説明

ガス圧緊急連通装置

【課題】ガス配管網の工事に伴う調査のための人件費を節約すると共に、ガス供給圧の低下時に確実に対応することができかつ、交通規制を緩和することが可能なガス圧緊急連通装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のガス圧緊急連通装置60は、ガス配管網70のうち遮断部74の両側の第1と第2のガス配管73A,73Bにおけるガス供給圧を検知する第1と第2のガス圧検知部10A,10Bを備えている。また、常には第1と第2のガス配管73A,73B同士を遮断する一方、第1と第2のガス配管73A,73Bのうち何れか一方でもガス供給圧が外気圧に対して予め定められた基準差圧未満なった場合には自動的に開弁して、両ガス配管73A,73B同士を連通させるメイン弁体45を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス配管網の工事により遮断される遮断部の両側のガス配管のうち、何れか一方でも内圧が異常になったときに両ガス配管を連通させるように作動するガス圧緊急連通装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ガス配管網の一部を遮断して工事を行う際には、ガスの需要家でガス機器が使用不可能にならないか事前調査を行う。具体的には、ガス配管網に設けた遮断部を間に挟んだ第1と第2のガス配管を、常閉のバルブを有したバイパス管にて接続しておき、第1と第2のガス配管のガス供給圧を所定期間に亘って監視すると共に、第1と第2のガス配管のうち何れか一方でもガス供給圧の異常な低下が起きた場合には、バルブを緊急開放してガス供給圧の回復を行うようにしていた。そして、従来は、ガス供給圧の異常低下が起きた場合に備えて、工事現場に作業員を待機させ、ガス供給圧の異常低下時には作業員がバルブを開放操作していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−82900号公報(段落[0003],[0023]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の如く工事現場に作業員を待機させると、その分、人件費がかかる。また、人件費節約のために、作業員不在の時間帯を設けると、その時間帯にガス供給圧の異常低下が起きた場合に、バルブの開放が遅れる。また、ガス配管が道路下に埋設されている場合、作業員の作業スペースを確保するための安全バリアが道路上に設営されるため、交通規制が必要になる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ガス配管網の工事に伴う調査のための人件費を節約すると共に、ガス供給圧の異常低下時に確実に対応することができかつ、交通規制を緩和することが可能なガス圧緊急連通装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るガス圧緊急連通装置は、ガス配管網のうち工事により遮断される遮断部を間に挟んだ第1と第2のガス配管の間に接続され、通常は、第1と第2のガス配管の間を遮断すると共に、それら第1と第2のガス配管の内圧のうち何れか一方でも外気圧に対して予め定められた基準差圧未満になったときに第1と第2のガス配管の間を連通させるように作動するガス圧緊急連通装置において、外気に対して内部が加圧状態又は負圧状態に維持された封止部屋に、閉弁状態のトリガー弁を接続して備え、そのトリガー弁を開くと封止部屋の一部を構成する受圧可動体の変形又は移動に伴ってメイン弁体が閉弁位置から開弁位置に移動し、第1と第2のガス配管の間を連通させることが可能な緊急連通弁と、表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で第1のガス配管の内圧を受け、第1のガス配管の内圧が外気圧に対して基準差圧以上から基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第1のガス圧検知部と、表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で第2のガス配管の内圧を受け、第2のガス配管の内圧が外気圧に対して基準差圧以上から基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第2のガス圧検知部と、第1及び第2のガス圧検知部の両検知可動部材とトリガー弁との間に設けられ、両検知可動部材のうち何れか一方でも待機位置から検知位置に移動したときに、その検知可動部材の動力をトリガー弁に伝達してメイン弁体を開弁させるトリガー動力伝達機構とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のガス圧緊急連通装置において、トリガー弁は、直動可能に支持された直動ロッドと、直動ロッドの端部に固定されたトリガー弁体と、トリガー弁体を開弁方向に付勢する開弁付勢体と、開弁付勢体の付勢力に抗して直動ロッドの開弁方向への直動を禁止しトリガー弁体を閉弁位置に維持するロック位置と直動ロッドの開弁方向への直動を許容するロック解除位置との間で移動可能な閉弁維持部材とを備え、トリガー動力伝達機構は、検知可動部材が待機位置から検知位置に移動したときの動力で閉弁維持部材をロック位置からロック解除位置に移動させるように構成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のガス圧緊急連通装置において、トリガー動力伝達機構には、第1及び第2のガス圧検知部における各検知可動部材毎に設けられて、一端が検知可動部材に連結又は当接する一方、他方が閉弁維持部材に連結又は当接し、さらに、中間部分が検知可動部材の移動方向と直交した回転軸を中心に回動可能に支持され、検知可動部材に動作量を増幅して閉弁維持部材に伝達する1対の増幅レバーが備えられたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のガス圧緊急連通装置において、第1及び第2のガス圧検知部は、検知可動部材に備えた検知部ダイヤフラムで仕切られ、一方が外気に連通しかつ他方がガス配管に連通した1対の検知部屋を内側に有した検知ハウジングを備え、検知可動部材は、検知ハウジングに形成されたシャフトガイド孔を貫通して直動可能に支持された直動シャフトを検知部ダイヤフラムに一体に固定してなり、検知ハウジングの外側に位置した端部が増幅レバーに連結又は当接するように構成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載のガス圧緊急連通装置において、第1及び第2のガス圧検知部は、検知可動部材に備えた検知部ダイヤフラムで仕切られ、一方が外気に連通しかつ他方がガス配管に連通した1対の検知部屋を内側に有した検知ハウジングを備えると共に、外気に連通した検知部屋内には、検知部ダイヤフラムに対向する対向可動盤と、それら検知部ダイヤフラムと対向可動盤との間で圧縮変形した基準差圧調整用圧縮コイルバネとが収容され、対向可動盤に貫通形成された螺子孔に調整螺子を螺合し、その調整螺子の螺合操作により対向可動盤を移動して基準差圧調整用圧縮コイルバネが検知部ダイヤフラムに付与する弾発力を調整可能としたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載のガス圧緊急連通装置において、メイン弁体を閉弁位置から開弁位置に移動する動力によってメイン弁体が開弁位置に位置することを報知可能な作動報知手段を備えたところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載のガス圧緊急連通装置において、第1と第2のガス配管の内圧を記録する圧力記録部を備えたところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載のガス圧監視装置において、第1のガス配管と常時連通した第1のガス導入部屋と、第2のガス配管と常時連通しかつメイン弁孔を介して第1のガス導入部屋と連通可能な第2のガス導入部屋と、封止部屋と第1のガス導入部屋との間を仕切ると共に、それら封止部屋と第1のガス導入部屋との間で往復動可能な記受圧可動体としての連通弁ダイヤフラムとを備え、第2のガス導入部屋を第1のガス導入部屋を挟んで封止部屋とは反対側に配置し、第1のガス導入部屋内にメイン弁体を配置すると共に、そのメイン弁体を、連通弁ダイヤフラムと一体に固定されて第1のガス導入部屋内で直動可能な直動部に固定し、連通弁ダイヤフラムの往復動によってメイン弁体は、メイン弁孔を閉止した閉弁位置とメイン弁孔を開放した開弁位置との間で往復動可能としたところに特徴を有する。
【0014】
