説明

ガス炉の制御装置及び方法

【課題】ガス炉の制御装置及び方法において、被加熱部材の高精度な熱処理を可能とする。
【解決手段】炉壁に複数のバーナ21を設けてガス炉11を構成し、炉内に支持された被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1と中間部W2と厚肉の底部W3の温度を直接検出する温度検出器41,42,43を設け、制御装置47は、この温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wの実体温度に基づいて、この実体温度が目標温度となるように、複数のバーナ21の出力を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱部材に対して各種の熱処理を行うバッチ式ガス炉の制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッチ式のガス炉は、一般的に炉内の雰囲気温度を検出する温度検出器を設け、制御装置がこの温度検出器が検出した炉内の温度が目標温度となるようにバーナの燃焼状態を制御している。このような従来のガス炉の制御装置としては、例えば、下記特許文献1−3に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、複数のバーナにそれぞれ独立して設けた燃焼空気予熱装置により予熱された燃焼空気を用いて、各バーナの最大の燃料噴出量における定空燃比燃焼を行うようにしている。また、特許文献2に記載されたものは、複数の温度検出器が検出した各加熱ゾーンの温度と予め設定された温度設定値とを比較し、燃料流量制御のための調節弁の弁開度を制御している。また、特許文献3に記載されたものは、被加熱材の初期温度と熱電対が検出した炉内温度とから、各ゾーンの炉内温度を設定して加熱バーナを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平03−043553号公報
【特許文献2】特公昭60−032696号公報
【特許文献3】特開昭62−054024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のバッチ式のガス炉にあっては、炉内の温度を検出し、この炉内の温度が目標温度となるようにバーナの燃焼状態、つまり、バーナのON/OFFや燃料供給量を制御している。しかし、被加熱部材の熱処理を行う場合、重要なのは炉内温度(雰囲気温度)ではなく、被加熱部材自体の温度である。そのため、従来のバッチ式のガス炉では、高精度な被加熱部材の熱処理が困難である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、被加熱部材の高精度な熱処理を可能とするガス炉の制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明のガス炉の制御装置は、炉壁に複数のバーナが設けられたガス炉において、炉内に支持された被加熱部材の温度を直接検出する温度検出器と、前記温度検出器の検出結果に基づいて前記複数のバーナの出力を調節するバーナ制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
従って、温度検出器が被加熱部材の温度を直接検出し、バーナ制御部は、この温度検出器が検出した被加熱部材の温度に基づいて複数のバーナの出力を調節することから、被加熱部材の実体温度を調整することが可能となり、厚肉部と薄肉部が混在する異形の被加熱材であっても熱処理の種類に応じた最適な加熱制御が可能となり、被加熱部材の高精度な熱処理を行うことができる。
【0009】
本発明のガス炉の制御装置では、前記バーナ制御部は、前記温度検出器の検出結果に基づいて起動する前記バーナの個数を調節することを特徴としている。
【0010】
従って、バーナ制御部は、温度検出器が検出した被加熱部材の温度に基づいて起動するバーナの個数を調節することから、全てのバーナにおける燃料量や空気量などの調整が不要となり、起動するバーナの燃料量や空気量などの調整だけすればよくなり、制御の簡素化を可能とすることができる。
【0011】
本発明のガス炉の制御装置では、前記温度検出器は、少なくとも前記被加熱部材における厚肉部と薄肉部に固定され、前記バーナ制御部は、前記厚肉部と前記薄肉部の温度に基づいて前記複数のバーナの出力を調節することを特徴としている。
【0012】
従って、被加熱部材における厚肉部と薄肉部は、熱の伝達時間が相違するため、厚肉部は薄肉部に比べて温度上昇が遅れるが、温度検出器がこの厚肉部と薄肉部の温度を別々に検出し、バーナ制御部は、それぞれの温度に応じてバーナの出力を調節することから、被加熱部材の形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【0013】
