説明

ガス検出装置及びガス検出装置の温度補正方法

【課題】異なる温度特性を持つガスセンサでも周囲温度の影響を排除した検出出力を得ることができる接触燃焼式ガスセンサを用いたガス検出装置およびその温度補正方法を提供すること。
【解決手段】センサ素子(Ss)及び比較素子(Sr)を有する接触燃焼式ガスセンサ(S)から出力されるガスセンサ出力に基づいてガス濃度を検出するガス検出装置であって、接触燃焼式ガスセンサ(S)の周囲温度を検出する温度センサ(St)と、検知対象ガスが存在しない雰囲気中で周囲温度の変化に対する温度センサ(St)のセンサ出力および接触燃焼式ガスセンサ(S)のセンサ出力の温度特性を測定して求めたそれらの相関式を記憶する記憶手段(5B)と、ガス検出時に、温度センサ(St)のセンサ出力及び前記相関式に基づいて接触燃焼式ガスセンサ(S)のセンサ出力を温度補正してガス濃度を検出するガス濃度検出手段(5A)と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式ガスセンサを用いたガス検出装置およびその温度補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した従来のガス検出装置として、例えば図8に示されたものが一般的に知られている。同図に示すように、ガス検出装置は、接触燃焼式ガスセンサを構成するセンサ素子Ssと比較素子Srとを有している。センサ素子Ssは、白金コイルと、この白金コイルに塗布した、検知対象ガスとの接触燃焼を促進する触媒層とで構成されている。比較素子Srは、白金コイルと、この白金コイルに塗布した、検知対象ガスに反応しないアルミナ層とで構成されている。
【0003】
センサ素子Ssと、比較素子Srは、検知対象ガスのない空気中では等しい抵抗値になるように設けられている。センサ素子Ss及び比較素子Srは、抵抗Ra、Rb2と共にブリッジ回路を構成している。このブリッジ回路には、定電圧源E0が供給され、それにより、センサ素子Ssが、加熱されて検知対象ガスと接触燃焼する。
【0004】
上述の構成では、検知対象ガスのない空気中では、ブリッジ回路が平衡となるように(すなわち、接続点a及びb間に現れるガスセンサ出力電圧Vsがゼロとなるように、すなわち、エアベース値がゼロとなるように、抵抗Ra及びRbが設定されている。これに対して、検知対象ガスを含む空気中では、検知対象ガスとの接触燃焼による熱でセンサ素子Ssの温度が上昇し、これに伴ってセンサ素子Ssの抵抗値が増加するが、ガスを検知しない比較素子Srの抵抗値は温度上昇せず、したがって抵抗値も上昇しないため、ブリッジ回路が不平衡状態となり、接続点a及びb間に表れるガスセンサ出力電圧Vsは、検知対象ガスの濃度に応じた電圧値となる。
【0005】
上述のガス検出装置は、接触燃焼式ガスセンサのセンサ素子Ssとガスを検知しないレファ素子(R)との温度差によって生じる抵抗差を電圧差によって検出し、検知対象ガスの有無を判別している。このため、周囲温度に大きな変化があった場合、センサ素子Ssと比較素子Srの熱バランスが崩れやすいセンサの場合、保証温度範囲内でもエアベース値がゼロとならず、ガス濃度の検出精度に影響を及ぼす場合がある。特に、ガスセンサの小型化に伴い、上述の理由から感度のS/N比が低くなり、この影響が大きくなる。
【0006】
図9は、接触燃焼式ガスセンサA〜Eをそれぞれ用いたガス検出装置で構成されたガス警報器における周囲温度とガス警報濃度の関係の測定例を示す表である。この表では、常温20℃におけるメタンガスの警報濃度が3000ppmである複数の接触燃焼式ガスセンサA〜Eにおいて、保証温度範囲内の低温度−10℃と高温度+50℃の時の警報濃度が変化していることが示されており、それぞれが異なる温度特性を有していることが分かる。例えば、センサAは、−10℃では4560ppmが警報濃度となって、20℃時よりも鈍化し、+50℃では2470ppmが警報濃度となって、20℃時よりも鋭敏化する。これらの温度特性の相違は、センサ素子と比較素子のコイル及び触媒のバランスによって生じる温度特性のばらつきに起因して生じるものと思われる。
【0007】
このような周囲温度の変化に対するエアベース値の変動の影響を軽減するために、接触燃焼式ガスセンサとは別個に温度センサを付加したガス検出装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【0008】
