説明

ガス状ハロゲン化合物の検出方法

本発明は、BX型、HX型またはX型のガス状の化合物を、プローブ分子を含んだ組成物を使って気体内で検出する方法であり、以下のことを特徴とする。すなわち、このプローブ分子は、1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物と反応すると、その物理化学的特性の少なくとも一つが変化する分子であり、この変化は適切な分析手法で測定可能である。さらに、以下に述べるステップ(a)〜(d)が、この記述順に実行されることをも特徴としている:(a)上記プローブ分子の、スペクトル特性などの上記物理化学的特性を測定するステップ、(b)上記気体をステップ(a)で用いたプローブ分子を含んだ組成物に接触させるステップ、(c)上記特性を繰り返し測定するステップ、および(d)ステップ(a)と、上記BX型、HX型またはX型のガス状の化合物の存在下におけるステップ(c)との間における上記スペクトル特性の変化の相関を調べるステップ。ここで、物理化学的特性を測定するステップ(a)は先に実行してもよい。また、気体に含まれたBX型、HX型またはX型のガス状の化合物を捕捉する方法、少なくとも1つのガス状の形態のBX型、HX型またはX型の化合物と反応できる物質、およびBX型、HX型またはX型の化合物およびセンサも本発明の特徴である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ボロンのハロゲン化誘導体、ならびに対応するハロゲンとハロゲン化酸を、例えば汚染された環境において測定することと、このような環境の汚染を制御することに関する。
【0002】
ボロンのハロゲン化誘導体は、現在、半導体産業において重要な役割を演じている。実際に、ボロンはその電子配置によって特に有用なp型ドーパントであると認識されている。また、シリコン基板が確実に特定の性質を有するようにするために、エレクトロニクス産業はBFやBClなどの化合物を大量に消費している。これらのガス状の化合物は従来から取り扱いにくく、その毒性は特に重大であり、具体的には吸入した場合には遅れて被害が発生することがあり、生命に関わる肺腫につながることもある。ボロンのハロゲン化物が分解すると、対応する水素のハロゲン化物が形成されることがしばしばある。
【0003】
ハロゲンおよびそのハロゲンに対応する酸の性質、並びにこれらの相対的な安定性は、は、ボロン誘導体より長い期間利用されている。現在、様々な産業が、これらの化合物を日々の操業の中で使用している。
【0004】
塩素は特に化学産業でポリビニル塩化物(PVC)などのポリマーの調製や、溶媒、除草剤、冷却剤などの調製に使用されている。現在ではペーストや紙の製造においては塩素の使用が減少しているものの、ガス状の塩素は漂白では依然広く使用されている物質である。また、塩素は冶金の分野では特にチタン酸化物の生成に使用され、エレクトロニクス分野ではプラズマの形態で半導体の製造に使用されている。判明している塩素の生物的な毒性は、水環境の精製に利用されている。具体的には核産業において、フッ素は、ほとんどがウラン酸化物に対するフッ素付加を利用したウランの六フッ化物の合成に使用されている。臭素は使用量が比較的少ないものの、殺虫剤や除草剤などの化学生成物の生成に特に有用である。
【0005】
ハロゲンの酸性誘導体も別の産業分野で使用されている。塩素化合物ならびに、塩化メチル、塩化ベンジル、塩化金属(例えば塩化アルミや塩化シリコンなど)の塩素を含んだ化学生成物の生成にはHClを使用することが必要である。また、塩化水素は溶融亜鉛メッキや鉱物の分離プロセスで使用されており、エレクトロニクス分野では半導体の製造でも、また、湿気捕捉剤としても利用されている。フッ化水素も全般的に同じように使用され、それに加えてウラン処理にも使用されている。フッ化水素はその酸性度が物質や生体に対して及ぼす直接的な影響を別にしても、外部的に(皮膚や眼に対して)も内部的に(具体的には肺に対して)も特定の影響がある。これはフッ化水素酸の場合に特に当てはまり、フッ素と同様、低カルシウム血症と関連した死にいたる問題を生命体中で引き起こす。
【0006】
また、これらの気体の中には非常に可燃性の高い化合物があり、燃焼によって発生する生成物も有害なことが多い。
【0007】
上記の化合物のどれもが高い毒性を有することを考えると、そのような生成物を取り扱う際に利用者に対して最大の安全を提供することが重要である。これらの化合物のもつ高い反応性は、特に効果的で安全な保管条件を要求している。しかしながら、如何なる予防策をとって非常に反応性が高いガス状の化合物を扱ったところで、使用されるシステムからの漏れに対する予防策として、効果的な検出を実施することが不可欠である。
【0008】
これらの化合物の大半は、職場環境において現在許されている濃度が一般に0.1ppmと10ppmとの間である。
【0009】
先行技術によって既知となっている、ハロゲン化合物、具体的にはハロゲン化ボロン複合体の検出方法は、ほとんどが、アルミナ、シリカゲル、活性炭、TiOベントナイト、粘土、炭酸塩、またはゼオライト型の溶液中の着色試薬またはそれらの固体サポート上の含浸試薬を利用した比色分析検出に基づいて行われる。
【0010】
半導体産業で利用する金属シリコンの精製の流れの中で、クルクミンを使用するBClの検出方法が開発された。この方法はいくつかの段階からなり、ある段階では分析するクロロシランのサンプルをマンニトールで処理して、非揮発性のボロン化合物を形成する。この溶液は加水分解してフッ素化した後で抽出にかける。残留ボロン化合物は、次に非水性酸性媒体中でクルクミンを用いて処理すると、該クルクミンがボロンの陽イオンと反応することによって赤色複合体(ロソシアニン:rosocyanin、540nmで吸光性を有する)が形成される。この方法で、ボロン複合体の定量的な分析が50ppbの感度で可能になる。
【0011】
クロロシラン中のボロン系不純物は硫酸中でキナリザリンを用いて処理することによっても抽出することができる。この濃青〜紫色の溶液は水を加えると赤くなり、ボロン化合物の存在下では元の色に戻る。US−A−4,529,707によれば、630nmにおいて比色分析することによってボロン化合物の定量的な測定が5ppbの感度でできる。
【0012】
BFと、アルコール(MeOH、EtOH)またはエーテル、(Et)Oもしくはp−ジオキサンとの安定した複合体の、溶液中での形成を研究するために、275nmにおけるBF:EtOH複合体による吸光度の監視に基づく分光光度分光光度法が開発された。
【0013】
固体サポート上で使用する試薬としてはクルクミンまたはブロモクレゾール・グリーンが挙げられる。クルクミンは、液相でも用いられ、BCl、さらにSiHCl、HF、F、HBr、Clが検出できる。また、ブロモクレゾール・グリーンを使用すればSiHiCl、HF、Cl、BCl、SiHClおよびBFが検出できる。したがって、US−A−6,773,925では、これらの2つの化合物を活性化アルミナ上に堆積させて、0.5〜5ppmの感度の比色分析検出器中で使用している。
【0014】
特開昭60−140209号公報に記載されているように、カルミン酸は、塩酸と硫酸の存在下におけるBClの比色分析検出にも使用できる。US−A−4,820,316では、上記化合物の比色分析的変化を利用していないが、具体的には塩酸および硫酸と同様に、カルミン酸またはジアントラミドを含んだ物質の質量の変化を測定してBClを検出すこことを提案している。
【0015】
多孔質マトリックスに付けられたβ−ジケトンと、BFとが反応すると、高い吸光性と蛍光性を有するベンゾイルメタナートボロン・二フッ化物を形成するが、これは、ガス状のBFの分析に用いるために仏国特許出願公開第2 869 036号明細書に記載されている。
【0016】
他のハロゲン化合物の検出については、ハロゲン化誘導体の存在下では色が変化する着色剤を含浸した試薬チューブがある。例えば、塩素および/または臭素については、o−トルイジンまたはo−トリジンが茶〜オレンジ色になる。HClについては、ブロモフェノール・ブルーが黄色になる。
【0017】
電気化学的手法に基づいた検出方法も知られている。
【0018】
これまでに行われた研究が示すところでは、ハロゲン化ボロン化合物、対応する酸、およびハロゲンを検出および/または収集するにあたって、直接的に、迅速に、かつ効果的に使用可能な方法はほとんどないようである。
【0019】
また、これらの方法では上記の異なる化合物を同時に検出することができない。
【0020】
これらの化合物の反応性と毒性を考えると、大気中で、具体的には職場環境において、比較的低い濃度でも検出するための、多様で、安全で、且つ迅速な手段を利用者に対して提供することが非常に重要である。また、特に、異なる化合物が同時に存在することがあるエレクトロニクス分野では、各化合物の存在を監視することは有用である。また、これらの化合物を分析できれば有益である。
【0021】
本特許出願が提案する検出、定量および捕捉の方法はこの短所を安全かつ効果的に解決する。
【0022】
〔発明の概要〕
本発明の特定の主題は、ハロゲン化ボロン誘導体、ハロゲンおよび対応する酸を検出する方法を提供することである。本方法は、具体的には化学式がBX、HXおよびX(Xはハロゲンを示す)で表わされるガス状の化合物を、プローブ分子を使用して検出方法に関する。
【0023】
また、本方法は検出した化合物の量を測定することもできる。
【0024】
したがって、本発明の特定の主題は、プローブ分子を含んだ組成物を使って、気体内のBX型、HX型またはX型のガス状の化合物を検出する方法であって、以下のことを特徴とする。すなわち、該プローブ分子は、BX型、HX型またはX型の1つ以上の化合物と反応すると、物理化学的特性の少なくとも1つが変化する分子であり、この変化は適切な分析手法で測定可能であり、さらに、以下に述べるステップがこの記述順に実行される:
(a)上記プローブ分子の、スペクトル特性などの上記物理化学的特性を測定するステップ、
(b)上記気体を、ステップ(a)で用いたプローブ分子を含んだ組成物に接触させるステップ、
(c)上記物理化学的特性を繰り返し測定するステップ、および
(d)ステップ(a)と、上記BX型、HX型またはX型のガス状の化合物の存在下におけるステップ(c)との間における、上記スペクトル特性の変化の相関を調べるステップ。
【0025】
本発明の上記方法が手順としてステップ(a)を備える必要がないように、ステップ(a)における上記物理化学的特性の測定を一度だけ先に実行してもよい。
【0026】
上記BX型、HX型またはX型のガス状の化合物は、例えばHBr、HF、F、Brであり、特にHCl、Cl、BCl、またはBFである。
【0027】
上記ガス状の化合物は、特に上述したような様々な産業分野、中でも半導体産業の製造あるいは研究施設で見られる気体中に存在していてもよい。
【0028】
上記ガス状の混合物と上記組成物との接触は、通常そのガス状混合物の気流の存在下で直接行われてもよく、また、減圧して行ってもよい。さらに、該ガス状の化合物を液体溶媒中に通気させて溶解した後、この溶媒とそこに溶解したガス状混合物とからなる液体媒体中でガス状混合物の成分と上記組成物とを互いに接触させてもよい。好ましい形態では、液体溶媒に溶解させずに、この接触を直接実行する。
【0029】
ここで取り上げている物理化学的特性は、具体的には反射または透過によって測定可能な吸光性、蛍光性、発光性などのスペクトル特性であってもよく、さらに、導電率、誘電定数などの電気的特性であってもよく、あるいは比抵抗や質量などの他の特性であってもよい。
【0030】
上記測定は単純に検出するだけでもよい。
【0031】
上記物理化学的特性の変化は、1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物とプローブ分子との反応に関連しており、そのような特性の変化の本質はプローブ分子と、プローブ分子が検出する化合物との反応によってできる生成物との間に存在する構造的な違いにある。
【0032】
「組成物」とは化合物またはその混合物を指し、好ましくは固体の形態であり、典型的にはマトリックス、具体的には多孔質マトリックスを備えている。
【0033】
上記組成物は、具体的にはプローブ分子だけで構成されていてもよい。このことはプローブ分子がポリマーの場合に特に当てはまる。
【0034】
上記組成物はさらに界面活性剤を含んでいてもよく、界面活性剤は、組成物中でのプローブ分子の溶解度を上げるか、または、ある特定のサイズと形状を有する凹部を形成することによって多孔質マトリックスを形成するか、いずれかの役割をしている。
【0035】
