説明

ガス検出装置、このガス検出装置を備えた燃焼機器及びガス警報器

【課題】フィルタ部が雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを確実に判定して、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供する。
【解決手段】検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、雑ガスが付着するフィルタ部と、ガス検出部を高温作動状態と低温作動状態とに切り換えて加熱部の作動を制御し、低温作動状態にある電気抵抗値に基づいて不完全燃焼ガスを検出する制御部とを備え、制御部が高温作動状態での第1電気抵抗値の最小値と高温作動状態から低温作動状態に切り換わる直前の第2電気抵抗値とを検出し、第2電気抵抗値に対する最小値の比に基づいて、当該比が予め設定される所定の判定値よりも小さい場合に、フィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する判定部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部に設けられて、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、筐体の外部からガス検出部が設けられている筐体の内部に至る間の流路に設けられて雑ガスが付着するフィルタ部と、ガス検出部を加熱する加熱部と、ガス検出部を高温作動状態と低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるように加熱部の作動を制御するとともに、ガス検出部の電気抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置、このガス検出装置を備えた燃焼機器及びガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ガス検出装置は、ガス検出部を高温作動状態と低温作動状態とに交互に繰り返し切り換える構成で、高温作動状態で可燃性ガスを検出して、この検出情報に基づいて可燃性ガスの燃料漏れを検出することができ、また、低温作動状態で不完全燃焼ガスを検出して、この検出情報に基づいて不完全燃焼を検出することができるものである(例えば、特許文献1参照。)。
そして、特許文献1に記載のガス検出装置においては、雑ガスとしての水素ガス等の影響を排除して、可燃性ガスとしてのメタンガスの検出精度を向上することが可能な構成を採用している。
具体的には、高温作動状態の終了直前のガス検出部の電気抵抗値を電気抵抗値A(特許文献1では第1電気抵抗値と記載)とし、高温作動状態から低温作動状態で安定化するまでの中間状態の電気抵抗値を電気抵抗値B(特許文献1では第2電気抵抗値と記載)として検出し、電気抵抗値Aの増減方向と、電気抵抗値Bの増減方向又は電気抵抗値A及び電気抵抗値Bの比較値の増減方向とで規定される2次元直交座標空間内において、電気抵抗値Aと比較値又は電気抵抗値Bとで定まる座標点が所定の領域に存在するか否かに基づいて、雑ガスの影響を排除してメタンガスの存在を判定することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−271440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のようなガス検出装置は、例えば、家庭で使用されるガスファンヒータ等の燃焼機器に設けられて、燃焼機器で燃焼される可燃性ガスの燃料漏れや不完全燃焼による不完全燃焼ガスの発生を検出するために用いられる。そのため、ガス検出装置には、検出対象ガスである可燃性ガスや不完全燃焼ガスのみを検出して、それ以外のガスである雑ガスの影響を排除する目的で、筐体の外部から内部に至る間の流路には、筐体の外部から侵入した雑ガス(アルコール等)を吸着して、筐体の内部に設けられたガス検出部に接触するのを防止するためのフィルタ部が設けられている。
【0005】
一方で、このようなガスファンヒータ等は、冬季には常時用いられるが、夏季には物置や収納庫等に保管されることが通常である。このような保管状態において、物置や収納庫等に防虫剤やアルコール等が存在し、ガスファンヒータの雰囲気中にこれら防虫剤等の成分が含まれた雑ガスが存在すると、ガス検出装置に設けられたフィルタ部に当該雑ガスが吸着されることとなる(フィルタ汚染状態)。このフィルタ部に吸着された雑ガスは、ガス検出部がヒータによって高温作動状態に加熱されることにより脱離し、筐体内に設けられたガス検出部に接触して、一時的なものではあるがガス検出部の電気的特性を変化(例えば、電気抵抗値を低下)させる虞がある。
【0006】
このようなフィルタ汚染状態では、ガス検出部の電気抵抗値が低下(いわゆる鋭敏化)した状態となってしまい、検出対象ガスが存在していない或いは低濃度でしか存在していないにも拘わらず、燃料漏れ或いは不完全燃焼が発生しているものと検出してしまったり、当該誤った検出結果に基づいて警報を行ってしまう虞がある。したがって、所定濃度の検出対象ガスの存在を正確に検出することが困難となり、燃料漏れ或いは不完全燃焼の正確な検出及び警報を行うことが困難となる。ただし、このようなフィルタ汚染状態に起因するガス検出部の電気抵抗が低下(鋭敏化)した状態は、フィルタ部を加熱して吸着された防虫剤等の成分を含む雑ガスを完全に脱着させるとともに、ガス検出部を清浄な空気に晒すことにより、正常な状態に復帰するものである。よって、上記ガスファンヒータ等を保管直後に使用する場合等において、正常な状態に復帰するまでの間に燃料漏れや不完全燃焼の検出及び警報が誤ってなされることを防止することが必要である。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタ部が防虫剤等の成分を含む雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを確実に判定して、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検出装置は、筐体の内部に設けられて、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記筐体の外部から前記ガス検出部が設けられている前記筐体の内部に至る間の流路に設けられて雑ガスが付着するフィルタ部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を前記高温作動状態と前記低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記低温作動状態にある前記ガス検出部の第3電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての不完全燃焼ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置であって、その特徴構成は、前記制御部が、前記高温作動状態にある前記ガス検出部の第1電気抵抗値の最小値と、前記高温作動状態から前記低温作動状態に切り換わる直前の前記ガス検出部の第2電気抵抗値とを検出し、前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比に基づいて、当該比が予め設定される所定の判定値よりも小さい場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する判定部を備えた点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、制御部が、高温作動状態にあるガス検出部の第1電気抵抗値の最小値と、高温作動状態から低温作動状態に切り換わる直前のガス検出部の第2電気抵抗値とを検出し、判定部が制御部により検出された第2電気抵抗値に対する最小値の比に基づいて当該比が予め設定される所定の判定値(例えば、1)よりも小さい場合に、フィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定するので、ガス検出部の雰囲気中に、空気、或いは所定濃度の可燃性ガスが存在する場合と、その他の雑ガスが存在する場合とを良好に判別することができ、その他の雑ガスが存在する場合にフィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定することができる。
すなわち、例えば図8に示すように、加熱部により加熱が開始されて高温作動状態にある場合において、空気、或いは空気中に所定濃度の可燃性ガスが存在するときは、ガス検出部の電気抵抗値は加熱開始からの時間の経過に伴って順次低下し、所定の第2電気抵抗値R2で安定化する挙動を示す。一方で、空気中にその他の雑ガスが存在するときは、ガス検出部の電気抵抗値は加熱開始からの時間の経過に伴って低下して最小値R1をとり、その後増加して、所定の第2電気抵抗値R2で安定化する挙動を示す。ここで、本特徴構成における雑ガスは、例えば、防虫剤の成分が含まれるガス、アルコールのガス等である。また、防虫剤としては、例えば、パラジクロロベンゼン系、ナフタリン系、ピレスロイド系等の防虫剤を例示することができる。
このように、高温作動状態における加熱開始からの時間の経過に伴って、空気中に雑ガスが存在する場合には、ガス検出部の第1電気抵抗値が最小値を示し、その後増加して所定の第2電気抵抗値に安定化するが、この点を用いて雑ガスの存在を判定し、フィルタ部の汚染状態を判定できることは、今般本願発明者らが新たに知見したものである。
本願発明者らは、上記知見に基づいて、雑ガスの存在を判定、すなわち、フィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態か否かを判定するにあたり、第2電気抵抗値に対する第1電気抵抗値の最小値の比が予め設定される所定の判定値よりも小さい場合に、当該最小値が第2電気抵抗値よりも低下している状態を示すため、ガス検出部の雰囲気中に雑ガスが存在するものとしてフィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態であると判定する。一方で、比が予め設定される所定の判定値以上である場合には、第1電気抵抗値の最小値が第2電気抵抗値となる状態を示すため、ガス検出部の雰囲気中に空気、或いは可燃性ガス(例えば、メタンガス)が存在するものとしてフィルタ部がフィルタ汚染状態ではないと判定する形態を採用している。なお、所定濃度の不完全燃焼ガスが存在するか否かは、低温作動状態から高温作動状態に切り換わる直前の低温作動状態における第3電気抵抗値が所定の閾値(不完全燃焼ガス警報点)よりも低下しているか否かにより判定する。
これにより、例えば、フィルタ部がフィルタ汚染状態ではないと判定された場合に検出対象ガス(不完全燃焼ガス)の存在を正確に検出できるので、フィルタ部がフィルタ汚染状態にある(ガス検出部が鋭敏化している可能性がある)場合に検出対象ガスを検出してしまうことを防止でき、検出対象ガスが存在していない或いは低濃度でしか存在していないにも拘わらず、所定濃度の検出対象ガスの存在しているものとして検出或いは警報を行う事を防止することができる。
