説明

ガス化設備

【課題】冷ガス効率を高く維持すると同時に、ガス化ガスの温度上昇を抑制して灰の付着が生じ難いガス化炉を備えたガス化設備を提供する。
【解決手段】発電設備の排気から分離したCO2ガスの一部を回収CO2圧縮機25で圧縮し、圧縮されたCO2ガスを石炭(微粉炭)の搬送用として用い、微粉炭と共にCO2ガスをガス化炉内に供給し、CとCO2の吸熱反応によるCOの生成を促進して石炭ガス化炉15内の温度上昇を抑えてガス化ガスを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素系燃料とO2の反応によりガス化ガスを生成するガス化炉を備えたガス化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は世界の広い地域に存在し、可採埋蔵量が多く、価格が安定しているため、供給安定性が高く発熱量あたりの価格が低廉である。このため、石炭火力発電は、エネルギーの確保、エネルギー価格の安定に重要な役割を果たしている。また、水力、原子力による発電との電力需要のバランスを調整する役割としても重要である。
【0003】
石炭を燃料とする火力発電は、石炭をボイラで燃焼させることで蒸気を得て、蒸気タービンを駆動させる汽力発電や、石炭ガス化ガスをガス精製して燃焼器で燃焼させ、燃焼器からの燃焼ガスを膨張タービン(ガスタービン)で膨張させてガスタービンにより動力を得るガスタービン発電が知られている。また、ガスタービン発電に加え、ガスタービンの排気ガスの熱回収により得られた蒸気で駆動される蒸気タービンを備えた複合発電等が知られている。
【0004】
石炭ガス化炉としては、固定床型ガス化炉、流動床型ガス化炉、噴流床型ガス化炉が知られている。発電設備用の石炭ガス化炉としては、石炭分の灰分を溶融させスラグ状として排出する噴流床型の石炭ガス化炉が主に開発されている。
【0005】
噴流床型の石炭ガス化炉では、バーナからの石炭と酸化剤とが炉内で反応して高温状態になり、石炭中の灰が溶融してスラグ状となった灰が分離され、ガス化反応が生じて、可燃性のガス化ガスが生成される。溶融してスラグ状となった灰の一部がガス化ガスにより運ばれ、路内壁等に付着する虞があるため、ガス化ガスよりも温度の低いクエンチガスを炉の出口近傍に供給し、ガス化ガスの温度を下げて灰の付着を防止することが従来から行なわれている(例えば、特許文献1参照)。クエンチガスとしては、例えば、生成されたガス化ガスの一部を冷却して供給されている。
【0006】
しかし、ガス化ガスの一部をクエンチガスとして用いた場合、サイクロン等でスラグ等を分離したガス化ガスの分岐経路を構築し、更に、ガス化ガスを冷却するための熱交換器等の機器やガス化ガスの流通を制御する流量制御機器を必要としていた。このため、ガス化炉の出口周りの機器が複雑化する結果になり、設備コストが嵩むと共にガス化炉の形状の設計に制約を受けることになっていた。また、ガス化炉の効率(冷ガス効率)を高く維持するためには生成ガスの発熱量を高く維持することが不可欠であるが、同時に灰の付着を抑制することも考慮する必要がある。
【0007】
このため、ガス化炉の設計を変更することなく、また、ガス化炉の設計に自由度を持たせた状態で、灰の付着の防止と生成ガスの発熱量の高温化を両立させることは困難な状況であるのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開平9−194854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、炭素系燃料の単位流量あたりの発熱量に対する生成ガスの単位流量あたりの発熱量を確保して効率を高く維持すると同時に灰の付着が生じ難いガス化炉を備えたガス化設備を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のガス化設備は、炭素系燃料とO2の反応によりガス化ガスを生成するガス化炉の内部に外部からCO2を投入するCO2投入手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る本発明では、CO2投入手段からCO2を投入することにより、CとCO2の吸熱反応によるCOの生成を促進し、ガス化炉内の温度上昇を抑えてガス化ガスを生成することができ、単位流量あたりの炭素系燃料の発熱量に対する生成ガスの単位流量あたりの発熱量を確保して効率を高く維持すると同時に、ガス化ガスの温度上昇を抑制して灰の付着が生じ難いガス化炉を備えたガス化設備となる。
