説明

ガス検知器

【課題】吸引口が水没したとしても故障する事のないガス検知器を提供する。
【解決手段】ガスを検知するガスセンサ11と、一端がガスセンサ11に接続され、他端がガスを吸引する吸引口21である吸引パイプ20と、吸引パイプ20の中間に接続された封水トラップ40とを備えるガス検知器であって、封水トラップ40は、吸引パイプ20内が一定以上の負圧になると、外気を前記吸引パイプ20内に取り込む。通常時は吸引口21からガスを吸引しガス検知を行うことができる。吸引口21が水没した場合には外気が吸引パイプ20内に取り込まれるため、吸引口21から水が吸引されガスセンサ11に到達することがなく、ガスセンサ11が故障することがない。また、漏洩したガスが混合された外気が取り込まれるので、通常時と同様にガス検知器を継続することができ、安全確保の効果が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知器に関する。さらに詳しくは、水没の可能性のある場所でガス漏洩を検知するためのガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工場などにおいては、ガスなどを送るためのパイプが、パイプ敷設溝内に配管されている。そのパイプでナフサなどの可燃性ガスを送ることもあり、その場合にはパイプからガス漏れが発生していると危険であるために、一般にはガス漏洩を検知するためのガス検知器が随所に設けられている。
【0003】
そのガス検知器は一般に、図5に示すような構成をしている。ガス検知器本体10はガスセンサ11とフィルタ12とからなり、フィルタ12のガス出力側にガスセンサ11のガス入力側が接続されている。フィルタ12のガス入力側には吸引パイプ20の一端が接続されている。吸引パイプ20の他端は吸引口21となっており、その吸引口21がパイプ敷設溝B内で開口するように、設置されている。一方、ガスセンサ11のガス出力側にはエジェクタ30が接続されている。
【0004】
エジェクタ30によりガスセンサ11のガス出力側を負圧にすると、吸引口21からパイプA周辺の空気を吸引し、その空気は吸引パイプ20およびフィルタ12を通りガスセンサ11に到達する。そのため、パイプAからガスが漏洩している場合には、ガスセンサ11においてガス漏洩を検知することができるのである(特許文献1参照)。
【0005】
しかるに、図6に示すように、大雨の時などにパイプ敷設溝Bに雨水が溜まり、吸引口21が水没してしまう場合がある。この場合においてエジェクタ30を稼働させると、吸引口21からはパイプ敷設溝Bに溜まった雨水を吸引し、その雨水は吸引パイプ20およびフィルタ12を通りガスセンサ11に到達する。ガスセンサ11は内部に触媒や電気抵抗を組み込んで構成されているため、一般に水に弱いので、雨水を吸引することにより故障してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−111439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、吸引口が水没したとしても故障する事がなく、また水没時にもガス検知が可能なガス検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明のガス検知器は、ガスを検知するガスセンサと、一端が前記ガスセンサに接続され、他端がガスを吸引する吸引口である吸引パイプと、該吸引パイプの中間に接続された封水トラップとを備えるガス検知器であって、前記封水トラップは、前記吸引パイプ内が一定以上の負圧になると、外気を前記吸引パイプ内に導入することを特徴とする。
第2発明のガス検知器は、第1発明において、前記封水トラップは、水が封入され、口部が封止された容器と、前記容器の口部に通され、一端が外気に開口され、他端が該容器内の水中に開口した外気パイプと、前記容器の口部に通され、一端が前記吸引パイプに接続され、他端が該容器内の水面より上に開口した接続パイプとを備えることを特徴とする。
第3発明のガス検知器は、第2発明において、前記吸引パイプは、その吸引口がガス検知対象部である溝内に位置するように設置され、前記封水トラップの外気パイプは、その先端が、前記溝より上方で、かつガスが浮遊する領域に開口するように設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、吸引パイプの中間に封水トラップが接続されているので、通常時は吸引口からガスを吸引しガス検知を行うことができる。一方で吸引口が水没した場合には封水トラップから外気が吸引パイプ内に導入されるため、吸引口から水が吸引されガスセンサに到達することがなく、ガスセンサが故障することがない。また、吸引口が水没した場合でも、漏洩したガスが混合された外気が封水トラップから導入されるので、通常時と同様にガス検知を継続することができ、安全確保の効果が高い。
