説明

ガス化炉システム

【課題】ロータリーキルン型のガス化炉、改質炉、およびチャーガス化/燃焼炉を備えたガス化炉システムにおいて、改質炉の触媒層反応が均一な温度状態で実現できるガス化炉システムを提供する。
【解決手段】ガス化炉20、改質炉30、およびチャーガス化/燃焼炉40を備えたガス化炉システムにおいて、改質炉の触媒層として、ガス化炉からの生成ガスの反応が吸熱を伴う触媒を充填した第一の触媒層と、当該生成ガスの反応が吸熱を伴わない触媒を充填した第二の触媒層をガス流方向に交互に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜排せつ物等のバイオマス処理および資源化のための小型のガス化炉システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜糞便を加熱によって処理する方法として、大きく分けて炭化処理とガス化処理が知られている。狭い領域に小規模畜産農家が多数分散している形態を取ることが多い日本では、糞便処理装置が小型で運転が容易であることが要求される。しかし、一般的に小型の炭化装置やガス化装置は熱効率が悪く、運転初期に炉を加熱させるために用いられる、外部燃焼のための灯油やガス代を考えると採算が合わないなどの問題点がある。
【0003】
特に、家畜糞便には水分が多量に含まれ、さらに炭素成分比率が低いため、ガス収率が低いことや高温でのガス化であること、さらに小型装置であることなどから熱効率の向上が大きな課題となっていた。
【0004】
このような課題を解決する方法として、処理対象を木質材バイオマスとした小型ガス化装置として特許文献1に記載の装置が提案されている。
【0005】
この装置はロータリーキルン型のガス化構造を備えており、一次ガス化炉で発生したチャーを外置きのチャー燃焼炉に搬送する構造を有し、そしてチャー燃焼炉からの熱風を一次ガス化炉へ導入し熱効率の改善を図っている。また、一次ガス化炉で発生した生成ガスを改質炉に導き、高温処理(900 ℃から1000 ℃以上)することで生成ガスに含まれるタール分や有害ガス等の熱分解処理を行っている。
【0006】
この装置は原料の形状や水分量に依存しないため、大変扱いやすい装置であること、および構造が簡易であることなどの利点がある。
【特許文献1】特開2004−352960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、改質炉として固定充填式の触媒層を備えたものを用いた場合、管内に充填された触媒層内での反応が比較的大きな吸熱を伴うと、反応が始まると時間と共に温度が低下し、反応が終わるに従い、再び温度が回復するような状態が生ずる。そのため、反応温度が下がると、炭素の析出が大きくなったり、反応速度が下がったり、あるいは組成が変化したりして、運転操業上の不都合が生じるという問題があった。
【0008】
本発明は以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ロータリーキルン型のガス化炉、改質炉、およびチャーガス化/燃焼炉を備えたガス化炉システムにおいて、均一な温度状態での触媒層反応が実現できるガス化炉システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0010】
第1に、本発明のガス化炉システムは、内部に攪拌羽根を備えた円筒状の炉内に原料を供給して原料をガス化するガス化炉と、ガス化炉で生成したガスを触媒層において改質する改質炉と、ガス化炉から取り出されたチャーをガス化または燃焼するチャーガス化/燃焼炉とを備えたガス化炉システムであって、改質炉の触媒層は、ガス化炉からの生成ガスの反応が吸熱を伴う触媒を充填した第一の触媒層と、当該生成ガスの反応が吸熱を伴わない触媒を充填した第二の触媒層とがガス流方向に交互に充填されたものであることを特徴とする。
【0011】
第2に、上記第1のガス化炉システムにおいて、第一の触媒層に、金属酸化物にニッケル、鉄、またはアルカリ金属が担持された触媒が充填され、第二の触媒層に、アルミナが充填されていることを特徴とする。
【0012】
第3に、上記第1または第2のガス化炉システムにおいて、改質炉に、分岐構造を有しガス化炉からの生成ガスが導入される生成ガス導入管と、生成ガス導入管に連通する複数の触媒層と、それぞれの触媒層の下流側に配置された触媒層へのスチーム導入口とが設けられ、さらにガス化炉システムは、スチーム導入口を通じたスチームの供給および遮断を制御する手段と、触媒層の下流側における改質ガスの排出および遮断を制御する手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、触媒層のガス流方向に、ガス化炉からの生成ガスの反応が吸熱を伴う触媒を充填した第一の触媒層と、当該生成ガスの反応が吸熱を伴わない触媒を充填した第二の触媒層とを交互に配置するようにしたので、第一の触媒層における温度低下による不均一な温度分布の発生を回避することができ、その結果、均一な温度状態での触媒層反応が実現できる。
