説明

ガス検出装置及びそのガス検出装置を備えた機器

【課題】シロキサン被毒や水分吸着が生じている状態を判定することができながら、COガス等の検出対象ガスの濃度を適正に検出する。
【解決手段】高温状態と低温状態とに切り換えるように加熱部4の作動を制御して低温状態のガス検出部3の電気抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出する制御部5と、ガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、ガス検出部3の周囲が清浄空気であるか否かを判定する清浄空気判定処理を行い、その清浄空気判定処理にて清浄空気であると判定した場合に、高温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値が正常範囲よりも低下していることを検出するとシロキサン被毒状態であると判定するシロキサン被毒判定処理、及び、高温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値が正常範囲よりも増大していることを検出すると水分吸着状態であると判定する水分吸着判定処理の少なくとも一方を行う判定部14を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を高温状態と低温状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記低温状態にある前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなガス検出装置は、従来、加熱部を作動させてガス検出部を加熱することでガス検出部を高温状態とし、加熱部の作動を停止させてガス検出部を低温状態として、制御部が加熱部の作動を制御することで、ガス検出部を高温状態と低温状態とに交互に繰り返している。そして、制御部は、低温状態の終了期における電気抵抗値に基づいて、検出対象ガスとしてのCOガス(一酸化炭素ガス)を検出するようにしている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−17943号公報
【特許文献2】特開2001−337061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなガス検出装置では、図3(a)及び図3(b)中Aにて示すように、COガスの濃度が高くなるほど低温状態の終了期における電気抵抗値が低くなるという一定の関係が成立するので、その関係を用いて電気抵抗値に基づいてCOガス濃度を検出できる。図3(a)及び図3(b)は、COセンサの感度特性を示すものであり、縦軸をガス検出部の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roとし、横軸をCOガスの濃度としている。そして、基準抵抗値Roについては、例えば、COセンサの周囲をCOガスの濃度が100ppmの気体として、実際に検出した低温状態の終了期におけるガス検出部の電気抵抗値を基準抵抗値としている。
【0005】
このようなガス検出装置は、例えば、家庭で使用されるガスファンヒータやガス警報器等の機器に備えられており、不完全燃焼によるCOガスの発生を検出するために用いられている。
【0006】
ガス検出装置は、その使用環境等によって、COガスの濃度が実際の濃度よりも高い濃度を示してしまう鋭敏化現象や、COガスの濃度が実際の濃度よりも低い濃度を示してしまう鈍化現象を引き起こすことがあった。
【0007】
例えば、シリコーンを含むスプレー等の使用によりシロキサン化合物が含まれている物質がガス検出装置の周囲に散布されると、その物質がガス検出部の周囲に到達する。そして、ガス検出部を高温状態とした場合等に、その物質に含まれているシロキサン化合物が分解され、シロキサン化合物やその分解物等が膜を形成してガス検出部の表面を覆ってしまうことがある(以下、シロキサン被毒と呼称する)。このように、シロキサン被毒によりガス検出部の表面にシロキサン化合物やその分解物等の膜が形成されると、図3(a)中Bにて示すように、低温状態の終了期における電気抵抗値が正常な電気抵抗値(図中A)に対して低下してしまい、COガスの濃度が実際の濃度よりも高い濃度を示してしまう鋭敏化現象が生じることになる。
【0008】
また、ガス検出部に過度の水分が吸着すると(以下、水分吸着と呼称する)、その水分の影響を受けてしまい、図3(b)中Cにて示すように、低温状態の終了期における電気抵抗値が正常な電気抵抗値(図中A)に対して増大してしまい、COガスの濃度が実際の濃度よりも低い濃度を示してしまう鈍化現象が生じることになる。
【0009】
このように、ガス検出装置に、シロキサン被毒による鋭敏化現象や水分吸着による鈍化現象が生じている状態では、COガス等の検出対象ガスの濃度を実際の濃度に対して誤って検出してしまう。よって、このような場合には、ガス検出装置の故障であるとして、ガス検出装置を交換することが望ましいので、ガス検出装置の故障として、シロキサン被毒や水分吸着が生じている状態を判定することが求められる。
【0010】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、シロキサン被毒や水分吸着が生じている状態を判定することができながら、COガス等の検出対象ガスの濃度を適正に検出することができるガス検出装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係るガス検出装置の特徴構成は、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を高温状態と低温状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記低温状態にある前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置において、
前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて、前記ガス検出部の周囲が清浄空気であるか否かを判定する清浄空気判定処理を行い、その清浄空気判定処理にて清浄空気であると判定した場合に、高温状態における前記ガス検出部の電気抵抗値が正常範囲よりも低下していることを検出するとシロキサン被毒状態であると判定するシロキサン被毒判定処理、及び、高温状態における前記ガス検出部の電気抵抗値が正常範囲よりも増大していることを検出すると水分吸着状態であると判定する水分吸着判定処理の少なくとも一方を行う判定部を備えている点にある。
【0012】