【0012】
そして、請求項2に係る本発明のガス化設備は、請求項1に記載のガス化設備において、CO2投入手段は、炭素系燃料をガス化炉の内部に搬送する燃料搬送手段であり、搬送される炭素系燃料と共にCO2をガス化炉の内部に投入することでガス化ガス生成の吸熱反応を促進させることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明では、燃料搬送手段により炭素系燃料と共にCO2をガス化炉の内部に投入することができ、既存の設備を用いて搬送ガスをCO2に変更することでCO2の投入を容易に行うことができる。
【0014】
また、請求項3に係る本発明のガス化設備は、請求項1に記載のガス化設備において、CO2投入手段は、冷却用にCO2を投入する冷却手段であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る本発明では、CO2の顕熱によりガス化ガスの温度上昇を抑制することができ、冷却用に用いたCO2によりガス化ガス生成の吸熱反応を促進させることもできる。
【0016】
また、請求項4に係る本発明のガス化設備は、請求項1に記載のガス化設備において、CO2投入手段は、炭素系燃料をガス化炉の内部に搬送する燃料搬送手段、及び、冷却用にCO2を投入する冷却手段であり、燃料搬送手段により搬送される炭素系燃料と共にCO2をガス化炉の内部に投入することでガス化ガス生成の吸熱反応を促進させることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る本発明では、燃料搬送手段により炭素系燃料と共にCO2をガス化炉の内部に投入することができ、既存の設備を用いて搬送ガスをCO2に変更することでCO2の投入を容易に行うことができると共に、CO2の顕熱によりガス化ガスの温度上昇を抑制することができ、冷却用に用いたCO2によりガス化ガス生成の吸熱反応を促進させることもできる。
【0018】
また、請求項5に係る本発明のガス化設備は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のガス化設備において、ガス化炉は噴流床型の石炭ガス化炉であり、石炭とO2の反応により石炭ガス化ガスが生成されることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る本発明では、単位流量あたりの石炭の発熱量に対する生成ガスの単位流量あたりの発熱量を確保して効率を高く維持すると同時に、ガス化ガスの温度上昇を抑制して灰の付着が生じ難い噴流床型の石炭ガス化炉を備えたガス化設備となる。
【0020】
また、請求項6に係る本発明のガス化設備は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のガス化設備において、CO2投入手段で投入されるCO2は、排気ガスとしてCO2が回収される溶融炭酸塩形燃料電池を備えた発電設備から回収されたCO2であることを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る本発明では、溶融炭酸塩形燃料電池の排気ガスのCO2を有効に回収できるガス化炉を備えたガス化設備となる。
【0022】
また、請求項7に係る本発明のガス化設備は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のガス化設備において、CO2投入手段で投入されるCO2は、排気ガスとしてCO2が閉サイクルで運用されるガスタービン発電設備から回収されたCO2であることを特徴とする。
【0023】
