説明

ガス噴射装置

【課題】ガス噴射の度にガス供給口上を摺動しガスを封止するOリングの損傷を防止する。
【解決手段】ガスボンベBに連通するガス供給口17の円形の通路13内に断面円形の通路規制体16を挿入することにより円環状の微細な隙間を形成し、ガスを開閉するためのOリング28を動作させ、ガスを微細な隙間から流出させるようにする。このようにガス供給口17を略平面とすることによりOリング28がガス供給口17のエッジに引っ掛からなくなり、Oリング28の損傷がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガスなどの高圧ガスをガスボンベから噴射するためのガス噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
清掃等のために、ガスボンベに充填されている炭酸ガス等の高圧ガスを清掃個所に噴出させる必要が生ずることがある。
【0003】
例えば、特許文献1のような消火ガス噴射器においては、ガスノズル孔に供給するガスは、Oリングを備えた移動体をガスノズル孔上を移動させることによりガスを供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−233849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような構造では、ガスの供給、停止の度に密閉用のゴム製Oリングが円形の開口から成るガスノズル孔上を摺動するので、Oリングはガスノズル孔のエッジによってむしり取られる損傷を受け易く、耐久性に問題があり、長期に渡り繰り返して噴射を行うことは難しい。
【0006】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、ガス噴射の開閉をOリングを用いて長期間に渡り安定して維持することを可能としたガス噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るガス噴射装置は、封止用のOリングを備えた移動体を摺動して前記Oリングによりガス供給源からのガスのガス供給口を開閉することにより、ガス噴射ノズルにガスを供給するガス噴射装置において、前記ガス供給口に前記移動体との摺動面に対して物体を面一に挿入して微細な隙間又は多数の微小な孔部を形成し、前記ガスを前記ガス供給口の微細な隙間又は多数の微小な孔部から流出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るガス噴射装置によれば、ガスボンベに連通するガス供給口に微細な隙間又は多数の微小な孔部を形成することにより、ガス供給口のエッジにガスを開閉するためのOリングが引っ掛からなくなり、Oリングが損傷することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の平面図である。
【図2】側面図である。
【図3】断面図である。
【図4】要部拡大断面図である。
【図5】噴射ノズル部材が移動した状態の断面図である。
【図6】ガス供給口の拡大平面図である。
【図7】実施例2の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は平面図、図2は側面図、図3は断面図、図4は要部拡大断面図である。ガス噴射装置には、例えば長さ90mm、直径20mmの小型のガスボンベBの口部が取り付けられている。つまり、ガス噴射装置のボディ1の下部に形成したボンベ取付口2に、ガス供給源であり高圧ガスを充填したガスボンベBの口部が螺合されている。ボディ1の上部には、棒状の噴射ノズル部材3がプッシュボタン4の操作により、ボディ1のガイド孔5に対し移動体として水平移動可能に組み込まれている。ボディ1、噴射ノズル部材3、プッシュボタン4は金属製でもよいが、合成樹脂材が安価で好適である。
【0012】
ボンベ取付口2には内ねじが刻設されており、ボンベ取付口2の奥部には封止用のOリング6が装着されている。ボンベ取付口2の上部には突刺部7が設けられており、突刺部7から突刺針8が下方向に向けて突出されている。突刺針8の中心部には上方に向けて第1の通路9が形成され、その上部は拡径された第2の通路10とされている。突刺部7の上方のボディ1内には、断面円形の大径の第3の通路11、中径の第4の通路12、小径の第5の通路13が形成され、第5の通路13の上端の開口は噴射ノズル部材3を摺動するガイド孔5の摺動面内に面している。
【0013】
第1、第2、第3の通路9、10、11内には小径、中径、大径の形状を備え、それぞれ断面を円形とした金属製の多段の通路規制体14が固定されており、第1、第2、第3の通路9、10、11と通路規制体14との環状の隙間をガスが通過するようにされている。また、第3の通路11と通路規制体14との間の環状の通路には燒結金属から成るフィルタ15が内挿されている。
