説明

ガス化発電プラント

【課題】ガス化発電プラントから排出される排熱を有効に利用して、プラント効率を改善することが可能なガス化発電プラントを提供することを目的とする。
【解決手段】燃料ガスを燃焼する燃焼器5と、燃焼器5から排出される排ガスによって回転駆動されるタービン7と、タービン7に接続される回転軸8と、回転軸8上に設けられて回転軸8が駆動されることによって空気を圧縮する圧縮機6と、を備えるガスタービン4と、石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉3と、ガスタービン4の回転軸8に接続されて回転軸8が駆動されることによって発電する発電機16と、を備えるガス化発電プラント1において、圧縮機6には、ガス化発電プラント1から排出される排熱を回収した排熱回収気体が導かれることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化発電プラントに関し、特に、ガス化発電プラントの排熱利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、乾式給炭空気吹きの石炭ガス化複合発電プラントは、原炭バンカーから微粉炭機へと石炭が供給され、微粉炭機において石炭が微粉砕される。粉砕された石炭(以下「微粉炭」という。)は、空気分離器によって空気から発生させた不活性ガスである窒素ガスを用いて乾燥および石炭ガス化炉への搬送が行われる。
【0003】
石炭ガス化炉に供給された微粉炭は、後述するガスタービンから導出された空気と共に燃焼されてガス化される。ガス化された生成ガスは、石炭ガス化炉からフィルタへと導かれる。フィルタに導かれた生成ガスは、フィルタを介して生成ガス中に含まれるチャーが分離される。フィルタによって分離されたチャーは、石炭ガス化炉へと回収されて微粉炭と共に燃焼される。その際に、チャーは、空気分離器によって発生させた窒素ガスによって石炭ガス化炉へと搬送される。
【0004】
フィルタにおいてチャーが分離された生成ガスは、ガス精製装置へと導かれる。ガス精製装置に導かれた生成ガスは、ガス精製装置によって生成ガス中に含まれる硫黄化合物や窒素化合物などが取り除かれる。ガス精製装置において硫黄化合物や窒素化合物などが取り除かれた生成ガスは、燃料ガスとしてガスタービンへと導かれる。ガスタービンに導かれた燃料ガスは、ガスタービンの燃焼器において空気と共に燃焼されて排ガスを排出する。
【0005】
燃焼器から排出された排ガスは、ガスタービンのタービンを回転駆動させる。タービンが回転駆動することによって、タービンに接続されている回転軸が回転する。回転軸が回転することによって、同軸上に設けられている圧縮機が回転駆動されて空気を圧縮する。圧縮機が圧縮した空気は、ガスタービンの燃焼器および石炭ガス化炉へと供給される。
また、回転軸が回転することによって、回転軸の端部に接続されている発電機が回転駆動されて電気を発生する。
【0006】
ガスタービンの圧縮機によって圧縮された空気は、温度が400℃から500℃の高温とされる。この高温の圧縮空気は、前述した石炭ガス化炉へと導かれる途中において、再生熱交換器へと導かれる。再生熱交換器へと導かれた高温の圧縮空気は、後述する再加圧された圧縮空気と熱交換されて温度が下げられる。再生熱交換器によって温度が下げられた圧縮空気は、さらに水と熱交換する冷却器へと導かれる。冷却器によって圧縮空気の温度は、50℃から80℃に下げられて昇圧機へと導かれる。このようにして、昇圧機に導かれた圧縮空気は、昇圧機の入口温度に適した温度に下げられることになる。
【0007】
昇圧機に導かれた圧縮空気は、昇圧機によって再加圧される。ここで圧縮空気は、昇圧機によって石炭ガス化炉やガス精製設備を圧縮空気もしくは生成ガスが通過する際に生じる圧力損失を考慮した圧力まで再加圧される。再加圧された圧縮空気は、前述した再生熱交換器へと導かれる。再加圧された圧縮空気は、再生熱交換器において圧縮機から導出された高温の圧縮空気と熱交換して温度が上昇する。温度の上昇した再加圧された圧縮空気は、石炭ガス化炉へと導かれる。
【0008】
特許文献1には、空気分離器によって分離された酸素や排ガス凝縮器によって分離回収された二酸化炭素を圧縮機の吸気に導くことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−1428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、氷点下以下の低大気温度の下でガスタービンを運転させた場合には、圧縮機がサージングを生じる恐れがあった。これを防止するために、ガスタービンのIGV開度を閉じたり燃焼温度を低下させたりしている。しかし、これらの場合には、ガス化発電プラントのプラント効率が著しく低下するという問題があった。