「プローブ分子」とは、1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物と反応すると物理化学的特性の少なくとも1つが変化し、その変化が適切な分析手法で検出可能である任意の分子を指す。ここで取り上げている物理化学的特性の本質を考慮することによって、当業者は適切な検出手法を容易に決定することができる。こうすることによってスペクトル特性の変化が分光光度法で検出することができる。したがって分光光度的特性の変化について述べることができる。プロセスを実施する間に検出可能な物理化学的特性が複数種類の変化を起こす可能性がある。これらの変化の内の1つ以上を使用すればよい。プローブ分子の物理化学的特性の変化は、プローブ分子を含む可能性のある組成物から検出可能である。上記気体の一つと反応する前または反応した後でプローブ分子の物理化学的特性を測定することが課題なのであれば、当然、その測定はプローブ分子を含んだ組成物に対して実施してもよいことがわかる。したがって、このことを範囲を広げて考えれば、「プローブ分子の性質の測定」について述べることができるのと同様に、「組成物の特性の測定」についても述べることができる。換言すれば、上記測定はプローブ分子、またはそれを含んだ組成物に対して実施することができる。プローブ分子の構造は反応の最後で変化することがありうる。したがって、プローブ分子そのものが開始時にはなんら目立った性質を有していないが、その反応生成物が目立った性質(例えば、スペクトル特性)を有している可能性がある。この場合、反応の最後に見られる変化が、探しているガス状の化合物の存在を検出可能にする。
【0036】
このようにして、プローブ分子をその特性(例えば、BX型、HX型またはX型化合物との反応の前、および/または後のスペクトル特性)で記述することができる。吸収スペクトルおよび/または蛍光スペクトルは、変化が当業者にとって既知の適切な分光光度法で測定可能であり、該スペクトルには特に注意を払うべきである。例えば、プローブ分子は、吸収および/または蛍光スペクトルがBX、HX、および/またはX型化合物との反応によって変化する発色団であってもよい。「吸収および/または蛍光スペクトルの変化」とは、具体的には、ある波長における吸収または蛍光強度の得失、吸収の最大値および/または蛍光の最大値の波長のシフト、あるいはスペクトルにおける新たな周波帯の出現などの効果を指す。測定した特性は、誘電定数と関連した、ラブ型波との相互作用に対応付けることもでき、さらに、質量や粘弾性と対応付けることもできる。
【0037】
本発明で使用可能なプローブ分子は、具体的にはハライド、四級アンモニウムのハロゲン化物、クマリンとその誘導体、ポルフィラジンとその誘導体、フルオレセインとその誘導体、ならびに、トリアリールメタンである。ローダミン、クレシル・バイオレット、フェノキサジンの誘導体、並びにオキサゾンも挙げられる。さらに具体的には、ハライド(NaI、KI、KBr、NaCl)、四級アンモニウムのハロゲン化物(ヨウ化キトサンメチルグリコールトリメチルアンモニウム、二臭化デカメトニウムとヨウ化3−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)、クマリン522、クマリン500、クマリン120、クマリン102、クマリン47、マグネシウム、シリコン、二リチウムフタロシアニンと二ナトリウムフタロシアニン、フルオレセイン、およびクリスタルバイオレットが挙げられる。
【0038】
上記プローブ分子を使用して、全てのBX型、HX型およびX型の化合物、またはその一部を検出することができる。
【0039】
上記プローブ分子は、BX、HX、およびX型の化合物によって反応が異なり、したがって、検出した化合物の特性、あるいは化合物が存在しないことについて定性的な情報を提供する。
【0040】
好ましいハライドは、KI、KBr、KCl、NaI、NaBr、およびNaClである。一般に、ハロゲン化アルカリが同じハロゲン化物を含んだ化合物の検出に使用できるということは驚くべきことである。これらのプローブ分子の場合、測定する分光光度的特性は具体的には吸光度である。観察される波長は、生成されたハロゲン化誘導体(例えば、I、Br、またはCl)または特定の吸収スペクトルを有するインターハロゲン化誘導体(inter-halogenated derivative)
(例えば、BrCl、BrCl)の波長に相当している。したがって、例えば、KBrを特定の吸収スペクトルを有するBrに対して曝露している間に起きる吸光度の変化は、Br3の形成と関連している。これらのプローブ分子はBX型とX型の化合物に対して特徴的に作用し、HX型化合物とはあまり反応しない。
【0041】
四級アンモニウムのハロゲン化物の中では、化学式(I)で表わされるものを使用することが好ましい。
【0042】
【化1】

【0043】
式中、R、R、Rは互いに独立してH、または炭素数が1から22の炭素含有鎖に相当し、Rは該炭素含有鎖と多糖類の内から選択され、Xはハロゲン、好ましくはI、Br、またはClである。
【0044】
炭素含有鎖はC−C22、好ましくはC−C10であり、いずれも任意で、一置換または多置換されていてもよく、直鎖状でも、分岐鎖状でも、または環状でもよく、架橋構造を有していても有していなくてもよく、また飽和していても不飽和でもよい。なお、該置換基は、1つ以上のN、O、F、Cl、P、SiまたはSなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。このような炭素含有鎖の中で好ましいアルキルラジカルは、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、イソプロピルラジカル、ブチルラジカル、イソブチルラジカル、tert−ブチルラジカル、およびペンチルラジカルである。上記不飽和アルキルラジカルの中では、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、tert−ブテニル、ペンテニル、およびアセチレニルを挙げることができる。
【0045】
アリールラジカルは、以下の特徴を有する炭素含有構造に相当している。すなわち、(1)芳香族系またはヘテロ芳香族系である。(2)一置換または多置換されている。(3)1つあるいは複数個の芳香環またはヘテロ芳香環で構成され、各環は原子数が3から8である。(4)上記ヘテロ原子はN、O、P、F、Cl、SiまたはSである。
【0046】
好ましくは、R、R、およびRは、H、CH、C、C、C、CH(C)、CH(C11)、およびC11から互いに独立して選ばれた脂肪族基である。
【0047】
は、好ましくはC−C22炭素含有鎖、さらに具体的にはC−C22アルキル基、特に、化学式−(CH−CHで表わされる該アルキル基(n=1から21)を示し、典型的にはC11−C21基を示しているが、好ましくは、少なくとも1つのアンモニウム、アリール、シクロヘキシル、セチル、あるいは特にセルロース、キトサンまたはその誘導体から選ばれた多糖類を含んでいる。
【0048】
多糖類は多数の単糖類からなる単位を備えた重合構造物であり、この単位はグリコシド結合によってつながれており、各単位は独立して置換可能で、置換基は、1つ以上のN、O、F、Cl、P、SiまたはSなどのヘテロ原子、さらにアルキルラジカルまたはアリールラジカルを含んでいてもよい。ポリマーの質量は粘性に影響するので、平均重合度、つまりポリマー中の平均的な単量体の個数(m)が2から100,000の間、特に10から20,000の間、さらに特には20から1,000の間であれば、多糖類型のプローブ分子を使うほうが容易である。
【0049】
が多糖類である場合、Rは通常100個から500個の単量体を含んでいる。アンモニウムを担持している単量体単位は、好ましくは化学式(I’)で表わされる。
【0050】
【化2】

【0051】
式中、R40は、水素またはC−C12の一般的な炭素含有鎖に相当し、好ましくは、エーテル酸化物基(ether-oxide function)を備え、具体的にはCHOC−基である。Xはハロゲンに相当し、好ましくは、先に定義したようにCl、BrまたはIに相当している。R、R、およびRは、複数個のHまたはC−Cアルキル基、好ましくはCと、互いに独立して相当していることが好ましい。
【0052】
が上記の単量体単位からなる多糖類である場合、アンモニウムの形で存在する窒素の個数は当然可変であってもよい。その個数は理論的には1からmまで変化可能である。ポリマー中に占める含アンモニウム単量体単位の量は、単量体単位の総量の40%から90%の間であることが好ましく、通常は70%に近い数値である。
【0053】
上記四級アンモニウムが界面活性剤の性質を有していれば好ましい。また、カチオンポリマーの形であっても好ましい。
【0054】
好ましくは、上記四級アンモニウムのハロゲン化物であるプローブ分子は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ヨウ化キトサンメチルグリコールトリメチルアンモニウム(Kikuchi Y., et al. Makromol. Chem. 188 & 108. 2631 & 6776c,(1987))または、ヨウ化テトラブチルアンモニウムか臭化テトラブチルアンモニウムである。
【0055】
このようなプローブ分子の場合、測定する分光光度的特性は好ましくは吸光度であり、観察される波長は、反応開始時の試薬にもよるが、好ましくは生成物の吸光度に相当する。これらのプローブ分子はBX型とX型の化合物に対して特徴的に作用し、HX型化合物とはあまり反応しない。
【0056】
本発明に関連するプローブ分子はクマリン誘導体、特に7の位置にある炭素が窒素を担持しているクマリン誘導体、好ましくは帯電しておらずsp3型のクマリン誘導体、さらに具体的には化学式(II)で表わされる化合物にも相当している。
【0057】
【化3】

【0058】
式中、RとRは、H、アルキルラジカル、またはアリールラジカルから、好ましくは、H、C−C15アルキルラジカル、ケトアルキル、エステル、およびフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール)から互いに独立して選択する。RとRは、Hと、C−C15アルキルラジカルから互いに独立して選択する。R、R10、およびR11はHとC−C15アルキルラジカルから互いに独立して選択する。
【0059】
したがって、プローブ分子は通常以下に列挙するクマリン誘導体(命名法:CAS番号)から選択する。すなわち、クマリン120(CAS:26093−31−2)、クマリン2(CAS:26078−25−1)、クマリン466(CAS:20571−42−0)、クマリン47(CAS:99−44−1)、クマリン102(CAS:41267−76−9)、クマリン152A(CAS:41934−47−8)、クマリン152(CAS:53518−14−2)、クマリン151(CAS:53518−13−3)、クマリン6H(CAS:58336−35−9)、クマリン307(CAS:55804−66−5)、クマリン500(CAS:52840−38−7)、クマリン314(CAS:55804−66−5)、クマリン30(CAS:41044−12−6)、クマリン334(CAS:55804−67−6)、クマリン522(CAS:55318−19−7)、クマリン7(CAS:27425−55−4)、クマリン6(CAS:38215−35−0)とクマリン153(CAS:53518−18−6)、クマリン445(CAS:28821−18−36)、クマリン460(CAS:91−44−1)、クマリン461(CAS:87−01−4)、クマリン503(CAS:55804−70−1)、クマリン510(CAS:87349−92−6)、クマリン519(CAS:55804−65−4)、クマリン52IT(CAS:1 14768−72−8)、クマリン522B(CAS:53518−19−7)、クマリン523(CAS:55804−68−7)、クマリン525(CAS:87331−47−3)、クマリン540(CAS:38215−36−0)、および、クマリン545(CAS:85642−1 1−1)である。
【0060】
これらの化合物のスペクトル特性は、特に共役環系の存在と窒素含有電子供与体存在とに基づいている。化学式(II)に相当する化合物は既に多数合成され、特にレーザ着色剤産業分野で市販されている。さらに、これら化合物のスペクトル特性は既に明らかになっている。
【0061】
これらのプローブ分子の場合、測定する分光光度的特性は吸光度または蛍光である。吸光性を測定する場合、対象となる波長は、エネルギーレベルが最も低い吸収帯の波長に相当し、一般に320nmと440nmとの間である。曝露が進行すると、この吸収帯の強度は低下し、青寄りにシフトした新しい吸収帯が出現する。これらのプローブ分子の蛍光は400nmと580nmとの間である。これらのプローブ分子はHX型とBX型の化合物に対して特徴的に作用し、X型の化合物とは反応しない。
【0062】
本発明においてポルフィラジンとその誘導体、特にテトラベンゾテトラアザポルフィリン、特に化学式(III)で表わされる化合物もプローブ分子として使用してよい。
【0063】
【化4】

【0064】