図10は、このような従来のガス検出装置の構成例を示す回路図である。図10のガス検出装置においては、比較素子Srとセンサ素子S1からなる直列回路と、可変抵抗Roと感熱素子(温度センサ)PTからなる直列回路がブリッジ回路を構成し、これらの直列回路に、抵抗R3,R5と零点調整用の可変抵抗R4からなる直列回路が並列に接続され、比較素子Srとセンサ素子S1殿接続点が増幅器Ad1の正相入力端子に接続され、可変抵抗R4のタップが誤差増幅器Ad1,Ad2の反転入力端子にそれぞれ接続され、可変抵抗Roと感熱素子(温度センサ)PTとの接続点が抵抗R6を介して差動増幅器A1の反転入力端子に接続され、その出力端子が抵抗R8を介して差動増幅器A2の反転入力端子に接続され、それらの出力端子間に接続された可変抵抗R10のタップが誤差増幅器Ad2の正相入力端子に接続され、誤差増幅器Ad1,Ad2の出力端子は抵抗R11,R12を介して加算器Aaに入力され、温度補正された出力電圧Vaを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−242046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図10に示した温度センサを付加したガス検出装置は、周囲温度の変化に対するエアーベース値の変動がそれぞれ単調増加または単調減少するような一様なガスセンサの場合は適用可能である。しかしながら、周囲温度によって変動する警報濃度の変化の様子が単調増加または単調減少するような一様なものだけではなく、図9に示すように様々な変化を呈している異なる温度特性を有するガスセンサA〜Eのような接触燃焼式ガスセンサに対しては、図10のガス検出装置は、その回路構成上、全てのガスセンサに対して適用することができない。
【0011】
そこで本発明は、上述した課題に鑑み、異なる温度特性を持つガスセンサでも周囲温度の影響を排除した検出出力を得ることができる接触燃焼式ガスセンサを用いたガス検出装置およびその温度補正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、センサ素子及び比較素子を有する接触燃焼式ガスセンサから出力されるガスセンサ出力に基づいてガス濃度を検出するガス検出装置の温度補正方法であって、前記接触燃焼式ガスセンサの周囲温度を検出する温度センサを設け、検知対象ガスが存在しない雰囲気中で周囲温度の変化に対する前記温度センサのセンサ出力および前記接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力の温度特性を測定してそれらの相関式を求めて予め記憶し、ガス検出時に、前記温度センサのセンサ出力及び前記相関式に基づいて前記接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力を温度補正してガス濃度を検出することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、センサ素子(Ss)及び比較素子(Sr)を有する接触燃焼式ガスセンサ(S)から出力されるガスセンサ出力に基づいてガス濃度を検出するガス検出装置であって、前記接触燃焼式ガスセンサ(S)の周囲温度を検出する温度センサ(St)と、検知対象ガスが存在しない雰囲気中で周囲温度の変化に対する前記温度センサ(St)のセンサ出力および前記接触燃焼式ガスセンサ(S)のセンサ出力の温度特性を測定して求めたそれらの相関式を記憶する記憶手段(5B)と、ガス検出時に、前記温度センサ(St)のセンサ出力及び前記相関式に基づいて前記接触燃焼式ガスセンサ(S)のセンサ出力を温度補正してガス濃度を検出するガス濃度検出手段(5A)と、を備えている。
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、請求項2記載のガス検出装置において、前記温度センサ(St)は、前記接触燃焼式ガスセンサ(S)が駆動されていない期間に駆動されることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の発明は、請求項2または3記載のガス検出装置において、前記接触燃焼式ガスセンサ(S)は、第1のブリッジ回路(1)で構成されて定電圧で駆動され、前記温度センサ(St)は、定電流で駆動されることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載の発明は、請求項2または3記載のガス検出装置において、前記接触燃焼式ガスセンサ(S)は、第1のブリッジ回路(1)で構成されて第1の定電圧で駆動され、前記温度センサ(St)は、第2のブリッジ回路(3)で構成されて前記第1の定電圧より低い第2の定電圧で駆動されることを特徴とする。