よって、フィルタ部が防虫剤等の成分を含む雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを判定して、所定濃度の検出対象ガス(不完全燃焼ガス)の存在の正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供できる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検出装置は、筐体の内部に設けられて、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記筐体の外部から前記ガス検出部が設けられている前記筐体の内部に至る間の流路に設けられて雑ガスが付着するフィルタ部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を前記高温作動状態と前記低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記高温作動状態から前記低温作動状態に切り換わる直前の前記ガス検出部の第2電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての可燃性ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置であって、その特徴構成は、前記制御部が、前記高温作動状態にある前記ガス検出部の第1電気抵抗値の最小値と、前記ガス検出部の前記第2電気抵抗値とを検出し、前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比に基づいて、当該比が予め設定される所定の判定値よりも小さい場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する判定部を備えた点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、制御部が、高温作動状態にあるガス検出部の第1電気抵抗値の最小値と、高温作動状態から低温作動状態に切り換わる直前のガス検出部の第2電気抵抗値とを検出し、判定部が制御部により検出された第2電気抵抗値に対する最小値の比に基づいて当該比が予め設定される所定の判定値(例えば、1)よりも小さい場合に、フィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定するので、ガス検出部の雰囲気中に、空気、或いは所定濃度の可燃性ガスが存在する場合と、その他の雑ガスが存在する場合とを良好に判別することができ、その他の雑ガスが存在する場合にフィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定することができる。
すなわち、例えば図8に示すように、加熱部により加熱が開始されて高温作動状態にある場合において、空気、或いは空気中に所定濃度の検出対象ガスとしての可燃性ガスが存在するときは、ガス検出部の電気抵抗値は加熱開始からの時間の経過に伴って順次低下し、所定の第2電気抵抗値R2で安定化する挙動を示す。一方で、空気中にその他の雑ガスが存在するときは、ガス検出部の電気抵抗値は加熱開始からの時間の経過に伴って低下して最小値R1をとり、その後増加して、所定の第2電気抵抗値R2で安定化する挙動を示す。ここで、本特徴構成における検出対象ガスは可燃性ガス、例えば、メタンガスであり、雑ガスは、例えば、防虫剤の成分が含まれるガス、アルコールのガス等である。また、防虫剤としては、例えば、パラジクロロベンゼン系、ナフタリン系、ピレスロイド系等の防虫剤を例示することができる。
このように、高温作動状態における加熱開始からの時間の経過に伴って、空気中に雑ガスが存在する場合には、ガス検出部の第1電気抵抗値が最小値を示し、その後増加して所定の第2電気抵抗値に安定化するが、この点を用いて雑ガスの存在を判定し、フィルタ部の汚染状態を判定できることは、今般本願発明者らが新たに知見したものである。
本願発明者らは、上記知見に基づいて、雑ガスの存在を判定、すなわち、フィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態か否かを判定するにあたり、第2電気抵抗値に対する第1電気抵抗値の最小値の比が予め設定される所定の判定値よりも小さい場合に、当該最小値が第2電気抵抗値よりも低下している状態を示すため、ガス検出部の雰囲気中に雑ガスが存在するものとしてフィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態であると判定する。一方で、比が予め設定される所定の判定値以上である場合には、第1電気抵抗値の最小値が第2電気抵抗値となる状態を示すため、ガス検出部の雰囲気中に空気、或いは可燃性ガス(例えば、メタンガス)が存在するものとしてフィルタ部がフィルタ汚染状態ではないと判定する形態を採用している。なお、所定濃度の可燃性ガスが存在するか否かは、高温作動状態から低温作動状態に切り換わる直前の高温作動状態における第2電気抵抗値が所定の閾値(可燃性ガス警報点)よりも低下しているか否かにより判定する。
これにより、例えば、フィルタ部がフィルタ汚染状態ではないと判定された場合に検出対象ガスの存在を正確に検出できるので、フィルタ部がフィルタ汚染状態にある(ガス検出部が鋭敏化している可能性がある)場合に検出対象ガス(可燃性ガス)を検出してしまうことを防止でき、検出対象ガスが存在していない或いは低濃度でしか存在していないにも拘わらず、所定濃度の検出対象ガスの存在しているものとして検出或いは警報を行う事を防止することができる。
よって、フィルタ部が防虫剤等の成分を含む雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを判定して、所定濃度の検出対象ガス(可燃性ガス)の存在の正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供できる。
【0012】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記低温作動状態にある前記ガス検出部の第3電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての不完全燃焼ガスを検出する構成で、前記判定部が、前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比の増減方向と前記第1電気抵抗値の前記最小値の感度の増減方向とで規定される2次元直交座標空間内において、前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比と前記最小値の感度とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域内に存在するか否かに基づいて、前記座標点が当該所定領域内に存在する場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、検出対象ガスを少なくとも不完全燃焼ガス(例えば、COガス)とし、この検出対象ガスと雑ガス、例えば、防虫剤の成分が含まれるガス、アルコールのガス等とを判別し、フィルタ部が雑ガスによるフィルタ汚染状態にあるか否かを判定する。
すなわち、判定部が、第2電気抵抗値に対する最小値の比の増減方向と第1電気抵抗値の最小値の感度の増減方向とにより2次元直交座標空間を規定する。
この2次元直交座標空間は、例えば、図9に示すように、ガス検出部の雰囲気中に存在するガス濃度やガス種に応じて所定の位置に座標点が定まるように構成されており、空気の座標点、空気中に存在するメタンガスの座標点、検出対象ガスであるCOガスの座標点、及び雑ガスである比較的薄い濃度(飽和濃度の1/6程度)でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点が位置する領域と、飽和濃度のパラジクロロベンゼン系、ナフタリン系、ピレスロイド系防虫剤の成分をそれぞれ含むガスの各座標点、アルコールを含むガスの座標点、有機溶剤であるn‐ヘキサンを含むガスの座標点、有機溶剤であるトルエンを含むガスの座標点が位置する領域とが明確に区画されている。
したがって、この2次元直交座標空間に、ガス検出部で検出された第2電気抵抗値に対する最小値の比と第1電気抵抗値の最小値の感度とで示される座標点をプロットして、区画された領域のいずれの領域内に存在するかを調べることにより、この検出された情報がどのようなガスに基づく情報であるかを判定することができる。例えば、空気の座標点、空気中に存在するメタンガスの座標点、空気中に所定濃度で存在する検出対象ガスであるCOガスの座標点、雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点が位置する領域と、飽和濃度のパラジクロロベンゼン系、ナフタリン系、ピレスロイド系防虫剤の成分をそれぞれ含むガスの各座標点、アルコールを含むガスの座標点、有機溶剤であるn‐ヘキサンを含むガスの座標点、有機溶剤であるトルエンを含むガスの座標点が位置する所定領域(図9において、破線で示す所定領域H)とを区画しておき、検出されたガスの座標点を2次元直交座標空間にプロットして当該所定領域Hに位置する場合には、ガス検出部に飽和濃度の上記各防虫剤の成分を含むガスやアルコールを含むガス等の雑ガスが存在するものと判定し、これら雑ガスによりフィルタ部がフィルタ汚染状態にあると判定することができる。すなわち、第2電気抵抗値に対する最小値の比のみにより判定を行う場合に比して、COガスによる影響を排除してフィルタ部がフィルタ汚染状態であるか否かを判定することが可能となる。なお、この場合であっても、検出対象ガスであるCOガスの座標点、及び雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点は重複した領域にあるので、当該COガスと比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスとを判別することはできない。
よって、雑ガスによる影響を受けていることを判定して、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記第2電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての可燃性ガスを検出する構成で、前記判定部が、前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比の増減方向と前記第1電気抵抗値の前記最小値の感度の増減方向とで規定される2次元直交座標空間内において、前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比と前記最小値の感度とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域内に存在するか否かに基づいて、前記座標点が当該所定領域内に存在する場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、検出対象ガスを少なくとも可燃性ガス(例えば、メタンガス)とし、この検出対象ガスと雑ガス、例えば、防虫剤の成分が含まれるガス、アルコールのガス等とを判別し、フィルタ部が雑ガスによるフィルタ汚染状態にあるか否かを判定する。