請求項7に係る本発明では、閉サイクルで運用されるガスタービン発電設備から回収されたCO2を有効に回収できるガス化炉を備えたガス化設備となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のガス化設備は、炭素系燃料の単位流量あたりの発熱量に対する生成ガスの単位流量あたりの発熱量を確保して効率を高く維持すると同時に灰の付着が生じ難いガス化炉を備えたガス化設備となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態例に係るガス化設備は、O2を吹き込むことで石炭を燃焼してガス化ガスを生成するガス化炉を備え、ガス化炉で得られたガス化ガスを溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)のアノードガスとして用いるものである。MCFCのカソードガスには純O2及びCO2ガスが含まれ、MCFCの排気ガス(CO2ガス)を膨張タービンで膨張させて発電を行ない、膨張タービンの排気ガスを熱回収して蒸気タービンで発電を行い、CO2ガスの一部をCO2圧縮機で圧縮して純O2と共にカソードガスとして循環させる。また、CO2ガスの一部を回収CO2圧縮機で圧縮し、圧縮されたCO2ガスを石炭(微粉炭)の搬送用として用い、微粉炭と共にCO2ガスをガス化炉内に供給する(CO2投入手段)。更に、圧縮されたCO2ガスをクエンチガスとしてガス化炉に投入する(CO2投入手段)。
【0026】
このため、ガス化炉にCO2が供給され、CとCO2の吸熱反応によるCOの生成が促進されてガス化炉内の温度上昇を抑えてガス化ガスを生成することができ、炭素系燃料の単位流量あたりの発熱量に対する生成ガスの単位流量あたりの発熱量を確保して冷ガス効率を高くすると同時に、ガス化ガスの温度上昇を抑制して灰の付着が生じ難いガス化炉を備えたガス化設備となる。
【0027】
図1に基づいて本発明の一実施形態例に係るガス化設備を備えた発電設備を具体的に説明する。図1には本発明の一実施形態例に係るガス化設備を備えた発電設備の概略系統、図2には石炭ガス化炉の詳細構成を示してある。
【0028】
図1に示すように、発電設備には、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)2が備えられ、MCFC2の出口ガス(排気ガス)が導入されて燃焼が行われる燃焼器3が設けられている。燃焼器3からの燃焼ガスを膨張して駆動するタービン4が備えられ、タービン4には発電機5が同軸上に設けられている。タービン4の駆動により発電機5が作動して発電が行われる。
【0029】
MCFC2は、例えば、ニッケル多孔質体の燃料極(アノード)7と、例えば、酸化ニッケル多孔質体の空気極(カソード)8との間に、電解質(炭酸塩)が挟まれて構成されている。そして、石炭ガス化ガスから得られた水素(H2)をアノード7に供給すると共に、空気(O2)とCO2をカソード8に供給することで、H2とO2の電気化学反応により発電が行われる。
【0030】
タービン4の下流にはタービン4で仕事を終えた排気(排気ガス)の熱回収を行う排熱回収手段(排熱回収ボイラ)9が備えられ、排熱回収ボイラ9は蒸気発生器11及び凝縮器12を備えている。排熱回収ボイラ9の凝縮器12には蒸気発電設備41からの給水、例えば、蒸気タービンで仕事を終えた蒸気を凝縮した復水が冷却媒体(給水加熱用)として送られ、蒸気発生器11で熱回収された排気ガスは凝縮器12で凝縮されて水(H2O)と非凝縮ガス(CO2)に分離される。蒸気発生器11で発生した蒸気は蒸気発電設備41に送られ、蒸気タービンを駆動することにより動力が得られる。
【0031】
凝縮器12で分離されたCO2の一部はCO2圧縮機13で圧縮され、CO2圧縮機13で圧縮されたCO2に所定の圧力の純O2を供給する酸素供給系として酸素製造装置14が備えられている。CO2圧縮機13で圧縮されたCO2に所定の圧力の純O2が供給されてカソードガスが生成され、カソードガスはMCFC2のカソード8に供給される。
【0032】