【0017】
なお、上述の課題を解決するための手段の説明におけるかっこ書きの参照符号は、以下の発明の実施の形態の説明における構成要素の参照符号に対応しているが、これらは、特許請求の範囲の解釈を限定するものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1及び2記載の発明によれば、センサ素子及び比較素子を有する接触燃焼式ガスセンサ接触燃焼式ガスセンサの周囲温度を検出する温度センサを設け、検知対象ガスが存在しない雰囲気中で周囲温度の変化に対する温度センサのセンサ出力および接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力の温度特性を測定してそれらの相関式を求めて予め記憶し、ガス検出時に、温度センサのセンサ出力及び相関式に基づいて接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力を温度補正してガス濃度を検出するので、異なる温度特性を有するどんな接触燃焼式ガスセンサを使用した場合でもエアーベースの変動による影響を無くした精度の良いガス検出を行うことができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、温度センサは、接触燃焼式ガスセンサが駆動されていない期間に駆動されるので、接触燃焼式ガスセンサの輻射熱の影響を受けることがない。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、接触燃焼式ガスセンサは、第1のブリッジ回路で構成されて定電圧で駆動され、温度センサは、定電流で駆動されるので、精度が良くかつ電力消費の少ないガス検出を行うことができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、接触燃焼式ガスセンサは、第1のブリッジ回路で構成されて第1の定電圧で駆動され、温度センサは、第2のブリッジ回路で構成されて第1の定電圧より低い第2の定電圧で駆動されるので、精度が良くかつ電力消費の少ないガス検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明で使用される接触燃焼式ガスセンサの要部構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態に係るガス検出装置の構成を示す回路図である。(第1の実施形態)
【図3】図2のガス検出装置における各部信号のタイミングチャートである。(第1の実施形態)
【図4】図2のガス検出装置で使用される接触燃焼式ガスセンサの温度特性測定手順を示すフローチャートである。(第1の実施形態)
【図5】図2のガス検出装置におけるガス検出処理手順を示すフローチャートである。(第1の実施形態)
【図6】本発明に係る第2の実施形態に係るガス検出装置の構成を示す回路図である。(第2の実施形態)
【図7】図6のガス検出装置における各部信号のタイミングチャートである。(第2の実施形態)
【図8】従来のガス検出装置の構成例を示す回路図である。
【図9】接触燃焼式ガスセンサを用いたガス検出装置で構成されたガス警報器における周囲温度とガス警報濃度の関係の測定例を示す表である。
【図10】従来のガス検出装置の他の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明で使用される接触燃焼式ガスセンサの要部構成例を示す図である。本発明では、ガスセンサのパッケージ内に、センサ素子、比較素子とは別個に金属線あるいはヒータ状の温度センサを設ける。
【0025】
図1(A)は、ビーズ型接触燃焼式ガスセンサの構成例であり、ガスセンサSを構成するセンサ素子Ss(または比較素子Sr)のビーズに金属線の温度センサStが埋め込まれたものを示している。センサ素子Ss(または比較素子Sr)及び温度センサStの出力は、センサベースS2を貫通するピンS3、S4から取り出される。