ガス検出部の電気抵抗値に基づいてシロキサン被毒状態又は水分吸着状態を判定するに当たり、ガス検出部の周囲に検出対象ガスが存在すると、ガス検出部がその検出対象ガスに感応してガス検出部の電気抵抗値が変化することになるので、その電気抵抗値の変化が、シロキサン被毒又は水分吸着の発生によるものであるのか、ガス検出部が検出対象ガスに感応してのものであるのかが区別し難い。そこで、本特徴構成では、判定部が、まず、ガス検出部の電気抵抗値に基づいて、ガス検出部の周囲が清浄空気であるか否かを判定する清浄空気判定処理を行い、その清浄空気判定処理にて清浄空気であると判定した場合にだけ、シロキサン被毒判定処理、及び、水分吸着判定処理の少なくとも一方を行う。このように、ガス検出部の周囲が確実に清浄空気のみであるときにシロキサン被毒判定処理又は水分吸着判定処理を行うことで、シロキサン被毒又は水分吸着の発生によるガス検出部の電気抵抗値の変化を的確に捉えることができる。
【0013】
そして、ガス検出部の周囲が清浄空気である場合に、シロキサン被毒を発生している状態では、例えば、図4(a)中B1〜B3に示すように、正常な状態(図4(a)中A)と比べて、高温状態におけるガス検出部の電気抵抗値が低下している。そこで、本特徴構成では、判定部が、シロキサン被毒判定処理として、高温状態におけるガス検出部の電気抵抗値が正常範囲よりも低下していることを検出するとシロキサン被毒状態であると判定する。
また、ガス検出部の周囲が清浄空気である場合に、水分吸着状態では、例えば、図4(b)中C1〜C2に示すように、正常な状態(図4(b)中A)と比べて、高温状態におけるガス検出部の電気抵抗値が増大している。そこで、本特徴構成では、判定部が、水分吸着判定処理として、高温状態におけるガス検出部の電気抵抗値が正常範囲よりも増大していることを検出すると水分吸着状態であると判定する。
【0014】
したがって、シロキサン被毒又は水分吸着の発生によるガス検出部の電気抵抗値の変化を的確に捉えながら、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態を正確に判定することができる。そして、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態であると判定すると、その判定結果を出力することで、ガス検出装置に鋭敏化現象又は鈍化現象が生じているとして、ガス検出装置の交換を行うことができる。また、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態であると判定していないときには、ガス検出装置に鋭敏化現象又は鈍化現象が生じていないとして、COガス等の検出対象ガスの濃度を適正に検出することができる。
【0015】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記判定部は、前記水分吸着判定処理において、高温状態における前記ガス検出部の電気抵抗値が上昇傾向にあることを検出すると、水分吸着状態であると判定する点にある。
【0016】
水分吸着が発生している状態では、ガス検出部の周囲が清浄空気であると、高温状態におけるガス検出部の電気抵抗値が時間経過に伴って増大する上昇傾向となる。そこで、本特徴構成では、高温状態におけるガス検出部の電気抵抗値が正常範囲よりも増大していることを検出するだけでなく、高温状態におけるガス検出部の電気抵抗値が上昇傾向にあることを検出しても、水分吸着状態であると判定する。これにより、水分吸着の発生によるガス検出部の電気抵抗値の変化を確実に捉えて、水分吸着の発生をより正確に判定することができる。
【0017】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記判定部は、前記清浄空気判定処理において、低温状態の終了期における前記ガス検出部の電気抵抗値が清浄空気判定用基準抵抗値よりも設定値以上高いと、前記ガス検出部の周囲が清浄空気であると判定する点にある。
【0018】
ガス検出部の周囲が清浄空気であると、ガス検出部の周囲に検出対象ガスが存在する場合と比べて、低温状態の終了期におけるガス検出部の電気抵抗値が増大している。そこで、本特徴構成では、例えば、清浄空気判定用基準抵抗値について、ガス検出部の周囲に検出対象ガスが存在する場合の低温状態の終了期におけるガス検出部の電気抵抗値を基準として定め、低温状態の終了期におけるガス検出部の電気抵抗値がその定めた清浄空気判定用基準抵抗値よりも設定値以上高いか否かにより、ガス検出部の周囲が清浄空気であるか否かを判定する。このようにして、低温状態の終了期におけるガス検出部の電気抵抗値を用いてガス検出部の周囲が清浄空気であるか否かを判定することで、ガス検出部の周囲が清浄空気であるか否かの判定を正確に行うことができ、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態をより正確に判定することができる。
【0019】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記判定部は、前記シロキサン被毒判定処理において、高温状態の中間期から終了期までの期間における前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲よりも低下しているか否かを検出してシロキサン被毒状態を判定する点にある。
【0020】
例えば、図4(a)に示すように、高温状態の中間期から終了期までの期間では、シロキサン被毒を発生していない正常な状態(図中A)も、シロキサン被毒を発生している状態(図4中B1〜B3)も、高温状態の開始期から中間期までの期間と比べて、ガス検出部の電気抵抗値の変化が小さく、ガス検出部の電気抵抗値が安定する。そこで、本特徴構成では、判定部が、ガス検出部の電気抵抗値が安定している高温状態の中間期から終了期までの期間におけるガス検出部の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲よりも低下しているか否かを検出してシロキサン被毒状態を判定する。これにより、シロキサン被毒状態を容易に且つ正確に判定することができる。
【0021】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記判定部は、前記水分吸着判定処理において、高温状態の中間期から終了期までの期間における前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲より増大しているか否かを検出して水分吸着状態を判定する点にある。
【0022】
