説明

ガス採取器

【課題】暗所でも使用可能なガス採取器を提供する。
【解決手段】ガス採取器10に発光素子13を設け、暗所で測定を行なう場合、検知管の変色部分を発光素子13で照らし、目盛を読む。サンプルガス採取中に発光素子13が点灯するようにすると、明所では突起21を確認し、暗所では発光素子13の消灯を確認することで、サンプルガスの吸引が終了したことが分かる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス採取器の技術分野に係り、特に、明所でも暗所でも使用できるガス採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
検知管とガス採取器を用いたガス検出装置は小型、軽量であることから、屋外での簡便なガス検出方法として広く用いられている。
【0003】
図10の符号100はガス検出装置を示しており、ガス採取器110と検知管130を有している。
検知管130は、目盛りが刻まれたガラス管と、その内部に充填された呈色剤で構成されており、ガラス管の両端が切断された状態で、ガス採取器110の装置本体115の先端に挿入されている。
検知管130の先端をサンプルガス雰囲気中に挿入し、ガス採取器110内部を負圧にすると、サンプルガスは、検知管130を通ってガス採取器110の内部に吸引される。
【0004】
呈色剤は、サンプルガス中に含まれる検出対象ガスと反応する反応物質と、反応によって生じた反応生成物で変色する変色物質とで構成されており、サンプルガスが検知管130の内部を通過すると、変色物質は、検知管130の先端から変色しはじめ、サンプルガスの通過量、即ち、ガス濃度に応じた長さの変色物質が変色し、呈色剤が呈色する。ガス採取器110のサンプルガス吸引量は一定であり、検知管130をガス採取器110から抜去し、検知管130上の呈色部分と未反応部分の境界が位置する目盛を読むと、サンプルガス中の検出対象ガスの濃度を知ることができる。
【0005】
なお、符号121はガス採取器110の筺体に設けられたインジケータ(突起)であり、通常は筺体から突出しているが、ガス採取器110内部が負圧になると、インジケータ121は筺体内部に吸引され、隠れるように構成されており、従って、サンプルガスの吸引中はインジケータ121を監視していると、吸引が終了したかどうかが分かる。
【0006】
ガス採取器110は簡単に運搬できる重さであり、検出対象ガスが発生している場所で濃度を測定できることから、呼気中のアルコール濃度の検出や、工場等の環境試験にも使用されている。
検知管は、例えば下記文献に記載されている。
【特許文献1】特開2004−85525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検知管は数ミリの太さであり、その表面に形成された目盛は細かな字で描かれている。夜間等、暗所にて濃度測定を行なう場合は検知管を持って明所に移動するか、検知管にライトから光を照射しないと読み取ることができない。
【0008】
また、インジケータ121は明所では容易に視認できるものの、暗所では吸引されているか否かの判別が困難であり、サンプルガスの吸引終了前に検知管を抜き取る危険性がある。
本発明は、上記従来技術の課題を解決するために創作されたものであり、暗所にてもガス検知が可能なガス採取器である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、装置本体と、前記装置本体内に設けられたシリンダとピストンと、一端が前記シリンダの先端に位置し、他端が前記装置本体の外部に露出された吸引口と、前記装置本体に設けられた発光素子と、前記発光素子を点灯させるスイッチとを有するガス採取器である。
また、本発明は、前記発光素子の背面には、反射鏡が設けられたガス採取器である。
また、本発明は、前記装置本体には、前記シリンダ内の圧力が低下している間導通し、前記発光素子を点灯させるマイクロスイッチが設けられたガス採取器である。
【発明の効果】
【0010】
暗所でも目盛を読むことができるので、作業性がよい。暗所でもサンプルガスの吸入終了を明確に知ることができる。要するに、本発明のガス採取器は、暗所でも使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一例のガス採取器10の側面図である。
このガス採取器10は、筺体である装置本体11を有しており、その先端には突出部16が設けられている。装置本体11は、わずかに表面が湾曲した円筒形である。
図3は、装置本体11の先端の正面図である。装置本体11の先端には突出部16が設けられている。突出部16には、吸引口17が形成されている。
【0012】
図6、図7は、ガス採取器10の内部状態を説明するための断面図であり、装置本体11の内部には、シリンダ23が設けられ、シリンダ23の内部には、ピストン24が配置されている。ピストン24にはロッド12が設けられており、ロッド12の先端は、装置本体11の後端から突き出されている。