また、特許文献1に記載の発明は、ガスタービンの燃焼器に導かれる酸素量や空気量を制御するものであるため、圧縮機のサージングを防止してガス化発電プラントのプラント効率低下を防止することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ガス化発電プラントから排出される排熱を有効に利用して、プラント効率を改善することが可能なガス化発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のガス化発電プラントは、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るガス化発電プラントによれば、燃料ガスを燃焼する燃焼器と、該燃焼器から排出される排ガスによって回転駆動されるタービンと、該タービンに接続される回転軸と、該回転軸上に設けられて該回転軸が駆動されることによって空気を圧縮する圧縮機と、を備えるガスタービンと、石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉と、前記ガスタービンの前記回転軸に接続されて該回転軸が駆動されることによって発電する発電機と、を備えるガス化発電プラントにおいて、前記圧縮機には、当該ガス化発電プラントから排出される排熱を回収した排熱回収気体が導かれることを特徴とする。
【0013】
圧縮機の吸気空気が氷点下以下等の低大気温度の場合には、圧縮機が吸気する重量流量が増加する。圧縮機の吸気空気の重量流量が過剰な場合には、圧縮機にサージングを生じる。これを防止するために、ガスタービンのIGV開度を閉じたり燃焼温度を低下させたりする結果としてガスタービンのタービン効率が低下し、ガス化発電プラントのプラント効率が低下する。
【0014】
そこで、圧縮機の吸気には、ガス化発電プラントから排出される排熱を回収した排熱回収気体を供給することとした。そのため、圧縮機の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービンの性能改善を図ることができる。したがって、ガス化発電プラントの排熱を有効活用して、ガス化発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【0015】
さらに、本発明に係るガス化発電プラントによれば、前記ガス化炉によってガス化された燃料ガスと空気とが熱交換するガス精製装置用熱交換器と、該ガス精製装置用熱交換器を通過した燃料ガスを脱硫する脱硫装置とを有するガス精製装置を備え、前記排熱回収気体として、前記ガス精製装置用熱交換器によって燃料ガスと熱交換した空気が用いられることを特徴とする。
【0016】
ガス精製装置において燃料ガスは、ガス精製装置用熱交換器によって空気と熱交換して温度が下げられて脱硫装置へと導かれる。ガス精製装置用熱交換器において燃料ガスと熱交換して温度が上昇した空気は、ガス化発電プラントからそのまま排出される。
【0017】
そこで、ガス精製装置用熱交換器において燃料ガスと熱交換して温度が上昇した空気を排熱回収気体として用いることとした。そのため、圧縮機の吸気空気の温度を上昇させることができ、低大気温度条件でのガスタービンの性能改善を図ることができる。したがって、ガス化発電プラントの排熱を有効活用することができ、ガス化発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【0018】
さらに、本発明に係るガス化発電プラントによれば、前記圧縮機から導出された圧縮空気と再加圧空気とが熱交換する第1の再生用熱交換器と、該第1の再生用熱交換器によって温度が低下した圧縮空気と空気とが熱交換する第2の再生用熱交換機と、該第2の再生用熱交換機によって温度が低下した圧縮空気を再加圧して再加圧空気とする昇圧機と、を備え、前記排熱回収気体として、前記第2の再生用熱交換機によって圧縮空気と熱交換した空気が用いられることを特徴とする。
【0019】
空気吹き石炭ガス化炉では、ガス化剤として圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧機によって再加圧して用いる。昇圧機によって圧縮空気を再加圧する場合には、昇圧機の入口温度に制限があるため昇圧機に導かれる圧縮空気を熱交換器によって熱交換させて温度を下げている。
【0020】