例えば、図4(b)に示すように、高温状態の中間期から終了期までの期間では、水分吸着を発生していない正常な状態(図中A)も、水分吸着を発生している状態(図中C1、C2)も、高温状態の開始期から中間期までの期間と比べて、ガス検出部の電気抵抗値の変化が小さく、ガス検出部の電気抵抗値が安定する。そこで、本特徴構成では、判定部が、ガス検出部の電気抵抗値が安定している高温状態の中間期から終了期までの期間におけるガス検出部の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲よりも増大しているか否かを検出して水分吸着状態を判定する。これにより、水分吸着状態を容易に且つ正確に判定することができる。
【0023】
本発明に係るガス検出装置の更なる特徴構成は、前記制御部は、電力供給の開始により前記加熱部の作動を制御して検出対象ガスの検出を開始するように構成され、前記判定部は、電力供給の開始から遅延期間が経過するまでは前記清浄空気判定処理を行わず、電力供給の開始から遅延期間が経過したのち、前記清浄空気判定処理を行うように構成されている点にある。
【0024】
ガス検出装置に電力供給が開始された当初は、ガス検出部の電気抵抗値が低くなっており、このときの電気抵抗値は、正常な状態であっても、シロキサン被毒判定処理における正常範囲よりも低くなっている可能性がある。よって、ガス検出装置に電力供給が開始された当初に、シロキサン被毒判定処理を行うと、正常な状態であるにもかかわらず、シロキサン被毒状態であると誤って判定してしまう可能性がある。
そこで、本特徴構成では、判定部が、ガス検出装置に電力供給が開始されてから遅延期間が経過するまでは、清浄空気判定処理を行わず、ガス検出装置に電力供給が開始されてから遅延期間が経過することをもって清浄空気判定処理を行う。これにより、ガス検出装置に電力供給が開始されてから遅延期間が経過するまでは、清浄空気判定処理、シロキサン被毒判定処理及び水分吸着判定処理の何れも行うことがなく、正常な状態であるにもかかわらず、シロキサン被毒状態であると誤って判定してしまうことを的確に防止することができる。ここで、遅延期間については、正常な状態で、ガス検出装置に電力供給が開始されて、ガス検出部の電気抵抗値がシロキサン被毒判定処理における正常範囲内まで高くなるのに必要な期間として定めることができる。そして、ガス検出装置への電力供給の開始から設定時間が経過すると、遅延期間が経過しているとしたり、ガス検出装置への電力供給の開始から高温状態と低温状態とに交互に繰り返す動作を設定回数以上行うと、遅延期間が経過しているとすることができる。
【0025】
本発明に係る機器の特徴構成は、上述の特徴構成の何れか1つを有するガス検出装置を備えている点にある。
【0026】
本特徴構成によれば、本発明に係る機器は、上述のガス検出装置の特徴構成に述べた如く、シロキサン被毒又は水分吸着が発生している状態を的確に判定することができるガス検出装置を備えている。したがって、例えば、ガスファンヒータやガス警報器等の機器にガス検出装置を備えることで、シロキサン被毒又は水分吸着が発生している状態を的確に判定することができながら、COガス等の検出対象ガスの濃度を適正に検出することができ、機器の信頼性の向上を図ることができる。しかも、上述のガス検出装置の特徴構成に述べた如く、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態であると判定すると、鋭敏化現象又は鈍化現象が生じているとして、ガス検出装置の交換を行うことができ、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態であると判定していないときには、COガス等の検出対象ガスの濃度を適正に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るガス検出装置の要部を示すブロック図
【図2】ガス検出部の周囲に検出対象ガスが存在するときのガス検出部の電気抵抗値の時間経過に伴う変化を示すグラフ
【図3】ガス検出装置の感度特性を示すグラフ
【図4】ガス検出部の周囲が清浄空気であるときのガス検出部の電気抵抗値の時間経過に伴う変化を示すグラフ
【図5】判定部の動作を示すフローチャート
【図6】ガス検出部の周囲に検出対象ガスが存在するときのガス検出部の電気抵抗値の各種の比を示す表
【図7】本発明に係る機器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係るガス検出装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係るガス検出装置は、例えば、検出対象ガスとして不完全燃焼ガスであるCOガス(一酸化炭素ガス)を検出するCOセンサ1にて構成されている。このCOセンサ1は、図1に示すように、電源2からの電力供給によりCOガスの検出を開始するように構成されており、COガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部3と、ガス検出部3を加熱するヒータ4(加熱部に相当する)と、ガス検出部3を高温状態と低温状態とに交互に繰り返し切り換えるようにヒータ4の作動を制御するとともに、低温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいてCOガスを検出する制御部5とを備えている。
【0029】
COセンサ1は、ヒータ4への印加電圧をON/OFFするためのスイッチング素子6、ガス検出部3の負荷抵抗7、周囲温度の補正用のサーミスタ8、そのサーミスタ8と直列に接続された抵抗9等を備えている。制御部5には、スイッチング素子6のON/OFFを制御してヒータ4の作動を制御するヒータ制御部10、ガス検出部3の電気抵抗値及び抵抗9にかかる分圧値を入力するサンプリング部11、タイマー12、COガスの濃度を検出するCO検出部13等を備えている。
【0030】
図示は省略するが、COセンサ1は、例えば、円筒状のハウジング内に収納されており、そのハウジングに形成された気体導入口からハウジング内に導入される気体中のCOガスの濃度を検出するように構成されている。また、ハウジング内には、気体導入口からハウジング内に導入された気体中の雑ガス(例えばアルコールやNOx等)を除去するフィルターが備えられており、COセンサ1は、フィルターにより雑ガスが除去された状態でCOガスの濃度を検出する。ガス検出部3は、例えば、酸化錫(SnO2)等の金属酸化物半導体の焼結体にて構成されており、例えば、平板状、楕円球状等の形状に形成されている。そして、金属酸化物半導体には、COガス以外の雑ガスに対する感度を低減させるための触媒が担持されている。
【0031】
