説明

ガス希釈装置とガス希釈方法およびガス検知センサーの検査方法

【課題】濃度調整の対象となるガスを他のガスで希釈して行う濃度調整の簡略化を図る。
【解決手段】水素ガス供給源HSから純水素ガスを第1容器10に封入し、この第1容器10を、シリンダピストン構造を備える第2容器20に連通管路50を介して連通させる。第1容器10に純水素ガス封入状態で、開閉バルブ51と放出用開閉バルブ53を閉弁し、ピストン22を後退させてシリンダ内容器室24の内容積を拡張させる。内容積拡張に合わせて、まず開閉バルブ51を開弁して、第1容器10から純水素ガスをシリンダ内容器室24に吸引通気しつつ、放出用開閉バルブ53も開弁して、空気を第1容器10を経てシリンダ内容器室24に吸引通気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のガスを他のガスと混合させて希釈するガス希釈化手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になり、化石燃料に代わる燃料として水素が着目され、燃料電池発電システム或いは燃料電池搭載車両の燃料ガスとしての需要が増している。燃料電池に水素ガスを供給して発電を行う場合、発電のための電気化学反応に用いられなかった余剰の水素は、大気放出される。ところが、水素は可燃性であるため、大気放出するに当たり、水素濃度を所定の許容低濃度まで低くすることが通常なされている。この濃度低下のための機器制御には、水素濃度を検出する水素濃度センサーの検出濃度が用いられるので、水素濃度センサーの濃度検出の信頼性確保の上から、水素濃度センサーの動作確認が求められている。例えば、燃料電池搭載車両であれば、水素濃度センサーの動作確認を、出荷前の製造過程での検査工程において、或いは車両検査場や整備場での検査・整備の検査工程において行うようにされている。
【0003】
こうした水素濃度センサーの動作確認では、水素濃度センサーの検知部を、所定の検査ガス濃度、例えば4%の濃度とされた水素ガスに晒すことになり、この所定濃度の水素ガスの生成が不可欠である。ところが、水素ガスの供給状況は、水素濃度100%のガス(純水素ガス)としての供給、或いは規定濃度(1.3%)のガス(低濃度水素ガス)としての供給が一般的である。このため、純水素ガスを空気と混合して希釈化して、或いは低濃度水素ガスに純水素ガスを混合して高濃度化して、所定の検査ガス濃度に調整する必要がある。こうしたガス濃度調整の要請に応えるべく、種々のガス濃度調整手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−47837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献で提案された手法では、水素ガス(検査用ガス)と希釈用ガスとをタンクに供給するに当たり、タンク内圧測定やガスの積算供給量の演算、およびタンク内圧に応じたガス供給量の制御を必要とする。このため、ガス濃度調整の煩雑さが指摘されるに至った。なお、ガス濃度調整は、水素ガスについてのみ要請されるものではなく、種々のガスを他のガスと混合して希釈する際に共通して要請される。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、濃度調整の対象となるガスを他のガスで希釈して行う濃度調整の簡略化をもたらす新たな手法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用1:ガス希釈装置]
第1のガスを他のガスと混合させて希釈するガス希釈装置であって、
前記第1のガスが封入され、内容積が一定の第1容器と、
シリンダピストン構造を備え、シリンダとピストンの相対移動によって内容積を変更可能な第2容器と、
シリンダピストンの前記相対移動を起こして前記第2容器の内容積を拡張変更する容積変更手段と、
前記容積変更手段による前記第2容器の内容積の拡張タイミングに合わせて、前記第1容器に封入済みの前記第1のガスを前記第2容器の内部に通気する第1ガス通気と、前記他のガスを前記第2容器の内部に通気する他ガス通気とを行い、前記第1のガスを前記他のガスで希釈する希釈化手段と
を備えることを要旨とする。
【0009】
[適用2:ガス希釈方法]
第1のガスを他のガスと混合させて希釈するガス希釈方法であって、
定内容積の第1容器に前記第1のガスを封入し、
シリンダピストン構造を備えシリンダとピストンの相対移動によって内容積を変更可能な第2容器に対して、シリンダピストンの前記相対移動を起こして前記第2容器の内容積を拡張変更するに当たり、前記第2容器の内容積の拡張タイミングに合わせて、前記第1容器に封入済みの前記第1のガスを前記第2容器の内部に通気する第1ガス通気と、前記他のガスを前記第2容器の内部に通気する他ガス通気とを行い、前記第1のガスを前記他のガスで希釈する
ことを要旨とする。
【0010】
上記構成のガス希釈装置とガス希釈方法によるガス希釈手法では、第1のガスのガス量GVは、その封入対象である第1容器の内容積と当該容器に封入する際の圧力(封入圧P)と環境温度とで定まる。第1容器は定内容積であり、環境温度は一定と推定できることから、希釈による濃度調整の対象となる第1のガスのガス量GVは、封入圧Pに依存して定まり、この封入圧Pにより既知となる。後述するように、第1のガスは他のガスとの混合を経て希釈されるが、第1のガスの流出を起こさないことから、上記のガス量GVは他のガスとの混合を経ても不変である。そして、このガス量GVで第1容器に封入済みの第1のガスは、シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張タイミングに合わせた第1ガス通気により、第2容器に流入する。この第2容器の内容積の拡張は、内容積拡張による圧力低下をもたらすので、第1ガス通気により第2容器と繋がった第1容器からの第1のガスの吸引を引き起こし、第1のガスは速やかに第2容器内に流入する。その一方、第1のガスを希釈化するための他のガスにあっても、シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張タイミングに合わせた他ガス通気により、第2容器に吸引されて流入する。このため、第2容器の内部とこの第2容器に繋がった第1容器の内部とで、ガス量GVの第1のガスは他のガスと混合して希釈されることになる。この場合、上記したガス通気は吸引通気となるので、第1のガスの流出は起きないと想定でき、封入圧Pを環境圧力近傍とすれば、第1のガスの流出を確実に回避できる。
【0011】
シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張変更が終了した状況下では、ガス量GVの第1のガスと他のガスとが占める空間(ガス占有空間)の容積は、第1容器の定内容積と第2容器の拡張変更後の内容積の和で定まる。また、上記のガス占有空間の圧力は、第2容器への他のガスの流入により、この他のガスが存在していた環境の圧力に推移し、第1のガスと他のガスは、この環境圧力で上記のガス占有空間で混合する。このため、ガス量GVの第1のガスは、第1容器の内容積(定内容積)と第2容器の拡張変更後の内容積との比で定まる濃度に希釈化される。この結果、上記構成のガス希釈手法では、第1のガスの濃度を第1のガスを他のガスと混合して希釈することで調整するに当たり、タンク内圧測定やガス流量の積算演算等を一切必要とせず、シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張と、この拡張タイミングに合わせたガス通気とを行えばよく、簡便である。また、内圧や流量測定のためのセンサーの他、センサー出力に基づいた機器制御を行う制御機器も不要となることから、構成の簡略化も可能となる。
【0012】
上記したガス希釈装置は、次のような態様とすることができる。例えば、前記第1のガスの希釈程度に応じて、前記第2容器の内容積を変更するようにできる。こうすれば、第2容器の内容積の変更の状況により、第1のガスを種々の濃度に調整できる。
【0013】
また、前記第2容器において、前記ピストンの一端側から他端側にかけてピストンに形成したピストン内容器室を前記第1容器とすると共に、前記ピストン内容器室への前記第1のガスの封入を可能とするようにできる。こうすれば、シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張により、第1容器(ピストン内容器室)から第2容器への第1のガスの通気(第1ガス通気)が自ずと起こるので、簡便である。
【0014】
この場合、前記第2容器の前記シリンダの端面の側に前記第2容器の内部に前記他のガスを通気する通気管路を備えた上で、前記第2容器において、前記ピストン内容器室を前記通気管路のシリンダ接続口からオフセットして備え、前記第2容器の内容積の拡張前にあっては前記シリンダ接続口を前記ピストンにて封止するようにすることもできる。こうすれば、シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張によりシリンダ接続口が開くので、第2容器への他のガスの通気(他ガス通気)が自ずと起き、簡便である。
【0015】
また、前記第1容器を、異なる内容積の容器に交換可能とすれば、その交換した第1容器の内容積で第1のガスのガス量GVが定まる。よって、第1容器の交換によっても、第1のガスの濃度を容易に調整できる。
【0016】
更に、前記第1のガスと混合された上で前記他のガスにより希釈される第2のガスが封入される定内容積の第3容器を備え、前記拡張タイミングに合わせて、前記第1ガス通気と、前記第3容器に封入済みの前記第2のガスを前記第2容器の内部に通気する第2ガス通気と、前記他ガス通気とを行うようにすることもできる。こうすれば、第1のガスと第2のガスとが、それぞれの容器への封入の際に定まるガス量の比で混合した第1・第2混合ガスを他のガスにて希釈して、この第1・第2混合ガスの濃度を容易に調整できる。
【0017】
このように第2のガスをも他のガスで混合・希釈させる場合、前記第2容器において、前記ピストンに第1ピストン内容器室と第2ピストン内容器室とを前記ピストンの一端側から他端側にかけて並べて形成して、前記第1ピストン内容器室を前記第1容器とし、前記第2ピストン内容器室を前記第3容器とすると共に、前記第1ピストン内容器室への前記第1のガスの封入と、前記第2ピストン内容器室への前記第2のガスの封入とを可能とするようにできる。こうすれば、シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張により、第1容器(第1ピストン内容器室)から第2容器への第1のガスの通気(第1ガス通気)と、第3容器(第2ピストン内容器室)から第2容器への第2のガスの通気(第2ガス通気)とが自ずと起こるので、簡便である。
【0018】
この場合、前記第2容器の前記シリンダの端面の側に前記第2容器の内部に前記他のガスを通気する通気管路を備えた上で、前記第2容器において、前記第1ピストン内容器室と前記第2ピストン内容器室とを前記通気管路のシリンダ接続口からオフセットして備え、前記容積変更手段による前記第2容器の内容積の拡張前にあっては前記シリンダ接続口を前記ピストンにて封止するようにすることもできる。こうすれば、シリンダピストンの相対移動による第2容器の内容積の拡張によりシリンダ接続口が開くので、第2容器への他のガスの通気(他ガス通気)が自ずと起き、簡便である。
【0019】
また、前記第2容器の内容積の拡張前において前記ピストンの端面と該端面に対向する前記シリンダの底面との間に形成されるシリンダ内容器室を前記第1容器とすると共に、前記シリンダ内容器室への前記第1のガスの封入を可能とするようにできる。こうすれば、シリンダピストンの相対移動により、第1容器(シリンダ内容器室)の内容積自体が拡張されて第1のガスの通気(第1ガス通気)が自ずと起こるので、簡便である。
【0020】
[適用3:ガス検知センサーの検査方法]
第1のガスを他のガスと混合して希釈した前記第1のガスを検知するガス検知センサーの検査方法であって、
前記ガス検知センサーの検知部を、上記の構成のガス希釈装置或いはガス希釈方法で得られた希釈済みの前記第1のガスに晒す
ことを要旨とする。
【0021】
上記構成のガス検知センサーの検査方法では、予めセンサーの検査用濃度に調整済みの第1のガスにガス検知センサーの検知部を晒すので、センサーの検査精度の信頼性を高めることができると共に、ガス濃度調整が簡便な分だけ、センサー検査作業も簡便となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例としての水素ガス希釈装置100の構成を概略的に示す概略構成図である。
【図2】水素ガス希釈装置100にて行うガス希釈とセンサー動作確認の手順を示す手順図である。
【図3】ガス希釈前の状態での第1容器10と第2容器20との関係を示す説明図である。
【図4】ガス希釈過程にある第1容器10と第2容器20との関係とガス希釈の様子とを示す説明図である。
【図5】希釈水素ガスの濃度確認の様子と希釈水素ガスによるセンサー動作確認の様子とを示す説明図である。
【図6】図1相当図であり異なる内容積の第1容器10Aを用いた水素ガス希釈装置100の構成を概略的に示す概略構成図である。
【図7】第2実施例の水素ガス希釈装置100Aの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図8】図7相当図であり第2容器20の流路室25が異なる内容積とされた水素ガス希釈装置100Aの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図9】単一のピストン22Aにより内容積の異なる流路室25を得る構成を示す説明図である。