本発明のガス炉の制御装置では、前記複数のバーナは、前記被加熱部材の厚肉部に対応するグループと、前記被加熱部材の薄肉部に対応するグループとに仕分けされ、前記バーナ制御部は、前記温度検出器の検出結果に基づいて前記各グループで起動する前記バーナの個数を調節することを特徴としている。
【0014】
従って、バーナ制御部は、厚肉部と薄肉部の各温度に基づいてそれぞれのグループで起動するバーナの個数を調節することから、簡単な制御で、被加熱部材の形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【0015】
本発明のガス炉の制御装置では、前記被加熱部材における厚肉部に対応するグループは、前記薄肉部に対応するグループより前記バーナが多数仕分けされることを特徴としている。
【0016】
従って、被加熱部材における厚肉部は、温度上昇が遅れるが、急激に熱を付与すると、厚肉部の温度が目標温度を大きく超えてしまうことから、多数のバーナにより被加熱部材を加熱することで、厚肉部に適応した最適な加熱を行うことができる。
【0017】
本発明のガス炉の制御装置では、前記バーナ制御部は、予め設定された所定の第1加熱温度まで前記被加熱部材に対して第1昇温速度となるように前記複数のバーナの出力を調節し、第1加熱温度に到達したら第1昇温速度より低い第2昇温速度となるように前記複数のバーナの出力を調節することを特徴としている。
【0018】
従って、被加熱部材に急激な温度変化を与えることなく、最適な熱処理を行うことができる。
【0019】
また、本発明のガス炉の制御方法は、炉壁に複数のバーナが設けられたガス炉において、炉内に支持された被加熱部材の温度を直接検出し、この検出結果に基づいて前記複数のバーナの出力を調節する、ことを特徴とするものである。
【0020】
従って、被加熱部材の実体温度を調整することが可能となり、熱処理の種類に応じた最適な加熱制御が可能となり、被加熱部材の高精度な熱処理を行うことができる。
【0021】
本発明のガス炉の制御方法では、前記複数のバーナは、前記被加熱部材の厚肉部に対応するグループと薄肉部に対応するグループに仕分けされ、前記厚肉部の温度に基づいて前記厚肉部に対応するグループにおいて起動する前記バーナの個数を調節する一方、前記薄肉部の温度に基づいて前記厚肉部に対応するグループにおいて起動する前記バーナの個数を調節することを特徴としている。
【0022】
従って、温度検出器が厚肉部と薄肉部の温度を別々に検出し、各温度に応じてそれぞれのグループで起動するバーナの個数を調節することから、簡単な制御で、被加熱部材の形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【0023】
本発明のガス炉の制御方法では、前記被加熱部材の形状により、熱処理開始前または熱処理作業中に、前記グループに仕分けされた前記バーナの変更またはバーナ着火順序の変更またはグループ編成の変更またはグループの増減を行うことを特徴としている。
【0024】
従って、簡単な設定で、被加熱部材の形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガス炉の制御装置及び方法によれば、炉内の被加熱部材の温度を直接検出する温度検出器と、温度検出器の検出結果に基づいて複数のバーナの出力を調節するバーナ制御部を設けるので、被加熱部材の実体温度を調整することが可能となり、熱処理の種類に応じた再生な加熱制御が可能となり、被加熱部材の高精度な熱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係るガス炉の制御装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例のガス炉の内部を表す断面図である。
【図3】図3は、本実施例のガス炉における実体温度の目標温度を表すグラフである。
【図4】図4は、本実施例のガス炉における実体温度制御方法を説明するためのグラフである。
【図5】図5は、本実施例のガス炉における温度変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るガス炉の制御装置及び方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例】
【0028】
図1は、本発明の一実施例に係るガス炉の制御装置を表す概略構成図、図2は、本実施例のガス炉の内部を表す断面図、図3は、本実施例のガス炉における実体温度の目標温度を表すグラフ、図4は、本実施例のガス炉における実体温度制御方法を説明するためのグラフ、図5は、本実施例のガス炉における温度変化を表すグラフである。
【0029】