すなわち、判定部が、第2電気抵抗値に対する最小値の比の増減方向と第1電気抵抗値の最小値の感度の増減方向とにより2次元直交座標空間を規定する。
この2次元直交座標空間は、例えば、図9に示すように、ガス検出部の雰囲気中に存在するガス濃度やガス種に応じて所定の位置に座標点が定まるように構成されており、空気の座標点、空気中に存在する検出対象ガスであるメタンガスの座標点、COガスの座標点、及び雑ガスである比較的薄い濃度(飽和濃度の1/6程度)でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点が位置する領域と、飽和濃度のパラジクロロベンゼン系、ナフタリン系、ピレスロイド系防虫剤の成分をそれぞれ含むガスの各座標点、アルコールを含むガスの座標点、有機溶剤であるn‐ヘキサンを含むガスの座標点、有機溶剤であるトルエンを含むガスの座標点が位置する領域とが明確に区画されている。
したがって、この2次元直交座標空間に、ガス検出部で検出された第2電気抵抗値に対する最小値の比と第1電気抵抗値の最小値の感度とで示される座標点をプロットして、区画された領域のいずれの領域内に存在するかを調べることにより、この検出された情報がどのようなガスに基づく情報であるかを判定することができる。例えば、空気の座標点、空気中に存在する検出対象ガスであるメタンガスの座標点、空気中に所定濃度で存在するCOガスの座標点、雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点が位置する領域と、飽和濃度のパラジクロロベンゼン系、ナフタリン系、ピレスロイド系防虫剤の成分をそれぞれ含むガスの各座標点、アルコールを含むガスの座標点、有機溶剤であるn‐ヘキサンを含むガスの座標点、有機溶剤であるトルエンを含むガスの座標点が位置する所定領域(図9において、破線で示す所定領域H)とを区画しておき、検出されたガスの座標点を2次元直交座標空間にプロットして当該所定領域Hに位置する場合には、ガス検出部に飽和濃度の上記各防虫剤の成分を含むガスやアルコールを含むガス等の雑ガスが存在するものと判定し、これら雑ガスによりフィルタ部がフィルタ汚染状態にあると判定することができる。すなわち、第2電気抵抗値に対する最小値の比のみにより判定を行う場合に比して、COガスによる影響を排除してフィルタ部がフィルタ汚染状態であるか否かを判定することが可能となる。なお、この場合であっても、COガスの座標点、及び雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点は重複した領域にあるので、当該COガスと比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスとを判別することはできない。
よって、雑ガスによる影響を受けていることを判定して、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記低温作動状態にある前記ガス検出部の第3電気抵抗値を検出し、前記判定部が、前記制御部により検出された前記第3電気抵抗値の感度の増減方向と前記第1電気抵抗値の前記最小値の感度の増減方向とで規定される2次元直交座標空間内において、前記第3電気抵抗値の感度と前記最小値の感度とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域内に存在するか否かに基づいて、前記座標点が当該所定領域内に存在する場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、検出対象ガスとして可燃性ガス(例えば、メタンガス)や不完全燃焼ガス(例えば、COガス)を検出対象とし、この検出対象ガスと雑ガス、例えば、防虫剤の成分が含まれるガス、アルコールのガス等とを判別し、フィルタ部が雑ガスによるフィルタ汚染状態にあるか否かを判定する。
すなわち、判定部が、第3電気抵抗値の感度の増減方向と第1電気抵抗値の最小値の感度の増減方向とにより2次元直交座標空間を規定する。
この2次元直交座標空間は、例えば、図11に示すように、ガス検出部の雰囲気中に存在するガス濃度やガス種に応じて所定の位置に座標点が定まるように構成されており、COガスの座標点が位置する領域と、空気の座標点、空気中に存在するメタンガスの座標点、雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点、飽和濃度の各種防虫剤の成分を含むガスの座標点、アルコールを含むガスの座標点、有機溶剤であるn‐ヘキサンを含むガスの座標点、有機溶剤であるトルエンを含むガスの座標点が位置する領域とが明確に区画されている。
したがって、この2次元直交座標空間に、ガス検出部で検出された第3電気抵抗値の感度と第1電気抵抗値の最小値の感度とで示される座標点をプロットして、区画された領域のいずれの領域内に存在するかを調べることにより、この検出された情報がどのようなガスに基づいた情報であるかを判定することができる。例えば、COガスの座標点が位置する領域と、空気の座標点、空気中に存在するメタンガスの座標点、雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点、飽和濃度の各種防虫剤の成分を含むガスの座標点、アルコールを含むガスの座標点、有機溶剤であるn‐ヘキサンを含むガスの座標点、有機溶剤であるトルエンを含むガスの座標点が位置する所定領域(図11において、一点鎖線で示す所定領域L)とを区画しておき、検出されたガスの座標点を2次元直交座標空間にプロットして当該所定領域Lに位置する場合には、ガス検出部に雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガス等のCOガス以外のガスが存在するものと判定することができる。この際には、第2電気抵抗値に対する最小値の比と最小値の感度とで定まる座標点が図9で示す2次元直交座標空間内の所定領域L内に存在するか否かの判定も同時に行う。なお、図9における所定領域Lは、空気の座標点、空気中に存在するメタンガスの座標点が位置する領域以外の領域、すなわち、空気中に所定濃度で存在するCOガスの座標点、雑ガスである比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスの座標点、飽和濃度の各種防虫剤の成分を含むガスの座標点、アルコールを含むガスの座標点、有機溶剤であるn‐ヘキサンを含むガスの座標点、有機溶剤であるトルエンを含むガスの座標点が位置する所定領域(図9において、所定領域Lで示す)である。よって、2つの2次元直交座標空間内における所定領域L内に、検出されたガスの座標点が存在するか否かを判定することにより、第2電気抵抗値に対する最小値の比と当該最小値の感度とで定まる座標点が1つの2次元直交座標空間内の所定領域H内に存在するか否かのみにより判定を行う場合に比して、比較的薄い濃度でパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスが存在する場合であっても確実にフィルタ部がフィルタ汚染状態にあると判定することが可能となる。
よって、雑ガスによる影響を受けていることを確実に判定して、所定濃度の検出対象ガスの存在のより正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供することができる。
【0018】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記フィルタ部に付着する前記雑ガスの成分が、パラジクロロベンゼン系防虫剤、ナフタリン系防虫剤、ピレスロイド系防虫剤、アルコール、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも一つ以上の成分である点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、フィルタ部に付着する雑ガスの成分が、パラジクロロベンゼン系防虫剤、ナフタリン系防虫剤、ピレスロイド系防虫剤、アルコール、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも一つ以上の成分であり、これら成分はフィルタ部に吸着されガス検出部が加熱された際に脱離して、当該ガス検出部に接触することで電気抵抗値を低下させる成分である。
よって、このような成分がガス検出部を備えたガス検出装置の近傍に存在する場合に、特に、各種防虫剤の成分が含まれる雑ガスが、ガス検出部に影響を与えて当該ガス検出部が鋭敏化してしまう場合に、上記判定部によりフィルタ部のフィルタ汚染状態を判定することで、所定濃度の検出対象ガスの存在のより正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置を提供することができる。
【0020】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記制御部が検出する前記第1電気抵抗値の前記最小値が、前記加熱部による前記ガス検出部の加熱作動の開始から1秒以内における前記高温作動状態の第1電気抵抗値の極小値である点にある。
【0021】
本特徴構成によれば、制御部が検出する最小値が、加熱部によるガス検出部の加熱作動の開始から1秒以内における高温作動状態の第1電気抵抗値の極小値であるので、例えば、図8に示すように、このような極小値は雑ガスの場合に生じる現象であるため、この極小値が加熱作動の開始から1秒以内に生じた場合には、ガス検出部に雑ガスが存在し、フィルタ部に雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定することができる。なお、ここでいう雑ガスには、図8において、電気抵抗値に極小値を有するガスである各種防虫剤の成分が含まれるガス、アルコールを含むガス等が含まれる。
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検出装置を備えた燃焼機器の特徴構成は、上記特徴構成の何れか一つのガス検出装置を備えた燃焼機器であって、可燃性ガスを燃焼する燃焼部が収納されるケーシングに設けられた吸気口を介して、前記ケーシング外の空気を燃焼用空気として前記燃焼部に供給し、且つ、前記燃焼部の燃焼ガスを前記ケーシングに設けられた吹出し口からケーシング外に吹き出すように通風作用する送風部が設けられ、前記ガス検出部が、前記吸気口を介して供給される前記燃焼用空気中の可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するように前記吸気口又は前記吸気口付近に設けられている点にある。
【0023】
本特徴構成によれば、燃焼機器において可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するガス検出部を備えたガス検出装置を備え、このガス検出装置においてフィルタ部が防虫剤等の成分を含む雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを確実に判定できるので、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行って、燃焼機器の安全な運転を確保することができる。
