説明

ガス浄化装置

【課題】誘電体を挟んで配置された電極間に高周波電圧を印加した場合に、一定方向に気流が発生する現象を利用することで、処理対象のガスを浄化処理手段に送風する。高周波電圧の放電により、オゾンの発生を促すと共に、オゾン分解触媒によるオゾン分解時に不純物を効果的に分解する。
【解決手段】第1の放電電極と、これに誘電体を介して対向して設けられた第2の放電電極と、これら第1及び第2の放電電極に対して高周波電圧を印加する放電用電源とを備える。前記第1の電極、誘電体及び第2の電極を、前記第1の電極と第2の電極に対して高周波電圧を印加した場合にこれらの電極間に発生する誘電体バリア放電により一定方向に気流が流れるように配置することで、放電気流誘起部を形成する。放電気流誘起部における気流の流れ方向の後段に浄化処理部を設置する。浄化処理部は、浄化処理部に供給されたガス中の不純物を浄化する浄化処理手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電圧が印加された電極間に発生する誘電体バリア放電により、浄化対象となるガスを一定方向に送流させて浄化処理部に導き、この浄化処理部内においてガス中の不純物を分解・吸着するガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住空間、倉庫、冷蔵庫などの食品保管庫、その他の保管庫内における有害物質の除去、悪臭防止、殺菌等(以下、不純物または不純物の浄化と総称する)を目的として、高性能で省エネルギー型の脱臭装置や空気清浄機などのガス浄化装置が求められている。
【0003】
このようなガス浄化装置は、一定空間の空気やその他のガス(以下、空気や排ガスなど浄化対象のガスを総称して、ガスという)を取り込んで浄化し、再び元の空間に戻すことを繰返し、空間内を浄化するものである。このため、従来、ガスを循環させるための送風装置を持つものが一般的だった。
【0004】
このような従来のガス浄化装置の一例を、図12を用いて説明する。図中、200は脱臭装置、201は浄化対象のガスを取り込むためのファン送風機、202はガス中の不純物を吸着及び/または分解する浄化処理部、203はファン送風機の駆動電源、211は浄化対象のガス吸入口、212は浄化処理されたガスの放出口を示す。
【0005】
浄化処理部202は、活性炭などの不純物の吸着材を備えたり、臭い成分などの不純物を分解するための微小コロナ放電発生部と発生したオゾンを処理するオゾン触媒とで構成されたりする。なお、ガス処理に放電が使われる場合は、電源204が付属する。また、これらの吸着材と放電発生部とが併用されることもある。
【0006】
このような浄化装置は、保管庫内或いは室内のガスを装置内部に取り込む必要から、必ずファンを装備しなければならない。しかし、ファンの装備は、振動、騒音の発生や装置駆動に電力が必要といった問題点を有していると共に、浄化装置の小型化にも障害となっていた。
【0007】
このようなファンを備えた浄化装置の問題点を解決するために、電極間に生じる放電によって発生する気流を、浄化対象ガスの送風手段として使用する提案も従来から知られている。すなわち、電極間に高圧の直流電圧を印加すると、電極周辺の空間に絶縁破壊が生じ、コロナ放電が発生し、電極の先端から多量の電子が放出され、空間内の塵埃や気体分子に付着し、イオン化する。イオン化した塵埃や気体分子は、誘引電極に向かって流れ、誘引電極に捕集されるので、このような気体分子の流れを空気清浄機の送風手段として使用する。(特許文献1、特許文献2参照)
【特許文献1】特開2004-138268号公報
【特許文献2】特開2002−95998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、イオン風を利用した前記特許文献に記載の従来技術においては、送風用のファンが不要となる利点はあるものの、気流の発生手段として直流電圧を印加した電極間に生じる放電を利用していたため、電極間に水滴やほこりが付着して、アーク放電に遷移してしまう可能性があった。特に、家庭や工場などのガス中に塵埃が存在する使用環境では、電極へのほこり、ごみや水滴付着によって、アーク放電に遷移し、電極にダメージを与える可能性があり、このアーク放電防止策を講じることで、製品価格が割高になる欠点があった。
【0009】
また、放電を利用した浄化装置においては、高電圧が印加された電極間に発生するオゾンによる不純物の分解作用が効果的に行われることが望ましいが、従来の電極間に直流電圧を印加する装置においては、オゾンの発生が十分とは言えず、不純物の分解作用が効果的に行えない欠点があった。