酸素製造装置14は、深冷設備からの純O2を所定圧力に加圧して供給する手段であり、酸素製造装置14からO2を所望量のO2を供給することで、CO2に対するO2の比を所望の比率で運転することができるMCFC2を備えた発電設備となる。
【0033】
一方、酸素製造装置14で得られた純O2と共に石炭を燃焼して石炭ガス化ガス(炭化水素系のガス化ガス)を得る石炭ガス化炉15(O2吹きのガス化炉)が備えられ、石炭ガス化炉15で得られた石炭ガス化ガスは、ガス冷却器16で冷却された後、サイクロン42に送られ、灰分が分離された石炭ガス化ガスとされる。
【0034】
灰分が分離された石炭ガス化ガスはポーラスフィルタ17を通って脱硫装置18で脱硫される。脱硫装置18で脱硫された石炭ガス化ガスは、シフト反応器19で化学反応(発熱反応)によりH2とCO2に反応され、所望のアノードガスを得てMCFC2のアノード7に供給される。脱硫後の石炭ガス化ガスに異物が残留した場合、異物をシフト反応器19でトラップすることができる。
【0035】
シフト反応器19は石炭ガス化ガスが流通する配管内に所望の触媒が配されたもので、石炭ガス化ガス(COを含有するガス)を発熱反応によりH2とCO2に反応させて電気化学反応に用いられるH2を含むアノードガスとされる。シフト反応器19では、
CO+H2O→H2+CO2
の発熱反応が行なわれる。
【0036】
発熱反応によりH2を得ているので、アノードガスを所望の温度に昇温させるための熱交換器(ガス/ガス熱交換器)を用いることなく、即ち、他の機器からの熱を必要とせずにH2を含むアノードガスをMCFC2のアノード7に供給することができる。このため、発熱量を維持することでアノードガスの温度を所望温度に維持することができ、アノードガスの温度を調整するための余分な熱交換用の熱源や冷却源(アノード排ガスの循環等)をなくした状態で、放射熱が生じない状態でアノードガスを得ることができる。
【0037】
また、従来までMCFC2の内部で起こっていたシフト反応による発熱をMCFC2の外部で行うため、シフト反応による発熱分だけ、MCFC2での冷却が不要となり、カソードガスによる電池の冷却動力が削減される。
【0038】
脱硫装置18は湿式の装置で、前述した排熱回収ボイラ9の凝縮器12で凝縮された凝縮水(回収水)の一部が導入される。また、凝縮器12で凝縮された凝縮水(回収水)はポンプ21によりガス冷却器16に送られ、石炭ガス化ガスの冷却用の媒体とされる。凝縮水(回収水)はガス冷却器16で熱交換により加熱されて蒸気とされ、脱硫装置18で脱硫された石炭ガス化ガスに供給される。
【0039】
燃焼器3に送られるMCFC2のカソード排気の一部を冷却する冷却器31が備えられ、冷却器31で冷却されたカソード排気は昇温手段としてのブロア32でカソード8の入口側のカソードガス(純O2とCO2ガスを含むカソードガス)に供給され、カソードガスが所望の温度に昇温される。ブロア32に代えてエジェクタを設けることも可能である。このため、カソードガスを所望の温度に昇温させるための熱交換器(ガス/ガス熱交換器)を用いることなくカソードガスをMCFC2のカソード8に供給することができる。
【0040】
図1、図2に基づいてガス化設備を説明する。
【0041】
図1、図2に示すように、排熱回収ボイラ9の凝縮器12で分離されたCO2のうち余剰の部分は外部に回収されると共に、余剰のCO2の一部は回収CO2圧縮機25で圧縮され、石炭搬送用の圧縮CO2ガスとして石炭ガス化炉15に送られる。石炭ガス化炉15にはホッパー26からの微粉炭が圧縮CO2ガスに搬送されてCO2ガスと共に供給され(CO2搬送手段:CO2投入手段)、更に、石炭ガス化炉15には酸素製造装置14からの純O2が供給される(※1参照)。
【0042】
石炭ガス化炉15では、CO2が共存する状態で微粉炭とO2の反応によりガス化ガスが生成される。また、回収CO2圧縮機25で圧縮された石炭搬送用の圧縮CO2の一部が石炭ガス化炉15の出口近傍にクエンチガスとして投入され(冷却手段:CO2投入手段)、生成ガスの温度を下げて灰の付着が防止される。
【0043】