本実施例のガス炉の制御装置において、図1及び図2に示すように、ガス炉11は、バッチ方式であって、底部11aに対してその周囲に4つの側壁部11bが形成され、各側壁部11bの上部に水平な天井部11cが固定されて構成されている。なお、ガス炉11の形状は、この四角形に限るものではなく、天井が湾曲したドーム型などであってもよい。ガス炉11は、内部にて、底部11aの中央に、2つの架台12により被加熱部材Wが支持されている。この被加熱部材Wは、底付き円筒形状をなし、薄肉の円筒部W1と、厚肉の底部W3とから構成されている。
【0030】
ガス炉11は、対向する側壁部(炉壁)11bに、複数(本実施例では、22個)のバーナ21が設けられている。このバーナ21は、各側壁部11bにそれぞれ11個ずつほぼ均等間隔をもって配置されており、各側壁部11bに設けられた11個のバーナ21が対向して配置されている。そして、このバーナ21は、自動流量調整弁22が設けられ、その開度を調整することで、ON/OFF並びに出力を調節可能となっている。ここでは、22個のバーナ21に対して、バーナ21−1〜21−22の符号を付して説明し、22個の自動流量調整弁22に対して、自動流量調整弁22−1〜22−22の符号を付して説明する。なお、ガス炉11の形状は、この形状に限るものではなく、また、バーナ21の取付位置は、側壁部11bに限らず、底部11aや天井部11cであってもよい。
【0031】
この各バーナ21−1〜21−22は、自動流量調整弁22−1〜22−22に対してガス供給ライン31が連結されており、このガス供給ライン31は、ガス供給源32に連結されている。そして、このガス供給ライン31は、ガス供給ポンプ33と開閉弁34が設けられている。また、各バーナ21−1〜21−22は、自動流量調整弁22−1〜22−22に対してエア供給ライン35が連結されており、このエア供給ライン35は、エア供給源36に連結されている。そして、このエア供給ライン35は、エア供給ポンプ37と開閉弁38が設けられている。
【0032】
本実施例では、各バーナ21−1〜21−22は、被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1に対応する第1グループと、薄肉の円筒部W1と厚肉の底部W3との中間部W2に対応する第2グループと、厚肉の底部W3に対応する第3グループとに仕分けされている。ここでは、第1グループとしてバーナ21−1,21−3,21−12,21−13,21−14、第2グループとしてバーナ21−16,21−17、第3グループとしてバーナ21-10,21-11,21−18,21−20,21−21,21−22が割り当てられている。なお、このバーナ21のグループ化は、過去の実験データに基づいて最適グループが設定されるものであり、この仕分けに限定されるものではない。
【0033】
そして、ガス炉11は、内部に被加熱部材Wの温度を直接検出する温度検出器41,42,43が設けられている。第1温度検出器41は、被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1に溶接により密着するように固定されており、この円筒部W1の実体温度を検出する。第2温度検出器42は、被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1と厚肉の底部W3との中間部W2に溶接により密着するように固定されており、この中間部W2の実体温度を検出する。第3温度検出器43は、被加熱部材Wにおける厚肉の底部W3に溶接により密着するように固定されており、この底部W3の実体温度を検出する。
【0034】
また、ガス炉11は、内部の雰囲気温度を検出する温度検出器44,45,46が設けられている。第4温度検出器44は、被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1の近傍の天井部11cに配置されており、この円筒部W1の近傍の雰囲気温度を検出する。第5温度検出器45は、被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1と厚肉の底部W3との中間部W2の近傍の天井部11cに配置されており、中間部W2の近傍の雰囲気温度を検出する。第6温度検出器46は、被加熱部材Wにおける厚肉の底部W3の近傍の天井部11cに配置されており、この底部W3の近傍の雰囲気温度を検出する。
【0035】
制御装置(バーナ制御部)47は、各温度検出器41,42,43により検出された被加熱部材Wにおける円筒部W1の実体温度、中間部W2の実体温度、底部W3の実体温度が入力すると共に、各温度検出器44,45,46により検出された被加熱部材Wにおける円筒部W1近傍の雰囲気温度、中間部W2近傍の雰囲気温度、底部W3近傍の雰囲気温度が入力する。
【0036】