式中、RaからRhは互いに独立してH、酸などの硫化または燐化された有機官能基、炭素含有鎖に相当している。なお、この炭素含有鎖は任意で一置換または多置換されていてもよく、直鎖状でも、分岐鎖状でも、または環状でもよく、架橋構造を有していても有していなくてもよく、飽和または不飽和C−C22、好ましくはC−C10であり、置換基はN、O、F、Cl、P、SiまたはSなどのヘテロ原子を1つあるいは複数個含んでいてもよい。好ましいアルキルラジカルは上記炭素含有鎖にあり、特に、ここではメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、イソプロピルラジカル、ブチルラジカル、イソブチルラジカル、tert−ブチルラジカル、およびペンチルラジカルを例として挙げることができる。上記不飽和アルキルラジカルの中では、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、tert−ブテニル、ペンテニル、およびアセチレニルを挙げることができる。さらに、このアルキルラジカルは芳香族系またはヘテロ芳香族系の、一置換または多置換された炭素含有構造に対応するアリールラジカルでもよく、この炭素含有構造は1つあるいは複数個の芳香環またはヘテロ芳香環で構成され、各環は原子数が3から8であり、さらに上記ヘテロ原子はN、O、P、F、Cl、SiまたはSであってもよい。RaおよびRb、RcおよびRd、ReおよびRf、またはRgおよびRhは互いにつながった架橋基に相当しているので、上記分子は構造の中心に1つ以上の窒素環につながった環状構造を備えている。
【0065】
RaおよびRb、RcおよびRd、ReおよびRf、またはRgおよびRhは、全体として芳香環を形成するか、または水素に相当することが好ましい。上記分子は好ましくはテトラベンゾポルフィラジン(フタロシアニン)である。
【0066】
RaおよびRb、RcおよびRd、ReおよびRf、またはRgおよびRhが全体として芳香環を形成する場合、上記分子は、例えば同一のフタロニトリル分子を4つ縮合することによって合成できる。
【0067】
ポルフィラジンとその誘導体は、任意で、カチオンまたはカチオンMの官能基を複合体化してもよい。したがって、pは、このタイプの化学物質の存在を示す指数0または1に相当している。このカチオンまたはカチオンMの官能基は、一般にFe、Co、Cu、またはNiなどの酸化度が通常2または3の遷移金属から選択した金属でもよい。該金属は好ましくはMg(II)またはCu(II)である。さらに、ポルフィラジンとその誘導体が、Si(IV)またはアルカリ金属などの、それよりも軽い要素を複合体化してもよい。この場合、Li(I)またはNa(I)などの2つの原子の複合体化が観察される。
【0068】
このような分子を観察する際に推奨できる分光光度的特性は蛍光と吸光度である。吸収においては、通常690nm付近への比較的低いへの遷移が徐々に消滅し、これに関連した、吸収最大波長が赤に向かってシフトする新しい遷移の出現が同時に観察できる。BXが大員環のアザ架橋の4つの窒素のそれぞれと連続して反応すると、このシフトは大きくなる。これらのスペクトル変化にはおよそ560nmにおける等吸収点が現れる。蛍光においては、等吸収点(つまり、吸収される光子の個数が一定である波長)でプローブ分子を励起することによって、およそ560nmにおいて蛍光が観察できる。このスペクトルは700nm付近に中心があり、この周波数は、膜をBFに曝露すると深色シフトする。原料化合物をそれ以外の波長、例えば690nm付近にある吸収最大波長で励起することもできる。分子の等吸収点と、吸収の最大値および蛍光の最大値の位置とは、環境、特に上記組成物が含む他の構成物質の性質に影響される。一方で、HXの反応は中央の金属で起き、その中心でこの金属が放出され、2つの窒素がプロトン化されると考えられる。次に、ピークの解像度を観察する。これらの分子は、BX型とHX型の化合物に対して特に適切で、X型の化合物とは反応しない。
【0069】
フルオレセインとその誘導体、特に染色液として使用するものは、本発明においてプローブ分子として使用することができる。これは、より典型的には、中央の環の架橋結合に含まれていないアリール基の炭素、さらに具体的には化学式(IVa)または(IVb)で表わされる化合物を含んだフルオロンの誘導体である。
【0070】
【化5】

【0071】
式中、R12、R13、R14およびR15は、互いに独立してH、1個から4個の炭素原子を含んだアルキル基、ハロゲン、あるいは−NO基に相当している。R16、R17、R18およびR19は、互いに独立してH、C−Cアルキル、C−Cアリール、ハロゲン、アミン、ヒドロキシアルキル、または−N=C=Sに相当している。
【0072】
化学式(IVa)と(IVb)は、化学平衡状態で存在可能な形に相当している。
【0073】
プローブ分子は通常以下に列挙するフルオレセイン誘導体(命名法:CAS番号)から選択する。すなわち、フルオレセイン「アシッドイエロー73」(CAS:2321−07−5)、6−アミノフルオレセイン(CAS:51649−83−3)、5−アミノフルオレセイン(CAS:3326−34−9)、6−カルボキシフルオレセイン(CAS:3301−79−9)、フルオレセインチオイソシアン酸塩(CAS:3326−32−7)、フルオレセイン27(CAS:76−54−0)、ジニトロフルオレセイン(CAS:24545−86−6)、テトラクロロフルオレセイン(CAS:6262−21−1)、ジブロモフルオレセイン「ソルベントレッド72」(CAS:596−03−2)、エオシンB「アシッドレッド91」(CAS:56360−46−4)、エオシンY「アシッドレッド87」(CAS:15086−94−9)、エオシン−5−チオセミカルバジド(CAS:1 19881−42−4)、エリトロシンB「ソルベントレッド114」(CAS:15905−32−5)、エリトロシンBイソチオシアン酸塩(CAS:72814−84−7)、ローズベンガルラクトン(CAS:4159−77−7)、およびフ、ロキシンB(CAS:18472−87−2)である。
【0074】
これらのプローブ分子の場合、測定する分光光度的特性は、特に吸光度と蛍光である。これらのプローブ分子はBX型とHX型の化合物に対して特徴的に作用し、X型化合物とはあまり反応しない。
【0075】
トリアリールメタン属の染料に由来するプローブ分子、具体的にはアミノトリアリールメタン属に由来する染料、特にジアミノトリアリールメタン類およびトリアミノトリアリールメタン類、つまり、全ての環のうち、2つまたは3つの環においてその3つの環を連結する炭素に対してパラの位置に窒素を担持したトリアリールメタン類、さらに具体的には化学式(V)で表わされるアミノトリアリールメタン類も使用可能である。
【0076】
【化6】

【0077】
式中、R20、R21、R22およびR25は互いに独立してH、炭素含有鎖、および特に1個から6個の炭素原子を含んだアルキルラジカル、好ましくはメチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、およびアリールラジカルに相当している。
26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36およびR37互いに独立してH、炭素含有鎖、および特に1個から6個の炭素原子を含んだアルキルラジカル、好ましくはメチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、および架橋構造(炭素を含まず、通常SOを含んだ有機官能基)を有していてもよいアリールラジカルに相当している。
ZはH、−NR2324型のアミン、または−N232454型のアンモニウムに相当していて、このR23、R24、およびR54は互いに独立してH、炭素含有鎖、特に1個から6個の炭素原子を含んだアルキルラジカル、好ましくは、メチル、プロピル、ブチル、およびアリールラジカルの内から選択する。
X’はハロゲンであり、好ましくはF、Cl、BrまたはI、あるいはシュウ酸塩などの有機アニオンである。
【0078】
上記プローブ分子は、好ましくは疎水性の化合物である。特に微生物学でグラム型細菌の染色に使用されるクリスタルバイオレット(つまりパリスバイオレット、ゲンチアナ紫、または、メチル紫)は、特に有用なアミノトリアリールメタンである。このプローブ分子は、(命名法:CAS番号)クリスタルバイオレット(CAS:1552−42−7)、マラカイト緑G(CAS:633−03−4)、エチル緑(CAS:71 14−03−6)、メチル2B(CAS:8004−87−3)、メチル6B(CAS:548−62−9)、メチル10 B、クーマシー(CAS:6104−58−1)、フクシン(CAS:569−61−9)、メチル青(CAS:28983−56−4)、新規のフクシン(CAS:3248−91−7)、パラロザニリン(CAS:569−61−9)、およびビクトリア青BO(CAS:2390−60−5)に由来するラクトンでもよい。
【0079】
これらのプローブ分子の場合、測定する分光光度的特性は、特に吸光度と蛍光である。これらのプローブ分子はBX型とHX型の化合物に対して特徴的に作用し、X型の化合物とはあまり反応しない。
【0080】
ステップ(a)およびステップ(c)で測定するスペクトル特性は、通常、吸光度または蛍光である。
【0081】
異なるプローブ分子を同時に使用することも可能である。この場合、同じ化合物の存在下でスペクトル特性などの物理化学的特性の変化が異なる分子を使用することが好ましい。したがって、例えば、BX型およびX型の化合物とだけ反応するプローブ分子を、BX型およびHX型の化合物とだけ反応するプローブ分子と同時に使用して、異なるタイプの化合物の存在を同時に検出測定することが可能である。異なるプローブ分子は、互いに不活性である限り混合してもよい。使おうとしている混合物にあわせて、当業者が前もって試験を実施すればよい。異なるプローブ分子を物理的に分離してもよい。
【0082】
上記組成物は上記のようにプローブ分子以外の1つ以上の化合物を含んでいてもよい。
【0083】
特定の実施形態によれば、上記組成物はマトリックスを備え、そこにプローブ分子が組み込まれている。通常、このマトリックスは、キトサン、セルロースもしくはその誘導体などの多糖類、無機ポリマーもしくは有機無機ハイブリッドに基づいた多孔質物質、ヒドロゲル、またはエアロロゲルの中から選択可能な有機ポリマーである。この実施形態は、上記プローブ分子だけでは容易にサポート上に直接堆積させて保存できないとき、例えばプローブ分子が粉末または液体であるときに特に好適である。このようなサポートは通常分光光度においてよく使用されるガラススライドなどが例として挙げられる。
【0084】
プローブ分子は、溶媒を蒸発させることによってサポート上に直接堆積させてもよい。この場合、プローブ分子の好ましい構造はポリマー型であり、通常Rが多糖類に相当している化学式(I)に相当する。
【0085】
無機ポリマーまたは有機無機ハイブリッドに基づいた多孔質物質のマトリックスの場合、プローブ分子のマトリックス内への組込みには、特にゾルゲル化学変化(金属酸化物のネットワークの重縮合)と、溶液中における界面活性剤相の物理化学的変化(組織化構造内でナノスケールで起きるミセルの自己アセンブリ)とが関わっている。
【0086】
対象となる汚染物質を吸着する特定の表面を増加させ、試薬間での反応衝突が起こる確率を増加させるためには、小さなサイズの(直径<20Å)孔を有する多孔質マトリックスを使用することが好ましい。
【0087】
プローブ分子は、金属酸化物からなるナノ多孔質ゾルゲルマトリックス内に組み込まれていることが好ましい。この金属酸化物のナノ多孔質ゾルゲルマトリックスは、以下の化学式(VI)で表わされる少なくとも1つの金属前駆体から調製可能である。
M(Y)(OR38(R39 ・・・(VI)
式中、Mはシリコン、アルミ、チタン、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、イットリウムおよびセリウムから選択される金属に相当する。Yはハロゲンであり、好ましくは塩素である。R38とR39とは、互いに独立してアルキルラジカルまたはアリールラジカルに相当する。i、jおよびkは整数であって、その合計はMの原子価に等しく、また、i+jは2以上である。
【0088】
好適な実施形態によれば、上記金属Mはシリコンまたはジルコニウムである。
【0089】
特に好適な実施形態によれば、上記金属前駆体はSi(OMe)またはSi(OEt)である。
【0090】