【0010】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、高周波電圧を電極間に印加した際に発生する気流を利用することで、ファンレスタイプの小型単純化されたガス浄化装置を得ることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、高周波電圧を印加された電極間においては、直流電圧印加時に比較してより多量のオゾンガスが発生すること、及びこのオゾン発生ガスを分解するためのオゾン分解触媒が、オゾンの分解時にガス中の不純物をも効果的に分解することに着目することにより、浄化性能に優れたガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明のガス浄化装置は、第1の放電電極と、これに誘電体を介して対向して設けられた第2の放電電極と、これら第1及び第2の放電電極に対して高周波電圧を印加する放電用電源とを備え、前記第1の電極、誘電体及び第2の電極を、前記第1の電極と第2の電極に対して高周波電圧を印加した場合にこれらの電極間に発生する誘電体バリア放電により一定方向に気流が流れるように配置してなる放電気流誘起部と、この放電気流誘起部における気流の流れ方向の後段に設置された浄化処理部と、この浄化処理部に供給されたガス中の不純物を浄化する浄化処理手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、前記放電気流誘起部が第1と第2の電極間に発生する誘電体バリア放電によりオゾンを生成するものであって、前記浄化処理手段がオゾン分解触媒を備えたものであり、このオゾン分解触媒におけるオゾンの分解作用に伴ってガス中の不純物をも同時に分解するものであることも、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誘電体を挟んで配置された電極間に高周波電圧を印加した場合に、一定方向に気流が発生する現象を利用することにより、ファンを使用することなく、処理対象のガスを浄化処理手段に送風することが可能になる。また、高周波電圧による放電を利用することでオゾンの発生を促すと同時に、オゾン分解触媒によるオゾン分解作用により、不純物の分解を効果的に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)第1実施形態
(1−1)第1実施形態の構成
図1は本発明の第1実施形態のガス浄化装置の構成図である。図1中、100はガス浄化装置本体を示すものであって、このガス浄化装置100は、その内部がガス流通空間となったチャンバー状をしており、その入口側には浄化対象となるガスの吸入口101が、出口側には浄化されたガスの放出口102が設けられている。このガス浄化装置100内には、放電用電源103に接続された放電気流誘起部104と、その後段に設けられた浄化処理部105が組み込まれている。
【0016】
前記放電用電源103としては、商用周波数の放電用電源を使用することが可能であるが、それに限定されるものではなく、その出力電圧としては、パルス状(正極性、不極性、正負の両極性(交番電圧))や交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有するものが使用できる。また、高周波電源の周波数を別途設けた制御装置によって、フィードバック制御することも可能である。
【0017】
図1では、チャンバー状のケーシングを備えたガス浄化装置100内に、箱状の放電発生部104と浄化処理部105とをダクト106で結ぶように配置したが、図2に示すように、箱状の放電発生部104と同じく箱状の浄化処理部105とを直接一体化するような構成を採用することも可能である。
【0018】
前記放電気流誘起部104としては、一例として、図1や図2に示すように、複数枚のプラズマ・アクチュエータ120を処理対象ガスの送風方向と平行に一定の間隔を保って配置したものが使用される。
【0019】
図3は、このプラズマ・アクチュエータ120の一例を示すものである。すなわち、ガスの送風方向と平行に配置された誘電体から構成された絶縁板121の一方の面(図中上面)に、気流方向とは直角に伸びる複数本の短冊状をした金属箔から成る第1の電極122が設けられ、絶縁板121の他の面(図中下面)には前記第1の電極122の全部をカバーするような大面積の幅が広い金属箔から成る第2の電極123が設けられている。
【0020】