そして、制御装置47は、被加熱部材Wにおける円筒部W1と中間部W2と底部W3における各実体温度やその近傍の雰囲気温度に基づいて、自動流量調整弁22−1〜22−22を調整することで、複数のバーナ21−1〜21−22の出力を調節可能となっている。
【0037】
また、制御装置47は、自動流量調整弁22−1〜22−22のON/OFFや開度調整を行うことで、バーナ21−1〜21−22全体の出力を調節可能となっている。具体的に、制御装置47は、被加熱部材Wにおける円筒部W1と中間部W2と底部W3における各実体温度に基づいて、自動流量調整弁22−1〜22−22を作動させ、起動するバーナ21−1〜22−22の個数を調節する。
【0038】
即ち、被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1に対応する第1グループとして、バーナ21−1,21−3,21−12,21−13,21−14が割り当てられ、中間部W2に対応する第2グループとして、バーナ21−16,21−17が割り当てられ、厚肉の底部W3に対応する第3グループとして、バーナ21-10,21-11,21−18,21−20,21−21,21−22が割り当てられている。そのため、この13個のバーナ21以外のバーナ21は、対応する自動流量調整弁22がOFF(開度0)となっている。
【0039】
そして、制御装置47は、被加熱部材Wにおける円筒部W1における実体温度に基づいて、第1グループに割り当てられたバーナ21−1,21−3,21−12,21−13,21−14のON/OFFを行うことで、起動するバーナ21の個数を調節する。同様に、制御装置47は、被加熱部材Wにおける中間部W2における実体温度に基づいて、第2グループに割り当てられたバーナ21−16,21−17のON/OFFを行うことで、起動するバーナ21の個数を調節する。同様に、制御装置47は、被加熱部材Wにおける底部W3における実体温度に基づいて、第3グループに割り当てられたバーナ21−10,21−11,21−18,21−20,21−21,21−22のON/OFFを行うことで、起動するバーナ21の個数を調節する。
【0040】
なお、第1グループのバーナ21−3,21−14は、正面に架台12が配置されていることから、ONとしたときにその開度が70%となるように設定することが好ましい。
【0041】
ここで、ガス炉11で被加熱部材Wの熱処理を行うときの制御装置47による具体的な制御について説明する。この被加熱部材Wの熱処理としては、溶接部の応力除去や焼入れなどがあり、図3に示すように、熱処理の種類、被加熱部材Wの大きさや形状などに応じて被加熱部材Wの目標実体温度が設定されており、制御装置47は、被加熱部材Wの実体温度がこの目標実体温度となるように複数のバーナ21の出力を制御する。
【0042】
図1に示すように、ガス炉11内にて、2つの架台12により被加熱部材Wが支持された状態で、制御装置47は、図3に示すように、時間t1にて、3つのグループに割り当てられた13個のバーナ21を予め設定された順序で点火していく。即ち、制御装置47は、3つのグループに割り当てられた13個のバーナ21に対応する各自動流量調整弁22をOFFからONに切り替える。このとき、制御装置47は、常温の20℃から第1加熱温度の350℃までの第1昇温領域Aにて、被加熱部材Wに対する第1昇温速度(100℃/H)が設定されており、被加熱部材Wの実体温度が目標実体温度となると共に、第1昇温速度となるように、13個のバーナ21の点火時期を調整する。
【0043】
3つのグループにおけるバーナ21の割付状態を下記の表1に示す。この表1からわかるように、第1グループに割り当てられた5個のバーナ21の点火順序は、3−12−13−1−14であり、第2グループに割り当てられたバーナ21の点火順序は、17−16であり、第3グループに割り当てられたバーナ21の点火順序は、18−11−10−20−22−21である。この表1は、作業者が視認できるようにディスプレイに表示されており、バーナ21の番号が点灯することで、点火されたバーナ21を把握することができ、割付個数に対する点火個数を把握することができる。
【0044】
【表1】

【0045】
制御装置47は、図3に示すように、温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wにおける円筒部W1と中間部W2と底部W3の各実体温度のいずれかが第1加熱温度の350℃に到達したら、時間t2にて、第1加熱温度の350℃から第2加熱温度の610℃までの第2昇温領域Bに入ることから、ここで、被加熱部材Wに対する第2昇温速度(50℃/H)が設定されている。制御装置47は、被加熱部材Wの実体温度が目標実体温度となると共に、第2昇温速度となるように、13個のバーナ21の点火時期及び消火時期を調整する。
【0046】
この場合、第1昇温領域Aの第1昇温速度(100℃/H)に対して、第2昇温領域Bの第2昇温速度(50℃/H)が低く設定されている。