ヒータ制御部10は、ヒータ4を作動させてガス検出部3を加熱することでガス検出部3を高温状態(例えば、300℃程度)とし、ヒータ4の作動を停止することでガス検出部3を低温状態(例えば、80〜100℃)とする。そして、ヒータ制御部10は、タイマー12にて計測する時間に基づいて、高温状態を高温用設定時間(例えば60秒)継続させたのち、低温状態を低温用設定時間(例えば90秒)継続させる動作を1サイクルとして、そのサイクルを繰り返し行うように構成されている。
【0032】
CO検出部13は、低温状態の終了期(次のサイクルの高温状態とする直前)におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、COガスの濃度を検出する。低温状態の終了期におけるガス検出部3の電気抵抗値は、COガスの濃度が高くなるほど低温状態の終了期における電気抵抗値が低くなるという一定の関係を有する(例えば、図3(a)及び図3(b)中Aを参照。)。CO検出部13は、その関係を示す関係情報を予め記憶しており、記憶している関係情報、及び、低温状態の終了期にサンプリング部11にて入力したガス検出部3の電気抵抗値を用いて、COガスの濃度を求める。ここで、CO検出部13は、低温状態の終了期にサンプリング部11にて入力した抵抗9にかかる分圧値からガス検出部3の周囲温度を求め、その求めた周囲温度によりCOガスの濃度を補正することにより、ガス検出部3の周囲温度をも考慮したCOガスの濃度を求める。
【0033】
このように、COセンサ1は、ガス検出部3を高温状態と低温状態とに交互に繰り返しながら、低温状態の終了期におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、COガスの濃度を検出するが、その使用環境等によって、COガスの濃度が実際の濃度よりも高い濃度を示してしまう鋭敏化現象や、COガスの濃度が実際の濃度よりも低い濃度を示してしまう鈍化現象を引き起こすことがあった。
以下、鋭敏化現象及び鈍化現象の夫々について説明する。
【0034】
〔シロキサン被毒による鋭敏化現象〕
シリコーンを含むスプレー等の使用によりシロキサン化合物が含まれている物質がCOセンサ1の周囲に散布されると、ガス検出部3を高温状態とした場合等にシロキサン化合物が分解され、シロキサン化合物やその分解物等が膜を形成してガス検出部3の表面を覆ってしまうことがある(以下、シロキサン被毒と呼称する)。シロキサン被毒によりガス検出部3の表面にシロキサン化合物やその分解物等の膜が形成されると、図2(a)に示すように、低温状態の終了期における電気抵抗値(図中B1〜B3)が正常な電気抵抗値(図中A)よりも低い値となり、COガスの濃度が実際の濃度よりも高い濃度を示してしまう鋭敏化現象が生じることになる。
【0035】
図2(a)は、COセンサの周囲の条件を100ppmの濃度のCOガスが存在する気体としたときに、ガス検出部の電気抵抗値の時間経過に伴う変化を示したものである。縦軸については、ガス検出部の電気抵抗値Rsをそのまま示しているのではなく、ガス検出部の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roとして示している。基準抵抗値Roについては、COセンサの周囲の条件を100ppmの濃度のCOガスが存在する気体とした場合に、実際に検出した低温状態の終了期におけるガス検出部の電気抵抗値を基準抵抗値とする。
【0036】
そして、図2(a)では、シロキサン被毒の発生を想定したシリコーン処理をCOセンサに対して行い、シリコーン処理を行う前(図中A)とシリコーン処理を行った後(図中B1〜B3)とで、電気抵抗値がどのように変化するかを示したものである。そして、COセンサの周囲の条件については、基準抵抗値Roを検出した場合と同一条件としているので、COセンサが正常な状態であれば、低温状態の終了期におけるRs/Roの値が1となる。
【0037】
上述のシリコーン処理としては、COセンサのハウジングを外した状態で、ジクロロベンゼンの濃度が500ppmの気体中にガス検出部を24時間位置させたのち、シリコーンの濃度が200ppmの気体中にガス検出部を24時間位置させる処理を行う。そして、図2(a)におけるB1〜B3の夫々は、シリコーン処理を行ってからの経過時間が異なるものを示している。B1は、シリコーン処理を行ってから15日間COセンサに通電を行い、シリコーン処理を行ってから16日後の電気抵抗値を示しており、B2は、シリコーン処理を行ってから36日後であり、COセンサに3時間の通電を行った後の電気抵抗値を示しており、B3は、シリコーン処理を行ってから43日後であり、COセンサに3時間の通電を行った後の電気抵抗値を示している。
【0038】
シリコーン処理を行う前の図2(a)中Aは、低温状態の終了期でRs/Roの値が略1となっており、正常な状態を示している。それに対して、シリコーン処理を行った後の図2(a)中B1〜B3の夫々は、Rs/Roが1よりも低い値となる。これにより、シロキサン被毒を生じると、低温状態の終了期における電気抵抗値が正常な電気抵抗値よりも低い値となり、COガスの濃度が実際の濃度よりも高い濃度を示してしまう鋭敏化現象が生じる。
【0039】
図3(a)は、シリコーン処理を行う前(図中A)とシリコーン処理を行った後(図中B)との夫々について、COセンサの感度特性を示すものである。ここで、縦軸については、図2(a)と同様に、ガス検出部の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roとして示している。シロキサン被毒によりガス検出部の表面にシロキサン化合物やその分解物等の膜が形成されると、図3(a)中Bにて示すように、電気抵抗値が正常な電気抵抗値(図中A)に対して低下してしまい、COガスの濃度が実際の濃度よりも高い濃度を示してしまう鋭敏化現象が生じている。
【0040】
〔水分吸着による鈍化現象〕
ガス検出部3に過度の水分が吸着すると(以下、水分吸着と呼称する)、その水分の影響を受けてしまい、図2(b)に示すように、低温状態の終了期における電気抵抗値(図中C1,C2)が正常な電気抵抗値(図中A)よりも高い値となり、COガスの濃度が実際の濃度よりも低い濃度を示してしまう鈍化現象が生じることになる。
【0041】
図2(b)は、COセンサの周囲の条件を100ppmの濃度のCOガスが存在する気体としたときに、ガス検出部の電気抵抗値の時間経過に伴う変化を示したものである。縦軸については、図2(a)と同様に、ガス検出部の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roとして示している。そして、図2(b)では、水分吸着の発生を想定した浸水処理をCOセンサに対して行い、浸水処理を行う前(図中A)と浸水処理を行った後(図中C1、C2)とで、電気抵抗値がどのように変化するかを示している。また、図2(b)では、COセンサの周囲の条件を、基準抵抗値Roを検出した場合と同一条件としているので、COセンサが正常な状態であれば、低温状態の終了期におけるRs/Roの値が1となる。