【図10】図7相当図であり第3実施例の水素ガス希釈装置100Bの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図11】図7相当図であり第4実施例の水素ガス希釈装置100Cの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図12】図11相当図であり第5実施例の水素ガス希釈装置100Dの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図13】図11相当図であり第6実施例の水素ガス希釈装置100Eの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図14】水素・ヘリウム・窒素混合気を生成する場合の水素ガス希釈装置100Eを示す概略構成図である。
【図15】第7実施例の水素ガス希釈装置100Fの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図16】水素ガス希釈装置100Fを透視して概略的に示す説明図である。
【図17】ピストン進退機構40Aによるピストンの挙動と水素ガスの希釈の様子とを合わせて示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施例としての水素ガス希釈装置100の構成を概略的に示す概略構成図である。
【0024】
図示するように、水素ガス希釈装置100は、水素濃度100%の純水素ガスを希釈して濃度調整を行うものであり、第1容器10と第2容器20とピストン進退機構40とを備える。第1容器10は、水素ガスボンベや水素貯蔵合金タンク等の水素ガス供給源HSから供給された純水素ガスを封入する密閉容器であり、ガス供給管路11とガス放出管路12とを備える。
【0025】
ガス供給管路11は、管路途中に減圧弁13を備え、管路末端の雄雌の配管接続金具を介して水素ガス供給源HSと接続される。こうした水素ガス供給源HSとの接続により、第1容器10は、減圧後の圧力で水素ガス供給源HSからの純水素ガスを封入する。封入された純水素ガスのガス量GVは、第1容器10の内容積と減圧圧力と環境温度とで定まり、第1容器10は定内容積で環境温度は一定と推定できることから、減圧圧力に依存する。本実施例では、希釈用のガスを空気とすることから、減圧圧力を大気圧の1.05〜1.20倍の圧力に設定した。こうして設定した減圧圧力で定まる純水素ガスのガス量GVは、後述するガス混合・希釈の際に水素ガスの流出を起こさないことから、空気との混合を経ても不変である。
【0026】
ガス放出管路12は、希釈後の水素ガスの濃度確認のために用いられ、管路末端に管路蓋体15を備える。この管路蓋体15は、第1容器10の内圧が想定される以上に昇圧した場合の降圧機能を備えると共に、手動操作により管路開放を行って第1容器10の内部ガス(水素ガス)を放出する。
【0027】
第2容器20は、シリンダ21にピストン22を挿入して両者の相対移動が可能なシリンダピストン構造を備え、ピストン22をシリンダ21に対して移動させることでシリンダ21の内容積を変更可能である。ピストン22は、その先端にシリンダ21とのシールを確保するシール部材23を備え、ピストン端面とシリンダ底面との間にシリンダ内容器室24を形成する。また、ピストン22は、その中央に流路室25を備え、シリンダ内容器室24と流路室25を連通させている。この場合、シリンダ内容器室24については、シリンダ21の移動前の初期状態において所定の内容積を有するが、初期状態の内容積をゼロとするようにしてもよい。流路室25は、第1容器10におけるガス放出管路12と同様、希釈後の水素ガスの濃度確認のために用いられ、外部末端側に管路蓋体15と同一機能を果たす流路蓋体26を備える。
【0028】
ピストン進退機構40は、ピストン22のピストンフランジ27に係合し、モーターの正逆回転やシリンダの往復動或いは手動の回転ハンドル操作等により、ピストン22をシリンダ21に対して前進後退させる。ピストン進退機構40は、ストッパ42を備え、このストッパ42によりピストン22の前後動範囲を規定している。つまり、第2容器20は、ストッパ42に達するまでピストン22が後退すると、後述する内容積までシリンダ内容器室24を拡張することになる。
【0029】
この他、水素ガス希釈装置100は、第1容器10と第2容器20とを連通管路50にて連通し、第1容器10の内部と第2容器20のシリンダ内容器室24とのガス通気を図る。連通管路50には、管路を開閉する開閉バルブ51が組み込まれているので、当該バルブの開弁により上記ガス通気が可能となる。また、水素ガス希釈装置100は、第1容器10の他端側にセンサー検出用のガス放出管路52を備え、当該管路の放出用開閉バルブ53の開弁を経て第1容器10からガス(希釈水素ガス)を放出する。
【0030】
本実施例の水素ガス希釈装置100は、水素検知センサーの動作確認のために水素ガス希釈を行うことから、その動作確認に十分なガス量の希釈ガス(希釈水素ガス)を生成すれば足りる。例えば、燃料電池搭載車両におけるガス排出系に装着される水素検知センサーでは、約200mlのガス量の希釈水素ガスにセンサー検知部を晒せばよい。また、希釈水素ガスの水素濃度は、上記車両における検知精度の実効性の上からは、1〜4%程度の低濃度とすればよい。こうしたことを考慮して、本実施例の水素ガス希釈装置100では、水素濃度100%の純水素ガスを空気と混合して希釈し、水素濃度が1%に調整された希釈水素ガスを200ml生成することにした。このため、本実施例の水素ガス希釈装置100では、純水素ガスを封入する第1容器10の内容積を2mlとし、この2mlの純水素ガスを198mlの空気と混合して、水素濃度が1%に調整された希釈水素ガスを200ml生成する。つまり、第2容器20では、198mlの内容積のガス混合領域を拡張形成することになる。本実施例の第2容器20では、ピストン22内の流路室25をシリンダ内容器室24に連通させているので、拡張したシリンダ内容器室24の内容積と流路室25の内容積の和が、上記した拡張ガス混合領域となるよう、ピストン進退機構40にてピストン22が後退駆動される。
【0031】
上記した希釈水素ガスの濃度は一例であり、他の濃度に調整する場合には、その調整が望まれる濃度に応じて、第1容器10の内容積と第2容器20の拡張内容積を定めればよい。また、第1容器10が定内容積容器であることから、純水素ガスを希釈して調整が望まれる濃度に応じて、第2容器20の拡張内容積を定めればよい。希釈濃度が上記した1%のどであれば、第1容器10の内容積と第2容器20の拡張内容積の比(内容積比)は1:99となり、希釈濃度が2%であれば内容積比は1:49となり、4%であれば1:24となる。