図6は、ピストン24が、シリンダ23の先端に当接された状態であり、図7は、その状態からロッド12が引かれ、シリンダ23の内部の先端部分とピストン24との間が離間した状態である。
【0013】
シリンダ23の内部の先端部分とピストン24との間の空間を吸引空間27とすると、突出部16に設けられた吸引口17は、シリンダ23の内部とシリンダ23内壁の先端部分で吸引空間27に接続されており、従って、吸引空間27は吸引口17と接続されている。
ピストン24を、シリンダ23の先端部分に当接させた後、ロッド12の端部を把持して引くと、吸引空間27の体積が増大し、吸引口17からシリンダ23内部に気体が吸引される。
【0014】
図2はロッド12を引いた状態を示している。
装置本体11の先端には、発光素子13と、突起(インジケータ)21が設けられている。
突起21は、装置本体11の外部雰囲気の圧力と、吸引空間27の圧力の差圧によって移動するように構成されており、差圧がゼロのとき(及び、吸引空間27の圧力が外部雰囲気の圧力よりも高いとき)は、突起21は、装置本体11の表面から突出されている。
【0015】
逆に吸引空間27の圧力が外部雰囲気よりも低いときには突起21は装置本体11の内部に吸引され、装置本体11内に収容される。このとき、突起21は隠れ、外部から見えないようになる。
気体を吸引しているときは、吸引空間27の圧力は外部雰囲気の圧力よりも低くなっており、従って、突起21は装置本体11内に収容され、吸引が終了すると差圧が無くなり、突起21は装置本体11から突出する。
【0016】
装置本体11の先端には、突起21の近くに発光素子13が設けられている。装置本体11の内部には、不図示の電池とマイクロスイッチが設けられており、突起21が装置本体11内部に収容される差圧が生じる間、マイクロスイッチが導通し、発光素子13が電池に接続され、発光素子13が点灯される。
【0017】
ロッド12が伸びきり、それ以上引けない状態になると、気体の吸引は終了し、突起21が元の位置(装置本体11の先端から突き出される位置)に復帰すると共に、発光素子13は消灯する。
従って、暗所に於いて突起21が見えない場合でも、発光素子13の点灯と消灯により、気体を吸引中であることと、吸引が終了したことが分かる。
【0018】
また、装置本体11の先端に近い側面には、マイクロスイッチとは別のスイッチ14が設けられており、スイッチ14を押圧すると、発光素子13が電池に接続され、発光素子13が点灯する(スイッチ14は押圧式に限定されるものではなく、スライド式など、他の方式であってもよい)。
【0019】
なお、装置本体11の先端には透明カバー15が設けられており、発光素子13と突起21は、透明カバー15で覆われ、人体や他の機器に接触しないようになっている。突出部16は、透明カバー15に設けられた孔から透明カバー15の表面に突き出され、後述する検知管30bを挿入できるように構成されている。
【0020】
図4(a)の符号30aは、本発明のガス採取器10に使用できる封止状態の検知管を示している。
この検知管30aは、透明なガラスから成る透明管31を有しており、内部には、微粒子に付着された状態の呈色剤35が充填されている。呈色剤35は、検出対象ガスが接触すると呈色する薬剤であり、呈色剤35は、検出対象ガスと反応する反応物質と、その反応によって生成された反応生成物で変色する変色物質とで構成することができる。
装置本体11の後端に近い位置には、オープナー22が設けられており、オープナー22の孔内に検知管30aの先端を入れ、後端を押すと、先端が折られ、開口が形成される。
【0021】
図4(b)の符号30bは、両端が折られた状態の検知管を示しており、両端に開口37、38が形成されている。呈色剤35はフィルタ32、33によって挟まれており、開口37、38から呈色剤35がこぼれ出ることはない。
両端の開口37、38のうち、目盛34の数字の小さい方の開口37が、サンプルガスの入口であり、その反対側の開口38が出口であり、図8に示すように、先ず、ピストン24をシリンダ23の先端に押しつけた状態にし、検知管30bの出口側の開口38が形成された先端を吸引口17に挿入し、入口側の開口37が形成された先端を、突出部16から突き出させておく。
【0022】
検知管30bの開口38の周囲は吸引口17の内壁面と密着しており、入口側の開口37をサンプルガス中に挿入し、ロッド12を引くと負圧の吸引空間27が形成され、サンプルガスは入口側の開口37から吸引され、検知管30b内部を通って、吸引空間27に流入する。
【0023】
透明管31の呈色剤35の真上位置には目盛34が配置されている。
呈色剤35中に含まれる反応物質はサンプルガス中に含まれる検出対象ガスと反応するものが選択されており、サンプルガスが検知管30bの内部に導入されると、反応物質は検出対象ガスと反応し、発生した反応生成物で変色物質が変色する。
【0024】