また、上記金属前駆体の選択がマトリックスの孔の大きさに影響し、検出対象の化合物に対するプローブ分子の可触性に影響することが分かっている。例えば、シリコン酸化物の場合、R38鎖とR39鎖とは重なり合って孔隙率を低下させるので、両鎖が長くなると孔の大きさは小さくなる。孔の大きさは、周りに無機ポリマーの堅い壁を形成するモールドとして作用する、界面活性剤を組み込むことによって増加する。壁の形成後に界面活性剤は洗って取り除く。したがって、6Å未満の直径の分子を特定して検出するためには、化学式(VI)で表わされる該式中において、R38とR39とは1個から6個の炭素原子を含んだアルキルまたはアルキルアミンであり、好ましくはメチルラジカルまたはエチルラジカルである金属酸化物から調製したマトリックスを使用することが好ましく、または、それより大きな直径(12Å)を有する分子を検出するためには、化学式(VI)で表わされ、該式中でR38とR39がプロピルアミンである金属酸化物から調製したマトリックスを使用することが好ましい。
【0091】
組成物がプローブ分子を含むという表現がされている場合、該組成物がプローブ分子を少なくとも1つ含み、好ましくは、最小の所望の検出閾値に相当する条件下において、着目している物理化学的特性の測定ができる程度に充分な量のプローブ分子を当然含んでいるものとする。該閾値は利用者が利用可能な技術的手段の検出閾値によって決まる。同様に、組成物の少なくとも1つの物理化学的特性を測定するものとする。同様に、1つ以上のガス状の化合物の存在および/または量を検出および/または測定することができるものとする。当業者が明細書の記載を読めば、「1つ」という表現が、どの場合に「少なくとも1つ」または「1つだけ」を意味するのかが理解できるであろう。
【0092】
組成物の物理化学的特性の測定するためには、上記特性の測定手段に適したサポート上に、組成物を堆積させることが一般に望ましく、分光光度的特性または電気的特性が関わっている場合には、特に望ましい。分光光度的特性の場合、通常、このサポートは組成物と相互作用を起こさない固体サポートであり、一般に平坦な表面を有する。電気的特性を測定する場合、このサポートは具体的には導電性ポリマーまたは炭素ナノスレッドもしくは炭素ナノチューブなどの導電性のサポートである。サポートのスペクトル特性は特定のものである必要はないが、組成物の分光光度的特性の測定に干渉しないように選択される。基板は分光光度法に適したものであり、測定を可能にし、一般には、透過による吸収の変化の測定の間に使用される典型的にはガラス、プラスチック系材料または石英から構成されたスライドであり、UV光および/または可視光に対して透過性を有することが多い。反射または発光による吸収の変化の測定が要求されるときには、上記サポートが透明でなくてもよい。また、この場合、サポートは内側に曲がった表面を有していてもよい。こうすることによって分析するための光線の分布が向上する。
【0093】
通常、組成物が初期段階には溶液の形態であれば、様々な手法を使ってサポート上に直接堆積させる。この手法は例えば溶液の液滴を基板上に滴下して拡散する手法(ラングミュア−・ブロジェット法、噴霧法、スピンコーティング法、引き抜速度を一定にした浸漬コーティング法など)、または部分真空中で蒸着させる手法がある。特に長鎖を有する場合(通常C10−C22の場合を指す)に、ミセルを形成しやすい四級アンモニウムの存在下では、浸漬コーティング法が特に適している。組成物がキトサンなどのカチオン性ポリマーであるマトリックスを含んでいる場合、マトリックスを溶媒に溶解できるようにして、スピン−コーティング法または浸漬コーティング法を用いて適切な基板上に堆積させてもよい。組成物が初期段階には固体の形態であれば、部分真空中で昇華させることによってサポート上に直接堆積させる。
【0094】
上記気体は溶媒中で溶解させてステップ(b)で組成物に接触させる。好ましくは、ステップ(b)において、気体は、ガス流の形態のプローブ分子を含んだ組成物に接触させる。
【0095】
ステップ(c)で行なう第2の測定は、ステップ(a)の測定と同じ特性、特に吸収、反射または発光に関連している。これらの3つの場合、上記変化は、反応前のプローブ分子による吸収、反射、または発光の変化に関係しているか、または、プローブ分子と検出された上記気体とが反応することによって発生する生成物に関連した特性の出現に関係している。
【0096】
特定の実施形態によれば、ステップ(d)は、ステップ(a)からステップ(c)の間の上記スペクトル特性の変化を、上記気体中のBX型、HX型またはX型のガス状の化合物の量と相関付ける過程を含んでいる。
【0097】
ステップ(b)とステップ(c)とは同時に実行してもよい。この場合、スペクトル特性の変化は経時的に監視でき、相関関係によってBX型、HX型またはX型のガス状の化合物の量が決定できる。
【0098】
別の一実施形態によれば、別の特性、特に吸収、反射、または発光などの分光光度的特性をステップ(a)とステップ(c)とにおいて測定する。
【0099】
組成物の物理化学的特性を測定するために使用する手段は、考察中の分野で標準的に使用されているものである。分光光度的特性の測定については、使用する手段は、光学的測定、特に吸収、蛍光、または反射の測定が実行可能になる手段である。
【0100】
一般に光子は分光光度計、ダイオードストリップ(diode strip)を介して、または光電子増倍管によって直接収光し、分析が可能である。この光電子増倍管を用いる場合、プローブ分子の特性の変化および/またはプローブ分子が汚染物質と反応することによって発生する生成物の特性の変化を区別するために、狭帯域の干渉光学的フィルタまたは広帯域の干渉光学的フィルタを使用する必要がある。測定する特性によるが、上記デバイスは、適した波長でプローブ分子を励起する手段を備えている。
【0101】
特定の実施形態によれば、表面プラズモンを使用してプローブ分子の光学的特性の変化を増幅することも可能である。実際に、金属の薄層の近傍で、光照射によって励起されたプローブ分子は表面プラズモンと結合して検出限界を下げ、これによってより少量の気体を検出するまたは定量化することが可能になる。
【0102】
別の一実施形態によれば、測定した特性はラブ型波との相互作用に相当する。プローブ分子と気体との反応に関連して発生する構造的変化は、特にラブ型の波に影響する質量、粘弾性、または誘電定数の変化につながる。この実施形態は一般に圧電性物質の存在下で行われる。この圧電性物質は、サポートとなるか、またはその上で、通常、遅延線または共振装置の構成にしたがって、インターデジタル型の櫛型電極を使用して、ラブ型の波を検出し、生成することが可能なものである。組成物が堆積している石英結晶の共振周波の変化の測定値を利用したマイクロバランス装置を使用して、これら圧電性物質と反応した対象汚染物質を定量化してもよい。
【0103】
本発明は、1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物を一旦検出すれば、これらを除去することもできる。
【0104】
したがって、本発明の主題の一つは、気体に含まれたBX型、HX型またはX型のガス状の化合物を捕捉する方法であり、その気体を、先に定義した組成物に接触させることを特徴とする。
【0105】
組成物はマトリックスを備えている、またはプローブ分子はポリマーのような性質を有していることが好ましい。
【0106】
上記組成物は、通常、セル(具体的には袋状であるが形状は任意であり、例えば平行六面体または円筒状のセル)に入れられる。該セルには調節板を設けて接触距離を延ばしても延ばさなくてもよく、さらに、処理する気体の吸気口と処理した気体の排気口とを設けてある。組成物は先述のようにサポート上に堆積させてもよく、このサポートを、具体的には調節板に配置してもよい。気体の除去においてサポートの性質はあまり重要ではない。サポートが組成物に対して化学的に不活性であることが当然望ましい。このことは、ガラス、石英またはプラスチック系材料からなるサポートの場合には特に当てはまる。
【0107】
このような処理をする場合、多孔質マトリックスは円筒状のチューブに封じ込めた粉末もしくは顆粒の形態、または薄い多孔質膜を円筒の壁に堆積させた形態とすることができ、この堆積は特に蒸着法で実施することができる。処理する汚染物質の含有量によるが、膜の厚さ、または粉末もしくは顆粒の量、およびプローブ分子の濃度を変化させることが可能である。
【0108】
数種類の特定のプローブ分子を組み込むことによって、数種類の汚染物質を処理することが可能である。
【0109】
捕捉された気体の量は、組成物中のプローブ分子の存在量に最もよく対応する。したがって、例えば、多孔質マトリックスを1kgと、プローブ分子を重量で5%から10%とを含んだ組成物の場合、選択したプローブ分子によれば、BX、HX、またはXを1ppm含んだ5,000mから11,000mのガス状の溶出物を処理することが可能である。気流中の気体含有量によって(>1ppmまたは<1ppm)処理可能な体積は増減する。
【0110】
気体吸引装置を使用して、処理する気体を、大量に、プローブ分子に接触させることが好ましい。
【0111】
上記セルは、具体的には少なくとも1リットル/時の流速の気体、特に少なくとも10リットル/時の流速の気体、好ましくは少なくとも100リットル/時の流速の気体が処理できるように設計されたものである。一般に、5,000mから11,000mの処理体積が、ひと月の使用に相当する。流速については、さらに高い流速が当然考えられ、例えば、数mを1〜2時間で処理するためには1分当たり100リットルの流量になる。
【0112】
特に、セルはチューブ形状を有していてもかまわない。処理する気体の流速によるが、チューブの直径と長さを変えてもかまわない。
【0113】
Ms15の場合、反応は可逆的である。真空中で上記チューブを排気してMs15を再生してもよい。
【0114】
上述のように、物理化学的、特に分光光度的特性の測定を実行することによってプローブ分子が飽和する様子を監視することが可能である。
【0115】
上記方法を実行するために、発明者らはさらに、BX型、HX型またはX型の成分と反応できる新規物質を開発した。
【0116】
これが、本発明の主題のもう一つが、先に定義したように、少なくとも1つのプローブ分子を含んだ多孔質マトリックスを備えた、または該多孔質マトリックスによって構成されるBX型、HX型またはX型の少なくとも1つのガス状の形態の化合物と反応することができる物質を提供することである理由である。該多孔質マトリックスは、通常、ゾルゲル法によって調製された無機ポリマーまたは有機無機ハイブリッドのマトリックスによって構成されている。
【0117】
本発明は以下のステップを備えた、上記物質の調製方法とも関連する;
(a)好ましくはゾルゲル多孔質マトリックスを調製するステップ、および
(b)先に定義したプローブ分子を上記多孔質マトリックスに組み込むことによって所望の物質を得るステップ。
【0118】
本発明の上記多孔質マトリックスは、好ましくは、ゾルゲル法によって調製したものである。特に金属酸化物などの金属前駆体を周囲温度に近い温度(20℃から35℃)で、単に重合することによって無機マトリックスまたは有機無機ハイブリッドが得られる一群の手法は、”ゾルゲル法”という総称で呼ばれている。ゾルゲル法の基本的な化学反応、つまり加水分解と縮合は、金属前駆体が水の存在下に置かれたときに開始する。該前駆体の溶媒は、特に、アルコール類、THFを含むエーテル類、またはCHCI、CHClから選択される。したがって、金属酸化物の加水分解が最初に起こり、次に加水分解の生成物が縮合するとマトリックスがゲル化する。上記溶媒は先述の複数の溶媒の混合物に相当する。
【0119】
さらに、界面活性剤を任意で使用して、以下の(1)と(2)のいずれかまたは双方を実現してもよい。(1)多孔質マトリックスの構造化を促して大きさが調整可能な孔を形成する。(2)例えば、アルコールと水との混合物などの、前駆体と溶媒との混合物中ではあまり溶解性が高くない、弱い極性を有するプローブ分子を溶解できるようにする。
【0120】
本発明に係る方法の好適な実施形態によれば、上記金属前駆体は金属酸化物であり、上記ゾルゲル多孔質マトリックスの調製ステップ(a)は、少なくとも1つの金属酸化物を加水分解するステップを備え、該加水分解ステップは、好ましくはメタノールやエタノールなどのアルコールなどの有機溶媒の存在下で実行される。
【0121】
加水分解されてできた生成物は縮合中に互いに反応してポリマーを形成し、このポリマーは三次元のポリマーネットワークが得られるまで継続的に成長する。最初に金属酸化物のクラスタが沈殿せずに懸濁したまま残る。これがゾルである。このクラスタが徐々に大きな体積比を占めるようになる。次に粘性がかなり高くなり、最後に液体がゲル化してマトリックスを形成する。したがって、こうして得られたマトリックスはポリマーネットワークよって構成され、該ネットワークの孔隙率は要件によってばらつきがある。
【0122】
ゾルゲルマトリックスの孔の直径を特定の金属酸化物を選択することによって調整してもよい。例えば、化学式(VI)で表わされ、R38とR30とがアルキル類、好ましくはメチルラジカルまたはエチルラジカルである金属酸化物を選択すれば、直径の小さな孔を有するマトリックスを生成することができる。同じく、R38またはR39がアミノアルキル、好ましくはアミノプロピルである金属酸化物を選択すれば、直径の大きな孔を有するマトリックスを生成することができる。