【0032】
次に、上記した構成を有する水素ガス希釈装置100で行う水素ガス希釈と希釈水素ガスを用いて行う水素検知センサーの動作確認について説明する。図2は水素ガス希釈装置100にて行うガス希釈とセンサー動作確認の手順を示す手順図、図3はガス希釈前の状態での第1容器10と第2容器20との関係を示す説明図、図4はガス希釈過程にある第1容器10と第2容器20との関係とガス希釈の様子とを示す説明図、図5は希釈水素ガスの濃度確認の様子と希釈水素ガスによるセンサー動作確認の様子とを示す説明図である。
【0033】
図2のガス希釈手順では、まず、ステップ100にて、水素ガス供給源HSをガス供給管路11に接続して、第1容器10に純水素ガスを封入する。これにより、図3に示すように、第1容器10の閉じられた容器空間は、減圧弁13による減圧圧力で定まるガス量GVの純水素ガスで占められる。次に、ステップS110にて、ピストン進退機構40によるピストン22の後退駆動と、このピストン後退のタイミングに合わせた第1容器10と第2容器20との間の開閉バルブ51の開弁とを行う。これにより、第1容器10と第2容器20のシリンダ内容器室24とは連通し、第1容器10からシリンダ内容器室24への純水素ガスのガス通気が行われる。ピストン22の後退開始前では、開閉バルブ51が閉弁状態にあるのでシリンダ内容器室24は密閉空間であり、この状態でピストン22が後退するので、シリンダ内容器室24は、体積増(拡張)となると共に減圧環境となる。このため、開閉バルブ51の開弁に伴う第1容器10からシリンダ内容器室24への純水素ガスのガス通気は、減圧に基づく強制的なガス吸引として起き、純水素ガスは速やかにシリンダ内容器室24に流入する。つまり、ガス量GVの純水素ガスは、第1容器10とシリンダ内容器室24と流路室25とを合わせた空間を占めることになる。上記したステップS110における開閉バルブ51の開弁は、ピストン22の後退開始と同時のタイミング、或いは後退開始以降のタイミングで行われる。ピストン進退機構40によるピストン後退は、ピストン後退端を定めるストッパ42にピストンフランジ27が当接するまで継続して行われ、ピストン後退完了により、シリンダ内容器室24と流路室25の内容積の和と第1容器10の内容積の比が既述した内容積比となる。
【0034】
続くステップ120では、ピストン後退のタイミング(即ち、シリンダ内容器室24の内容積の拡張タイミング)に合わせてガス放出管路52を開弁する。これにより、シリンダ内容器室24には、図4に示すように、第1容器10を経由して空気が流入する。この空気流入は、上記したようにシリンダ内容器室24の減圧に基づく強制的なガス吸引として起き、空気は、速やかに第1容器10とシリンダ内容器室24および流路室25に流入して、純水素ガスと混合してこれを希釈化する。上記したステップS210における放出用開閉バルブ53の開弁は、次のようなシリンダ内容器室24の内容積の拡張タイミングに合わせて行うこととした。
【0035】
第1容器10に封入済みの純水素ガスの圧力は、タンク等の高圧で水素ガスを貯蔵する水素ガス供給源HSから供給を受けて減圧する都合上、通常は上記したように大気圧よりは高くなる。このため、開閉バルブ51の開弁により第1容器10と繋がったシリンダ内容器室24の内圧がピストン後退に伴う容積拡張により減圧されたとしても、その際のシリンダ内容器室24の内圧が大気圧より高いことも有り得る。仮に、シリンダ内容器室24の内圧が大気圧より高い状態で放出用開閉バルブ53を開弁すると、シリンダ内容器室24と繋がった第1容器10の中の水素ガスがガス放出管路52を経て大気放出されることが危惧される。本実施例では、こうした事態を確実に回避するため、シリンダ内容器室24の内圧が大気圧以下となるようなピストン後退に伴うシリンダ内容器室24の内容積の拡張タイミングに合わせて、放出用開閉バルブ53を開弁することとした。なお、本実施例では、既述したように第1容器10は2mlの内容積の容器であり、ピストン22の僅かな後退による減圧によりシリンダ内容器室24および第1容器10は、大気圧以下の圧力となる。よって、シリンダ内容器室24の内容積の拡張タイミングに合わせて、開閉バルブ51の開弁と放出用開閉バルブ53の開弁を順次行えば良い。
【0036】
こうして空気の通気を図った後は、ピストン22が後退端まで後退した状態で、ステップS130にて、流入空気に純水素ガスが均一に拡散するまで所定時間に亘って待機する。この間のガス拡散により、既述した容器の内容積比で定まる濃度(本実施例では1%濃度)の水素ガスが生成される。この水素ガスは、水素検知センサーの動作確認に用いるガスである都合上、その濃度を確認しておくことが動作確認の適否判断の上から望ましい。よって、ステップS130に続くステップS140では、希釈後の水素ガス濃度の確認を行う。この濃度確認は、図5に示すように、第1容器10のガス放出管路12と第2容器20の流路室25に、水素ガス濃度検出器HTから延びた通気管61、62を接続し、水素ガス濃度検出器HTにて濃度を測定・確認する。こうして得られたガス濃度は、その後のガス放出を経たセンサー動作の確認に用いられる。なお、ステップS140のガス濃度確認は、図2に示す一連の希釈手順を行うたびに行う必要はなく、例えば、一日の業務において最初に希釈を行う場合に行うようにすればよい。
【0037】
ガス濃度確認後には、ステップS150にて、ピストン22をその初期位置に戻すよう前進させ、これと並行してステップS160にてセンサー動作を確認する。ピストン22の前進により、シリンダ内容器室24と第1容器10の内部に存在する希釈後の水素ガスは、ガス放出管路52に接続された通気管60を経て、水素検知センサーHKに吹き付けられる。このため、水素検知センサーHKのガス検知部は、純水素ガスを空気にて希釈して所定の濃度(1%)に調整済みの水素ガスに晒されるので、この際の水素検知センサーHKの検出出力により、センサー動作の適否を確認できることになる。この場合、ステップS140で確認した水素ガス濃度検出器HTの検出ガス濃度が参照される。
【0038】
センサー動作の確認後には、ピストン22は、図1に示す初期位置に復帰しているので、次回の水素ガス希釈とセンサー動作確認に備え、ステップS170にて、開閉バルブ51と放出用開閉バルブ53とを閉弁する。なお、このバルブ閉弁と共に、通気管60〜62の取り外しや、ガス放出管路12への管路蓋体15の装着、流路室25への流路蓋体26の装着もなされる。
【0039】
