説明

ガス焚き超電導電気推進船

【課題】システム全体のエネルギー効率が良好で且つ設備コストも安く済むガス焚き超電導電気推進船を提供する。
【解決手段】LNG2を貯蔵するカーゴタンク1(燃料タンク)と、該カーゴタンク1内で発生した気化ガス2'を燃料として発電機6のデュエルフュエルエンジン5(駆動機関)へ送る気化ガス供給ライン3と、該気化ガス供給ライン3の途中に装備されて気化ガス2'を昇温するガスヒータ4と、前記発電機6により発電された電力で駆動される推進用の超電導モータ7と、該超電導モータ7を冷却して低温に維持するヒートポンプ15と、該ヒートポンプ15での圧縮放熱処理の冷熱源としてカーゴタンク1からLNG2を送り且つその処理後の気化ガス2'をカーゴタンク1及び前記気化ガス供給ライン3のガスヒータ4入側に導くLNGガス化ライン26とを備えたガス焚き超電導電気推進船とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス焚き超電導電気推進船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、LNG(液化天然ガス)を輸送するLNG船においては、積荷(Cargo)としてのLNGのボイルオフガスをディーゼル発電機の燃料として利用し、その発電した電力で電動モータを駆動して推進するようにしたガス焚き電気推進船が就航しているが、更なる高効率の電気推進システムの実現を図るべく超電導モータを採用したガス焚き超電導電気推進船の開発が検討されている。
【0003】
図2は既存のシステムの組み合わせから成る従来提案のガス焚き超電導電気推進船の一例を示すもので、図2中の符号1は積荷であるLNG2を貯えたカーゴタンク1(特に燃料用として別タンクを設置することも可)を示し、該カーゴタンク1内で発生した気化ガス2'(ボイルオフガス)を気化ガス供給ライン3によりガスヒータ4を介し昇温してからデュエルフュエルエンジン5に供給し、デュエルフュエルエンジン5にて燃料として利用して発電機6を駆動し、その発電した電力を推進用の超電導モータ7に供給するようしてある。
【0004】
また、前記カーゴタンク1内に貯溜する液相のLNG2の一部が必要に応じタンク底部からポンプ8付きのLNGガス化ライン9により抜き出されてベーパライザ10を介し気化され、その気化ガス2'も前記気化ガス供給ライン3におけるガスヒータ4出側に合流されてデュエルフュエルエンジン5に燃料として供給できるようになっている。
【0005】
尚、前記ガスヒータ4及びベーパライザ10には、例えば船内のボイラ設備等から蒸気11を導いて熱源として利用すれば良く、また、前記デュエルフュエルエンジン5には、熱源の確保が難しい立ち上げ時等に適宜に重油タンク12から重油13を導いて燃料として利用できるようにもなっている。
【0006】
一方、超電導モータ7は、ヘリウムを冷媒14とするヒートポンプ15により−196℃付近まで冷却されるようになっており、より具体的には、圧縮機16により圧縮して高温高圧のヘリウムガスとなった冷媒14を凝縮器17に導き、ここで、後述するセントラル清水冷却システム18から導いた清水19と熱交換させることで冷やして中温高圧のヘリウムの液体とし、これを超電導モータ7の直前の膨張弁20で膨張させて蒸発させ、超電導モータ7の界磁コイルや電機子コイルから蒸発熱を奪うことで超電導化条件温度までの冷却を図り、超電導モータ7から出たヘリウムガスを再び圧縮機16へ戻して循環させるようにしている。
【0007】
ここに図示している例では、ヒートポンプ15の凝縮器17で行われる圧縮放熱処理の冷熱源としてセントラル清水冷却システム18から導いた清水19が用いられているが、このセントラル清水冷却システム18とは、船内の各種機器類21の冷却を閉鎖回路22を循環する清水19により行うようにしたものであり、前記ヒートポンプ15の凝縮器17や各種機器類21を経由して暖まった清水19は、閉鎖回路22の途中の清水クーラ23にて船外から取り込んだ海水24で熱交換されて冷却されるようになっている。
【0008】
尚、本発明に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1や特許文献2等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−186815号公報