【0047】
制御装置47は、この第1昇温領域A及び第2昇温領域Bで、各バーナ21の出力調整を行うとき、各グループ内でバーナ21を個別に点火及び消火を行うことで、被加熱部材Wに対する実体温度調整を行っている。この場合、制御装置47は、各温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wにおける円筒部W1と中間部W2と底部W3の各実体温度に基づいて、PID制御を行っている。
【0048】
例えば、図4に示すように、被加熱部材Wの目標実体温度Ttが設定されており、制御装置47は、第1温度検出器41が検出した被加熱部材Wの円筒部W1の実体温度Tに基づいて、第1グループの各バーナ21−1,21−3,21−12,21−13,21−14のON/OFFを行って加熱温度を調節する。即ち、円筒部W1は、薄肉であることから、実体温度Tが目標実体温度Ttまで上昇すると、全てのバーナ21−1,21−3,21−12,21−13,21−14をOFFしても温度低下しにくい。そのため、制御装置47は、円筒部W1の実体温度Tが低下すると、1つのバーナ21を起動し、目標実体温度Ttに近づいてから円筒部W1の実体温度Tが上昇すると、全てのバーナ21を停止する。
【0049】
また、制御装置47は、第2温度検出器42が検出した被加熱部材Wの中間部W2の実体温度Tに基づいて、第2グループの各バーナ21−16,21−17のON/OFFを行って加熱温度を調節する。即ち、中間部W2も、薄肉であることから、実体温度Tが目標実体温度Ttまで上昇すると、全てのバーナ21−16,21−17をOFFしても温度低下しにくい。そのため、制御装置47は、中間部W2の実体温度Tが目標実体温度Ttに近づくと全てのバーナ21−16,21−17を停止し、目標実体温度Ttを超えてから中間部W2の実体温度Tが低下すると、1つのバーナ21を起動する。
【0050】
更に、制御装置47は、第3温度検出器43が検出した被加熱部材Wの底部W3のる実体温度Tに基づいて、第3グループの各バーナ21−10,21−11,21−18,21−20,21−21,21−22のON/OFFを行って加熱温度を調節する。即ち、底部W3は、厚肉であることから、実体温度Tがなかなか上昇しないものの、急激に加熱すると、目標実体温度Ttを超えてしまうことから、多数のバーナ21−10,21−11,21−18,21−20,21−21,21−22を用いて徐々に加熱して目標実体温度Ttに近づけていく。そのため、制御装置47は、底部W3の実体温度Tが上昇すると起動するバーナ21を4個とし、底部W3の実体温度Tの上昇率が低下すると起動するバーナ21を5個とし、底部W3の実体温度Tが低下すると起動するバーナ21を7個とし、再び底部W3の実体温度Tが上昇すると起動するバーナ21を6個とするなどして底部W3の実体温度Tを目標実体温度Ttに近づけていく。
【0051】
その後、制御装置47は、図3に示すように、温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wにおける円筒部W1と中間部W2と底部W3における各実体温度が第2加熱温度の610℃に到達したら、時間t3にて、第2加熱温度の610℃を維持する加熱温度維持領域Cに入ることから、ここで、被加熱部材Wに対する第2加熱温度の610℃を所定の偏差(±15℃)内維持するように、13個のバーナ21の点火時期及び消火時期を調整する。
【0052】
そして、制御装置47は、第2加熱温度の610℃が予め設定された所定時間(熱処理時間)を経過したら、時間t4にて、第2加熱温度の610℃から温度を低下させる第1降温領域Dに入ることから、ここで、被加熱部材Wに対する降温速度(50℃/H)が設定されている。制御装置47は、被加熱部材Wの実体温度が目標実体温度となると共に、降温速度となるように、13個のバーナ21の点火時期及び消火時期を調整する。
【0053】
その後、制御装置47は、所定温度まで低下したら、時間t5にて、13個のバーナ21を停止する。そして、制御装置47は、第2降温領域Eにて、温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wにおける円筒部W1と中間部W2と底部W3における各実体温度が加熱温度(第1加熱温度と同じ350℃)まで低下したら、時間t6にて、ガス炉11の扉を開放する。
【0054】
なお、制御装置47は、領域A〜Dにて、バーナ21の自動流量調整弁22を制御可能であることから、各温度検出器41,42,43の検出結果に基づいて現在割り当てられているグループの各バーナでは、被加熱部材Wの形状により熱処理開始前または途中であっても、各グループに割り当てられているバーナの変更、着火順序の変更、または、グループ編成の変更、グループの増減などが可能となっている。また、一部のバーナ21が故障した場合であっても、各種の変更が可能となっている。更に、バーナ21ごとの出力の変更、自動流量調整弁22−1〜22−22の調整により全バーナ21の出力を変更も可能となっている。