【0123】
特定の実施形態によれば、ゾルゲルマトリックス調製ステップ(a)と、少なくとも1つのプローブ分子を組み込むステップ(b)とを同時に実施してもよい。実際、調製ステップで用いる諸条件は、変更しなくても、プローブ分子をゾルゲルマトリックスに組み込むことができる程度に充分に緩いものである。
【0124】
均質化ステップおよび/または乾燥ステップをさらに実行することが望ましい。乾燥ステップを行えば、マトリックス中に存在する、例えば水やアルコールなどの溶媒を蒸発させることができる。好ましくは、少なくとも1つのプローブ分子の組込みを上記均質化ステップの前に、好ましくは加水分解ステップの前に行う。
【0125】
もう一つの好適な実施形態によれば、少なくとも1つのプローブ分子の多孔質マトリックスへの組込みは、特に、昇華などの当業者に周知の手法で、溶液中または気相で含浸することによって実施することができる。
【0126】
上記プロセスを実行するために、一般に分光光度的特性の検出に基づいて、上述の組成物、特に本発明の物質をデバイス、特にセンサに集積することができる。
【0127】
本発明はしたがってBX型、HX型またはX型のガス状態の化合物を検出し、また、少なくとも1つの物質または組成物を、好ましくは本発明に係るマトリックスの形態で備えることを特徴とするデバイス、または特にセンサにも関連する。
【0128】
交換面の面積を増加せるために、センサを使用する際には、組成物が含むプローブ分子自身がマトリックスを形成しないのであれば、組成物がマトリックスを備えることが好ましい。
【0129】
好適な実施形態によれば、本発明のセンサは適切な基板上、好ましくは透明基板上に堆積させた薄膜の形態の物質または組成物を備えている。上記基板は、特にガラス、雲母、石英、または蛍石(fulospar)から構成されるスライドまたはプレートなどの、分光光度分析の分野で標準的に使用されるものを選択すればよい。
【0130】
通常、上記堆積は、特に浸漬コーティング法、スピンコーティング法、あるいは(液体または気体)噴霧したり、液滴を堆積させて拡散させたりすることによって、当業者に周知の手法で実行する。上記堆積は、可能な場合には浸漬コーティング法によって実行することが好ましい。これは特に本発明の物質の調製の際に当てはまる。当業者であれば、堆積させる物質に対して堆積基板を引き抜く速度を、好ましくは25mm/分に近い速度に調整できるであろう。
【0131】
浸漬コーティングは周囲温度(22〜25℃)で空気の相対湿度が15%と50%との間で実施できる。
【0132】
効率を上げるためには、複数のスライドまたはプレートを蓄積型電池のように互いに平行に設置する。
【0133】
特に上記物理化学的特性がスペクトル特性である場合に使用されるもう一つの好適な実施形態によれば、本発明の上記検出用デバイスまたはセンサは、少なくとも1つの励起光源と1つのコレクタとをさらに備える。
【0134】
上記検出用デバイスまたはセンサは、特に第1分室、第2分室、およびスクリーンを備えている。気体は特定の吸気口を介してセンサに供給され、次に温度の監視を可能にするサーモスタットと粒子フィルタとを通過する。マイクロポンプシステムを使用すれば、本発明に係る物質内に内包しても内包しなくてもよいプローブ分子を含めた気体の拡散を加速することができる。上記マイクロポンプシステムは上記物質の上流または下流のいずれに配置することができる。
【0135】
測定システムを上記センサに設ければ、吸気口を通過した気体の体積を決定することができるため有用である。上記組成物は、特に上で図示した物質に相当し、例えばOリングなどの封止部を使って漏出を防止した、保護囲み部材(protective envelope)
によって外部環境から保護されていることをここで明確にしておく。上記気体がBX型、HX型またはX型の化合物を含んでいる場合、該化合物は、組成物が含有する対応するプローブ分子と反応する。
【0136】
プローブ分子との反応はコレクタによる光励起の後に検出され、スクリーン上で読み取られる。
【0137】
好ましくは、上記光源は重水素放電管、ハロゲンランプまたは発光ダイオードで構成されている。上記コレクタは、ダイオードストリップまたは低電圧の光電子増倍管で構成される。
【0138】
上記検出方法が被ドーピング膜の吸光度の変化に基づいている場合、反射性の基板上に堆積させた被ドーピング薄膜を2枚備えて、プローブ分子による光源の吸収を最適化したシステムを使用することが好ましい。光子は、膜で被覆した壁で何度も跳ねると、組成物が含有するプローブ分子によって強く吸収される。プローブ分子が蛍光性を有する場合、またはプローブ分子と気体の反応生成物が蛍光性化合物の形成を引き起こす場合、アルミニウムまたは銀の金属層を基板上に堆積させて、プローブ分子の励起波長の範囲で共振プラズモンを発生させたり、反応生成物の生成を促進したりして、上記化合物の蛍光性を高めることができる。このセンサとの関連において、ガス排気口を設けることができる。デバイスまたはセンサは小型化することが好ましい。
【0139】
上記デバイスまたはセンサが、組成物のサポート、さらに具体的には検出方法に適したサポートをさらに備えていることが望ましい。上記デバイスまたはセンサは、分析する媒体、具体的にはガス状の媒体の拡散を加速するシステムをさらに備えていることが好ましい。好ましくは、上記気体の拡散を加速するシステムは、例えばピストン、配送ポンプまたはマイクロポンプなどの空気システムである。このようなシステムは汚染制御デバイスの場合に特に有用である。したがって、直接的に光学的変換するセンサは、特に本発明の技術的範囲に含まれる。
【0140】
また、上記センサは、異なる気体を同時に検出し濃度を決定することを可能にするマルチプルセンサ(多種センサ)であってもよい。この目的のために、異なる化合物と反応する1種類以上のプローブ分子を含んだ、1つ以上の組成物を使用することができる。上記異なる組成物は、混合して一つの膜を形成したり、同一サポート上に載置したり、さらに異なるサポート上に載置したりしてもよい。上記異なるプローブ分子を含んだ組成物は、同一分室または異なる分室に配置してもかまわない。
【0141】
本発明の物質には多数の長所があり、汚染制御ならびにハロゲン化合物の測定に使用可能である。
【0142】
本発明の物質は、その調製方法が故にナノ多孔質である。したがって、非常に大きな特定の吸着面を提供する。この構造的特徴は、汚染制御デバイスとの関連においてさらに有意義である。本発明の物質は、いかなる条件のもとであっても、特に周囲の湿度が高いときであっても、ハロゲン化合物の検出および/または定量化のプロセスおよび/または捕捉プロセスにおいて使用可能である。
【0143】
最後に、例えば上記物質のような組成物は、本発明によれば、容易にセンサまたはデバイスに集積でき、直接的かつ簡便に、現場でハロゲン、ハロゲン化酸、またはガス状のボロンのハロゲン化物が検出できるようになる。センサはネットワークで使用して、ボロンのハロゲン化物による汚染のリスクが高い環境の質を、恒常的に確実に制御することが好ましい。上記デバイスまたはセンサはさらに、検知対象の環境中におけるハロゲン化ボロンの含有量が、ある臨界閾値に達したときに始動する、視覚的または聴覚的な警報装置と組み合わせてもよい。
【0144】
また、気体内において、上述のBX型、HX型またはX型のガス状の化合物を検出する方法を実行する好ましい条件は、上述の本発明の他の主題に対して、特に捕捉方法に対して適応することが可能である。
【0145】
本発明は添付の図面と以下に示す実施形態からさらに正確に理解できるであろう。
【0146】
図1は、異なるプローブ分子(Ms1〜Ms15)を示す。
【0147】
図2は、本発明のセンサの図に相当する。
【0148】
図3は、本発明のセンサの分室の上面図を示す。
【0149】
図4は、本発明の物質を収納した分室の断面に相当する。
【0150】
図5は、上記物質を含む2つの膜を備えたセンサに集積した検出システムを示す。
【0151】
図6は、BClを添加している間の、メタノール中でのKIの吸収スペクトルとその変化とを時間の関数として示す。
【0152】
図7は、塩素を含んだガス状混合物に対して多孔質マトリックスを曝露したときの、該マトリックス内におけるNaIの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0153】
図8は、ヨウ化トリメチルアンモニウムメチルグリコールキトサンの膜を減圧下でBClに対して曝露したときの、該膜の吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0154】
図9は、多孔質マトリックスをガス状のBFに対して曝露したときの、該マトリックス内におけるCTAB(C1533)(Me),Brの吸収スペクトルとその変化とを示す。なお、導入した圧力(単位Torr)の関数としての吸光度の変化は挿入図に示す。
【0155】
図10は、多孔質マトリックスをガス状のCl(40ppb)に対して曝露したときの、該マトリックス内におけるHO(CH)(Me)3N,Iの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0156】
図11は、多孔質マトリックスをガス状のCl(200ppb)に対して曝露したときの、該マトリックス内における二臭化デカメトニウムBr5(Me)3N−(C1022)−N(Me)Brの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0157】
図12は、BFを一定分量ずつ添加している間の、エタノール中でのクマリン吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0158】
図13は、多孔質マトリックスをガス状のHCl(45ppm)に対して曝露したときの、該マトリックス内におけるクマリンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0159】
図14は、BFを一定分量ずつ添加している間の、エタノール中でのマグネシウムフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0160】
図15は、減圧下(1torr)でBFに対して膜を曝露している間の、溶媒を蒸発させることによってガラススライド上に堆積したマグネシウムフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0161】
図16は、800nmにおける上記マグネシウムフタロシアニンとBFとの反応の生成物の見かけ上の反応速度を監視した様子を示す。
【0162】
図17は、BF(1.3M)を一定分量ずつ添加している間の、エタノール中でのシリコンフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0163】
図18は、HCl(1Mおよび12M)を添加している間の、水中におけるシリコンフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0164】
図19は、BFを一定分量ずつ添加している間の、メタノール中でのフルオレセインの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0165】
図20は、減圧下でガス状のBClに対して膜を曝露している間の、ガラススライド上に堆積したフルオレセインとCTABとを含んだ組成物の吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0166】
図21は、BFを一定分量ずつ添加している間の、メタノール中でのクリスタルバイオレットの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0167】
図22は、減圧下でガス状のHCl(4torr)に対して膜を曝露している間の、溶媒を蒸発させることによって石英基板上に堆積したクリスタルバイオレットの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0168】
図23は、減圧下でBF(2torr)に対して膜を曝露している間の、ガラス上に堆積した組成物BIC(登録商標)の吸収スペクトルとその変化とを示す。
【0169】
図24は、HClを一定分量ずつ添加している間の、エタノール中での組成物BIC(登録商標)の吸収スペクトルとその変化を示す。
【0170】
図25は、MS7でドーピングして浸漬によって石英スライドの各表面上に堆積させた薄膜に対して得られた検量線の一例である。
【0171】
図26は、MS8でドーピングして浸漬によって堆積させた薄膜に対して得られた検量線の一例である。
【0172】