請求項9の発明に係るガス圧緊急連通装置は、ガス配管網のうち工事により遮断される遮断部を間に挟んだ第1と第2のガス配管の間に接続され、通常は、第1と第2のガス配管の間を遮断すると共に、それら第1と第2のガス配管の内圧のうち何れか一方でも外気圧に対して予め定められた基準差圧未満になったときに第1と第2のガス配管の間を連通させるように作動するガス圧緊急連通装置において、弁駆動弾性体の弾発力を静エネルギーとして貯えた状態に保持する弾発力保持手段と、その保持を解除するためのトリガー手段を備え、トリガー手段の作動により静エネルギーをメイン弁体の運動エネルギーに変換して、そのメイン弁体を閉弁位置から開弁位置に移動して第1と第2のガス配管の間を連通させることが可能な緊急連通弁と、表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で第1のガス配管の内圧を受け、第1のガス配管の内圧が外気圧に対して基準差圧以上から基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第1のガス圧検知部と、表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で第2のガス配管の内圧を受け、第2のガス配管の内圧が外気圧に対して基準差圧以上から基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第2のガス圧検知部と、第1及び第2のガス圧検知部の両検知可動部材とトリガー手段との間に設けられ、両検知可動部材のうち何れか一方でも待機位置から検知位置に移動したときに、その検知可動部材の動力によってトリガー手段を作動させるトリガー動力伝達機構とを備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
[請求項1の発明]
請求項1のガス圧緊急連通装置を使用するには、そのガス圧緊急連通装置をガス配管網のうち遮断部の両側に位置した第1と第2のガス配管に連結する。このとき、緊急連通弁のメイン弁体は、閉弁位置に位置しているので、第1と第2のガス配管の間では、ガスが流れない状態に保持される。そして、所定期間に亘って、第1と第2のガス配管の内圧が共に外気圧に対して基準差圧以上であった場合には、遮断部の両側の第1と第2のガス配管を行き止まりにした場合でも、需要家においてガス機器が使用不可能にならないことが推定できる。従って、遮断部を含む所定区間の既設ガス配管を撤去して第1と第2のガス配管を行き止まりにしたり、既設ガス配管を交換する場合に第1と第2のガス配管の間を代替ガス管で繋ぐ必要がないことが推定される。
【0016】
一方、所定期間中に第1と第2のガス配管の内圧が一方でも、外気圧に対して基準差圧未満になると、緊急連通弁のメイン弁体が閉弁位置から開弁位置に移動し、遮断部を迂回して第1と第2のガス配管の間が連通される。これにより、遮断部の両側の需要家では、通常通りガス機器を使用することができる。そして、第1と第2のガス配管の間が連通したという結果から、遮断部の両側の第1と第2のガス配管を行き止まりにすると、需要家でガス機器が使用不可能になることが推定される。従って、遮断部を含む所定区間の既設ガス配管を撤去して第1と第2のガス配管を行き止まりにはできないことや、既設ガス配管を交換する場合に、第1と第2のガス配管の間を代替ガス管で繋ぐ必要が有ることが推定される。
【0017】
ガス圧緊急連通装置の動作を詳説すると、例えば、第1のガス配管の内圧と外気圧との差圧が、基準差圧以上から基準差圧未満に変化したときに、第1のガス圧検知部に備えた検知可動部材が、待機位置から検知位置に移動する。検知可動部材が検知位置に移動すると、その検知可動部材の動力が弁作動動力伝達機構を介してトリガー弁に伝達され、トリガー弁が、外気に対して内部が加圧状態又は負圧状態に維持された封止部屋を外気に開放する。すると、封止部屋内の圧力変化に伴い受圧可動体が変形又は移動し、これに伴いメイン弁体が閉弁位置から開弁位置に移動する。これにより、第1と第2のガス配管の間が連通する。第2のガス配管の内圧と外気圧との差圧が、基準差圧以上から基準差圧未満に変化した場合も同様である。
【0018】
このように、本発明のガス圧緊急連通装置を使用すれば、遮断部を挟んだ第1と第2のガス配管のうち、何れか一方でも内圧が外気圧に対して予め定められた基準差圧未満なった場合に、それら両ガス配管同士を自動的に連通させて、低下した方のガス配管の内圧を自動的に回復させることができるから、ガス配管工事に伴う調査のために工事現場に作業員を配置する必要が無くなる。よって、人件費を節約すると共に、ガス供給圧の低下時に確実に対応することできかつ、交通規制を緩和又は不要にすることが可能になる。また、第1と第2のガス圧検知部によるガス配管の内圧の検知と、ガス配管の内圧低下に伴うメイン弁体の開弁動作とを無電源で行うことができる。
【0019】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、検知可動部材が待機位置に位置しているとき、閉弁維持部材がロック位置に位置して直動ロッドの開弁方向への直動が禁止され、直動ロッドの端部に固定されたトリガー弁体が閉弁位置に維持される。即ち、封止部屋内が、外気に対して加圧状態又は負圧状態に維持される。一方、検知可動部材が待機位置から検知位置に移動すると、その動力で弁作動動力伝達機構が、閉弁維持部材をロック位置からロック解除位置に移動させる。すると、開弁付勢体の付勢力によって直動ロッドが開弁方向に移動して、トリガー弁体が閉弁位置から開弁位置に移動する。これにより、封止部屋が外気に開放して封止部屋内の圧力が変化する。
【0020】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、弁作動動力伝達機構に備えた増幅レバーは、検知可動部材の動作量を増幅して閉弁維持部材に伝達するので、待機位置から検知位置へ移動する際の検知可動部材の動作量を小さくして、第1及び第2のガス圧検知部をコンパクト化することが可能になる。
【0021】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、第1のガス配管の内圧が外気圧に対して基準差圧以上から基準差圧未満に変化すると、検知部ダイヤフラムが移動し、検知部ダイヤフラムに一体に固定された検知可動部材が、待機位置から検知位置に移動する。このとき、検知可動部材はシャフトガイド孔を貫通して直動し、検知可動部材のうち検知ハウジングの外側に位置した端部に連結又は当接した増幅レバーが、検知可動部材が直動したときの動力を受けて回動する。
【0022】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、調整螺子を螺合操作することで、対向可動盤が検知部ダイヤフラムに対して進退し、対向可動盤と検知部ダイヤフラムとの間で圧縮変形した基準差圧調整用弾性体が検知部ダイヤフラムに付与する弾発力が調整される。ここで、基準差圧調整用弾性体が検知部ダイヤフラムに付与する弾発力が基準差圧となるから、基準差圧を任意の値に設定することができる。
【0023】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、作動報知手段によって第1と第2のガス配管が連通したか否かを容易に判別することができる。
【0024】
[請求項7の発明]
請求項7の発明によれば、第1と第2のガス配管の内圧の経時的変化を自動記録することができる。
【0025】
[請求項8の発明]
請求項8の発明によれば、トリガー弁が封止部屋を開放すると、封止部屋内の圧力変化により連通弁ダイヤフラムが封止部屋と第1のガス導入部屋との間で移動し、その連通弁ダイヤフラムに直動部を介して一体に固定されたメイン弁体が、メイン弁孔を閉止した閉弁位置から、メイン弁孔を開放した開弁位置に移動する。これにより、第1のガス導入部屋と第2のガス導入部屋との間がメイン弁孔を介して連通し、第1と第2のガス配管を連通させることができる。
【0026】
[請求項9の発明]
請求項9のガス圧緊急連通装置を使用するには、そのガス圧緊急連通装置をガス配管網のうち遮断部の両側に位置した第1と第2のガス配管に連結する。このとき、緊急連通弁のメイン弁体は、閉弁位置に位置しているので、第1と第2のガス配管の間では、ガスが流れない状態に保持される。そして、所定期間に亘って、第1と第2のガス配管の内圧が共に外気圧に対して基準差圧以上であった場合には、遮断部の両側の第1と第2のガス配管を行き止まりにした場合でも、需要家においてガス機器が使用不可能にならないことが推定できる。従って、遮断部を含む所定区間の既設ガス配管を撤去して第1と第2のガス配管を行き止まりにしたり、既設ガス配管を交換する場合に第1と第2のガス配管の間を代替ガス管で繋ぐ必要がないことが推定される。
【0027】
一方、所定期間中に第1と第2のガス配管の内圧が一方でも、外気圧に対して基準差圧未満になると、緊急連通弁のメイン弁体が閉弁位置から開弁位置に移動し、遮断部を迂回して第1と第2のガス配管の間が連通される。これにより、遮断部の両側の需要家では、通常通りガス機器を使用することができる。そして、第1と第2のガス配管の間が連通したという結果から、遮断部の両側の第1と第2のガス配管を行き止まりにすると、需要家でガス機器が使用不可能になることが推定される。従って、遮断部を含む所定区間の既設ガス配管を撤去して第1と第2のガス配管を行き止まりにはできないことや、既設ガス配管を交換する場合に、第1と第2のガス配管の間を代替ガス管で繋ぐ必要が有ることが推定される。