【0024】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検出装置を備えたガス警報器の特徴構成は、上記特徴構成の何れか一つのガス検出装置を備えたガス警報器であって、前記ガス検出部が、警報器本体に設けられたガス流入口を介して供給される空気中の可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するように前記警報器本体内に設けられている点にある。
【0025】
本特徴構成によれば、ガス警報器において可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するガス検出部を備えたガス検出装置を備え、このガス検出装置においてフィルタ部が防虫剤等の成分を含む雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを確実に判定できるので、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行って、ガス警報器の安全な運転を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガス検出装置を備えた燃焼機器のブロック図
【図2】本発明に係るガス検出装置の要部を示す図
【図3】本発明に係るガス検出装置の一部切り欠き外観図
【図4】本発明に係るガス検出部の等価回路を示す図
【図5】本発明に係るガス検出装置を備えた燃焼機器の概略構成を示す縦断右側面図
【図6】高温作動状態における経過時間と感度との関係を示すグラフ図
【図7】低温作動状態における経過時間と感度との関係を示すグラフ図
【図8】経過時間とガス検出部の電気抵抗値との関係を示すグラフ図
【図9】比XとR1の感度Yとの2次元直交座標空間を示すグラフ図
【図10】ガス検出部の温度と電気抵抗値との関係を示すグラフ図
【図11】R3の感度ZとR1の感度Yとの2次元直交座標空間を示すグラフ図
【図12】本発明に係るガス検出装置を用いて判定動作を行う場合のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るガス検出装置を燃焼機器としてのガスファンヒータに適用した場合の実施形態を説明する。
図1に示すように、ガス検出装置Aは、温度が高温側感応温度以上の高温作動状態(高温期間)で検出対象ガスである可燃性ガス(この実施形態ではガス燃料であるメタンガス)に感応して電気的特性としての電気抵抗値が変化し、且つ、温度が高温側感応温度よりも低い低温作動状態(低温期間)で検出対象ガスである不完全燃焼ガス(この実施形態では一酸化炭素ガス)に感応して電気抵抗値が変化するガス検出部1と、そのガス検出部1を加熱するヒータ2(加熱部の一例)と、ガス検出部1を高温作動状態と低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるようにヒータ2の作動を制御し、且つ、ガス検出部1の電気抵抗値に基づいて高温作動状態で可燃性ガスを検出し且つ低温作動状態で不完全燃焼ガスを検出するセンサ制御部16(制御部の一例)等を備えて構成されている。
【0028】
図2にも示すように、ガス検出部1及びヒータ2に加えて、検出用電極3等を備えてガスセンサSが構成されている。
ヒータ2及び検出用電極3は、ガス検出部1の内部に埋設されている。この実施形態では、ガス検出部1内にコイル状のヒータ兼用電極4と、そのヒータ兼用電極4の中心を貫通する中心電極5とが埋設され、これらヒータ兼用電極4と中心電極5とを検出用電極3として機能させ、ヒータ兼用電極4をヒータ2として機能させるように構成されている。ちなみに、ヒータ兼用電極4、中心電極5は、白金合金線等の貴金属線にて構成されている。
【0029】
ガス検出部1が高温作動状態となる高温側感応温度は、可燃性ガス吸着時の電気抵抗値の変化が不完全燃焼ガス吸着時の電気抵抗値の変化に比して、可燃性ガスを選択的に検出可能な程度に大きくなる温度であり、ガス検出部1が低温作動状態となる温度は、不完全燃焼ガス吸着時の電気抵抗値の変化が可燃性ガス吸着時の電気抵抗値の変化に比して、不完全燃焼ガスを選択的に検出可能な程度に大きくなる温度である。
このガス検出部1が高温作動状態となる高温側感応温度、及び、ガス検出部1が低温作動状態となる温度の具体例は、燃焼機器に要求されるガス検出精度、燃料漏れや不完全燃焼に対する安全動作を実行させるためのガス濃度等に応じて、適宜設定される。例えば、高温側感応温度はメタンガスを検出する場合300〜400℃程度であり、低温作動状態となる温度は一酸化炭素ガスを検出する場合80〜100℃程度である。
【0030】
ガス検出部1は、例えば酸化錫(SnO2)等の金属酸化物半導体の焼結体で形成される。ガス検出部1は、平板状、球状(楕円球状を含む)等の形状に形成され、この実施形態では、長軸方向の径が0.5mm程度、短軸方向の径が0.3mm程度の楕円球状に形成されている。
金属酸化物半導体には、可燃性ガス及び不完全燃焼ガス以外の雑ガスに対する感度を低減させる触媒が担持され、その触媒としては、例えば、Pd、W、Pt、Rh、Ce、Mo、V等が挙げられ、これらの触媒のうちの一種、又は、2種以上が用いられる。
この実施形態では、触媒としてPdが用いられ、このように触媒としてPdが用いられると、ガス検出部1がガスを吸着したのち、このガス吸着により変化した電気抵抗が安定するまでの時間が短縮されることとなり、ガス検出部1の応答性が向上する。
【0031】
図2及び図3に示すように、ガスセンサSは、ガス検出部1を概ね円板状のベース6の表裏に貫通する3本の端子7a,7b,7cに接続した状態で支持し、そのベース6の裏面側に、両端が開口した略円筒状の内ケース8がガス検出部1を内部に収容する状態で設けられ、更に、一端側の開口をガス導入口9とする略円筒状のハウジング10(筐体の一例)が内ケース8を覆う状態でベース6の裏面側に設けられて構成されている。
【0032】
図2に示すように、3本の端子7a,7b,7cのうちの2本のヒータ用端子7a,7bに、ヒータ兼用電極4の両端が各別に接続され、残りの1本の検出用端子7cに中心電極5の一端が接続されている。
又、図3に示すように、ハウジング10は、内ケース8よりも長尺であり、そのハウジング10が、ガス導入口9とは反対側の開口をベース6に外嵌させて設けられている。
そのハウジング10のガス導入口9にはステンレス等の金網11が張設され、ハウジング10内における内ケース8の上部と金網11との間には、雑ガスを吸着除去するためフィルタ12(フィルタ部の一例)が設けられている。
このフィルタ12は、例えば、活性炭、シリカゲル、あるいは、それら活性炭とシリカゲルとを組み合わせた材料にて形成されている。
そして、ガス導入口9から内ケース8に流入するガス中に含まれる雑ガス(例えば、防虫剤の成分を含むガス、アルコール等の有機溶剤のガス、シリコン蒸気、NOx)等をフィルタ12により吸着除去する構成となっている。
【0033】
図4は、ガスセンサSの等価回路を示し、Rhは、ヒータ兼用電極4の電気抵抗値を示し、Rsは、中心電極5とヒータ兼用電極4の一端との間のガス検出部1の電気抵抗値を示す。高温作動状態のガス検出部1に可燃性ガスが吸着することにより、あるいは、低温作動状態のガス検出部1に不完全燃焼ガスが吸着することにより、ガス検出部1の電気抵抗Rsが変化することになる。
【0034】
図1に示すように、ガス検出装置Aは、ガスセンサS及びセンサ制御部16に加えて、商用の交流電源を降圧し且つ整流平滑して直流電圧Vcを得る定電圧回路13、ガスセンサSのヒータ兼用電極4への印加電圧をパルス幅制御するためのスイッチング素子14、及び、定電圧回路13の出力電圧をガス検出部1とで分圧する負荷抵抗15等を備えて構成されている。
【0035】
定電圧回路13は、ヒータ2やセンサ制御部16に駆動用電力を供給する。
スイッチング素子14のコレクタには、定電圧回路13の+側が接続され、スイッチング素子14のエミッタには、ヒータ兼用電極4の一端がヒータ用端子7aを介して接続され、そのヒータ兼用電極4の他端がヒータ用端子7bを介して定電圧回路13の−側に接続されている。
負荷抵抗15の一端は検出用端子7cを介してガスセンサSの中心電極5に接続され、他端は定電圧回路13の+側に接続されている。
更に、定電圧回路13の+側と−側との間には、抵抗17とガス検出部1の雰囲気温度を検出するサーミスタ18とが直列に接続されている。
【0036】
センサ制御部16は、スイッチング素子14のスイッチングをパルス幅制御し、並びに、ガス検出部1の抵抗変化に基づいて燃料漏れや不完全燃焼を検出するように構成され、そのセンサ制御部16は、駆動回路19、A/D変換回路20、信号処理回路21、温度信号変換回路22、出力回路23、メモリ24及び判定部26等を備えて構成されている。
駆動回路19は、抵抗25を介してスイッチング素子14のベースに接続されて、スイッチング素子14のスイッチングをパルス幅制御する。
A/D変換回路20は、検出用端子7cを介してガスセンサSの中心電極5に接続され、ガス検出部1のヒータ兼用電極4と中心電極5との間の両端電圧(以下、検出電圧と記載する場合がある)をA/D変換して信号処理回路21に出力する。つまり、この検出電圧(電気的特性)が、可燃性ガスの検出情報及び不完全燃焼ガスの検出情報に対応するものである。
温度信号変換回路22は、抵抗17にかかる分圧をA/D変換することにより雰囲気温度に応じた温度信号を生成して、信号処理回路21へ出力する。
【0037】
信号処理回路21は、A/D変換回路20から出力されるガス検出部1の検出電圧(電気抵抗値)を、温度信号変換回路22から出力される温度信号に対応するメモリ24に記憶された補正係数に基づいて温度補正して、その温度補正した検出電圧(電気抵抗値)に基づいて、燃料漏れや不完全燃焼を判別する。
出力回路23は、信号処理回路21により燃料漏れが判別されると、燃料漏れ検出信号を後述するガスファンヒータの主制御部42に出力し、信号処理回路21により不完全燃焼が判別されると不完全燃焼検出信号を主制御部42に出力する。
メモリ24は、検出電圧(電気抵抗値)を周囲温度に応じて温度補正するための補正係数、所定濃度の可燃性ガスや不完全燃焼ガスが存在する場合に、ガス検出部1により検出されるそれぞれの検出電圧に対応する電気抵抗値(可燃性ガス警報点、不完全燃焼ガス警報点)及び後述する判定部26において防虫剤等の影響によるガス検出部1の鋭敏化(フィルタ12のフィルタ汚染状態)が生じているか否かを判定する際の各種判定基準等を記憶している。
判定部26は、ガス検出部1により検出された電気抵抗値(信号処理回路21が燃料漏れや不完全燃焼を判別する際に用いた検出電圧)に基づいて、ガス検出部1が防虫剤等の影響により鋭敏化が生じているか否か、すなわちフィルタ12がフィルタ汚染状態にあるか否かを判定し、判定結果を出力回路23に出力し、ガスファンヒータの主制御部42に出力する。なお、判定部26の動作の詳細については後述する。
【0038】