そこで、第2の再生用熱交換機によって圧縮空気と熱交換して温度の上昇した空気を排熱回収気体として用いることとした。そのため、圧縮機の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービンの性能改善を図ることができる。したがって、ガス化発電プラントの排熱を有効活用することができ、ガス化発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【0021】
さらに、本発明に係るガス化発電プラントによれば、大気吸込みの空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機と、該空気分離装置用圧縮機によって圧縮された空気中の湿分を除去する吸着器と、該吸着器によって湿分が除去された空気から酸素と窒素とを分離する凝縮器とを有し、分離された窒素を用いて石炭を前記ガス化炉へと搬入する空気分離装置を備え、前記排熱回収気体として、前記空気分離装置から前記吸着器に導いた窒素が用いられることを特徴とする。
【0022】
空気分離装置の吸着器は、吸着した湿分を除去するために、空気分離装置用圧縮機によって圧縮された後に空気分離装置によって分離された圧縮された窒素を通過させて再生させている。そのため、吸着器を通過した窒素は、顕熱を有することになる。
【0023】
そこで、吸着器を通過して顕熱を有する窒素を排熱回収気体として用いることとした。そのため、圧縮機の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービンの性能改善を図ることができる。したがって、ガス化発電プラントの排熱を有効活用することができ、ガス化発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【0024】
さらに、本発明に係るガス化発電プラントによれば、前記ガス精製装置は、燃料ガス中の二酸化炭素を圧縮して回収する二酸化炭素回収装置と、該二酸化炭素回収装置によって回収された二酸化炭素を圧縮する二酸化炭素回収用圧縮機と、該二酸化炭素回収用圧縮機によって圧縮された二酸化炭素と空気とが熱交換する二酸化炭素回収用熱交換器と、を備え、前記排熱回収気体として、前記二酸化炭素回収用熱交換器によって圧縮された二酸化炭素と熱交換した空気が用いられることを特徴とする。
【0025】
二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置によって回収された後、二酸化炭素回収用圧縮機にて圧縮されて廃棄される。圧縮された二酸化炭素は、顕熱によって温度が上昇する。この顕熱は、廃熱としてガス化発電プラントからそのまま排出される。
【0026】
そこで、二酸化炭素回収用圧縮機によって圧縮された二酸化炭素と二酸化炭素回収用熱交換器において熱交換した空気を排熱回収気体として用いることとした。そのため、圧縮機の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービンの性能改善を図ることができる。したがって、ガス化発電プラントの排熱を有効活用することができ、ガス化発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【発明の効果】
【0027】
上述した発明によれば、圧縮機の吸気には、ガス化発電プラントから排出される排熱を回収した排熱回収気体を供給することとした。そのため、圧縮機の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービンの性能改善を図ることができる。したがって、ガス化発電プラントの排熱を有効活用して、ガス化発電プラントのプラント効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る大気温度に対する調整弁の開度と、大気温度および調整弁の開度に対する圧縮機の出力との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第2実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図が示されている。
図1に示されているように、石炭を燃料とする石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)1は、主として、石炭供給設備10と、石炭供給設備10から供給された微粉炭(石炭)をガス化する石炭ガス化炉(ガス化炉)3と、石炭ガス化炉3によってガス化された燃料ガスを燃焼して駆動されるガスタービン4と、ガスタービン4から導出される排ガスの熱を利用して発生した蒸気が導かれる蒸気タービン9と、ガスタービン4および蒸気タービン9によって駆動される発電機16とを備えている。
【0030】