サンプルガスは検知管30bの内部を通過し、装置本体11の内部に吸引される。サンプルガスは、検知管30bの入口側の開口37が上流、反対側の開口38が下流となり、変色物質は上流側から下流側に向けて変色する。
【0025】
図8に示すようなピストン24がシリンダ23の内面の先端に当接した状態から、定位置までロッド12を引く場合、サンプルガスの吸引量は一定値になる。
吸引量が一定値の場合、変色物質の変色量、即ち、変色した領域の長さは、サンプルガス中の検出対象ガスの濃度に応じた値となる。
なお、図9は、ロッド12を最大限引いた場合を示しており、この状態まで引くときがサンプルガスの吸引量は最大値になる。
【0026】
突出部16の吸引状態が解除され、装置本体11から突出したのを確認するか、又は、暗所では、発光素子13の点灯が終了したのを確認することにより、サンプルガスの吸引が終了したの確認した後、検知管30bを装置本体11から抜去し、検知管30b上の呈色部分と未反応部分の境界が位置する目盛34を読むと、サンプルガス中の検出対象ガスの濃度を知ることができる。
なお、検知管30b上の呈色部分と未反応部分の境界の位置する目盛り34を読む場合には、検知管30bを装置本体11から抜去せずとも確認することもできる。
【0027】
夜間等の暗所の場合、スイッチ14を指等で押下すると発光素子13が点灯し、目盛34を読むことができる。スイッチ14は指を離すと元の位置に復帰し、発光素子13は消灯する。
発光素子13が設けられた装置本体11の先端は鏡面になっており、発光素子13から発生し、装置本体11側に照射された光は鏡面で反射され、照射対象物である検知管30bを明るく照らすようになっている。
【0028】
下記表1は、明所で検知管30bを観察したときの値と、暗所で観察したときの値の比較結果である。
【0029】
【表1】

【0030】
上記表1に記載した値は、5人が観察した値の平均値であり、暗所でLED(発光素子13)点灯時の値と、明所の観察した時の値の差は±10%以下であり、暗所点灯時と、明所とでは有意差が見られるほどの差はない。
【0031】
なお、有意差検定は一元分散分析法にて行い、危険率pが0.1未満において有意差がみられなかった。p<0.1とは偶然にこのような差が出てしまう確率が10%未満であるということを意味する。
なお、上記実施例ではサンプルガス吸引時に発光素子13が自動点灯したが、吸引時に点灯せず、スイッチ14押下時にだけ点灯するガス採取器も本発明に含まれる。
【0032】
上記発光素子13はLEDであったが、本発明はそれに限定されるものではない。また、発光素子13の取りつけ位置は、装置本体11の先端に限定されるものではなく、側面や底面の他、ロッド12に取り付けてもよい。スイッチ14についても同様であり、側面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のガス採取器を説明するための側面図(1)
【図2】本発明のガス採取器を説明するための側面図(2)
【図3】本発明のガス採取器を説明するための正面図
【図4】ガス検知管を説明するための図 (a):封止された状態、(b):両端が開けられた状態
【図5】呈色剤の呈色部分を説明するための図
【図6】ガス採取器の内部を示す概略断面図(1)
【図7】ガス採取器の内部を示す概略断面図(2)
【図8】ガス採取器の内部状態を説明するための概略断面図(1)
【図9】ガス採取器の内部状態を説明するための概略断面図(2)
【図10】従来技術のガス採取器を説明するための図
【符号の説明】
【0034】
10……ガス採取器
11……装置本体
13……発光素子
14……スイッチ
17……吸引口
23……シリンダ
24……ピストン
30a、30b……検知管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体内に設けられたシリンダとピストンと、
一端が前記シリンダの先端に位置し、他端が前記装置本体の外部に露出された吸引口と、
前記装置本体に設けられた発光素子と、
前記発光素子を点灯させるスイッチとを有するガス採取器。
【請求項2】
前記発光素子の背面には、反射鏡が設けられた請求項1記載のガス採取器。
【請求項3】
前記装置本体には、前記シリンダ内の圧力が低下している間導通し、前記発光素子を点灯させるマイクロスイッチが設けられた請求項1または請求項2のいずれか1項記載のガス採取器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−190927(P2008−190927A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23831(P2007−23831)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(390010364)光明理化学工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】