以上説明したように、本実施例における水素ガス希釈装置100では、ステップS100〜ステップS130までのガス希釈手順により、純水素ガスが空気に均一に拡散して希釈され、その希釈後の濃度も第1容器10と第2容器20の内容積比で定まる規定の濃度(1%)に調整済みとできる。そして、こうした濃度調整には、第1容器10への純水素ガスの封入と、その後のシリンダ内容器室24の拡張タイミングに合わせた開閉バルブ51の開弁によるシリンダ内容器室24への純水素ガスの通気と、放出用開閉バルブ53の開弁による第1容器10およびシリンダ内容器室24への空気通気とを図るだけで済む。この結果、本実施例の水素ガス希釈装置100によれば、タンク内圧測定やガス流量の積算演算等を一切必要としないので、簡便な純水素ガスの希釈手法を提供できる。また、タンク内圧やガス流量の測定のためのセンサーの他、センサー出力に基づいた機器制御を行う制御機器も不要となることから、構成の簡略化でき、コスト低減の上からも望ましい。
【0040】
しかも、本実施例における水素ガス希釈装置100では、希釈済みの水素ガスを水素検知センサーHKの検知部に晒すに当たって、タンク内圧測定やガス流量の測定等が不要でガス濃度調整が簡便であるので、その分、センサーの動作確認作業は簡便となる。
【0041】
また、上記した水素ガス希釈装置100では、第1容器10を連通管路50とガス放出管路52に繋げているので、この第1容器10を交換することができる。図6は図1相当図であり異なる内容積の第1容器10Aを用いた水素ガス希釈装置100の構成を概略的に示す概略構成図である。図示するように、交換された第1容器10Aは、図1に示す第1容器10の内容積より大きな内容積の容器である。既述したように、第1容器10では、第1容器10の内容積と第2容器20の拡張内容積の内容積比が1:99となるようにして、1%の濃度の希釈水素ガスを生成できるが、第1容器10と交換した第1容器10Aの内容積を、第2容器20の拡張内容積に対する内容積比が1:49となるようにすれば、第1容器10Aへの交換という簡便な手法で、2%の希釈水素ガスを得ることができる。また、第1容器10と交換する第1容器の内容積を、第2容器20の拡張内容積に対する内容積比が1:24となるようにすれば、第1容器交換という簡便な手法で、4%の希釈水素ガスを得ることができる。他の濃度についても同様である。
【0042】
次に、他の実施例について順次説明する。図7は第2実施例の水素ガス希釈装置100Aの構成を概略的に示す概略構成図である。この実施例は、水素ガス供給源HSからの純水素ガスの封入対象の第1容器10を第2容器20に内蔵させた点に特徴がある。なお、以下の説明に際しては、上記した実施例と同一の部材および同一の機能を果たす部材について上記した実施例と同一の符号を用いて示し、その詳細な説明は省略することとする。
【0043】
図示するように、水素ガス希釈装置100Aは、第2容器20のシリンダ内容器室24にガス放出管路52を接続させ、ピストン22の軸方向に亘る流路室25を、第1容器10と同じ内容積となるようにした上で、ピストン外部の側で流路室25にガス供給管路11を接続させている。そして、このガス供給管路11に水素ガス供給源HSを接続し、水素ガス供給源HSから流路室25に純水素ガスを封入する。つまり、この水素ガス希釈装置100Aは、流路室25を上記した実施例の第1容器10に代わる第1容器10Bとし、この第1容器10B(流路室25)に純水素ガスを水素ガス供給源HSから封入する。この場合、シリンダ内容器室24は、これに接続されたガス放出管路52が放出用開閉バルブ53により閉鎖されている状態において密閉状態であるので、シリンダ内容器室24と流路室25とのシールは不要である。また、純水素ガスの封入前において、シリンダ内容器室24が定内容積であれば、このシリンダ内容器室24と流路室25の内容積の和が、第1容器10Bの内容積となる。シリンダ内容器室24の内容積がゼロであれば、流路室25の内容積が第1容器10Bの内容積となる。
【0044】
上記した水素ガス希釈装置100Aであっては、第1容器10B(流路室25)への純水素ガス封入後に、ピストン22を後退させれば、図7(B)に示すように、シリンダ内容器室24の内容積の拡張変更に合わせて、第1容器10B(流路室25)からシリンダ内容器室24への純水素ガスの通気が自ずと起こる。そして、ピストン後退に伴うシリンダ内容器室24の内容積拡張に合わせて、ガス放出管路52の放出用開閉バルブ53を開弁すれば、空気をシリンダ内容器室24に強制的に吸引通気して、既述したように濃度調整済みの希釈水素ガスを生成することができる。このため、水素ガス希釈装置100Aによれば、バルブ操作が簡略化でき、水素ガスの希釈も簡便となる。なお、水素ガス希釈装置100Aで生成した希釈水素ガスを用いたセンサー動作確認では、図7(B)に示す状態で放出用開閉バルブ53を開弁させた上でピストン22を前進端まで押し戻し、ガス放出管路52から希釈水素ガスをセンサーの検知部に放出させればよい。
【0045】
また、第2実施例の水素ガス希釈装置100Aにあっても、種々の濃度の希釈水素ガスを生成できる。図8は図7相当図であり第2容器20の流路室25が異なる内容積とされた水素ガス希釈装置100Aの構成を概略的に示す概略構成図である。図示するように、第2容器20は、流路室25の内容積を広くしたピストン22Aを交換して備え、この流路室25は、第1容器10Bに代わる第1容器10Cとされる。この第1容器10Cとしての流路室25の内容積を、第2容器20の拡張内容積(即ちシリンダ内容器室24の拡張内容積)に対する内容積比が1:49となるようにすれば、ピストン22Aへの交換という簡便な手法で、2%の希釈水素ガスを得ることができる。また、第1容器10Cとしての流路室25の内容積を、シリンダ内容器室24の拡張内容積に対する内容積比が1:24となるようにすれば、ピストン交換という簡便な手法で、4%の希釈水素ガスを得ることができる。他の濃度についても同様である。
【0046】
図9は単一のピストン22Aにより内容積の異なる流路室25を得る構成を示す説明図である。図示するように、ピストン22Aは、内容積の大きな第1容器10Cとしての流路室25を備え、この流路室25には、第1容器10Cより小さな内容積の第1容器10Bを貫通孔として形成したスリーブ29が着脱可能とされている。よって、図7に示すような第1容器10Bとしての流路室25を有する第2容器20とするには、スリーブ29を装着済みのピストン22Aを用い、図8に示すような第1容器10Cとしての流路室25を有する第2容器20とするには、スリーブ29を取り外したピストン22Aを用いればよい。つまり、図9に示すピストン22Aによれば、スリーブ29の着脱という簡便な操作で、種々の濃度の希釈水素ガスを容易に生成できる。
【0047】
図10は図7相当図であり第3実施例の水素ガス希釈装置100Bの構成を概略的に示す概略構成図である。この実施例は、シリンダ内容器室24の内容積拡張の程度を変えることで異なる濃度の希釈水素ガスを生成する点に特徴がある。