【0026】
図1(B)は、ビーズ型の接触燃焼式ガスセンサの他の構成例であり、ガスセンサSを構成するセンサ素子Ss(または比較素子Sr)のビーズの近傍に温度センサStが配置されたものを示している。センサ素子Ss(または比較素子Sr)および温度センサStの出力は、センサベースS2を貫通するピンS3、S4から取り出される。
【0027】
図1(C)は、マイクロセンサ型接触燃焼式ガスセンサの構成例であり、ガスセンサSは、触媒層S6で覆われたヒータからなるセンサ素子Ssと、触媒層で覆われていないヒータからなる比較素子Srと、比較素子Srの近傍に配置されたヒータからなる温度センサStを有するものである。
【0028】
図1(C)は、マイクロセンサ型接触燃焼式ガスセンサの構成例であり、ガスセンサSは、シリコン基板S5上に設けられた、触媒層S6で覆われたヒータからなるセンサ素子Ssと、触媒層で覆われていないヒータからなる比較素子Srと、比較素子Srの近傍にパターンとして設けられたヒータからなる温度センサStを有するものである。
【0029】
図1(D)は、マイクロセンサ型接触燃焼式ガスセンサの他の構成例であり、ガスセンサSは、シリコン基板S5上に設けられた、触媒層S6で覆われたヒータからなるセンサ素子Ssと、触媒層で覆われていないヒータからなる比較素子Srと、センサ素子Ss及び比較素子Srから離れた位置にパターンとして設けられたヒータからなる温度センサStを有するものである。
【0030】
次に、図1に示す構成の接触燃焼式ガスセンサSを用いて本発明に係る温度補正方法を実施するガス検出装置について説明する。
【0031】
(第1の実施形態)図2は、本発明に係る温度補正方法を実施するガス検出装置の第1の実施形態における構成を示す回路図、図3は、ガス検出装置における各部信号のタイミングチャートである。ガス検出装置は、接触燃焼式ガスセンサSのセンサ素子Ssと比較素子Srからなる直列回路と、抵抗Ra及びRbからなる直列回路とで構成されるブリッジ回路1と、ブリッジ回路1に電源を供給してセンサ素子Ss及び比較素子Srを加熱すると共に、接触燃焼式ガスセンサSの温度センサStを加熱する加熱手段としての加熱回路4と、マイクロコンピュータ5(以下、μCOM5と記す)と、ブリッジ回路1の接続点a及びb間の電圧(ガスセンサ出力)を検出する差動増幅器6と、温度センサStの両端電圧(温度センサ出力)を検出する差動増幅器7と、ガスセンサ出力及び温度センサ出力の検出タイミングを指示する検出タイマ7A、7Bとを備えている。
【0032】
加熱回路4は、バッテリなどからなる電源回路41と、電源回路41から電源供給を受けてブリッジ回路1へ定電圧V1を供給する定電圧回路43と、電源回路41から電源供給を受けて温度センサStへ定電流I1を供給する定電流回路45を有する。
【0033】
また、加熱回路4は、電源回路41と定電圧回路43の間に設けられた電子スイッチ等からなるスイッチ42と、電源回路41と定電流回路45の間に設けられた電子スイッチ等からなるスイッチ44と、スイッチ42及び44のオン/オフを制御するタイマ駆動回路46を有する。タイマ駆動回路46は、期間T1の間Hレベル、期間T2の間Lレベルとなるオン信号S1と、期間T3(=T1)の間Hレベル、期間T4(=T2)の間Lレベルとなるオン信号S2を出力する。オン信号S2がHレベルとなる期間T3は、オン信号S1がLレベルとなる期間T2中に位置するように設定される。
【0034】
また、上述したオン信号S1、S2は各々、検出タイマ7A、7Bに供給される。検出タイマ7A、7Bは各々、オン信号S1、S2をΔT1、ΔT2だけ遅延した検出タイミング信号S3、S4をμCOM5に対して供給する。
【0035】
μCOM5は、処理プログラムに従って各種の処理を行うCPU5Aと、CPU5Aが行う処理のプログラムなどを格納した読出専用メモリであるROM5Bと、CPU5Aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読出書込自在のメモリであるRAM5Cを有している。
【0036】
次に、上述した構成のガス検出装置の動作を図3〜図5を参照しながら以下に説明する。
【0037】