これら第1及び第2の電極122,123には、前記放電用電源103が接続され、高周波電圧の印加時に両電極間に放電が発生するように構成されている。この場合、前記細長い短冊状の第1の電極121における気流の上流側の縁は絶縁材124で覆われ、第1の電極122の片側だけが放電するように構成されている。
【0021】
なお、前記絶縁板121や絶縁材124としては、ポリイミド、ガラスエポキシ、ゴム、テフロン(登録商標)、カプトン(登録商標)などの絶縁性樹脂や、アルミナ、ガラス、マイカなどの無機絶縁物などが使用される。
【0022】
一方、前記浄化処理部105には、例えば活性炭、両性界面活性剤系消臭剤、緑茶抽出物、多孔質シリコーン樹脂などの不純物の吸着材や、粒状酸化チタンなどの光触媒やオゾン発生装置などの不純物分解装置を使用することができる。特に、本実施形態においては、前記第1と第2の電極間の放電により発生したオゾンが浄化装置外部に漏出することを防止するためのオゾン分解触媒を、不純物の浄化処理手段として使用する。
【0023】
(1−2)第1実施形態の作用
次に、このような構成を有する第1実施形態の作用について説明する。
まず、放電気流誘起部104内に装備されたプラズマ・アクチュエータ120によって、処理対象となるガスが浄化処理部105に向かって送風される作用を説明する。
【0024】
第1と第2の電極122,123間に放電用電源103から高電圧を印加しこれが一定の閾値以上の電位差となると、両電極間には放電が発生し、放電に伴って放電プラズマが生成される。ここで、電極122,123間には誘電体である絶縁板121が介在しているので、高温下や不純物の存在下であってもアーク放電には至らず、安定に維持することが可能な誘電体バリア放電125が生じる。
【0025】
また、誘電体バリア放電125は、絶縁板121の表面に沿って形成される沿面放電となり、この誘電体バリア放電125によって、所定の方向(第1の電極122から第2の電極123への方向)に気流を発生させることができる。この場合、第1と第2の電極122,123及び絶縁板121との位置関係を非対称形とすることが、一方の電極から他方の電極に向かう気流を発生させるための条件となる。
【0026】
すなわち、第1と第2の電極122,123が非対称形で配置された場合に、電極間に交番電圧が印加されると、第1の電極122に正電圧が印加された場合と負電圧が印加された場合とでは、向きは逆で早さの異なる気流が誘起されるので、この両方向の気流を時間平均すると一定方向の気流が得られる。特に、図3のように、第1の電極122の電極面積を第2の電極の電極面積に比較して小さくした場合には、小さな電極面積の第1の電極122から広い電極面積の第2の電極123に向かって気流が発生する。
【0027】
このようにして、各プラズマ・アクチュエータ120によって発生した気流により、吸入口101から導入された処理対象となるガスが浄化処理部105に向かって送られる。浄化処理部105に達した浄化対象ガスは、浄化処理部105内の浄化処理手段により、ガス中の不純物を分解・吸着され、清浄化されたガスは放出口102から装置外部に排出される。
【0028】
この場合、本実施形態では、前記の放電気流誘起部104における両電極間に発生するプラズマ放電に伴い、オゾンを発生させている。特に、両電極間に印加する電圧が高周波電圧であるため、直流電圧を電極間に印加する従来技術に比較してオゾンの発生が効果的に行われる。この発生したオゾンは、その自然分解時にガス中の不純物を分解する作用を果たすため、高周波電圧の印加のみによっても従来技術よりも優れた分解作用が期待できる。
【0029】
しかも、本実施形態においては、浄化処理部105にオゾン分解触媒を配置することで、両電極間に発生したオゾンを触媒表面において積極的に分解することにより、その際、ガス中の不純物も同時に分解する。これにより、浄化装置外部にオゾンが排出される不都合を解消すると同時に、オゾンの分解を促進して、オゾン分解に伴う不純物の分解作用も向上させることができる。
【0030】
すなわち、オゾン分解触媒表面では、オゾンが分解され途中の過程でOラディカル酸素が精製される。このラディカル種が触媒表面に吸着された有害物質や悪臭成分の酸化分解を促進し、装置の処理能力向上がなされる。
【0031】
(1−3)第1実施形態の効果
以上の通り、本実施形態によれば、ファンを使用することなく、浄化対象のガスを処理部に送り込むことが可能になり、振動や騒音が低くなるという特徴を持つ。また、放電によって悪臭成分や有害成分などの不純物が分解されると共に、オゾン分解触媒によるオゾン分解時における不純物の分解作用も発揮されるので、ガス浄化装置の処理能力が向上する。
【0032】