石炭ガス化炉15では、CO2が共存する状態で微粉炭とO2の反応によりガス化ガスが生成されるため、ガス化反応、即ち、CとCO2によるCO生成反応の吸熱反応を促進することができ、生成ガスの温度を高くすることなく、燃料の発熱量に対する生成ガスの発熱量を高く維持することができる。
【0044】
微粉炭がCO2ガスに搬送されてCO2ガスと共に供給されることで、N2で搬送される場合と同様に微粉炭の自然発火や逆火を防止することができる。つまり、微粉炭の発火現象を防止するため、一般に微粉炭をN2で搬送しているが、CO2も発熱に伴う酸化反応に寄与しないので、CO2ガスにより微粉炭を搬送しても、自然発火や逆火を防止する機能はN2を用いた時と同じに果たすことができる。
【0045】
これにより、燃料の単位流量あたりの発熱量に対する生成ガスの単位流量あたりの発熱量を確保して石炭ガス化炉15の効率(冷ガス効率)を高く維持することができると同時に、ガス化ガスの温度の上昇が抑制されて石炭ガス化炉15の出口近傍での灰の付着を抑制することができる。このため、回収CO2圧縮機25で圧縮された石炭搬送用の圧縮CO2の一部を石炭ガス化炉15の出口近傍にクエンチガスとして投入する手段を省略することも可能である。
【0046】
更に、CO2が共存する状態で微粉炭とO2の反応によりガス化反応が促進されるため、未燃の炭素(チャー)をなくすことができ、サイクロン42でチャーを分離して再投入する系(ホッパー等)をなくすことができる。例えば、石炭ガス化炉15の炉内炭素変換率を70%程度から100%にすることが可能である。このため、サイクロン42は灰を排出する機能を備えるだけの簡素な構成とすることができる。
【0047】
上述したガス化設備を備えた発電設備では、回収CO2圧縮機25で圧縮されたCO2により石炭(微粉炭)が石炭ガス化炉15に搬送され、搬送された石炭(微粉炭)をCO2が共存する状態でO2と共に石炭ガス化炉15で燃焼させて石炭ガス化ガス(CO含有ガス)を生成する。また、回収CO2圧縮機25で圧縮されたCO2の一部が石炭ガス化炉15の出口部近傍にクエンチガスとして投入され、生成された石炭ガス化ガスの温度を下げて路壁面に灰が付着することが防止される。
【0048】
石炭ガス化炉15で生成された石炭ガス化ガスはガス冷却器16で冷却された後サイクロン42で灰が分離され、ポーラスフィルタ17を通って脱硫装置18で脱硫処理されてCO含有ガスをアノードガスとして生成する。CO含有ガスはシフト反応器19で発熱反応によりH2とCO2に反応され、H2を含むアノードガスがMCFC2のアノード7に供給される。MCFC2では、H2を含むアノードガスと純O2及びCO2ガスを含むカソードガスとの電気化学反応により発電が行なわれる。
【0049】
このため、余分な熱源及び熱交換源をなくした状態で、石炭ガス化ガスから所望のアノードガスを得ることができる。
【0050】
MCFC2の排気は燃焼器3で燃焼されてタービン4で膨張され、発電機5で発電が行なわれる。タービン4の排気は排熱回収ボイラ9の蒸気発生器11で熱回収され、凝縮器12で冷却されてCO2ガスと水に分離される。分離されたCO2ガスはCO2圧縮機13で圧縮され、酸素製造装置14からの純O2と共にカソードガスとしてカソード8に圧送される。カソード8側の排気は冷却器31で冷却され、ブロア32で入口側のカソードガスに循環供給され、カソードガスが所望の温度に維持される。
【0051】
CO含有ガスをアノードガスとして生成するに際し、排熱回収ボイラ9の凝縮器12で分離された水(回収水)がポンプ21によりガス冷却器16に送られて石炭ガス化ガスが冷却される。
【0052】
一方、凝縮器12で分離されたCO2の一部は回収CO2圧縮機25で所定の圧力に圧縮され、圧縮されたCO2によりホッパー26からの微粉炭が石炭ガス化炉15に搬送される。また、回収CO2圧縮機25で圧縮されたCO2の一部が石炭ガス化炉15の出口部近傍にクエンチガスとして投入され、生成された石炭ガス化ガスの温度を低下させる。これにより、溶融してスラグ状となった灰の一部がガス化ガスによって運ばれても、スラグ状となった灰が高温になり過ぎることがなく、炉内の壁面に灰が付着することがない。
【0053】