【0042】
上述の浸水処理としては、COセンサのハウジングを外した状態で、ガス検出部を水に一晩浸漬させたのち、その水分が乾く前にヒータに0.8Vの印加電圧を与える状態を1分間継続する処理を行う。そして、図2(b)におけるC1、C2の夫々は、浸水処理を行ってからの経過時間が異なるものを示している。C1は、浸水処理を行った当日に、COセンサに3時間の通電を行った後の電気抵抗値を示しており、C2は、浸水処理を行ってから6日間COセンサに通電を行い、浸水処理を行ってから6日後の電気抵抗値を示している。
【0043】
浸水処理を行う前の図2(b)中Aは、低温状態の終了期ではRs/Roの値が略1となっており、正常な状態を示している。それに対して、浸水処理を行った後の図2(b)中C1、C2の夫々は、低温状態の終了期ではRs/Roが1よりも高い値となっており、COガスの濃度が実際の濃度よりも低い濃度を示してしまう鈍化現象が生じる。
【0044】
図3(b)は、浸水処理を行う前(図中A)と浸水処理を行った後(図中C)との夫々について、COセンサの感度特性を示すものである。ここで、縦軸については、図2と同様に、ガス検出部の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roとして示している。水分吸着が生じると、図3(b)中Cにて示すように、電気抵抗値が正常な電気抵抗値(図中A)に対して増大してしまい、COガスの濃度が実際の濃度よりも低い濃度を示してしまう鈍化現象が生じている。
【0045】
このように、シロキサン被毒や水分吸着が発生することにより、鋭敏化現象や鈍化現象が生じることから、COガスの濃度を適正に検出できなくなる。そこで、本発明に係るCOセンサ1では、シロキサン被毒が発生している状態及び水分吸着が発生している状態を判定する判定部14が制御部5に備えられている。判定部14は、サンプリング部11に入力されるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、シロキサン被毒が発生している状態及び水分吸着が発生している状態を判定する。
【0046】
判定部14は、まず、ガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、ガス検出部3の周囲が清浄空気であるか否かを判定する清浄空気判定処理を行う。そして、判定部14は、清浄空気判定処理にて清浄空気であると判定した場合に、高温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値が正常範囲よりも低下していることを検出するとシロキサン被毒状態であると判定するシロキサン被毒判定処理、及び、高温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値が正常範囲よりも増大していることを検出すると水分吸着状態であると判定する水分吸着判定処理の双方を行う。
【0047】
以下、判定部14の動作について、図4のグラフ、及び、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
図4は、COセンサの周囲の条件を清浄空気としたときに、ガス検出部の電気抵抗値の時間経過に伴う変化を示したものである。縦軸については、図2や図3と同様に、ガス検出部の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roとして示している。そして、図4(a)では、図2(a)と同様に、シリコーン処理を行う前(図中A)とシリコーン処理を行った後(図中B1〜B3)とで、電気抵抗値がどのように変化するかを示したものである。図4(b)は、図2(b)と同様に、浸水処理を行う前(図中A)と浸水処理を行った後(図中C1、C2)とで、電気抵抗値がどのように変化するかを示している。
【0049】
図5に示すように、判定部14は、COセンサ1に電源2からの電力供給が開始されてから遅延期間が経過しているか否かを判別する(ステップ#1)。ここで、判定部14は、COセンサ1に電源2からの電力供給が開始されてから、ガス検出部3を高温状態と低温状態とする1サイクルを設定回数以上行うことを条件として、遅延期間が経過していると判別している。
【0050】
判定部14は、電源2からの電力供給が開始されてから遅延期間が経過していると判別すると、清浄空気判定処理を行う(ステップ#2)。このように、判定部14は、COセンサ1に電源2からの電力供給が開始されてから遅延期間が経過するまでは清浄空気判定処理を行わず、COセンサ1に電源2からの電力供給が開始されてから遅延期間が経過したのち、清浄空気判定処理、シロキサン被毒判定処理及び水分吸着判定処理を行うことで、シロキサン被毒状態を精度良く判定している。つまり、COセンサ1に電源2からの電力供給が開始された当初は、ガス検出部3の電気抵抗値が低くなっており、このときの電気抵抗値は、正常な状態であっても、シロキサン被毒判定処理における正常範囲よりも低くなる可能性がある。そこで、COセンサ1に電源2からの電力供給が開始されて、シロキサン被毒判定処理における正常範囲内にガス検出部3の電気抵抗値が高くなる遅延期間が経過するまで、シロキサン被毒判定処理を行わないことで、誤った判定が行われることを防止している。
【0051】
判定部14は、清浄空気判定処理において、低温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値が清浄空気判定用基準抵抗値よりも設定値以上高いと、ガス検出部3の周囲が清浄空気であると判定する。ここで、清浄空気判定用基準抵抗値については、例えば、COセンサの周囲の条件を100ppmの濃度のCOガスが存在する気体としたときに、低温状態の終了期における電気抵抗値(基準抵抗値Ro)を清浄空気判定用基準抵抗値として予め記憶している。
【0052】
図2及び図4に基づいて説明すると、図2では、COセンサ1の周囲の条件が100ppmの濃度のCOガスが存在する気体であるときを示しており、低温状態の終了期における電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roの値が10よりも小さい値となる。それに対して、図4では、COセンサ1の周囲の条件が清浄空気であるときを示しており、低温状態の終了期における電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roの値が1000付近又は1000よりも高い値となる。そこで、判定部14は、低温状態の終了期における電気抵抗値が予め記憶している清浄空気判定用基準抵抗値の設定倍数(例えば100倍)以上であると、ガス検出部3の周囲が清浄空気であると判定する。