【0055】
本実施例にて、制御装置47は、各温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wにおける円筒部W1と中間部W2と底部W3の各実体温度に基づいて、13個のバーナ21の点火時期及び消火時期を調整して出力を調整することから、被加熱部材Wの実体温度を目標実体温度になるように適正に調整することが可能となる。即ち、図5に示すように、本実施例では、目標実体温度Ttに対して、被加熱部材Wにおける円筒部W1の実体温度Tと底部W3の実体温度Tが、この目標実体温度Ttを大きく超えることなく、徐々に近づいている。一方、目標実体温度Ttに対して、被加熱部材Wにおける円筒部W1の近傍の雰囲気温度T11と底部W3の近傍の雰囲気温度T13は、この目標実体温度Ttを大きく超えてから徐々に近づいている。
【0056】
このように本実施例のガス炉の制御装置にあっては、炉壁に複数のバーナ21を設けてガス炉11を構成し、炉内に支持された被加熱部材Wの温度を直接検出する温度検出器41,42,43と、この温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wの実体温度に基づいて複数のバーナ21の出力を調節する制御装置47とを設けている。
【0057】
従って、各温度検出器41、42,43が被加熱部材Wの実体温度を検出し、制御装置47は、この温度検出器41,42,43が検出した被加熱部材Wの実体温度に基づいて複数のバーナ21の出力を調節することから、被加熱部材Wの実体温度を調整することが可能となり、熱処理の種類に応じた再生な加熱制御が可能となり、被加熱部材Wの高精度な熱処理を行うことができる。
【0058】
また、本実施例のガス炉の制御装置では、制御装置47は、温度検出器41、42,43の検出結果に基づいて起動するバーナ21の個数を調節している。従って、全てのバーナにおける燃料量や空気量などの調整が不要となり、起動するバーナの燃料量や空気量などの調整だけすればよくなり、制御の簡素化を可能とすることができる。
【0059】
また、本実施例のガス炉の制御装置では、温度検出器は41,43が、被加熱部材Wにおける薄肉の円筒部W1と厚肉の底部W3に固定され、制御装置47は、円筒部W1と底部W3の温度に基づいて複数のバーナ21の出力を調節している。従って、被加熱部材Wにおける円筒部W1と底部W3は、熱の伝達時間が相違するため、底部W3は円筒部W1に比べて温度上昇が遅れるが、温度検出器41,43がこの円筒部W1と底部W3の実体温度を別々に検出し、制御装置47は、それぞれの温度に応じてバーナ21の出力を調節することから、被加熱部材Wの形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【0060】
また、本実施例のガス炉の制御装置では、複数のバーナ21は、被加熱部材Wの円筒部W1に対応するグループと、中間部W2に対応するグループと、底部W3に対応するグループとに仕分けされ、制御装置47は、温度検出器41,42,43の検出結果に基づいて各グループで起動するバーナ21の個数を調節している。従って、制御装置47は、円筒部W1と中間部W2と底部W3の各実体温度に基づいてそれぞれのグループで起動するバーナ21の個数を調節することから、簡単な制御で、被加熱部材Wの形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【0061】
また、本実施例のガス炉の制御装置では、被加熱部材Wにおける底部W3に対応するグループは、円筒部W1に対応するグループより多数のバーナ21を仕分けしている。従って、被加熱部材Wにおける底部W3は温度上昇が遅れるが、急激に熱を付与すると、底部W3の実体温度が目標温度を大きく超えてしまうことから、多数のバーナ21により被加熱部材Wをゆっくり加熱することで、底部W3に適応した最適な加熱を行うことができる。
【0062】
また、本実施例のガス炉の制御装置では、制御装置47は、予め設定された所定の第1加熱温度まで被加熱部材Wに対して第1昇温速度となるように複数のバーナ21の出力を調節し、第1加熱温度に到達したら第1昇温速度より低い第2昇温速度となるように複数のバーナ21の出力を調節している。従って、被加熱部材Wに負荷を与えることなく、最適な熱処理を行うことができる。
【0063】
また、実施例1のガス炉の制御方法は、炉内に支持された被加熱部材Wの実体温度を検出し、この実体温度に基づいて複数のバーナ21の出力を調節している。この場合、複数のバーナ21は、被加熱部材Wの薄肉の円筒部W1に対応するグループと厚肉の底部W3に対応するグループとに仕分けされ、円筒部W1の実体温度に基づいて対応するグループにおいて起動するバーナの個数を調節する一方、底部W3の実体温度に基づいて対応するグループにおいて起動するバーナ21の個数を調節している。