石炭ガス化炉15には圧縮されたCO2によって微粉炭が運ばれ、微粉炭とO2の反応によりCO2が発生してCOが生成される。この時の反応は、石炭搬送用のCO2が供給されてCO2が共存する状態で生じるので、反応が促進されてガス化ガスが生成される。つまり、発生するCO2が外部からのCO2で補われる状態になって反応が促進されてガス化ガスが生成される。この時の炉内での反応は以下の通りである。
【0054】
C+O2→CO2+Q(Kcal/mol):発熱反応
C+CO2→2CO−Q(Kcal/mol):吸熱反応
炉内の熱バランスにより、発熱反応でのCO2は吸熱反応のQ(−)を燃焼させる量が反応生成される。石炭の搬送用ガスとして外部から石炭ガス化炉15の内部にCO2が供給されることにより、吸熱反応におけるCO2が増加してQ(−)が大きくなり、炉内の温度が低下して反応が促進される。CO2による反応の促進は、微粉炭の搬送により供給されたCO2により反応が促進されると同時に、クエンチガスとして供給されたCO2によっても反応が促進される。
【0055】
反応が促進される結果、反応性が高くない微粉炭であっても完全に燃焼されて未燃の炭素(チャー)をなくすことができ、サイクロン42でチャーを分離して再投入する系をなくすことができる。即ち、チャーを貯留するホッパーやチャーを戻すための配管、圧力を所定の状態に維持するための調整手段等をなくすことができる。
【0056】
そして、燃料の流量を変えることなく、燃料の発熱量(×流量)に対する生成ガスの発熱量(×流量)を高く維持することができるので、冷ガス効率を向上させることができる。このため、既存のガス化炉に対して効率を向上させることができる。また、効率を維持した状態で簡素な構造のガス化炉を設計することができる。
【0057】
また、CO2は発熱を伴う酸化反応に寄与しないので、CO2ガスと共に微粉炭が石炭ガス化炉15に供給されても、自然発火や逆火の発生を防止することができ、N2による搬送の代替として適用することが可能である。
【0058】
この結果、ガス化炉のイニシャルコストを抑制することが可能になり、石炭以外であっても炭素系燃料を用いたガス化炉を設計する際の自由度が大幅に向上する。例えば、反応性が高くない微粉炭を燃料とするガス化炉にあっては、チャーの回収を考慮する必要がない簡素な構成とすることが可能になる。反応性が高い燃料が用いられるガス化炉にあっては、所望の効率を得るために炉自体の設計(経路の長さや圧力容器、冷却用の容器等)を簡素化することが可能になる。
【0059】
上述したガス化設備において、微粉炭をN2で搬送した場合との比較を説明する。
【0060】
比較を行なうにあたり、ガス化炉としては、1室1段噴流床形式のガス化炉で、炉の径が4.0m、炉の長さが8.0m、クエンチガスを投入する部位の長さが1.0mのものを用いた。微粉炭としては、固有水分(気乾)が3.6wt%、灰分が(気乾)が9.6wt%、揮発分が30.3wt%、C(無水)が76.3wt%、H(無水)が5.1wt%、O(無水)が6.9wt%、N(無水)が1.7wt%、S(無水)が0.5wt%のものを用いた。
【0061】
そして、ガス化条件としては、図3に示すように、N2搬送の場合、圧力が26.5Mpa、酸素比が0.387、石炭投入量が118.5t/h、ガス化剤流量が111.7t/h、ガス化剤中O2が95vol%、搬送ガス流量が31.3t/h、搬送ガス中N2が99.78vol%、クエンチガス流量が24.5t/h、クエンチガスの性状は生成ガスとした。そして、CO2搬送の場合、N2搬送の搬送ガス中N2が99.78vol%に代えて搬送ガス中CO2が100vol%、N2搬送のクエンチガスの性状が生成ガスであるのを100%CO2とし、その他のガス条件はN2搬送と同一である。
【0062】
上記条件で石炭をN2で搬送した場合とCO2で搬送の場合の生成ガスの状況を図4に基づいて説明する。
【0063】
