス化炉を用いていると共に、炉に対する燃焼用空気の供給量や酸素濃度と炉に入れる原料供給量とに相関を有するガス化溶融設備の全般に対して採用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 ガス化溶融設備
2 ガス化溶融炉
3 排ガス処理設備
4 ガス化炉
4a 流動床
5 溶融炉
6 シュレッダーダスト
7 不燃物
8 金属類
9 スラグ
10 中央監視装置
11 演算部
12 操作表示部
13 酸素濃度調整器
14 原料供給調節器
15 ダスト
20 温度センサ
30 酸素センサ
41 投入口
43 バーナー
45 流動用兼燃焼用空気の供給口
46 多孔管
47 第一の開口部
48 第二の開口部
49 空気供給管
50 ブロア
51 酸素供給管
52 調整弁
53 ミキサー
100 制御系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック類及び金属類を含むシュレッダーダスト等の破砕された産業廃棄物を燃焼用空気を供給しながら所定の温度雰囲気中で前記産業廃棄物に含まれる前記プラスチック類を熱分解して熱分解ガスとし、発生した前記熱分解ガスを後段の溶融炉へ排出するガス化炉における処理量を増加させるガス化炉の増処理方法において、
ブロアを介して前記ガス化炉内に燃焼用空気を吹き込むための空気供給管に、酸素を供給するための酸素供給管を連結し、前記ブロアを介して前記ガス化炉内に供給される燃焼用空気にさらに前記酸素供給管を介して酸素を富化して酸素混合空気とし、当該酸素混合空気を前記ガス化炉内に供給することによって前記産業廃棄物を熱分解してガス化することを特徴とするガス化炉の増処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化炉の増処理方法において、
前記ガス化炉に供給する前記酸素混合空気の酸素濃度は、21.0〜22.5%であることを特徴とするガス化炉の増処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス化炉の増処理方法において、
さらに、前記産業廃棄物の供給量を増減することによって前記ガス化炉内の温度を制御することを特徴とするガス化炉の増処理方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のガス化炉の増処理方法において、
前記ガス化炉は、流動媒体によって流動床が形成される流動床式ガス化炉であり、前記酸素混合空気は前記産業廃棄物の燃焼及び前記流動媒体を流動させるために用いられることを特徴とするガス化炉の増処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−214739(P2011−214739A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81080(P2010−81080)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】