【0028】
ガス圧緊急連通装置の動作を詳説すると、例えば、第1のガス配管の内圧と外気圧との差圧が基準差圧以上から基準差圧未満に変化したときに、第1のガス圧検知部に備えた検知可動部材が、待機位置から検知位置に移動する。検知可動部材が検知位置に移動すると、その検知可動部材の動力がトリガー動力伝達機構を介してトリガー手段に伝達され、トリガー手段が作動する。トリガー手段が作動すると、弾発力保持手段によって保持された静エネルギー、即ち、弁駆動弾性体の弾発力が運動エネルギーに変換されて、メイン弁体が閉弁位置から開弁位置に移動する。これにより、第1と第2のガス配管の間が連通する。第2のガス配管の内圧と外気圧との差圧が基準差圧以上から基準差圧未満に変化した場合も同様である。
【0029】
このように、本発明のガス圧緊急連通装置を使用することで、遮断部を挟んだ第1と第2のガス配管のうち、何れか一方でも内圧が外気圧に対して予め定められた基準差圧未満なった場合に、それら両ガス配管同士を自動的に連通させて、低下した方のガス配管の内圧を自動的に回復させることができるから、ガス配管工事に伴う調査のために工事現場に作業員を配置する必要が無くなる。よって、人件費を節約すると共に、ガス供給圧の低下時に確実に対応することできかつ、交通規制を緩和又は不要にすることが可能になる。また、第1と第2のガス圧検知部によるガス配管の内圧の検知と、ガス配管の内圧低下に伴うメイン弁体の開弁動作とを無電源で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス圧緊急連通装置の斜視図
【図2】ガス圧緊急連通装置の斜視図
【図3】ガス圧緊急連通装置の正面図
【図4】閉弁状態におけるガス圧緊急連通装置の正断面図
【図5】開弁状態におけるガス圧緊急連通装置の正断面図
【図6】図3におけるE−E線断面図
【図7】図3におけるF−F線断面図
【図8】検知ハウジングの底面図
【図9】増幅レバーの斜視図
【図10】トリガー弁の斜視図
【図11】閉弁状態におけるトリガー弁の斜視図
【図12】開弁状態におけるトリガー弁の斜視図
【図13】(A)閉弁状態におけるトリガー弁の概念図、(B)閉弁状態におけるトリガー弁の概念図
【図14】ガス配管網の概念図
【図15】ガス配管にガス圧緊急連通装置を接続した状態の概念図
【図16】第2実施形態のガス圧緊急連通装置の正断面図
【図17】第3実施形態のガス圧緊急連通装置の閉弁状態における正断面図
【図18】ガス圧緊急連通装置の開弁状態における正断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図15に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のガス圧緊急連通装置60は、緊急連通部30(本発明の「緊急連通弁」に相当する)と第1のガス圧検知部10Aと第2のガス圧検知部10Bとを備えてなる。
【0032】
緊急連通部30は、金属(例えば、アルミニウム)又は樹脂製の筐体300を有し、その筐体300の互いに相反する両側面から第1と第2の接続パイプ301,302が延びている。各接続パイプ301,302も金属又は樹脂製であり、筐体300の外側面にボルト固定されている。なお、図1では接続パイプ301,302が直管であるが湾曲管やフレキシブル管でもよい。
【0033】
図4に示すように、筐体300の内部には、第1のガス導入部屋31と第2のガス導入部屋32とが区画壁33を挟んで上下に配置されている。第1と第2の各ガス導入部屋31,32は、それぞれ円筒空間で構成されている。区画壁33の上方に形成された第1のガス導入部屋31は、筐体300を構成する壁部を貫通した連通路311を介して第1の接続パイプ301と常時連通している。一方、区画壁33の下方に形成された第2のガス導入部屋32は、筐体300を構成する壁部を貫通した連通路312を介して第2の接続パイプ302と常時連通している。
【0034】
区画壁33の中央部には、例えば、円形のメイン弁孔331が貫通形成されており、メイン弁孔331を介して第1と第2のガス導入部屋31,32が連通可能となっている。図6に詳細に示すように、メイン弁孔331の周囲には、区画壁33の上面から円錐状に窄んだ弁座332が形成されている。また、メイン弁孔331のうち区画壁33の下面側の開口縁もテーパ状に面取りされている。
【0035】
筐体300の内部のうち、第1のガス導入部屋31の上方には、封止部屋40が備えられている。封止部屋40は、軸方向に対して径方向が大きくなった扁平な円筒空間で構成されている。
【0036】
封止部屋40の天井である筐体300の上蓋306からは、封止部屋40を外気と連通させることが可能な1対の手動バルブ42,42が突出している。図1に示すように、これら手動バルブ42,42は、筐体300からの接続パイプ301,302の突出方向に沿って並んで配設されている。後述するが、1対の手動バルブ42,42のうち、一方の手動バルブ42は、封止部屋40内に圧縮気体(例えば、圧縮空気)を充填するために使用され、例えば、ガスボンベが接続される。また、他方の手動バルブ42は、封止部屋40に圧縮気体を充填する際に封止部屋40の内圧を計測するために使用され、図示しない圧力計が接続される。これら2つの手動バルブ42,42は同一構造であり、それぞれレバーハンドル421を備えている。レバーハンドル421を手動バルブ42の口金と平行にすると手動バルブ42は開放し、そこからレバーハンドル421を90度回動すると手動バルブ42は閉止する。
【0037】
封止部屋40と第1のガス導入部屋31との間は、本発明の「受圧可動体」に相当する連通弁ダイヤフラム41(以下、単に「ダイヤフラム41」という)によって仕切られている。ダイヤフラム41は、円板形の弾性シートで構成され、その外周縁が固定されている。詳細には、図6に示すように、第1のガス導入部屋31と封止部屋40との境界に形成された環状段差部401と、その環状段差部401に重ねて固定された固定リング43との間でダイヤフラム41の外周縁が保持されている。また、ダイヤフラム41の中央部には剛体プレート411が固定されている。剛体プレート411は、ダイヤフラム41を表裏両面から1対の円板で挟んだ構造をなしている。ダイヤフラム41は、剛体プレート411の側方に張り出した部分で変形可能となっており、図4及び図5に示すように、ダイヤフラム41の中央部(剛体プレート411)が第1のガス導入部屋31と封止部屋40との間で上下動可能となっている。
【0038】
剛体プレート411には、例えば、複数の軸体を連結して構成された直動シャフト44が一体に固定されている。直動シャフト44は、ダイヤフラム41及び剛体プレート411の中心部を貫通すると共に、封止部屋40及び第1と第2のガス導入部屋31,32を上下方向に縦断して延びている。
【0039】
直動シャフト44のうち、ダイヤフラム41より下方位置にはメイン弁体45が固定されている。メイン弁体45は、扁平な円錐台形状をなしており、その外周縁部が環状弾性部材451にて構成されている(図6参照)。そして、ダイヤフラム41の上下動に伴う直動シャフト44の上下動により、メイン弁体45が第1のガス導入部屋31内で上下動し、メイン弁孔331を閉止した(環状弾性部材451が弁座332に当接した)閉弁位置(図4参照)と、メイン弁孔331を開放した(環状弾性部材451が弁座332から離間した)開弁位置(図5参照)との間で移動可能となっている。
【0040】
直動シャフト44の下端部は、シャフト支持体46によって支持されている。シャフト支持体46は、第2のガス導入部屋32内に配置され、直動シャフト44の上下動をガイドする。詳細には、シャフト支持体46は、筐体300の底蓋305から上方に向かって突出した円柱構造をなすと共に、その軸心部に上端開放のガイド縦孔461が形成されている。ガイド縦孔461は、直動シャフト44と同軸線上に延びており、このガイド縦孔461に直動シャフト44の下端部が直動可能に遊嵌されている。なお、シャフト支持体46は、筐体300の底蓋305を貫通した図示しない螺子により固定されており、螺子による固定部分を包囲したOリング462により、シャフト支持体46と底蓋305との間の気密が図られている(図6参照)。
【0041】
シャフト支持体46の上端面とメイン弁体45の下面との間には、圧縮コイルバネ47が圧縮状態で保持されている。圧縮コイルバネ47の弾発力によって、メイン弁体45が上方、即ち、メイン弁孔331から離間する開弁方向に付勢されている。
【0042】
緊急連通部30は作動インジケータ50(本発明の「作動報知手段」に相当する)を備えている。作動インジケータ50は、筐体300の上面、詳細には、上蓋306の中央部から上方に突出している。作動インジケータ50は、直動シャフト44と同軸の円筒構造をなしており、その内部に備えた可動子51が直動シャフト44の直動に連動して移動又は回動するようになっている。また、可動子51は作動インジケータ50の外部から視認可能となっており、その位置に応じて表示色が変化するようになっている。例えば、メイン弁体45が閉弁位置に位置する場合、表示色は緑色となり、メイン弁体45が開弁位置に位置する場合、表示色は赤色になる。