【0064】
従って、被加熱部材Wの実体温度を調整することが可能となり、熱処理の種類に応じた再生な加熱制御が可能となり、被加熱部材Wの高精度な熱処理を行うことができる。また、被加熱部材Wの円筒部W1と底部W3の実体温度に応じてそれぞれのグループで起動するバーナ21の個数を調節することから、簡単な制御で、被加熱部材の形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【0065】
また、実施例1のガス炉の制御方法では、被加熱部材Wの形状により、熱処理開始前または熱処理開始途中に、グループに仕分けされたバーナ21の変更、バーナ着火順序の変更、グループ編成の変更、グループの増減を行うことを可能としている。従って、簡単な制御で、被加熱部材の形状に適応した最適な熱処理を行うことができる。
【0066】
なお、上述した実施例では、ガス炉11に22個のバーナ21を設けたが、この数は、ガス炉11の大きさや形状、被加熱部材の種類などに応じて適宜設定すればよいものである。また、使用するバーナ21の数(13個)やグループ数(3グループ)も被加熱部材の大きさや形状などにより適宜設定すればよいものである。
【符号の説明】
【0067】
11 ガス炉
21,21−1〜21−22 バーナ
22,22−1〜22−22 自動流量調整弁
41,42,43 温度検出器
47 制御装置(バーナ制御部)
W 被加熱部材
W1 円筒部(薄肉部)
W2 中間部
W3 底部(厚肉部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁に複数のバーナが設けられたガス炉において、
炉内に支持された被加熱部材の温度を直接検出する温度検出器と、
前記温度検出器の検出結果に基づいて前記複数のバーナの出力を調節するバーナ制御部と、
を備えることを特徴とするガス炉の制御装置。
【請求項2】
前記バーナ制御部は、前記温度検出器の検出結果に基づいて起動する前記バーナの個数を調節することを特徴とする請求項1に記載のガス炉の制御装置。
【請求項3】
前記温度検出器は、少なくとも前記被加熱部材における厚肉部と薄肉部に固定され、前記バーナ制御部は、前記厚肉部と前記薄肉部の温度に基づいて前記複数のバーナの出力を調節することを特徴とする請求項1または2に記載のガス炉の制御装置。
【請求項4】
前記複数のバーナは、前記被加熱部材の厚肉部に対応するグループと、前記被加熱部材の薄肉部に対応するグループとに仕分けされ、前記バーナ制御部は、前記温度検出器の検出結果に基づいて前記各グループで起動する前記バーナの個数を調節することを特徴とする請求項3に記載のガス炉の制御装置。
【請求項5】
前記被加熱部材における厚肉部に対応するグループは、前記薄肉部に対応するグループより前記バーナが多数仕分けされることを特徴とする請求項4に記載のガス炉の制御装置。
【請求項6】
前記バーナ制御部は、予め設定された所定の第1加熱温度まで前記被加熱部材に対して第1昇温速度となるように前記複数のバーナの出力を調節し、第1加熱温度に到達したら第1昇温速度より低い第2昇温速度となるように前記複数のバーナの出力を調節することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のガス炉の制御装置。
【請求項7】
炉壁に複数のバーナが設けられたガス炉において、
炉内に支持された被加熱部材の温度を直接検出し、この検出結果に基づいて前記複数のバーナの出力を調節する、
ことを特徴とするガス炉の制御方法。
【請求項8】
前記複数のバーナは、前記被加熱部材の厚肉部に対応するグループと薄肉部に対応するグループに仕分けされ、前記厚肉部の温度に基づいて前記厚肉部に対応するグループにおいて起動する前記バーナの個数を調節する一方、前記薄肉部の温度に基づいて前記厚肉部に対応するグループにおいて起動する前記バーナの個数を調節することを特徴とする請求項7に記載のガス炉の制御方法。
【請求項9】
前記被加熱部材の形状により、熱処理開始前または熱処理作業中に、前記グループに仕分けされた前記バーナの変更またはバーナ着火順序の変更またはグループ編成の変更またはグループの増減を行うことを特徴とする請求項8に記載のガス炉の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36100(P2013−36100A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174202(P2011−174202)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】