(1−4)第1実施形態の変形例…その1
図4は、プラズマ・アクチュエータの他の例を示したものである。誘電体である絶縁板121中に大きい金属箔である第2の電極123を形成し、絶縁板121の両面にそれぞれ複数枚の短冊状の第1の電極122を配置したものである。なお、絶縁体124によって第1の電極122の片側の放電を阻止する構成は図3と同様である。
【0033】
この変形例においては、絶縁板121中央の第2の電極123と、絶縁板121を挟んでその両側に配置された第1の電極122間で放電が発生する。この場合、第1と第2の電極及び絶縁板121の非対称配置が確保されているので、交番電圧を印加された電極間に一定方向の気流を発生させることができる。
【0034】
(1−5)第1実施形態の変形例…その2
図5は、プラズマ・アクチュエータの更に他の例を示したものである。この例では、第2の電極123を、第1の電極122と同様な短冊状の金属箔によって構成したものである。この場合、第1と第2の電極122,123の位置を気流の流れ方向にずらす(第2の電極の縁を気流の下流側に突出させる)ことで、第1の電極122の下流側の縁と第2の電極の下流側の縁との間に放電が生じる。
【0035】
この変形例においても、第1と第2の電極122,123の絶縁板121に対する非対称形の配置により、第1の電極122から第2の電極123方向に流れる気流を発生させることができる。
【0036】
なお、この実施形態においては、第1と第2の電極の位置をずらすことで両電極の下流側の縁の間に放電が生じるように構成したが、前記実施形態と同様に、第1の電極の気流の上流側の縁を絶縁材124で覆うことで、両電極の上流側の縁における放電を阻止することも可能である。
【0037】
(2)第2実施形態
(2−1)第2実施形態の構成
図6は本発明の第2実施形態のガス浄化装置の斜視図であり、その放電気流誘起部104の内部を説明したものである。図6において、100はガス浄化装置を、104は放電気流誘起部を、120は気流を発生させる棒状電極2本からなるプラズマ・アクチュエータを、105は浄化処理部を示す。この浄化処理部105としては、前記第1実施形態に記載した各種の吸着材や分解手段が使用できる。
【0038】
前記プラズマ・アクチュエータ120は、例えば、図7のような構成を有する。すなわち、第1と第2の放電電極122,123が、少なくとも一方(図では、第2の電極123)が誘電体である絶縁材121で被覆されている。この結果として、外径の異なる2本の棒状の電極122,123が、近接或いは接触して平行に設置され、両電極間に高周波電圧を印加して誘電体バリア放電125を両電極間に発生させるように構成されている。
【0039】
すなわち、図7では、第1の電極122が金属の円筒電極で構成され、第2の電極123が絶縁材121で被覆された金属の対向電極から構成されている。また、第2の電極123を接地とし、第1の電極122に放電用電源103から高周波電圧を印加し放電125を生成する。
【0040】
なお、第1及び第2の電極は図7のような円筒形である必要はなく、図8に示したように、扁平な形状でも良い。また、第2の電極を被覆する絶縁材121としても、電極と同様な円柱状でなくとも良く、図8のような紡錘状や他の形状であっても良い。
【0041】
(2−2)第2実施形態の作用
図6から8に示した第1及び第2の電極122,123を備えた放電気流誘起部104からは、図中右方向に向かう流れが誘起され、これらが浄化処理部105へ処理対象のガスを引き込む原動力となる。また、両電極間に発生する放電によって悪臭成分や有害成分などの不純物が分解、除去される。従って、ガス浄化装置の処理能力が向上する。
【0042】
(2−3)第2実施形態の効果
以上の結果より明らかなように、本実施形態により、従来よりも振動、騒音が低く、且つ、処理能力の高いガス浄化装置を提供することができる。特に、第1及び第2の電極122,123を棒状の電極とすることで、板状の電極を使用した前記第1実施形態に比較して、電極の配置や本数の増減に対して柔軟に対応できる利点がある。
【0043】
(3)第3実施形態
(3−1)第3実施形態の構成
図9は本発明の第3実施形態のガス浄化装置の斜視図であり、放電気流誘起部104の内部を説明したものである。図9において、100は円筒状をしたガス浄化装置を、104はその前段に設けられて同じく円筒状をした放電気流誘起部を、120は気流を発生させるプラズマ・アクチュエータを、105は同じく円筒状の浄化処理部を示す。
【0044】