【0043】
筐体300のうち、接続パイプ301,302が設けられていない一側壁にはセンサ取付孔303,303が貫通形成されている。図6に示すように、センサ取付孔303,303は、第1と第2のガス導入部屋31,32に対してそれぞれ設けられており、筐体300の外部からそれらセンサ取付孔303,303に、軸状の圧力センサ34,34が挿入嵌合されている(図1参照)。なお、センサ取付孔303と圧力センサ34との間は図示しないシール部材によってシールされている。また、筐体300のうち、圧力センサ34,34の取付面はその中央部が段差状に陥没して四方を囲壁310で囲まれており、圧力センサ34,34のうち筐体300の外側に突出した部分が囲壁310によって包囲されている。
【0044】
筐体300のうちセンサ取付孔303,303が形成された側壁とは反対側の側壁外面には圧力記録計36(図4参照。本発明の「圧力記録部」に相当する)が着脱可能に取り付けられ、各圧力センサ34,34による計測結果が自動記録されるようになっている。圧力記録計36と各圧力センサ34,34との間を接続したケーブル37,37は、第1と第2のガス導入部屋31,32を迂回して筐体300を貫通したケーブル挿通孔304に挿通されている(図1及び図2参照)。これにより、ケーブル37,37の露出を少なく抑えることができる。
【0045】
なお、筐体300における上蓋306及び底蓋305は、筐体300の本体に対してボルト固定されており、筐体300の本体と上蓋306及び底蓋305との間に挟まれたOリング307,307によって、それらの接合部がシールされている。また、筐体300を構成するその他の構成部品同士の接合部も、必要に応じてシールが施されている。
【0046】
図2に示すように、緊急連通部30は、筐体300から圧力記録計36の上方に張り出した棚盤30Aを備えており、その棚盤30Aに重なるようにして、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bが設けられている。図3に示すように、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bは、筐体300に対する接続パイプ301,302の突出方向に沿って並んで配置されている。
【0047】
各ガス圧検知部10A,10Bは、金属(例えば、アルミニウム)製の検知ハウジング100を備えている。検知ハウジング100は、軸方向に対して径方向が大きくなった扁平円筒形の容器構造をなしている。図7に示すように、検知ハウジング100は、上面開放のハウジング本体101と下面開放のハウジング蓋体102とを備え、それらの開口端同士を接合して螺子止めした構造をなしている。ハウジング本体101は、複数のボルト101Aによって緊急連通部30に固定されている。ハウジング蓋体102は、複数のボルト102Cによってハウジング本体101に固定され(図1及び図2参照)、上面中央部からは有蓋円筒状の中央円筒突部103が突出している。詳細には、ハウジング蓋体102の中心部に円形の貫通孔102Aが形成され、その貫通孔102Aの側方位置から上方に突出した螺合筒102Bの外側に中央円筒突部103が螺合されている。
【0048】
各検知ハウジング100の内側には、検知部ダイヤフラム11(以下、単に「ダイヤフラム11」という)によって上下方向で仕切られた1対の検知部屋12,13が形成されている。ダイヤフラム11は、円板形の弾性シートで構成され、その外周縁がハウジング本体101とハウジング蓋体102の各開口端の間に挟まれて固定されている。また、ダイヤフラム11の中央部には、その上面側から円板形の剛体プレート111が宛がわれて一体に固定されており、この剛体プレート111の中心部に、ダイヤフラム11と共に本発明の「検知可動部材」を構成する直動シャフト14が一体に固定されている。
【0049】
図4に示すように、第1のガス圧検知部10Aに備えた下側の検知部屋13(以下、「下検知部屋13」という)は、緊急連通部30に形成された第1のガス導入部屋31と常時連通している。詳細には、緊急連通部30の筐体300内を第1のガス導入部屋31から第1のガス圧検知部10Aに向かって延びた第1のガス圧導入路308と、検知ハウジング100の底壁を貫通した導入孔107とを介して連通している。
【0050】
一方、第2のガス圧検知部10Bに備えた下検知部屋13は、緊急連通部30に形成された第2のガス導入部屋32と常時連通している。詳細には、緊急連通部30の筐体300内を第2のガス導入部屋32から第2のガス圧検知部10Bに向かって延びた第2のガス圧導入路309と、検知ハウジング100の底壁を貫通した導入孔107とを介して連通している。
【0051】
つまり、第1のガス圧検知部10に備えた下検知部屋13の内圧と、第1のガス導入部屋31の内圧とが同一となるように構成され、第2のガス圧検知部10Bに備えた下検知部屋13の内圧と、第2のガス導入部屋32の内圧とが同一となるように構成されている。なお、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bは、上記の如く下検知部屋13と連通しているガス導入部屋が異なるという点以外は、同一の構成である。
【0052】
図7に示すように、第1と第2の各ガス圧検知部10A,10Bには、下検知部屋13と接続した手動バルブ15が備えられている。図1に示すように、手動バルブ15は、検知ハウジング100の外周面から側方に突出しており、例えば、緊急連通部30に備えられた手動バルブ42,42と同一構造となっている。即ち、レバーハンドル151を90度回動させることで開閉切り替え可能となっている。
【0053】
1対の検知部屋12,13のうち、上側の検知部屋12(以下、「上検知部屋12」という)は、ハウジング蓋体102を貫通した外気連通孔104によって検知ハウジング100の外気と連通している(図7参照)。また、ハウジング蓋体102の内面は通気性防水素材(図示せず)によって被覆され、外気連通孔104から上検知部屋12への水の侵入が防止されている。
【0054】
図4に示すように、上検知部屋12には、ダイヤフラム11の上面(剛体プレート111)に対向した対向可動盤16と、ダイヤフラム11(剛体プレート111)と対向可動盤16との間で圧縮変形させた基準差圧調整用の圧縮コイルバネ17とが収容されている。図7に示すように、対向可動盤16は、下面開放の環状溝161を有して、そこに圧縮コイルバネ17の上端部を受容している。また、対向可動盤16は、中央円筒突部103の内側で回転不能かつ上下にスライド可能となっており、その中心部には螺旋孔162が貫通形成されている。
【0055】
この螺旋孔162に、中央円筒突部103の天井壁を回転可能に貫通した調整螺子18が螺合されており、調整螺子18の螺合操作により、対向可動盤16を中央円筒突部103の内側で上下にスライドさせることが可能となっている。そして、対向可動盤16をダイヤフラム11に対して進退させることで、圧縮コイルバネ17がダイヤフラム11に付与する弾発力を調整可能となっている。
【0056】
調整螺子18のうち中央円筒突部103の天井壁から突出した部分には操作ノブ181と指針182とが固定されている(図1参照)。操作ノブ181を把持して調整螺子18を回転操作し、指針182を中央円筒突部103の上面に付された任意の目盛(図示せず)に合わせることで、上検知部屋12側からダイヤフラム11に付与される圧力を目盛の値にセットすることができる。ここで、上検知部屋12側からダイヤフラム11に付与される圧力とは、圧縮コイルバネ17の弾発力と外気連通孔104から導入された外気圧(大気圧)との合計圧力である。
【0057】
そして、ダイヤフラム11の表裏両面に付与される圧力の大小により、ダイヤフラム11が検知ハウジング100内で上下動する。即ち、圧縮コイルバネ17がダイヤフラム11に付与する圧力と外気圧との合計圧力が下検知部屋13の内圧と等しい場合のダイヤフラム11の位置を中立位置とすると、下検知部屋13の内圧が前記合計圧力未満である場合、ダイヤフラム11は中立位置より下検知部屋13側に位置し、下検知部屋13の内圧が前記合計圧力より大きい場合、ダイヤフラム11は中立位置より上検知部屋12側に位置する。
【0058】
換言すれば、調整螺子18の螺合操作によって任意に設定される圧縮コイルバネ17の弾発力を基準差圧として、下検知部屋13の内圧と外気圧との差圧がその基準差圧未満である場合、ダイヤフラム11は中立位置より下検知部屋13側に位置する。また、下検知部屋13の内圧と外気圧との差圧が、前記基準差圧より大きい場合、ダイヤフラム11は中立位置より上検知部屋12側に位置する。なお、中立位置と中立位置より上検知部屋12側の位置が、本発明の「待機位置」に相当し、中立位置より下検知部屋13側の位置が本発明の「検知位置」に相当する。
【0059】