【0048】
図示するように、水素ガス希釈装置100Bは、ストッパ42を端部に備えるストッパシャフト41に第2ストッパ42Aを備える。ストッパシャフト41は、シリンダ21に対して着脱自在とされ、ストッパ42と第2ストッパ42Aの向きを変えてシリンダ21に装着されることで、ピストン22の後退端を調整する。つまり、ストッパ42がピストン後退端を規定すれば、図10(B)に示すように、シリンダ内容器室24の拡張内容積を、図7(B)の水素ガス希釈装置100Aと同じとするが、第2ストッパ42Aがピストン後退端を規定すれば、図10(C)に示すように、シリンダ内容器室24の拡張を抑制する。そして、第2ストッパ42Aにて規定されたシリンダ内容器室24の拡張内容積を、ピストン22内の第1容器10Bの内容積に対する内容積比が1:49となるようにすれば、ピストン22の後退程度の変更という簡便な手法で、2%の希釈水素ガスを得ることができる。また、第2ストッパ42Aにて規定されたシリンダ内容器室24の拡張内容積を、ピストン22内の第1容器10Bの内容積に対する内容積比が1:24となるようにすれば、ピストン22の後退程度の変更という簡便な手法で、4%の希釈水素ガスを得ることができる。他の濃度についても同様である。
【0049】
図11は図7相当図であり第4実施例の水素ガス希釈装置100Cの構成を概略的に示す概略構成図である。この実施例は、ピストン22における流路室25とシリンダ内容器室24に接続したガス放出管路52とをオフセットするようにした点に特徴がある。
【0050】
図示するように、水素ガス希釈装置100Cは、ガス放出管路52をシリンダ内容器室24の外縁部近傍に接続して備え、シリンダ21へのガス放出管路52の接続口と対向するピストン22の端面に、シール部材65を備える。このシール部材65は、図11(A)に示すようにピストン22が前進端にある場合に、ガス放出管路52の接続口をシールする。この場合、ピストン22の端面自体をガス放出管路52の接続口に押し付けて、当該接続口をシールするようにすることもできる。
【0051】
第1容器10として代用される流路室25は、ピストン22の軸線上に位置し、シリンダ内容器室24の側の開口部がガス放出管路52の接続口と重ならないよう、この接続口に対してオフセットされている。また、流路室25は、シリンダ内容器室24の側に装着されたシール部材66によりシリンダ内容器室24に対してシールされ、図11(A)に示すようにピストン22が前進端にある場合に、密閉空間となる。この実施例では、流路室25の密閉性の確保のため、シール部材66により流路室25をシールすると共に、シール部材65によりガス放出管路52の接続口についてもシールするようにした。このため、シリンダ内容器室24の内容積の拡張前にあっては、ガス放出管路52の接続口を封止できる。この場合、ピストン22が前進端にある場合のシール部材65によるガス放出管路52の接続口シールが担保されれば、流路室25は、シリンダ内容器室24と一体となって密閉空間を形成するので、シール部材66を省略することもできる。また、ピストン22が前進端にある場合にピストン端面でのガス放出管路52の接続口シールが担保されれば、シール部材65を省略することもできる。
【0052】
上記した構成の水素ガス希釈装置100Cでは、第2実施例の水素ガス希釈装置100Aと同様、ガス供給管路11に水素ガス供給源HSを接続し、水素ガス供給源HSから流路室25に純水素ガスを封入する(図11(A))。その後、ピストン22を後退させれば、図11(B)に示すように、シリンダ内容器室24の内容積の拡張変更に合わせて、第1容器10B(流路室25)からシリンダ内容器室24への純水素ガス通気が自ずと起こると共に、ガス放出管路52のシリンダ接続口にあっても自ずと開いて空気がシリンダ内容器室24に吸引通気され、既述したように濃度調整済みの希釈水素ガスを生成することができる。このため、水素ガス希釈装置100Cによれば、ガス放出管路52を開閉する開閉操作が不要となり、水素ガスをより簡便に希釈できる。
【0053】
図12は図11相当図であり第5実施例の水素ガス希釈装置100Dの構成を概略的に示す概略構成図である。この実施例は、異なる濃度の希釈水素ガスを生成するようにした点に特徴がある。
【0054】
図示するように、水素ガス希釈装置100Dは、二つの流路室を有する第2容器20Aを備え、この第2容器20Aは、第1容器10Bの代用となる流路室25に並べて第2流路室25Aを備える。第2流路室25Aは、流路室25より内容積が大きくされており、流路室25と同様にガス供給管路11が接続されている。また、第2流路室25Aは、流路室25と同様に密閉性確保のため、シール部材67にてシリンダ内容器室24とシールされている。
【0055】
この水素ガス希釈装置100Dでは、水素ガス供給源HSを流路室25と第2流路室25Aのいずれか一方に接続して、そのいずれか一方の流路室に純水素ガスを封入する。第1容器10Bとしての流路室25に純水素ガスを封入すれば、第1容器10Bとしての流路室25の内容積と拡張後のシリンダ内容器室24(詳しくは第2流路室25Aを含んだシリンダ内容器室24)の内容積比で定まる濃度で水素ガスを希釈でき、図12(A)に示すように、第2流路室25Aに純水素ガスを封入すれば、第2流路室25Aの内容積と拡張後のシリンダ内容器室24(詳しくは流路室25を含んだシリンダ内容器室24)の内容積比で定まる濃度で水素ガスを希釈できる(図12(B))。この場合の希釈水素ガス濃度は、流路室25を用いた場合と第2流路室25Aを用いた場合で相違し、流路室25の内容積を、上記したシリンダ内容器室24の拡張内容積に対する内容積比が1:99となるようにすれば、1%の希釈水素ガスを得ることができ、第2流路室25Aの内容積を、上記したシリンダ内容器室24の拡張内容積に対する内容積比が1:24となるようにすれば、4%の希釈水素ガスを得ることができる。つまり、水素ガス希釈装置100Dによれば、水素ガス供給源HSからの純水素ガスの封入対象を使い分けるだけで、異なる濃度の希釈水素ガスを容易に生成することができる。
【0056】
図13は図11相当図であり第6実施例の水素ガス希釈装置100Eの構成を概略的に示す概略構成図である。この実施例は、水素ガスとヘリウムガスの両ガスを所定の割合で混在させた上で空気で希釈する点に特徴がある。
【0057】
図示するように、水素ガス希釈装置100Eは、水素ガス供給源HSからの純水素ガスを大きな内容積を有する第2流路室25Aに封入し、ヘリウムガスタンク等のヘリウムガス供給源RSからのヘリウムガスを小さな内容積の流路室25に封入する。つまり、この水素ガス希釈装置100Eは、第2流路室25Aを純水素ガスの封入対象容器の第1容器10Cとして代用し、流路室25を水素ガス以外のガスであるヘリウムガスの封入対象容器の第3容器70として代用する。