【特許文献2】特開2005−183440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図2に示す如き既存のシステムを組み合わせた従来提案のガス焚き超電導電気推進船では、超電導モータ7の冷却過程で得られる熱が海水と熱交換されて無駄に海へ捨てられることになり、しかも、カーゴタンク1内で発生した気化ガス2'(ボイルオフガス)をガスヒータ4で昇温するための熱や、カーゴタンク1内から抜き出した液相のLNG2をベーパライザ10で蒸発させるための熱を船内設備で確保しなければならないため、システム全体のエネルギー効率が悪くなるという問題があり、また、超電導モータ7の冷却システムと、LNG2を蒸発させる加熱システムとが個別に必要となることによりシステム構成が複雑なものとなって設備コストが高くつくという問題もあった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、システム全体のエネルギー効率が良好で且つ設備コストも安く済むガス焚き超電導電気推進船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、LNGを貯蔵する燃料タンクと、該燃料タンク内で発生した気化ガスを燃料として発電機の駆動機関へ送る気化ガス供給ラインと、該気化ガス供給ラインの途中に装備されて気化ガスを昇温するガスヒータと、前記発電機により発電された電力で駆動される推進用の超電導モータと、該超電導モータを冷却して低温に維持するヒートポンプと、該ヒートポンプでの圧縮放熱処理の冷熱源として燃料タンクからLNGを送り且つその処理後の気化ガスを燃料タンク及び前記気化ガス供給ラインのガスヒータ入側に導くLNGガス化ラインとを備えたことを特徴とするガス焚き超電導電気推進船、に係るものである。
【0013】
而して、このようにすれば、LNGガス化ラインにより燃料タンクからLNGがヒートポンプに送られ、該ヒートポンプでの圧縮放熱処理の冷熱源として利用されることで超電導モータの冷却に寄与する一方、LNG自体が気化ガスとなって燃料タンク及び前記気化ガス供給ラインのガスヒータ入側に導かれ、燃料タンク内で発生した気化ガスと一緒にガスヒータで昇温されてから駆動機関に供給され、該駆動機関で燃料として使用されて発電機にて発電が行われ、その発電した電力が推進用の超電導モータに供給されて該超電導モータが駆動されることになる。
【0014】
また、本発明においては、LNGガス化ラインが船内の各種機器類を経由する冷却ラインを並列に備えていることが好ましく、このようにすれば、各種機器類の排熱をLNGのガス化に有効に利用することが可能となると共に、セントラル清水冷却システムの一部又は全てを省略して設備コストの更なる削減を図ることが可能となる。
【0015】
更に、本発明においては、燃料タンクがカーゴタンクであっても良く、このようにすれば、積荷(Cargo)としてのLNGを発電機の駆動機関の燃料として利用することが可能となり、燃料タンクをカーゴタンクと別に装備しなくても済んで設備コストの更なる削減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明のガス焚き超電導電気推進船によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0017】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、燃料タンク内のLNGを燃料として発電機の駆動機関へ供給する前に超電導モータを冷却するための冷熱源として使用し、超電導モータの冷却過程で得られる熱をLNGの気化に利用するようにしているので、システム全体のエネルギー効率を大幅に向上することができ、しかも、超電導モータを冷却するシステムと、LNGを蒸発させるシステムとを統合して単一のシステムとすることにより、システム構成を簡素化して設備コストの大幅な削減を図ることができる。
【0018】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、各種機器類の排熱をLNGのガス化に有効に利用することができると共に、セントラル清水冷却システムの一部又は全てを省略して設備コストの更なる削減を図ることができる。
【0019】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、積荷(Cargo)としてのLNGを発電機の駆動機関の燃料として利用することができ、燃料タンクをカーゴタンクと別に装備しなくても済んで設備コストの更なる削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す系統図である。
【図2】従来例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
本形態例では、先の図2において、ヒートポンプ15の凝縮器17で行われる圧縮放熱処理の冷熱源としてセントラル清水冷却システム18(図2参照)から導いた清水19(図2参照)を用いていたことに替えて、ヒートポンプ15の凝縮器17で行われる圧縮放熱処理の冷熱源としてカーゴタンク1(燃料タンク)からポンプ25を介しLNG2を送り且つその処理後の気化ガス2'をカーゴタンク1及び気化ガス供給ライン3のガスヒータ4入側に導くLNGガス化ライン26を新たに備える一方、図2のシステム構成で採用されていたところのカーゴタンク1内のLNG2をベーパライザ10(図2参照)を介し気化ガス2'として気化ガス供給ライン3のガスヒータ4出側に合流するLNGガス化ライン9(図2参照)を廃止している。
【0024】