図3に示すように、上記検出に使用する意図で、本発明で使用可能なデバイスまたはセンサは、少なくとも1つの励起光源(10)と1つのコレクタ(11)とを備えている。
【0173】
上記デバイスまたはセンサは、具体的には、図2に示すように、第1分室(4)、第2分室(5)、および表示スクリーン(7)を備えている。気体は特定の吸気口(1)を通じてセンサに導入でき、次に粒子フィルタ(3)と、温度制御を可能にするサーモスタットとを通過する。マイクロポンプシステム(8)は、物質の上流または下流のいずれに配置してもよく、プローブ分子を含めた気体の拡散を加速することができる。このプローブ分子は、本発明によれば物質(9)の中に内包されていても内包されていなくてもよい。
【0174】
組成物(9)は、具体的には上述の物質に相当し、例えば図4に示すOリング(12)などの封止部を使って漏出を防止した保護囲み部材(13)を用いて外部環境から保護されている。上記気体がBX型、HX型またはX型の化合物を含んでいる場合、該化合物はプローブ分子またはそれに相当する組成物に含まれている分子と反応する。
【0175】
プローブ分子との反応は、コレクタ(11)による光励起(10)の後に検出され、スクリーン(7)上で読み取られる。
【0176】
上記の例では、上記光源は、重水素放電管、ハロゲンランプまたは発光ダイオード、およびダイオードストリップコレクタで構成されている。
【0177】
上記検出方法が被ドーピング膜の吸光度の変化に基づいている場合、反射性の基板上に堆積させた被ドーピング薄膜を2枚備えて、プローブ分子による光源の吸収を最適化したシステムを使用することが好ましい。光子は、膜で被覆した壁で何度も跳ねると、図5に示すように、組成物に含まれるプローブ分子によって強く吸収される。このセンサの枠にはガス排気口(2)が設けられている。デバイスまたはセンサは小型化することが好ましい。
【0178】
本発明を詳しく説明するために、減圧のガス状汚染物質下、または窒素と実験対象の汚染物質(BX、HXまたはX)とから構成されているガス状混合物の気流下で、溶液または固体媒体(基板上に堆積させた膜)中で試薬について濃度を変えて行った実験を以下に記述する。
【0179】
固体媒体中においてプローブ分子を溶液からマトリックスに組み込んでも、基板上に堆積させてもよい。プローブ分子がエレクトロニクス産業に対して示す、健康や経済的な課題を考慮して、検出方法を説明する化合物は、BCl、BF、HCl、およびClとする。
【0180】
スペクトルが測定しやすく、また、分光光度的特性の測定手段が簡単に手に入ることから、対象とする組成物/プローブ分子の物理化学的特性は、分光光度的特性とし、その変化をここに示す。分光光度測定は、UNICAM UV−可視光分光光度計またはOCEAN OPTICS小型分光光度計のいずれかを用いて行なった。
【0181】
以下の実施例を実際に行うために必要な物質は市場で購入し、別途精製は行わなかった。
【0182】
1.組成物の調整
a)あるプローブ分子は、マトリックスに組み込まずに直接使用した。これは特にそれ自体がマトリックスを形成するキトサン誘導体の一つであるMs9の場合に当てはまる。
b)あるプローブ分子(例えばMs14、フルオレセイン、Ms11、マグネシウムフタロシアニン、Ms15、クリスタルバイオレット)またはプローブ分子の混合物(例えば、Ms13+Ms15)は、これらのプローブ分子またはその混合物のエタノール溶液を蒸発させることによって石英スライドに単に堆積させた後に使用した。
c)プローブ分子を含んだマトリックスを、本分野で既知のゾルゲル法を用いてシリコンテトラアルコキシドから調製した。
【0183】
このようにして、エタノールの存在下、中性pHで攪拌しながらSi(OMe)(またはTMOS)を加水分解した。上記混合物は、TMOS/EtOH/HO=1/4/4、または8.38/10.13/3.96gの比である。
【0184】
上記シリコン前駆体の加水分解および縮合の間に、1つ以上のプローブ分子を溶液に添加した。数分から数日の範囲の熟成時間の後に、プローブ分子を含んだ薄い(任意でナノ構造を有する)メソ多孔質膜を浸漬し、溶液からサポートを引き抜くことによって得られた。好ましいサポートは石英スライドであり、堆積は好ましくは一定の浸漬および引き抜速度で行う。
【0185】
Ms1からMs4のプローブ分子は第1の属のプローブ分子に属していて、アルカリ金属のハロゲン化物である。これらの分子は入手しやすく、価格が低く、また、使いやすためこれらを選択した。
【0186】
5種類のプローブ分子(Ms5〜Ms9)を使って、四級アンモニウムのハロゲン化物の使用について説明する。Ms5およびMs7は、どちらもプローブ分子であり、かつ、ナノ構造多孔質マトリックスの形成を誘発できる構造化薬剤である。例えばMs5の場合、孔の形状は(この場合には直径48Åの球体)、ゾルの様々な構成物質の相対的な濃度によって決まる(酸pH、TEOS/EtOH/HO/HCl/Ms5混合物=1/20/5/0.004/0.1)。
【0187】
Ms6とMs8はゾルゲル型のマトリックスとともに使用される。
【0188】
Ms9は有機ポリマーマトリックスを形成する。
【0189】
図6〜図11は、これらの様々なアルカリ金属のハロゲン化物およびアンモニウムのハロゲン化物と、BF、BClおよびClとの間の反応に対応するスペクトルを示している。
【0190】
Ms10はクマリン誘導体に対応している。これらのプローブ分子は、吸収スペクトルが初期のスペクトルと大きく異なる(図12および図13を参照)プロトン化クマリンまたは複合体化クマリンを形成することによって、BF、BCl、およびHClと溶液中で効果的に反応する。これらのクマリンはXとは反応しない。
【0191】
プローブ分子Ms11、Ms12、およびMs13はフタロシアニンに対応している。
【0192】
プローブ分子Ms14はフルオレセインである。このプローブ分子はBF、BCl、およびHClの溶液中での検出を説明する一つの実施例となる。
【0193】
プローブ分子Ms15はクリスタルバイオレットである。この分子はトリアリールメタン属の一部をなす。
【0194】
2.BX型、HX型またはX型組成物の検出
分析手法で検出できる物理化学的特性を、上記プローブ分子のそれぞれについて前もって決定した。
【0195】
【表1】

【0196】
次に各サンプルは、減圧下で曝露時間を変えながら、主にBX型、HX型またはX型の純粋な化合物を含む検出したい気体に対して曝露するか、様々な濃度(40ppb〜500ppm)の汚染物質を含んだ窒素のガス状混合物に対して曝露するか、またはその気体を通気した溶液に接触させることによって曝露した。
【0197】
以下に記す実験を行なった。
【0198】
【表2】

【0199】
図6は、吸収分光計を用いて計測した、Msがメタノール中でBClと反応した結果生じたスペクトルの変化を示す。
【0200】
Ms2のメタノール溶液(濃度5 10−5mol/L)に対して、BClの濃度がMs2の濃度(1.3 10−3mol/L)に比べて過剰になるようにBClの高濃度溶液を一定分量加えた。Ms2の溶液の最初の吸収スペクトルはBClを添加する前に計測する(鎖線で示した曲線)。スペクトルはBCl添加の後、特に、20分ごとに計測する。220nmを中心としたMS2の吸収帯の消滅と、288nmと358nmとを中心とした2本の新しい吸収帯の出現が観察される。288nmと358nmとにおける吸光度の変化をBCl濃度の関数として測定した結果から、溶液中のBClの定量測定に役立つ検量線を作成することができる。
【0201】
図7は、Cl(気体)の気流に対して曝露されたときの、ゾルゲル法によって調製した多孔質マトリックスに組み込まれたMS1の吸光度の変化を示している。多孔質マトリックスのドーピングは、ゾルゲル法で使用するワンポット法で行う。Ms1は、組成がTMOS/OH/HO/MS1=1/4/4/0.11として表わされる前駆体の溶液中に直接組み込まれる。
【0202】
上記混合物は超音波処理しながら5分間攪拌する。上記溶液中に石英基板を浸漬し、一定速度(9.6cm/分)で引き抜くことによってMs1でドーピングした多孔質膜を調製する。上記膜を400ppbのClを含んだガス状混合物の気流(50ml/分)に対して曝露すると、220nmを中心としたMs1の吸収帯の減退が観察される。代わりに288nmと350nmとを中心とした2本の新しい帯が出現する。同様に、288nmと350nmとにおける吸光度の変化を、ガス流のCl含有量の関数として同一流速に対して測定した結果から、検量線を作成することができる。この気流に対してMs1でドーピングした膜を曝露することによって、この曲線からガス流のCl含有量を決定することができる。
【0203】
ハロゲン化アンモニウム型のプローブ分子の反応性の4つの例を、図8〜図11に示す。Ms9はポリマーであり、プローブ分子として、また、マトリックスとしても作用するので、Ms5、Ms7およびMs8は、同時にナノ構造多孔質薄膜が得られる構造化薬剤である。
【0204】
Ms5は、文献[Bourgeois. A.; Brunet Bruneau, A.; Fisson, S.; Demarets, B.; Grosso, D.; Cagnol. F.; Sanchez, C.; Rivory, J., Thin Solid Films. (2004), 447-448, 46-50]に掲載の既知の方法(後述)で、シリコンの有機無機ハイブリッドポリマーに基づいた三次元六方晶系構造のメソ多孔質の薄膜のミセルの形で組み込まれている。
【0205】
第1のステップは、テトラエトキシシラン(TEOS)、エタノール、水、および塩酸をTEOS:EtOH:HO:HCl=1:3:1:5.10−5のモル比で含んだ分子状前駆体の前加水分解溶液Sを調製することを含む。この混合物を還流しながら1時間加熱する。次に、エタノール、酸性水(0.055mol/LのHCl)、およびMS5を含んだ第2の溶液を上記溶液Sに添加する。このときゾルの最終組成はTEOS:EtOH;HO:HCl:MS5=1:20:5:0.004:0.10というモル比で表わされる。この混合物を密封容器中で周囲温度で72時間攪拌する。上記の浸漬コーティングと、一定速度で引き抜いてゾルの微細層を石英スライド上に堆積させることとによって上記メソ多孔質物質の薄膜が得られる。引き抜き速度は大抵の場合3mm/秒を採用する。堆積中、デバイスの反応槽の湿度レベルは、40%〜60%の間の値で固定する。この膜は赤外線加熱ユニットで中程度の温度(160℃)で15分間加熱して、Ms5を破壊せずに無機ネットワークを硬化させる。Ms5のミセルは平均直径4.5±0.5nmの球状の孔の中に含まれ、配置は三次元六方晶系構造であり、お互いに厚さ2.5±0.5nmの無機ポリマーの多孔質壁によって隔てられている。薄膜をBFに対して曝露している間、汚染物質の分子はポリマーの多孔質ネットワークを通じてMs5ミセルに向かって高速で拡散する。BFの検出は光学的に行う。Ms5の吸光度はUV領域で測定する。この吸光度はガス状のBF(図9参照)を添加すると量的に減退する。
【0206】
TEOSとMs5との比によって、例えば立方晶系状(0.1<MS5/TEOS<1)、または立方晶系と六方晶系との混合、さらに層状構造などの様々なMs5ミセルの組織化構造が得られる。いずれの場合にも、Ms5ミセルはBFと同じ反応を起こし、Ms5の初期吸光度だけが初期濃度にともなって変化する。
【0207】
Ms7は構造化薬剤でもある。2つのアンモニウムが末端に位置していることによって層構造の薄膜が得られる。
【0208】
メソ多孔質薄膜を調製する方法は、Ms5について説明した方法と同一であり、記載した比およびパラメータ値は同様である。得られた膜は赤外線加熱ユニットで中程度の温度(160℃)で15分間加熱して、プローブ分子を破壊せずに無機ネットワークを硬化させる。Ms7でドーピングした薄膜をClに対して曝露している間、汚染物質の分子はポリマーの多孔質ネットワークを通じてMs7に向かって高速で拡散する。Clの検出は光学的に行う。Ms7の吸光度はUV領域で測定する。この吸光度はガス状のCl(図11参照)を添加すると量的に減退する。
【0209】
Ms7の吸収スペクトルはMs5の吸収スペクトルと同様である。192nm付近を中心とする最大値を示すUV領域の吸光が観察される。Ms7でドーピングした膜を200ppbのClを含んだガス状混合物の気流(250ml/分)に対して曝露する場合、Ms7の吸光度の消滅が観察され、替わりに267nm付近を中心とした新しい吸収帯が出現する。反応は非常に高速で起こり、267nmで形成された種は高いモル吸光係数を示す。192nmまたは267nmにおける吸光度の変化を、流速を固定してガス流のCl含有量の関数として測定した結果から、検量線作成することができる。このガス状混合物に対してMs7でドーピングした膜を曝露することによって、この曲線から未知の組成のガス状混合物のCl含有量を測定することができる。
【0210】