【0014】
上記第2の発明によれば、第一および第二の触媒層の触媒として特定のものを用いたので、均一な温度状態での触媒層反応が実現できると共に、ガス化炉からの生成ガスを効率良く改質することができる。
【0015】
上記第3の発明によれば、生成ガス導入管から分岐する複数の触媒層を設け、スチームの供給および遮断と改質ガスの排出および遮断を触媒層ごとに切り換え可能としたので、ある触媒層にはガス化炉からのタール分を含む生成ガスを流してガスを改質し、別の触媒層にはスチームのみを流して触媒表面に付着した炭素析出物を分解し、触媒を再生することができる。そして、スチームの供給および遮断と改質ガスの排出および遮断を切り換えることで、生成ガスの流通と、スチームのみの流通とを触媒層ごとに切り換えることができるので、切り換え操作を繰り返すことで、触媒反応の性能が長期的に安定に維持され、メンテナンス作業も軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるガス化炉システムを示す断面図である。このガス化炉システム1は、燃焼炉10を備えており、燃焼炉10内には、原料をガス化するガス化炉20と、ガス化炉で生成したガスの改質炉30と、ガス化炉20から取り出されたチャーをガス化または燃焼するチャーガス化/燃焼炉40が配置されている。
【0018】
燃焼炉10の壁部には、バーナー11が設けられており、燃料導入管12を通じて外部から燃料を導入し、空気導入管13を通じて、外部から酸化剤としての空気を導入することでバーナー11により燃焼炉10内で燃料を燃焼させ炉内で発熱させるようになっている。図中の符号14は排気管である。
【0019】
バーナー11としては、熱回収手段および蓄熱手段を備えた蓄熱式熱回収バーナーを用いており、その熱回収手段および蓄熱手段によって、燃焼炉10からの排気ガスを熱として回収、蓄熱して外部燃料の燃焼に利用するようにしている。
【0020】
ガス化炉20は、キルン型のガス化炉であり、横型円筒状の炉内に攪拌羽根21を備えている。家畜糞便等の原料は原料導入口22からガス化炉20内に導入され、燃焼炉10内の発熱を利用してガス化されたタール分等を含む生成ガスは、生成ガス排出口23から排出され改質炉30に導入されるようになっている。そして、ガス化炉20内で生成したチャーは、チャー取り出し口24から取り出されるようになっている。
【0021】
ガス化炉20の上方に配置された改質炉30は、炉内に図2に示す触媒層31を備えており、生成ガス導入口32から導入した生成ガス中のタール分を燃焼炉10内の発熱を利用して分解し、タール分を含まない改質ガスを改質ガス取り出し管50から取り出すようになっている。
【0022】
改質炉30には、スチーム導入口33を設けて改質炉30内の触媒層31にスチームを供給するようにしている。
【0023】
すなわち、ガス化炉20でガス化されたタール分を含む生成ガスを生成ガス導入口32から触媒層31に流すと共に、スチーム導入口33から触媒層にスチームを流すことで、500〜600 ℃の低温状態でタール分を分解することができ、かつ、水素リッチな改質ガスを生成することができる。さらに、付着タールの洗浄等の作業が低減でき、熱効率をさらに向上させることができる。スチーム改質を受けて水素等に改質された改質ガスは、改質ガス取り出し管50から外部に取り出され発電等に用いられる。
【0024】
ガス化炉20のチャー取り出し口24と、チャーガス化/燃焼炉40のチャー導入口42との間には、これらを連結するチャー搬送通路52を設けている。このようにチャー搬送通路52を設けることで、ガス化炉20で生成したチャーを連続的にチャーガス化/燃焼炉40へ搬入できる。これにより、チャーガス化/燃焼炉40のガス化または燃焼による発熱量を安定的に得ることができ、燃焼炉10内の温度ばらつきも低減でき、かつ、熱効率が向上する。
【0025】
ガス化炉20の下方に配置されたチャーガス化/燃焼炉40は、ガス化炉20と同様にキルン型の構造を有しており、横型円筒状の炉内に攪拌羽根41を備えている。ガス化炉20から取り出されたチャーは、チャー導入口42からチャーガス化/燃焼炉40内に導入され、空気導入口43から空気を導入することにより、チャーを燃焼し、燃焼炉10内を発熱させるようになっている。
【0026】