上記したように、剛体プレート111を介してダイヤフラム14に一体に固定された直動シャフト14は、ダイヤフラム11から下方に向かって延び、検知ハウジング100の底壁に形成されたシャフトガイド孔105を貫通して直動可能に支持されている。シャフトガイド孔105と直動シャフト14との間は、ベロフラム106によってシールされている(図7参照)。ベロフラム106は、その外周縁がシャフトガイド孔105の開口縁に固定されると共に、内周縁が直動シャフト14の外周面に固定され、直動シャフト14の上下動を許容しつつシールを行っている。
【0060】
直動シャフト14のうち、検知ハウジング100の下方に突出した下端部には、図9に示すように、増幅レバー22が連結されている。増幅レバー22は、例えば、帯板状の金属製フラットバーで構成され、直動シャフト14の直動方向と直交したレバー支軸221を中心にしてシーソー動作(揺動)するようになっている。これらレバー支軸221と増幅レバー22で、本発明の「トリガー動力伝達機構」が構成されている。
【0061】
直動シャフト14の下端部は、増幅レバー22の長手方向の一端にヒンジピン223を介して連結されている。ダイヤフラム11及び直動シャフト14の降下に伴い、増幅レバー22の長手方向の他端が上昇し、ダイヤフラム11及び直動シャフト14の上昇に伴い、増幅レバー22の長手方向の他端が降下する。以下、適宜、増幅レバー22の長手方向の一端を入力端22Aといい、他端を作用端22Bという。
【0062】
図8及び図9に示すように、レバー支軸221は、検知ハウジング100の下面にL字形金具222を介して固定され、増幅レバー22の入力端22Aに近い部分を軸支している。これにより、ダイヤフラム11及び直動シャフト14の上下動量に比べて、増幅レバー22の作用端22Bにおける上下動量が大きくなるように構成されている。そして、増幅レバー22の作用端22Bには、後述するトリガー弁23が当接可能となっている。ここで、第1及び第2の各ガス圧検知部10A,10Bと緊急連通部30との間には、検知ハウジング100の下面中央からトリガー弁23に向かって延びた空洞部220(図8参照)が形成されており、この空洞部220内で増幅レバー22が揺動可能となっている。
【0063】
図10に示すように、棚盤30Aには、L字金具225の一片に雄螺旋226を貫通可能に螺合してなるレバー拘束具227が取り付けられており、雄螺旋226を増幅レバー22の作用端22Bに貫通形成された孔部224に通すことで、トリガー弁23と干渉しない位置で増幅レバー22の揺動を禁止することができる。
【0064】
図10に示すように、棚盤30Aの上面には、棚盤30Aの前端面から封止部屋40の側壁に向かって延びた溝状の陥没部30A1が形成されており、その陥没部30A1内にトリガー弁23が固定されている。トリガー弁23は、第1と第2のガス検知部10A,10Bから等距離の位置に配置されている。
【0065】
トリガー弁23は、棚盤30Aに固定された平面視矩形状の固定ベース24を備えている。固定ベース24は、陥没部30A1の幅方向における中央部が段付き状に突出した角柱部241を有している。また、角柱部241から両側方に張り出した板部を貫通した複数のボルト24Aによって棚盤30Aに固定されている。
【0066】
角柱部241の軸心部には断面円形のロッド挿通孔242が貫通形成され(図13参照)、そのロッド挿通孔242を円柱形の直動ロッド25が直動可能に貫通している。直動ロッド25のうち、角柱部241の軸方向一端面から突出した先端部にはトリガー弁体251が固定されている(図6及び図12参照)。トリガー弁体251は弾性部材で構成され、封止部屋40の側壁を貫通して封止部屋40を外部に開放させたトリガー弁孔402に対向している。なお、図示されていないが、トリガー弁孔402の開口縁にはリング状のビード(突条)が形成され、トリガー弁体251が閉弁位置の場合に、ビードがトリガー弁体251に食い込むようになっている。
【0067】
直動ロッド25のうち、トリガー弁体251とは反対側の基端部と角柱部241との間には、本発明の「開弁付勢体」に相当する圧縮コイルバネ27が圧縮状態で保持されている。圧縮コイルバネ27により、直動ロッド25は、トリガー弁体251がトリガー弁孔402から離間する開弁位置に向けて付勢されている。
【0068】
角柱部241の上面のうち長手方向の中間部には、トリガー弁孔402側を向いた段差壁243が形成されている(図11参照)。また、図13に示すように、角柱部241には、ロッド挿通孔242と連通しかつ角柱部241の上面に開放した長孔244が形成されている。長孔244は段差壁243を貫通しており、角柱部241の上段部245と下段部246とに跨って形成されている。
【0069】
この長孔244に対し、角柱部241の上方からロックピン28(本発明の「閉弁維持部材」に相当する)が挿入されている。図6に示すように、ロックピン28の先端部はロッド挿通孔242の内側に突出して、直動ロッド25と凹凸係合している。このロックピン28により、圧縮コイルバネ27に抗して直動ロッド25の直動が禁止されて、トリガー弁体251をトリガー弁孔402を塞いだ閉弁位置(図11に示す状態)に維持することが可能となっている。
【0070】
詳細には図13に示すように、ロックピン28は、長孔244の幅より小径な小径軸部281と、長孔244の幅より大径な大径軸部282と、大径軸部282の端部から側方に張り出した円板部283とを一体に備えてなり、小径軸部281が、長孔244の内側に受容されている。また、直動ロッド25には、ロッド挿通孔242の内側に突出した小径軸部281の先端と凹凸係合したピン係合孔252が形成されている。
【0071】
図13(A)に示すように、小径軸部281がピン係合孔252の奥まで挿入されたロック位置では、大径軸部282が固定ベース24の段差壁243と係止する。このとき、圧縮コイルバネ27の付勢力に抗して直動ロッド25の開弁方向への直動が禁止され、トリガー弁体251は、トリガー弁孔402を閉塞した閉弁位置に維持される(図11参照)。これにより、圧縮気体が充填された封止部屋40の内圧が外気に対して加圧状態に維持される。なお、このとき、封止部屋40内の圧縮気体は、本発明の「弁駆動弾性体」に相当し、圧縮気体の圧力は、本発明の「静エネルギー」に相当する。また、封止部屋40内に圧縮気体を封じ込めたトリガー弁体251は、本発明の「弾発力保持手段」に相当し、ロックピン28は、本発明の及び「トリガー手段」に相当する。
【0072】
これに対し、ロックピン28が直動ロッド25の側方(上方)に移動して、大径軸部282と段差壁243との係合が解除されたロック解除位置になると、圧縮コイルバネ27の付勢力によって、直動ロッド25が開弁方向に直動し、トリガー弁体251がトリガー弁孔402から離間した開弁位置になる(図12参照)。これにより、封止部屋40内の圧縮気体がトリガー弁孔402から放出され、封止部屋40の内圧が低下する。
【0073】
また、ロックピン28がロック解除位置になっても、小径軸部281とピン係合孔252との凹凸係合は維持されるので、ロックピン28も直動ロッド25と一体に移動する。即ち、図13(A)から同図(B)への変化に示すように、小径軸部281が長孔244の一端から他端に移動すると共に、大径軸部282が段差壁243を乗り越えて下段部246から上段部245へと乗り移る。
【0074】
そして、ロックピン28をロック位置からロック解除位置に移動させるために、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bから延びた各増幅レバー22,22の作用端22B,22Bが、ロック位置におけるロックピン28の円板部283の下面に当接可能な位置に配置され、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bのうち何れか一方でも、ダイヤフラム11が下検知部屋13側に降下して増幅レバー22の入力端22Aが下がると、増幅レバー22の作用端22Bがロックピン28を押し上げてロック解除位置に切り替えるようになっている。
【0075】
即ち、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bの何れか一方でも、下検知部屋13の内圧が、圧縮コイルバネ17の弾発力と外気圧との合計圧力未満になると(換言すれば、下検知部屋13の内圧と外気圧との差圧が基準差圧未満になると)、トリガー弁23が封止部屋40を外気に開放して封止部屋40内に充填された圧縮気体を放出させるようになっている。
【0076】
ここで、本実施形態では、上述したロックピン28とは別に、トリガー弁体251を圧縮コイルバネ27の弾発力に抗して閉弁位置に維持することが可能なストッパ29が備えられている。図2に示すように、ストッパ29は長板状をなしており、長手方向の一端が棚盤30Aの前端面に回動可能に軸支される一方、長手方向の他端に摘み部291を備えている。ストッパ29は、直動ロッド25の直動方向と直交する平面内で回動可能に軸支されており、ロックピン28によってトリガー弁体251が閉弁位置に維持されている場合に、その直動ロッド25のうちトリガー弁体251とは反対側の基端面と当接可能となっている。この場合、ロックピン28がロック解除位置になっても直動ロッド25は直動不可能であり、ロックピン28の位置とは無関係にトリガー弁体251を閉弁位置に維持することができる。