ガス検出装置は、製造段階の出荷時の検査工程等において、検知対象ガスが存在しない雰囲気を有する環境試験室に入れられ、ガス検出装置の周囲温度を保証温度範囲内で段階的に可変しながらガスセンサ出力を測定することにより、ガス検出装置で使用されている接触燃焼式ガスセンサの温度特性が測定される。図4は、ガス検出装置で使用されている接触燃焼式ガスセンサの温度特性測定手順を示すフローチャートである。
【0038】
まず、CPU5Aは、電源投入に応じて動作を開始し、タイマ駆動回路46の動作を開始させる(ステップS1)。
【0039】
これにより、タイマ駆動回路46が動作を開始し、スイッチ42及び44に対してオン信号S1及びS2を出力する。オン信号S1における期間T1のHレベル時にスイッチ42がオンすると、定電圧回路43が電源回路41に接続され、ブリッジ回路1に定電圧V1が供給される。それにより、センサ素子Ssに電流が流れ、センサ素子Ssは、期間T1の間、検知対象ガスと接触燃焼する高温に加熱される。その後、オン信号S1における期間T2のLレベル時にスイッチ42がオフになり、センサ素子Ssに対する電流の供給が停止される。
【0040】
一方、オン信号S2における期間T3のHレベル時にスイッチ44がオンすると、定電流回路45が電源回路41に接続され、温度センサStに定電流I1が供給される。それにより、温度センサStに電流が流れ、温度センサStは加熱される。その後、オン信号S2における期間T4のLレベル時にスイッチ44がオフになり、温度センサStに対する電流の供給が停止される。
【0041】
次に、周囲温度をガス検出装置の保証温度範囲内で所定の温度間隔で可変させる(ステップS2)。
【0042】
次に、所定の温度間隔で可変された各周囲温度時におけるガスセンサSのセンサ出力を順次CPU5Aで読み込み(ステップS3)、続いて、同じ周囲温度時の温度センサStのセンサ出力を順次CPU5Aで読み込む(ステップS4)。
【0043】
この読み込み動作は次のように行われる。すなわち、検出タイマ7A、7Bは、それぞれ上述したオン信号S1、S2をΔT1、ΔT2だけ遅延した検出信号S3、S4を出力する。CPU5Aは、検出信号S3が立ち上がると、差動増幅器6から出力されるガスセンサ出力電圧Vs1を読み込み、RAM5C内に格納する。また、CPU5Aは、検出信号S4が立ち上がると、差動増幅器7から出力される温度センサ出力電圧Vr1を読み込み、RAM5C内に格納する。
【0044】
次に、CPU5Aは、ステップS3及びS4で読み込まれた複数のガスセンサ出力電圧データによる温度特性と複数の温度センサ出力電圧データによる温度特性とに基づいて、ガスセンサ出力と温度センサ出力の相関式を算出してROM5B内に格納し(ステップS5)、次いで処理を終了する。格納された相関式は、周囲温度の変化に対するエアベース値の変動を表す式として、後述するガス濃度検出処理において温度補正を行うために利用される。
【0045】
次に、ガス検出装置におけるガス検出処理手順について説明する。図5は、ガス検出装置のガス検出処理手順を示すフローチャートである。
【0046】
まず、CPU5Aは、電源投入に応じて動作を開始し、タイマ駆動回路46の動作を開始させる(ステップS11)。
【0047】
これにより、タイマ駆動回路44が動作を開始し、スイッチ42及び44に対してオン信号S1及びS2を出力する。オン信号S1における期間T1のHレベル時にスイッチ42がオンすると、定電圧回路43が電源回路41に接続され、ブリッジ回路1に定電圧V1が供給される。それにより、センサ素子Ssに電流が流れ、センサ素子Ssは、期間T1の間、検知対象ガスと接触燃焼する高温に加熱される。その後、オン信号S1における期間T2のLレベル時にスイッチ42がオフになり、センサ素子Ssに対する電流の供給が停止される。
【0048】
一方、オン信号S2における期間T3のHレベル時にスイッチ44がオンすると、定電流回路45が電源回路41に接続され、温度センサStに定電流I1が供給される。それにより、温度センサStに電流が流れ、温度センサStは加熱される。その後、オン信号S2における期間T4のLレベル時にスイッチ44がオフになり、温度センサStに対する電流の供給が停止される。
【0049】