この第3実施形態において、プラズマ・アクチュエータ120は、前記図3から図5において説明した両面に第1及び第2の電極122,123を配置した平板状の絶縁板121を円筒状に湾曲させて構成したものである。なお、本実施形態では、第1の電極122を円筒状とした絶縁板121の内面側に配置し、第2の電極を外面側に配置することで、円筒の内側に気流が誘起されるようにしている。
【0045】
この場合、円筒状をしたプラズマ・アクチュエータ120は、気流の流れ方向に沿って複数個配置することもできるし、また、図10に示すように、径の異なる円筒状プラズマ・アクチュエータ120を同軸状に配置しても良い。更に、浄化装置100が角筒状をしている場合には、プラズマ・アクチュエータ120を角筒状とすることも可能である。
【0046】
(3−2)第3実施形態の作用
次に、これらの作用について説明する。図9のように、円筒状をしたプラズマ・アクチュエータ120の内面に配置した第1の電極122から絶縁板121の表面側に向かって誘起された放電により、円筒状をしたプラズマ・アクチュエータ120の内壁に沿った気流が誘起され、この気流により浄化対象のガスが浄化装置100の入口から後段の浄化処理部105に送られる。
【0047】
また、このプラズマ・アクチュエータ120を気流の流れ方向に多段に配置したり、図10のように同軸状に複数個設置することによって、風量を増やすことができる。そして、このプラズマ・アクチュエータ120によって送られた浄化対象ガスは、第1と第2の電極部分の放電によって不純物が分解除去されると共に、浄化処理部105に設けられた浄化処理手段の吸着材や分解手段により更に浄化された後、装置外部に排出される。
【0048】
(3−3)第3実施形態の効果
以上の結果より明らかなように、本実施形態によれば、円筒状の浄化装置100の外壁面近傍にプラズマ・アクチュエータ120を配置することで、浄化装置内に吸入するガスの流れを阻害することなく、気流を誘起することが可能になる。また、気流方向に多段に配置したり、同心円状に複数配置したりすることで、気流をより強力なものとすることが可能になる。
【0049】
更に、プラズマ・アクチュエータ120を円筒状あるいは角筒状とすることで、既存のダクトや排気管の形状に合わせて、浄化装置を作製することが可能になる利点もある。
【0050】
(4)第4実施形態
(4−1)第4実施形態の構成
図11を参照しながら、本発明の第4実施形態を説明する。この第4実施形態は、図4にて説明した並列に配置された平板型のプラズマ・アクチュエータ120の間に、平板に担持された光触媒130を配置したものである。この光触媒の担体は、ほかに、メッシュ、ハニカム、セラミック多孔体でも可能である。なお、プラズマ・アクチュエータ120は、図11の形状に限らず、これまで説明してきたいずれかの実施形態に示したものを適宜選択して使用できる。
【0051】
なお、この第4実施形態において、プラズマ・アクチュエータ120や光触媒130の後段に、吸着材やオゾン分解触媒を配置しても良いことは、他の実施形態と同様である。
【0052】
(4−2)第4実施形態の作用
次に、これらの作用について説明する。この実施形態においては、プラズマ・アクチュエータ120は、気流を誘起する以外にオゾン等の活性種を生成し、有害物質や悪臭物質を分解する。さらに、放電によって、紫外域から可視域の光を放出する。この光によって、プラズマ・アクチュエータと並んで設置した光触媒を活性化し、有害物質や悪臭物質の分解に寄与する。
【0053】
(4−3)第4実施形態の効果
このような構成を有する第4実施形態によれば、プラズマ・アクチュエータ120の放電やそれによって発生したオゾンによる不純物の分解作用と、光触媒130による分解作用とを併用できるので、プラズマ・アクチュエータ120単独の場合に比較し、浄化機能をより高めることができる。
【0054】
また、放電気流誘起部104の放電によって発生する光を光触媒の活性化用として利用できるので、光触媒の配置部分に活性化用のランプを設けたり、装置外部から紫外線などを照射する必要もなく、装置の構造が単純化する利点もある。なお、本実施形態は、これらのランプや照射用の窓を設けることを排除するものではない。
【0055】
更に、光触媒130のみで不純物の分解を行うようにして、後段に別途吸着材や分解手段などの浄化処理手段を設けない場合には、放電気流誘起部104と浄化処理部とを浄化装置100内の近接した位置に配置することができるので、装置全体の長さ(気流方向の長さ)を小型化することが可能になる。また、放電による不純物の分解処理と酸化触媒などによる浄化処理とを同位置で実施するので、両者の相乗効果により処理能力の高いガス浄化装置を提供することができる。