【0014】
第4、第5の通路12、13には、同様に中径、小径の形状を備えた金属製の通路規制体16が固定され、第4、第5の通路12、13と通路規制体16の間に環状の隙間が形成されている。従って、第5の通路13には中心に円形の通路規制体16が存在し、先端のガス供給口17の開口面は円環状の微細な隙間を有する略平面とされ、ガスはこの隙間から供給されることになる。
【0015】
ガイド孔5内に摺動自在に挿通された噴射ノズル部材3は、先端側にガス噴射口18が設けられ、後端側にプッシュボタン4が固定されている。ボディ1とプッシュボタン4の間には圧縮ばね19が介在されており、噴射ノズル部材3は圧縮ばね19の付勢力により非使用時にはプッシュボタン4側に引き戻されている。このために、噴射ノズル部材3のガス噴射口18側には噴射ノズル部材3の右方向への更なる移行を制限するストッパ20が形成されている。また、噴射ノズル部材3に対する回り止め21が備えられている。
【0016】
ガス噴射口18には、噴射ノズル部材3の長手方向の中間まで細径のノズル孔22が連通されており、その後端部は折れ曲がり開口部23がガイド孔5に向けて開口されている。
【0017】
噴射ノズル部材3の中間部には3つの環状溝24、25、26が並列して形成されており、各環状溝24、25、26にはそれぞれガイド孔5との間を封止するためのゴム製又は軟質合成樹脂製のOリング27、28、29が嵌め込まれている。環状溝24と25の間の噴射ノズル部材3は稍々細径とされ、その隙間はガス溜まり30とされており、環状溝25と26の間は更に細径とされ、その隙間はガス受け部31とされており、このガス受け部31にノズル孔22の開口部23が面している。
【0018】
また、ボディ1のガス供給口17よりも左方でガイド孔5の上方には、ガス抜き孔として小径ガス抜き孔32、中径ガス抜き孔33が設けられ、これらのガス抜き孔32、33内には金属製の通路規制体34が配置され、小径ガス抜き孔32と通路規制体34との間に円環状の隙間、及び通路規制体34の一部を切欠した隙間を介してガスが放出されるようになっている。小径ガス抜き孔32と通路規制体34の間の円環状の隙間は小さく、ガス供給口17と同様に開口部は略平面とされている。なお、ボディ1のボンベ取付口2から外方に向けて安全用のガス抜き孔35が設けられている。
【0019】
このガス噴射装置を使用するには、ガスボンベBをボディ1のボンベ取付口2に螺合して固定する。この螺合により、ガスボンベBはボディ1内に深く進入し、突刺部7の突刺針8がガスボンベBの上端を封止している薄鋼板を破り、ガスボンベB内に突き刺さる。このとき、ガスボンベBとボディ1との間はOリング6により密封され、ガスボンベB内の高圧ガスは突刺部7の第1の通路9を介して上方に流出する。
【0020】
第1、第2、第3の通路9、10、11内には通路規制体14が固定されているので、ガスは第1、第2の通路9、10との隙間を通り、更にフィルタ15を経て第4、第5の通路12、13に流れる。フィルタ15はごみ取りを兼ねてガスの通過速度を遅くし、Oリング27、28、29に対する過冷却による硬化を防止している。
【0021】
フィルタ15を通ったガスは、第4、第5の通路12、13と通路規制体16との円環状の隙間を流れる。第5の通路13と通路規制体16との隙間を通ったガスは、ガス供給口17からガイド孔5に達し、環状溝24、25の間のガス溜まり30に入るが、Oリング27、28によりガス溜まり30は密閉されているので、ガスは外部に漏出することはない。
【0022】
ガス噴射に際してガス供給口17を開閉するために、図5に示すように圧縮ばね19の付勢力に抗してプッシュボタン4を前方に押す。これにより、噴射ノズル部材3が軸方向を摺動し、Oリング28がガス供給口17の上を通過し、ノズル孔22の開口部23がガス供給口17に対向した位置となると、ガス供給口17の円環状の隙間から流出したガスは、Oリング28、29により囲まれたガス受け部31、開口部23、ノズル孔22を通ってガス噴射口18から前方に噴射される。このガス噴射はガスボンベB内に高圧ガスが存在し、かつプッシュボタン4を押している限り継続される。
【0023】
前述のようにガス供給口17の中心部には、通路規制体16が噴射ノズル部材3の摺動面と面一に位置している。第5の通路13の内径は1.6mm、通路規制体16の細径部の直径は1.5mm、隙間の幅は0.05mmであり、円環状の微細な隙間が形成され、ガス供給口17は略平面状とされている。従って、Oリング28がこのガス供給口17の上を摺動して通過しても、Oリング28はガス供給口17のエッジにより傷を受けることはない。
【0024】
