説明

ガス漏れ警報遮断耐雷システム

【課題】サージバイパス線が未接続や接続不良であった場合でも、ガス警報器内部の回路を破壊せずに使用者へ機能停止状態であること知らせることができるガス警報遮断耐雷システムを提供する。
【解決手段】ガス警報器とガスメータを2本の信号線で接続し、ガス漏れ時にはガス警報器からの警報遮断信号により、ガスメータの遮断弁を閉止するガス漏れ警遮断システムにおいて、ガス警報器の電源部前段にサージ防護素子の組合せからなる電源側バイパス回路を設け、さらにその前段の電源ラインにヒューズを設け、電源部前段のサージ防護素子バイパスラインを1本の線でガス警報器とガスメータの端子間を接続し、且つ前記ガスメータを介して接地するようにしたガス警報遮断耐雷システムにおいて、ガス警報器の電源側バイパス回路の後段の電源ラインに、前段に設けたヒューズより低い電流容量で溶断するヒューズを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス漏れ警報遮断システムにおいて、商用電源側の雷サージ侵入によるシステム破壊から有効に防護できるようにしたガス漏れ警報遮断システムに用いられる耐雷方式に関する。
【背景技術】
【0002】
雷サージには二種類あり、直接雷および誘導雷に区別されている。直接雷では、発生エネルギーが極めて莫大であるため、どのような手段を講じても機器の破壊を防護することはできないが、被害確率は極めて小さいので、ここでは考えないことにする。
【0003】
しかし、誘導雷は、その発生確率が高く、送電線、通信回線、アンテナ、接地線や引込み線等上に生じたサージ(電圧/電流)が屋外や屋内の機器内部に侵入する。
この雷サージは、機器内にあるICなどの半導体素子を含む電子回路がサージに弱い特性を持っているので、この電子回路を損壊したり、誤作動させたりする。
【0004】
そのため、図4に示すような従来のガス警報システムの耐雷方式では、商用電源と大地間に発生した誘導雷によるサージ電圧(S)がサージ電流(Is)として、ガス警報器からガスメータを通して大地へバイパスさせている。
【0005】
また、特許文献1の「双方向通信ガス検針システム用耐雷方式」では、ガス警報器の電源側にサージ防護素子を設けて、機器内部の回路の耐電圧以下に抑え、ガス警報器側から1本のバイパス線をガスメータに接続し、サージを大地へバイパスするようにすることにより、ガス警報器やガスメータ内部の電子部品の破壊による故障を防止している。
【0006】
また、特許文献2の「ガス検針システム用耐雷方式」では、極めて高いサージや繰り返しによるサージ防護素子の破壊によって生じる電源ライン間の短絡に備え、サージ防護素子の前段にヒューズを設け、サージ防護素子の短絡時には溶断しガス警報器回路への電源供給を断って、通電表示灯を消灯させ使用者へ機能停止状態であること知らせている。
【0007】
次に、上記の従来の耐雷システムを、図5に示した回路図を用いて説明する。
従来の耐雷システムは、ガス警報器A、ガスメータBからなり、ガス警報器AとガスメータBとは、2本の信号線6と1本のバイパス線7で接続されている。
【0008】
ガス警報器Aには、ガスを検知するセンサや、警報値を設定する半固定抵抗等で構成されるガス検知部4と、商用電源で動作させるためにサージ防護素子とトランス等により各部に電源供給する電源部1、CPU(中央処理装置)等で機能を制御する制御部2、ガス漏れ時にブザーやスピーカによる音声によって警報したり、LED(Light Emitting Diode)により警報や通電表示する警報・表示部5、またガス漏れ時に、ガスメータBへ遮断信号を送ったりガスメータBの状態信号を受ける入出力部3を備えている。
【0009】
ガスメータBには、ガスの流れを検出する計量部8、安全上ガス供給路を遮断したりする弁開閉遮断部9、ガスメータBの状態を示す表示部12、計量や安全機能を制御する制御部11、ガス警報器Aや通信回線との信号のやり取りを行う入出力部10を備えている。
【0010】
入出力部10は、端子台10aに複数の端子を持ち外部機器への接続が可能となるよう構成されている。端子10b,10cは、ガス警報器Aの入出力部3の端子3cに信号線6を介し接続されている。
【0011】
入出力部10は、ガス漏れ時に、ガス警報器Aのフォトカプラ3aのON−OFF信号からなるガス漏れ警報遮断信号を受け付け、制御部11により、弁開閉遮断部9を動作させガスを遮断する。そして、ガス警報器Aに対しては、ガスメータBで遮断したことを通知する遮断アンサ信号を端子10b,10cを介して送出する。
ガス警報器Aは、ガスメータBから送出された信号によるフォトカプラ3bの動作により、受け付けた遮断アンサ信号をガス警報器Aの制御部2を介して警報・表示部5で報知する。
【0012】