【0053】
図5に示すように、判定部14は、清浄空気判定処理を行うことによりガス検出部3の周囲が清浄空気であると判定すると、シロキサン被毒判定処理及び水分吸着判定処理を行う(ステップ#4)。ここで、判定部14は、例えば、ガス検出部3を高温状態と低温状態とするサイクルの動作を行うごとに、或いは、そのサイクルの動作を設定回数行うごとに、清浄空気判定処理を繰り返し行う。
【0054】
判定部14は、シロキサン被毒判定処理において、高温状態の中間期から終了期までの期間におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲よりも低下していることを検出するとシロキサン被毒状態であると判定する。判定部14は、例えば、清浄空気判定処理を行った次のサイクルの高温状態の中間期から終了期までの期間におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、シロキサン被毒判定処理を行う。
【0055】
図4(a)に基づいて説明すると、シロキサン被毒が発生している状態には(図中B1〜B3)、高温状態の中間期から終了期までの期間(例えば、高温状態の30秒から60秒の間の期間)における電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roが、正常な状態(図中A)よりも低下している。そして、図6(a)の表に示すように、高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の基準抵抗値Roに対する比Rair30/Roについて、正常な状態(図A)が30程度になるが、シロキサン被毒が発生している状態では(図中B1〜B3)2程度(Roに対して5倍以下の値)となる。そこで、例えば、COセンサの周囲の条件を100ppmの濃度のCOガスが存在する気体としたときに、低温状態の終了期における電気抵抗値(基準抵抗値Ro)を予め記憶しており、正常範囲の下限をその基準抵抗値Roに対して5倍以上と設定している。そして、判定部14は、高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の基準抵抗値Roに対する比Rair30/Roが5よりも低いと、電気抵抗値が正常範囲よりも低下しているとして、シロキサン被毒状態と判定する。
【0056】
判定部14は、水分吸着判定処理において、高温状態の中間期から終了期までの期間におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲より増大していることを検出すると水分吸着状態であると判定する。判定部14は、例えば、清浄空気判定処理を行った次のサイクルの高温状態の中間期から終了期までの期間におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、水分吸着判定処理を行う。
【0057】
図4(b)に基づいて説明すると、水分吸着が発生している状態では(図中C1,C2)、高温状態の中間期から終了期までの期間(例えば、高温状態の30秒から60秒の間の期間)の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roが、正常な状態(図中A)よりも増大している。そして、図6(b)の表に示すように、高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の基準抵抗値Roに対する比Rair30/Roについて、正常な状態(図A)が35程度になるが、水分吸着が発生している状態では(図中C1、C2)100よりも高い値(Roに対して48倍以上の値)となる。そこで、例えば、COセンサの周囲の条件を100ppmの濃度のCOガスが存在する気体としたときに、低温状態の終了期における電気抵抗値(基準抵抗値Ro)を予め記憶しており、正常範囲の上限をその基準抵抗値Roに対して48倍以下と設定している。そして、判定部14は、高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の基準抵抗値Roに対する比Rair30/Roが48よりも高いと、電気抵抗値が正常範囲よりも増大しているとして、水分吸着状態と判定する。
【0058】
図5に示すように、判定部14は、シロキサン被毒判定処理にてシロキサン被毒状態であると判定すると、シロキサン被毒異常として、シロキサン被毒状態であることを認識可能な異常信号を出力する(ステップ#5、#6)。また、判定部14は、水分吸着判定処理にて水分吸着状態であると判定すると、水分吸着異常として、水分吸着状態であることを認識可能な異常信号を出力する(ステップ#7、#8)。
【0059】
判定部14は、上述の如く、高温状態の中間期から終了期までの期間におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲より増大しているか否かを検出して水分吸着状態を判定するが、それに加えて、高温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値が上昇傾向にあることを検出すると、水分吸着状態であると判定する。つまり、判定部14は、高温状態におけるガス検出部3の電気抵抗値が上昇傾向にあることを検出すると、水分吸着状態であるとして、水分吸着異常とする(ステップ#9、#8)。
【0060】
上昇傾向の検出について、図4(b)に基づいて説明する。正常な状態(図中A)では、高温状態の中間期から終了期までの期間(例えば、高温状態の30秒から60秒の間の期間)の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roが略一定の値である。それに対して、水分吸着が発生している状態では(図中C1,C2)、高温状態の中間期から終了期までの期間(例えば、高温状態の30秒から60秒の間の期間)の電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roが時間経過とともに上昇している。そして、図6(b)の表に示すように、正常な状態(図中A)では、高温状態の51秒目における電気抵抗値Rair51に対する高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の比が0.9よりも大きくなるが、水分吸着が発生している状態(図中C1、C2)では、高温状態の51秒目における電気抵抗値Rair51に対する高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の比が0.9よりも小さい値となる。そこで、判定部14は、例えば、高温状態の51秒目における電気抵抗値Rair51に対する高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の比が0.9よりも小さい値になると、上昇傾向であると判別して、水分吸着状態と判定する。