Ms8でドーピングしたメソ多孔質薄膜の調製に使用する方法は、Ms5について説明した方法と同一であり、記載した比およびパラメータ値は同様である。この膜は赤外線加熱ユニットで中程度の温度(160℃)で15分間加熱して、プローブ分子を破壊せずに無機ネットワークを硬化させる。薄膜をClに対して曝露している間、汚染物質の分子はポリマーの多孔質ネットワークを通じてMs8に向かって高速で拡散する。Clの検出は光学的に行う。MS8の吸光度はUV領域で測定する。この吸光度はガス状のClを添加すると量的に減退し、代わりに295nmと370nmと(図10参照)を中心とした2本の新しい帯が出現する。
【0211】
Ms9の膜は、石英基板の上にMS9の水溶液を滴下して広げることによって該溶液から調製する。溶媒は膜を80℃まで加熱することによって蒸発させる。Ms9でドーピングした膜を、真空装置(図8参照)中で減圧下でガス状のBClに対して曝露することによって、Ms9のBClとの反応を調べた。MS9はMs1、Ms、およびMs8と同じようにBClと反応する。220nmを中心としたMs9の吸収帯の消滅が観察され、代わりに295nmと370nmとを中心とした2本の新しい帯が出現する。同じ実験を、BF含有量が既知であるガス状混合物に対して膜を曝露することによって大気圧下で行った。295nmと370nmとにおける吸光度の変化を流速を固定してガス状混合物のBCl含有量の関数として測定した結果から、検量線を作成する。この混合物に対してMs9でドーピングした膜を曝露することによって、この曲線からガス状混合物の含有量が決定できる。
【0212】
クマリン属のプローブ分子の反応性を、溶液中の多孔質マトリックスに組み込まれたクマリン120(すなわちMs10)を例にとって図12および図13に示す。
【0213】
一つ目の例では、5 10−4mol/Lのクマリン120のメタノール溶液を調製する。1.3mol/LのBFのメタノール溶液から一定分量ずつ取り出して、10−3mol/L、10−2mol/L、および10−1mol/LのBFを含んだ、5 10−4mol/Lのクマリンの溶液を調製する。図12に図示した観察されたスペクトル変化は、クマリン120の吸収帯の消滅と、これに替わって230と330nmとの間、つまり、クマリンがほとんど吸収しない波長の範囲に2本の吸収帯を示す新しい種を示している。塩酸(HCl)水溶液を一定分量ずつ添加している間に同じスペクトル変化を観察することができる。BF濃度の関数としての350nmまたは270nmにおける吸光度の変化から、検量線を作成することができる。この曲線からBFの検出と測定ができる。
【0214】
クマリン120は蛍光性を有するので、BXの存在下におけるクマリンの蛍光強度の変化を利用して、この汚染物質を測定した。他のクマリン、具体的にはC522、C500、C102、またはC47も、吸光または蛍光によるBXまたはHXの測定に使用した。
【0215】
二つ目の例では、クマリンはナノ多孔質マトリックスに組み込まれている。
【0216】
このために、テトラメトキシシラン(TMOS)、エタノール、テトラヒドロキシフラン、水、およびクマリン120を、TMOS:EtOH:THF:HO:C120=1:1.95:1.4:4:0.0124のモル比で含んだ前駆体の溶液を調製する。この混合物を超音波処理しながら5分間攪拌し、続いて密封フラスコ内で24時間熟成させる。上記の浸漬コーティングと、一定速度で引き抜いてゾルの微細層を石英スライド上に堆積させることとによって上記メソ多孔質物質の薄膜が得られる。引き抜き速度は3mm/秒を採用する。堆積中、デバイスの反応槽の湿度レベルは15%から30%の間の値で固定する。上記薄膜をHClに対して曝露している間、クマリンはHClと反応し、検出は光学的測定法によって行う。クマリンは蛍光性を有するので、膜について吸収スペクトルと蛍光性の変化を同時に監視することが可能である。上記膜の最初の吸収スペクトルには、206nm、234nm、および348nmを最大値とする3つの帯が含まれる(図13参照)。曝露を行う前であれば、上記膜を350nmで励起すると、膜は440nmで最も強い蛍光性を示す。Ms10でドーピングした膜を45ppmのHClを含んだガス状混合物の気流(50ml/分)に対して曝露すると、234nmと348nmとにおける吸光度の減少と、265nmと278nmとにおける2本の吸光帯の出現が観察される。同時に膜の蛍光発光の減少が観察される。吸光度および/または蛍光の変化を流速を固定してガス流のHCl含有量の関数として測定した結果から、検量線を作成することができる。この曲線から未知の組成のガス状混合物のHCl含有量が測定できる。
【0217】
テトラベンゾポルフィラジンの反応性を利用して、BXまたはHXを溶液中および気相で検出した。一つ目の例を、溶液中で使用したまたはガラススライド上に堆積させて使用したMs11について示す(図14〜図16参照)。
【0218】
第1の場合、10−5mol/LのMs11のエタノール溶液を調製し、その溶液にBFをエタノールに溶解した原液(濃度1.3mol/L)を一定分量ずつ添加する。濃度の異なる(1.3 10−3mol/Lと1.3 10−2mol/L)BFを含んだMs11の溶液がこうして得られる。BFの存在下では、D4h対称性を示すテトラベンゾポルフィラジンの可視領域の吸収スペクトルに典型的に見られる“Q”帯が減退、消滅し、これに代わって、BFの、大員環(図14参照)のアザ架橋を有する窒素原子との反応に由来する種に対応する、対称性の異なる新しい吸収帯が出現する。新しい種だけが吸光する700nmを超えた領域での吸光度の変化を、BF濃度の関数として測定することによって、検量線を作成した。Ms11を含んだ溶液に溶解したBFを、この曲線から定量分析した。上記テトラベンゾポルフィラジンは蛍光性を有するから、蛍光強度の変化もBF濃度の関数として測定した。
【0219】
Ms11も、Ms11のエタノール溶液をガラス上に滴下して広げることによって堆積させた。乾燥後、Ms11の吸収スペクトルを得ると、溶液中で得た吸収スペクトルとは異なり、基板上でMs11の分子が凝集したものに対応している。Ms11の膜を、真空装置中で減圧したBFに対して曝露すると、溶液中と同様に、Ms11の吸収スペクトルが大きく深色シフトすることが観察できる(図15と図16参照)。Ms11が吸収しない波長の範囲の新しい吸収帯の強度の変化は、BF濃度と定量的な相関関係を有する。
【0220】
テトラベンゾポルフィラジン、すなわち、中心の金属の性質がMs11とは異なるMs12の反応性を調べた二つ目の例を図17に示す。溶液中では、Ms12のBFに対する反応性とHClに対する反応性が大きく異なる。過剰な量のBFの存在下では、わずかな深色シフトが観察される。一方で、HCl(図18参照)の存在下では大員環のアザ架橋を有する窒素原子の連続プロトン化が観察される。
【0221】
溶液または気相中のフルオレセイン(Ms14)のBXに対する反応性と、HClに対する反応性とを調べた。Ms14は溶液中でBF、BCl、およびHClと非常に効果的に反応する。10−4mol/LのMs14が、メタノール中で様々な濃度(10−3mol/L、10−2mol/L、および10−1mol/L)のBFの存在下で反応する一例を図19に示す。2つの三元窒素原子の一方とBFとが相互作用している間に、230nmと330nmとの間におけるMs14の2本のUV吸収帯の消滅が観察される。BFを大量に添加すると、BFと残りの三元窒素原子との相互作用が、大員環内の電子の非局在化を完全に妨害する。Ms14の吸収帯は425と550nmとの間の可視光領域で強度が非常に高いが、これは消滅し、代わりに青寄りにシフトした新しい帯が出現する。260nmと510nmとにおけるMs14の吸光度の変化をBF濃度の関数として定量的に相関付けすることも可能である。また、Ms14は高い蛍光性を有するから、Ms14の蛍光帯の強度変化をBF濃度の関数として相関付けた。BClおよびHClの場合にも同じ反応が観察される。
【0222】
界面活性剤(CTAB)を使ってメタノールに対して可溶化したMs14を石英スライド上に堆積させ、次に減圧(0.48torr)したBClに対して曝露した(図20参照)。固相で観察される反応は溶液中で観察される反応と同様である。Ms14の525nmにおける吸光度(または600nmにおける蛍光)の変化をガス状BXの含有量の関数として測定することによって、ガス状混合物中のBXの定量分析のための検量線が確立できる。
【0223】
プローブ分子としてのトリアリールメタンの使用法、特にアミノトリアリールメタンの使用法についてはクリスタルバイオレット(Ms15)によって説明できる。Ms15はBXおよびHClと溶液でも気相中でも反応する。図21は、5 10−4mol/LのMs15の溶液に、1.3mol/LのBFのメタノール溶液を一定分量ずつ添加したときに観察されたスペクトル変化を示している。第1のステップ1では、Ms15のスペクトル変化が可視光領域では実質的に観察されないが、BF濃度が10−3mol/Lから10−1mol/Lに上昇すると、200nmと330nmとの間のUV帯の強度は減少する。UV領域の新しい帯の強度の上昇は、Ms15の窒素部位の一つと反応したBF濃度と定量的な相関関係がある。ステップ2では、過剰な量のBF(1mol/L)の存在下で、230nmと330nmとの間のUV帯とともに、可視領域(570nm)のMsl5の吸収帯が消滅し、代わりに可視光領域に2本の新しい帯が出現する。その2本のうち強度の低い方は430nmを中心とした帯であり、2本目の強度が高い方は最大吸収周波数が630nmである。これらの新しい帯は、全ての窒素部位がBFと反応したMs15に対応している。570nmまたは650nmにおける帯の強度の変化はBF分子濃度と定量的な相関関係を有する。BClおよびHClはMs15と同じように反応する。
【0224】
Ms15は、5 10−4mol/LのMs15のメタノール溶液を石英基板上に滴下して広げることによって、該基板上に堆積させることができる。乾燥後、上記Ms15の膜は溶液中のスペクトルと同様のスペクトルを示す(図22参照)。この膜を真空装置中で、減圧下(4torr)でガス状のHClに対して曝露する。この圧力では、多くのHCl分子が、Ms15の第1の窒素部位と即座に反応する。曝露から2分後のスペクトルの計測は、HClのMs15の第2の窒素部位との第2の反応を既に示している。BFが過剰に存在する溶液中で観察されたスペクトル変化と同じスペクトル変化が得られる。つまり、570の帯とUV領域の帯が消滅し、代わりに430nmと660nmとに2本の新しい帯が出現する(図22参照)。
【0225】
上記反応は可逆的である。Ms15の膜を真空中で排気することによって、初期のMs15のスペクトルが再度見られるようになる。
【0226】
最後に、マトリックスを形成しないBIC(登録商標)の薬品形態(この薬品形態は、黄47(CAS:71077−14−0)、紫9(CAS:467−63−0)、およびソルベントブルー38(CAS:1330−38−7)の3つの染料を含んでいる)に存在する2つのプローブ分子Ms13とMs15との混合物を、雲母スライド上で直接使用するか、または溶液中で使用した。
【0227】
一つ目の実験はガラス基板上に混合物を堆積させて実施する。次にサンプルを真空装置中で減圧下でBFに対して曝露した。1torrのBFの存在下では、Ms15がBFに対して最も高い反応性を有する。なぜならば、BFによってある窒素部位が色変化を起こすステップ1がすでに完了し(図23参照)、MS15の二つ目の窒素部位が色変化を起こすステップ2にスペクトル変化が既に対応しているからである。
【0228】
Ms13+Ms15混合物がエタノール溶液中に存在する場合にも同様の結果が観察される。HClの添加が、Ms15の窒素部位の迅速なプロトン化を誘発する。スペクトル変化は、HClがMs13と反応(図24参照)するステップ2の終了時のスペクトル変化にも対応している。
【0229】
したがって、異なるプローブ分子を混合することが可能である。
【0230】
3.X型組成物の定量化
ガス状ハロゲン化合物含有量によって変化の様子が左右される物理化学的特性を定量的に測定することによって、ガス流のハロゲン化合物含有量を定量化することも可能である。
【0231】
例えば、MS7でドーピングした薄膜の場合、塩素を含んだガス流に対して曝露すると、吸収の最大波長が267nmである新しい吸収帯が観察される。この吸収帯の強度は曝露とともに上昇する。異なる塩素含有量について267nmにおける吸光度の変化の速度を測定すると、この速度が塩素含有量にともなって変化する。したがって、吸光度の変化速度を気流の塩素含有量の関数として表わすことによってセンサの検量線を確立することが可能であることを示した。
【0232】
図25は、MS7でドーピングし、浸漬によって石英スライドの各表面上に堆積させた薄膜について得られた検量線の一例である。この膜を、Cl含有量が40ppbから200ppbの間で変化する500ml/分の窒素流に対して短時間(<5分)連続的に曝露した。この例では、Cl含有量を0、50;50;100;100;150;150;200および200ppbの順に変化させた。