【0056】
(5)他の実施形態
本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含するものである。
【0057】
(a) 浄化処理部105の浄化処理手段として吸着材を充填したもの。吸着材の形態は、ハニカム構造であっても、ボール状であっても、ガスの流れを妨げないものであればよい。必要に応じて、さらに後段にオゾン分解触媒を追加し、放電で発生したオゾンを完全に分解する手段を講じても良い。
【0058】
この実施形態では、放電気流誘起部104で誘起された気流に乗って、有害物質や悪臭物質が運ばれ、後段の浄化処理部105に置かれた吸着材に吸着される。放電が生成したオゾンやラディカル種も吸着され、そこで、有害物質、悪臭成分が酸化分解される。なお、プラズマ・アクチュエータの放電によっても、直接分解される。
【0059】
(b) 浄化処理部105に浄化処理手段として光触媒を充填したもの。この光触媒の担体は、メッシュ、平板、ハニカム構造体、セラミック・ボールの何であっても、ガスの流れを妨げないものであればよい。光触媒は、紫外線や可視光を受けて活性になるので、光をあてる工夫が必要である。例えば、浄化処理部105に紫外光と可視光が透過する窓を設けたり、ランプを併用することが好ましい。必要に応じて、さらに後段にオゾン分解触媒を追加し、放電で発生したオゾンを完全に分解する手段を講じても良い。
【0060】
この実施形態では、放電気流誘起部104で誘起された気流に乗って、有害物質や悪臭物質が運ばれ、後段の浄化処理部105に置かれた光触媒によって分解除去される。また、プラズマ・アクチュエータの放電によっても、直接分解される。
【0061】
(c) 浄化処理部105の浄化処理手段として酸化触媒を使用したもの。この酸化触媒の形態はハニカム構造であっても、ボール状であっても、ガスの流れを妨げないものであればよい。必要に応じて、さらに後段にオゾン分解触媒を追加し、放電で発生したオゾンを完全に分解する手段を講じても良い。
【0062】
この実施形態では、放電気流誘起部104で誘起された気流に乗って、有害物質や悪臭物質が運ばれ、後段の浄化処理部105に置かれた酸化触媒によって酸化分解される。なお、プラズマ・アクチュエータの放電によっても、直接分解される。
【0063】
(d) 第4実施形態の光触媒の場合と同様に、吸着材やオゾン分解触媒などの浄化処理手段を放電気流誘起部の近傍(周囲)に配置したもの。
(e) 前記気流誘起部104によるガスの送風を補助するためのファンなどの送風機を設けたもの。
【0064】
(f) 装置全体や放電気流発生部などを加熱するもの。この場合、加熱の効果としては、下記2点が考えられる。
・触媒やオゾン分解触媒が活性化され、不純物の処理能力が上がったり、分解途中で中間体として浄化手段(リアクタ)内に残留する成分が少なくなる。
・浄化手段のリフレッシュの効果がある。すなわち、分解途中の中間体で浄化装置内に残留している成分を、完全酸化して(COやCO2にして)外部に吐き出させる。この場合、高温に保って、放電をさせながらしばらく放置することが望ましい。
【0065】
(g) 高周波の周波数をフィードバックすることにより、放電パワーをコントロールして、風量やオゾン発生量を調節するもの。パワーコントロールは、印加電圧または繰返し周波数を変えることで対応可能であるが、印加電圧による制御は、ある一定以上の電圧を加えないと放電がスタートしなかったり、電圧上昇に対するパワーの増加が非常に大きかったりするので、使いづらい。一方、繰返し周波数に対しては、大体、リニアに変化するので、負荷に応じて、浄化装置の能力をベスト・フィットさせるための手段として、繰返し周波数をフィードバックする機能を盛り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態の全体構成を示す側面図。
【図2】本発明の第1実施形態の他の例を示す側面図。
【図3】本発明の第1実施形態におけるプラズマ・アクチュエータ120の一例を示す斜視図。
【図4】本発明の第1実施形態におけるプラズマ・アクチュエータ120の変形例を示す斜視図。
【図5】本発明の第1実施形態におけるプラズマ・アクチュエータ120の他の変形例を示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態の全体構成を示す斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態におけるプラズマ・アクチュエータ120部分を示す断面図。