第2発明によれば、外気パイプの一端が容器内の水中に開口しているため、通常時は、外気パイプから外気が吸引パイプ内に取り込まれることはなく、吸引口からガスを吸引しガス検知を行うことができる。そして、吸引口が水没した場合には、吸引パイプ内が一定以上の負圧になり、外気パイプから外気が吸引パイプ内に取り込まれるので、吸引口から水が吸引されガスセンサに到達することがなく、ガスセンサが故障することがない。また、吸引口が水没した場合でも、漏洩したガスが混合された外気が取り込まれるので、通常時と同様にガス検知器を継続することができ、安全確保の効果が高い。
第3発明によれば、溝が水没していない通常時では吸引パイプを経てガス検知ができ、溝が水没しても外気パイプが溝内の水中から浮遊するガスを探知できる場所に位置しているので、大雨等があっても、そのままガス検知でき、安全確保の効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス検知器の通常時の説明図である。
【図2】封水トラップの断面図である。
【図3】第1実施形態の吸引口が水没した場合の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るガス検知器の説明図である。
【図5】従来技術のガス探知器の通常時の説明図である。
【図6】従来技術において吸引口が水没した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るガス検知器1は、化学工場などにおいてナフサなどの可燃性ガスを送るためのパイプAの随所に設けられる。パイプAはパイプ敷設溝B内に配管されており、パイプ敷設溝Bの上面は鉄板等の蓋Cで蓋がされているのが通常である。
【0013】
ガス検知器1は、ガス検知器本体10を備えている。ガス検知器本体10は、可燃性ガスを検知するガスセンサ11とフィルタ12とからなり、フィルタ12のガス出力側にガス検知器11のガス入力側が接続されている。このフィルタ12はガスセンサ11に異物が入り込むことを防止するものである。
【0014】
ガスセンサ11に用いられるセンサの一例としては接触燃焼式センサがある。接触燃焼式センサは、酸化触媒上で可燃性ガスが燃焼する際の発熱量を利用したセンサで可燃性ガス専用の検知センサである。代表的な接触燃焼式センサは、白金線コイルの上に酸化触媒をアルミナ担体と共に焼結した検知素子と、ガスに不活性なアルミナとガラスの混合物を焼結した補償素子から構成されている。白金線コイルによって300〜450℃に加熱された検知素子の表面で可燃性ガスが燃焼すると素子の温度が上昇する。この温度変化に伴い素子を構成する白金線コイルの抵抗値が変化する。この抵抗値の変化はガスの濃度にほぼ比例する。ブリッジ回路によってこの抵抗値の変化量を電圧として取り出すことによりガス濃度を求めることができる。
【0015】
この接触燃焼式センサを構成する触媒や回路は水に弱いため、接触燃焼式センサに水を吸引させると故障してしまうという欠点がある。
なお、本発明に用いるガスセンサ11は、上記接触燃焼式センサに限ることなく、種々のタイプのセンサを制限なく用いることができる。
【0016】
前記フィルタ12のガス入力側には吸引パイプ20の一端が接続されている。吸引パイプ20の他端は吸引口21となっており、吸引口21がパイプ敷設溝B内で開口するように設置されている。一方、ガスセンサ11のガス出力側にはエジェクタ30が接続されている。
【0017】
エジェクタ30は吸引機の一種であり、パイプ31からパイプ32へ空気を流すことによりパイプ33を負圧にし、ガスセンサ11のガス出力側に接続されたパイプ33からガスを吸引するものである。このエジェクタ30を稼働させることにより、吸引口21からパイプA周辺の空気を吸引し、その空気を吸引パイプ20およびフィルタ12を通しガスセンサ11に到達させることができる。
【0018】
吸引パイプ20の中間には封水トラップ40が接続されている。図2に示すように、封水トラップ40は、ガラス瓶などの容器41の中に水42を封入し、口をゴム栓43で封止し、薄いアルミ板などのかしめ部材44で固定したものである。なお、かしめ部材の代りに適当なキャップで固定してもよい。前記ゴム栓43には2つの孔が穿設されており、その孔に外気パイプ45と接続パイプ46が挿入されている。外気パイプ45は、一端が外気に開口し、他端が容器41内の水中に開口している。接続パイプ46は、一端がT字管47を介して吸引パイプ20に接続し、他端が容器41内の水面より上で開口している。
【0019】
外気パイプ45の一端は容器41内の水中に開口しているため、吸引パイプ20内のガスを外気中に放出することはない。また、吸引パイプ20内が一定以上の負圧になると、外気との圧力差によって、外気パイプ45から外気が導入される。
図1に示す封水トラップ40は、ガス検知対象部であるパイプ敷設溝Bより上方であり、かつ、その近傍、つまりガスが浮遊する領域に設けられる。この封水トラップ40の固定は、図示していないが、ガス検知器本体10を支持する支柱などを利用すればよい。
【0020】
図1のガス検知器1において、通常時は、エジェクタ30を稼働させ、吸引口21からパイプA周辺の空気を吸引し、その空気を吸引パイプ20およびフィルタ12を通しガスセンサ11に到達させることで、ガス検知を行う。このとき、吸引パイプ20内の圧力は負圧にならないので、外気パイプ45から外気が取り込まれることはなく、吸引口21から吸引した空気でガス検知を行うことができる。そのため、パイプAに亀裂が入っていたり、フランジ部分の接合が緩んでいたりして、パイプAからガスが漏洩している場合には、ガスセンサ11においてガス漏洩を検知することができる。