【0058】
この水素ガス希釈装置100Eでは、水素ガス供給源HSから第1容器10C(第2流路室25A)への純水素ガス封入と、ヘリウムガス供給源RSから第3容器70(流路室25)へのヘリウムガス封入とを行った後に、ピストン22を後退させれば、ピストン後退に伴うシリンダ内容器室24の内容積拡張に合わせて、シリンダ内容器室24での純水素ガスとヘリウムガスの混合、および両ガスの空気による希釈を行うことができる。しかも、水素・ヘリウム混合希釈ガスにおける水素とヘリウムの混合比を、第2流路室25Aと流路室25の内容積比にて規定でき、簡便である。
【0059】
また、上記した水素ガス希釈装置100Eでは、水素・ヘリウム混合ガスを窒素にて希釈した水素・ヘリウム・窒素混合気を生成することもできる。図14は水素・ヘリウム・窒素混合気を生成する場合の水素ガス希釈装置100Eを示す概略構成図である。図示するように、この場合には、ガス放出管路52を、その管路末端に雄雌の配管接続金具を備えたものとし、窒素ガスタンク等の窒素ガス供給源NSをガス放出管路52に接続する。そして、第2流路室25Aへの純水素ガス封入と、流路室25へのヘリウムガス封入とを行った後に、ピストン22を後退させれば、ピストン後退に伴うシリンダ内容器室24の内容積拡張に合わせて、シリンダ内容器室24での純水素ガスとヘリウムガスの混合、および両ガスと窒素ガスとの混合により希釈を行って、水素・ヘリウム・窒素混合気を容易に生成することができる。しかも、水素・ヘリウム・窒素混合希釈ガスにおける水素とヘリウムと窒素の混合比を、第2流路室25Aと流路室25と拡張後のシリンダ内容器室24の内容積比にて規定でき、簡便である。
【0060】
図15は第7実施例の水素ガス希釈装置100Fの構成を概略的に示す概略構成図、図16は水素ガス希釈装置100Fを透視して概略的に示す説明図である。この実施例は、シリンダ21とピストン22で形成されるシリンダ内容器室24を純水素ガスの封入容器として代用する点に特徴がある。
【0061】
図示するように、水素ガス希釈装置100Fの第2容器20Bは、シリンダ21に入り込んだピストンヘッド22hとこれに続くピストンシャフト22sにてピストン22Bを構成し、シリンダ内容器室24にガス供給管路11を接続して備える。ガス供給管路11が有する減圧弁13Aは、減圧機構と流路切換機構とを内蔵した弁として構成される。つまり、減圧弁13Aは、供給管路末端の雄雌の配管接続金具を介して接続された水素ガス供給源HSから純水素ガスを減圧した上でシリンダ内容器室24に通気させると共に、ガス供給管路11とガス放出管路52とを繋ぐ流路切換も行う。
【0062】
この他、第2容器20Bは、シリンダ21に中間ストッパ42Sとエンドストッパ42Eを備え、ピストンシャフト22sにストッパブロック22bを備える。ピストン進退機構40Aは、ピストンシャフト22sのピストンフランジ27と連結され、ピストン22Bの正逆回転と前進後退駆動とを組み合わせてシーケンシャルに実行するよう構成されている。こうした構成の水素ガス希釈装置100Fは、次のようにして水素ガスの希釈を行う。図17はピストン進退機構40Aによるピストンの挙動と水素ガスの希釈の様子とを合わせて示す説明図である。
【0063】
水素ガス希釈装置100Fは、水素ガス希釈に先立ち、ピストン進退機構40Aによりピストン後退を行い、ピストンヘッド22hの端面とシリンダ21の底面との間のシリンダ内容器室24を所定内容積の初期容器室とする(図17(A))。この場合のピストン後退は、ストッパブロック22bが中間ストッパ42Sに当接するまで行われるので、内容積拡張前におけるシリンダ内容器室24の上記の初期容器室の内容積は常に一定となる。そして、この状態において、水素ガス供給源HSから純水素ガスをシリンダ内容器室24の初期容器室に封入する。つまり、図17(A)に示す状態のシリンダ内容器室24の初期容器室は、上記した各実施例における第1容器10と同一となり、第1容器10の代用とされる。
【0064】
その後、水素ガス希釈装置100Fは、ピストン進退機構40Aによりピストン22Bを回転(正回転)させ、ストッパブロック22bを中間ストッパ42Sにおける切欠44まで移動させる(図17(B))。これにより、ピストン22Bは、中間ストッパ42Sを超えてエンドストッパ42Eに当接するまで後退可能となる。そして、水素ガス希釈装置100Fは、ピストン進退機構40Aによりピストン後退端までのピストン後退を行い、シリンダ内容器室24の内容積を拡張する(図17(C))。ピストン後退端までのピストン後退は、ストッパブロック22bがエンドストッパ42Eに当接するまで行われるので、シリンダ内容器室24の拡張後の内容積は常に定まる。
【0065】
図17(B)に示す状態から図17(C)に示す状態へのピストン後退に伴うシリンダ内容器室24の内容積拡張は、既述した第1〜第6実施例、例えば第1実施例の100におけるシリンダ内容器室24の内容積拡張(図4参照)と何ら代わるものではない。つまり、この水素ガス希釈装置100Fでは、純水素ガスを封入したシリンダ内容器室24がこの状態から容積拡張を起こした後のシリンダ内容器室24に推移するまでが、以上説明記した各実施例でのシリンダ内容器室24の容積拡張に該当し、各実施例でのシリンダ内容器室24の拡張内容積は、図17(C)に示す容積拡張後のシリンダ内容器室24の内容積と容積拡張前のシリンダ内容器室24の内容積の差分の内容積に該当する。
【0066】
水素ガス希釈装置100Fは、このシリンダ内容器室24の内容積拡張に合わせて減圧弁13Aによる流路切換を行い、ガス放出管路52からシリンダ内容器室24への空気の吸引通気を行う(図17(C))。この空気の吸引通気により、拡張後のシリンダ内容器室24において純水素ガスが空気により希釈され、その希釈濃度は、図17(A)に示す容積拡張前のシリンダ内容器室24の内容積と、上記したシリンダ内容器室24の差分の内容積との比で定まる。よって、水素ガス希釈装置100Fによっても、所定濃度に調整済みの希釈水素ガスを容易に生成できる。
【0067】
この水素ガス希釈装置100Fで生成した希釈水素ガスを用いたセンサー動作確認では、減圧弁13Aによりガス供給管路11とガス放出管路52とを繋いだ上で、ピストン進退機構40Aによる中間ストッパ42Sまでのピストン前進と、ピストン22の逆転回転と、シリンダ21の底面までのピストン前進とを順次行えばよい。
【0068】
本発明は上記した実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施可能である。例えば、ピストン22の後退端をストッパ42にて規定したが、ピストン進退機構40をパルスモーター内蔵の構成として、電気的にピストン22の後退端を規定するようにすることもできる。この他、水素ガスを空気にて希釈する場合について説明したが、窒素やヘリウムといったガスを空気やその他のガスにて希釈する場合にも適用できる。