また、特に本形態例においては、LNGガス化ライン26が船内の各種機器類21を経由する冷却ライン27を並列に備えており、これら各冷却ライン27を流れるLNG2が前記各種機器類21の冷却を行うようになっていて、該各種機器類21の冷却を行うことでもLNG2の気化が促進されるようになっている。
【0025】
而して、このようにガス焚き超電導電気推進船を構成すれば、LNGガス化ライン26によりカーゴタンク1からLNG2がヒートポンプ15に送られ、該ヒートポンプ15での圧縮放熱処理の冷熱源として利用されることで超電導モータ7の冷却に寄与する一方、LNG2自体が気化ガス2'となってカーゴタンク1及び前記気化ガス供給ライン3のガスヒータ4入側に導かれ、カーゴタンク1内で発生した気化ガス2'と一緒にガスヒータ4で昇温されてからデュエルフュエルエンジン5(発電機6の駆動機関)に供給され、該デュエルフュエルエンジン5で燃料として使用されて発電機6にて発電が行われ、その発電した電力が推進用の超電導モータ7に供給されて該超電導モータ7が駆動されることになる。
【0026】
ここで、付言しておくと、LNGガス化ライン26により気化ガス供給ライン3のガスヒータ4入側に導かれる気化ガス2'は、超電導モータ7の冷却過程で得られた熱により比較的温度が上がっているため、ガスヒータ4での熱交換のために投入される熱源の必要量は、図2の場合のようにカーゴタンク1内で発生した気化ガス2'(ボイルオフガス)だけを対象として昇温する場合よりも少なくて済む。
【0027】
以上に述べた如きガス焚き超電導電気推進船によれば、カーゴタンク1内のLNG2を燃料として発電機6のデュエルフュエルエンジン5へ供給する前に超電導モータ7を冷却するための冷熱源として使用し、超電導モータ7の冷却過程で得られる熱をLNG2の気化に利用するようにしているので、システム全体のエネルギー効率を大幅に向上することができ、しかも、超電導モータ7を冷却するシステムと、LNG2を蒸発させるシステムとを統合して単一のシステムとすることにより、システム構成を簡素化して設備コストの大幅な削減を図ることができる。
【0028】
また、特に本形態例においては、LNGガス化ライン26が船内の各種機器類21を経由する冷却ライン27を並列に備えているので、各種機器類21の排熱をLNG2のガス化に有効に利用することができると共に、セントラル清水冷却システムの一部又は全てを省略して設備コストの更なる削減を図ることができる。
【0029】
更に、本形態例では、積荷であるLNG2を貯えたカーゴタンク1を燃料タンクとしているので、積荷(Cargo)としてのLNG2を発電機6のデュエルフュエルエンジン5の燃料として利用することができ、燃料タンクをカーゴタンク1と別に装備しなくても済んで設備コストの更なる削減を図ることができる。
【0030】
尚、本発明のガス焚き超電導電気推進船は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、図示例では燃料タンクがカーゴタンクである場合を例示しているが、燃料タンクをカーゴタンクとは別に装備するようにしても良いこと、また、ヒートポンプの冷媒は必ずしもヘリウムに限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 カーゴタンク(燃料タンク)
2 LNG
2' 気化ガス
3 気化ガス供給ライン
4 ガスヒータ
5 デュエルフュエルエンジン(駆動機関)
6 発電機
7 超電導モータ
15 ヒートポンプ
21 各種機器類
26 LNGガス化ライン
27 冷却ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGを貯蔵する燃料タンクと、該燃料タンク内で発生した気化ガスを燃料として発電機の駆動機関へ送る気化ガス供給ラインと、該気化ガス供給ラインの途中に装備されて気化ガスを昇温するガスヒータと、前記発電機により発電された電力で駆動される推進用の超電導モータと、該超電導モータを冷却して低温に維持するヒートポンプと、該ヒートポンプでの圧縮放熱処理の冷熱源として燃料タンクからLNGを送り且つその処理後の気化ガスを燃料タンク及び前記気化ガス供給ラインのガスヒータ入側に導くLNGガス化ラインとを備えたことを特徴とするガス焚き超電導電気推進船。
【請求項2】
LNGガス化ラインが船内の各種機器類を経由する冷却ラインを並列に備えていることを特徴とする請求項1に記載のガス焚き超電導電気推進船。
【請求項3】
燃料タンクがカーゴタンクであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス焚き超電導電気推進船。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−11701(P2011−11701A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159649(P2009−159649)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】