石炭供給設備10は、石炭ガス化炉3の上流側に設けられており、石炭ガス化炉3へと微粉炭を供給する。石炭供給設備10は、原料炭が備蓄されている原炭バンカー11と、原料炭を微粉砕する微粉炭機12と、微粉炭機12によって粉砕された微粉炭を貯留する微粉炭ホッパ13とを備えている。
【0031】
原炭バンカー11から微粉炭機12へと導かれた原料炭は、微粉炭機12によって数μm〜数百μmの微粉炭に粉砕される。微粉炭機12が粉砕した微粉炭は、微粉炭を一時的に蓄えるじょうご形状の微粉炭ホッパ13へと導かれる。
【0032】
微粉炭ホッパ13内の微粉炭は、空気から窒素と酸素とを分離する空気分離装置20によって分離された窒素によって一定流量ずつ石炭ガス化炉3へと搬送される。ここで、窒素は、微粉炭を石炭ガス化炉3へと搬送する搬送ガスとして用いられる。
【0033】
石炭ガス化炉3は、下方から上方へとガスが流されるように形成された石炭ガス化部3aと、石炭ガス化部3aの下流側に接続されて上方から下方へとガスが流されるように形成された熱交換部3bとを備えている。
石炭ガス化部3aの下方には、コンバスタ(図示せず)及びリダクタ(図示せず)が設けられている。コンバスタは、微粉炭及びチャーの一部分を燃焼させ、残りは熱分解により揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素)として放出させる部分である。コンバスタには、噴流床が採用されている。しかし、流動床式や固定床式であっても構わない。
【0034】
コンバスタ及びリダクタには、それぞれ、コンバスタバーナー(図示せず)及びリダクタバーナー(図示せず)が設けられている。これらのバーナーに対して微粉炭ホッパ13から微粉炭が供給される。
コンバスタバーナーには、後述するガスタービン4の圧縮機6が圧縮した空気が供給されるようになっている。ここで、ガスタービン4の圧縮機6から供給される空気は、ガス化剤として用いられる。
【0035】
リダクタでは、コンバスタからの高温ガスによって微粉炭がガス化される。これにより、微粉炭から一酸化炭素や水素等の可燃性の生成ガスが生成される。石炭ガス化反応は、微粉炭及びチャー中の炭素が高温ガス中の二酸化炭素及び水分と反応して一酸化炭素や水素を生成する吸熱反応である。
【0036】
石炭ガス化炉3のリダクタにおいて生成された生成ガスは、脱じん装置14へと導かれる。脱じん装置14は、生成ガスが通過することによって生成ガス中に混在するチャーを捕捉する。脱じん装置14によって捕捉されたチャーは、チャーを一時的に蓄えるチャーホッパ15へと導かれる。チャーホッパ15に回収されたチャーは、空気分離装置20によって分離された窒素と共に石炭ガス化炉3のコンバスタバーナーへと返送されてリサイクルされる。
【0037】
脱じん装置14を通過した生成ガスには、硫化水素や硫化カルボニルといった硫黄化合物が含まれている。そのため、脱じん装置14からガス精製装置30へと生成ガスを導く。ガス精製装置30は、ガス精製装置用ガス熱交換器31と、ガス精製装置用空気熱交換器(ガス精製装置用熱交換器)32と、スクラバー33と、脱硫装置34とを備えている。
【0038】
ガス精製装置用ガス熱交換器31は、ガス精製装置30に導かれた生成ガスと、脱硫装置34によって硫黄化合物が除去された生成ガス(以下「燃料ガス」という。)とが熱交換するものである。
【0039】
ガス精製装置用空気熱交換器32は、ガス精製装置用ガス熱交換器31において燃料ガスと熱交換して温度が低下した生成ガスが空気と熱交換するものである。ガス精製装置用空気熱交換器32において、生成ガスと熱交換した空気(以下「排熱回収気体」という。)は、温度が上昇する。この排熱回収気体は、後述するガスタービン4の圧縮機6の吸気へと導かれる。
【0040】
スクラバー33は、ガス精製装置用空気熱交換器32において温度が下げられた生成ガスを通過させて、生成ガス中に含まれている水溶性のハロゲン化物等を除去するものである。
脱硫装置34は、スクラバー33を通過した生成ガスをメチルジエタノールアミン(MDEA)吸収液等のアミン系吸収液に通過させて、生成ガス中の硫黄分を除去して燃料ガスに精製するものである。
【0041】
脱硫装置34から導出された燃料ガスは、ガス精製装置用ガス熱交換器31においてガス精製装置30に導かれた生成ガスと熱交換して、温度が上昇する。温度が上昇した燃料ガスは、ガス精製装置用ガス熱交換器31からガスタービン4へと導かれる。ガスタービン4に導かれた燃料ガスは、ガスタービン4の燃焼器5へと送られる。
【0042】
ガスタービン4は、燃焼器5と、燃焼器5から排出された排ガスによって駆動されるタービン7と、燃焼器5へと高圧の圧縮空気を送り出す圧縮機6とを備えている。