また、サージ電流Isは、商用電源からガス警報器Aの電源プラグP、ヒューズ1a、バリスタ1b(1cを介する場合もある)、アレスタ1d等のサージ防護素子を介し、ガス警報器AのFG端子3dとガスメータBのFG端子10dを接続するバイパス線7を介し、バリスタ10eを介して、大地へバイパスされる。
これにより、サージ電流が大地へアースされるので、ガス警報器やガスメータ内部の電子部品の破壊による故障を防止している。
【特許文献1】特公平06−36653号公報
【特許文献2】特公平06−36654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図5の従来の耐雷システムでは、図6に示したように、バイパス線7が未接続や接続不良の場合、サージ電圧が機器内部の回路の耐電圧を超えると、サージ電流Isがガス警報器内部の回路を経由して耐電圧の低い箇所を通って、信号線6を介してガスメータBから大地へバイパスされることになる。このとき、サージ電流Isは、ガス警報器内部の電子部品を破壊する。
しかし、一部の電子部品を破壊しても警報・表示部5に変化がないような故障状態となり、使用者へ機能停止状態を知らせることができない場合が生じていた。
【0014】
本発明は、上述のような実情を考慮してなされたものであって、サージバイパス線が未接続や接続不良であった場合でも、ガス警報器内部の回路を破壊せずに使用者へ機能停止状態であること知らせることができるガス警報遮断耐雷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明のガス警報遮断耐雷システムは、ガス警報器と、2本の信号線を前記ガス警報器の入出力端子に接続し、且つマイコン内蔵型ガスメータの入出力端子に接続し、ガス漏れ時には前記ガス警報器からの警報遮断信号により、前記ガスメータの遮断弁を閉止するガス漏れ警遮断システムにおいて、前記ガス警報器の電源部前段にサージ防護素子の組合せからなる電源側バイパス回路を設け、さらにその前段の電源ラインにヒューズを設け、前記電源部前段のサージ防護素子バイパスラインを1本の線で前記ガス警報器と前記ガスメータの端子間を接続し、且つ前記ガスメータを介して接地するようにしたガス警報遮断耐雷システムにおいて、前記ガス警報器の電源側バイパス回路の後段の電源ラインに、前段に設けたヒューズより低い電流容量で溶断するヒューズを設けるようにしている。
【0016】
さらに、前記電源側バイパス回路の後段の電源ラインに設けたヒューズは、前記ガス警報器本体から脱着容易に交換できるようにしている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電源側バイパス回路の後段の電源ラインに、前段に設けたヒューズより低い電流容量で溶断するヒューズを設けているので、サージバイパス線の未接続あるいは接続不良において、ガス警報器内部の回路を破壊せずに電源供給を断つことができ、通電表示灯を消灯させ、使用者へ機能停止状態であることを知らせることができる。
【0018】
また、ガス警報器の電源側バイパス回路の後段に設けたヒューズを、ガス警報器本体から容易に脱着交換できることを可能にしているので、バイパス線の接続不良時や未接続に発生するヒューズ溶断時の対応が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明のガス警報遮断耐雷システムに係る好適な実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のガス警報遮断耐雷システムの回路図であり、同図において、上述した従来の図5と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。図1において図5と異なる点は、図5の構成において、ガス警報器Aの電源側バイパス回路の後段の電源ラインに、前段に設けたヒューズ1aより低い電流容量で溶断するヒューズ1xを追加したことである。
【0020】
本実施形態の回路構成において、ガス警報器AとガスメータBがバイパス線7で確実に接続されている場合は、上述の図5で説明したと同じにサージ電流Isが流れ、ガス警報器A内部の電子部品はサージ電流Isの影響を受けない。
【0021】
しかし、図2のように、図1のバイパス線7が未接続であったり、接続不良であった場合には、サージ電圧がガス警報器内部の回路の耐電圧を超えると、サージ電流Isは、FG端子3dを介してガスメータBへバイパスすることができなくなる。
そのため、サージ電流Isは、ガス警報器B内部の回路を経由し、耐電圧の低い箇所を通過しようとするが、そのサージエネルギーによってヒューズ1xが溶断される。これにより、サージ侵入による回路破壊から有効に防護できるとともに、内部回路への電源供給を断ち通電表示灯を消灯させ、使用者が機能停止を把握することができる。