【0021】
一方、図3に示すように、大雨の時などにパイプ敷設溝Bに雨水が溜まり、吸引口21が水没した場合、エジェクタ30を稼働させると、吸引口21からパイプ敷設溝Bに溜まった雨水を吸引する。しかし、吸引した雨水の重量により吸引パイプ20内が負圧になるので、その負圧が一定以上になると、外気パイプ45から外気が吸引パイプ20内に導入される。そのため、吸引口21から水が吸引されガスセンサ11に到達することがなく、ガスセンサ11が故障することがない。
【0022】
また、封水トラップ40はパイプ敷設溝Bの上方近傍に設置されていると、吸引口21が水没した場合でも、パイプAから漏洩したガスが混合された外気が外気パイプ45から取り込まれるので、取り込まれた外気は、接続パイプ46、T字管47、吸引パイプ20を介して、通常時と同様にガス検知器を継続することができ、安全確保の効果が高い。
【0023】
(第2実施形態)
図4に示すように、本発明の第2実施形態に係るガス検知器2は、化学工場などにおいて可燃性の液体などを収容する危険物タンクDに設けられる。危険物タンクDからの液漏れが発生した場合に被害を最小限に抑えるために、危険物タンクDの周囲は防油堤Eに囲まれている。そして防油堤Eの底には、漏洩した液体が集まる溝Fが設けられている。
ガス検知器2は、第1実施形態に係るガス検知器1と同じ構成をしており、その吸引口21が溝F内に設置されている。
【0024】
通常時は、危険物タンクDから漏洩した液体が溝Fに溜まったとしても、吸引口21が水没する事はない。そのため、エジェクタ30を稼働させ、吸引口21から溝F内の液体が気化したガスを吸引し、そのガスを吸引パイプ20およびフィルタ12を通しガスセンサ11に到達させることで、ガス検知を行う。このとき、吸引パイプ20内の圧力は負圧にならないので、外気パイプ45から外気が取り込まれることはなく、吸引口21から吸引したガスでガス検知を行うことができる。そのため、危険物タンクDに亀裂が入って、可燃性の液体が漏洩している場合には、ガスセンサ11において漏洩を検知することができる。
【0025】
一方、危険物タンクDからの漏洩の量が多く、吸引口21が水没した場合、エジェクタ30を稼働させると、吸引口21から溝Fに溜まった液体を吸引する。しかし、吸引した液体の重量により吸引パイプ20内が負圧になるので、その負圧が一定以上になると、外気パイプ45から外気が吸引パイプ20内に取り込まれる。そのため、吸引口21から液体が吸引されガスセンサ11に到達することがなく、ガスセンサ11が故障することがない。
【0026】
また、封水トラップ40を溝Fの上方近傍に設置しておけば、吸引口21が水没した場合でも、漏洩した液体が気化したガスが混合された外気が外気パイプ45から取り込まれるので、通常時と同様にガス検知器を継続することができ、安全確保の効果が高い。
【0027】
なお、上記実施形態では、吸引機としてエジェクターを用いて説明したが、もちろんポンプなどの他の公知の吸引機を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1,2 ガス検知器
10 ガス検知器本体
11 ガスセンサ
12 フィルタ
20 吸引パイプ
21 吸引口
30 エジェクタ
40 封水トラップ
41 容器
45 外気パイプ
46 接続パイプ
A パイプ
B パイプ敷設溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを検知するガスセンサと、
一端が前記ガスセンサに接続され、他端がガスを吸引する吸引口である吸引パイプと、
該吸引パイプの中間に接続された封水トラップとを備えるガス検知器であって、
前記封水トラップは、前記吸引パイプ内が一定以上の負圧になると、外気を前記吸引パイプ内に導入する
ことを特徴とするガス検知器。
【請求項2】
前記封水トラップは、
水が封入され、口部が封止された容器と、
前記容器の口部に通され、一端が外気に開口され、他端が該容器内の水中に開口した外気パイプと、
前記容器の口部に通され、一端が前記吸引パイプに接続され、他端が該容器内の水面より上に開口した接続パイプとを備える
ことを特徴とする請求項1記載のガス検知器。
【請求項3】
前記吸引パイプは、その吸引口がガス検知対象部である溝内に位置するように設置され、前記封水トラップの外気パイプは、その先端が、前記溝より上方で、かつガスが浮遊する領域に開口するように設置されている
ことを特徴とする請求項2のガス感知器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−2325(P2011−2325A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145213(P2009−145213)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】