燃焼器5では、導かれた燃料ガスと、後述する圧縮空気とが燃焼されて排ガスが排出される。燃焼器5から排出された排ガスは、タービン7へと導かれる。タービン7に導かれた排ガスは、タービン7を回転駆動する。タービン7が排ガスによって駆動されることによって、タービン7に接続されている回転軸8が回転駆動される。
【0043】
回転軸8が回転駆動されることによって、回転軸8上に設けられている圧縮機6が回転駆動されて空気と、前述したガス精製装置30から導出された温度の上昇した排熱回収気体とを吸引する。圧縮機6に吸引された空気と排熱回収気体とは、圧縮機6によって圧縮される。圧縮機6によって圧縮された空気と排熱回収気体(以下「圧縮空気」という。)の一部は、圧縮機6から燃焼器5へと導かれる。燃焼器5に導かれた圧縮空気は、燃料ガスと共に燃焼される。なお、残りの圧縮空気は、後述する昇圧機22へと導かれる。
【0044】
圧縮機6およびタービン7が設けられている回転軸8には、発電機16が接続されている。そのため、タービン7の回転駆動に伴い回転軸8が回転駆動することによって、発電機16が駆動される。発電機16が駆動されることによって発電機16は、電気を発生する。
【0045】
タービン7を回転駆動させた排ガスは、排熱回収ボイラ17へと導かれる。排熱回収ボイラ17は、タービン7から導かれた排ガスの熱によって蒸気を発生するものである。後述する復水器19から排熱回収ボイラ17に導かれる水に熱を与えて蒸気を発生させた排ガスは、煙突18から石炭ガス化複合発電プラント1外へと排出される。
【0046】
排熱回収ボイラ17においてタービン7から導かれた高温の排ガスによって発生された蒸気は、蒸気タービン9へと供給される。蒸気タービン9は、ガスタービン7と同じ回転軸8に接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっている。なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、別軸式のコンバインドシステムであっても構わない。
【0047】
タービン7によって回転駆動されている回転軸8は、蒸気タービン9によって駆動力が増加する。そのため、回転軸8に接続されている発電機16の発電量が増加する。
蒸気タービン9を回転駆動した蒸気は、復水器19へと導かれる。復水器19によって、蒸気タービン9を回転駆動した蒸気は、冷却されて水に戻される。復水器19によって戻された水は、排熱回収ボイラ17および後述する昇圧機用熱交換器23へと導かれる。
【0048】
圧縮機6から導出された高圧の圧縮空気の一部は、昇圧機用再生熱交換器21へと導かれる。
昇圧機用再生熱交換器21は、圧縮機6から導出された圧縮空気と、後述する昇圧機22によって昇圧された圧縮空気(以下、「再加圧空気」という。)とが熱交換するものである。圧縮機6から導出された圧縮空気は、温度が上昇している。そのため、圧縮機6から導出された高温の圧縮空気は、昇圧機用再生熱交換器21において再加圧空気に熱を与えて温度が低下する。
【0049】
昇圧機用再生熱交換器21において温度が下げられた圧縮空気は、排熱回収ボイラ17から導かれた水を冷媒とする昇圧機用熱交換器23へと導かれる。
昇圧機用熱交換器23は、昇圧機用再生熱交換器21から導出された圧縮空気と、冷媒である水とが熱交換するものである。昇圧機用熱交換器23において、水と熱交換した圧縮空気は、温度が下げられる。
【0050】
昇圧機用熱交換器23によって温度が下げられた圧縮空気は、昇圧機22へと導かれる。昇圧機22に導かれた圧縮空気は、昇圧機22によって昇圧されて再加圧空気とされる。再加圧空気は、前述した昇圧機用再生熱交換器21へと導かれる。昇圧機用再生熱交換器21に導かれた再加圧空気は、圧縮機6から導出された圧縮空気と熱交換して温度が上昇する。
昇圧機用再生熱交換器21を通過して温度が上昇した再加圧空気は、石炭ガス化炉3へと供給される。
【0051】
次に、本実施形態に係る排熱回収気体の流れ、圧縮機に導かれる排熱回収気体と大気空気との制御方法について説明する。
排熱回収気体は、ガス精製装置30に設けられているガス精製装置用空気熱交換器32において、生成ガスと熱交換して温度が上昇した空気である。排熱回収気体は、ガス精製装置用空気熱交換器32を通過後、ガスタービン4に設けられている圧縮機6に接続されている吸気系路へと合流する。
【0052】
圧縮機6に接続されている吸気系路は、大気の空気を、吸気フィルタ(図示せず)を介して取り込むものである。吸気フィルタと圧縮機6との間の吸気系路には、前述した排熱回収気体が合流されている。排熱回収気体が合流する上流側の吸気系路であって吸気フィルタの下流側には、図示しない調整弁が設けられている。この調整弁は、吸気フィルタから吸いこまれた大気の温度に応じて開度が制御される。