次に、接触燃焼式ガスセンサSのセンサ出力VsをCPU5Aで読み込み(ステップS12)、続いて、温度センサStのセンサ出力VrをCPU5Aで読み込む(ステップS13)。次に、CPU5Aは、ステップS13で読み込まれた温度センサ出力電圧値Vrと上述の相関式とを利用して、相関式における温度センサ出力電圧値Vr1に対応するガスセンサ出力電圧値Vs1を求め、求めたガスセンサ出力電圧値Vs1はガス検出時のエアーベース値に相当するので、このVs1を温度補正値としてセンサ出力Vsから減算して補正する(ステップS14)。次に、補正後のガスセンサ出力値(Vs−Vs1)と、ROM5Bに予め格納されているガスセンサ出力値とガス濃度の対応テーブルを参照してガス濃度を算出し(ステップS15)、次いで処理を終了する。
【0050】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、センサ素子及び比較素子を有する接触燃焼式ガスセンサとは別個に温度センサを備え、接触燃焼式ガスセンサ及び温度センサの温度特性を測定してそれらの相関式を求めて記憶手段に予め記憶しておき、ガス検出時に温度センサ出力と相関式とを利用してエアーベース値を求め、求めたエアーベース値を温度補正値としてガスセンサ出力より減算してガス濃度を算出するので、周囲温度によりエアーベース値が変動するどんな接触燃焼式ガスセンサを使用しても、保証温度範囲内でエアーベースの変動による影響を無くした精度の良いガス検出を行うことができる。また、温度センサStは、接触燃焼式ガスセンサSが駆動されていないときに駆動されるので、接触燃焼式ガスセンサの輻射熱の影響を受けることが無く、精度の良いガス検出を行うことができる。
【0051】
したがって、このようなガス検出装置をガス警報器に用いた場合、基本的にはエアベースの変動は0に近い値とみなせることになり、警報濃度も保証温度範囲内で初期の設定値とほとんど変わらなくなり、感度のS/Nが低くならず精度の良い警報動作を実現することができる。
【0052】
(第2の実施形態)次に、図6は、本発明に係る温度補正方法を実施するガス検出装置の第2の実施形態における構成を示す回路図、図7は、ガス検出装置における各部信号のタイミングチャートである。ガス検出装置は、接触燃焼式ガスセンサSのセンサ素子Ssと比較素子Srからなる直列回路と、抵抗Ra及びRbからなる直列回路とで構成されるブリッジ回路1と、温度センサStと抵抗Rcからなる直列回路と、抵抗Rd及びReからなる直列回路とで構成されるブリッジ回路3と、ブリッジ回路1及び3に電源を供給してセンサ素子Ss、比較素子Sr及び温度センサStを加熱する加熱手段としての加熱回路4と、マイクロコンピュータ5(以下、μCOM5と記す)と、ブリッジ回路1の接続点a及びb間の電圧(ガスセンサ出力)を検出する差動増幅器6と、ブリッジ回路3の接続点c及びd間の電圧(温度センサ出力)を検出する差動増幅器7と、ガスセンサ出力及び温度センサ出力の検出タイミングを指示する検出タイマ7A、7Bとを備えている。
【0053】
加熱回路4は、バッテリなどからなる電源回路41と、電源回路41から電源供給を受けてブリッジ回路1へ定電圧V1を供給する定電圧回路43と、電源回路41から電源供給を受けて温度センサStへ定電圧V2(<V1)を供給する定電圧回路47を有する。
【0054】
また、加熱回路4は、電源回路41と定電圧回路43の間に設けられた電子スイッチ等からなるスイッチ42と、電源回路41と定電圧回路47の間に設けられた電子スイッチ等からなるスイッチ44と、スイッチ42及び44のオン/オフを制御するタイマ駆動回路46を有する。タイマ駆動回路46は、期間T1の間Hレベル、期間T2の間Lレベルとなるオン信号S1と、期間T3(=T1)の間Hレベル、期間T4(=T2)の間Lレベルとなるオン信号S2を出力する。オン信号S2がHレベルとなる期間T3は、オン信号S1がLレベルとなる期間T2中に位置するように設定される。
【0055】
また、上述したオン信号S1、S2は各々、検出タイマ7A、7Bに供給される。検出タイマ7A、7Bは各々、オン信号S1、S2をΔT1、ΔT2だけ遅延した検出タイミング信号S3、S4をμCOM5に対して供給する。
【0056】
μCOM5は、処理プログラムに従って各種の処理を行うCPU5Aと、CPU5Aが行う処理のプログラムなどを格納した読出専用メモリであるROM5Bと、CPU5Aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読出書込自在のメモリであるRAM5Cを有している。