なお、ガス供給口17内の通路規制体16は円環状となっているが、図6に示すように微細な隙間を形成するための単数又は複数部の切欠部16aを設けて、噴射ノズル部材3の矢印で示す摺動方向に沿って切欠部16aの切口の線分を配置すれば、Oリング28に傷を与えることはない。
【0025】
ガス噴射に際して、ガス溜まり30にあった高圧ガスはOリング27、28に挟まれて移動し、小径ガス抜き孔32、中径ガス抜き孔33と通路規制体34の隙間を通って外部に放出されることになる。
【0026】
噴射が終了しプッシュボタン4を押す力を解除すると、圧縮ばね19の付勢力により噴射ノズル部材3は引き戻され、元の位置に復帰する。このとき、ガス溜まり30のガスがガス抜き孔32、33から放出されているので、ガスの圧力が噴射ノズル部材3の移動の抵抗力となることはなく、噴射ノズル部材3を容易に引き戻すことができる。そして、ガス供給口17はOリング27、28に囲まれたガス溜まり30に面するので、ガスの供給は停止する。
【0027】
なお、Oリング27がガス抜き孔32を通過する際にもガス抜き孔32には通路規制体34が挿通され、この部分は環状の微細な隙間を有し面一とされた略平面状となっており、Oリング27が損傷を受けることはない。また、このガス抜き孔32に挿入する通路規制体34についても、図6に示すように、噴射ノズル部材3の移動方向と平行に両側に切欠部を設けてもよい。
【0028】
また、第5の通路13、ガス抜き孔32に挿入する以外の部分の通路規制体16及び通路規制体14は、図6に示す通路規制体16のように切欠した隙間を設けて、この隙間をガスを通過させたり、或いは更に通路規制体を省略して細径の通路のみとすることもできる。
【0029】
ボディ1からガスボンベBを取り外す際に、ガスボンベB内にガスが残留していても、ボンベ取付口2に設けたガス抜き孔35によりガスは抜け出すので、ガスボンベBを安全に外すことができる。
【0030】
このガス噴射装置については、6000回の往復運動の繰り返し試験を行ったが、Oリング27、28には傷が発生しないことが確認された。
【実施例2】
【0031】
図7は実施例2の要部拡大断面図であり、第5の通路13内には通路規制体16の代りに、例えば焼結金属、焼結樹脂から成るフィルタ41が挿入され、ガス供給口17は多数の微小な孔部を有する略平面状とされている。
【0032】
従って、ガスはフィルタ41の微細な孔部から流出し、Oリング28がこのガス供給口17の上を摺動しながら通過しても傷を受ける虞れはない。また、同様にガス抜き孔32内にフィルタを充填するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 ボディ
3 噴射ノズル部材
4 プッシュボタン
9、10、11、12、13 通路
15、41 フィルタ
14、16、34 通路規制体
17 ガス供給口
18 ガス噴射口
19 圧縮ばね
23 開口部
27、28、29 Oリング
30 ガス溜まり
31 ガス受け部
32、33 ガス抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止用のOリングを備えた移動体を摺動して前記Oリングによりガス供給源からのガスのガス供給口を開閉することにより、ガス噴射ノズルにガスを供給するガス噴射装置において、前記ガス供給口に前記移動体との摺動面に対して物体を面一に挿入して微細な隙間又は多数の微小な孔部を形成し、前記ガスを前記ガス供給口の微細な隙間又は多数の微小な孔部から流出させることを特徴とするガス噴射装置。
【請求項2】
前記ガス供給口を構成する通路を断面円形とし、その中心部に前記物体として断面円形の通路規制体を挿入することにより、前記ガス供給口に前記通路と前記通路規制体との円環状の隙間から成る微細な隙間を形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。
【請求項3】
前記通路規制体の一部又は複数部に前記微細な隙間を形成するための切欠部を設け、該切欠部の切口の線分は前記Oリングの摺動方向と平行にしたことを特徴とする請求項2に記載のガス噴射装置。
【請求項4】
前記ガス供給口を構成する通路に前記物体としてフィルタを充填することにより、前記ガス供給口に多数の微小な孔部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99729(P2013−99729A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245473(P2011−245473)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(390009818)日本炭酸瓦斯株式会社 (11)
【Fターム(参考)】