【0053】
圧縮機6が回転駆動されることによって、圧縮機6には、吸気系路より大気(空気)と、ガス精製装置用空気熱交換器32から導かれた排熱回収気体とが吸気される。この際、吸気系路に設けられている調整弁の開度が制御される。
【0054】
図2には、大気温度に対する調整弁の開度と、大気温度および調整弁の開度に対する圧縮機の出力とを示したグラフが示されている。
図2に示すグラフは、横軸に大気温度を、左縦軸に調整弁の開度を、右縦軸に圧縮機の出力を表している。グラフ中の実線は、大気温度に対する調整弁の開度の関係を示している。また、グラフ中の太線は、大気温度および調整弁の開度に対する圧縮機6の出力の関係を示している。
【0055】
図2のグラフの実線が示すように、大気温度が、例えば氷点下以下の場合には、調整弁の開度が絞られる。これにより、圧縮機6には、温度の低い大気の流入が減る。圧縮機6には、温度の上昇した排熱回収気体が供給されているため、吸気空気の温度が上昇する。そのため、図2のグラフの太線が示すように、圧縮機6の出力が維持されることとなる。
【0056】
以上の通り、本実施形態に係るガス化発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
圧縮機6の吸気には、石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)1から排出された排熱を回収した排熱回収気体を供給することとした。そのため、圧縮機6の吸気空気の温度を上昇させることができ、低大気温度条件でのガスタービン4の性能改善を図ることができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント1の排熱を有効活用して、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を改善することができる。
【0057】
ガス精製装置用空気熱交換器(ガス精製装置用熱交換器)32において生成ガスと熱交換して温度が上昇した空気を排熱回収気体として用いることとした。そのため、圧縮機6の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービン4の性能改善を図ることができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント1の排熱を有効活用して、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を改善することができる。
【0058】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のガス化発電プラントは、昇圧機用再生熱交換器と昇圧機用熱交換器との間に昇圧機用空気熱交換器を設け、昇圧機用空気熱交換器において熱交換した空気を排熱回収気体として圧縮機の吸気に導く点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成、流れおよび制御方法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図3には、本発明の第2実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図が示されている。
昇圧機用再生熱交換器(第1の再生用熱交換器)21と昇圧機用熱交換器23との間には、昇圧機用空気熱交換器(第2の再生用熱交換機)25が設けられている。昇圧機用再生熱交換器21において、再加圧空気と熱交換した圧縮空気は、例えば、150℃に温度が下げられる。温度が下げられた圧縮空気は、昇圧機用空気熱交換器25へと導かれる。
【0060】
昇圧機用空気熱交換器25は、圧縮空気と、冷媒である空気とが熱交換するものである。昇圧機用空気熱交換器25において圧縮空気と熱交換した空気は、温度が上昇した排熱回収気体として導出される。昇圧機用空気熱交換器25から導出された排熱回収気体は、圧縮機6の吸気系路に合流される。
【0061】
一方、昇圧機用空気熱交換器25において空気と熱交換した圧縮空気は、温度が低下する。温度が低下した圧縮空気は、昇圧機用熱交換器23へと導かれる。昇圧機用熱交換器23に導かれた圧縮空気は、水と熱交換することによって、例えば、40℃に温度がさらに下げられる。
【0062】
以上の通り、本実施形態に係るガス化発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