チャーをガス化または燃焼させて得られた熱は、ガス化炉20のガス化と改質炉30の触媒改質反応の熱源として利用される。また、チャーのガス化または燃焼により生成したCOガスは、ガス供給口51を通じて燃焼炉10内に導入されて燃焼され、その燃焼による熱は、ガス化炉20のガス化と改質炉30の触媒改質反応の熱源として利用される。チャーガス化/燃焼炉40内で生成した灰は残渣取り出し口44から外部に排出される。
【0027】
以上の構成を備えたガス化炉システム1では、バーナー11による燃焼発熱により燃焼炉10内を所定の温度に加熱維持した後、原料導入口22より家畜糞便等の原料をガス化炉20に送り込み、キルンを回転させながら熱分解反応を行い原料をガス化する。
【0028】
そして、熱分解反応により発生したガス化タール分を含む生成ガスを改質炉30の触媒層に送り込む。これにより、ガス化タール分が分解し、タール分を含まない改質ガスが改質ガス取り出し管50から排出される。
【0029】
一方で、ガス化炉20のチャー取り出し口24よりチャーを回収し、チャー導入口42からチャーガス化/燃焼炉40内にチャーを供給し、チャーガス化/燃焼炉40内でチャーをガス化または燃焼させる。
【0030】
このようなガス化炉システム1によれば、ガス化炉20での吸熱反応による熱量不足分や改質炉30の触媒層に必要な熱量をチャーのガス化または燃焼による発熱によって賄うことができる。また、チャーの燃焼熱のみでは熱量が不十分であれば、ガス化炉20での生成ガスの一部を利用し、あるいは外部燃料をバーナー11で燃焼して、熱量の不足分を賄うことができる。その結果として、ガス化炉システム1の熱効率を高めることができる。
【0031】
図2は、本実施形態のガス化炉システムの改質炉における触媒層の構造と、触媒層長さ方向(ガス流方向)の温度分布の相関を示した図である。
【0032】
本実施形態では、改質炉30の触媒層31を、ガス化炉20からの生成ガスの反応が吸熱を伴う触媒を充填した第一の触媒層31aと、当該生成ガスの反応が吸熱を伴わない触媒を充填した第二の触媒層31bとを長さ方向に交互に充填した構造としている。
【0033】
ガス化炉20からの生成ガスの反応が吸熱を伴う第一の触媒層31aの触媒としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの金属酸化物にニッケル、鉄、またはアルカリ金属が担持された触媒などを用いることが好ましい。
【0034】
ガス化炉20からの生成ガスの反応が吸熱を伴わない第二の触媒層31bの触媒としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、珪砂などを用いることが好ましい。
【0035】
固定充填式の触媒層では、管内に充填された触媒層内での反応が比較的大きな吸熱を伴う場合、反応が始まると時間と共に温度が低下し、反応が終わるに従い、再び温度が回復するような状態が生ずる。そのため、反応温度が下がると、炭素の析出が大きくなったり、反応速度が下がったり、あるいは組成が変化したりして、運転操業上の不都合が生じる。
【0036】
そこで本実施形態では、この不均一な温度分布による弊害を改善するため、管長さ方向に吸熱反応を伴う第一の触媒層31aと吸熱反応を伴わない第二の触媒層31bを長さ方向に交互に充填する構造としている。このような構造とすることで、図2に示すように、温度の低下をこまめに回復することができ、その結果、均一な温度状態での触媒層反応が実現できる。なお、図2の結果は第一の触媒層31aとして酸化アルミニウムにニッケルを担持した触媒を用い、第二の触媒層31bとして珪砂を用いた場合を示している。
【0037】
図3は、本発明の第2の実施形態におけるガス化炉システムの改質炉の構造を示した図である。
【0038】
本実施形態では、改質炉30が次の構成を備えている。すなわち図3に示すように、ガス化炉20からの生成ガス導入口32を備えた生成ガス導入管34は下流側で二股に分岐しており、それぞれに分岐管に触媒層31A,31Bが連通されている。これらの触媒層31A,31Bは、それぞれ図2に示したように第一の触媒層31aと第二の触媒層31bとを長さ方向に交互に充填した構造としている。
【0039】
触媒層31A,31Bの出口の下流側には、スチーム導入口33a,33b、蒸気発生器35a,35b、水冷器36a,36bがこの順に接続されている。
【0040】
さらに、スチーム生成用の軟水槽38とスチーム導入口33a,33bとの間には、それぞれスチーム用切り換え弁37d,37bが設けられ、水冷器36a,36bの下流側には、それぞれ改質ガス用切り換え弁37a,37cが設けられている。
【0041】