炉内炭素転換率はN2搬送の場合70%で、CO2搬送の場合100%の結果が得られた。石炭をCO2搬送した場合、CO2による反応促進により、炉内の炭素が100%燃料ガスに転換される。即ち、N2搬送の場合、生成チャーの量が51.8t/hであり、チャーの中のCが72.9wt%、Ash(灰分)が27.1wt%であったのに対し、CO2搬送の場合、生成チャーの量が13.9t/hであり、チャーの中のCが0wt%、Ash(灰分)が100wt%であった。このため、CO2による反応促進の結果、石炭をCO2搬送することで未燃のCをなくすことができることがわかる。
【0064】
また、生成ガスの流量はN2搬送及びCO2搬送共に274.6t/hである。N2搬送の場合、生成ガス発熱量(HHV−wet)は10.31MJ/m3Nで、生成ガスの組成は、H2が24.4vol%、COが56.9vol%であった。CO2搬送の場合、生成ガス発熱量(HHV−wet)は11.13MJ/m3Nで、生成ガスの組成は、H2が21.3vol%、COが66.5vol%、CO2が5.4vol%、H2Oが5.3vol%であった。CH4はN2搬送及びCO2搬送共に0vol%であった。
【0065】
石炭をCO2搬送した場合、CO2による反応促進により、生成ガス中の燃料成分であるCOが多くなり、生成ガス発熱量(HHV−wet)を高く維持することができる。この結果、冷ガス効率(生成ガスの発熱量にガス流量を乗じた値に対する/石炭発熱量(cal)にガス流量を乗じた値)が、N2搬送の場合78.8%であるのに対し、CO2搬送の場合80.8%に向上する。
【0066】
このため、石炭をCO2搬送してCO2を炉内に投入することで、Cと反応してCOを生成する吸熱反応のCO2を多くすることができ、炉内での反応が促進されて炉内のCが100%燃料ガスに転換され、未燃のCをなくすことができることがわかる。また、吸熱反応におけるCO2が増加して炉内の温度が低下し、最小限のクエンチガスであっても(クエンチガスがなくても)、スラグ状となった灰が高温になり過ぎることがなく、炉内の壁面に灰が付着することがなくなることがわかる。従って、灰の付着の防止と生成ガスの発熱量の高温化を両立させることが可能になる。
【0067】
上述したガス化設備に備えられたガス化炉は、石炭(微粉炭)の単位流量あたりの発熱量に対する生成ガスの単位流量あたりの発熱量を確保して効率を高く維持すると同時に灰の付着が生じ難いガス化炉となる。
【0068】
上述した実施形態例では、炭素系の燃料として、石炭を例に挙げて説明したが、固体燃料として生物資源(バイオマス)を適用することも可能である。また、炭素系の燃料として、オイルサンド、オリノコタール等の低質重質油、石油精製プラントから排出される石油コークス、アスファルト等の超低質重質油等を適用することも可能である。この場合、軽油、ガソリン代替油、メタノール等のアルコール類を得ることができる。
【0069】
また、ガス化炉の内部にCO2を投入する手段として、石炭の搬送用のCO2を用いているが、石炭の搬送はN2で行い、別途CO2の投入系を設けることも可能である。CO2の投入系を独立させることにより、微粉炭の搬送状況に拘わらず最適な流量のCO2を投入することができ、反応促進を細かく制御することができる。また、クエンチガスとしてCO2を投入する例を挙げて説明したが、クエンチガスとして生成ガスを用いることも可能である。この場合、既存の設備を大きく変更することなくガス化炉の内部にCO2を投入することができる。また、CO2を投入して吸熱反応を促進させているので、クエンチガスの投入を省略したガス化炉とすることも可能である。更に、クエンチガスとしてCO2を投入することで外部からCO2を投入するCO2投入手段を構成することも可能である。
【0070】
また、上述した実施形態例では、MCFC2を備えた発電設備から回収されたCO2が投入される例を示したが、排気ガスとしてCO2が閉サイクルで運用されるガスタービン発電設備から回収されるCO2が投入される設備とすることも可能である。
【0071】
