説明

ガス化炉

【課題】 ガス化炉の排出シュート内における棚吊り現象の発生を未然に防止し、砂及び不燃物の連続的な抜き出しを可能とする流動層式のガス化炉を提供することを目的とする。
【解決手段】 炉内に投入された産業廃棄物18を熱媒体となる砂等の粒状物20質と共に下部側から吹き込んだ空気によって流動層24を形成させつつ熱分解によってガス化すると共に、不燃物を回収する流動層式のガス化炉10において、不燃物及び粒状物質20からなる排出物30を抜き出すための複数の排出シュート15a、15bの直下にそれぞれ排出手段28a、28bを配置することにより排出シュート15a、15b内での棚吊りによる排出物30の詰まりを防止したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層式のガス化炉に関し、さらに詳しくは、廃自動車、電化製品等の産業廃棄物のシュレッダーダストをガス化処理する際に不燃物及び粒状物質からなる排出物の排出シュート内での棚吊りによる排出物の詰まりを防止することを可能とする流動層式のガス化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車シュレッダーダスト(ASR)、家電シュレッダーダストのような、鉛、亜鉛、銅といった金属や塩素源となる塩化ビニル等が混入している産業廃棄物を溶融処理する設備としては、流動層式のガス化炉を備えた産業廃棄物の溶融処理施設が知られており、例えば、特開平11−302748号公報(特許文献1)に開示されたような溶融処理施設がある。
【0003】
特許文献1に開示された流動層式のガス化炉は、上述した産業廃棄物の中に含まれる有価金属の回収を目的としたものであり、図1に示すような溶融処理施設において産業廃棄物の処理を行っている。この溶融処理施設の主要な設備について概略の処理工程と共に説明する。
【0004】
まず、図1の溶融処理施設の概略構成図に示されているように、銅滓A1を第1の貯蔵所1に貯蔵し、有価金属を含む産業廃棄物A2等を別の第2の貯蔵所2に貯蔵する。
第1の貯蔵所1から銅滓A1等を破砕機(図示せず)に掛けて細かく粉砕し、粉砕した産業廃棄物A2等と同時に供給コンベア3によりに供給フィーダー4に投入し、供給フィーダー4から一定量を流動層式ガス化炉11に投入する。
ここで、産業廃棄物A2には、自動車、家庭電化製品等をシュレッダーで処理した有価金属とプラスチックを含むシュレッダーダスト、家庭用と工業用の廃プラスチックなどが含まれる。
【0005】
流動層式ガス化炉11では、図1に示すように、投入された産業廃棄物A2と銅滓等A1が、流動床12から吹き込まれる空気Cにより流動層式ガス化炉11内で流動層を形成して循環している。流動層式ガス化炉11内では、産業廃棄物A2中の廃プラスチックの燃焼を防止しつつ、廃プラスチックを熱分解しガス化する。その後、ガス化炉11内で生成された熱分解ガスE等が溶融炉21に移送される。
【0006】
溶融炉21では、熱分解ガスE等が移送されると同時に、空気を供給しつつ燃焼させる。これにより熱分解ガスEは、燃焼して排ガスFとなり排出される。ここで、排ガスFの温度が250〜500℃の範囲にあるとダイオキシン等の有害物質が再合成されることを考慮し、この温度範囲にある時間を少なくして有害物質の再度の生成を防止すべく、溶融炉21からの排ガスFに、廃液分解塔26で廃液Lを噴霧し、さらに急冷塔41で冷却水を噴霧して排ガスFを冷却している。
【0007】
一方、製錬で生ずる廃液には金属イオンや酸が含まれ、一般下水で生ずる廃液には、無機物、有機物等が残存するが、これらは焼却処理することが望ましいことから、廃液分解塔26で廃液Lを熱分解処理する工程を含ませている。廃液Lは、高温度に曝すことにより有機物等と酸等は分解し、無機物と金属イオン等は酸化物にしてバグフィルター51で回収している。そして、溶融炉21から回収したスラグGを電気式保持炉31で精錬する。
【0008】
ここで、流動層式ガス化炉11の構造について説明すると、炉底部の上方に位置する熱媒体投入口から熱媒体となる粒状物質、例えば「砂」を投入し、炉底部に設けた空気吹出孔から空気を上方に向かって吹出すことによって対流を起こさせた流動床を形成している。そして、熱媒体としての砂は、炉底部の上方から投入された廃棄物中の不燃物と共に、炉底部から下方に延びる排出シュート15を通じて炉内から排出していた。一旦排出された砂は、図示しない循環通路を通じて再び炉底部の上方から炉内へ投入される。
【0009】