図1及び図5に示すように、ガスファンヒータは、供給されるガス燃料を燃焼させる燃焼部としてのバーナ41と、そのバーナ41へのガス燃料の供給を断続する燃料断続手段Vと、燃料漏れ及びバーナ41の不完全燃焼を検出するガス検出装置Aと、ガスファンヒータの運転を制御する主制御部42と、その主制御部42に各種制御指令を指令する操作部43等を備えて構成されている。
【0039】
図5に示すように、バーナ41は、背面の上方側に吸気口44を備え且つ前面の下方側に吹出し口45を備えたケーシング46内に収納されている。そのケーシング46内には、吸気口44を通して吸い込んだケーシング外の空気を燃焼用空気としてバーナ41に供給し、且つ、そのバーナ41の燃焼ガスを吹出し口45からケーシング外に吹き出すように通風作用する送風手段としての送風機47が設けられている。
ケーシング46内には、吸気口44を通して吸い込まれたケーシング外の空気の一部をバーナ41に燃焼用空気として供給し、残部をバーナ41の燃焼ガスと混合させた状態で吹出し口45に導くように、内部風路48が形成されている。送風機47は、ケーシング46内に、吸気口44に対して吸い込み作用させる状態で、その吐出部を吹出し口45に臨ませて設けられている。
つまり、吸気口44を通して吸い込まれた暖房対象空間の空気にバーナ41の燃焼ガスを混合させて温風を生成し、その温風を吹出し口45から暖房対象空間に吹き出して、暖房対象空間を暖房するように構成されている。吸気口44には、エアフィルタ49が設けられている。
【0040】
そして、ガスセンサSが、そのガス検出部1を吸気口44を通して吸い込まれる空気中の可燃性ガス及び不完全燃焼ガスに感応させるようにケーシング46の吸気口44に設けられている。
【0041】
燃料供給路52は、例えば、都市ガス(13A等、メタンガス(CH4)を主成分とするガス)が供給される都市ガス管(図示省略)に接続されて、この実施形態では、メタンガスを主成分とする都市ガスがバーナ41に供給される。
操作部43には、ガスファンヒータの運転開始及び運転停止を指令する運転スイッチ55、燃料漏れや不完全燃焼が発生したときに点灯させる警報ランプ56、暖房目標温度を設定する温度設定部(図示省略)、暖房目標温度、室内温度等の各種情報を表示する表示部(図示省略)等が設けられている。
運転スイッチ55は、押し操作が繰り返される毎に、運転開始と運転停止とが交互に指令されるように構成されている。
【0042】
以下、センサ制御部16及び主制御部42夫々の制御動作を説明する。
センサ制御部16及び主制御部42は、いずれもマイクロコンピュータを利用して構成され、制御情報を有線又は無線にて互いに通信自在なように構成されている。
主制御部42は、運転スイッチ55により運転開始が指令されると送風機47を作動させ、その送風機47の作動後、イグナイタ50を作動させ且つ開閉弁53及び比例弁54を開弁してバーナ41を点火させる点火処理を実行し、熱電対51の出力電圧が着火検出レベルに達してバーナ41の着火を検出したのちイグナイタ50の作動を停止させるように構成されている。
主制御部42は、バーナ41の着火検出後は、暖房対象空間の温度を検出する室温センサ(図示省略)の検出温度が暖房目標温度になるように比例弁54の開度を調節してバーナ41の燃焼量を調整する燃焼量調整制御を実行し、運転スイッチ55により運転停止が指令されると、開閉弁53及び比例弁54を閉弁してバーナ41を消火させる消火処理を実行した後、送風機47を停止させるように構成されている。
そして、主制御部42は、点火処理及び燃焼量調整制御の実行中に、後述するセンサ制御部16から燃料漏れや不完全燃焼が発生しているか否かの検出情報を受け取る。燃料漏れや不完全燃焼が発生していない場合にはそのままの状態で運転を継続するが、燃料漏れや不完全燃焼が発生している場合には警報ランプ56を点灯させ、運転を停止させるように構成されている。また、センサ制御部16から燃料漏れや不完全燃焼が発生しているとの検出情報を受け取った場合でも、センサ制御部16の判定部26から、フィルタ12がフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部1が防虫剤等により影響を受けて鋭敏化している旨の信号を受け取った場合には、警報ランプ56を点灯させず、運転を継続させるように構成されている。すなわち、ガス検出部1が鋭敏化している場合、ガス検出部1の検出情報は信頼性が低いため、燃料漏れや不完全燃焼が発生しているか否かを正確に判定できないことから、この燃料漏れや不完全燃焼が発生しているとの検出情報を採用せずに、ファンヒータの運転を継続することとしている。
【0043】
次に、センサ制御部16の制御動作を説明する。
ガス検出部1の温度は、センサ制御部16により、スイッチング素子14のスイッチングがパルス幅制御されてヒータ2への通電がデューティ制御されることにより調節される。
センサ制御部16は、ガス検出部1を高温作動状態と低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるようにヒータ2の作動を制御し、且つ、ガス検出部1の電気抵抗値に基づいて高温作動状態で可燃性ガスを検出してその検出情報により燃料漏れを検出し、低温作動状態で不完全燃焼ガスを検出してその検出情報によりバーナ41の不完全燃焼を検出するように構成されている。
例えば、図8に示すように、加熱の開始から高温作動状態が終了するまでの時間は5秒程度であり、ヒータ2による加熱を停止し高温作動状態が終了して低温作動状態が終了するまでの時間は、加熱の開始から25秒程度に設定されており、この高温作動状態の終了直前におけるガス検出部1の第2電気抵抗値R2を用いてメタンガスの燃料漏れを検出し、低温作動状態の終了直前におけるガス検出部1の第3電気抵抗値R3を用いて一酸化炭素ガス(不完全燃焼ガス)を検出する。ここで、ガス検出部1を高温作動状態にすべくヒータ2の作動を制御する時間の間が、高温作動状態に相当し、ガス検出部1を低温作動状態にすべくヒータ2の作動を制御する時間の間が、低温作動状態に相当する。なお、高温作動状態における高温側感応温度は例えば400℃に設定され、低温作動状態では、ガス検出部1の温度が例えば80℃の低温側感応温度に調節される。
【0044】
メタンガスの燃料漏れの検出では、高温作動状態の終了直前における電気抵抗値R2がメタン警報点よりも低下している場合に、メタンガスが燃料漏れしているものと判定される。メタン警報点は、空気中のメタン濃度が燃料漏れ濃度(例えば、3000ppm)のときのガス検出部1の電気抵抗値Rma(約1.1kΩ)に対応する検出電圧が燃料漏れ検出電圧に設定され、その電気抵抗値Rma及び燃料漏れ検出電圧がセンサ制御部16のメモリ24に記憶されている。
ここで、図6に示すように、ガス検出部1が正常な状態(雑ガスの影響による鋭敏化が起こっていない場合)には、ガス検出部1の温度が高温側感応温度である400℃のときに、空気中におけるガス検出部1の電気抵抗値Rairは時間が経過しても殆ど変化せず、メタン警報点の電気抵抗値Rmaに対する感度も同様に殆ど変化しない。したがって、例えば、図8に示すように、空気中におけるガス検出部1の電気抵抗値Rairと空気中にメタンガスが3000ppm含まれる場合の第2電気抵抗値R2とを比較した場合には、これら電気抵抗値には明確な差(感度)が生じるため、高温作動状態においてメタンガスの存在を良好に検出することができる。なお、センサ制御部16が、高温作動状態のときに、第2電気抵抗値R2がメタン警報点である電気抵抗値Rmaよりも低下すると燃料漏れが発生したと検出して燃料漏れ検出信号を主制御部42に送信するように構成されている。
【0045】
同様に、不完全燃焼ガスの検出では、低温作動状態の終了直前における第3電気抵抗値R3が一酸化炭素警報点(CO警報点)よりも低下している場合に、不完全燃焼により一酸化炭素ガス(COガス)が発生しているものと判定される。CO警報点は、空気中のCOガス濃度が不完全燃焼検出濃度(例えば、300ppm)のときのガス検出部1の電気抵抗値Rca(約7.5kΩ)に対応する検出電圧が不完全燃焼検出電圧に設定され、その電気抵抗値Rca及び不完全燃焼検出電圧がセンサ制御部16のメモリ24に記憶されている。
ここで、図7に示すように、ガス検出部1が正常な状態(雑ガスの影響による鋭敏化が起こっていない場合)には、ガス検出部1の温度が低温側感応温度である80℃のときに、空気中におけるガス検出部1の電気抵抗値Rairは時間が経過しても殆ど変化せず、CO警報点の電気抵抗値Rcaに対する感度も同様に殆ど変化しない。したがって、例えば、図8に示すように、空気中におけるガス検出部1の電気抵抗値Rairと空気中にCOガスが100ppm含まれる場合の第3電気抵抗値R3とを比較した場合には、これら電気抵抗値には明確な差(感度)が生じるため、低温作動状態においてCOガスの存在を良好に検出することができる。センサ制御部16が、低温作動状態のときに、第3電気抵抗値R3が電気抵抗値Rcaよりも低下すると不完全燃焼が発生したと検出して不完全燃焼検出信号を主制御部42に送信するように構成されている。
【0046】
しかしながら、ガスファンヒータが物置等に保管された後に使用される場合等において、ガス検出部1に雑ガス(防虫剤の成分を含むガス、アルコールガス、有機溶媒のガス等)が付着して、ガス検出部1で検出される電気抵抗値が低下(鋭敏化)する場合がある。例えば、図6に示すように、ガス検出部1の雰囲気中(空気中)にパラジクロロベンゼン系(p−DCB)防虫剤(以下、防虫剤1という場合がある)の成分を含むガスが存在することにより、メタン警報点の電気抵抗値Rmaに対する空気中におけるガス検出部1の電気抵抗値Rairが、メタンガスが存在していないにも拘らず、メタン警報点(図6では、感度1)よりも低下することがある。同様に、メタンガスが存在している場合であっても、メタンガス濃度が、燃料漏れ濃度(例えば、3000ppm)に到達していない濃度(例えば、1000ppm程度)であるにも拘らず、メタン警報点よりも低下することがある。これら場合には、警報が必要な燃料漏れであると誤報してしまう虞がある。
さらに、図7に示すように、この現象はCOガスを検出する場合においても同様に、CO警報点の電気抵抗値Rcaに対する空気中におけるガス検出部1の電気抵抗値Rairが、COガスが存在していないにも拘らず、CO警報点(図7では、感度1)よりも低下することがある。同様に、COガスが存在している場合であっても、COガス濃度が、不完全燃焼検出濃度(例えば、300ppm)に到達していない濃度(例えば、100ppm程度)であるにも拘らず、CO警報点よりも低下することがある。これら場合には、警報が必要な不完全燃焼が発生したものと誤報してしまう虞がある。
【0047】
このような雑ガスによる影響は、例えば、ガスファンヒータが雑ガスとしての防虫剤の成分を含むガス中に長期間保管されている場合等において、ガス検出装置Aに設けられたフィルタ12に、防虫剤の主成分であるパラジクロロベンゼン(p−DCB)等が吸着されてフィルタ汚染状態となり、ガス検出部1がヒータ2により加熱された際に当該パラジクロロベンゼンが脱離されてガス検出部1に接触することにより、ガス検出部1の電気抵抗値を低下(鋭敏化)させてしまうものと考えられる。
そこで、本願のガス検出装置Aでは、フィルタ12がフィルタ汚染状態となり、ガス検出部1が雑ガスの影響を受けている(鋭敏化している)か否かを判定するため、センサ制御部16が備える判定部26にて以下の処理を行う。
【0048】