【0069】
また、図11〜図13では、シリンダ内容器室24に空気を通気させるガス放出管路52をシリンダ21の端面に設けたが、ガス放出管路52を、これら図におけるシリンダ21の端面側の周壁に設けることもできる。こうすれば、ピストン22がシリンダ内容器室24を拡張させる前の前進端にある場合に、ガス放出管路52のシリンダ接続口をピストン22の外周壁にて封止でき、ピストン移動に伴ってガス放出管路52から空気をシリンダ内容器室24に通気(吸引通気)させるようにできる。
【符号の説明】
【0070】
10、10A〜10C…第1容器
11…ガス供給管路
12…ガス放出管路
13、13A…減圧弁
15…管路蓋体
20、20A〜20B…第2容器
21…シリンダ
22、22A〜22B…ピストン
22b…ストッパブロック
22h…ピストンヘッド
22s…ピストンシャフト
23…シール部材
24…シリンダ内容器室
25…流路室
25A…第2流路室
26…流路蓋体
27…ピストンフランジ
29…スリーブ
40、40A…ピストン進退機構
41…ストッパシャフト
42…ストッパ
42A…第2ストッパ
42E…エンドストッパ
42S…中間ストッパ
44…切欠
50…連通管路
51…開閉バルブ
52…ガス放出管路
53…放出用開閉バルブ
60〜61…通気管
65〜67…シール部材
70…第3容器
100、100A〜100F…水素ガス希釈装置
HK…水素検知センサー
HS…水素ガス供給源
RS…ヘリウムガス供給源
NS…窒素ガス供給源
HT…水素ガス濃度検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガスを他のガスと混合させて希釈するガス希釈装置であって、
前記第1のガスが封入され、内容積が一定の第1容器と、
シリンダピストン構造を備え、シリンダとピストンの相対移動によって内容積を変更可能な第2容器と、
シリンダピストンの前記相対移動を起こして前記第2容器の内容積を拡張変更する容積変更手段と、
前記容積変更手段による前記第2容器の内容積の拡張タイミングに合わせて、前記第1容器に封入済みの前記第1のガスを前記第2容器の内部に通気する第1ガス通気と、前記他のガスを前記第2容器の内部に通気する他ガス通気とを行い、前記第1のガスを前記他のガスで希釈する希釈化手段と
を備えるガス希釈装置。
【請求項2】
前記容積変更手段は、前記第1のガスの希釈程度に応じて、前記第2容器の内容積を変更する請求項1に記載のガス希釈装置。
【請求項3】
前記第2容器は、前記ピストンの一端側から他端側にかけて前記ピストンに形成されたピストン内容器室を前記第1容器とすると共に、前記ピストン内容器室への前記第1のガスの封入を可能とする請求項1または請求項2に記載のガス希釈装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガス希釈装置であって、
前記希釈化手段は、前記第2容器の前記シリンダの端面の側に前記第2容器の内部に前記他のガスを通気する通気管路を備え、
前記第2容器は、前記ピストン内容器室を前記通気管路のシリンダ接続口からオフセットして備え、前記容積変更手段による前記第2容器の内容積の拡張前にあっては前記シリンダ接続口を前記ピストンにて封止している
ガス希釈装置。
【請求項5】
前記第1容器は、異なる内容積の容器に交換可能とされている請求項1ないし請求項4いずれかに記載のガス希釈装置。
【請求項6】
請求項1に記載のガス希釈装置であって、
前記第1のガスと混合された上で前記他のガスにより希釈される第2のガスが封入される定内容積の第3容器を備え、
前記希釈化手段は、前記拡張タイミングに合わせて、前記第1ガス通気と、前記第3容器に封入済みの前記第2のガスを前記第2容器の内部に通気する第2ガス通気と、前記他ガス通気とを行う
ガス希釈装置。
【請求項7】
請求項6に記載のガス希釈装置であって、
前記第2容器は、前記ピストンに第1ピストン内容器室と第2ピストン内容器室とを前記ピストンの一端側から他端側にかけて並べて形成して、前記第1ピストン内容器室を前記第1容器とし、前記第2ピストン内容器室を前記第3容器とすると共に、前記第1ピストン内容器室への前記第1のガスの封入と、前記第2ピストン内容器室への前記第2のガスの封入とを可能とする
ガス希釈装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガス希釈装置であって、
前記希釈化手段は、前記第2容器の前記シリンダの端面の側に前記第2容器の内部に前記他のガスを通気する通気管路を備え、
前記第2容器は、前記第1ピストン内容器室と前記第2ピストン内容器室とを前記通気管路のシリンダ接続口からオフセットして備え、前記容積変更手段による前記第2容器の内容積の拡張前にあっては前記シリンダ接続口を前記ピストンにて封止している
ガス希釈装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載のガス希釈装置であって、
前記第2容器は、前記容積変更手段による前記第2容器の内容積の拡張前において前記ピストンの端面と該端面に対向する前記シリンダの底面との間に形成されるシリンダ内容器室を前記第1容器とすると共に、前記シリンダ内容器室への前記第1のガスの封入を可能とする
ガス希釈装置。
【請求項10】
第1のガスを他のガスと混合させて希釈するガス希釈方法であって、
定内容積の第1容器に前記第1のガスを封入し、
シリンダピストン構造を備えシリンダとピストンの相対移動によって内容積を変更可能な第2容器に対して、シリンダピストンの前記相対移動を起こして前記第2容器の内容積を拡張変更するに当たり、前記第2容器の内容積の拡張タイミングに合わせて、前記第1容器に封入済みの前記第1のガスを前記第2容器の内部に通気する第1ガス通気と、前記他のガスを前記第2容器の内部に通気する他ガス通気とを行い、前記第1のガスを前記他のガスで希釈する
ガス希釈方法。
【請求項11】
第1のガスを他のガスと混合して希釈した前記第1のガスを検知するガス検知センサーの検査方法であって、
前記ガス検知センサーの検知部を、請求項1ないし請求項9のガス希釈装置で得られた希釈済みの前記第1のガス或いは請求項10のガス希釈方法で得られた希釈済みの前記第1のガスに晒す
ガス検知センサーの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−249635(P2010−249635A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98866(P2009−98866)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】