昇圧機用空気熱交換器(第2の再生用熱交換機)25によって圧縮空気と熱交換して温度の上昇した空気を排熱回収気体として用いることとした。そのため、圧縮機6の吸気空気の温度を上昇させることができる、ガスタービン4の性能改善を図ることができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)1の排熱を有効活用して、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を改善することができる。
【0063】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態のガス化発電プラントは、空気分離装置から導出された空気を排熱回収気体として圧縮機の吸気に導く点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成、流れおよび制御方法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図4には、本発明の第3実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図が示されている。
【0064】
空気分離装置20は、吸着器(図示せず)と、空気分離装置用圧縮機(図示せず)と、凝縮器(図示せず)とを備えている。
吸着器は、空気分離装置20に取り込まれる空気中の湿分を除去するものである。
空気分離装置用圧縮機は、吸着器に導かれる空気を圧縮するものである。
凝縮器は、供給された空気から酸素と窒素とを分離するものである。
【0065】
吸気フィルタ(図示せず)を介して取り込まれた大気からの空気は、空気分離装置用圧縮機によって圧縮される。空気分離装置用圧縮機によって圧縮された空気は、吸着器において空気中の湿分が吸着除去される。吸着器に吸着された湿分は、凝縮器によって分離された窒素ガスの一部を吸着器に通過させることによって除去される。吸着器に窒素ガスを通過させることによって吸着器は、乾燥されて再生される。
【0066】
空気中の湿分が吸着除去された乾燥空気は、低温の製品酸素及び窒素との熱交換により温度を低減した後、凝縮器に導かれ、沸点差を利用して窒素と酸素とに分離される。
【0067】
凝縮器によって空気から分離された窒素の一部は、吸着器へと導かれる。吸着器に導かれた窒素は、前述したように吸着器を再生する。吸着器を再生した窒素は、顕熱を有しながら吸着器から導出される。この吸着器から導出された顕熱を有する窒素を排熱回収気体として、圧縮機6に接続されている吸気系統に合流させる。
なお、凝縮器によって分離された酸素は、石炭ガス化炉(ガス化炉)3へと導かれる。また、凝縮器から導出された窒素の残りは、微粉炭の搬送ガスおよびチャーの搬送ガスとして用いられる。
【0068】
以上の通り、本実施形態に係るガス化発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
吸着器を通過して顕熱を有する窒素を排熱回収気体としてとして用いることとした。そのため、圧縮機6の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービン4の性能改善を図ることができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)1の排熱を有効活用することができ、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を改善することができる。
【0069】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態のガス化発電プラントは、脱硫装置の下流側に二酸化炭素回収装置と、圧縮機の上流側に二酸化炭素回収用熱交換器とを設け、二酸化炭素回収用熱交換器から導出された空気を排熱回収気体として圧縮機の吸気に導く点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成、流れおよび制御方法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図5には、本発明の第4実施形態に係るガス化発電プラントの概略構成図が示されている。
【0070】
脱硫装置35は、二酸化炭素回収装置(図示せず)を備えている。二酸化炭素回収装置は、燃料ガス中の二酸化炭素を回収するものである。二酸化炭素回収装置によって回収された二酸化炭素は、二酸化炭素回収用圧縮機(図示せず)によって圧縮される。二酸化炭素回収用圧縮機によって圧縮された二酸化炭素は、二酸化炭素回収用熱交換器26へと導かれる。
【0071】