判定部26は、ガス検出部1により検出された電気抵抗値に基づいて、ガス検出部1が防虫剤等の影響により鋭敏化が生じているか否か、すなわちフィルタ12がフィルタ汚染状態にあるか否かを判定し、判定結果を出力回路23に出力し、ガスファンヒータの主制御部42に出力する。
判定部26は、ガス検出部1が鋭敏化しているか否かを判定するに当たり、基本的に、センサ制御部16により検出されたヒータ2の加熱開始から所定時間内(例えば、1秒以内)における高温作動状態の第1電気抵抗値の極小値R1(最小値の一例)、高温作動状態の終了直前(例えば、加熱開始から5秒経過時)における第2電気抵抗値R2、低温作動状態の終了直前(例えば、加熱開始から25秒経過時、加熱停止から20秒経過時)の第3電気抵抗値R3を用いる。
【0049】
まず、判定部26は、高温作動状態における上記第2電気抵抗値R2に対する第1電気抵抗値の極小値R1の比X(=R1/R2)を第1判定基準として用いる。図8に示すように、通常、空気中、或いは空気中にメタンガスが3000ppmの濃度で存在する場合、高温作動状態における時間の経過とともに電気抵抗値が低下し、所定の電気抵抗値R2近傍で安定化する。すなわち、高温作動状態においては、変曲点に相当する極小値R1は存在しない。しかしながら、空気中にCOガスや、防虫剤の成分が含まれるガス、アルコール等の有機溶剤のガス等が存在すると、ヒータ2の加熱開始から所定時間内(図8では、1秒以内)において、電気抵抗値が低下する状態から増加する状態に変化する変曲点(極小値R1)が現れる。そこで、この極小値R1の存在の有無により、ガス検出部1が防虫剤の成分を含むガス等による影響を受けている(鋭敏化している)か否かを検出する。
【0050】
すなわち、判定部26は、図9に示すように、高温作動状態における第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比X(=R1/R2)を第1判定基準として用いて、当該比X(=R1/R2)<1の関係を満たしている場合(比X(=R1/R2)が、1よりも低下している場合)には、フィルタ12が雑ガスによる汚染状態にあり、ガス検出部1が鋭敏化しているものと判定する。なお、ここでは、所定の判定値として、例えば、1を用いているが、必要に応じて変更することも可能である。
【0051】
このように、加熱開始から所定時間内に極小値R1が現れるのは、例えば、図10に示すように、飽和濃度の防虫剤1の成分を含むガス、1000ppmのアルコール等は160℃付近で最大感度を示すところ、ガス検出部1の温度を低温作動状態(80℃程度)から高温作動状態(400℃程度)に1秒程度で変化させると、フィルタ12が防虫剤1の成分を含むガス、アルコールのガス等により汚染されている場合には、低温作動状態から高温作動状態に変化させて160℃付近を通過する約0.6秒で最大感度が現れ、過渡的な低抵抗が生じて極小値R1が生じるものと考えられる。一方、空気中、或いは空気中に3000ppmのメタンガスが存在する場合には、上記のような過渡的な低抵抗は生じない。なお、例えば、空気中に100ppmの濃度のCOガスが存在する場合には、抵抗は若干低下し極小値R1を有するため、上記第1判断基準のみでは、当該COガスが存在する場合と防虫剤の成分を含むガス等の雑ガスが存在する場合とを判別することはできない。
したがって、第1判定基準を用いることにより、少なくともフィルタ12が、防虫剤の成分を含むガス、アルコールを含むガスにより汚染されているか否かを判定することができる。
【0052】
ここで、上記判定では、上述の通り、不完全燃焼時に検出されるCOガスも高温作動状態における加熱開始から所定時間内においては極小値R1を有しており、COガスとその他の雑ガスである防虫剤の成分を含むガスやアルコールを含むガス等とを判別することが困難となる。
そこで、判定部26は、上記第1判定基準に加え、図9に示すように、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比X(=R1/R2)の増減方向(横軸)と第1電気抵抗値の極小値R1の感度Y(=R1/Rma)の増減方向(縦軸)とで規定される2次元直交座標空間内において、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比X(=R1/R2)と極小値R1の感度Y(=R1/Rma)とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域H内に存在するか否かに基づいて、座標点が当該所定領域H内に存在する場合に、フィルタ12が雑ガスによる汚染状態にあり、ガス検出部1が鋭敏化しているものと判定する。
【0053】
ここで、例えば、図9に示すように、第1電気抵抗値の極小値R1の感度Yは、メタン警報点における電気抵抗値Rmaに対する極小値R1の感度Y(=R1/Rma)であり、所定領域Hは、logY<αlogX+β1の関係(α、β1は定数)、及び比X(=R1/R2)<1の関係を満たす領域である(第2判定基準)。この所定領域H内には、空気中に飽和濃度の防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点、飽和濃度のナフタリン系防虫剤(以下、防虫剤2という場合がある)の成分を含むガスが存在する場合の座標点、飽和濃度のピレスロイド系防虫剤(以下、防虫剤3という場合がある)の成分を含むガスが存在する場合の座標点、1000ppmのアルコールが存在する場合の座標点、1000ppmのn‐ヘキサンが存在する場合の座標点、1000ppmのトルエンが存在する場合の座標点がそれぞれ位置している。一方、所定領域Hの外側には、空気中、空気中に所定濃度(100〜6000ppm)でメタンガスが存在する場合の座標点、空気中に所定濃度(50〜500ppm)でCOガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点が位置している。
【0054】
したがって、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比Xと極小値R1の感度Yとで定まる座標点が所定領域H内に位置する場合には、フィルタ12が防虫剤の成分を含むガス、アルコールを含むガス等の雑ガスによりフィルタ汚染状態にありガス検出部1が鋭敏化しているものと判定できるとともに、この場合、特にCOガスによる影響を排除した判定を行うことができる。なお、当該座標点が所定領域H内に位置する場合には、COガスの影響を排除した状態で判定できるものの、所定領域Hの外側の領域には、飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点が位置しているため、第2判定基準ではCOガスが存在する場合と飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合とを判別することはできない。
よって、第2判定基準を用いることにより、少なくともフィルタ12が、COガスの影響を受けない状態で、防虫剤の成分を含むガス、アルコールを含むガスにより汚染されているか否かを判定することができる。
【0055】
次に、上記判定では、上述の通り、COガスの影響を受けない状態で、フィルタ12が、防虫剤を含むガス、アルコールを含むガスにより汚染されているか否かを判定することができる。しかしながら、飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合については、所定領域Hの外側に位置するためフィルタ汚染状態にあると判定することができない。
そこで、判定部26は、上記第2判定基準に加え、図9に示すように、まず、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比X(=R1/R2)の増減方向(横軸)と第1電気抵抗値の極小値R1の感度Y(=R1/Rma)の増減方向(縦軸)とで規定される2次元直交座標空間内において、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比X(=R1/R2)と極小値R1の感度Y(=R1/Rma)とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域L内に存在するか否かに基づいて、座標点が当該所定領域L内に存在する場合に、フィルタ12が雑ガスによる汚染状態にあり、ガス検出部1が鋭敏化しているものと判定する。
ここで、図9に示すように、第1電気抵抗値の極小値R1の感度Yは、メタン警報点における電気抵抗値Rmaに対する極小値R1の感度Y(=R1/Rma)であり、所定領域Lは、logY<αlogX+β2の関係(α、β2は定数)、及び比X(=R1/R2)<1の関係を満たす領域である(第3判定基準の一部)。なお、この第3判定基準の一部における第2判定基準との相違は、β1がβ2に置き換わっている点のみである。このβ2はβ1よりも大きい値に設定され、図9において第2判定基準の直線を縦軸方向に平行移動した状態とし、所定領域Hを空気中に所定濃度(50〜500ppm)でCOガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点が含まれる領域にまで拡大した所定領域Lとなるように構成されている。この所定領域L内には、空気中に飽和濃度の防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の防虫剤2の成分を含むガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の防虫剤3の成分を含むガスが存在する場合の座標点、1000ppmのアルコールが存在する場合の座標点、1000ppmのn‐ヘキサンが存在する場合の座標点、1000ppmのトルエンが存在する場合の座標点、空気中に所定濃度(50〜500ppm)でCOガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点が位置している。一方、所定領域Lの外側には、空気中、空気中に所定濃度(100〜6000ppm)でメタンガスが存在している場合の座標点がそれぞれ位置している。
なお、ここでは第2判定基準および第3判定基準の一部におけるαは同じとしたが、所定領域Lの外側に、空気中、空気中に所定濃度(100〜6000ppm)でメタンガスが存在している場合の座標点が位置する構成であれば、それぞれ別の定数α1、およびα2としてもよい。
【0056】
加えて、図11に示すように、判定部26は所定領域Lとして、図11に示すように、第3電気抵抗値R3の感度Zの増減方向(横軸)と第1電気抵抗値の極小値R1の感度Yの増減方向(縦軸)とで規定される2次元直交座標空間内において、第3電気抵抗値R3の感度Zと極小値R1の感度Yとで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域L内に存在するか否かに基づいて、座標点が当該所定領域L内に存在する場合に、フィルタ12が雑ガスによる汚染状態にあり、ガス検出部1が鋭敏化しているものと判定する。