【0061】
以下、本発明に係るガス検出装置を備えた本発明に係る機器の実施形態について図面に基づいて説明する。
図7に示すように、本発明に係る機器は、吸気口21を通して吸い込んだ空気をバーナ22の燃焼用空気として供給し、バーナ22の燃焼により加熱された空気を吹き出し口23から吹き出すことにより、暖房対象空間を暖房するガスファンヒータにて構成されている。
【0062】
このガスファンヒータには、供給されるガス燃料を燃焼させるバーナ22と、そのバーナ22を点火するイグナイタ24と、バーナ22へガス燃料を供給する燃料供給状態とバーナ22へのガス燃料の供給を停止する燃料供給停止状態とに切り換え自在な各種の制御弁(図示省略)と、バーナ22に燃焼用空気を供給する送風ファン26と、ガスファンヒータの運転を制御する運転制御部27と、運転制御部27に各種の制御指令等を指令する操作部28とが備えられている。
【0063】
バーナ22は、背面の上方側に吸気口21を備え且つ前面の下方側に吹き出し口23を備えたケーシング29内に収納されている。ケーシング29内には、吸気口21を通して吸い込まれた空気の一部をバーナ22に燃焼用空気として供給し、残りの一部をバーナ22の燃焼ガスと混合させた状態で吹き出し口23に導くように、内部風路30が形成されている。吸気口21には、エアフィルタ31が設けられ、塵埃等のケーシング29内への侵入を抑制している。
【0064】
送風ファン26は、吸気口21に対して吸い込み作用し、且つ、その吐出部を吹き出し口23に臨ませた状態で、内部風路30の途中に設けられている。これにより、ガスファンヒータは、吸気口21を通して吸い込んだ暖房対象空間の空気中にバーナ22の燃焼ガスを混合させて温風を生成し、その温風を吹き出し口23から暖房対象空間に吹き出して、暖房対象空間を暖房するように構成されている。
【0065】
イグナイタ24は、バーナ22の炎口(図示省略)の上方に設けられ、バーナ22の着火を検出する熱電対32も、バーナ22の炎口の上方に設けられている。熱電対32は、バーナ22にて形成される火炎に対して接触するように設けられている。また、図示を省略するが、バーナ22への燃料供給路33には、その燃料供給路33を開閉する電磁式の開閉弁、及び、バーナ22への燃料供給量を調整する電磁式の比例弁等の制御弁が設けられている。燃料供給路33は、例えば、都市ガス(13A等、メタンガス(CH4)を主成分とするガス)が供給される都市ガス管(図示省略)に接続されており、都市ガスがバーナ22に供給されるように構成されている。
【0066】
ガスファンヒータには、本発明に係るガス検出装置であるCOセンサ1が備えられている。COセンサ1は、吸気口21を通して吸い込まれるケーシング29外の空気中のCOガスの濃度を検出するように、ケーシング29の背面部において吸気口21の近傍に設けられている。
【0067】
操作部28には、図示を省略するが、ガスファンヒータの運転開始及び運転停止を指令する運転スイッチ、異常等を報知する異常報知ブザー、暖房目標温度を設定する温度設定部、暖房目標温度、室内温度等の各種情報を表示する表示部等が備えられている。運転スイッチは、押し操作が繰り返される毎に、運転開始と運転停止とが交互に指令されるように構成されている。
【0068】
運転制御部27は、運転スイッチによる運転開始の指令により、送風ファン26、燃料供給路に備えられた制御弁及びイグナイタ24等の作動を制御することにより、バーナ22の燃焼を開始させるとともに、COセンサ1への電力供給を開始してCOセンサ1によるCOガスの濃度の検出を開始している。また、運転制御部27は、運転スイッチによる運転停止の指令により、送風ファン26及び燃料供給路に備えられた制御弁等の作動を制御することにより、バーナ22の燃焼を停止させるとともに、COセンサ1への電力供給を停止してCOセンサ1によるCOガスの濃度の検出を停止している。そして、運転制御部27は、バーナ22の燃焼中には、図外の温度センサ等により検出する温度が温度設定部にて設定された暖房目標温度となるように、燃料供給路33に備えられた比例弁の開度を調整している。
【0069】
COセンサ1は、運転スイッチによる運転開始の指令により運転制御部27によって電力供給が開始されることにより、図1に示すように、ヒータ制御部10が、タイマー12にて計測する時間に基づいて、高温状態を高温用設定時間(例えば60秒)継続させたのち、低温状態を低温用設定時間(例えば90秒)継続させる動作を1サイクルとして、そのサイクルを繰り返し行う。そして、CO検出部13は、低温状態の終了期(次のサイクルの高温状態とする直前)におけるガス検出部3の電気抵抗値に基づいて、COガスの濃度を検出し、その検出したCOガスの濃度を示す濃度情報を運転制御部27に出力する。運転制御部27は、バーナ22の燃焼中に、COセンサ1から出力される濃度情報に基づいてCOガスの濃度を監視しており、COガスの濃度が異常閾値以上となると、バーナ22の燃焼を停止させるとともに、異常報知ブザーを作動させるように構成されている。これにより、COガスの濃度が異常閾値以上となっているにもかかわらず、バーナ22の燃焼が継続されることを防止して、さらにCOが発生するのを防止している。
【0070】
一方、COセンサ1の判定部14は、運転制御部27によって電力供給が開始されることにより、図5のフローチャートにて示した如く、その電力供給の開始から遅延期間が経過するまでは、清浄空気判定処理を行わず、電力供給の開始から遅延期間が経過したのち、清浄空気判定処理、シロキサン被毒判定処理及び水分吸着判定処理を行う。これにより、上述した如く、COセンサ1に電源2からの電力供給が開始された当初でのシロキサン被毒判定処理にて誤った判定が行われることを防止している。このように、COセンサ1に対して電力供給を断続させる機器においては、電力供給の開始から遅延期間が経過することをもって、清浄空気判定処理、シロキサン被毒判定処理及び水分吸着判定処理を行うことで、シロキサン被毒状態を正確に判定することができ、有効な効果となる。
【0071】