二酸化炭素回収用熱交換器26は、空気を冷媒として二酸化炭素回収用圧縮機から導かれた圧縮された二酸化炭素と熱交換するものである。
二酸化炭素回収用圧縮機によって圧縮された二酸化炭素は、顕熱を有している。そのため、二酸化炭素回収用熱交換器26において二酸化炭素が有する顕熱は、冷媒である空気に付加される。そのため、二酸化炭素回収用熱交換器26から導出された空気は、温度が上昇する。この温度の上昇した空気は、排熱回収気体として圧縮機6に接続されている吸気系統に合流される。
一方、二酸化炭素回収用熱交換器26において空気と熱交換した二酸化炭素は、図示しない貯蔵庫、または、地中に溜められる。
【0072】
以上の通り、本実施形態に係るガス化発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
二酸化炭素回収用熱交換器26において、二酸化炭素回収用圧縮機によって圧縮された二酸化炭素と熱交換した空気を排熱回収気体として用いることとした。そのため、圧縮機6の吸気空気の温度を上昇させることができ、ガスタービン4の性能改善を図ることができる。したがって、石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)1の排熱を有効活用することができ、石炭ガス化複合発電プラント1のプラント効率を改善することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ガス化発電プラント(石炭ガス化複合発電プラント)
3 ガス化炉(石炭ガス化炉)
4 ガスタービン
5 燃焼器
6 圧縮機
7 タービン
8 回転軸
16 発電機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼する燃焼器と、該燃焼器から排出される排ガスによって回転駆動されるタービンと、該タービンに接続される回転軸と、該回転軸上に設けられて該回転軸が駆動されることによって空気を圧縮する圧縮機と、を備えるガスタービンと、
石炭をガス化して燃料ガスにするガス化炉と、
前記ガスタービンの回転軸に接続されて該回転軸が駆動されることによって発電する発電機と、を備えるガス化発電プラントにおいて、
前記圧縮機には、当該ガス化発電プラントから排出される排熱を回収した排熱回収気体が導かれるガス化発電プラント。
【請求項2】
前記ガス化炉によってガス化された燃料ガスと空気とが熱交換するガス精製装置用熱交換器と、該ガス精製装置用熱交換器を通過した燃料ガスを脱硫する脱硫装置とを有するガス精製装置を備え、
前記排熱回収気体として、前記ガス精製装置用熱交換器によって燃料ガスと熱交換した空気が用いられる請求項1に記載のガス化発電プラント。
【請求項3】
前記圧縮機から導出された圧縮空気と再加圧空気とが熱交換する第1の再生用熱交換器と、
該第1の再生用熱交換器によって温度が低下した圧縮空気と空気とが熱交換する第2の再生用熱交換機と、
該第2の再生用熱交換機によって温度が低下した圧縮空気を再加圧して再加圧空気とする昇圧機と、を備え、
前記排熱回収気体として、前記第2の再生用熱交換機によって圧縮空気と熱交換した空気が用いられる請求項1に記載のガス化発電プラント。
【請求項4】
大気吸込みの空気を圧縮する空気分離装置用圧縮機と、該空気分離装置用圧縮機によって圧縮された空気中の湿分を除去する吸着器と、該吸着器によって湿分が除去された空気から酸素と窒素とを分離する凝縮器とを有し、分離された窒素を用いて石炭を前記ガス化炉へと搬入する空気分離装置を備え、
前記排熱回収気体として、前記空気分離装置から前記吸着器に導いた窒素が用いられる請求項1に記載のガス化発電プラント。
【請求項5】
前記ガス精製装置は、燃料ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、該二酸化炭素回収装置によって回収された二酸化炭素を圧縮する二酸化炭素回収用圧縮機と、該二酸化炭素回収用圧縮機によって圧縮された二酸化炭素と空気とが熱交換する二酸化炭素回収用熱交換器と、を備え、
前記排熱回収気体として、前記二酸化炭素回収用熱交換器によって圧縮された二酸化炭素と熱交換した空気が用いられる請求項1または請求項2に記載のガス化発電プラント。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174454(P2011−174454A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41085(P2010−41085)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】