しかし、特許文献1の流動層式ガス化炉11は、熱媒体としての砂と不燃物とを排出シュート15を通じて排出しているが、排出シュート15内にクリンカが付着するという問題があった。排出シュート15内にクリンカが付着し、排出シュート15が閉塞されると、砂と不燃物を排出、循環させることができないことから、このようなクリンカの問題を解消すべく特開2005−282960号(特許文献2)においては、流動床の上部から投入した砂を流動床の下部に位置する排出シュート15から排出する際に、炉内燃焼維持温度を下回らせることのない範囲内で、排出シュート内を流通する砂の排出速度を単位面積当りの排出速度で管理し、必要であればさらに排出シュート内に蒸気を噴射してクリンカの生成を防止する流動層式ガス化炉の操業方法が提案されている。
【0010】
特許文献2に示された流動層式ガス化炉の構造を図2に示す。図2に示された流動層式ガス化炉14は、炉底部16に設けた空気吹出孔17と、炉底部16の上方に位置する廃棄物18の投入口19及び熱媒体である砂20の投入口21、さらに、炉底部16から下方に延びる排出シュート15a、15bを備えている。投入口21から投入された砂20が空気吹出し孔17から吹出す空気によって吹き上げられて、流動床24が形成されている。炉頂からは、熱分解ガスEやチャー、ダスト等が排出され、溶融炉に搬送されるようになっている。また、流動層式ガス化炉14は、排出シュート15a、15bと図示しない管材によって熱媒体(砂)循環通路が形成されている。排出シュート15a、15bは、それぞれ上部の蒸気投入口22と、下部の蒸気投入口23を備えている。さらに、流動層式ガス化炉14は、流動床24付近に温度計25、排出シュート15a、15bの上部に温度計26、排出シュート15a、15bの下部に温度計27が取り付けられている。
【0011】
ここで、図3は流動層式ガス化炉14の排出シュート15部分の横断面図である。図3に示すように、もともと4本あった4本の排出シュート15a、15b、15c、15のうち対向する位置にある排出シュート15c、15dを塞ぎ、排出シュート15a、15bのみを使用することで排出面積を1.28mから0.64mに減少させ、これにより、排出面積当りの砂排出速度を、3000kg/hr〜4700kg/hrの範囲に制御しようとするものである。
【0012】
【特許文献1】特開平11−302748号公報
【特許文献2】特開2005−282960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2に開示された流動層式ガス化炉14は、対向する位置にある排出シュート15a、15bの下側に1本の排出コンベア28が取り付けられており、この1本の排出コンベアによって排出シュート15a、15bから排出された砂20及び不燃物を抜き出していた。
【0014】
しかし、1本の排出コンベア28で砂20及び不燃物の抜き出しを行う場合、排出シュート15a、15bから排出される砂20及び不燃物をホッパで集めて排出コンベア28へ導入する必要があるが、排出シュート15a、15bから排出コンベア28至るまでの必然的な経路の形状によって排出シュート15a、15b内での棚吊り現象により砂20及び不燃物の降下が止まってしまうという問題があった。そうなると、砂20及び不燃物の抜き出しができなくなるのでガス化炉の操業を一旦停止してその対応をせざるを得ず操業効率が著しく減殺されるという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、排出シュート内における棚吊り現象の発生を未然に防止し、砂及び不燃物の連続的な抜き出しを可能とする流動層式のガス化炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、炉内に投入された産業廃棄物を熱媒体となる砂等の粒状物質と共に下部側から吹き込んだ空気によって流動層を形成させつつ熱分解によってガス化すると共に、不燃物を回収する流動層式のガス化炉において、不燃物及び粒状物質からなる排出物を抜き出すための複数の排出シュートの直下にそれぞれ排出手段を配置することにより排出シュート内での棚吊りによる排出物の詰まりを防止したことを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガス化炉において、排出手段がスクリューコンベアであることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のガス化炉において、スクリューコンベアは、抜出シュートの位置にかかわらずその直下に位置して排出物を受け入れ可能に形成された開口部を備え、それによっていずれの抜出シュートに対しても取り付け可能に互換性を有して形成されてなることを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、請求項2又は3に記載のガス化炉において、スクリューコンベアの回転速度は調整可能とされ、それによって排出物の排出量を調整可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るガス化炉によれば、不燃物及び粒状物質からなる排出物を抜き出すための複数の排出シュートの直下にそれぞれ排出手段を配置することとしたので不燃物及び粒状物質からなる排出物が鉛直的に排出手段内にストレートに落下することから排出シュート内での棚吊りによって排出物の落下が妨げられることがないという効果がある。従って、従来のようにガス化炉の操業を一旦停止して棚吊り対応をすることがなく連続的な操業を確保することができるという効果がある。
また、排出手段をスクリューコンベアとしたので排出物の排出量の調整が容易であり、また、各排出シュートに取り付けるスクリューコンベアに互換性を持たせたので排出シュートがどの位置にあっても同じスクリューコンベアを取り付けることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るガス化炉について好ましい一実施形態に基いて説明する。図5は、本発明に係るガス化炉の断面図である。
【0022】
図示されたガス化炉10は、流動層式ガス化炉であり、概略として、来の流動層式ガス化炉14と同様の構成を備えている。尚、従来と同じ構成部分については同一の符号を付すこととする。まず、ガス化炉10は、炉底部16に設けた空気吹出孔17と、炉底部16の上方に位置する廃棄物18の投入口19及び熱媒体となる粒状物質である砂20の投入口21と、さらに、炉底部16から下方に延びる排出シュート15a、15bを備えている。投入口21から投入された砂20は空気吹出し孔17から吹出す空気によって吹き上げられて対流し、流動床24が形成されるようになっている。炉頂からは、熱分解ガスEやチャー、ダスト等が排出され、図示しない溶融炉に搬送されるようになっている。
【0023】
また、ガス化炉10は、砂20と産業廃棄物の不燃物とからなる排出物30を炉外に排出するための排出シュート15a、15bを備えている。排出シュート15a、15bは、従来のように、もともと4本あった4本の排出シュート15a、15b、15c、15のうち対向する位置にある2本の排出シュート15c、15dを塞ぎ、2本の排出シュート15a、15bを使用することとしている。尚、排出シュート15a、15bは、それぞれ上部の蒸気投入口22と、下部の蒸気投入口23を備えている。さらに、ガス化炉10は、流動床24付近に温度計25、排出シュート15a、15bの上部に温度計26、排出シュート15a、15bの下部に温度計27が取り付けられている。
【0024】
一方、排出シュート15aの直下には排出手段であるスクリューコンベア28aが、排出シュート15bの直下には排出手段であるスクリューコンベア28bがそれぞれ配置されている。従来は排出物30を排出するための排出コンベア28は1本しか配置されておらず、しかも排出コンベア28は排出シュート15a、15bの直下に配置されていなかったため排出シュート15a及び排出シュート15bを流通する排出物30をそれぞれホッパによって集めて排出コンベア28に導入する必要があった。そのため、棚吊り現象が発生してしまうものと考えられる。そこで、各排出シュート15a、15bのそれぞれの直下にスクリューコンベア28a、28bを配置することとした。これにより排出シュート15a、15b内を流通する排出物30はストレートにスクリューコンベア28a、28b内に落下し導入されることになるので、その結果、従来のような棚吊による排出物30の停滞が発生することを防止することが可能となる。
【0025】
ここで、図6に示すように、スクリューコンベア28a、28bは、それぞれ排出シュート15a、15bを流通する排出物30が導入される開口部29a、29bが長手方向に形成されている。排出シュート15a、15bの位置によって長短のコンベアを取り付けることも可能であるが、スクリューコンベア28a、28bに長い開口部29a、29bを設けることで排出シュート15a、15bの位置にかかわらずその直下に配置させることが可能となり、その結果、クリューコンベア28a、28bは、どの抜出シュート15a、15bに対しても取り付けることが可能な互換性を持たせることができる。尚、クリューコンベア28a、28bの内部には回転可能な図示しないスクリューが内設されており、図示しないスクリューの回速度を制御することにより排出物30の排出速度を調整することができるようになっている。