ここで、図11に示すように、第3電気抵抗値R3の感度Zは、CO警報点における電気抵抗値Rcaに対する第3電気抵抗値R3の感度Z(=R3/Rca)であり、第1電気抵抗値の極小値R1の感度Yは、メタン警報点における電気抵抗値Rmaに対する極小値R1の感度Y(=R1/Rma)である。所定領域Lは、Y<aZ+bの関係(a、bは定数)を満たす領域である(第3判定基準の他部)。この所定領域L内には、空気中、空気中に所定濃度(100〜6000ppm)でメタンガスが存在する場合の座標点、空気中に飽和濃度の防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の防虫剤2の成分を含むガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の防虫剤3の成分を含むガスが存在する場合の座標点、1000ppmのアルコールが存在する場合の座標点、1000ppmのn‐ヘキサンが存在する場合の座標点、1000ppmのトルエンが存在する場合の座標点がそれぞれ位置している。一方、所定領域Lの外側には、空気中に所定濃度(50〜500ppm)でCOガスが存在する場合の座標点が位置している。すなわち、COガスに高い感度を持つ低温作動状態の終了直前における第3電気抵抗値R3を用いているので、所定領域L内に飽和濃度の1/6の濃度で防虫剤1が存在する場合の座標点、所定領域Lの外側に空気中に所定濃度(50〜500ppm)でCOガスが存在する場合の座標点とを位置させることができ、これらを良好に判別することができることとなっている。
したがって、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比Xと極小値R1の感度Yとで定まる座標点が、図9に示す所定領域L内であるとともに、第3電気抵抗値R3の感度Zと極小値R1の感度Yとで定まる座標点が、図11に示す所定領域L内である場合には、防虫剤の成分を含むガス、アルコールを含むガス、飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスが存在するガス等の雑ガスにより、フィルタ12がフィルタ汚染状態にありガス検出部1が鋭敏化しているものと判定できるとともに、この場合、特にCOガスの影響を排除して判定することができる。
よって、第3判定基準を用いることにより、フィルタ12が、COガスの影響を受けない状態で、防虫剤の成分を含むガス、アルコールを含むガスにより、特に飽和濃度の1/6の濃度で存在する防虫剤1の成分を含むガスにより汚染されているか否かを判定することができ、ガス検出部1に鋭敏化が生じているか否かを正確に判定することができる。
【0057】
次に、判定部26における判定動作について、図12に示すフロー図に基づいて説明する。
ガスファンヒータの運転スイッチ55により運転開始が指令されると、主制御部42が点火処理及び燃焼量調整制御を実行するとともに、センサ制御部16によりヒータ2への通電が行われ(ステップ♯1)、ガス検出部1を高温作動状態と低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるようにヒータ2の作動が制御される(ステップ♯2)。なお、メタンガスの燃料漏れ検出電圧値に対応する電気抵抗値Rma(メタン警報点)及びCOガスの不完全燃焼検出電圧値に対応する電気抵抗値Rmc(CO警報点)は、予めメモリ24に記憶されているものを用いてもよいし、新たに入力して設定したものを用いることとしてもよい。
【0058】
そして、ガス検出部1が低温作動状態からヒータ2による加熱が開始されて高温作動状態に切り換わり、高温作動状態に切り換わった時点から所定時間内(1秒以内)には、0.1秒間隔でガス検出部1の第1電気抵抗値を検出し、その間の極小値R1を検出する(ステップ♯3)。高温作動状態に切り換わった時点から所定時間経過(5秒程度)すると、この5秒経過時点(ガス検出部1の温度は400℃程度)の第2電気抵抗値R2を検出し(ステップ♯4)、ヒータ2の加熱作動を停止する。なお、この第2電気抵抗値R2は、メタンガスが燃料漏れしているか否かを判別するための検出情報としても用いられる。
【0059】
次に、判別部26において、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比X(=R1/R2)を求め、第1判定基準として当該比Xが1よりも小さいか否かを判定する(ステップ♯5)。比Xが1以上である場合には(ステップ♯5:No)、フィルタ汚染が発生していないものとして、ステップ3に戻り、センサ制御部16による燃料漏れ及び不完全燃焼の検出動作を繰り返す。比Xが1よりも小さい場合には(ステップ♯5:Yes)、ステップ♯6に進み、さらに判定精度を向上させた第2判定基準により判定を行う。
【0060】
そして、判定部26は、第1電気抵抗値の極小値R1の感度Y(=R1/Rma)を求め、上記比X及び感度Yが第2判定基準としてのlogY<αlogX+β1の関係(α、β1は定数)、及び比X(=R1/R2)<1の関係を満たすか否かを判定する(ステップ♯6)。これら関係の両方或いは何れか一方を満たさない場合には(ステップ♯6:No)、フィルタ汚染が発生していないものとして、ステップ3に戻り、センサ制御部16による燃料漏れ及び不完全燃焼の検出動作を繰り返す。この場合、フィルタ12には、防虫剤等による雑ガスが殆ど吸着されておらず、ガス検出部1の鋭敏化は生じていないもの(正常状態)と判定できる。
これら関係の両方を満たす場合には(ステップ♯6:Yes)、フィルタ12には、防虫剤等による雑ガスが吸着されており、ガス検出部1の鋭敏化が生じている可能性がある(フィルタ汚染状態)。
そのため、ステップ♯7及びステップ♯8に進み、より精度が高い状態で判定を行う。
【0061】
センサ制御部16は、ヒータ2の作動を停止してから電気抵抗値が安定化した際(ガス検出部1の温度が80℃程度)の第3電気抵抗値R3を検出し(ステップ♯7)、ヒータ2の作動を開始する。なお、この第3電気抵抗値R3は、不完全燃焼ガスが発生しCOガスが存在しているか否かを判別するための検出情報としても用いられる。
【0062】
次に、判定部26において、第2電気抵抗値R2に対する極小値R1の比X(=R1/R2)、及び第1電気抵抗値の極小値R1の感度Y(=R1/Rma)を求め、これら比X及び感度YがlogY<αlogX+β2の関係(α、β2は定数)、及び比X(=R1/R2)<1の関係を満たすか否か、及び第3電気抵抗値R3の感度Z(=R3/Rca)を求め、上記感度Y及び感度Zが、Y<aZ+bの関係(a、bは定数)を満たすか否かを判定する(ステップ♯8)。これら第3判定基準としての関係の何れかを満たさない場合には(ステップ♯8:No)、フィルタ汚染が発生していないものとして、ステップ3に戻り、センサ制御部16による燃料漏れ及び不完全燃焼の検出動作を繰り返す。この場合、フィルタ12には、防虫剤等による雑ガスが殆ど吸着されておらず、ガス検出部1の鋭敏化は生じていないもの(正常状態)と判定できる。
これら関係の全てを満たす場合には(ステップ♯8:Yes)、フィルタ12には、防虫剤等による雑ガスが吸着されており、ガス検出部1の鋭敏化が生じている可能性が高いため、フィルタ汚染状態であると判定する(ステップ♯9)。
この場合、フィルタ汚染状態である旨が出力回路23により主制御部42に出力されて、主制御部42において、出力回路23から既に燃料漏れ検出信号や不完全燃焼検出信号を受信している場合でも、例えば、ガスファンヒータの警報ランプ56を点灯させず、運転を継続させることができる。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、ガス検出部1の電気抵抗値に基づいて、高温作動状態で可燃性ガスを検出し、且つ、低温作動状態で不完全燃焼ガスを検出するように構成したが、特にこの構成に限定されるものではなく、ガス検出部1が可燃性ガス及び不完全燃焼ガスの両方を検出する構成ではなく、それぞれのガスのみを検出する構成とすることもできる。例えば、ガス検出部1を、高温作動状態でのみ可燃性ガスを検出可能な構成、或いは低温作動状態でのみ不完全燃焼ガスを検出可能な構成とすることもできる。
また、ガス検出部1が可燃性ガス及び不完全燃焼ガスの両方を検出可能な構成とし、センサ制御部16が、高温作動状態で可燃性ガスを検出するのみの制御、或いは低温作動状態で不完全燃焼ガスを検出するのみの制御を行う構成とすることもできる。
【0064】
(2)上記実施形態では、ステップ5において第1判定基準による判定、ステップ6において第2判定基準による判定、ステップ8において第3判定基準による判定をそれぞれ行ったが、検出が必要なフィルタ汚染の程度等に応じて、各ステップを全て行うか、2つのみ行うか、一つだけ行うかを適宜選択することができる。例えば、第2判定基準、或いは第2判定基準及び第3判定基準による判定を省略する構成を採用することもできる。
【0065】
(3)上記実施形態では、上記第2判定基準において、所定領域Hを、logY<αlogX+β1の関係(α、β1は定数)、及び比X(=R1/R2)<1の関係を満たす領域としたが、少なくともフィルタ12が、COガスの影響を受けない状態で、防虫剤の成分を含むガス、アルコールを含むガスにより汚染されているか否かを判定することができる構成であれば、その他の関係を満たす領域とすることもできる。例えば、図9において、極小値R1の感度Y(=R1/Rma)<1、比X(=R1/R2)<1の関係を満たす、所定領域Hを採用することもできる。
【0066】
(4)上記実施形態では、上記第3判定基準の一部において、所定領域Lを、logY<αlogX+β2の関係(α、β2は定数)、及び比X(=R1/R2)<1の関係を満たす領域としたが、少なくともフィルタ12が、COガスの影響を受けない状態で、防虫剤の成分を含むガス、アルコールを含むガスにより汚染されているか否かを判定することができ、さらに、空気中に所定濃度(50〜500ppm)でCOガスが存在する場合の座標点、飽和濃度の1/6の濃度で存在するパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガスが存在する場合の座標点が含まれる領域にまで拡大した領域となる構成であれば、その他の関係を満たす領域とすることもできる。例えば、図9において、極小値R1の感度Y(=R1/Rma)<10、比X(=R1/R2)<1の関係を満たす、所定領域Lを採用することもできる。
同様に、上記第3判定基準の他部において、所定領域Lは、Y<aZ+bの関係(a、bは定数)を満たす領域としたが、少なくともフィルタ12が、防虫剤を含むガス、アルコールを含むガス、飽和濃度の1/6の濃度で存在するパラジクロロベンゼン系防虫剤の成分を含むガス等の雑ガスによりフィルタ汚染状態にありガス検出部1が鋭敏化しているものと判定できるとともに、この場合、特にCOガスによる影響を排除して判定することができる構成であれば、その他の関係を満たす領域とすることもできる。例えば、図11において、極小値R1の感度Y(=R1/Rma)<1、かつ第3電気抵抗値R3の感度Z(=R3/Rca)>3の関係を満たす、所定領域Lを採用することもできる。
【0067】
(5)上記実施形態では、極小値R1の感度Y(=R1/Rma)を、メタン警報点における電気抵抗値Rmaに対する極小値R1の感度としたが、空気中における電気抵抗値Rairに対する極小値R1の感度とすることもできる。