【図8】本発明の第2実施形態におけるプラズマ・アクチュエータ120部分の変形例を示す断面図。
【図9】本発明の第3実施形態の全体構成を示す斜視図。
【図10】本発明の第3実施形態の変形例を示す斜視図
【図11】本発明の第4実施形態の構成を示す斜視図。
【図12】従来のガス浄化装置の一例を示す側面図。
【符号の説明】
【0067】
100…ガス浄化装置
101…吸入口
102…放出口
103…放電用電源
104…放電気流誘起部
105…浄化処理部
106…ダクト
120…平板型のプラズマ・アクチュエータ
121…絶縁板
122…第1の電極
123…第2の電極
124…絶縁材
125…放電
130…光触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の放電電極と、これに誘電体を介して対向して設けられた第2の放電電極と、これら第1及び第2の放電電極に対して高周波電圧を印加する放電用電源とを備え、
前記第1の電極、誘電体及び第2の電極を、前記第1の電極と第2の電極に高周波電圧を印加した場合にこれらの電極間に発生する誘電体バリア放電により一定方向に気流が流れるように配置してなる放電気流誘起部と、
この放電気流誘起部において誘起された気流が供給される浄化処理部と、この浄化処理部に供給されたガス中の不純物を浄化する浄化処理手段を備えていることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項2】
前記浄化処理手段がオゾン分解触媒を備えたものであり、このオゾン分解触媒によるオゾンの分解時に浄化処理部に供給されたガス中の不純物を分解するものであることを特徴とする請求項1に記載のガス浄化装置。
【請求項3】
前記浄化処理手段が酸化触媒であり、この酸化触媒により浄化処理部に供給されたガス中の不純物を分解するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス浄化装置。
【請求項4】
前記浄化処理手段が吸着材であり、この吸着材により浄化処理部に供給されたガス中の不純物を捕捉するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス浄化装置。
【請求項5】
前記浄化処理手段が光触媒であり、この光触媒により浄化処理部に供給されたガス中の不純物を分解するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス浄化装置。
【請求項6】
前記浄化処理部に少なくとも紫外域から可視域の光を透過する窓または光源が設けられ、浄化処理部内に配置された光触媒が外部からの光に曝される構造となっていることを特徴とする請求項5に記載のガス浄化装置。
【請求項7】
前記放電気流誘起部と浄化処理部が同一空間内に配置され、前記光触媒は放電気流誘起部の放電部分が照射される位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のガス浄化装置。
【請求項8】
前記第1の電極と第2の電極が板状部材から構成され、これら第1と第2の電極が平板状の絶縁板の両面に対向するように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のガス浄化装置。
【請求項9】
前記第1と第2の電極の少なくとも一方が絶縁材で被覆された棒状の部材から構成され、これら第1と第2の棒状電極が、近接或いは接触して平行に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のガス浄化装置。
【請求項10】
前記第1の電極と第2の電極が筒状部材から構成され、これら第1と第2の電極が同じく筒状をした絶縁板の両面に対向するように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のガス浄化装置。
【請求項11】
前記筒状をした第1と第2の電極及び絶縁板が、気流の流れ方向に沿って複数個配置されていることを特徴とする請求項10に記載のガス浄化装置。
【請求項12】
前記筒状をした第1と第2の電極及び絶縁板が、同心状に複数個配置されていることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−289801(P2008−289801A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140942(P2007−140942)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】