即ち、本実施形態例の石炭ガス化炉15(図1参照)からのガス化ガス(脱硫後)と純O2及び圧縮機で圧縮されたCO2が燃焼器に送られ、燃焼器からの燃焼ガスを膨張して発電を行なうガスタービンを備え、ガスタービンの排気(CO2・H2O)を熱回収して圧縮機で回収する閉サイクルの発電設備に適用することができる。そして、ガスタービンの排気ガスの一部を回収CO2圧縮機25(図1参照)で圧縮して石炭搬送用として用いる。この場合、ガスタービンの排気(CO2・H2O)は排熱回収ボイラで熱回収され、排熱回収ボイラで発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して発電が行なわれる。蒸気タービンの排気蒸気は復水されて排熱回収ボイラに給水される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、炭素系燃料とO2の反応によりガス化ガスを生成するガス化炉を備えたガス化設備の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態例に係るガス化設備を備えた発電設備の概略系統図である。
【図2】石炭ガス化炉の詳細構成図である。
【図3】ガス化条件を示す表図である。
【図4】生成ガスの状況を示す表図である。
【符号の説明】
【0074】
2 溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)
3 燃焼器
4 タービン
5 発電機
7 燃料極(アノード)
8 空気極(カソード)
9 排熱回収ボイラ
11 蒸気発生器
12 凝縮器
13 CO2圧縮機
14 酸素製造装置
15 石炭ガス化炉
16 ガス冷却器
17 ポーラスフィルタ
18 脱硫装置
19 シフト反応器
21 ポンプ
25 回収CO2圧縮機
26 ホッパー
31 冷却器
32 ブロア
41 蒸気発電設備
42 サイクロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系燃料とO2の反応によりガス化ガスを生成するガス化炉の内部に外部からCO2を投入するCO2投入手段を備えたことを特徴とするガス化設備。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化設備において、
CO2投入手段は、炭素系燃料をガス化炉の内部に搬送する燃料搬送手段であり、搬送される炭素系燃料と共にCO2をガス化炉の内部に投入することでガス化ガス生成の吸熱反応を促進させる
ことを特徴とするガス化設備。
【請求項3】
請求項1に記載のガス化設備において、
CO2投入手段は、冷却用にCO2を投入する冷却手段である
ことを特徴とするガス化設備。
【請求項4】
請求項1に記載のガス化設備において、
CO2投入手段は、炭素系燃料をガス化炉の内部に搬送する燃料搬送手段、及び、冷却用にCO2を投入する冷却手段であり、
燃料搬送手段により搬送される炭素系燃料と共にCO2をガス化炉の内部に投入することでガス化ガス生成の吸熱反応を促進させる
ことを特徴とするガス化設備。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のガス化設備において、
ガス化炉は噴流床型の石炭ガス化炉であり、石炭とO2の反応により石炭ガス化ガスが生成される
ことを特徴とするガス化設備。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のガス化設備において、
CO2投入手段で投入されるCO2は、排気ガスとしてCO2が回収される溶融炭酸塩形燃料電池を備えた発電設備から回収されたCO2である
ことを特徴とするガス化設備。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のガス化設備において、
CO2投入手段で投入されるCO2は、排気ガスとしてCO2が閉サイクルで運用されるガスタービン発電設備から回収されたCO2である
ことを特徴とするガス化設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−291081(P2008−291081A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136545(P2007−136545)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】