同様に、第3電気抵抗値R3の感度Z(=R3/Rca)を、CO警報点における電気抵抗値Rcaに対する第3電気抵抗値R3の感度としたが、空気中における電気抵抗値Rairに対する第3電気抵抗値R3の感度とすることもできる。
【0068】
(6)上記実施形態では、センサ制御部16と主制御部42とを別体に構成する場合について例示したが、センサ制御部16と主制御部42とをマイクロコンピュータを用いて単一のものとして構成しても良い。
【0069】
(7)ガスセンサSの設置箇所は、上記実施形態において例示したケーシング46の吸気口44に限定されるものではなく、例えば、吸気口44付近でも良い。
【0070】
(8)上記実施形態では、燃料としてガス燃料を用いる燃焼機器にガス検出装置を適用する場合について例示したが、本発明は燃料として液体燃料を用いる燃焼機器用のガス検出装置にも適用することが可能であり、この場合は、ガス検出部1により、液体燃料を気化させたガスを可燃性ガスとして検出することになる。
又、燃料としてガス燃料を用いる燃焼機器にガス検出装置を適用する場合、ガス燃料はメタンを主成分とする都市ガスに限定されるものではなく、例えばプロパンガスでも良い。
【0071】
(9)本発明に係るガス検出装置は、上記の実施形態において例示したガスファンヒータ以外に、ガスストーブ、石油ファンヒータ、石油ストーブ、給湯装置等、種々の燃焼機器のガス検出装置として適用することができる。
【0072】
(10)本発明に係るガス検出装置は、上記の実施形態において例示した燃焼機器としてのガスファンヒータ以外に、燃料漏れや不完全燃焼を検出して警報するガス警報器に適用することもできる。例えば、ガス検出装置のガス検出部を、警報器本体に設けられたガス流入口を介して供給される空気中の可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するように警報器本体内に設けた構成のガス警報器とすることもできる。これにより、ガス警報器において可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するガス検出部を備えたガス検出装置を備え、このガス検出装置においてフィルタ部が防虫剤等の成分を含む雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを確実に判定できるので、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行って、ガス警報器の安全な運転を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、フィルタ部が防虫剤等の成分を含む雑ガスによりフィルタ汚染状態にあり、ガス検出部が雑ガスによる影響を受けていることを確実に判定して、所定濃度の検出対象ガスの存在の正確な検出及び警報を行うことが可能なガス検出装置、このガス検出装置を備えた燃焼機器及びガス警報器を提供することができた。
【符号の説明】
【0074】
1 ガス検出部
2 ヒータ(加熱部)
10 ハウジング(筐体)
12 フィルタ(フィルタ部)
16 センサ制御部(制御部)
26 判定部
R1 第1電気抵抗値の極小値(最小値)
R2 第2電気抵抗値
R3 第3電気抵抗値
H 所定領域
L 所定領域
A ガス検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に設けられて、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記筐体の外部から前記ガス検出部が設けられている前記筐体の内部に至る間の流路に設けられて雑ガスが付着するフィルタ部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を前記高温作動状態と前記低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記低温作動状態にある前記ガス検出部の第3電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての不完全燃焼ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置であって、
前記制御部が、前記高温作動状態にある前記ガス検出部の第1電気抵抗値の最小値と、前記高温作動状態から前記低温作動状態に切り換わる直前の前記ガス検出部の第2電気抵抗値とを検出し、
前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比に基づいて、当該比が予め設定される所定の判定値よりも小さい場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する判定部を備えたガス検出装置。
【請求項2】
筐体の内部に設けられて、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記筐体の外部から前記ガス検出部が設けられている前記筐体の内部に至る間の流路に設けられて雑ガスが付着するフィルタ部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を前記高温作動状態と前記低温作動状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記高温作動状態から前記低温作動状態に切り換わる直前の前記ガス検出部の第2電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての可燃性ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置であって、
前記制御部が、前記高温作動状態にある前記ガス検出部の第1電気抵抗値の最小値と、前記ガス検出部の前記第2電気抵抗値とを検出し、
前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比に基づいて、当該比が予め設定される所定の判定値よりも小さい場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する判定部を備えたガス検出装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記低温作動状態にある前記ガス検出部の第3電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての不完全燃焼ガスを検出する構成で、
前記判定部が、前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比の増減方向と前記第1電気抵抗値の前記最小値の感度の増減方向とで規定される2次元直交座標空間内において、前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比と前記最小値の感度とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域内に存在するか否かに基づいて、前記座標点が当該所定領域内に存在する場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する請求項1又は2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記第2電気抵抗値に基づいて前記検出対象ガスとしての可燃性ガスを検出する構成で、
前記判定部が、前記制御部により検出された前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比の増減方向と前記第1電気抵抗値の前記最小値の感度の増減方向とで規定される2次元直交座標空間内において、前記第2電気抵抗値に対する前記最小値の比と前記最小値の感度とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域内に存在するか否かに基づいて、前記座標点が当該所定領域内に存在する場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する請求項1から3の何れか一項に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記低温作動状態にある前記ガス検出部の第3電気抵抗値を検出し、
前記判定部が、前記制御部により検出された前記第3電気抵抗値の感度の増減方向と前記第1電気抵抗値の前記最小値の感度の増減方向とで規定される2次元直交座標空間内において、前記第3電気抵抗値の感度と前記最小値の感度とで定まる座標点が当該2次元直交座標空間内の所定領域内に存在するか否かに基づいて、前記座標点が当該所定領域内に存在する場合に、前記フィルタ部に前記雑ガスが付着したフィルタ汚染状態にあると判定する請求項3又は4に記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記フィルタ部に付着する前記雑ガスの成分が、パラジクロロベンゼン系防虫剤、ナフタリン系防虫剤、ピレスロイド系防虫剤、アルコール、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも一つ以上の成分である請求項1から5の何れか一項に記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記制御部が検出する前記第1電気抵抗値の前記最小値が、前記加熱部による前記ガス検出部の加熱作動の開始から1秒以内における前記高温作動状態の第1電気抵抗値の極小値である請求項1から6の何れか一項に記載のガス検出装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のガス検出装置を備えた燃焼機器であって、
可燃性ガスを燃焼する燃焼部が収納されるケーシングに設けられた吸気口を介して、前記ケーシング外の空気を燃焼用空気として前記燃焼部に供給し、且つ、前記燃焼部の燃焼ガスを前記ケーシングに設けられた吹出し口からケーシング外に吹き出すように通風作用する送風部が設けられ、
前記ガス検出部が、前記吸気口を介して供給される前記燃焼用空気中の可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するように前記吸気口又は前記吸気口付近に設けられている燃焼機器。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載のガス検出装置を備えたガス警報器であって、
前記ガス検出部が、警報器本体に設けられたガス流入口を介して供給される空気中の可燃性ガス、不完全燃焼ガスに感応するように前記警報器本体内に設けられているガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−256048(P2010−256048A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103453(P2009−103453)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(593210961)エフアイエス株式会社 (39)
【Fターム(参考)】