【0022】
ところで、従来のガス警報器において搭載されたヒューズは、プリント基板に直接半田付けされ、そのプリント基板は、外装ケースにねじで固定されており、分解改造が容易にできない構造になっている。
そのため、使用者やガス警報器設置・点検業者がヒューズを交換して、警報監視機能を点検しようとすると、ガス警報器そのものを交換するしか対応できなかった。
【0023】
また、ガス警報器Aの電源側バイパス回路の後段のヒューズ1xの電流容量を小さくした場合は、頻繁にヒューズ溶断が発生することになり、使用者の使い勝手を悪くさせることになる。
【0024】
本実施形態では、図3に示したように、ガス警報器Aの電源側バイパス回路の後段の電源ラインに、前段に設けたヒューズ1aより低い電流容量で溶断するヒューズ1xを、ガス警報器A本体から脱着容易に交換できる構成とした。
【0025】
上記の構成とすることによって、ガス警報器Aの電源側バイパス回路の後段に設けたヒューズ1xを、ガス警報器A本体から容易に脱着交換できることを可能にしているので、バイパス線の接続不良時や、未接続に発生するヒューズ溶断時の対応が容易になり警報機監視機能の復旧が容易になる。
【0026】
本実施形態によれば、電源側バイパス回路の後段の電源ラインに、前段に設けたヒューズより低い電流容量で溶断するヒューズを設けているので、サージバイパス線の未接続状態あるいは接続不良において、ガス警報器内部の回路を破壊せずに電源供給を断つことができるので、通電表示灯を消灯させ、使用者へ機能停止状態であることを知らせることができる。
【0027】
また、ガス警報器の電源側バイパス回路の後段に設けたヒューズを、ガス警報器本体から容易に脱着交換できることを可能にしているので、バイパス線の接続不良時や未接続に発生するヒューズ溶断時の対応が容易になる。
【0028】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形、修正が可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るガス漏れ警報遮断耐雷システムの回路図である。
【図2】図1のガス漏れ警報遮断耐雷システムにおけるバイパス線が未接続あるいは接続不良のときの回路図である。
【図3】ガス警報器に設けた脱着可能なヒューズの説明図である。
【図4】ガス警報器とガスメータで構成される従来の耐雷システムの説明図である。
【図5】従来の耐雷システムの回路図である。
【図6】図5の耐雷システムにおけるバイパス線が未接続あるいは接続不良のときの回路図である。
【符号の説明】
【0030】
A…ガス警報器、1…電源部、1a…ヒューズ、1b…バリスタ、1d…アレスタ、1x…ヒューズ、2…制御部、3…入出力部、3a,3b…フォトカプラ、3c…端子、3d…FG端子、4…ガス検知部、5…警報・表示部、P…電源プラグ、6…信号線、7…バイパス線、B…ガスメータ、8…計量部、9…弁開閉遮断部、10…入出力部、10a…端子台、10b,10c…端子、10d…FG端子、10e…バリスタ、11…制御部、12…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス警報器と、2本の信号線を前記ガス警報器の入出力端子に接続し、且つマイコン内蔵型ガスメータの入出力端子に接続し、ガス漏れ時には前記ガス警報器からの警報遮断信号により、前記ガスメータの遮断弁を閉止するガス漏れ警遮断システムにおいて、前記ガス警報器の電源部前段にサージ防護素子の組合せからなる電源側バイパス回路を設け、さらにその前段の電源ラインにヒューズを設け、前記電源部前段のサージ防護素子バイパスラインを1本の線で前記ガス警報器と前記ガスメータの端子間を接続し、且つ前記ガスメータを介して接地するようにしたガス警報遮断耐雷システムにおいて、前記ガス警報器の電源側バイパス回路の後段の電源ラインに、前段に設けたヒューズより低い電流容量で溶断するヒューズを設けたことを特徴とするガス警報遮断耐雷システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス警報遮断耐雷システムにおいて、前記電源側バイパス回路の後段の電源ラインに設けたヒューズは、前記ガス警報器本体から脱着容易に交換できることを特徴とするガス警報遮断耐雷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−237744(P2009−237744A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80894(P2008−80894)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】