【0077】
本実施形態のガス圧緊急連通装置60の構成に係る説明は以上である。次に、本実施形態のガス圧緊急連通装置60の作用効果について説明する。図14には、ガス配管網70の一部が模式的に示されている。このガス配管網70には、例えば、環状に延びたガス本管70Xが備えられ、そのガス本管70Xから複数のガス支管70Yが延びている。ガスを供給するガス会社71がガス本管70Xに接続されると共に、ガスを使用する複数の需要家72(住宅や工場等)が、ガス本管70X又はガス支管70Yに接続されている。
【0078】
これらガス本管70Xやガス支管70Yなど、ガス配管網70の一部を工事する際には、その工事によってガスが遮断されることで、需要家72においてガス機器が使用不可能にならないかを事前に調査しておく必要がある。その事前調査に、本実施形態のガス圧緊急連通装置60を使用する。
【0079】
具体的には、ガス配管網70のうち工事対象配管73(図14において点線で示した部分)の2位置に中継管77A,77B(例えば、フレキシブル管)を接続し、それら中継管77A,77Bをガス圧緊急連通装置60の接続パイプ301,302に接続する。次いで、工事対象配管73のうち、中継管77A,77Bが接続された部分の中間位置にガスを遮断する遮断部74を設ける。工事対象配管73にメンテナンスや工事の為のバルブ75が予め設けられている場合は、そのバルブ75を閉止することで遮断部74とすればよい。また、工事対象配管73にバルブ75が無い場合には、図15に示すように、公知なガスバッグ76を工事対象配管73内で膨らませることで遮断部74としてもよい。なお、ガス配管にガスバッグ76を挿入してガスを遮断する方法は公知であるので詳細な説明は省略する。これで、ガス圧緊急連通装置60の取付が完了である。以下、遮断部74の両側のガス配管のうち、接続パイプ301が接続された方のガス配管を「第1のガス配管73A」とし、接続パイプ302が接続された方のガス配管を「第2のガス配管73B」とする。
【0080】
次に、ガス圧緊急連通装置60を作動可能な状態にセッティングする。まずは、封止部屋40に圧縮気体を充填する。即ち、ストッパ29を直動ロッド25の基端面に当接させてトリガー弁体251を閉弁位置に維持しておき、緊急連通部30の上面から突出した一方の手動バルブ42にガスボンベ(図示せず)を接続すると共に、他方の手動バルブ42に圧力計(図示せず)を接続する。この状態で、圧力計の指示値が所定圧力となるまで封止部屋40内に圧縮気体を充填する。封止部屋40内が所定圧力になったら、圧縮気体の供給を停止すると共に両手動バルブ42,42を閉止して、ガスボンベ及び圧力計を取り外す。これにより、封止部屋40内が外気に対して加圧状態になり、封止部屋40と第1のガス導入部屋31とを仕切るダイヤフラム41が下方に押圧され、圧縮コイルバネ47を圧縮しながらメイン弁体45がメイン弁孔331を閉止する(図4参照)。また、作動インジケータ50を手動で押し下げることで、表示色がメイン弁体45が閉弁位置であることを意味する「緑色」になる。
【0081】
なお、封止部屋40の設定圧力は、工事対象配管73における平常時のガス供給圧が、2.0〜2.5[kPa]である場合に、例えば、8.0〜10[kPa]程度にしておけばよい。
【0082】
次に、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bに備えた各手動バルブ15,15を開放した状態で、第1と第2のガス配管73A,73Bからガス圧緊急連通装置60内にガスを導入する。すると、第1と第2の各ガス導入部屋31,32にガスが流入するが、このとき、メイン弁体45は閉弁位置であるので、第1と第2のガス配管73A,73Bの間ではガスは流れない。
【0083】
第1のガス導入部屋31に流入したガスは、第1のガス圧検知部10Aの下検知部屋13に流入する。同様に、第2のガス導入部屋32に進入したガスは、第2のガス圧検知部10Bの下検知部屋13に流入する。そして、第1と第2の各ガス圧検知部10A,10Bに備えた下検知部屋13内の空気がガスで置換(パージ)されたら手動バルブ15,15を閉じる。
【0084】
これにより、第1のガス導入部屋31と第1のガス圧検知部10Aにおける下検知部屋13は、接続パイプ301が接続された方の第1のガス配管73Aの内圧(ガス供給圧)と同圧となる。
【0085】
同様に、第2のガス導入部屋32及び第2のガス圧検知部10Bにおける下検知部屋13は、接続パイプ302が接続された方の第2のガス配管73Bの内圧(ガス供給圧)と同圧となる。
【0086】
次に、メイン弁体45の開弁圧力を設定する。即ち、第1及び第2のガス圧検知部10A,10Bの操作ノブ181を把持して調整螺子18を回転操作し、メイン弁体45を閉弁させておきたい下限圧力の目盛に指針182を合わせる。例えば、工事対象配管73の平常時のガス供給圧が2.0〜2.5[kPa]である場合は、各ガス圧検知部10A,10Bの下検知部屋13が、平常時のガス供給圧の下限である2.0[kPa]未満になった場合に、メイン弁体45が開弁するように、指針182を「2.0」の目盛に合わせる。
【0087】
調整螺子18の回転により、検知ハウジング100内で対向可動盤16がダイヤフラム11に対して進退し、圧縮コイルバネ17がダイヤフラム11に付与する弾発力が調整される。そして、調整された圧縮コイルバネ17の弾発力と、外気連通孔104から上検知部屋12に導入された外気圧との合計圧力(指針182を合わせた目盛の圧力)がダイヤフラム11に付与される。
【0088】
第1及び第2のガス圧検知部10A,10Bにてメイン弁体45の開弁圧力を設定したら、最後に、ロックピン28がロック位置に位置していることを確認してから、ストッパ29による直動ロッド25の直動禁止を解除する。以上で、ガス圧緊急連通装置60のセッティングが完了し、以後、この状態で、ガス圧緊急連通装置60は、所定期間(例えば、24時間)に亘って第1と第2のガス配管73A,73Bの何れかのガス供給圧が各ガス圧検知部10A,10Bにて設定した開弁圧力未満になるか否か、換言すれば、第1と第2のガス配管73A,73Bの何れかのガス供給圧が外気圧に対して予め定められた基準差圧(圧縮コイルバネ17がダイヤフラム11に付与する弾発力)未満になるか否かを検知し続ける。
【0089】
所定期間に亘って第1と第2のガス配管73A,73Bの両方のガス供給圧が開弁圧力以上に保持されている場合には、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bにおけるダイヤフラム11が前記待機位置に保持され、ガス圧緊急連通装置60はメイン弁体45を閉弁位置(図4に示す状態)に維持する。この場合は、作動インジケータ50の表示色が閉弁位置を意味する緑色であり、この表示色から、第1と第2のガス配管73A,73Bの両方のガス供給圧が、所定期間に亘って開弁圧力(平常時のガス供給圧の下限値)以上に保持されていたことが容易に分かる。
【0090】
そして、この場合は、ガス配管網70を遮断部74で遮断しても、需要家72においてガス機器が使用不可能にならないと推定される。このことから、遮断部74を含む工事対象配管73を撤去して、その撤去部分の両側でガス配管網70を行き止まり(片ガス化)してもよいことが推定される。或いは、工事対象配管73を交換する場合に、工事対象配管73を挟んだ両側を代替ガス管で繋ぐ必要が無いことが推定される。
【0091】
これに対し、第1と第2のガス配管73A,73Bの少なくとも一方のガス供給圧が開弁圧力未満になった場合、即ち、ガス供給圧と外気圧との差圧が、予め定められた基準差圧以上から基準差圧未満に変化した場合には、ダイヤフラム11が前記検知位置に移動し、メイン弁体45が閉弁位置から開弁位置に切り替わって、第1と第2のガス配管73A,73Bが連通状態になる。
【0092】
例えば、第1のガス配管73Aにおいてガス供給圧が開弁圧力未満になった場合、その第1のガス配管73Aに接続された第1のガス圧検知部10Aにおいて、ダイヤフラム11と共に直動シャフト14が降下し(図5参照)、増幅レバー22がトリガー弁23を開弁させる。即ち、増幅レバー22の作用端22Bがロックピン28を押し上げてロックピン28をロック位置からロック解除位置にする。すると、図11から図12への変化に示すように、圧縮コイルバネ27の付勢力によって直動ロッド25が開弁方向に直動し、トリガー弁体251がトリガー弁孔402を開放して加圧状態の封止部屋40を外気と連通させる。つまり、封止部屋40内の圧縮気体を外部に放出させる。
【0093】
封止部屋40の内圧が低下することで、ダイヤフラム41を下方に押圧する力が弱まり、圧縮コイルバネ47の弾発力によってダイヤフラム41が第1のガス導入部屋31から封止部屋40側に上昇し、メイン弁体45が閉弁位置から開弁位置(図5に示す状態)に移動する。これにより、第1と第2のガス導入部屋31,32がメイン弁孔331によって連通し、緊急連通部30の内部空間を介して第1と第2のガス配管73A,73B同士が連通する。メイン弁体45は、一度開弁すると、封止部屋40に再び圧縮気体が充填されない限り、開弁位置に維持される。また、メイン弁体45が開弁位置になると、作動インジケータ50の表示色が赤色になる。