以上の構成を備えた改質炉30は次のように作動させる。たとえば、触媒層31Aを使用する場合は、スチーム用切り換え弁37bを開放し、改質ガス用切り換え弁37aも開放する。一方、スチーム用切り換え弁37dを閉止し、改質ガス用切り換え弁37cも閉止する。
【0042】
このようにすることで、触媒層31Aにガス化炉20からのタール分を含む生成ガスが流れ、触媒効果によってタール分を含まない水素リッチな改質が得られ改質ガス排出口39から排出される。一方、触媒層31Bはスチームのみが流れるため、触媒表面に付着した炭素析出物が分解され、触媒が再生される。
【0043】
一方、触媒層31Bを使用する場合は、スチーム用切り換え弁37dを開放し、改質ガス用切り換え弁37cも開放する。一方、スチーム用切り換え弁37bを閉止し、改質ガス用切り換え弁37aも閉止する。
【0044】
このようにすることで、触媒層31Bにガス化炉20からのタール分を含む生成ガスが流れ、触媒効果によってタール分を含まない水素リッチな改質が得られ改質ガス排出口39から排出される。一方、触媒層31Aはスチームのみが流れるため、触媒表面に付着した炭素析出物が分解され、触媒が再生される。
【0045】
上記2通りの運転動作を繰り返すことで、触媒反応の性能が長期的に安定に維持され、メンテナンス作業も軽減することができる。
【0046】
以上に、実施形態に基づき本発明について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるガス化炉システムを示す断面図である。
【図2】ガス化炉システムの改質炉における触媒層の構造と、触媒層長さ方向の温度分布の相関を示した図である。
【図3】本発明の第2の実施形態におけるガス化炉システムの改質炉の構造を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ガス化炉システム
10 燃焼炉
11 バーナー
12 燃料導入管
13 空気導入管
14 排気管
20 ガス化炉
21 攪拌羽根
22 原料導入口
23 生成ガス排出口
24 チャー取り出し口
30 改質炉
31 触媒層
31a 第一の触媒層
31b 第二の触媒層
31A 触媒層
31B 触媒層
32 生成ガス導入口
33 スチーム導入口
33a スチーム導入口
33b スチーム導入口
34 生成ガス導入管
35a 蒸気発生器
35b 蒸気発生器
36a 水冷器
36b 水冷部
37a 改質ガス用切り換え弁
37b スチーム用切り換え弁
37c 改質ガス用切り換え弁
37d スチーム用切り換え弁
38 軟水槽
39 改質ガス排出口
40 チャーガス化/燃焼炉
41 攪拌羽根
42 チャー導入口
43 空気導入口
44 残渣取り出し口
50 改質ガス取り出し管
51 ガス供給口
52 チャー搬送通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に攪拌羽根を備えた円筒状の炉内に原料を供給して原料をガス化するガス化炉と、ガス化炉で生成したガスを触媒層において改質する改質炉と、ガス化炉から取り出されたチャーをガス化または燃焼するチャーガス化/燃焼炉とを備えたガス化炉システムであって、改質炉の触媒層は、ガス化炉からの生成ガスの反応が吸熱を伴う触媒を充填した第一の触媒層と、当該生成ガスの反応が吸熱を伴わない触媒を充填した第二の触媒層とがガス流方向に交互に充填されたものであることを特徴とするガス化炉システム。
【請求項2】
第一の触媒層に、金属酸化物にニッケル、鉄、またはアルカリ金属が担持された触媒が充填され、第二の触媒層に、アルミナが充填されていることを特徴とする請求項1に記載のガス化炉システム。
【請求項3】
改質炉に、分岐構造を有しガス化炉からの生成ガスが導入される生成ガス導入管と、生成ガス導入管に連通する複数の触媒層と、それぞれの触媒層の下流側に配置された触媒層へのスチーム導入口とが設けられ、さらにガス化炉システムは、スチーム導入口を通じたスチームの供給および遮断を制御する手段と、触媒層の下流側における改質ガスの排出および遮断を制御する手段とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のガス化炉システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−102593(P2009−102593A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278181(P2007−278181)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505417367)株式会社エプシロン (10)
【出願人】(507089517)財団法人群馬県産業支援機構 (15)
【Fターム(参考)】