【0233】
もう一つの例はMS8でドーピングした薄膜に関連している。この場合、塩素を含んだガス流に対して膜を曝露すると、288nmと350nmとに最大値をとる2本の新しい吸収帯が観察される。これらの帯の強度は曝露とともに上昇する。異なる塩素含有量について292nmにおける吸光度の変化の速度を測定すると、この速度が気流の塩素含有量にともなって、膜に含まれるMS8の初期の量の関数として変化することを示した。したがって、膜のMS8含有量に対して標準化した吸光度の変化速度を、気流の塩素含有量の関数として表わすことによってセンサの検量線を確立することが可能である。
【0234】
図26は、MS8でドーピングし、浸漬によって堆積させた薄膜について得られた検量線の一例である。この膜を、Cl含有量が40ppbから160ppbの間で変化する500ml/分の窒素流に対して短時間(<5分)連続的に曝露した。この例では、Cl含有量を40;40;40;80;80;120;120および160ppbの順に変化させた。
【0235】
4.BX型、HX型またはX型の組成物の捕捉用セル
直径が1.6cm、長さが1000cmの、軸を中央とした螺旋状のガラスチューブから捕捉用セルを作った。こうすることによって、汚染大気の処理に使用可能な容積が合計2リットル、プローブ分子でドーピングした多孔質物質の膜の堆積に使用可能な表面積が5024cmになる。捕捉用セルは螺旋状構造を有するから、気体の拡散を遅くすることができ、汚染物質の分子と多孔質膜との接触を向上させる。したがって、汚染物質がよりよく捕捉される。
【0236】
5 10−4mol/Lのプローブ分子Ms15を含んだシリカ前駆体のゾルゲル溶液500cmから、Ms15でドーピングした多孔質物質の薄膜を、回転式蒸着器を使用して螺旋状チューブの内壁上に堆積させた。チューブは一端をストッパーで封止されていて、ゾルがゲル化するまで軸を中心にして回転させる。残留する溶媒を蒸発させた後、堆積した膜は厚さがおよそ124μmで、紫色である。
【0237】
このシステムを汚染物質を含んだ気流に対して曝露した。上記紫色が薄くなって完全に消滅すると、捕捉システムは飽和する。チューブの下流側に吸引ポンプが設けられている。
【0238】
5.BX型、HX型またはX型の組成物の捕捉
上述の捕捉用セルによると、Ms15の全モル数は2.5 10−4である。100ppbのBFを含んだ空気を1L/分の流速で930時間このセル中に送り込むことが可能である。この場合、処理した空気の体積は55.8mである。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】異なるプローブ分子(Ms1〜Ms15)を示す。
【図2】本発明のセンサの図に相当する。
【図3】本発明のセンサの分室の上面図を示す。
【図4】本発明の物質を収納した分室の断面に相当する。
【図5】上記物質を含む2つの膜を備えたセンサに集積した検出システムを示す。
【図6】BClを添加している間の、メタノール中でのKIの吸収スペクトルとその変化とを時間の関数として示す。
【図7】図7は、塩素を含んだガス状混合物に対して多孔質マトリックスを曝露したときの、該マトリックス内におけるNaIの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図8】ヨウ化トリメチルアンモニウムメチルグリコールキトサンの膜を減圧下でBClに対して曝露したときの、該膜の吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図9】多孔質マトリックスをガス状のBFに対して曝露したときの、該マトリックス内におけるCTAB(C1533)(Me),Brの吸収スペクトルとその変化とを示す。なお、導入した圧力(単位Torr)の関数としての吸光度の変化は挿入図に示す。
【図10】多孔質マトリックスをガス状のCl(40ppb)に対して曝露したときの、該マトリックス内におけるHO(CH)(Me)3N,Iの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図11】多孔質マトリックスをガス状のCl(200ppb)に対して曝露したときの、該マトリックス内における二臭化デカメトニウムBr5(Me)3N−(C1022)−N(Me)Brの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図12】BFを一定分量ずつ添加している間の、エタノール中でのクマリン吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図13】多孔質マトリックスをガス状のHCl(45ppm)に対して曝露したときの、該マトリックス内におけるクマリンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図14】BFを一定分量ずつ添加している間の、エタノール中でのマグネシウムフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図15】減圧下(1torr)でBFに対して膜を曝露している間の、溶媒を蒸発させることによってガラススライド上に堆積したマグネシウムフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図16】800nmにおける上記マグネシウムフタロシアニンとBFとの反応の生成物の見かけ上の反応速度を監視した様子を示す。
【図17】BF(1.3M)を一定分量ずつ添加している間の、エタノール中でのシリコンフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図18】HCl(1Mおよび12M)を添加している間の、水中におけるシリコンフタロシアニンの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図19】BFを一定分量ずつ添加している間の、メタノール中でのフルオレセインの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図20】減圧下でガス状のBClに対して膜を曝露している間の、ガラススライド上に堆積したフルオレセインとCTABとを含んだ組成物の吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図21】BFを一定分量ずつ添加している間の、メタノール中でのクリスタルバイオレットの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図22】減圧下でガス状のHCl(4torr)に対して膜を曝露している間の、溶媒を蒸発させることによって石英基板上に堆積したクリスタルバイオレットの吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図23】減圧下でBF(2torr)に対して膜を曝露している間の、ガラス上に堆積した組成物BIC(登録商標)の吸収スペクトルとその変化とを示す。
【図24】HClを一定分量ずつ添加している間の、エタノール中での組成物BIC(登録商標)の吸収スペクトルとその変化を示す。
【図25】MS7でドーピングして浸漬によって石英スライドの各表面上に堆積させた薄膜に対して得られた検量線の一例である。
【図26】MS8でドーピングして浸漬によって堆積させた薄膜に対して得られた検量線の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ分子を含んだ組成物を用いて、BX型、HX型またはX型のガス状の化合物を気体内で検出する方法であって、
上記プローブ分子は、1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物と反応して、少なくとも1つの物理化学的特性が変化する分子であり、
この変化は、適切な分析手法を介して測定可能であり、
上記プローブ分子の、スペクトル特性などの上記物理化学的特性の測定は、前もって実施され、
以下のステップが以下の順序に従って実行される、方法:
(a)上記プローブ分子の、スペクトル特性などの上記物理化学的特性を測定するステップ、
(b)上記特性を繰り返し測定するステップ、および
(c)上記組成物の上記物理化学的特性を前もって測定するステップと、上記BX型、HX型またはX型のガス状の化合物の存在下におけるステップ(b)との間における、上記スペクトル特性の変化の相関を調べるステップ。
【請求項2】
上記物理化学的特性を測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記組成物の上記物理化学的特性は、スペクトル特性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記物理化学的特性は、吸光度または蛍光である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記プローブ分子は、ハライド、四級アンモニウムのハロゲン化物、クマリンおよびその誘導体、ポルフィラジンおよびその誘導体、フルオレセインおよびその誘導体、トリアリールメタン、ローダミン、クレシル・バイオレット、フェノキサジンの誘導体並びにオキサゾンから選ばれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記プローブ分子は、マトリックス中に組み込まれている、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記プローブ分子は、ポリマー構造を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記気体を、上記プローブ分子を含んだ上記組成物と、ガス状の気流の形態にて接触させる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
気体に含まれたBX型、HX型またはX型のガス状の化合物を捕捉する方法であって、
1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物との反応によって、少なくとも1つの物理化学的特性が変化するプローブ分子を含んだ組成物と、上記気体を接触させ、
この変化は、適切な分析手法を介して測定可能である、方法。
【請求項10】
少なくとも1つのBX型、HX型またはX型の化合物と、ガス状の形態にて反応可能な物質であり、
当該物質は、ゾルゲル法によって調製された、無機ポリマーまたは有機無機ハイブリッドのマトリックスによって構成された多孔質マトリックスを含み、
上記多孔質マトリックスは、1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物との反応によって、少なくとも1つの物理化学的特性の変化をもたらすプローブ分子を含み、
この変化は、適切な分析手法を介して測定可能である、物質。
【請求項11】
ガス状の形態でのBX型、HX型またはX型の化合物についてのセンサであり、
当該センサは、1つ以上のBX型、HX型またはX型の化合物との反応によって、少なくとも1つの物理化学的特性が変化するプローブ分子を含んだ、少なくとも1つの物質または組成物を備え、
この変化は、適切な分析手法を介して測定可能であり、
上記物質は、ガラス、雲母、石英、または蛍石製のスライドまたはプレートなどの、上記分析手法に適した基板上に堆積されている、センサ。
【請求項12】
少なくとも1つの励起光源と1つのコレクタとをさらに備えている、請求項11に記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−526285(P2010−526285A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504814(P2010−504814)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050783
【国際公開番号】WO2008/148987
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509303958)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblanc,Immeuble  Le Ponant D ,F−75015 Paris,France
【出願人】(508374243)サントゥル ナシオナル ドゥ ルシェルシュ シアンティフィック(セエヌエルエス) (4)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【住所又は居所原語表記】3,Rue Michel Ange,75794 PARIS Cedex 16,France
【Fターム(参考)】