【0026】
次に、以上のように形成されたガス化炉10の動作について説明する。
まず、従来と同様に、自動車、家庭電化製品等をシュレッダーで処理したシュレッダーダストである産業廃棄物A2等と銅滓A1等を供給コンベア3によりに供給フィーダー4に投入し、供給フィーダー4から一定量を流動層式のガス化炉10に投入する(図1参照)。廃棄物18のガス化炉10への投入は、図5に示すように、廃棄物投入口19から行い、同時に熱媒体である砂20を投入口21からガス化炉10内に投入する。そして、炉底部16に設けた空気吹出孔17から空気を吹出すことによって流動床24が形成され、廃棄物18中の廃プラスチック等がガス化し熱分解ガスEとしてチャー、ダストと共に溶融炉に移送される。
【0027】
一方、砂20と廃棄物18の不燃物とからなる排出物30は排出シュート15a、15bを通ってそれぞれの直下に配置されたスクリューコンベア28a、28bに導入される。このときスクリューコンベア28a、28bがそれぞれ排出シュート15a、25bの直下に位置しているので排出物30がストレートにクリューコンベア28a、28b内に導入される。そのため、従来のような棚吊による排出物30の停滞が発生することが防止される。排出された排出物30は、図示しない砂分球機によって廃棄物18の不燃物と分別され、再度ガス化炉10内に投入され、以下これが繰り返される。
【0028】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】流動層式のガス化炉を含む溶融処理施設の概略構成図である。
【図2】従来の流動層式のガス化炉の縦断面図である。
【図3】図2に示す流動層式のガス化炉の排出シュートにおける横断面図である。
【図4】排出シュートと排出コンベアとの従来の関係を示す横断面図である。
【図5】本発明に係る流動層式のガス化炉の一実施形態における縦断面図である。
【図6】図5に示すガス化炉の排出シュートと排出コンベアとの関係を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ガス化炉
12、24 流動床
15、15a、15b、15c、15d 排出シュート
16 炉底部
17 空気吹出し孔
18 廃棄物
19 廃棄物投入口
20 砂
21 砂投入口
28a、28b スクリューコンベア
29a、29b 開口部
30 排出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に投入された産業廃棄物を熱媒体となる砂等の粒状物質と共に下部側から吹き込んだ空気によって流動層を形成させつつ熱分解によってガス化すると共に、不燃物を回収する流動層式のガス化炉において、
前記不燃物及び前記粒状物質からなる排出物を抜き出すための複数の排出シュートの直下にそれぞれ排出手段を配置することにより前記排出シュート内での棚吊りによる排出物の詰まりを防止したことを特徴とするガス化炉。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化炉において、
前記排出手段がスクリューコンベアであることを特徴とするガス化炉。
【請求項3】
請求項2に記載のガス化炉において、
前記スクリューコンベアは、前記抜出シュートの位置にかかわらずその直下に位置して前記排出物を受け入れ可能に形成された開口部を備え、それによっていずれの抜出シュートに対しても取り付け可能に互換性を有して形成されてなることを特徴とするガス化炉。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のガス化炉において、
前記スクリューコンベアの回転速度は調整可能とされ、それによって排出物の排出量を調整可能とされたことを特徴とするガス化炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−232523(P2008−232523A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72179(P2007−72179)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】