【0094】
この作動インジケータ50の表示色から、第1と第2のガス配管73A,73Bのうち、少なくとも何れか一方でガス供給圧が開弁圧力(平常時のガス供給圧の下限値)未満になったことが容易に分かる。この場合は、ガス配管網70を遮断部74で遮断すると、需要家72においてガス機器が使用不可能になると推定される。このことから、遮断部74を含む工事対象配管73を撤去して、その撤去部分の両側でガス配管網70を行き止まりにすることができないことが推定される。或いは、工事対象配管73を交換する場合には、工事対象配管73を挟んだ両側を代替ガス管で繋ぐ必要が有ることが推定される。
【0095】
このように、本実施形態のガス圧緊急連通装置60を使用すれば、遮断部74を挟んだ第1と第2のガス配管73A,73Bのうち、何れか一方でもガス供給圧が外気圧に対して予め定められた基準差圧未満なった場合に、それら両ガス配管73A,73B同士を自動的に連通させて、低下した方のガス供給圧を自動的に回復させることができるから、ガス配管網70の工事に伴う調査のために、工事現場に作業員を配置する必要が無くなる。よって、人件費を節約すると共に、ガス供給圧の低下時に確実に対応することできかつ、交通規制を緩和又は不要にすることが可能になる。また、第1と第2のガス圧検知部10A,10Bによる第1と第2のガス配管73A,73Bのガス供給圧の検知と、ガス供給圧の低下に伴うメイン弁体45の開弁動作とを、無電源で行うことができる。
【0096】
また、増幅レバー22は、直動シャフト14の直動量を増幅してロックピン28に伝達するので、直動シャフト14の直動ストロークを小さくして、第1及び第2のガス圧検知部10A,10Bをコンパクト化することが可能になる。また、第1及び第2のガス圧検知部10A,10Bを緊急連通弁30の上面に重ねて配置すると共に、第1及び第2のガス圧検知部10A,10Bで1つのトリガー弁23を共用しかつ、連通路311,312及び第1と第2のガス圧導入路308,309を、筐体300内に貫通形成したから、ガス圧緊急連通装置60のコンパクト化を図ることができ、例えば、工事現場に仮設したバルブピットに収めることができる。
【0097】
[第2実施形態]
本実施形態は、図16に示されており、メイン弁体45を区画壁33より下方の第2のガス導入部屋32に配置し、メイン弁体45とシャフト支持体46との間を引っ張りバネ48にて連結すると共に、ガス圧緊急連通装置60を使用する際には、封止部屋40を外気圧に対して負圧状態にするようにした点が上記第1実施形態とは異なる。
【0098】
詳細には、緊急連通部30に備えた一方の手動バルブ42に真空ポンプ(図示せず)を接続し、トリガー弁体251を閉弁位置にした状態で封止部屋40内の空気を抜いて負圧状態にすると、ダイヤフラム41が封止部屋40側に引きつけられる。そして、直動シャフト44を介してダイヤフラム41と連結されたメイン弁体45が、引っ張りバネ48を延ばしながら区画壁33に当接しメイン弁孔331を閉止する。
【0099】
この状態で、トリガー弁体251が閉弁位置から開弁位置に移動し、封止部屋40が外気に開放されると、封止部屋40内に外気が流入して、封止部屋40内が増圧される。すると、ダイヤフラム41を封止部屋40側に引きつける力が弱まり、引っ張りバネ48の弾発力でメイン弁体45が下方に移動する。即ち、メイン弁孔331が開放して、第1と第2のガス導入部屋31,32が連通する。本実施形態のガス圧緊急連通装置60でも、上記第1実施形態と同等の効果を奏する。
【0100】
[第3実施形態]
本実施形態は図17及び図18に示されている。本実施形態では、封止部屋を備えていない替わりに、第1のガス導入部屋31内でスライド可能なストッパ片49を備えている。ストッパ片49は先端部が二股構造になっており、その二股の中間に平面視U字形の係止凹部491が形成されている。また、直動シャフト44のうち、メイン弁体45より上方には、係止凹部491内に受容可能な細軸部441と、係止凹部491内に受容不可能で細軸部441に対して段付き状に拡径した太軸部442とが備えられている。
【0101】
ストッパ片49は、筐体300の外部から第1のガス導入部屋31内に挿入されて、直動シャフト44と直交した水平方向にスライド可能となっている。詳細には、直動シャフト44のうち、細軸部441を係止凹部491内に受容して、段差部443と係止した係止位置(図17に示す位置)と、直動シャフト44の側方に退避して、段差部443との係止が解除された係止解除位置(図18に示す位置)との間でスライド可能となっている。
【0102】
ストッパ片49は、上記第1実施形態で説明したトリガー弁23におけるトリガー弁体251のように、直動ロッド25の先端に固定されており、ロックピン28をロック位置にすることで係止位置に保持され、ロックピン28をロック解除位置にすることで係止解除位置に移動する(図13参照)。
【0103】
図17に示すように、ストッパ片49が係止位置に位置している場合、シャフト支持体46とメイン弁体45との間で、圧縮コイルバネ47が押し縮められ、その弾発力に抗してメイン弁体45が閉弁位置に維持される。本実施形態において圧縮コイルバネ47は、本発明の「弁駆動弾性体」に相当し、圧縮コイルバネ47の弾発力が静エネルギーとして貯えられる。なお、ストッパ片49は、本発明の「弾発力保持手段」に相当する。
【0104】
第1又は第2のガス圧検知部10A,10Bの何れかが作動して、ロックピン28(本発明の「トリガー手段」に相当する)がロック位置からロック解除位置に切り替わると、直動ロッド25が直動してストッパ片49が係止位置から係止解除位置へとスライドする。すると、図18に示すように、シャフト支持体46とメイン弁体45との間で静エネルギーとして貯えられていた圧縮コイルバネ47の弾発力で、メイン弁体45が開弁する。即ち、第1と第2のガス導入部屋31,32が連通する。本実施形態のガス圧緊急連通装置60でも、上記第1実施形態と同等の効果を奏する。
【0105】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0106】
(1)前記実施形態では、作動インジケータ50によってメイン弁体45が開弁位置に位置することを報知していたが、例えば、トリガー弁孔402の内側にホイッスルを設けておき、外気に対して加圧状態の封止部屋40を外気に開放した場合に放出される圧縮気体、又は、外気に対して負圧状態の封止部屋40を外気に開放した場合に封止部屋40に流入する外気によって、ホイッスルを鳴らすようにしてもよい。
【0107】
(2)前記実施形態では、作動インジケータ50を備えていたが、作動インジケータ50を設けなくとも、トリガー弁体251が閉弁位置に位置するか開弁位置に位置するかによって、ガス圧緊急連通装置60の作動の有無を判別することができる。即ち、トリガー弁体251又は直動ロッド25を、本発明の「作動報知手段」として利用してもよい。
【0108】
(3)前記上記実施形態では、圧力記録計36を備えていたが、単に、ガス圧緊急連通装置60が作動したか否かを確認するという目的であれば、圧力記録計36を設けなくてもよい。
【0109】
(4)前記実施形態では、通気性防水素材によって外気連通孔104から上検知部屋12への水の侵入が防止されていたが、ガス圧緊急連通装置60が水没した場合に、上検知部屋12に封止された空気に水圧がかかって、ダイヤフラム11が検知位置に移動(降下)してメイン弁体45が開弁するようにしてもよい。
【0110】
(5)前記実施形態において、ダイヤフラム11,41の替わりにべローズを用いてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10A 第1のガス圧検知部
10B 第2のガス圧検知部
11 検知部ダイヤフラム(検知可動部材)
12,13 検知部屋
14 直動シャフト(検知可動部材)
16 対向可動盤
17 圧縮コイルバネ(基準差圧調整用圧縮コイルバネ)
18 調整螺子
22 増幅レバー
23 トリガー弁
25 直動ロッド
27 圧縮コイルバネ(開弁付勢体)
28 ロックピン(閉弁維持部材、トリガー手段)
30 緊急連通部(緊急連通弁)
31 第1のガス導入部屋
32 第2のガス導入部屋
33 区画壁
34 圧力センサ
36 圧力記録計(圧力記録部)
40 封止部屋
41 連通弁ダイヤフラム(受圧可動体)
44 直動シャフト
45 メイン弁体
47 圧縮コイルバネ
48 引っ張りバネ
49 ストッパ片(弾発力保持手段)
50 作動インジケータ(作動報知手段)
60 ガス圧緊急連通装置
70 ガス配管網
73A 第1のガス配管
73B 第2のガス配管
74 遮断部
100 検知ハウジング
105 シャフトガイド孔
162 螺旋孔
251 トリガー弁体(弾発力保持手段)
331 メイン弁孔