【0057】
次に、上述した構成の第2の実施形態に係るガス検出装置の動作は、上述の第1の実施形態と同様であるが、この第2の実施形態では、温度センサStをブリッジ回路3で駆動すると共に、その駆動電圧V2を、接触燃焼式ガスセンサSのブリッジ回路1を駆動する駆動電圧V1より低い電圧としているので、さらに精度が良くかつ電力消費の少ないガス検出を行うことができる。
【0058】
以上の通り、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0059】
たとえば、上述の第1及び第2の実施形態において、温度センサStを駆動する定電流I1及び定電圧V2は、任意の使用期間において温度検知に影響を与えるほどの抵抗変化を生じない程度の低い電流または電圧とすることができる。
【0060】
また、上述の第1及び第2の実施形態において、接触燃焼式ガスセンサが駆動されていない期間に温度センサが駆動されるようにしているが、温度センサが接触燃焼式ガスセンサの輻射熱の影響を受けない場所に配置されている場合は、接触燃焼式ガスセンサと温度センサを同時駆動するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0061】
S 接触燃焼式ガスセンサ
Ss センサ素子
Sr 比較素子
St 温度センサ
1 ブリッジ回路(第1のブリッジ回路)
3 ブリッジ回路(第2のブリッジ回路)
5A CPU(ガス濃度検出手段)
5B ROM(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子及び比較素子を有する接触燃焼式ガスセンサから出力されるガスセンサ出力に基づいてガス濃度を検出するガス検出装置の温度補正方法であって、
前記接触燃焼式ガスセンサの周囲温度を検出する温度センサを設け、検知対象ガスが存在しない雰囲気中で周囲温度の変化に対する前記温度センサのセンサ出力および前記接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力の温度特性を測定してそれらの相関式を求めて予め記憶し、ガス検出時に、前記温度センサのセンサ出力及び前記相関式に基づいて前記接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力を温度補正してガス濃度を検出することを特徴とするガス検出装置の温度補正方法。
【請求項2】
センサ素子及び比較素子を有する接触燃焼式ガスセンサから出力されるガスセンサ出力に基づいてガス濃度を検出するガス検出装置であって、
前記接触燃焼式ガスセンサの周囲温度を検出する温度センサと、
検知対象ガスが存在しない雰囲気中で周囲温度の変化に対する前記温度センサのセンサ出力および前記接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力の温度特性を測定して求めたそれらの相関式を記憶する記憶手段と、
ガス検出時に、前記温度センサのセンサ出力及び前記相関式に基づいて前記接触燃焼式ガスセンサのセンサ出力を温度補正してガス濃度を検出するガス濃度検出手段と、
を備えていることを特徴とするガス検出装置。
【請求項3】
請求項2記載のガス検出装置において、
前記温度センサは、前記接触燃焼式ガスセンサが駆動されていない期間に駆動されることを特徴とするガス検出装置。
【請求項4】
請求項2または3記載のガス検出装置において、
前記接触燃焼式ガスセンサは、第1のブリッジ回路で構成されて定電圧で駆動され、前記温度センサは、定電流で駆動されることを特徴とするガス検出装置。
【請求項5】
請求項2または3記載のガス検出装置において、
前記接触燃焼式ガスセンサは、第1のブリッジ回路で構成されて第1の定電圧で駆動され、前記温度センサは、第2のブリッジ回路で構成されて前記第1の定電圧より低い第2の定電圧で駆動されることを特徴とするガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−256172(P2010−256172A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106599(P2009−106599)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】