判定部14は、図5のフローチャートにて示した如く、シロキサン被毒判定処理にてシロキサン被毒状態であると判定すると、シロキサン被毒異常として、シロキサン被毒状態であることを認識可能な異常信号を出力するが、この異常信号を運転制御部27に出力する。また、判定部14は、水分吸着判定処理にて水分吸着状態であると判定すると、水分吸着異常として、水分吸着状態であることを認識可能な異常信号を出力するが、この異常信号を運転制御部27に出力する。これにより、運転制御部27は、COセンサ1からの異常信号の入力により、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態が発生しているとして異常報知ブザーを作動させるとともに、シロキサン被毒状態又は水分吸着状態を発生しているという異常内容を表示部に表示させている。
【0072】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、判定部14が、シロキサン被毒判定処理において、高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の基準抵抗値Roに対する比Rair30/Roが正常範囲(5倍〜48倍の範囲)よりも低いと、電気抵抗値が正常範囲よりも低下しているとして、シロキサン被毒状態と判定するが、この構成に限らず、高温状態の中間期から終了期における電気抵抗値と正常範囲とを比較することで、シロキサン被毒状態を判定することができる。例えば、高温状態の30秒目から60秒目までの電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roの平均値が正常範囲よりも低いと、シロキサン被毒状態と判定することができる。
【0073】
(2)上記実施形態では、判定部14が、水分吸着判定処理において、高温状態の30秒目における電気抵抗値Rair30の基準抵抗値Roに対する比Rair30/Roが正常範囲(5倍〜48倍の範囲)よりも高いと、電気抵抗値が正常範囲よりも増大しているとして、水分吸着状態と判定するが、この構成に限らず、高温状態の中間期から終了期における電気抵抗値と正常範囲とを比較することで、水分吸着状態を判定することができる。例えば、高温状態の30秒目から60秒目までの電気抵抗値Rsの基準抵抗値Roに対する比Rs/Roの平均値が正常範囲よりも高いと、水分吸着状態と判定することができる。
【0074】
(3)上記実施形態では、判定部14が、シロキサン被毒判定処理及び水分吸着判定処理の双方を行うが、シロキサン被毒判定処理の一方のみ行ったり、水分吸着判定処理の一方のみ行うようにすることもできる。
【0075】
(4)上記実施形態では、本発明に係る機器として、本発明に係るCOセンサ1を備えたガスファンヒータを例示したが、例えば、本発明に係るCOセンサ1を警報器に備えることもでき、各種の機器に本発明に係るCOセンサ1を備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を高温状態と低温状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記低温状態にある前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出する制御部とを備え、シロキサン被毒や水分吸着が生じている状態を判定することができながら、COガス等の検出対象ガスの濃度を適正に検出することができる各種のガス検出装置に適応可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 ガス検出装置(COセンサ)
3 ガス検出部
4 ヒータ(加熱部)
5 制御部
14 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するガス検出部と、前記ガス検出部を加熱する加熱部と、前記ガス検出部を高温状態と低温状態とに交互に繰り返し切り換えるように前記加熱部の作動を制御するとともに、前記低温状態にある前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出する制御部とを備えたガス検出装置であって、
前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて、前記ガス検出部の周囲が清浄空気であるか否かを判定する清浄空気判定処理を行い、その清浄空気判定処理にて清浄空気であると判定した場合に、高温状態における前記ガス検出部の電気抵抗値が正常範囲よりも低下していることを検出するとシロキサン被毒状態であると判定するシロキサン被毒判定処理、及び、高温状態における前記ガス検出部の電気抵抗値が正常範囲よりも増大していることを検出すると水分吸着状態であると判定する水分吸着判定処理の少なくとも一方を行う判定部を備えているガス検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記水分吸着判定処理において、高温状態における前記ガス検出部の電気抵抗値が上昇傾向にあることを検出すると、水分吸着状態であると判定する請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記シロキサン被毒判定処理において、高温状態の中間期から終了期までの期間における前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲よりも低下しているか否かを検出してシロキサン被毒状態を判定する請求項1又は2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記水分吸着判定処理において、高温状態の中間期から終了期までの期間における前記ガス検出部の電気抵抗値に基づいて、その電気抵抗値が正常範囲より増大しているか否かを検出して水分吸着状態を判定する請求項1〜3の何れか1項に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、電力供給の開始により前記加熱部の作動を制御して検出対象ガスの検出を開始するように構成され、前記判定部は、電力供給の開始から遅延期間が経過するまでは前記清浄空気判定処理を行わず、電力供給の開始から遅延期間が経過したのち、前記清浄空気判定処理を行うように構成されている請求項1〜4の何れか1項に記載のガス検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のガス検出装置を備えた機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−137719(P2011−137719A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297932(P2009−297932)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【出願人】(000112439)フィガロ技研株式会社 (58)
【Fターム(参考)】