402 トリガー弁孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス配管網のうち工事により遮断される遮断部を間に挟んだ第1と第2のガス配管の間に接続され、通常は、前記第1と第2のガス配管の間を遮断すると共に、それら第1と第2のガス配管の内圧のうち何れか一方でも外気圧に対して予め定められた基準差圧未満になったときに前記第1と第2のガス配管の間を連通させるように作動するガス圧緊急連通装置において、
外気に対して内部が加圧状態又は負圧状態に維持された封止部屋に、閉弁状態のトリガー弁を接続して備え、そのトリガー弁を開くと前記封止部屋の一部を構成する受圧可動体の変形又は移動に伴ってメイン弁体が閉弁位置から開弁位置に移動し、前記第1と第2のガス配管の間を連通させることが可能な緊急連通弁と、
表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で前記第1のガス配管の内圧を受け、前記第1のガス配管の内圧が外気圧に対して前記基準差圧以上から前記基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第1のガス圧検知部と、
表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で前記第2のガス配管の内圧を受け、前記第2のガス配管の内圧が外気圧に対して前記基準差圧以上から前記基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第2のガス圧検知部と、
前記第1及び第2のガス圧検知部の両前記検知可動部材と前記トリガー弁との間に設けられ、前記両検知可動部材のうち何れか一方でも前記待機位置から前記検知位置に移動したときに、その検知可動部材の動力を前記トリガー弁に伝達して前記メイン弁体を開弁させるトリガー動力伝達機構とを備えたことを特徴とするガス圧緊急連通装置。
【請求項2】
前記トリガー弁は、直動可能に支持された直動ロッドと、前記直動ロッドの端部に固定されたトリガー弁体と、前記トリガー弁体を開弁方向に付勢する開弁付勢体と、前記開弁付勢体の付勢力に抗して前記直動ロッドの前記開弁方向への直動を禁止し前記トリガー弁体を閉弁位置に維持するロック位置と前記直動ロッドの前記開弁方向への直動を許容するロック解除位置との間で移動可能な閉弁維持部材とを備え、
前記トリガー動力伝達機構は、前記検知可動部材が前記待機位置から前記検知位置に移動したときの動力で前記閉弁維持部材を前記ロック位置から前記ロック解除位置に移動させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のガス圧緊急連通装置。
【請求項3】
前記トリガー動力伝達機構には、前記第1及び第2のガス圧検知部における前記各検知可動部材毎に設けられて、一端が前記検知可動部材に連結又は当接する一方、他方が前記閉弁維持部材に連結又は当接し、さらに、中間部分が前記検知可動部材の移動方向と直交した回転軸を中心に回動可能に支持され、前記検知可動部材に動作量を増幅して前記閉弁維持部材に伝達する1対の増幅レバーが備えられたことを特徴とする請求項2に記載のガス圧緊急連通装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のガス圧検知部は、前記検知可動部材に備えた検知部ダイヤフラムで仕切られ、一方が外気に連通しかつ他方が前記ガス配管に連通した1対の検知部屋を内側に有した検知ハウジングを備え、前記検知可動部材は、前記検知ハウジングに形成されたシャフトガイド孔を貫通して直動可能に支持された直動シャフトを前記検知部ダイヤフラムに一体に固定してなり、
前記検知ハウジングの外側に位置した端部が前記増幅レバーに連結又は当接するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載のガス圧緊急連通装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のガス圧検知部は、前記検知可動部材に備えた検知部ダイヤフラムで仕切られ、一方が外気に連通しかつ他方が前記ガス配管に連通した1対の検知部屋を内側に有した検知ハウジングを備えると共に、外気に連通した前記検知部屋内には、前記検知部ダイヤフラムに対向する対向可動盤と、それら検知部ダイヤフラムと対向可動盤との間で圧縮変形した基準差圧調整用圧縮コイルバネとが収容され、前記対向可動盤に貫通形成された螺子孔に調整螺子を螺合し、その調整螺子の螺合操作により前記対向可動盤を移動して前記基準差圧調整用圧縮コイルバネが前記検知部ダイヤフラムに付与する弾発力を調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載のガス圧緊急連通装置。
【請求項6】
前記メイン弁体を前記閉弁位置から前記開弁位置に移動する動力によって前記メイン弁体が前記開弁位置に位置することを報知可能な作動報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載のガス圧緊急連通装置。
【請求項7】
前記第1と第2のガス配管の内圧を記録する圧力記録部を備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載のガス圧緊急連通装置。
【請求項8】
前記第1のガス配管と常時連通した第1のガス導入部屋と、
前記第2のガス配管と常時連通しかつメイン弁孔を介して前記第1のガス導入部屋と連通可能な第2のガス導入部屋と、
前記封止部屋と前記第1のガス導入部屋との間を仕切ると共に、それら前記封止部屋と前記第1のガス導入部屋との間で往復動可能な前記受圧可動体としての連通弁ダイヤフラムとを備え、
前記第2のガス導入部屋を前記第1のガス導入部屋を挟んで前記封止部屋とは反対側に配置し、前記第1のガス導入部屋内に前記メイン弁体を配置すると共に、そのメイン弁体を、前記連通弁ダイヤフラムと一体に固定されて前記第1のガス導入部屋内で直動可能な直動部に固定し、前記連通弁ダイヤフラムの往復動によって前記メイン弁体は、前記メイン弁孔を閉止した前記閉弁位置と前記メイン弁孔を開放した前記開弁位置との間で往復動可能としたことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載のガス圧監視装置。
【請求項9】
ガス配管網のうち工事により遮断される遮断部を間に挟んだ第1と第2のガス配管の間に接続され、通常は、前記第1と第2のガス配管の間を遮断すると共に、それら第1と第2のガス配管の内圧のうち何れか一方でも外気圧に対して予め定められた基準差圧未満になったときに前記第1と第2のガス配管の間を連通させるように作動するガス圧緊急連通装置において、
弁駆動弾性体の弾発力を静エネルギーとして貯えた状態に保持する弾発力保持手段と、その保持を解除するためのトリガー手段を備え、前記トリガー手段の作動により前記静エネルギーをメイン弁体の運動エネルギーに変換して、そのメイン弁体を閉弁位置から開弁位置に移動して前記第1と第2のガス配管の間を連通させることが可能な緊急連通弁と、
表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で前記第1のガス配管の内圧を受け、前記第1のガス配管の内圧が外気圧に対して前記基準差圧以上から前記基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第1のガス圧検知部と、
表裏の何れか一方で外気圧を受ける一方、他方で前記第2のガス配管の内圧を受け、前記第2のガス配管の内圧が外気圧に対して前記基準差圧以上から前記基準差圧未満に変化したときに待機位置から検知位置に移動する検知可動部材を有した第2のガス圧検知部と、
前記第1及び第2のガス圧検知部の両前記検知可動部材と前記トリガー手段との間に設けられ、前記両検知可動部材のうち何れか一方でも前記待機位置から前記検知位置に移動したときに、その検知可動部材の動力によって前記トリガー手段を作動させるトリガー動力伝達機構とを備えたことを特徴とするガス圧緊急連通装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−196537(P2011−196537A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67483(P2010−67483)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 〔研究集会名〕 都市ガスシンポジウムアネックス2009 〔主催者名〕 社団法人 日本ガス協会会長 市野 紀生 〔開催日〕 平成21年11月26日
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【出願人】(000196680)西部瓦斯株式会社 (47)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(598135795)秦野瓦斯株式会社 (5)
【出願人】(597167634)習志野市 (13)
【Fターム(参考)】